工数見積もりのやり方|作業を分けて根拠のある数字を出す手順


この記事のポイント
- ✓工数見積もりのやり方を
- ✓類推・積み上げ・3点見積もりなどの手法
- ✓作業を分けて数字を出す手順
工数見積もりは、仕事を引き受ける前に「この仕事にどれだけの手間がかかるか」を数字で示す作業です。見積もりが少なすぎれば納期に間に合わず、多すぎれば仕事を取り逃がします。システム開発やWeb制作、デザイン、ライティングなど、人の作業時間がそのまま費用になる仕事では、見積もりの精度が利益と信頼の両方を左右します。この記事では、工数の単位、見積もりが外れる理由、代表的な手法、作業を分けて根拠のある数字を出す手順、予備の時間の考え方、工数から金額への直し方、見積書に書く前提条件、実績と比べて精度を上げる方法を、具体的な例で説明します。見積もりと実績を同じ場所で記録する方法の1つとして、国産のプロジェクト管理のツールのPinatecaにも触れます。
工数とは何か
工数とは、ある仕事を終えるのに必要な作業の量を、「人数×時間」で表したものです。たとえば、1人で8時間かかる作業は8人時(にんじ)、2人で4時間ずつかかる作業も同じく8人時です。
工数の単位には、主に次の3つがあります。
| 単位 | 意味 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 人時(にんじ) | 1人が1時間で行う作業の量 | 小さな作業、デザインやライティングの単発の仕事 |
| 人日(にんにち) | 1人が1日で行う作業の量 | 数日から数週間の案件 |
| 人月(にんげつ) | 1人が1か月で行う作業の量 | システム開発などの大きな案件 |
1人日を何時間とするか、1人月を何日とするかは、会社や業界によって違います。1人日を8時間、1人月を20日とする例がよく見られますが、決まった基準があるわけではありません。見積もりを出すときは、自分がどの換算を使っているかを見積書に書いておくと、相手との行き違いを防げます。
工数と期間は別のものだという点も大切です。工数が10人日の仕事でも、2人で取り組めば5日で終わる可能性がありますが、1人がほかの仕事と並行して1日の半分だけ取り組むなら、20日かかります。見積もりでは、まず工数を出し、そのあとで、何人がどのくらいの割合でその仕事に取り組めるかを考えて、期間(納期)を決めます。
期間を決めるときは、その仕事に使える時間の割合(稼働率)を考えます。たとえば、1日8時間のうち、ほかの案件の連絡や事務に2時間を使っているなら、この仕事に使えるのは1日6時間です。工数が48人時の仕事なら、48÷6で8日が作業の期間になります。さらに、相手の確認を待つ日や、資料が届くまでの日数を加えたものが、相手に伝える納期になります。工数を出したあとに、自分の稼働率と待ちの日数を加えて納期を決める、という順番を守ると、無理のない納期を示せます。
見積もりが外れる主な理由
工数見積もりが外れる理由は、ある程度決まっています。先に知っておくと、同じ失敗を避けられます。
- 作業の範囲があいまいなまま見積もった
- 細かい作業(確認、連絡、修正、ファイルの整理)を数えていなかった
- 自分の作業の速さを実際より速く考えていた
- 相手の確認待ちや、資料の受け取り待ちの時間を考えていなかった
- 途中で依頼の内容が変わったのに、見積もりを見直さなかった
- ほかの仕事と並行していることを考えず、期間を短く見ていた
特に多いのが、2つ目の細かい作業の見落としです。デザインの仕事なら、作る時間だけでなく、依頼の内容を読み込む時間、打ち合わせ、修正、書き出し、納品の連絡にも時間がかかります。これらは1つずつは短くても、合わせると作業全体の中で無視できない時間になります。
見積もりの不正確さが招く問題について、勤怠や工数の管理のサービスを提供するチームスピリットの解説は、次のように指摘しています。
工数見積もりが適切でないと、プロジェクトの完了が予定より遅れてしまう可能性があります。実際に必要な作業量よりも少ない工数で見積もりを立ててしまうと、当初の予定通りに作業が進まなくなるためです。納期が遅れると、クライアントからの信頼も揺らいでしまうでしょう。 出典: teamspirit.com
