役員が変わったときの登記|2週間以内に出す書類一式

丸山 桃子
丸山 桃子
役員が変わったときの登記|2週間以内に出す書類一式

この記事のポイント

  • 取締役や監査役が入れ替わったときに法務局へ届け出る手続きのことです
  • 登録免許税1万円か3万円かの分かれ目
  • 放置したときの過料まで

会社を作ってから何年か経ったある日、法務局から封筒が届く。あるいは、共同経営者が抜けることになって「登記っているんだっけ」と調べ始める。役員変更登記とは、会社の取締役や監査役といった役員が入れ替わったときに、その事実を法務局に届け出る手続きのことです。厄介なのは、期限が2週間と短いこと、そして「誰も辞めていないのに登記が必要になる場面」があることです。この記事では、いつ何を出すのか、いくらかかるのか、出し忘れると何が起きるのかを、法務局と法務省が公開している資料を確かめながら順に整理します。

期限が2週間というのは、法律にそう書いてある

まず押さえるべきは期限です。会社法915条1項は、登記されている事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければならない、と定めています。役員の氏名は登記される事項なので、ここに含まれます。

会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

数え始める日は、変更が起きた日です。株主総会で新しい取締役を選んで本人がその場で引き受けたなら総会の日、辞任なら辞任届が会社に届いた日、亡くなった場合はその日が起点になります。土日祝日は止まってくれません。総会を開いてから書類を集めて、印鑑証明書を取りに市役所へ行って、となると2週間はあっという間です。

ここで多くの人が誤解するのが、「期限を過ぎたら登記できなくなるのでは」という点です。そうではありません。2週間を過ぎても登記そのものは受け付けられ、登記簿は書き換わります。ただし、期限を守らなかったという事実は消えず、後述する過料の対象になります。つまり「遅れたからもう出さない」が最悪の選択で、気づいた時点ですぐ出すのが正解です。

なお、この2週間は本店の所在地を管轄する法務局に対するものです。支店がある会社でも、役員の変更については本店の管轄だけで完結します。

誰も辞めていないのに登記が必要になる場面

役員変更登記でいちばん見落とされるのが、重任という場面です。重任とは、任期が切れた役員が同じ総会でもう一度選ばれて、そのまま続けることを指します。顔ぶれは1人も変わっていません。それでも登記は必要です。

理由は単純で、登記簿には役員の就任年月日が記録されているからです。任期が満了すればいったん役員の地位は終わり、選び直しによって新しい任期が始まります。日付が変わる以上、書き換えの届け出が要るわけです。ここを知らずに何年も放置してしまう会社が、毎年一定数出ます。

株式会社の取締役の任期は、会社法332条1項で「選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と決まっています。言い換えると、選ばれてからおよそ2年後の定時株主総会までです。監査役は会社法336条1項で、同じ言い回しの4年です。

ただし、株式の譲渡に会社の承認が要る、いわゆる非公開会社であれば、定款で任期を最長10年まで伸ばせます。ひとりで作った会社の多くはこの形を選んでいます。10年に伸ばせば登記の手間は減りますが、その分、自分がいつ登記しなければならないかを忘れやすくなります。会社を作ったときに任期を何年にしたかは、手元の定款を開けばすぐ分かります。

任期の数え方でよくある間違いが、「2年ぴったり」と考えてしまうことです。基準は暦の2年ではなく、事業年度と定時株主総会です。3月決算の会社が2026年6月の総会で取締役を選んだ場合、2028年3月期の事業年度に関する定時株主総会、つまり2028年6月ごろの総会の終結時に任期が切れます。日付ではなく「何回目の定時総会か」で数えると間違えにくくなります。

場面ごとに、出す書類の中身が変わる

役員変更と一口に言っても、中身によって添える書類が変わります。法務局は場面ごとに申請書の様式と記載例を分けて公開しており、株式会社の役員変更だけで住所移転、氏名変更、役員全員の重任、辞任と就任など複数の様式が並んでいます。これらの様式は2026年8月14日付けで更新されたものが最新です。

辞任した取締役の代わりに新しい取締役が就任する場合、法務局の記載例が挙げている添付書類は次のとおりです。辞任届、臨時株主総会議事録、株主リスト、就任承諾書、印鑑証明書、本人確認証明書、そして代理人に頼むなら委任状。死亡による退任であれば辞任届の代わりに死亡届または法定相続情報一覧図の写しになります。

