任期満了で役員が退いたときの登記|辞任との違い


この記事のポイント
- ✓任期満了なのか辞任なのかで必要書類も登記の書き方も変わります
- ✓2週間の期限と登録免許税までを一次資料で確認して整理しました
役員退任登記という言葉でつまずく人が多いのは、「退任」が複数の意味をまとめた言い方だからです。任期が切れて退いた場合も、自分から辞めた場合も、株主総会で辞めさせられた場合も、日常会話ではまとめて退任と呼びます。ところが登記の世界では、この3つは別々の言葉で扱われ、添付する書類も申請書への書き方も変わります。
結論から整理します。任期満了で退いたときの登記は「退任」と書き、証明するのは定款の任期の定めと定時株主総会の議事録です。本人が辞めたときは「辞任」と書き、辞任届を添えます。会社が辞めさせたときは「解任」と書き、解任を決議した株主総会議事録を添えます。同じ人が続けるなら「重任」です。この4つの区別が、役員退任登記のすべての出発点になります。
任期満了の日は、自分で決められない
任期満了による退任は、誰かの意思で起きるものではありません。時間が来れば自動的に起きます。ここが辞任との決定的な違いです。
会社法では、取締役の任期は選ばれた後2年以内に終わる事業年度のうち最後のものに関する定時株主総会の終わるときまでと決められています。株式を自由に売買できないようにしてある会社、つまり非公開会社であれば、定款で最長10年まで延ばすことができます。監査役は原則4年で、こちらも非公開会社なら定款で10年まで延ばせます。
取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によつて、その任期を短縮することを妨げない。 出典: laws.e-gov.go.jp
この条文の読み方でつまずきやすいのは「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のもの」という部分です。具体例で数えます。3月決算の会社で、2024年6月の定時株主総会で取締役に選ばれたとします。選ばれてから2年以内に終わる事業年度は、2025年3月期と2026年3月期です。このうち最後のものは2026年3月期。その事業年度についての定時株主総会は2026年6月に開かれるので、任期が切れるのはそのときです。
つまり、実際の在任期間は2年ちょうどではなく、2年と少しになります。「選ばれてから2年後の同じ日」ではありません。任期を10年に延ばしている会社でも数え方は同じで、10年後の決算期についての定時株主総会が終わるときが満了日です。
満了の日が分からなくなったら、登記事項証明書を取って、その役員が最後に就任または重任した日を確認してください。そこが起算点です。社内の名簿や記憶ではなく、登記された内容が基準になります。
退任と重任は、同じ日に起きる別の出来事
任期が満了したとき、会社がとる道は2つです。
同じ人を選び直すなら重任になります。任期満了で一度退任し、同じ日に再び就任する。この2つが同じ日に起きるので、登記では「重任」という1語で表します。
別の人を選ぶか、その役員を置かない体制に変えるなら退任になります。この場合、登記には「退任」と記録されます。後任を選んだなら、その人の就任も同時に登記します。
どちらも登記の期限は同じで、任期が満了した日から2週間以内です。定時株主総会の日がそのまま起算日になるので、総会の直後から動き出す必要があります。
ここでよくある誤解を1つ解いておきます。「役員の顔ぶれが変わらないから登記は不要」という思い込みです。任期が満了した事実は、顔ぶれが変わるかどうかと関係なく発生します。登記簿には役員ごとに就任日が記録されているので、任期の年数から逆算すれば、いつ満了したかは外から計算できてしまいます。放置すれば、登記を怠ったことが登記簿の上で明らかになる状態です。
任期満了の退任を登記するときの書類
任期満了で退任し、後任を選んだ場合に必要になるのは、おおむね次の書類です。
変更登記申請書。登記の事由に「取締役の変更」と書き、登記すべき事項に退任と就任の両方を並べます。原因年月日には、退任は「令和○年○月○日退任」、就任は「令和○年○月○日就任」と書きます。
定時株主総会議事録。任期が満了した総会であり、同時に後任を選んだ総会でもあります。両方の事実が読み取れる内容にしてください。
株主リスト。正式には「株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面」といいます。議決権の多い順に上位10名、または議決権の割合を足して3分の2に達するまでの人数のうち、少ないほうについて、氏名や住所、株式数、議決権数と割合を書いた書面です。会社の代表者が作成します。