少なく見積もった分の作業は、結局は誰かが無理をして埋めることになります。フリーランスであれば、報酬が変わらないまま作業時間だけが伸び、1時間あたりの手取りが下がります。
代表的な見積もりの手法
工数見積もりの手法には、いくつかの代表的なものがあります。仕事の大きさや、見積もりを出す段階によって使い分けます。
| 手法 | 考え方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 類推見積もり | 過去の似た仕事の実績から全体を推し量る | 依頼の初期で、概算を早く出したいとき |
| 積み上げ見積もり | 仕事を細かい作業に分け、作業ごとの工数を足し合わせる | 依頼の内容が固まり、正式な見積もりを出すとき |
| 3点見積もり | 作業ごとに、楽観・最も可能性が高い・悲観の3つの値から期待値を出す | 不確かさが大きい作業があるとき |
| ファンクションポイント法 | システムの機能の数と複雑さを点数にして規模を測る | 業務システムの開発 |
| パラメトリック見積もり | 過去のデータから作った計算式(1ページあたり何時間など)で出す | 同じ種類の仕事を繰り返し受けるとき |
個人や小さなチームで使いやすいのは、類推見積もり、積み上げ見積もり、3点見積もりの3つです。最初の相談の段階では類推見積もりで「おおよそこのくらい」と伝え、依頼の内容が固まったら積み上げ見積もりで正式な数字を出す、という流れが一般的です。
パラメトリック見積もりは、同じ種類の仕事の実績がたまってから使える手法です。たとえば、記事の作成の実績から「調査と執筆で1,000字あたり1.5時間」という自分の係数が分かっていれば、字数から工数をすぐに出せます。実績を記録し続けることが、この手法の前提になります。
積み上げで見積もる手順
積み上げ見積もりは、最も根拠を説明しやすい手法です。仕事を細かい作業に分けることを、WBS(Work Breakdown Structure、作業分解構成)と呼びます。手順は次のとおりです。
- 依頼の目的と、納品するもの(成果物)を書き出す
- 成果物を作るのに必要な作業を、大きな単位で並べる
- 大きな作業を、半日から2日程度で終わる小さな作業に分ける
- 小さな作業ごとに工数を見積もる
- 打ち合わせ、確認、修正、連絡などの管理の作業を加える
- 全体を合計し、予備の時間を加える
- 前提条件(範囲、修正の回数、相手に用意してもらうもの)を書き出す
3つ目の作業の大きさは、見積もりの精度に大きく関わります。「デザインを作る:5日」のように大きな単位のままだと、中身が見えず、根拠のない数字になりがちです。半日から2日程度に分けると、1つずつの作業の中身が具体的になり、見積もりのずれも小さくなります。
小さな会社のWebサイト(5ページ)の制作を例に、積み上げ見積もりを見てみます。
| 大きな作業 | 小さな作業 | 工数(人時) |
|---|---|---|
| 準備 | 依頼内容の確認と最初の打ち合わせ | 2 |
| 準備 | サイトの構成案の作成 | 4 |
| デザイン | トップページのデザイン | 8 |
| デザイン | 下層ページ4ページのデザイン | 12 |
| デザイン | 修正(2回まで) | 6 |
| 制作 | 5ページのコーディング | 16 |
| 制作 | スマートフォン表示の調整 | 4 |
| 制作 | お問い合わせのフォームの設置 | 3 |
| 確認 | 表示の確認と不具合の修正 | 4 |
| 管理 | 連絡、進み具合の報告、納品の作業 | 3 |
| 合計 | 62 |
この例では、合計が62人時になります。1人日を8時間とすると、約7.75人日です。ここに次の節で説明する予備の時間を加えて、見積もりの工数を決めます。