役員全員が重任するだけなら、辞任届も印鑑証明書も本人確認証明書も要りません。必要なのは株主総会議事録、株主リスト、取締役会設置会社なら取締役会議事録、就任承諾書、委任状です。重任は「新しく就任する」わけではないので、本人確認の書類が省けるのです。

このうち株主リストは、2016年10月1日以降の申請から必要になった比較的新しい書類です。株主総会の決議を必要とする登記では、議決権の多い上位10名か、議決権割合が3分の2に達するまでの株主か、人数の少ないほうについて、氏名、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合を書き、代表者が証明します。役員の選任は株主総会の決議事項なので、ほぼ必ず付くことになります。

もうひとつ、本人確認証明書も見落とされがちです。法務省は、取締役や監査役が就任する登記では、市区町村長が作成した印鑑証明書を添付しない場合に本人確認証明書が必要だと案内しています。使えるのは住民票記載事項証明書、戸籍の附票、運転免許証のコピー、マイナンバーカードの表面のコピーなどです。コピーを使う場合は裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない」と書いて記名する必要があります。なお、再任の場合は対象外です。

設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任に関する登記の申請書には、株主総会の議事録又は就任承諾書に記載された取締役等の氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書を添付する必要があります。 出典: moj.go.jp

印鑑証明書が要るのは、取締役会を置いていない会社で新しく就任する取締役、そして取締役会設置会社で新しく就任する代表取締役です。あわせて、法務局に印鑑を届け出ている取締役が辞任する場合は、辞任届に法務局への届出印か市区町村に登録した実印を押す必要があります。実印を押したときは、その印鑑証明書も添えます。届出印を押したなら印鑑証明書は要りません。

申請書に書くのは6つの欄だけ

書類の種類が多いので身構えてしまいますが、申請書そのものはシンプルです。法務局の記載例を見ると、書く欄は会社法人等番号、商号とそのフリガナ、本店、登記の事由、登記すべき事項、登録免許税、添付書類、申請年月日と申請人、提出先の法務局名、という並びになっています。

つまずきやすいのは「登記すべき事項」です。ここは決まった書式があり、記載例では次のように書きます。

「役員に関する事項」「資格」取締役「氏名」(氏名)「原因年月日」(年月日)辞任、と1人分を4行で書き、続けて就任した人を同じ形式で書く。カギ括弧の位置まで決まっているので、記載例をそのまま真似るのが確実です。代表取締役については、氏名だけでなく住所も書きます。

辞任と就任は、まとめて1件の申請にできます。記載例にも「役員の辞任(又は死亡)及び就任の登記は合わせて1件として申請することができます」という注記があります。これは費用に直結する話で、後述する登録免許税が1件分で済みます。

会社法人等番号は、登記事項証明書の右上あたりに書かれている12桁の番号です。分からなければ空欄でも受け付けてもらえますが、書いたほうが処理が早くなります。商号のフリガナは、株式会社の部分を除いて片仮名で左詰め、空白は削除して書きます。このフリガナは国税庁の法人番号公表サイトに載るもので、登記事項証明書には表示されません。

登録免許税は1万円か3万円か、分かれ目は資本金

費用の中心は登録免許税です。これは登記を申請するときに国に納める税金で、収入印紙か領収証書で納めます。金額は登録免許税法の別表第一に書かれていて、役員に関する事項の変更の登記は申請1件につき3万円、ただし資本金の額が1億円以下の会社は1万円と定められています。

中小企業や個人が作った会社のほとんどは資本金1億円以下なので、実際には1万円で済みます。資本金1円で作った会社も、9,000万円の会社も、同じ1万円です。

大事なのは「申請1件につき」という数え方です。取締役が1人辞めて1人就任し、ついでに監査役も入れ替わったとしても、1枚の申請書にまとめれば1万円で済みます。日をまたいで別々に申請すれば、そのたびに1万円ずつかかります。役員の入れ替わりが近い時期に重なりそうなら、まとめて申請できないかを先に考える価値があります。

