パイプライン管理とは|営業の案件を段階ごとに追う方法


この記事のポイント
- ✓営業の案件を問い合わせから契約までの段階に分けて追う方法です
- ✓移行率や滞在日数の読み方
- ✓Excelとツールでの始め方
営業の数字を追っていると、「今月の見込みはどれくらいあるのか」「どの案件が止まっているのか」と聞かれて、すぐに答えられない場面があります。案件ごとのメモや担当者の頭の中に情報が散らばっていると、売上の見通しも、手を打つべき場所も見えません。パイプライン管理は、こうした状態を抜け出すための考え方です。
よくある勘違いは、「パイプライン管理には高価な営業支援システムが必要だ」というものです。実際には、段階の定義と、毎週の更新の習慣さえあれば、表計算ソフトでも始められます。この記事では、パイプライン管理の意味、段階の決め方、管理する項目、手順、数字の読み方、よくある失敗と防ぎ方を順に整理します。複数人で案件の担当と期限と進み具合を共有したい場合の道具として、国産のプロジェクト管理ツールのPinatecaにも触れます。
パイプライン管理とは何か
パイプライン管理とは、営業の案件が最初の接点から契約に至るまでの流れを、いくつかの段階に分けて見える形にし、段階ごとの件数や金額、進み具合を追う管理の方法です。人材育成の支援を手がけるNTTデータ グローバルソリューションズのコラムは、次のように説明しています。
パイプライン管理とは、営業活動における一連の業務フローを一つのパイプに見立て、分析や改善を行うマネジメント手法です。 出典: nttdata-gsl.hmup.jp
水道管を思い浮かべると分かりやすくなります。入口から入った水(見込み客)が、管の途中の区間(ヒアリング、提案、見積もり、交渉)を通って、出口(契約)に届きます。途中で詰まっている区間があれば、出口に届く水の量は減ります。パイプライン管理は、この管のどこで水が止まり、どこで漏れているのかを見つけるための仕組みです。
営業ファネルとの違い
似た言葉に「営業ファネル」があります。ファネルとは漏斗(じょうご)のことで、段階が進むほど件数が減っていく様子を、上が広く下が細い図で表したものです。ファネルは「問い合わせ100件のうち、提案まで進んだのは何件か」のように、全体の件数の減り方を眺めるのに向いています。
一方のパイプライン管理は、1件ずつの案件が今どの段階にあり、次に何をするのか、いつまでに動かすのかまでを追います。ファネルが全体を上から見る地図だとすれば、パイプラインは1件ずつの案件の現在地を示す一覧表です。実務では両方を組み合わせ、パイプラインの一覧を集計した結果をファネルの形で眺める、という使い方が一般的です。
案件管理表との違い
案件管理表も、案件の一覧を作る点では同じです。違いは、段階の定義が共通のものになっているかどうかです。担当者ごとに「提案中」の意味が違う案件管理表では、件数を集計しても比べられません。パイプライン管理では、段階ごとに「この条件を満たしたら次へ進める」という決まりをチームで共有し、全員が同じ物差しで案件を並べます。この物差しがそろって初めて、移行率や滞在日数といった数字に意味が生まれます。
営業の現場でパイプライン管理が求められる背景
パイプライン管理が注目される背景には、営業のやり方の変化があります。訪問と電話が中心だった時代は、担当者が顧客との関係を1人で抱え、上司は日報と会議で状況を聞き取るのが普通でした。ところが今は、問い合わせフォーム、ウェビナー、オンライン商談、メールのやり取りなど、案件の入口と接点が増えています。1件の案件に、マーケティング担当、インサイドセールス(電話やオンラインで初期の商談を担う役割)、訪問する営業担当、契約後の担当者と、複数の人が関わることも珍しくありません。
関わる人が増えると、「誰が、どこまで進めたか」が分からなくなります。引き継ぎの漏れで顧客を待たせたり、同じ質問を二度してしまったりすると、それだけで失注の理由になります。案件の現在地を全員が同じ一覧で確かめられる状態は、もはや大きな会社だけのものではありません。