表を見ると、「管理」の作業や「修正」の作業が含まれていることに気づくと思います。こうした作業を最初から表に入れておくと、見積もりの漏れが減るだけでなく、相手にも「修正は2回まで」という前提を伝えやすくなります。
仕事の種類ごとの作業の分け方
積み上げ見積もりの作業の分け方は、仕事の種類によって変わります。よくある仕事の例で、どのように作業を分けるかを見てみます。
記事の作成(1本・5,000字)の場合の分け方の例です。
| 作業 | 内容 |
|---|---|
| 依頼の確認 | 記事の目的、読者、狙う内容、表記の決まりを確かめる |
| 調査 | 公的な資料や公式のページを読み、事実を確かめる |
| 構成の作成 | 見出しの案を作り、依頼者に確認してもらう |
| 執筆 | 本文を書く |
| 見直し | 誤字、事実、表記の統一を確かめる |
| 修正 | 依頼者の指摘に対応する |
| 納品 | 指定の形式で入稿し、連絡する |
記事の作成では、調査と見直しの時間を少なく見積もりがちです。専門的な分野ほど、事実の確認に時間がかかります。執筆の時間だけで見積もると、実績との差が大きくなります。
既存のシステムの小さな改修の場合の分け方の例です。
| 作業 | 内容 |
|---|---|
| 現状の調査 | 既存のコードや設定を読み、変更する場所を特定する |
| 開発の環境の準備 | 作業用の環境を用意し、動作を確かめる |
| 実装 | 機能を追加または変更する |
| テスト | 変更した部分と、影響を受けそうな部分の動作を確かめる |
| 本番への反映 | 手順に沿って反映し、反映後の動作を確かめる |
| 報告 | 変更の内容と確認の結果を報告する |
システムの改修では、現状の調査に時間がかかることが多くあります。他の人が作ったシステムほど、どこを変えればよいかを調べる時間が読みにくいので、3点見積もりを使う候補になります。
データ入力(1,000件)の場合は、1件あたりの時間を測ってから全体を出す方法が有効です。最初に20件ほど試しに入力して1件あたりの時間を測り、それに件数を掛け、確認と修正の時間を加えます。元の資料の読みにくさによって1件あたりの時間が大きく変わるので、試しの入力の結果を見積もりの根拠として相手に示すと納得してもらいやすくなります。
類推見積もりで概算を出すときのコツ
最初の相談の段階では、作業を細かく分けるほどの情報がそろっていないことがほとんどです。そうしたときは、過去の似た仕事の実績から、類推見積もりで概算を出します。
類推見積もりで気をつけたいのは、次の点です。
- 比べる過去の仕事と、今回の仕事の違いを書き出す(ページ数、機能、相手の体制など)
- 違いの分だけ、工数を増やすか減らすかを考える
- 「概算」であることと、正式な見積もりを出すための条件を相手に伝える
- 金額を1つの数字で示すより、「30万円から40万円の範囲」のように幅で示す
幅で示すことには、相手の期待を調整する効果があります。1つの数字を伝えると、その数字が最終の金額として受け取られやすく、あとで正式な見積もりが高くなったときに不信感を招きます。幅で伝え、正式な見積もりで幅が狭まることを説明しておけば、相手も予算の見通しを立てやすくなります。
過去の実績がない仕事の場合は、類推見積もりは使えません。その場合は、概算の段階でも、大まかに作業を分けて積み上げる方法をとります。初めての種類の仕事では、見積もりの幅が大きくなることを正直に伝えるのが誠実な対応です。
3点見積もりの計算
作業の中に、やってみないと分からない部分があるときは、3点見積もりが役立ちます。作業ごとに、次の3つの値を出します。
- 楽観値(O):すべてが順調に進んだ場合の工数
- 最頻値(M):最もありそうな場合の工数
- 悲観値(P):問題が起きて手間取った場合の工数
この3つから、期待値を次の式で計算します。この式は、PERT(パート)と呼ばれる計画の手法で使われるものです。
期待値 =(楽観値 + 4 × 最頻値 + 悲観値)÷ 6
たとえば、お問い合わせのフォームの設置について、楽観値が2時間、最頻値が3時間、悲観値が7時間だったとします。