就任承諾書。新しく選ばれた人が引き受ける旨を示す書面です。
印鑑証明書。取締役会を置いていない会社で新しく取締役になる人は、就任承諾書に個人の実印を押し、その印鑑証明書を添えます。取締役会を置いている会社では、新しく代表取締役になる人が同じ扱いです。
本人確認証明書。印鑑証明書を添えない人については、住民票記載事項証明書や運転免許証のコピーなどを添えます。免許証のコピーは裏面も写し、本人が原本と相違ない旨を書いて記名したものが必要です。
取締役会議事録。取締役会を置いている会社で代表取締役を選び直したなら、この議事録が加わります。
委任状。代理人に申請を頼む場合だけです。
辞任のケースと比べると、辞任届が不要になり、代わりに定時株主総会議事録が中心の証明書類になるのが特徴です。任期満了は書面で証明するというより、定款の任期の定めと就任日から計算で導かれるものなので、法務局側も登記簿の記録と突き合わせて確認します。
全員が続投するときは、書類の組み合わせが変わる
役員全員が続投する重任のケースでは、書類の構成がやや変わります。法務局が公開している「取締役会設置会社において役員の全員が重任する場合」の記載例には、添付書類として株主総会議事録、株主リスト、取締役会議事録、就任承諾書、委任状が挙げられています。
重任の場合、就任承諾書に添える印鑑証明書は原則として不要です。再任にあたるためです。同じ理由で本人確認証明書も要りません。ここが新任と大きく違う点で、続投だけなら集める書類がぐっと減ります。
ひとつ注意が要るのは監査役です。監査役の監査の範囲を会計に関するものに限る旨の定款の定めがある会社が、その定めについてまだ登記していない場合、監査役の重任の登記と一緒にその旨を登記することになっています。このときは、定款や株主総会議事録などでその定めがあることを証明する書面が追加されます。設立から何年も経っていて一度も監査役を入れ替えていない会社では、この登記が漏れたままになっていることがあります。
後任がいないと、退任の登記はできないことがある
役員退任登記で最もつまずきやすいのがこの点です。
会社法には、役員が欠けた場合、あるいは法律や定款で定めた役員の人数が欠けた場合には、任期満了または辞任によって退任した役員が、新しい役員が就任するまで引き続き役員としての権利義務を持つ、という定めがあります。実務では権利義務取締役、権利義務監査役と呼ばれます。
数字で考えると分かりやすくなります。取締役会を置いている会社は、取締役が3人以上必要です。3人の会社で1人の任期が満了し、後任を選ばなければ2人になり、法律の下限を割ります。この場合、任期が満了した人は退任できず、退任の登記もできません。
取締役会を置いていない会社では、法律上は取締役1人でも成立します。ただし定款に「取締役は2名以上とする」のような定めが書いてあると、その定めが基準になります。設立時のひな形をそのまま使っていて、こうした定めが入っていることに気づいていない会社は珍しくありません。
対処の道は2つです。後任を選んで同時に登記するか、株主総会で定款の員数の定めを変える、あるいは取締役会を置く旨の定めを廃止するかです。後者は会社の運営体制そのものを変える判断なので、税務や取引先との関係も含めて影響を確認する必要があります。どちらを選ぶかで登記の内容も費用も変わるため、判断に迷うなら法務局の相談窓口か司法書士に会社の状況を伝えて確認してください。
自社の任期を確かめる手順
任期がいつ切れるかを調べる手順は決まっています。順番にたどれば、専門知識がなくても答えが出ます。
はじめに、登記事項証明書を取ります。法務局の窓口で紙の請求をすると1通600円、オンラインで請求して郵送してもらうと520円、オンラインで請求して窓口で受け取ると490円です。本店の所在地に関係なく、全国どの法務局でも取得できます。
次に、証明書の「役員に関する事項」の欄を見ます。役員ごとに氏名と、就任または重任の年月日が記録されています。この日付が任期の起算点です。
続いて、定款の任期の定めを確認します。会社を作ったときの定款が手元にあるはずです。「取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」といった条文が入っています。途中で定款を変えている場合は、変更後のものが基準です。定款が見当たらない場合、公証役場で認証を受けた原始定款の謄本を請求できることがあります。
最後に、起算点と任期の年数から、どの事業年度の定時株主総会で満了するかを計算します。決算期を基準に数えるのがコツで、月日ではなく事業年度で数えると間違えません。