ただし、同じ申請書に書いても税金の枠が違う登記は別計算です。たとえば取締役会を廃止する登記は、役員の変更とは別の区分で3万円がかかります。役員変更と一緒に本店移転をする場合も、本店移転分の3万円が別に必要です。

登録免許税のほかに実際に出ていくお金は、印鑑証明書や住民票の取得費、郵送で出すなら郵便代、法務局に足を運ぶなら交通費です。市区町村が出す証明書の手数料は自治体ごとに決められているので、住んでいる市区町村のページで確認してください。司法書士に頼む場合は、これに報酬が上乗せされます。

出してから終わるまでにかかる日数は、法務局で全然違う

申請を出せばその日に登記簿が書き換わる、と思っている人は多いのですが、実際には審査に時間がかかります。そしてその日数は、どこの法務局に出すかで驚くほど違います。

各法務局は「登記完了予定日」を自分のサイトで公開しています。2026年9月18日時点で東京法務局が公開している表を見ると、本局の商業・法人登記は9月18日に申請した分の完了予定日が10月27日でした。39日後です。

一方、同じ日の大阪法務局の表では、本局の法人登記部門は9月18日申請分の完了予定日が10月2日。14日後です。同じ国の同じ手続きで、待ち時間が2.8倍違う計算になります。東京の本局は東京23区すべての商業登記を引き受けているため、件数が集中しているのだと考えられます。

この差は実務に効きます。銀行口座の名義変更、許認可の変更届、取引先への登記事項証明書の提出など、登記が終わらないと動けない手続きがある場合、東京の会社は1か月以上先を見て段取りする必要があります。急ぎの事情があるなら、申請の前に管轄の法務局のサイトで完了予定日を見ておくとよいでしょう。東京法務局は登記完了予定日のページで、大阪法務局も同様のページで、申請日ごとの予定を掲示しています。

なお、申請に不備があるとここからさらに延びます。法務局から補正の連絡が来て、直して出し直す分の日数が上乗せされるからです。郵送で申請した場合は、書類が法務局に到着した日が申請日になります。

出し忘れると、過料とみなし解散が待っている

期限を過ぎたときのリスクは2段階あります。

1段階目は過料です。会社法976条1号は、この法律による登記を怠ったときは100万円以下の過料に処する、と定めています。過料は刑罰ではなく行政上のペナルティですが、支払う相手は会社ではなく代表者個人です。裁判所から通知が届き、金額は遅れた期間や事情によって決まります。数万円で済むこともあれば、長期の放置ではもっと重くなります。

2段階目がみなし解散です。会社法472条は、株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過した会社を休眠会社と呼び、法務大臣の官報公告から2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしないときは、その期間の満了時に解散したものとみなす、と定めています。

これは毎年秋に実施されている実際の作業です。直近で公表されている令和7年度の整理作業では、2025年10月10日に官報公告が行われ、同日付けで管轄の法務局から通知書が発送されました。期限は同年12月10日で、届出も登記申請もしなかった会社は12月11日付けで解散したものとみなされ、登記官が職権で解散の登記をしています。

令和7年12月10日(水)までに、「まだ事業を廃止していない」旨の届出がなく、かつ、必要な登記申請もしなかった休眠会社・休眠一般法人については、令和7年12月11日(木)付けで解散したものとみなされ、登記官が職権で解散の登記をします。 出典: moj.go.jp

怖いのは、任期を10年に設定した非公開会社が、重任の登記を忘れたまま12年経つと、この対象にそのまま入ってしまう点です。事業は普通に続いているのに、登記簿の上では解散した会社になる。取引先が登記事項証明書を取ったときに「解散」と出れば、信用の問題として跳ね返ります。

しかも法務省は、届出や登記をした場合であっても、本来申請すべき時期に登記を怠っていた事実は解消されず、裁判所から100万円以下の過料に処せられると明記しています。届出でみなし解散は避けられても、過料からは逃げられないということです。

合同会社と一般社団法人では、話が少し変わる

ここまでは株式会社の話です。会社の形が違えば、登記の中身も変わります。

合同会社の場合、役員にあたるのは業務執行社員と代表社員です。法務局が用意している様式も「合同会社変更登記申請書(業務執行社員の退社及び加入)」という名前になっていて、株式会社のような重任の様式はありません。理由は、合同会社の業務執行社員には任期という考え方がないからです。したがって、誰も抜けず誰も入らないなら、何年経っても登記は発生しません。ひとりで会社を作る人が合同会社を選ぶ理由のひとつが、この事務の軽さです。