もう1つの背景は、売上の見通しを早く正確に立てる必要が高まっていることです。人件費や仕入れの計画は、売上の見込みを土台に立てます。見込みが「担当者の感覚」だけだと、月末になって大きく外れることがあります。段階ごとの件数と金額、過去の移行率から見込みを計算できれば、外れ方が小さくなり、早めに手を打てます。
少人数の会社や個人の事業でも事情は同じです。営業を代わりに担う営業代行や、事務を引き受けるオンライン秘書のように、社外の人が営業の一部を担う働き方も広がっています。社外の人と案件の情報を共有するときこそ、段階の定義がそろった一覧が役に立ちます。
パイプライン管理で得られるメリット
パイプライン管理のメリットは、大きく4つに整理できます。
売上の見通しが立てやすくなる
段階ごとの案件の件数と金額が分かれば、「今月の契約はどれくらい見込めるか」を数字で示せます。後の節で説明する加重パイプライン(金額に段階ごとの確度をかけて合計したもの)を使えば、担当者の感覚に頼らない見込みを出せます。見込みと目標の差が早く分かれば、新しい案件を増やすのか、止まっている案件を動かすのか、打ち手を選ぶ時間が生まれます。
詰まっている段階が見つかる
段階ごとの移行率を並べると、どこで案件が止まっているのかが見えます。たとえば提案から見積もりへの移行率が低ければ、提案の中身や、提案の相手が決裁権を持つ人かどうかに問題があるかもしれません。見積もりから契約への移行率が低ければ、価格や条件の示し方を見直す余地があります。問題のある段階が分かれば、改善の手間をそこに集中できます。
営業のやり方が人に依存しにくくなる
成果を上げている担当者の案件が、どの段階でどれくらいの日数をかけて進んでいるかを比べると、うまくいくやり方の特徴が見えてきます。段階ごとの進め方を共有できれば、新しく入った人も同じ型で動けます。営業のやり方が特定の人の頭の中にしかない状態を、属人化と呼びます。パイプライン管理は、属人化をほどく手がかりになります。
引き継ぎと相談が速くなる
担当者が休んだり異動したりしても、一覧に段階と次の行動と期日が書かれていれば、別の人がすぐに引き継げます。上司が状況を聞き取る時間も短くなり、会議では「この案件をどう動かすか」という相談に時間を使えます。
一方で、デメリットもあります。入力と更新に手間がかかること、段階の定義があいまいだと数字が信用できなくなること、数字を追うことが目的になると現場の負担感が強まることです。これらの防ぎ方は、後の「よくある失敗と防ぎ方」の節で説明します。
段階(フェーズ)の決め方
パイプライン管理の出来は、段階の決め方でほぼ決まります。段階が多すぎると更新の手間が増え、少なすぎると詰まりの場所が見えません。一般的には5から7段階に収めると運用しやすくなります。
法人向けの営業での段階の例
法人向けの営業であれば、次のような段階がよく使われます。
- 見込み(問い合わせや紹介を受け、連絡先と関心が分かった段階)
- ヒアリング(課題、予算、時期、決裁者を聞き取った段階)
- 提案(課題に対する解決策を示した段階)
- 見積もり(金額と条件を示した段階)
- 交渉・稟議(相手の社内で検討が進んでいる段階)
- 受注または失注(結果が出た段階)
ポイントは、それぞれの段階に「次へ進める条件」を決めておくことです。たとえば「ヒアリング」から「提案」へ進めてよいのは、「予算の目安、導入したい時期、決裁する人の3つが分かったとき」と決めます。条件が無いと、担当者は前向きな気持ちで案件を先の段階に進めがちで、見込みが実際より大きく見えてしまいます。
受託の制作や業務委託での段階の例