期待値 =(2 + 4 × 3 + 7)÷ 6 = 21 ÷ 6 = 3.5時間
最頻値の3時間よりも、少し長い3.5時間が期待値になります。悲観値が大きい作業ほど、期待値は最頻値より長くなります。3点見積もりを使うと、不確かな作業の分だけ見積もりが自然に長くなるので、楽観的すぎる見積もりを防げます。
すべての作業に3点見積もりを使う必要はありません。初めて扱う技術や、相手の環境によって手間が変わる作業など、不確かさが大きい作業だけに使うと、手間をかけすぎずに精度を上げられます。
予備の時間の考え方
積み上げた工数には、予備の時間(バッファ)を加えるのが一般的です。予備の時間とは、見積もりの段階では予想できない問題に備えるための時間のことです。
予備の時間の決め方には、次のような方法があります。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 全体に一定の割合を加える | 合計の工数に、たとえば1割から2割を加える |
| 不確かな作業にだけ加える | 3点見積もりの期待値を使い、不確かさの大きい作業に厚く持たせる |
| 過去の実績から決める | 過去の仕事で、見積もりと実績が平均でどれだけずれたかをもとに決める |
最も根拠を説明しやすいのは、3つ目の過去の実績から決める方法です。たとえば、過去5件の仕事で実績が見積もりより平均で15%多かったなら、15%程度の予備を持つ根拠になります。実績の記録がまだない人は、最初は全体に一定の割合を加える方法で始め、実績がたまったら見直していくとよいでしょう。
予備の時間を見積書に「予備」と書くかどうかは、相手や業界の慣習によります。予備を項目として示すと、相手から削るように求められることもあります。作業ごとの工数に含めて示すか、「想定外の対応に備えた時間」として説明できるようにしておくか、自分の方針を決めておきます。
工数から金額に直す
工数が決まったら、金額に直します。基本の考え方は、次のとおりです。
見積もりの金額 = 工数 × 1時間(または1日)あたりの単価 + 経費
先ほどのWebサイトの例で、予備の時間を1割加えて約68人時とし、仮に1時間あたりの単価を4,000円とすると、作業の金額は約27万2,000円になります。ここに、素材の購入費などの経費があれば加えます。ここで使った単価は計算の例であり、実際の単価は、仕事の種類や経験、地域、取引の形によって大きく変わります。
単価を決めるときは、作業していない時間のことも考える必要があります。フリーランスの場合、営業、見積もりの作成、請求の事務、学びの時間など、報酬が出ない時間もあります。1か月に働ける時間のすべてを作業に使えるわけではないので、作業の時間だけで生活費と経費をまかなえる単価を考えることが大切です。デザインの仕事の収入の目安は、デザイナーの年収・単価相場で職種ごとのデータを紹介しています。
複数の人で取り組む仕事では、人によって単価が違うこともあります。その場合は、作業ごとに担当する人の単価を掛けて合計します。経験の長い人が担当する作業は単価が高い代わりに工数が少なく、経験の浅い人が担当する作業は単価が低い代わりに工数が多くなる、というように、工数と単価は組み合わせで考える必要があります。誰が担当するかによって見積もりの金額が変わる場合は、前提として担当の体制も見積書に書いておくと、あとで担当が変わったときの説明がしやすくなります。
消費税の扱いも見積書で明らかにしておきます。税込みの金額か、税抜きの金額に消費税を加えるのかを書いておかないと、請求のときに行き違いが起きます。
見積書に書いておく前提条件
工数見積もりの数字は、前提条件とセットで初めて意味を持ちます。見積書には、金額だけでなく、次の前提を書いておきます。
- 作業の範囲(何を作り、何を作らないか)
- 修正の回数と、回数を超えた場合の扱い
- 相手に用意してもらうもの(原稿、写真、ロゴ、アカウントなど)と、その期限
- 納期と、相手の確認にかかる日数の想定
- 1人日、1人月の換算(1人日を何時間とするか)
- 見積もりの有効期限
- 支払いの条件(支払いの時期と方法)