この4手順を踏めば、次の満了がいつかがはっきりします。複数の役員で就任日が違う場合は、人ごとに満了日が違うことになるので、全員分を一覧にしておくと管理が楽になります。
特例有限会社には任期の定めがない
昔の有限会社から移行した特例有限会社では、事情が変わります。特例有限会社の取締役と監査役には、会社法上の任期の定めが適用されません。つまり、任期満了による退任という出来事がそもそも起きません。
この違いは実務上とても大きいです。株式会社であれば最長10年ごとに登記が必要になるのに対し、特例有限会社は役員が替わらないかぎり登記をする機会がありません。その結果、登記簿が10年以上更新されない状態が普通に発生します。
ただし、役員が辞任したり亡くなったりすれば、そのときは登記が必要です。任期がないことと、登記が不要であることは別の話なので混同しないでください。また、特例有限会社から株式会社へ移行すると任期の定めが適用されるようになるため、移行を検討している会社は、移行後の任期をどう設計するかもあわせて決めることになります。
自社が特例有限会社かどうかは、商号に「有限会社」が入っているかで判断できます。登記事項証明書の記載を見れば確実です。
申請書の書き方でつまずきやすい点
書類は揃っているのに補正の連絡が来る、という事態はよく起きます。原因は、ほとんどが申請書の書き方です。
原因年月日の取り違えが最も多いパターンです。任期満了の退任なら、定時株主総会が終わった日を書きます。総会の招集日でも、議事録を作った日でもありません。
役職名の書き方も間違えやすい点です。取締役と代表取締役を兼ねている人が退任するときは、両方の資格について記載が必要になります。代表取締役を退いたけれど取締役としては残る場合と、両方を退く場合では、登記すべき事項の書き方がまったく違います。
登記の事由の欄には、何の登記をするのかを書きます。取締役と監査役の両方が入れ替わるなら「取締役及び監査役の変更」のように、対象を漏らさず書いてください。
添付書類の欄には、種類と通数を書きます。実際に同封した通数と一致していないと、そこで確認が入ります。提出する直前に、封筒の中身と申請書の記載を突き合わせる習慣をつけると手戻りが減ります。
会社法人等番号は、分かる場合に記載します。登記事項証明書の冒頭に記載されているので、取得済みなら書き写すだけです。
登記が終わったあとに残る社内の手続き
法務局の登記が完了しても、会社としての作業は残ります。
退任した役員が社会保険に加入していたなら、資格喪失の届出が必要です。期限が短いので、登記と並行して進めるのが安全です。様式や期限は日本年金機構の案内で確認できます。
代表者が交代した場合は、取引銀行への届出も必要です。届出印や代表者名の情報を更新しないと、振込や融資の手続きが止まります。銀行は新しい登記事項証明書の提出を求めるので、登記完了後に取得して持参します。
税務署への異動届出書も、代表者が変わった場合は提出対象です。役員報酬の扱いも期の途中で変わることがあるため、顧問税理士がいるなら早めに共有してください。
建設業や宅地建物取引業、人材派遣業のように許認可が必要な事業では、役員の変更を監督官庁に届け出る義務があります。届出の期限は登記の2週間とは別に定められているので、自社の許認可ごとに確認が必要です。ここを落とすと、登記は済んでいるのに許認可の側で指摘を受けることになります。
費用は1件あたり1万円か3万円
役員退任登記にかかる登録免許税は、国税庁の税額表で決まっています。
取締役または代表取締役もしくは監査役等に関する事項の変更の登記 申請件数 1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社については1万円) 出典: nta.go.jp
基準になるのは資本金の額だけで、売上も利益も従業員数も関係ありません。中小企業の大半は資本金1億円以下なので、実際に適用されるのは1万円のほうです。資本金300万円の会社も、資本金9,000万円の会社も同じ額になります。
「1件につき」という数え方なので、退任と就任を1枚の申請書にまとめれば税額は1件分です。役員が何人入れ替わっても、同じ申請でまとめられるなら追加の税金はかかりません。逆に、退任の登記と就任の登記を別々の日に分けて出すと、その都度かかります。まとめられるものはまとめたほうが得です。
納め方は、収入印紙を台紙に貼るか、領収証書で納めるかです。オンラインで申請するなら電子納付も使えます。申請先は本店を管轄する法務局で、近いという理由で別の庁に出すことはできません。
