移動販売を始めるには何が要るか、許可と車の準備の順番


この記事のポイント
- ✓移動販売を始めるには何が要るかを
- ✓保健所の営業許可と届出
- ✓キッチンカーの給排水タンクの基準
移動販売を始めるには何が要るのかを調べると、車の価格、売れるメニュー、許可の名前が一度に出てきて、どこから手をつければよいのか分からなくなります。先に結論を書くと、移動販売の準備でいちばん大切なのは「順番」です。売るものと売る場所を決め、保健所に相談し、そのあとで車を用意する。この順番を守るだけで、買った車が許可の基準に合わない、許可は取れたのに売る場所がない、といった典型的なつまずきの多くを避けられます。この記事では、移動販売を始めるまでに必要なものを、厚生労働省、国税庁、警視庁の公表資料で確かめた内容に沿って、準備の順番どおりに整理します。
移動販売を始めるには、まず「何を・どこで・どう売るか」を決める
移動販売という言葉が指す商売は幅広く、調理設備を積んだキッチンカーで料理を出す形もあれば、軽トラックやワゴン車に商品を積んで住宅地を回る形、イベント会場でテントを張って売る形もあります。必要な許可も車の装備も、この違いで大きく変わります。最初に決めるのは次の3つです。
何を売るか
その場で調理した料理を出すのか、どこかで作った食品を運んで売るのか、包装された常温の食品だけを売るのか、それとも食品以外の雑貨や古着を売るのかで、保健所の許可が要るかどうか、どの種類の許可かが決まります。同じパンの移動販売でも、自分で焼いたパンを売るのか、仕入れた包装済みのパンを売るのかで手続きが変わります。
どこで売るか
商業施設やオフィスビルの敷地、イベント会場、住宅地の巡回、公道の路肩など、売る場所によって必要な許可と交渉の相手が変わります。後で詳しく触れますが、公道に車を止めて店を開く形は、新しく始める人にはほとんど現実的ではありません。多くの事業者は、土地の持ち主と契約した私有地で売っています。
どう売るか
調理設備を積んだキッチンカーにするのか、保冷庫と陳列棚を積んだ販売車にするのか、台車やテントで出店するのかで、初期費用は大きく変わります。キッチンカーの場合は、車そのものが保健所の審査を受ける「施設」として扱われます。
この3つが決まると、必要な許可と車の装備が自然に絞られます。逆に、ここが曖昧なまま車を先に買うと、あとから設備を作り直すことになりがちです。移動販売の準備の失敗談で最もよく聞かれるのが「車を買ってから保健所に行った」というものです。
売り方別に見る、必要なものの早見表
売り方ごとに、主に必要になるものを並べると次のようになります。細かな扱いは地域や品目で変わるので、あくまで相談の前に見当をつけるための目安です。
| 売り方 | 保健所 | 車や設備 | そのほか |
|---|---|---|---|
| キッチンカーで調理して出す | 飲食店営業の許可、食品衛生責任者 | 給排水タンク、シンク、冷蔵設備などを備えた車 | 仕込み場所、出店先との契約 |
| 作った食品や仕入れた食品を運んで売る | 品目に応じて許可か届出、食品衛生責任者 | 保冷・保温の設備、陳列棚 | 製造する施設の許可、表示のルール |
| 包装された常温の食品だけを売る | 届出も不要な場合がある(保健所が判断) | 陳列棚 | 出店先との契約 |
| 雑貨や手作り品を売る | 不要 | 陳列棚、テント | 出店先との契約 |
| 中古品を仕入れて売る | 不要 | 陳列棚 | 警察署での古物商の許可の確認 |
この表で自分の売り方がどこに当たるかが分かれば、次に相談する窓口も決まります。食品なら保健所、中古品なら警察署、どの売り方でも出店先との交渉が必要です。
移動販売の現状と、続けるうえでの前提
移動販売は、店舗を借りずに始められる商売として注目されています。家賃や内装工事の負担がない分、固定店舗より少ない資金で始められ、売れる場所や売れる商品を探しながら事業を育てられます。
中小企業基盤整備機構の起業支援サイトJ-Net21は、移動販売の開業ガイドで、移動販売ならではの費用の重さを次のように書いています。
自前の車両で複数地点を移動する場合、燃料費・駐車費・保険料などが想像以上に積み重なるほか、商業施設やイベントでの出店には、1日数千~数万円の出店料が発生するケースもある。売上が不安定な中でこれらの固定費が積み重なると、黒字化のハードルは高くなる。 出典: J-Net21「移動販売」
