役員を増やすときの登記|出す書類と費用

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役員を増やすときの登記|出す書類と費用

この記事のポイント

  • ✓役員追加登記必要書類は
  • ✓委任状の5つが基本です
  • ✓代表取締役を増やす場合に加わる書類

結論から書きます。役員を1人増やすときに法務局へ出す書類は、基本の形で5つです。株主総会議事録、株主リスト、就任承諾書、本人確認証明書、そして代理人に頼む場合の委任状。ここに、新しく代表取締役を置くかどうかで1つか2つが加わります。役員追加登記必要書類を調べている人がいちばん知りたいのは、この一覧と、それぞれをどこまで厳密に作ればいいのかという点のはずです。順に見ていきます。

基本の5点セット

まず全体像を押さえます。取締役会を設置していない会社で、取締役を1人増やす場合、申請書に添えるのは次のとおりです。

株主総会議事録が1通。誰を取締役に選任したのかを記録したものです。

株主リストが1通。正式には「株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面」といいます。

就任承諾書が人数分。選ばれた本人が「引き受けます」と表明した書面です。

本人確認証明書が人数分。ただし印鑑証明書を添付する場合は不要になります。

委任状が1通。司法書士などに申請を委任した場合のみです。

この5つが骨格で、会社の機関設計によって上乗せが決まります。ひとつずつ、何を書くのか、どこで落とされるのかを見ていきます。

株主総会議事録には決議の要件が読み取れるように書く

役員の選任は株主総会の決議で行います。会社法329条1項が、役員は株主総会の決議によって選任すると定めています。

決議の要件は会社法341条です。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数で決めます。定足数は定款で3分の1以上まで下げられますが、それより下げることはできません。

議事録には、開催した日時と場所、出席した株主の議決権の数、議案の内容、賛成した議決権の数、議長と出席した役員の氏名を書きます。登記所が見るのは、この記載から決議の要件を満たしていることが読み取れるかどうかです。「全員一致で可決した」とだけ書いてある議事録が補正になるのは、出席した議決権の数が分からないからです。

定時株主総会を待たずに増やすのであれば、臨時株主総会を開きます。株主全員の同意があれば招集の手続きを省略できるので、株主が数人の会社なら実質的な負担はほとんどありません。

株主リストは記載する範囲が決まっている

株主リストは平成28年10月1日から必要になった書面です。中身は法務省がはっきり示しています。

●議決権数上位10名の株主 ●議決権割合が2/3に達するまでの株主 ・・・いずれか少ない方の株主について、次の事項を記載した株主リスト(1)株主の氏名又は名称(2)住所(3)株式数(種類株式発行会社は、種類株式の種類及び数)(4)議決権数(5)議決権数割合 出典: moj.go.jp

この5点を代表者が証明する形式になります。注意したいのは、株主総会を欠席した株主や議決権を行使しなかった株主も、議決権を持っている限り数に含めるという点です。逆に、自己株式のように議決権を行使できない株式を持つ株主は除きます。

法務省は書式例と記載例をエクセルとPDFで公開しています。株主が代表者1人だけの会社なら、簡易書式で5分もかからずに作れます。ゼロから考える必要はまったくありません。

ここでつまずく会社は、株主名簿が古いまま放置されているケースです。相続で株式が移っていたり、退職した役員が株式を持ったままだったりすると、リストが作れません。役員を増やす前に、株主名簿を現状に合わせておいてください。

就任承諾書は住所の書き方で落ちる

就任承諾書は、選ばれた本人が就任を承諾したことを示す書面です。書式に決まった様式はなく、会社名、就任する役職、承諾する旨、日付、本人の住所と氏名があれば足ります。

問題になるのは住所です。法務省は本人確認証明書の説明のなかで、株主総会議事録に本人の住所の記載がない場合には、別途、本人が住所を記載して記名押印した就任承諾書が必要になると注記しています。本人確認証明書は「議事録または就任承諾書に記載された氏名と住所が、公的な証明書の記載と一致すること」を確かめるための書類なので、照合する相手の住所が書かれていなければ意味を成しません。

そして、その住所は住民票に記載されているとおりに書きます。普段は「○○町1-2-3」と省略して書いている人でも、就任承諾書では「○○町一丁目2番3号」のように正確に書く必要があります。番地の表記が本人確認証明書とずれていると、そこで補正になります。