Webサイトの制作や記事の執筆のように、案件ごとに内容と金額が変わる受託の仕事では、法人向けの営業とは少し違う段階が合います。たとえば「問い合わせ」「要件の確認」「見積もりの提示」「発注書・契約書の取り交わし」「着手」の5段階です。受託の仕事では、口頭で合意したつもりでも、発注書や契約書を取り交わす前に作業を始めてしまい、あとで金額や範囲の食い違いが起きることがあります。「発注書・契約書の取り交わし」を独立した段階にしておくと、書面がそろっていない案件が一覧の上ではっきり分かり、着手の前に確かめる習慣がつきます。業務の内容、報酬、支払いの条件、納期の4点が書面で確かめられたら次の段階へ進める、という条件にしておくと安全です。
段階は「こちらの作業」ではなく「相手の状態」で決める
よくある勘違いは、段階を自分たちの作業で区切ることです。「資料を送った」「訪問した」は営業側の行動であって、相手が前に進んだかどうかは分かりません。段階は「相手が課題を認めた」「相手が見積もりを依頼した」のように、相手の状態や意思で区切ると、数字が実態に近づきます。
失注の理由も記録する
受注だけでなく、失注した案件を「どの段階で、どんな理由で」失ったかも記録します。理由の選択肢を「価格」「時期の見送り」「他社に決定」「連絡が途絶えた」などに決めておくと、あとで集計できます。失注の記録は、次の改善の材料になります。
パイプラインで管理する項目
段階を決めたら、案件ごとに記録する項目を決めます。項目が多いと入力が負担になるので、まずは次の10項目程度から始めるのが現実的です。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 案件名 | 顧客名と内容が分かる短い名前 |
| 顧客の会社名・担当者 | 窓口の人と、決裁する人 |
| 段階 | 前の節で決めた段階のどれか |
| 見込み金額 | 受注したときの売上の見込み |
| 確度 | 段階ごとに決めた受注の見込みの割合 |
| 次の行動 | 次に何をするか(例:見積もりの再提示) |
| 次の行動の期日 | いつまでにするか |
| 担当者 | 社内の担当者 |
| 受注予定の時期 | 相手の決定が見込まれる月 |
| 段階に入った日 | 今の段階に移った日付 |
この中で特に大切なのは、「次の行動」と「期日」です。この2つが空欄の案件は、誰も動かしていない案件です。毎週の確認では、まずこの2つが埋まっているかを見るだけでも、止まっている案件をかなり減らせます。
「段階に入った日」は、後で説明する滞在日数を計算するために使います。段階を変えるたびにこの日付を更新する決まりにしておきます。
確度は、担当者が案件ごとに感覚で決めるのではなく、段階ごとに一律で決める方法から始めると、数字のぶれが小さくなります。たとえば見込み10%、ヒアリング20%、提案40%、見積もり60%、交渉80%のように決めておき、運用しながら過去の実績に合わせて直していきます。
パイプライン管理を始める手順
パイプライン管理は、次の7つのステップで始めると、無理なく形になります。
ステップ1:目的を決める
最初に、何のためにパイプライン管理をするのかを決めます。「月ごとの売上の見通しを立てたい」「止まっている案件を減らしたい」「新人が同じ型で動けるようにしたい」など、目的によって重視する項目が変わります。目的を1つに絞ると、項目を増やしすぎずに済みます。
ステップ2:今の営業の流れを書き出す
直近に受注した案件と失注した案件を数件ずつ選び、最初の接点から結果が出るまでに何が起きたかを時系列で書き出します。紙やホワイトボードで十分です。複数の案件に共通する節目が、段階の候補になります。
ステップ3:段階と進める条件を決める
書き出した節目をもとに、5から7段階を決め、段階ごとに次へ進める条件を1文で書きます。営業チーム全員で決めると、あとで「その条件は現場に合わない」という反発が出にくくなります。
ステップ4:管理する項目と入力の決まりを決める
前の節の表を参考に項目を決め、「段階を変えたらその日のうちに更新する」「次の行動と期日は空欄にしない」といった入力の決まりを作ります。決まりは3つ程度に絞ります。
ステップ5:今ある案件を登録する
動いている案件を一覧に登録します。最初は情報が欠けている案件もありますが、空欄のままでかまいません。空欄そのものが「この案件は情報が足りない」という気づきになります。