同じガイドは、近年の事業者が移動販売だけで完結させず、販売している商品をネットで売る、卸に出す、SNSで出店予定を知らせて常連客を育てる、といった形で収益を組み立てていることにも触れています。移動販売は「始めやすいが、続けるのは簡単ではない」商売です。許可や車の準備と同じくらい、開業後に毎週どこで売るかを確保し続ける段取りが大切になります。
食品を売るなら、保健所の営業許可か届出が出発点
食品を扱う移動販売で最初に向き合うのが、食品衛生法にもとづく営業許可です。営業許可とは、食中毒などの危険がある食品の営業を始める前に、施設の設備が基準を満たしているかを保健所が確かめ、都道府県知事などが出す許可のことです。この制度は令和3年6月に見直され、許可が必要な業種が整理されるとともに、許可までは要らない業種には「営業届出」という届け出の仕組みが新しく設けられました。
その場で調理するなら飲食店営業の許可
キッチンカーで調理して出す場合は、飲食店営業の許可が必要です。厚生労働省の営業許可業種の解説では、簡単な調理だけを行う「簡易な営業」について、飲食店営業の施設基準を一部緩和するとしています。例として挙げられているのは、そうざいやおでんなどの既製品を開封、加温、盛り付けして出す営業、唐揚げやフライドポテト、ソフトクリームのように半製品を揚げたり焼いたりして出す営業、コーヒーや自家製ジュースなどの飲み物を出す営業です。緩和されるのは施設の基準の一部で、許可が不要になるわけではありません。
包装された常温の食品だけなら、届出も要らない場合がある
一方で、届出すら要らない営業もあります。厚生労働省の通知「営業届出業種の設定について」は、届出の対象から外れる営業として、次のものを挙げています。
容器包装に入れられ、又は容器包装で包まれた食品又は添加物のうち、冷凍又は冷蔵によらない方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化により食品衛生上の危害の発生のおそれがないものの販売をする営業 出典: 厚生労働省「営業届出業種の設定について」
言い換えると、缶詰や袋入りの乾物のように、包装されたまま常温で保存しても傷まない食品だけを売る場合です。同じ通知では、野菜果物販売業、弁当販売業、その他の食料・飲料販売業などが届出の対象となる業種として並んでいます。どの食品がどちらに当たるかを決めるのは保健所なので、自分で「届出不要」と判断せず、扱う品目の一覧を持って相談してください。
食品衛生責任者を定める
許可か届出かにかかわらず、食品を扱う営業では、施設ごとに食品衛生責任者を定める必要があります。食品衛生責任者とは、その施設の衛生管理を担う担当者のことです。J-Net21の開業ガイドは、食品販売型の移動販売店を開業するには、まず食品衛生責任者の資格が必要で、保健所などが実施する1日の講習を受けて取得できると説明しています。調理師や栄養士などの資格を持つ人は、講習を受けずに食品衛生責任者になれる場合があります。講習の日程や受講料は地域で違うので、開業予定地の保健所か講習の実施団体で確かめてください。
あわせて、食品を扱う事業者にはHACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が求められています。HACCPとは、食中毒などの危険が起こりやすい工程を先に洗い出し、そこを重点的に管理する考え方のことです。小規模な事業者は、業界団体が作った手引書に沿って温度や清掃の記録をつける方法で対応できます。
車を用意する前に、保健所へ相談する
移動販売の準備で順番を間違えやすいのが、車の購入と保健所への相談です。結論から言えば、保健所への事前相談は車を買う前に行います。
キッチンカーの給排水タンクの基準
キッチンカーで調理する場合、車そのものが施設として審査され、給水と廃水のタンクの容量が許可できるメニューの範囲を決めます。食品衛生法施行規則の別表第20は、自動車で調理する飲食店営業の基準を次のように定めています。
| 営業の区分 | 1日の営業で必要な給水・廃水の容量 |
|---|---|
| 簡易な営業 | 約40リットル |
| 比較的大量の水を要しない営業 | 約80リットル |
| 比較的大量の水を要する営業 | 約200リットル |