本人確認証明書として使えるもの

本人確認証明書は、商業登記規則61条7項に根拠があります。設立の登記と、取締役、監査役、執行役の就任による変更の登記で必要になり、再任の場合は除かれます。

《取締役等の「本人確認証明書」の例》○住民票記載事項証明書(住民票の写し)個人番号が記載されていないものを使用してください。○戸籍の附票○住基カード(住所が記載されているもの)のコピー○運転免許証等のコピー 出典: moj.go.jp

運転免許証のコピーを使う場合は、裏面もコピーして、本人が「原本と相違がない。」と記載して記名する必要があります。マイナンバーカードも使えますが、個人番号が印字されている裏面ではなく、氏名と住所と生年月日と性別が載っている表面だけをコピーし、同じように原本証明を付けます。

使えないものもはっきりしています。市町村長から交付される個人番号の通知カードは、本人確認証明書として使うことができません。また、住民票を使う場合は個人番号が記載されていないものを取ってください。役所の窓口では「マイナンバー入りにしますか」と聞かれるので、入れないと答えます。

なお、印鑑証明書を添付する場合は本人確認証明書は不要です。二重に出す必要はありません。

代表取締役を増やすときに加わる書類

ここからが機関設計による上乗せです。

取締役会を設置していない会社で、新しく就任する取締役については、就任承諾書に市区町村に登録した実印を押し、その印鑑証明書を添付する必要があります。商業登記規則61条4項がその根拠です。この場合は本人確認証明書は要りません。

取締役会を設置している会社では、新しく就任する代表取締役について同じ扱いになります。取締役会で代表取締役を選定するので、取締役会議事録が1通加わります。

取締役会を設置していない会社で、取締役の互選によって代表取締役を選ぶ定款になっているなら、互選を証する書面が必要です。株主総会で代表取締役を選ぶ定款になっているなら、その決議を記載した株主総会議事録が該当します。

そして、新しい代表取締役が会社の印鑑を登記所に届け出るなら、印鑑届書を出します。法務局は印鑑届書の様式と記載例を公開しています。既存の代表取締役が届出印をそのまま使い続けるのであれば、この書類は要りません。

監査役を増やすときに変わること

取締役ではなく監査役を増やす場合も、基本の流れは同じです。株主総会の決議で選任し、就任承諾書と本人確認証明書を添えて、2週間以内に登記を申請します。商業登記規則61条7項は、取締役だけでなく監査役と執行役の就任による変更の登記も本人確認証明書の対象に挙げています。

違いは資格の制限です。会社法335条2項は、監査役は会社またはその子会社の取締役や支配人その他の使用人を兼ねることができないと定めています。社内の従業員を監査役にすることはできません。ここを知らずに「経理部長を監査役にしよう」と議案を組むと、選任そのものが成り立たなくなります。

もうひとつ、監査役を初めて置く会社では、監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあるかどうかも登記事項になります。法務局の記載例では、この定めがある会社について、定款、株主総会議事録、または代表取締役が作成した証明書のいずれかを添付するよう案内されています。自社の定款を確認してから書類を組んでください。

会計参与や会計監査人を置く場合はさらに条件が加わります。会計監査人は公認会計士か監査法人でなければならないと会社法337条1項が定めています。この場合は資格を証する書面が必要になるので、選任の打診をする段階で先方に確認しておきます。

役員報酬の決め方も同じ総会で片付ける

登記の書類そのものではありませんが、役員を増やすときに必ず一緒に出てくるのが報酬です。

会社法361条1項は、取締役の報酬等について、定款に定めがないときは株主総会の決議で定めると規定しています。実務では、取締役全員の報酬総額の上限を株主総会で決めておき、個々の配分は取締役の協議や取締役会に委ねる形が一般的です。

つまり、新しく取締役を迎えて報酬を払うのであれば、既に決議されている総額の枠に収まるかどうかを確認する必要があります。枠を超えるなら、選任の議案と一緒に報酬総額の変更も決議します。ここを飛ばすと、支払った報酬の根拠が後から問題になります。

なお、会社と役員の関係は委任です。会社法330条が、株式会社と役員および会計監査人との関係は委任に関する規定に従うと定めています。従業員のような雇用ではないため、労働時間や解雇の考え方はそのまま当てはまりません。増やす前にこの違いを本人と共有しておくと、後の行き違いが減ります。税務上の扱いは金額や支給の仕方で変わるので、税務署か税理士に確認してください。

費用は登録免許税。資本金で2通りに分かれる

登録免許税は、役員に関する事項の変更の登記として、申請1件につき3万円です。資本金の額が1億円以下の会社は1万円になります。登録免許税法の別表で、取締役、代表取締役、会計参与、監査役などに関する事項の変更がひとつの区分にまとめられていて、増員もここに入ります。