ただし登録免許税は同じ扱いになります。登録免許税法の別表で役員の変更として括られている区分には「社員」も含まれており、合同会社の業務執行社員の変更も資本金1億円以下であれば1万円です。また、社員が退社して持分が動く場合は、資本金の額が変わることがあります。資本金の変更は別の登記になり、別の税金がかかります。

一般社団法人は、株式会社よりも期限管理が厳しい面があります。役員にあたるのは理事と監事で、法務局の様式も「役員全員が重任した場合」と「辞任等により新たな役員が就任した場合」に分かれています。理事には任期があるので、株式会社と同じく重任の登記が定期的に発生します。

さらに注意すべきは、休眠法人として整理される期間です。株式会社が最後の登記から12年であるのに対し、一般社団法人と一般財団法人は5年です。理事の任期を考えれば5年放置は起きにくいはずですが、活動が細っている法人ほど登記が後回しになりやすく、毎年の整理作業で対象になっています。

補正で止まりやすいのは、だいたい同じところ

自分で申請したときに法務局から連絡が来る理由は、いくつかの型に収まります。

ひとつめは、日付の食い違いです。議事録に書かれた決議の日と、就任承諾書の日付と、申請書の「原因年月日」が揃っていない。就任承諾書の日付が総会の日より前になっている、というのもよくある指摘です。書類を後から作るとこうなりがちなので、作った段階で3つの日付を並べて確認してください。

ふたつめは、印鑑証明書の不足です。取締役会を置いていない会社で新しく取締役になる人、取締役会設置会社で新しく代表取締役になる人には印鑑証明書が要ります。ここを「本人確認証明書で足りるだろう」と判断して運転免許証のコピーだけを付けると、差し替えになります。

みっつめは、本人確認証明書のコピーの作り方です。運転免許証を使うなら裏面もコピーし、本人が「原本と相違がない」と書いて記名する必要があります。表面だけ、あるいは記名なしで出すと受け付けられません。マイナンバーカードを使う場合は表面だけをコピーし、個人番号が写る裏面はコピーしません。住民票を使う場合も、個人番号が記載されていないものを取ります。

よっつめは、株主リストの計算です。議決権割合が3分の2に達するまでの株主を書く場合、割合の多い順に足していく必要があります。人数が多い会社ほど、ここで数え違いが起きます。上位10名のほうが人数が少ないなら、そちらで構いません。

いつつめは、押印です。申請書には法務局に届け出ている印鑑を押します。代理人が申請するときは代理人の認印で足り、その場合は代表取締役の押印は不要です。逆に、代理人に頼まないのに代理人欄を残したままにしている、という書き損じも起こります。

これらはどれも、法務局の記載例の注記に書かれている内容です。記載例のPDFには本文の横に細かい注が入っていて、つまずきやすい点がほぼ網羅されています。提出前にもう一度、注記だけを読み返す時間を取ると、往復が減ります。

登記が終わったあとに残っている手続き

法務局の登記が終われば全部終わり、ではありません。代表取締役が変わった場合は、変更後の登記事項証明書を持って、いくつかの窓口を回る必要があります。

銀行の口座は、代表者の変更を届け出ないと振込や払い出しで止まることがあります。取引先との契約書に代表者名を記載している場合は、覚書などで更新しておくと後の確認が楽になります。許認可が必要な業種であれば、所管の官庁への変更届が別途必要です。建設業、宅地建物取引業、産業廃棄物、古物商など、それぞれに期限が定められています。

社会保険の手続きも忘れがちです。健康保険と厚生年金の事業所については、代表者が変わったときに届け出が要ります。労働保険についても同様です。法務局の登記だけ済ませて、これらを何年も放置しているケースは実際に多く、後から調査が入って慌てることになります。

これらの窓口を回るには、新しい内容が反映された登記事項証明書が要ります。手数料は登記手数料令で決まっていて、法務局の窓口で書面請求する場合は1通600円です。パソコンから請求して窓口で受け取るなら490円、郵送してもらうなら520円と安くなります。会社の印鑑証明書は窓口で1件500円、オンラインで請求すれば420円、送付を頼むなら450円です。何通も必要になる場面なので、枚数が多いならオンライン請求のほうが安く済みます。