出典は厚生労働省の施設基準の解説です。たとえば、タンクが40リットルの中古車を買ったあとで、洗い物の多い本格的な調理をしたくなっても、そのままでは許可の範囲を超えてしまいます。実際の基準は、この国の基準を参考に都道府県や保健所を設置する市が条例で定めているため、細部は地域で違います。
相談のときに持っていくもの
保健所に相談に行くときは、次のものを用意すると話が具体的に進みます。
・売りたいメニューの一覧と、それぞれの調理の手順
・車の外観と内部の図面や写真(購入前なら候補の車の資料)
・積む予定の設備(シンク、冷蔵庫、加熱器具、タンク)の仕様
・仕込みをする場所の情報
・営業する予定の地域
相談では、メニューごとにどの許可が要るか、タンクの容量は足りるか、仕込み場所にも許可が要るか、許可が出るまでにどれくらいかかるかを聞いておきます。手順を書き出しておくと、どの工程で手を洗うのか、どこで温度を管理するのかを担当者と一緒に確かめられます。
仕込み場所の確保
キッチンカーの中だけで調理が完結しない場合は、仕込みをする場所が別に必要です。自宅の台所は、営業許可を受けた施設ではないので、そのままでは営業用の仕込みに使えません。仕込み場所にも、その作業に応じた許可が必要になるのが一般的です。許可を持つ飲食店の厨房を時間貸しで借りる、シェアキッチンを使う、といった方法があるので、保健所への相談の段階で仕込みの方法を決めておきます。
車の用意のしかたと、選ぶときの考え方
保健所で必要な設備が分かったら、いよいよ車の用意です。車の用意のしかたは大きく4つあります。
新しく製作する
製作会社に依頼して、ベース車両に調理設備や販売窓を取り付けてもらう方法です。メニューに合わせた設備を最初から組めるのが利点で、保健所の基準に合わせた製作にも慣れている会社が多くあります。その分、費用は高く、納車までに時間がかかります。依頼するときは、保健所で確認した設備の条件を製作会社にそのまま伝え、図面の段階で保健所にもう一度見てもらうと安心です。
中古車を買う
既にキッチンカーとして使われていた車を買う方法です。費用を抑えられ、すぐに使い始められる可能性があります。注意したいのは、前の持ち主が受けていた許可は引き継げない点と、前の持ち主が営業していた地域の基準が、自分が営業する地域でも通るとは限らない点です。購入前に、車の設備の写真や図面を持って保健所に確認してください。
リースやレンタルを使う
まとまった資金を用意せずに始めたい人や、まず試しに営業してみたい人に向いた方法です。月々の費用はかかりますが、売れ行きを確かめてから車を買うかどうかを決められます。契約期間や途中解約の条件、設備を変えられるかどうかを確かめておきます。
食品以外なら、今ある車でも始められる
食品を扱わない雑貨や手作り品の移動販売であれば、保健所の許可は関係しないため、手持ちのワゴン車や軽トラックに陳列棚を積んで始めることもできます。ただし、売り場を確保する手順は食品の場合と同じです。
車選びで見落としやすい点
車を選ぶときは、調理の設備だけでなく、営業の1日を思い浮かべて確かめると見落としが減ります。たとえば、車内で立って作業できる高さがあるか、2人で作業するときにすれ違える幅があるか、販売窓の位置はお客さんが並ぶ側に向けられるか、といった点です。冷蔵庫や加熱器具を動かす電気をどう確保するかも大切で、出店先で電源を借りられない場合は発電機やバッテリーが必要になります。
車の大きさは、出店できる場所の数にも関わります。大きな車ほど設備を充実させられますが、駐車できる区画が限られ、狭い敷地のイベントには出られないことがあります。出店したい場所の区画の大きさを先に調べ、それに収まる車を選ぶ考え方もあります。仕込み場所や自宅の近くに、営業しない日に車を止めておける駐車場を確保できるかも、契約前に確かめておきます。
車の登録と保険
調理設備を積む改造をした場合、車の構造や用途の扱いが変わることがあります。車検証の記載を変える手続きが必要になるかどうかは、改造の内容によって違うので、製作会社か運輸支局に確かめてください。保険は、車の任意保険に加えて、食中毒や来店客のけがなどに備える賠償責任保険を検討します。出店先から保険の加入を条件にされることも多くあります。
売る場所を決める:道路使用許可と私有地での出店
保健所の営業許可は「その車や施設で食品を扱ってよい」という許可であって、「どこでも売ってよい」という許可ではありません。売る場所の確保は、許可とは別に考える必要があります。
公道で店を開くのは難しい