正直なところ、この「1件につき」という数え方を理解していない会社は損をしています。同じ総会で取締役を2人増やしても、登録免許税は1件分です。3人でも1件分です。逆に、今月1人、来月もう1人と分けて申請すると、2件分かかります。増やす予定が複数あるなら、可能な範囲で同じ総会にまとめるのが合理的です。

納付は収入印紙か領収証書で行います。収入印紙は申請書に付けた貼付台紙に貼り、自分では消印しません。消印は法務局の職員が行います。

これに加えて、司法書士に依頼するなら報酬が乗ります。役員変更の登記は書類の種類が限られているので、事務所ごとの見積もりの差が比較しやすい分野です。

期限は決議の日から2週間

会社法915条1項は、登記されている事項に変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければならないと定めています。役員の氏名は登記事項なので、新しい取締役が就任した時点から数えます。

起算点は、株主総会で選任の決議がされ、本人が就任を承諾した日です。総会の当日に本人が出席して承諾したのであれば、その日から2週間です。

期限を過ぎてから申請しても、そのことだけで却下されるわけではありません。ただし、会社の代表者に対して裁判所から100万円以下の過料が科される可能性があります。法務局が申請書様式のページではっきり案内している内容です。実際の金額は裁判所が事情を見て決めるため、断定はできません。

2週間という期間は、就任する本人から住民票や印鑑証明書を取り寄せる時間を含めると、思っているほど余裕がありません。総会の日程が決まった段階で、本人に必要な書類を伝えておくのが確実です。

申請書には何を書くか

申請書の骨格は決まっています。会社法人等番号、商号のフリガナ、商号、本店を書いたうえで、次の欄を埋めます。

「登記の事由」には「取締役の変更」のように、何が変わったのかを書きます。監査役も同時に選任するなら、その旨も並べます。

「登記すべき事項」は登記簿にそのまま刻まれる部分です。役員に関する事項として、資格、氏名、原因年月日を書きます。原因年月日には就任した日付と「就任」を書きます。代表取締役の場合は住所も記載します。

「登録免許税」には資本金に応じた金額を書きます。

「添付書類」の欄には、実際に添える書類の名称と通数を並べます。法務局の記載例と同じ順番で書いておくと、登記所の側も確認しやすくなります。

末尾には会社の本店と商号、代表取締役の住所と氏名を書き、登記所に届け出た印鑑を押します。連絡先の電話番号を忘れずに書いてください。補正の連絡がそこにかかります。

出し方は3通りある

申請の方法は、通常の書面申請、オンライン申請、QRコード付き書面申請の3つです。QRコード付き書面申請は、申請用総合ソフトで申請書を作って印刷し、窓口か郵送で出す方式で、電子証明書を持っていない会社でも使えます。法務局は役員変更の場面ごとに操作の手引きを公開していて、辞任と就任が同時に起きる場合の手順も載っています。

ひとつ注意が要るのは、申請から手続きが完了するまでの間、原則としてその会社の登記事項証明書と印鑑証明書が発行されないことです。新しい役員の登記が載った証明書を取引先に出す予定があるなら、完了予定日を確認してから逆算してください。

補正が出たときの流れ

書類に不備があると、登記所から補正の連絡が入ります。これは珍しいことではありません。

補正の多くは、その場で直せる程度のものです。申請書の記載の誤り、添付書類の通数の食い違い、押印の漏れ。連絡を受けたら登記所に出向いて訂正するか、指示に従って不足分を追加で提出します。

補正では直しきれない誤りだった場合は、申請を取り下げることになります。取り下げた場合の収入印紙の扱いは登記所の指示に従ってください。いずれにしても、補正や取下げがあると完了の日が後ろにずれます。証明書の提出期限が決まっているなら、そのぶんの余裕を見て申請するべきです。

補正を減らす手が2つあります。ひとつは、法務局が公開している記載例をそのまま下敷きにすること。添付書類の欄の書き方まで含めて真似れば、形式のずれはかなり防げます。もうひとつが、QRコード付き書面申請を使うことです。入力の段階でソフトが形式を確認するので、手書きより誤りが残りにくくなります。