司法書士に依頼した場合の報酬は事務所ごとに違いますが、役員変更の登記であれば2万円から3万円程度を提示する事務所が多いとされています。登録免許税と実費を合わせると、総額で3万円から6万円前後が目安です。自分で申請すれば1万円台で終わるので、差額をどう評価するかという判断になります。
実費まで含めて並べると、判断がしやすくなります。資本金500万円の会社が、役員1人の任期満了と後任の就任を同時に登記するケースで見てみます。自分で書類を作って窓口に出すなら、登録免許税1万円に、事前確認のための登記事項証明書600円、新任者の印鑑証明書の発行手数料が数百円で、合計は1万1,000円前後です。ここに、書類を作って法務局に出向く半日分の時間が乗ります。司法書士にすべて任せるなら3万円から6万円で、時間の負担はほぼゼロになります。差額はおおむね2万円から5万円です。
見積もりを取るときは、提示された金額が報酬だけなのか、登録免許税を含んだ総額なのかを必ず確認してください。ここが曖昧なまま進めると、支払いの段階で想定の倍近くになることがあります。書類の取り寄せ代行や郵送費を別立てにしている事務所もあるので、内訳を出してもらうのが確実です。
期限を過ぎると何が起きるか
登記の期限は、退任や就任の効力が生じた日から2週間です。この期限を守らなかった場合、会社ではなく代表者個人に過料が科される可能性があります。金額は法律上100万円以下とされています。
実際の運用では、1日過ぎただけで上限額が科されるわけではありません。半年以上放置したケースで数万円から十数万円という例が紹介されることが多く、期間が長いほど金額が上がる傾向があります。ただし、いくらになるかは裁判所が判断するもので、事前に確定的な金額を知ることはできません。
期限を過ぎても登記義務そのものは消えません。過料の通知が来たあとで、あらためて登録免許税を納めて申請することになります。つまり、放置は費用を二重に増やす選択です。
さらに重い話として、休眠会社のみなし解散があります。会社に関する登記が最後にあった日から12年が経過した株式会社は、法務大臣の官報公告に対して事業を廃止していない旨を届け出ないと、2か月の期間が満了した時点で解散したものとみなされます。取締役の任期を10年に延ばしている会社が、重任も退任も登記せずに次の満了を迎えると、この12年に届いてしまいます。事業を続けているのに登記簿上は解散した会社になると、取引先との契約や融資に直接影響します。
任期の管理を仕組みにしておく
役員退任登記の失敗は、ほとんどが知識の不足ではなく管理の欠落から起きます。任期が何年かを知らないのではなく、いつ満了するかを誰も把握していない。これが実態です。
仕組みにするには、次の3つを決めておけば足ります。1つ目は、定款の任期の定めを印刷して、登記関係の書類と同じ場所に保管すること。2つ目は、登記事項証明書に記載された各役員の就任日をもとに次の満了年を計算し、その年の定時株主総会の予定と一緒にカレンダーへ入れること。3つ目は、決算のスケジュールを組むときに「今期は役員の任期が切れる年かどうか」を確認する項目を加えることです。
任期を10年に延ばす判断をした会社ほど、この管理が必要になります。10年は長く、担当者も経営体制も入れ替わる期間です。延ばすこと自体は登録免許税の回数を減らす合理的な選択ですが、管理を伴わないとみなし解散のリスクに近づきます。
任期を長くするか短くするかは、会社の組み方によって答えが変わります。役員が創業者1人だけで、当面その体制を変える予定がないなら、長くして手続きの回数を減らす判断に無理はありません。10年で登記が1回になれば、登録免許税だけでも4万円の差になります。
一方、複数人で出資して始めた会社や、外部から役員を迎えている会社では、短めに保っておくほうが身動きが取りやすくなります。任期の途中で正当な理由なく解任すると、残りの任期分の報酬相当額などを損害として請求される余地があるためです。任期が10年ある状態での解任は、その金額が大きくなりやすいということでもあります。2年ごとに任期が切れる設計なら、続投させないという判断を穏当な形で出せます。
つまり、任期の長さは登記の手間だけで決める話ではありません。誰と経営していて、体制を変える可能性がどれくらいあるかという経営の判断です。決める前に顧問税理士や司法書士に会社の実情を伝えて、影響を確認しておくと安心できます。
登記すべき事項は、この形で書き写す
申請書のなかで最も書き方が決まっているのが、登記すべき事項の欄です。法務局が公開している記載例に型があるので、自社の事情に合わせて名前と日付を入れ替えるだけで済みます。
任期満了で取締役1人が退き、後任が就任するケースなら、次の並びになります。