道路を通行以外の目的で使うには、その場所を管轄する警察署長の道路使用許可が必要です。警視庁の道路使用許可のページでは、場所を移動しないで道路に露店や屋台などを出す場合について、次のように注記しています。
場所を移動しないで、道路に露店、屋台等を出す場合(3号) (注記)原則としてこれまで慣習上出店してきた場所に限ります。 出典: 警視庁「道路使用許可申請手続」
これは、祭りの縁日のように昔から続く出店場所を想定した決まりです。新しく移動販売を始める人が、人通りの多い道路に車を止めて店を開くための許可を得るのは、かなり難しいと考えておいたほうが現実的です。同じページでは、東京都内で一般交通に著しい影響を及ぼす場合に許可が必要な行為として、物の販売も挙げられています。東京都以外で営業する場合は、それぞれの道府県警察の案内を確かめてください。
私有地で売るのが基本
そこで多くの事業者は、商業施設の駐車場、オフィスビルの敷地、マンションの共用部、病院や工場の敷地など、土地の持ち主や管理者と契約して出店しています。出店料の決まり方は、1日あたりの定額、売上の一定割合、その組み合わせなどさまざまです。キッチンカーの出店場所を仲介するサービスや、出店者を募集している商業施設、イベントの主催者もあります。
出店の契約では、営業許可証の写し、車検証、保険の加入を示す書類を求められることが多いので、手元にそろえておきます。電源を借りられるか、発電機を使ってよいか、ゴミの持ち帰りの決まりはどうか、といった点も出店先ごとに違います。発電機の音や排気が問題になる場所もあるので、事前に確かめてください。
複数の地域で営業したいとき
営業許可は都道府県や保健所を設置する市などが出すもので、車で複数の地域にまたがって営業する場合、原則として地域ごとに許可が必要になります。この負担については国も見直しを進めています。厚生労働省は令和8年3月27日付けの通知で、大阪府と和歌山県のように、府県の区域を越えて自動車による飲食店営業を行えるようにしている事例を各自治体に示しました。同じ通知には、今後、営業許可を申請する際に営業場所の記載を必須にするなどの措置をとる予定だとも書かれています。遠くのイベントに出たい人は、主に営業する地域の保健所に、近隣の自治体との取り決めがあるかを相談の段階で聞いておきます。
食品以外を売る場合と、お酒を扱う場合
食品を扱わない移動販売でも、扱う品によっては別の許可が要ります。
古着や古本、中古の雑貨のように、一度人の手に渡った品物を仕入れて売る場合は、古物営業法にもとづく古物商の許可が必要になることがあります。窓口は営業所の所在地を管轄する警察署です。移動しながら売る形は店舗での営業と扱いが違う点があるため、扱う品と売り方を具体的に説明して、許可の要否を確かめてください。
お酒を売りたい場合は、売り方によって税務署の酒類販売業免許が関係します。その場で注いで飲んでもらう形と、容器に入ったまま持ち帰ってもらう形とでは手続きの考え方が違うので、税務署と保健所の両方に確認が必要です。このほか、農家から仕入れた卵や野菜、魚介類、生きた植物など、扱う品によって別の決まりがかかることがあります。扱う品が決まったら、所管の窓口に一度問い合わせておくと安心です。
税務署への届出と、お金の準備
許可とは別に、事業を始めたら税務署への届出があります。
開業届と青色申告の申請
個人で移動販売を始める場合は、「個人事業の開業・廃業等届出書」、いわゆる開業届を出します。国税庁の手続き案内では、提出時期は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」とされています。提出先は納税地の税務署で、e-Taxでも出せます。詳しくは国税庁の個人事業の開業届出・廃業届出等手続のページで確かめられます。
帳簿をきちんとつける代わりに所得から特別な控除を差し引ける青色申告を選ぶ場合は、「所得税の青色申告承認申請書」も出します。国税庁の案内では、提出期限は青色申告をしようとする年の3月15日まで、その年の1月16日以後に新しく事業を始めた場合は事業開始の日から2月以内です。開業届より期限が短いので、2つを同時に出すと漏れを防げます。手続きは国税庁の所得税の青色申告承認申請手続のページにあります。会社に勤めながら週末だけ移動販売をする場合も、事業として続けるなら届出の対象になりえます。税の扱いは売上の規模や働き方で変わるので、迷うときは税務署に相談してください。
初期費用と毎月の費用を分けて見積もる