特に重要なのが、作業の範囲と、範囲を超えたときの扱いです。依頼の途中で「このページも追加してほしい」と言われたときに、最初の範囲が書かれていれば、追加の見積もりを出す根拠になります。
フリーランスとして企業から仕事を受ける場合は、2024年11月に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)も知っておきたい決まりです。厚生労働省のフリーランス法の案内では、個人で働くフリーランスに仕事を頼む事業者に、取引の条件を明示すること、成果物を受け取った日から原則60日以内に報酬を支払うことなどが義務づけられていると説明されています。見積もりの段階で条件をはっきりさせておくことは、法律の上でも、取引をめぐるトラブルを防ぐうえでも意味があります。
見積もりを相手に説明するときの伝え方
工数見積もりは、出して終わりではなく、相手に納得してもらって初めて役に立ちます。説明のしかたで気をつけたい点を整理しておきます。
まず、作業の一覧を見せることです。合計の金額だけを伝えると、相手は高いか安いかでしか判断できません。どんな作業に、どれだけの時間がかかるのかを示すと、相手は内容を理解したうえで判断できます。
次に、相手が選べる形にすることです。たとえば、「修正を2回までにすれば62人時、3回までなら68人時」「下層ページを4ページにすれば今回の金額、2ページに絞れば少なくなる」のように、範囲や条件を変えたときの見積もりを示すと、相手は予算に合わせて内容を選べます。
さらに、相手にお願いすることも伝えます。原稿や写真をいつまでに用意してもらうか、確認の返事をいつまでにもらうかによって、納期は変わります。「確認の返事が3営業日以内にいただける前提で、この納期です」と書いておけば、返事が遅れたときに納期を見直す根拠になります。
値下げを求められたときの考え方
見積もりを出すと、「もう少し安くならないか」と言われることがあります。そのときに、作業の内容を変えずに金額だけを下げると、1時間あたりの手取りが下がり、無理をして作業することになります。
値下げを求められたときは、次のような対応が考えられます。
- 作業の範囲を減らす(ページ数、機能、修正の回数を絞る)
- 相手に作業の一部を担ってもらう(原稿の用意、写真の選定、データの整理など)
- 納期に余裕をもらい、ほかの仕事と調整しやすくする
- 範囲も条件も変えられない場合は、見積もりの根拠を説明し、金額は変えられないことを伝える
どの対応をとる場合でも、積み上げ見積もりの作業の一覧があれば、どこを減らせば金額がどれだけ下がるかを具体的に示せます。根拠のない見積もりは値引きの交渉の対象になりやすく、根拠のある見積もりは範囲の調整の話し合いになりやすい、と考えておくとよいでしょう。
実績と比べて精度を上げる
工数見積もりの精度を上げる一番の方法は、見積もりと実績を比べて、ずれの理由を振り返ることです。若手のエンジニアが工数見積もりの方法を振り返った記事には、次のように書かれています。
正直言って「見積もり上の工数と実際にかかった工数が全く同じになる」ことは不可能だと思っています。しかしながら見積もりと実績値の差を限りなく減らすことはできると思うので、各タスクが終了した後に見積もりと実際の工数を比べてなぜ差があったのかを振り返り、次の見積もりに活かすというサイクルを意識しています。 出典: qiita.com
振り返りのときは、次のように記録します。
| 作業 | 見積もり(人時) | 実績(人時) | ずれ | ずれの理由 |
|---|---|---|---|---|
| トップページのデザイン | 8 | 11 | +3 | 写真の選定に時間がかかった |
| 5ページのコーディング | 16 | 15 | -1 | 共通の部品を使い回せた |
| 修正 | 6 | 9 | +3 | 修正の指示が3回に分かれて届いた |
この表のように、ずれの理由を書いておくと、次の見積もりで何を変えればよいかが分かります。写真の選定に時間がかかったなら、次からは「写真の選定」を独立した作業として見積もります。修正の指示が分かれて届いたなら、次からは「修正の指示はまとめて1回で」という前提を見積書に加えます。