増やした事実は外からどう見えるか

登記が完了すると、新しい役員の氏名が登記簿に載ります。取締役は氏名だけ、代表取締役は氏名と住所です。

登記事項証明書は誰でも取得できます。手数料は登記手数料令で、窓口での交付が1通600円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合が490円、送付を求める場合が520円と決まっています。取引先が新しい役員の就任を確かめたいと思えば、数百円で確認できるということです。

登記には対外的な意味もあります。会社法908条1項は、登記すべき事項は登記の後でなければ善意の第三者に対抗することができないと定めています。裏を返せば、登記しておけば、その事実を相手が知らなかったと言われにくくなるということです。新しい代表取締役が契約を結ぶ場面では、この登記が権限の裏付けになります。

役員を増やしたことを取引先に伝えるなら、登記が完了してから案内するほうが確実です。登記前に名刺だけ配ると、相手が登記簿を確認したときに載っておらず、問い合わせを受けることになります。

完了の確認と、書類の保管

申請を出しても、法務局から完了の通知は届きません。補正がなければ、登記完了予定日を過ぎた時点で静かに終わっています。

確認は、登記事項証明書を取るか、登記情報提供サービスで画面上の記載を見るかのどちらかです。前者は証明書として使えて、後者は費用を抑えられます。用途で使い分けてください。

完了後は、株主総会議事録の原本、株主リストの控え、就任承諾書の原本、申請書の控え、完了後の登記事項証明書を同じ場所にまとめて保管します。次に任期が来たとき、重任の登記の起点になるのがこの記録です。

特に押さえておきたいのが、就任の日付です。任期は就任した日から数えるので、ここが分からなくなると、いつ重任の登記をすればいいのかが分からなくなります。役員ごとに就任日と任期の満了予定を一覧にして、総会の資料と一緒に更新していくのが、いちばん手堅い運用です。

つまずきやすい5つの点

実務で補正になるのは、難しい論点ではなく単純なずれです。

ひとつ、住所の表記が就任承諾書と本人確認証明書でずれている。丁目や番地の書き方を住民票に合わせます。

ふたつ、住民票に個人番号が印字されている。取り直しになります。

みっつ、通知カードを本人確認証明書として出してしまう。使えません。

よっつ、株主リストの議決権割合が合っていない。上位10名か3分の2に達するまでの株主か、どちらか少ないほうという数え方を間違えると作り直しです。

いつつ、非常勤だから登記は要らないと思い込む。常勤か非常勤かという区別は会社法にはなく、実務上の呼び方にすぎません。取締役として選任されたのであれば、勤務の実態にかかわらず登記が必要です。社外から迎える顧問的な立場の人を取締役にする場合も同じです。

これに関連して、肩書きの扱いも整理しておきます。会社が社内で使っている「執行役員」「本部長」「シニアアドバイザー」といった呼び名は、会社法上の役員とは別物です。社内の呼称を変えただけなら登記は要りません。反対に、株主総会で取締役として選任したのであれば、社内でどんな呼び名を使っていても登記が必要です。判断の基準は呼び名ではなく、株主総会で何を決議したかです。

印鑑証明書と本人確認証明書には、有効期限のような扱いの違いもあります。印鑑証明書は作成後3か月以内のものを求められるのが一般的ですが、取り扱いは登記所に確認してください。就任する本人が遠方にいる場合、書類の郵送に数日かかることも計算に入れておきます。2週間という期限は、この往復を含めて消化していきます。

辞任や任期満了と重なる場合のまとめ方

実際の現場では、「増やす」だけで終わらないことがよくあります。誰かが辞めて、その穴を埋めるために新しい人を入れる。任期が来た役員が再任されるのと同じ総会で、新任の取締役も選ばれる。こういう組み合わせのほうが、むしろ普通です。

このとき覚えておきたいのが、法務局の記載例にある注記です。役員の辞任や死亡と、就任の登記は、合わせて1件として申請することができるとされています。つまり、同じ申請書のなかに「令和○年○月○日辞任」と「令和○年○月○日就任」を並べて書けるということです。登録免許税も1件分で済みます。

添付書類は、それぞれの事由に応じたものを全部そろえます。辞任なら辞任届、死亡なら死亡届または法定相続情報一覧図の写し、就任なら就任承諾書と本人確認証明書。登記所に印鑑を届け出ている取締役が辞任する場合は、辞任届に登記所の届出印か市区町村に登録した実印を押し、実印を押したときはその印鑑証明書を添えます。

再任される役員については、本人確認証明書も印鑑証明書も不要です。商業登記規則61条の4項と7項が、いずれも「再任を除く」と明記しているためです。同じ総会で新任と再任が混ざる場合、誰に何が必要なのかを人ごとに表にしてから書類を集めると、漏れがなくなります。