ステップ6:毎週の確認の場を設ける
週に1回、30分程度の時間をとり、一覧を全員で見ます。見る順番は、期日を過ぎた次の行動、滞在日数が長い案件、受注予定の時期が近い案件の順にすると、相談すべき案件から話せます。
ステップ7:月ごとに数字を振り返り、決まりを直す
月末には、段階ごとの移行率、滞在日数、見込みと実績の差を確かめます。確度の数字が実績とずれていれば直し、使われていない項目があれば削ります。パイプライン管理は、一度作って終わりではなく、運用しながら育てる仕組みです。
数字の読み方:移行率・滞在日数・加重パイプライン
一覧ができたら、3つの数字を見ます。
移行率
移行率とは、ある段階に入った案件のうち、次の段階へ進んだ割合です。たとえば、ある期間に提案まで進んだ案件が20件あり、そのうち見積もりまで進んだのが12件なら、提案から見積もりへの移行率は60%です。段階ごとの移行率を並べると、どこで案件が減っているかが分かります。
移行率は、件数が少ないと大きくぶれます。数件の結果で一喜一憂せず、3か月や半年といったまとまった期間で見ると、傾向をつかみやすくなります。
滞在日数
滞在日数とは、案件が1つの段階にとどまっている日数です。「段階に入った日」から今日までの日数で計算します。受注した案件の平均の滞在日数を段階ごとに出しておくと、それより大きく長くとどまっている案件が「止まっている案件」の候補になります。案件は止まる時間が長いほど受注しにくくなる傾向があるので、平均の2倍を超えたら必ず話し合う、といった決まりを作ると動かしやすくなります。
加重パイプライン
加重パイプラインとは、案件ごとの見込み金額に確度をかけ、それを合計したものです。単純に金額を合計すると、まだ見込みの段階の案件も満額で数えてしまい、見通しが大きく膨らみます。
計算の例を示します。
| 段階 | 件数 | 見込み金額の合計 | 確度 | 加重した金額 |
|---|---|---|---|---|
| 提案 | 5件 | 500万円 | 40% | 200万円 |
| 見積もり | 3件 | 300万円 | 60% | 180万円 |
| 交渉 | 2件 | 200万円 | 80% | 160万円 |
この例では、金額を単純に足すと1,000万円ですが、加重すると540万円になります。目標が600万円なら、60万円足りない計算です。その差を埋めるには、提案の段階の案件を新たに何件つくる必要があるか、交渉中の案件をどう前に進めるかを、数字をもとに話し合えます。
なお、加重パイプラインはあくまで見通しの目安です。大きな案件が1件あるだけで結果が大きく変わるので、金額の大きい案件は個別に状況を確かめます。
よくある失敗と防ぎ方
パイプライン管理がうまくいかない理由は、仕組みそのものより運用にあることがほとんどです。営業支援システムを提供するセールスフォース・ジャパンのブログは、最も多い失敗を次のように指摘しています。
パイプライン管理において最も多い失敗は、データ入力自体が目的となり、営業担当者がやらされ仕事に感じることです。これを防ぐには、入力したデータが「自分たちの役に立つ」と実感できる仕組みが不可欠です。 出典: salesforce.com
この指摘を踏まえて、よくある失敗を4つ挙げ、それぞれの防ぎ方を整理します。
失敗1:入力しても何にも使われない
入力した情報が会議で使われず、上司が見ている様子もなければ、担当者は入力をやめていきます。防ぐには、毎週の確認の場で必ず一覧を画面に映し、そこに書かれた情報をもとに相談することです。「一覧に書いておけば、困っている案件を一緒に考えてもらえる」と実感できれば、入力は続きます。
失敗2:段階の定義があいまい
担当者によって段階の意味が違うと、集計した数字が信用できません。進める条件を1文で書き、一覧のすぐ近くに表示しておきます。新しく入った人には、最初の週に条件の意味を説明します。
失敗3:項目が多すぎる