新しい代表取締役が法務局への届出印を新しくする場合は、印鑑届書も一緒に出します。法務局は印鑑届書の記載例と様式を会社の種類ごとに公開していて、株式会社用の様式はPDFとExcelの両方が配られています。

自分でやるか、頼むか、道具を使うか

役員変更登記は、専門家でなければできない手続きではありません。法務局が申請書の様式と記載例を無料で公開しているのは、自分で申請する人を想定しているからです。重任だけ、あるいは1人の辞任と就任だけといった単純な変更であれば、記載例のとおりに埋めれば十分に作れます。

オンライン申請という選択肢もあります。登記・供託オンライン申請システムを使えば法務局に行かずに申請できますが、申請書情報にも添付書面情報にも電子署名を付ける必要があり、そのための電子証明書を先に取得しなければなりません。利用時間は平日の8時30分から23時まで、休日は8時30分から18時までです。ただし法務局での受付時間は平日の8時30分から17時15分までなので、それ以降に送信した分は翌営業日の受付になります。

中間的な方法として、法務局はQRコード付き書面申請も案内しています。申請書の作成はパソコンで行い、印刷して出す方式です。電子証明書は不要で、手書きより間違いが減ります。役員全員の重任、辞任と就任のそれぞれについて操作手引書が用意されています。

判断の目安はこうです。取締役会もなく、役員が数人、変更の内容が重任か単純な交代だけなら、自分でやって問題ありません。一方で、定款の内容が複雑、種類株式がある、役員変更と同時に機関設計を変える、株主が多くて株主リストの計算が面倒、といった場合は司法書士に頼んだほうが安全です。補正で往復する時間のほうが高くつきます。

住所や氏名が変わっただけのときはどうなるか

役員の入れ替えではなく、いまの役員の住所や氏名が変わることもあります。引っ越し、結婚、離婚。このときに登記が必要かどうかは、その人の何が登記簿に載っているかで決まります。

登記簿に載るのは、取締役については氏名だけです。住所は載りません。代表取締役については氏名と住所の両方が載ります。だから、取締役が引っ越しても登記は発生せず、代表取締役が引っ越すと住所の変更登記が必要になります。監査役も氏名だけなので、住所が変わっただけでは登記は要りません。

氏名が変わった場合は、取締役でも代表取締役でも変更登記が必要です。どちらも氏名が登記事項だからです。期限は役員の変更と同じで、変更が生じてから2週間以内。登録免許税も同じ区分なので、資本金1億円以下の会社なら1万円です。同じ人について住所と氏名が同時に変わったときは、1件の申請にまとめられます。

結婚などで氏が変わる人には、もう1つ選べる道があります。法務省は、役員または清算人について、その旧氏を記録するよう申し出ることができると案内しています。申し出れば、登記簿の氏名に旧姓が併記されます。取引先に旧姓で知られている、資格や論文が旧姓で残っている、といった事情がある人には効きます。申し出るのは登記の申請と同時で、別の手数料はかかりません。

申し出をしない場合、登記簿には新しい氏だけが載ります。あとから旧氏を入れたくなったときも申し出はできますが、そのときは旧氏を証明する書面が必要になります。氏が変わるタイミングで一緒に済ませたほうが、手間は少なくなります。

登記した内容に誤りが見つかったとき

申請が通ってから間違いに気づくこともあります。就任の日付が1日ずれている、氏名の漢字が違う、住所の番地が抜けている。

会社の側の書き間違いが原因なら、更正の登記を申請します。登録免許税は申請1件につき2万円です。役員変更そのものが1万円で済む会社にとっては、元の登記より高い出費になります。

法務局の側の記録の誤りであれば、登記官が職権で直すので会社の負担はありません。どちらが原因かは窓口で判断するので、気づいたらまず管轄の法務局に電話をして、申請書の控えを見ながら相談します。

誤りを減らす方法は単純です。提出の直前に、議事録と就任承諾書と申請書の3枚に出てくる氏名、住所、日付を並べ、本人確認証明書の表記と1文字ずつ照合する。丁目や番地の書き方、ハイフンの有無、旧字体の使い方は、目で追わないと差に気づきません。この10分が、2万円と数週間の遅れを防ぎます。