増やす前に定款を見る

書類の話の前に、そもそも増やしていいのかを定款で確認してください。

取締役の員数を「3名以内」のように定めている会社は珍しくありません。上限を超えて選任すると、定款違反の決議になります。増やす前に定款を変更する必要があり、定款変更は株主総会の特別決議です。総会の議案を作る段階で気づいていないと、当日に議事が組み替えられなくなります。

取締役会を設置しているかどうかも確認します。取締役会設置会社では取締役は3人以上必要です。反対に、取締役会を置いていない会社では取締役は1人でも構いません。この違いが、代表取締役の選び方と、必要な書類の中身を決めます。

任期も見ておきます。会社法332条1項は、取締役の任期を選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと定めています。公開会社でない株式会社は、定款で最長10年まで伸ばせます。途中で加わった役員の任期をどう揃えるかは、定款の定め方によって変わります。

合同会社で人を増やすときは、書類の名前から変わる

合同会社には取締役がいません。業務を担うのは業務執行社員で、対外的に会社を代表するのが代表社員です。呼び名が違うだけでなく、法務局に出す書類の組み合わせも入れ替わります。

法務局の記載例では、登記の事由を「業務執行社員の退社及び加入」と書きます。加入だけなら「業務執行社員の加入」です。登記すべき事項には「社員に関する事項」として資格、氏名、原因年月日を書き、原因年月日には加入した日と「加入」を書きます。

添付書類の骨格は1通だけです。

総社員の同意書 1通 出典: houmukyoku.moj.go.jp

株主総会議事録も株主リストも出てきません。株式会社でいちばん手間のかかる株主リストが不要になるぶん、書類の数だけを見れば合同会社のほうが軽く済みます。

ただし、株式会社にはない作業が2つ入ります。ひとつは定款です。合同会社は社員の氏名と住所、出資の目的と価額が定款に書かれているため、人が増えるとその条項を書き直すことになります。法務局が示している同意書の記載例は、加入への同意と、定款の該当条項の書き換えを、同じ書面のなかに並べる形になっています。同意書を作る前に定款の条文番号を確かめておかないと、どこを直すのかが決まりません。

もうひとつが代表社員の選び方です。定款の定めに基づく互選で、加入する業務執行社員を代表社員に定めた場合は、定款、互選を証する書面、就任承諾書を添えます。加入する社員が法人であるときは、その法人の登記事項証明書に加えて、職務執行者の選任に関する書面と職務執行者の就任承諾書が必要です。この登記事項証明書は、申請書に会社法人等番号を書くことで添付を省略できます。

登録免許税は株式会社と同じ数え方で、申請1件につき1万円、資本金の額が1億円を超える会社は3万円です。

費用を最後まで足すと、いくらになるか

登録免許税だけを見て予算を組むと、細かい実費が抜けます。資本金1,000万円の取締役会を置いていない会社が、取締役を1人増やす場合で並べます。

登録免許税が1万円。ここがいちばん大きい部分です。

本人確認証明書に使う住民票の写しが1通。手数料は市区町村が条例で決めていて、300円前後の自治体が多くあります。マイナンバーカードを使ったコンビニ交付のほうが安く設定されている自治体もあります。

登記が終わったあとに取る登記事項証明書が1通600円。取引先に就任を示す必要がないのであれば、登記情報提供サービスの画面で確認するだけに留めて、この600円を省く選択もできます。

郵送で申請するなら書留の料金が往復で数百円。窓口に出向けばかかりません。

自分で申請する前提だと、合計は1万1千円前後に収まります。役員を1人増やす手続きとしては、実費はかなり小さいほうです。

ここに上乗せされる可能性があるものが3つあります。代表取締役を新しく置くなら印鑑証明書が人数分必要で、1通300円前後が加わります。あわせて会社の印鑑を届け出るなら印鑑届書を出しますが、この届出そのものに手数料はかかりません。司法書士に依頼するなら報酬が乗ります。報酬は事務所ごとの差が大きいので、書類の種類が限られているこの登記では、複数の見積もりを並べて比べる意味があります。

逆に、同じ総会で2人を増やしても合計はほとんど動きません。登録免許税は1件分の1万円のままで、増えるのは住民票の写し1通分だけです。増員の予定が年内に2回あるなら、1回にまとめるだけで1万円が浮く計算になります。