「役員に関する事項」 「資格」取締役 「氏名」◯◯◯◯ 「原因年月日」令和◯年◯月◯日退任 「役員に関する事項」 「資格」取締役 「氏名」◯◯◯◯ 「原因年月日」令和◯年◯月◯日就任
同じ枠を、役員の人数分だけ繰り返します。代表取締役については氏名だけでなく住所も書きます。役員の全員が重任する場合の記載例では、こう並んでいます。
「役員に関する事項」 「資格」代表取締役 「住所」◯県◯市◯町◯丁目◯番◯号 「氏名」◯◯◯◯ 「原因年月日」令和◯年◯月◯日重任 出典: houmukyoku.moj.go.jp
代表取締役の住所は、印鑑証明書に書かれている住所と同じ表記にします。番地の書き方が1文字違うだけで確認の連絡が来ます。
記載例には、退任や死亡と就任の登記を合わせて1件として申請できると注記されています。登録免許税が1件分で済むのはこの注記が根拠です。登録免許税の欄も「金3万円(又は1万円)」という書き方で、どちらを書くかは資本金の額で決めます。
監査役の監査の範囲を会計に関するものに限る定款の定めがあって、まだ登記していない会社は、この欄に「資格」監査役の監査の範囲に関する事項と書き、続けてその定めがある旨を記録します。設立から一度も監査役を入れ替えていない会社で漏れがちなのは、この1枠です。
合同会社では、退任ではなく退社になる
株式会社を前提に書いてきましたが、合同会社では言葉も仕組みも変わります。
合同会社の社員には任期がありません。任期満了という出来事が起きないので、「任期が切れたから登記する」という場面も生まれません。社員が抜けるときは退社という形になり、その事由は法律に並んでいます。
第六百七条 社員は、前条、第六百九条第一項、第六百四十二条第二項及び第八百四十五条の場合のほか、次に掲げる事由によって退社する。 一 定款で定めた事由の発生 二 総社員の同意 三 死亡 出典: laws.e-gov.go.jp
自分の意思で抜ける任意退社もあります。存続期間を定款で定めていない会社では、各社員は事業年度の終了時に退社できますが、6か月前までに会社へ予告することが必要です。やむを得ない事由があるときは、いつでも退社できます。予告の期間は定款で別に定めることもできるので、まず自社の定款を見てください。
登記の期限は株式会社と同じで、登記した事項に変更が生じたときから2週間以内です。登録免許税も、株式会社の役員変更と同じ区分に入ります。登録免許税法の税額表は、取締役や代表取締役と並べて「社員」に関する事項の変更を挙げており、申請1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社は1万円です。
気をつけたいのは、業務執行社員を定款で定めている会社です。その社員の全員が退社すると、定款のその定めそのものが効力を失います。誰が業務を執行するのかという会社の骨格が変わるので、退社の登記だけでは終わらず、定款の作り直しが必要になります。人が1人抜けるという話ではなく、会社の設計を変える話になるということです。
登録免許税と司法書士報酬を帳簿にどう書くか
登記にかかったお金は帳簿に載ります。ここでつまずくのは、司法書士に払う報酬から所得税を天引きする必要がある点です。
登録免許税は租税公課として処理します。資本金1億円以下の会社が役員変更を1件申請したなら、租税公課1万円と、その支払いの元になった現金や預金を対に書きます。収入印紙を貼って納めた場合も同じ扱いです。
司法書士の報酬は、所得税法第204条第1項第2号に並んだ報酬に当たります。会社が支払う側として所得税を天引きし、翌月10日までに国に納めます。天引きの計算には控除があります。
法第二百四条第一項第二号(報酬、料金等に係る源泉徴収義務)に掲げる司法書士、土地家屋調査士又は海事代理士の業務に関する報酬又は料金 同一人に対し一回に支払われる金額 一万円 出典: laws.e-gov.go.jp
1回に支払う金額から1万円を引いた残りに、所得税10パーセントと復興特別所得税を合わせた10.21パーセントをかけます。報酬が3万円なら、3万円から1万円を引いた2万円に10.21パーセントをかけて2,042円です。振り込むのは3万円から2,042円を引いた2万7,958円で、差の2,042円は預り金として残し、翌月10日までに納めます。
請求書に登録免許税や印紙代が一緒に並んでいても、それは報酬ではないので天引きの対象から外します。報酬の欄だけを取り出して計算するのが要点です。天引きを忘れて全額を振り込んでしまうと、あとから相手に返してもらうか、会社が負担して納めるかという面倒が生じます。
役員の入れ替わりは、事業の入口を見直す機会でもある