実績の記録は、毎日の作業の終わりに、作業ごとにかかった時間を書き残すだけでも十分です。時間を正確に測るのが難しい場合は、30分単位など、決まった区切りで記録すると続けやすくなります。
記録から自分の係数を作る
見積もりと実績の記録がたまってくると、パラメトリック見積もりに使える「自分の係数」を作れるようになります。係数とは、「この種類の作業は、この単位あたり何時間」という、自分の作業の速さを表す数字のことです。
係数の作り方は次のとおりです。
- 同じ種類の作業の実績を、少なくとも5件ほど集める
- 作業ごとに、量の単位(ページ数、字数、件数、画面の数など)と実績の時間を並べる
- 実績の時間を量で割り、1単位あたりの時間を出す
- 5件の平均と、最も時間がかかった件の値を確かめる
- 平均を通常の見積もりに、最も時間がかかった件の値を悲観値として使う
たとえば、記事の作成の実績が5件あり、1,000字あたりの時間が1.2時間、1.5時間、1.4時間、1.3時間、2.1時間だったとします。平均は1.5時間、最も時間がかかった件は2.1時間です。5,000字の記事なら、通常の見積もりは7.5時間、悲観的に見れば10.5時間と考えられます。2.1時間かかった件の理由が「専門的な分野で調査に時間がかかった」なら、専門的な分野の記事には悲観値に近い係数を使う、という判断ができます。
係数は、作業に慣れるにつれて変わります。半年に1回ほど、最近の実績で係数を計算し直すと、見積もりが自分の今の速さからずれにくくなります。また、係数を持っていると、最初の相談の段階でも根拠のある概算をすぐに示せるので、相手からの信頼も得やすくなります。
見積もりと実績をチームで記録する方法
1人で仕事をしている間は、表計算ソフトで見積もりと実績を記録すれば十分です。一方で、複数の人で1つの案件を進める場合は、作業ごとの担当、見積もりの工数、実際にかかった時間を、メンバーそれぞれが同じ場所に記録できないと、案件が終わったときに振り返りができません。
こうした場面で使える方法の1つが、国産のプロジェクト管理のツールのPinatecaです。公式サイトによると、Pinatecaでは作業をカードとして管理し、カードに「見積工数」「優先度」「顧客名」のような項目(カスタムフィールド)を自由に追加できます。積み上げ見積もりで分けた小さな作業をカードにして、見積工数の項目に数字を入れておけば、作業の一覧と見積もりを同じ画面で確かめられます。ガントチャートのボードでは、作業の期間を横棒で並べて、締め切りの重なりを見ることもできます。
実績の記録には、追加のオプションの稼働タイムシートが使えます。公式の使い方ガイドでは、案件と作業区分(開発、打ち合わせ、修正対応など)を行にして、月曜から日曜までのマスに時間を入れ、行ごとの週の合計と日ごとの合計がその場で出ると説明されています。入力は0.5時間刻みで、担当者別、案件別、作業別の集計とCSVの書き出しができます。業務委託のメンバーの稼働を記録して、請求の根拠にすることを想定した機能です。
料金は、公式の料金ページによると、5人までのチームなら無料で、ボードは10個まで作れます。稼働タイムシートは追加のオプションで、入力する人1人あたり月額980円(税抜、年払いなら月額780円)です。見るだけや承認するだけの管理者は数えないとされています。見積もりの工数はカードの項目で、実績の時間はタイムシートで記録すれば、案件が終わったあとに作業区分ごとのずれを振り返る材料がそろいます。
Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
見積もりの失敗を防ぐための習慣
最後に、工数見積もりで失敗しないための習慣を整理しておきます。
- 見積もりを出す前に、依頼の目的と成果物を相手と確かめる
- 作業は半日から2日程度の大きさに分けてから見積もる
- 管理、確認、修正、連絡の作業を必ず加える