登記が終わったあとの確認も同じ要領です。新しい登記事項証明書を1通取り、役員の欄に並んだ氏名と就任の年月日を、手元の議事録と見比べる。ここで差が見つかれば、まだ関係先に古い内容を伝える前なので、直すだけで済みます。銀行や取引先に証明書を配ってから誤りに気づくと、配った先すべてに差し替えを頼むことになります。

法人化した直後の個人事業主が、いちばん足を取られるところ

フリーランスや副業から法人化する人が増えた結果、ひとりだけの株式会社、あるいは配偶者と2人だけの会社が大量に生まれています。運営者として20年この市場を見てきた立場から言えば、そうした会社がつまずくのは事業ではなく、こういう定期的な事務のほうです。

理由ははっきりしています。ひとり会社には、期限を教えてくれる人がいないからです。会社員なら総務が動きます。税理士と顧問契約していれば決算の時期に声がかかることもありますが、登記は税理士の担当外なので話題に上らないことも多い。結果として、定款で任期を10年にした会社が、10年後に何も起きないまま11年目を迎えます。

対策は仕組みにするしかありません。会社を作った日、任期を何年にしたか、次の重任がいつかをカレンダーに登録しておく。定時株主総会の準備リストに「役員の任期を確認する」の1行を入れておく。これだけで防げます。

書類仕事そのものを外に出す手もあります。在宅で働く人を探せるマッチングの場では、議事録や申請書の下書きといった事務代行の依頼が日常的に動いています。案件の探し方や単価の考え方は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっていて、文章と書式を扱う仕事の相場感がつかめます。受け手側の視点で書かれていますが、頼む側が予算を立てるときの目安としても使えます。

こうした事務を誰かに任せるとき、仲介の手数料が何割も乗る場ではなく、手数料0%で直接やり取りできる場を選ぶと、同じ予算でも頼める量が増えます。受け手の側も手取りが厚くなるので、次も引き受けてもらいやすい。長く続いている依頼関係を見ていると、単発の作業を安く買い叩くのではなく「この人に任せると楽だ」という関係を作った側が結局いちばん得をしています。

書式を整える仕事に必要な力を測る物差しとしては、ビジネス文書検定のような資格ガイドが参考になります。文書の型を知っている人かどうかは、議事録や申請書の下書きを頼むときに効いてきます。社内の体制づくりという観点では、業務の切り出し方を整理したAIコンサル・業務活用支援のお仕事も、どこまで外に出せるかを考える材料になります。

最後に、この手続きで唯一の情報源にすべきなのは法務局です。申請書の様式と記載例は商業・法人登記の申請書様式のページにすべて並んでおり、WordとPDFの両方が無料で落とせます。ネット上の解説記事より、この記載例そのものを開いて真似るほうが速くて確実です。

よくある質問

Q. 役員が1人も辞めていなくても登記は必要ですか?

必要です。任期が満了して同じ人を選び直す重任も、登記事項である就任年月日が変わるため届け出が要ります。株式会社の取締役の任期は原則2年、非公開会社なら定款で最長10年まで伸ばせます。顔ぶれが変わらないため見落とされやすく、放置すると過料の対象になります。

Q. 役員変更登記の費用はいくらかかりますか?

登録免許税が申請1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社は1万円です。中小企業のほとんどは1万円で済みます。辞任と就任をまとめて1枚の申請書にすれば1件分で足ります。ほかに印鑑証明書などの取得費と郵送費がかかり、司法書士に頼む場合は報酬が上乗せされます。

Q. 期限の2週間を過ぎてしまったらどうすればよいですか?

気づいた時点ですぐ申請してください。期限を過ぎても登記自体は受け付けられ、登記簿は書き換わります。ただし登記を怠った事実は残り、会社法976条により代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。放置を続けると最後の登記から12年でみなし解散の対象になります。

Q. 自分で申請できますか?司法書士に頼むべきですか?

役員全員の重任や単純な交代であれば、法務局が公開している記載例をそのまま使って自分で申請できます。定款の内容が複雑な場合、種類株式がある場合、役員変更と同時に機関設計を変える場合は、補正で往復する時間を考えると司法書士に頼んだほうが確実です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月30日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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