総会の日から完了までを、日付順に置く

2週間という期限は、書類を集める時間を含んだまま消えていきます。総会を月初に開く前提で、日付の順に並べます。

総会の3週間前。増える本人に、住民票の写しと印鑑証明書のどちらが必要かを伝えます。あわせて定款で員数の上限と任期を確認します。上限を超えるなら定款変更の議案を同じ総会に載せる必要があるため、この時点で気づいていないと間に合いません。

総会の1週間前。招集の通知を出します。株主全員の同意があれば省略できます。株主リストの下敷きになる株主名簿を、この時期に現状へ合わせておきます。

総会の当日。選任を決議し、本人がその場で就任を承諾します。この日が2週間の起算点です。議事録には、出席した議決権の数と賛成した議決権の数を書き込みます。

総会の翌日から3日ほど。就任承諾書と本人確認証明書を受け取り、申請書と株主リストを作ります。

総会から1週間前後。法務局に申請します。ここから完了までの間、その会社の登記事項証明書と印鑑証明書は原則として発行されません。証明書を取引先に出す予定があるなら、この空白の期間を先に伝えておきます。

申請から1週間前後。登記完了予定日を過ぎます。完了の通知は届かないので、証明書を取るか、登記情報提供サービスで記載を確かめます。

この並べ方でいくと、総会から登記の完了までは2週間から3週間です。就任を取引先へ案内する日は、登記完了予定日より後ろに置いてください。

役員を増やすという選択の、その手前

役員を1人増やす登記の実費は、資本金1億円以下なら1万円です。手続きとしては軽い部類に入ります。だからこそ、判断のほうに重心を置くべきだというのが、この市場を20年運営してきた立場から見た実感です。

運営者として見てきた限り、中小企業が「人を増やしたい」と考えるとき、役員にするのが正解である場面は思ったほど多くありません。役員は会社と委任の関係に立ち、任期があり、登記簿に名前が載り、退任させるには決議が要ります。一方、特定の領域の力を借りたいだけなら、業務委託で外部の専門家に入ってもらうほうが、入口も出口も軽く済みます。実際、経理や広報や採用の実務を、社内の役職ではなく外部の担い手に定型化して任せる会社は、この数年で目に見えて増えました。

中間に手数料が乗らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多く頼め、受け手は手取りが厚くなります。長く続く関係ほど、単発の作業ではなく「この人に任せると楽だ」という状態づくりに時間が使われています。役員にするか、外部に頼むかは、その関係をどれくらいの期間で考えるかの問題です。

外部に任せる場合の相場観を掴むなら、ソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場が公的統計をもとにした水準を示しています。どんな業務が外に出ているかはAIコンサル・業務活用支援のお仕事とAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に整理があります。社内の書類の型を底上げしたいならビジネス文書検定が学習の順番を決める目安になります。

役員追加登記必要書類の答えは5つです。ただし、その5つを揃える前に、定款の員数と任期を確認する。この順番を守れば、総会の当日に議案を組み直す羽目にはなりません。

よくある質問

Q. 役員を1人増やすときの必要書類は何ですか?

株主総会議事録、株主リスト、就任承諾書、本人確認証明書、そして代理人に委任する場合の委任状が基本です。取締役会を設置していない会社で新しく取締役が就任する場合は、本人確認証明書ではなく、実印を押した就任承諾書と印鑑証明書が必要になります。代表取締役を新たに置くなら取締役会議事録や互選書が加わります。

Q. 費用はいくらかかりますか?

登録免許税が申請1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社は1万円です。同じ株主総会で複数人を選任しても、まとめて申請すれば1件分で済みます。月をまたいで別々に申請すると件数分かかるので、増員の予定が重なるならまとめるほうが安くなります。司法書士に依頼する場合は報酬が別途かかります。

Q. 本人確認証明書として運転免許証のコピーは使えますか?

使えます。ただし裏面もコピーして、本人が原本と相違がない旨を記載して記名する必要があります。マイナンバーカードは個人番号が印字されていない表面のみをコピーし、同様に原本証明を付けます。個人番号の通知カードは本人確認証明書として使えません。住民票を使う場合は個人番号が記載されていないものを取得してください。

Q. 非常勤の役員でも登記は必要ですか?

必要です。常勤と非常勤という区別は会社法にあるものではなく、実務上の呼び方にすぎません。株主総会で取締役として選任された以上、勤務の実態にかかわらず氏名が登記されます。社外から専門家を迎える場合も同じで、就任の日から2週間以内に登記を申請します。

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年2月18日最終更新:2026年10月10日
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