最初から20項目も30項目も用意すると、入力が負担になり、空欄だらけになります。まずは10項目程度から始め、「この情報がないと判断できない」と分かった項目だけを追加します。
失敗4:見込みの段階の案件を放置する
一覧に古い案件が残り続けると、パイプラインが実際より太く見えます。一定の期間、相手から反応がない案件は「失注(連絡が途絶えた)」として閉じる決まりを作ります。閉じた案件も記録として残るので、あとで再び連絡をとるきっかけになります。
担当者を責める道具にしない
もう1つ大切なのは、パイプラインの数字を担当者を責める材料に使わないことです。滞在日数が長い案件を見つけたら、「なぜ止まっているのか」「何があれば動くのか」を一緒に考える場にします。数字が責める道具になると、担当者は都合の悪い案件を一覧に書かなくなり、仕組みそのものが崩れます。
Excelやスプレッドシートで始める方法
少人数のチームで、案件の数が数十件程度であれば、Excel や Google スプレッドシートで十分に始められます。
シートの作り方
1行を1件の案件とし、前の節で挙げた項目を列に並べます。「段階」の列には、入力規則(あらかじめ決めた選択肢の中からしか選べないようにする機能)を設定し、段階の名前の書き方がそろうようにします。確度の列は、段階を選ぶと自動で決まるように、別のシートに段階と確度の対応表を作り、VLOOKUP 関数や XLOOKUP 関数で引くと手間が減ります。
滞在日数は、「段階に入った日」の列と今日の日付の差で計算します。Excel では TODAY 関数を使い、「=TODAY()-段階に入った日のセル」で日数が出ます。条件付き書式で、滞在日数が一定を超えた行に色を付けると、止まっている案件がひと目で分かります。
集計の作り方
段階ごとの件数と金額は、COUNTIF 関数と SUMIF 関数で集計できます。加重した金額は、案件ごとに「見込み金額×確度」の列を作り、SUMIF 関数で段階ごとに合計します。ピボットテーブルを使えば、担当者別や月別の集計も短い時間で作れます。
表計算ソフトの限界
表計算ソフトは手軽ですが、人数と案件が増えると次のような問題が出てきます。
- 同じファイルを複数人で同時に直すと、上書きや行のずれが起きやすい
- 案件ごとの経緯ややり取りを残す場所がなく、セルのメモが長くなる
- 次の行動の期日が来ても、担当者に知らせる仕組みがない
- 誰がいつ何を変えたのかを追いにくい
こうした不便を感じ始めたら、専用の道具を検討する時期です。
表計算ソフトで続けるあいだは、ファイルを人ごとに複製しないことも大切です。担当者がそれぞれ手元に写しを持つと、どれが最新か分からなくなります。共有の保存先に1つだけ保存し、更新した日と人を記録する列を設けておくと、取り違えを防げます。週に1回、別名で控えを保存しておけば、誤って行を消したときにも戻せます。
ツールを使う方法と選び方
パイプライン管理に使える道具は、大きく2つに分かれます。
営業支援システム(SFA)と顧客管理システム(CRM)
SFA とは、営業の案件、商談の記録、行動の記録などを管理するための仕組みです。CRM とは、顧客の情報や過去のやり取りを管理するための仕組みです。両方の機能を持つ製品も多く、パイプラインの表示、売上の予測、メールや名刺の管理など、営業に特化した機能がそろっています。営業の組織が大きく、予測の精度や分析を重視する場合に向いています。一方で、機能が多い分、設定と定着に時間がかかり、1人あたりの費用もかかります。導入する前に、使う機能と人数を絞り込むことが大切です。サブスクリプション型のサービスの費用を見直す考え方は、中小企業のSaaS費用管理術2026|サブスクコストを30%削減する方法が参考になります。契約数を棚卸しし、使われていないアカウントを減らす手順が整理されています。
カンバン型のプロジェクト管理ツール