在宅ワークと業務委託の仲介を20年見てきた立場から言えば、役員構成を変えるタイミングは、事業の取り方そのものを点検する機会になっています。役員が替わるということは、誰がどの仕事を持ってくるかという関係も変わるということだからです。
続いている会社に共通しているのは、案件を単発で拾い続けるのではなく、直接やり取りできる相手を少しずつ増やしている点です。仲介手数料の高い経路に入口を預けたままだと、法人化や体制整備で得たものが手数料で薄まります。手数料0%の直接取引が効いてくるのは、金額の大きさよりも手元に残る額の厚みのほうで、発注する側から見ても中間マージンが乗らないぶん同じ予算でより多く頼めます。双方に利がある構造なので、関係が長く続きやすくなります。
判断の材料になる、社外の相場と周辺情報
登記を自分でやるか外に出すかを決めるとき、自分の時間の単価と比べると判断が早くなります。開発系の仕事の相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場に、文章まわりの仕事の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっています。半日を削るために払う金額が、その半日で生み出せる額より小さいなら、外注に合理性が出ます。
役員体制を変えるときは、どの領域で事業を伸ばすかもあわせて考えることになります。企業のAI導入を支援する仕事の実像はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に、セキュリティやマーケティングを含む広い範囲はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、受託開発の体制づくりはアプリケーション開発のお仕事に整理されています。
議事録や申請書のような定型文書を社内で正確に作れるようにしたいならビジネス文書検定で扱う内容がそのまま使えます。技術寄りの案件を法人として受けるときの裏付けにはCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が効きます。
役員の交代は契約の見直しと重なりがちです。取引条件を書面でどこまで詰めるべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに、支払いが止まったときの回収の流れと費用は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に、会計の専門家が資格を事業に使う考え方は会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】にまとまっています。
役員退任登記は、任期満了なのか辞任なのかを見極めるところから始まります。任期の起算点は登記事項証明書に、任期の長さは定款に書いてあります。この2つを手元に用意してから書類を集めれば、2週間という期限のなかでも落ち着いて進められます。
よくある質問
Q. 退任と辞任と重任はどう違いますか?
退任は任期が満了して役員の立場が終わることで、時間の経過で自動的に起きます。辞任は本人の意思で辞めることで、辞任届が証明書類になります。重任は任期満了と同時に同じ人が再び選ばれることです。登記の申請書にはこの原因をそのまま書くため、添付書類の組み合わせも変わります。
Q. 任期満了の日はどう数えますか?
選ばれた後2年以内に終わる事業年度のうち最後のものについての定時株主総会が終わるときです。3月決算で2024年6月に選ばれたなら、2026年6月の定時株主総会の終結時が満了日になります。2年後の同じ日ではありません。非公開会社は定款で最長10年まで延ばせます。
Q. 後任が決まっていなくても退任の登記はできますか?
退任によって役員の人数が法律や定款の定めを下回る場合はできません。会社法では新しい役員が就任するまで退任した役員が権利義務を持ち続けると定められているためです。取締役会がある会社は取締役3人以上が必要なので、3人の会社で1人の任期が切れると必ずこの状態になります。
Q. 役員退任登記の費用と期限を教えてください?
登録免許税は申請1件につき3万円、資本金1億円以下の会社は1万円です。退任と就任をまとめて1件で申請すれば税額も1件分で済みます。期限は効力が生じた日から2週間で、怠ると代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。司法書士に頼むと総額3万円から6万円前後が目安です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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