開業資金は、車の用意のしかたで大きく変わるため、一律の金額は示せません。見積もりで漏れやすい項目を整理しておきます。
| 区分 | 主な項目 |
|---|---|
| 初期費用 | 車両の購入費や改造費、設備、許可の手数料、講習の受講料、看板やメニュー表、決済端末、保険 |
| 毎月の費用 | 材料費、包材費、燃料費、駐車場代、出店料、仕込み場所の利用料、保険料、通信費、決済手数料 |
見落としやすいのは、売れない日の費用です。雨の日やイベントが中止になった日でも、駐車場代や仕込み場所の利用料は出ていきます。収支は晴れた日の売上だけで組まず、季節や天候で売上が落ちる月を含めた1年間で考えてください。資金の調達先には、日本政策金融公庫の創業向けの融資や、自治体の創業支援の制度があります。補助金は公募の時期や要件が毎回変わるので、開業予定地の商工会議所や自治体で最新の情報を確かめてください。
開業までの順番を一覧にする
ここまでの内容を、準備の順番として並べ直します。
- 売るもの、売る場所、売り方を決める
- 売るものが食品なら、許可か届出か、どの業種かの見当をつける
- 開業予定地の保健所に事前相談する(メニュー、手順、車や設備の資料、仕込み場所を持参)
- 食品衛生責任者の講習を受ける
- 保健所の指摘に合わせて車を用意する(中古なら購入前に確認)
- 仕込み場所を確保する
- 営業許可を申請し、車の検査を受ける
- 出店先を探して契約する
- 税務署に開業届と青色申告承認申請書を出す
- 試験的に営業して、メニューと段取りを見直す
J-Net21の開業ガイドも、商品と業態を決める、出店場所と販売スタイルを決める、保健所で必要な許可を確認して取得する、設備を準備する、という順番を示しています。共通しているのは、車の用意より先に、商品と場所と保健所の確認が来ることです。
期間は人によって大きく違います。メニューが固まっていて、許可を持った仕込み場所と出店先の当てがある人なら短く済みますが、車を新しく製作する人は数か月かかることも珍しくありません。製作会社の納期と保健所の検査の日程が重なるので、余裕を持って計画してください。
試験営業と、開業後の最初の3か月で見直すこと
許可と車がそろったら、いきなり毎日の営業に入るのではなく、試験的な営業で段取りを確かめる期間を設けると、その後の失敗が減ります。
試験営業で確かめること
最初の数回の営業では、売上よりも段取りの確認を目的にします。確かめたいのは、仕込みから出店場所への到着、設営、販売、片付け、帰着までに実際にかかる時間です。1品を出すのに何分かかるか、混んだ時間帯に何人まで待たせずに出せるか、タンクの水は1日の営業で足りたか、ゴミはどれくらい出たかを記録します。調理の手順は、保健所に説明した内容と実際の動きがずれていないかも見直します。
お客さんの反応も貴重な情報です。どの品が先に売り切れたか、価格を見て立ち去った人がいたか、どの時間帯に人が集まったかを書き留めておくと、メニューや価格を見直す根拠になります。
最初の3か月で見直すこと
開業してからの3か月ほどは、出店先ごとの売上と経費を並べて比べる時期です。出店料、移動にかかった燃料費と時間、売上、売れ残りの量を出店先ごとに記録すると、続けるべき場所と見直すべき場所が数字で分かります。人が多く集まる場所でも、出店料が高く売上の多くが消えてしまう場所もあれば、人通りは少なくても常連客がついて安定して売れる場所もあります。
メニューも同じように、売れ行きと仕込みの手間、材料の無駄を比べて絞り込みます。品目を減らすと仕込みが楽になり、1日に出せる数も増えることがよくあります。新しい品を加える場合は、許可の範囲に収まるかを保健所に確かめてから始めます。
記録を残す習慣
売上や経費の記録は、確定申告の帳簿にもそのまま使えます。青色申告を選んだ場合は日々の取引を帳簿につける必要があるので、営業日ごとの売上、仕入れ、出店料、燃料費を、その日のうちに記録する習慣をつけておくと、年度末にまとめて整理する手間が省けます。キャッシュレス決済の売上は決済サービスの管理画面で確かめられるので、現金の売上と分けて記録しておくと、合計の照合もしやすくなります。
続けられる人に共通する準備
移動販売を始めた人のうち、続けられる人とやめてしまう人の違いは、開業前の準備に表れます。