もう1つの選択肢が、カンバン型のプロジェクト管理ツールです。カンバンとは、「見込み」「ヒアリング」「提案」のような列を横に並べ、案件を1枚のカードにして、段階が進むたびに右の列へ動かしていく見せ方です。パイプラインの段階をそのまま列にできるので、どの段階に何件あるかが画面を見ただけで分かります。営業専用の機能はSFAほど多くありませんが、少人数のチームが、担当と期限と進み具合を共有する用途には十分なことが多い方法です。
無料から試せる選択肢
その選択肢の1つが、国産のプロジェクト管理ツールのPinateca(ピナテカ)です。公式サイトによると、カンバン、ガントチャート、カレンダー、リストなど8種類のボードとチャットが、無料プランから使えます。パイプラインの段階を列にしたカンバンボードを作り、案件をカードにして動かせば、チーム全員が同じ画面で案件の現在地を確かめられます。カードには見積もりの工数や優先度、顧客名といった項目を自由に追加できるカスタムフィールドがあると案内されているので、見込み金額や受注予定の時期を項目として持たせることもできます。カードごとのコメントと、自分宛ての担当の割り当てや締め切りを集める受信箱もあり、次の行動のやり取りを案件のそばに残せます。リストボードでは表の形で全件を並べ、絞り込んで一括で直せると案内されています。
公式の料金ページによると、5人までのチームなら期限なしで無料で、ボードは10個まで、クレジットカードの登録は要りません。6人目、または11個目のボードからはスタンダードプランになり、料金は1人あたり月額500円(税抜、年払いなら1人あたり月額400円)です。売上予測の自動計算のような営業専用の機能が必要な場合はSFAが向いていますが、まず段階と担当と期限を共有するところから始めたいチームには試しやすい道具です。
Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
道具を選ぶときの確かめ方
どの道具を選ぶ場合も、次の点を確かめると失敗が減ります。
- 段階を自分たちの営業の流れに合わせて自由に作れるか
- 案件ごとに必要な項目(金額、期日、担当)を持たせられるか
- スマートフォンからも更新できるか
- 社外の協力者を招くときに、見せる範囲を分けられるか
- 無料の期間や無料のプランで、実際の案件を使って試せるか
最初から全部の機能を使おうとせず、段階の一覧と毎週の確認が回るかどうかを、1か月ほど試してから決めるのが確実です。
少人数のチームやフリーランスの営業での使い方
パイプライン管理は、大きな営業組織のためだけのものではありません。数人のチームや、1人で営業から納品までを担うフリーランスにも役に立ちます。
1人で使う場合
フリーランスの場合、営業は「仕事が切れそうになってから慌てて動く」ことになりがちです。問い合わせ、見積もりの依頼、提案中、契約待ちの案件を一覧にしておくと、数か月先の仕事の見通しが立ちます。今の案件が終わる時期と、契約待ちの案件の始まる時期を並べれば、どの月に仕事が空きそうかが分かり、早めに営業の手を打てます。
1人で使うなら、段階は「問い合わせ」「見積もり」「契約待ち」「受注」「見送り」程度の4から5段階で十分です。毎週決まった曜日に10分だけ一覧を見直し、次の行動と期日を更新する習慣をつけるのが続けるこつです。
社外の人と分担する場合
営業代行や営業事務を社外に頼むときは、パイプラインの一覧が仕事の受け渡しの土台になります。アポイントの獲得までを社外の人が担い、商談からを社内で担う、といった分担では、「アポイントが取れた」の段階の条件を事前にそろえておかないと、渡された案件の質にばらつきが出ます。段階の条件、引き継ぐときに書いておく項目、更新の締め切りを、依頼の最初に文書で決めておきます。
予約や顧客の情報をひとまとめに扱う仕組みづくりは、業種によって形が変わります。サロンや店舗の例は、美容・サロン業界のDX2026|予約管理 × 顧客管理 × 決済のSaaS一括導入で、予約管理と顧客管理と決済をまとめて導入する考え方として紹介しています。
小さく始めて決まりを育てる