- 不確かな作業には3点見積もりを使う
- 予備の時間の根拠を説明できるようにしておく
- 見積書に前提条件と、範囲を超えた場合の扱いを書く
- 依頼の内容が変わったら、その時点で見積もりを見直す
- 案件が終わったら、見積もりと実績を比べてずれの理由を記録する
8つの習慣のうち、すぐに始められるのは8つ目の記録です。次の仕事から、作業ごとの見積もりと実績を書き残すだけで、数か月後には自分の見積もりの癖が見えてきます。
7つ目の見積もりの見直しは、遠慮して後回しにされがちです。依頼の内容が変わったときに見積もりを見直さないと、最初の見積もりと実績のずれがどんどん大きくなります。変更の内容と、それによって増える工数を、その都度相手に伝えて合意しておくことが、自分を守ることにもつながります。
工数見積もりの考え方は、システム開発の現場で特に重視されます。アプリやシステムの開発の仕事の内容はアプリケーション開発のお仕事で紹介しています。業務の改善やAIの取り入れを支援する仕事でも、作業の工数を見積もって提案する力が求められ、その内容はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で紹介しています。
在宅の仕事の現場から見た見積もり
在宅ワークとフリーランスの仲介を2004年から続けてきた運営者として見てきた限りでは、長く取引が続く受注者は、見積もりの数字そのものより、数字の根拠と前提を分かりやすく示しています。「この作業に何時間、修正は2回まで、写真はご用意いただく前提」と書かれた見積もりは、発注する側にとっても、何にお金を払うのかが分かりやすく、社内で説明しやすいものです。根拠のある見積もりは、値引きの交渉ではなく、範囲の調整という建設的な話し合いにつながります。
また、発注者と受注者が直接やりとりする形では、間に入る仲介の手数料が少ない分、同じ予算でも受注者の手取りが厚くなり、発注者は同じ予算で頼める作業の量が多くなります。手数料0%で直接取引できる場では、工数と単価を正直に示した見積もりが、そのまま双方の納得につながりやすくなります。経営の視点から事業の計画や見積もりの考え方を学びたい人には、中小企業診断士の資格の内容も参考になります。
よくある質問
Q. 工数と期間の違いは何ですか?
工数は仕事に必要な作業の量を「人数×時間」で表したもので、期間は仕事を始めてから終えるまでの日数です。工数が10人日の仕事でも、2人で取り組めば5日で終わる可能性がありますが、1人がほかの仕事と並行して1日の半分だけ取り組むなら20日かかります。見積もりでは、まず工数を出し、取り組める人数と割合から期間を決めます。
Q. 初心者でも使いやすい見積もりの手法はどれですか?
積み上げ見積もりが使いやすい手法です。仕事を半日から2日程度で終わる小さな作業に分け、作業ごとの工数を足し合わせます。打ち合わせ、修正、連絡などの管理の作業も忘れずに加えます。やってみないと分からない作業だけは、楽観値、最頻値、悲観値の3つから期待値を出す3点見積もりを使うと、楽観的すぎる見積もりを防げます。
Q. 予備の時間はどのくらい加えればよいですか?
決まった割合はありません。最も根拠を説明しやすいのは、過去の仕事で見積もりと実績が平均でどれだけずれたかをもとに決める方法です。実績の記録がまだない場合は、合計の工数に一定の割合を加える方法で始め、案件が終わるたびに見積もりと実績を比べて、自分に合った割合に見直していくとよいでしょう。
Q. 見積書には何を書いておけばよいですか?
金額と工数に加えて、作業の範囲、修正の回数と超えた場合の扱い、相手に用意してもらうものとその期限、納期、1人日を何時間とするかの換算、見積もりの有効期限、支払いの条件を書いておきます。特に作業の範囲を書いておくと、依頼の途中で内容が増えたときに、追加の見積もりを出す根拠になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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