最も多いつまずきは、売る場所が固まらないまま開業してしまうことです。車と許可がそろっても、毎週の売り場が決まらなければ売上は立ちません。人気の出店先ほど実績のある事業者が優先されるので、開業前の段階で、少なくとも週に数日は確実に売れる場所の当てを作っておくことが大切です。
次に多いのは、メニューを広げすぎることです。品目が多いほど仕込みの手間と材料の無駄が増え、タンクの容量や設備の制約にも当たりやすくなります。看板になる品を少数に絞り、売れ行きを見ながら追加するほうが、許可の範囲の確認も含めて管理しやすくなります。メニューを追加したくなったときは、許可の範囲に収まるかを保健所に確かめてから始めてください。
季節と天候への備えも、続けられるかどうかを分けます。冷たい飲み物やソフトクリームは夏に売れても冬には落ち込み、温かい料理はその逆になりがちです。季節ごとに主力の品を入れ替える計画や、雨の日に屋根のある出店先を確保しておく工夫があると、売上の波を小さくできます。
さらに、情報発信の手間を軽く見ないことです。移動販売は日によって売る場所が変わるため、次はどこに出るのかをお客さんに知らせ続ける必要があります。出店予定の告知、商品の写真、メニュー表やのぼりのデザインは、毎週の売上に直結します。
移動販売と在宅の仕事を組み合わせる考え方
移動販売は、営業日と仕込みの日がはっきり分かれ、出店のない日や雨の日には時間が空きます。この時間の使い方が、事業全体の安定を左右します。
発信やデザインの力は、移動販売の売上に直結する
前の節で触れたとおり、移動販売では出店予定の告知やSNSでの発信が欠かせません。ネットでの集客や発信の仕事がどんな内容で、どんな人に求められているかは、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で分野ごとに整理されています。自分の店の発信で身につけた力は、ほかの事業者の発信を手伝う仕事にもつながります。メニュー表やロゴ、のぼりを自分で作る人は、デザインの仕事の収入や働き方の実態をWebデザイナー 年収のリアル:30代フリーランスが語る稼ぎ方とキャリアパスで確かめておくと、外注するか自分で作るかの判断材料になります。
出店先との交渉では、出店の申込書や企画書、事業の説明文など、相手に伝わる文書を書く場面も多くあります。ビジネス文書の基本を確かめたい人には、ビジネス文書検定のような資格もあります。
運営者の視点から見えること
フリーランスや在宅ワークの市場を長く見てきた立場から言えば、小さな商売を長く続けている人ほど、1つの売り方に頼らず、時間の空いたところに別の仕事を組み合わせています。移動販売のように天候や季節で売上が揺れる商売では、在宅でできる仕事を持っておくことが、事業を続けるための支えになります。また、仲介の手数料が引かれない直接の取引であれば、依頼する側は同じ予算でより多く頼め、受ける側は手取りが厚くなります。売上の額面より、手元にいくら残るかで仕事を選ぶ習慣は、移動販売の出店先選びにもそのまま当てはまります。出店料が売上の何割を占めるのか、1日に拘束される時間に対していくら残るのかを、出店先ごとに記録して比べてください。
まず取りかかること
移動販売を始めるには、車を探す前に、売るもの、売る場所、売り方を紙に書き出すことから始めます。そのうえで開業予定地の保健所に相談の予約を入れ、メニューと手順の一覧を持って話を聞きに行ってください。そこで必要な設備が分かれば、車の用意のしかたも、かかる費用も、開業までの期間も具体的に見えてきます。順番さえ守れば、遠回りに見えても、結果として最短で開業にたどり着けます。
よくある質問
Q. 移動販売を始めるのに必ず必要な許可は何ですか?
食品を扱う場合は、食品衛生法にもとづく保健所の営業許可か営業届出が必要で、施設ごとに食品衛生責任者を定めます。その場で調理するなら飲食店営業の許可です。包装されたまま常温で保存しても傷まない食品だけを売る場合は届出も不要とされていますが、どの食品が当たるかは保健所が判断するので、扱う品目の一覧を持って事前に相談してください。
Q. キッチンカーは保健所に相談する前に買ってもよいですか?
相談の前に買うのは避けてください。食品衛生法施行規則の基準では、自動車で調理する場合の給水と廃水の容量が、簡易な営業で約40リットル、比較的大量の水を要しない営業で約80リットル、比較的大量の水を要する営業で約200リットルと定められています。タンクの容量で許可できるメニューの範囲が決まるため、メニューを決めて保健所に確認してから車を選びます。
Q. 公道に車を止めて移動販売をしてもよいですか?
道路を通行以外の目的で使うには警察署長の道路使用許可が必要です。警視庁の案内では、場所を移動しないで露店や屋台を出す場合は、原則としてこれまで慣習上出店してきた場所に限るとされています。新しく始める場合は、商業施設の駐車場やオフィスビルの敷地など、土地の持ち主と契約した私有地で売るのが一般的です。
Q. 移動販売の開業届はいつまでに出せばよいですか?
国税庁の案内では、個人事業の開業届は、事業を始めた日が属する年分の確定申告期限までに納税地の税務署へ出します。青色申告をしたい場合は、青色申告承認申請書を、1月16日以後に開業したときは開業の日から2月以内に出します。こちらのほうが期限が短いので、開業届と同時に出すと漏れを防げます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
関連記事
カテゴリから探す

クラウドソーシング入門
クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

副業・在宅ワーク
副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス
フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金
確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ
プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング
サービス比較・おすすめランキング

AI活用
職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド
市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド
クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア
転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人
看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人
薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人
介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人
保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人
医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険
生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人
無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース
バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業
契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代
シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ
サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック
暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス
経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材
フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方
子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金
個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド
SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方