少人数のチームほど、決まりを作りすぎないことが大切です。最初は段階と次の行動と期日の3つだけを共有し、慣れてきたら金額や確度を加えていきます。1か月続いたら、移行率と滞在日数を一度だけ計算してみると、どこに手を入れるべきかが見えてきます。
運営者として見てきたことと、この分野の仕事
在宅ワークとフリーランスの仲介を2004年から続けてきた運営者として見ていると、仕事が長く途切れない人ほど、手元の案件を「段階」で把握しています。見積もりを出した相手、返事を待っている相手、次の連絡の約束をした相手を一覧にし、決めた日に必ず連絡を入れる。特別な道具を使っていなくても、この習慣がある人は、繁忙期のあとに仕事が急に空くことが少ない傾向があります。パイプライン管理の考え方は、組織の営業だけでなく、個人の仕事の見通しを立てる方法としても役に立ちます。
もう1つ感じるのは、仲介の手数料がかからない直接の取引では、案件の管理そのものが受け手に任される場面が多いということです。中間の取り分が乗らない分だけ、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側の手取りは厚くなります。その一方で、見積もりの管理や次の連絡の約束は、自分で回す必要があります。手数料0%で直接取引する働き方と、パイプライン管理の習慣は、相性のよい組み合わせです。
パイプライン管理の知識は、企業の営業の仕組みづくりを手伝う仕事にもつながります。営業の段階の設計、一覧の作成と更新、毎週の数字の取りまとめは、営業事務や営業支援として社外に頼まれることの多い業務です。日程の調整や資料の作成とあわせて営業を支える働き方は、オンライン秘書・アシスタントのお仕事で、仕事の中身と始め方を紹介しています。データの分析やマーケティングの施策まで手がける働き方は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、求められるスキルと案件の例を整理しています。
パイプライン管理は、段階を決め、次の行動と期日を書き、毎週見直すという単純な仕組みです。表計算ソフトでもツールでも、まずは今動いている案件を一覧にするところから始めてみてください。
よくある質問
Q. パイプライン管理と案件管理は何が違うのですか?
どちらも案件の一覧を作る点は同じですが、パイプライン管理では段階ごとに「次へ進める条件」をチームで決め、全員が同じ物差しで案件を並べます。物差しがそろうことで、段階ごとの件数や移行率、滞在日数を比べられるようになり、売上の見通しや詰まっている段階を数字で確かめられます。
Q. パイプライン管理はExcelでもできますか?
少人数で案件が数十件程度なら、Excel や Google スプレッドシートで十分に始められます。1行を1件の案件にし、段階の列に入力規則を設定して書き方をそろえます。複数人の同時編集で上書きが起きる、経緯を残す場所がない、期日を知らせる仕組みがないといった不便が出てきたら、専用の道具を検討します。
Q. 段階はいくつに分けるのがよいですか?
一般的には5から7段階に収めると運用しやすくなります。多すぎると更新の手間が増え、少なすぎると詰まっている場所が見えません。段階は営業側の作業ではなく、相手が課題を認めた、見積もりを依頼したといった相手の状態で区切り、それぞれに次へ進める条件を1文で決めておくと数字が実態に近づきます。
Q. 営業担当者が入力してくれないときはどうすればよいですか?
入力した情報が使われていないと感じると、入力は続きません。毎週の確認の場で一覧を画面に映し、書かれた情報をもとに止まっている案件の進め方を一緒に考えるようにします。項目を10程度に絞る、数字を担当者を責める材料に使わないといった工夫も、入力を続けてもらうために効果があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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