合同会社の定款変更|社員全員の同意が要る

前田 壮一
前田 壮一
合同会社の定款変更|社員全員の同意が要る

この記事のポイント

  • 合同会社定款変更の進め方を
  • 同意の取り方から登記の期限
  • 総社員の同意が原則であること

合同会社定款変更と検索してこのページにたどり着いた方の多くは、事業の内容を増やしたい、本店を移したい、社員が増える、といった具体的な出来事を目の前にしているはずです。まず、安心してください。合同会社の定款変更は、株式会社のように株主総会を開いて議事録を整えるような重たい手続きではありません。原則は「社員全員が同意する」ことだけで足ります。

ただし、落とし穴もあります。定款を変えたのに登記を忘れる、逆に定款を変えただけで登記が要ると思い込んで余計な費用を払う、という二方向の間違いが実際によく起きます。ここでは、どの変更にどの手続きが必要なのか、いくら費用がかかるのか、期限はいつまでなのかを、法令と公的機関が公開している記載で1つずつ確かめながら整理します。

合同会社が増え続けている背景と、定款変更が身近になった理由

合同会社という形態は、設立の費用が安いことから、個人で事業をしている人の法人化の受け皿として定着しました。株式会社を作る場合、公証人に定款を認証してもらう手数料が資本金に応じて3万円から5万円かかり、設立登記の登録免許税も最低15万円です。これに対して合同会社は、定款の認証そのものが不要で、設立登記の登録免許税も最低6万円で済みます。

安く作れるということは、作ったあとに中身を育てていく前提で作られている会社が多い、ということでもあります。最初は1人で始めて、仕事の幅が広がったら目的を足し、人が増えたら社員を入れ、自宅から事務所へ本店を移す。こうした変化のたびに定款を触ることになります。定款変更は、うまくいっている会社ほど何度も経験する手続きだと考えてください。

ここで大事な前提を1つ押さえます。定款とは、会社の決まりを書いた文書のことです。商号や目的、本店の場所、誰が社員なのかといった、会社の骨組みにあたる事柄が書かれています。会社を作るときに必ず1通作り、以後もずっと会社に保管しておくものです。登記簿とは別物で、登記簿は法務局が管理する公開の記録、定款は会社が持っている内部の文書という違いがあります。この2つがずれたままになるのが、定款変更でいちばん多い事故です。

合同会社の定款に必ず書かれている6つの項目

何を変えるとどうなるかを考える前に、定款に何が書いてあるかを確認しておきます。会社法第576条は、持分会社(合名会社・合資会社・合同会社の総称)の定款に必ず記載する事項として、次の6つを挙げています。

1つ目が目的です。これは会社が行う事業の内容を並べたものです。2つ目が商号、つまり会社の名前です。3つ目が本店の所在地。4つ目が社員の氏名または名称および住所です。合同会社でいう社員とは、従業員のことではなく、お金を出して会社の持ち分を持っている人のことを指します。株式会社でいえば株主にあたる立場です。5つ目が、その社員が無限責任社員なのか有限責任社員なのかの区別。合同会社の場合は同条第4項で、社員の全部を有限責任社員とする旨を記載すると決まっています。6つ目が、社員の出資の目的とその価額です。

この6項目は絶対的記載事項と呼ばれ、1つでも欠けると定款そのものが成り立ちません。そして、このうち商号・目的・本店・社員に関する事項は、同時に登記事項でもあります。だから定款を変えたら登記も必要になるケースが出てくるわけです。

一方で、定款にはこの6項目のほかに、会社が自由に決めた事柄も書かれています。事業年度をいつからいつまでにするか、社員が退社するときにどう扱うか、利益をどう配分するか、業務を執行する社員を誰に限るか、といった内容です。こちらは登記されない事項が多く、変えても法務局に行く必要はありません。

変えるのに必要なのは「総社員の同意」だけ

合同会社の定款変更の根拠は、会社法第637条にあります。条文は短く、次のように書かれています。

持分会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる。 出典: laws.e-gov.go.jp

読み解くと、2つのことが分かります。原則は社員全員の同意が必要だということ。そして、定款に別のルールを書いておけば、その別のルールで変えられるということです。

株式会社では、定款を変えるのに株主総会を開き、議決権の過半数を持つ株主が出席したうえで3分の2以上の賛成を得る必要があります。開催の通知を出し、議事録を作り、という手順が決まっています。合同会社にはこの仕組みがありません。社員が集まって話し合う会議体そのものが法律上用意されていないのです。だから、全員が納得していることを何らかの形で残せばそれでよい、という作りになっています。

社員が1人だけの合同会社、いわゆる一人会社であれば、その1人が同意すれば定款変更は成立します。実務上は、日付と変更内容を書いた書面に自分で署名または記名押印するだけです。これを決定書と呼んだり、同意書と呼んだりします。名称に決まりはありません。

定款に別段の定めを置くとどうなるか

社員が3人、4人と増えてくると、全員の同意を毎回取るのが負担になります。1人でも連絡が取れなければ定款が変えられない、という事態が起こりうるからです。これを避けるために、定款のほうに「定款の変更は総社員の過半数の同意による」といった条項を入れておく方法があります。会社法第637条が「定款に別段の定めがある場合を除き」と書いているのは、まさにこの余地を認めたものです。

ただし、これには注意点があります。社員の加入や持分の譲渡など、他の社員の立場に直接影響する事柄については、別の条文で全員の同意を求めている場合があります。定款のほうで緩めたつもりでも、そちらの制約が残ることがあるということです。決め方を変えるときは、変更したい事柄ごとに根拠を確認してください。判断に迷う内容であれば、司法書士に定款の条文を見せて相談したほうが早く済みます。

同意をどう記録に残すか

法律上、同意書の形式は決まっていません。それでも書面にしておくべき理由が2つあります。

1つは登記のためです。商号や目的を変えたときの変更登記では、定款を変更したことを証明する書面の添付が求められます。口頭で全員が納得していても、法務局には伝わりません。

もう1つは将来のためです。数年後に社員が入れ替わったとき、あるいは金融機関から融資を受けるときに、いつ誰の同意でどう変わったのかを説明できる状態にしておくと話が早く進みます。同意書には、日付、変更する条文の番号、変更前の文言、変更後の文言、社員全員の氏名と押印を入れておけば十分です。

書面を作ったあとは、変更後の内容を反映させた定款を1通作り直して保管します。原始定款(会社を作ったときの最初の定款)はそのまま残し、同意書と一緒に保管するのが基本です。原始定款を捨ててしまうと、あとから変更の経緯をたどれなくなります。

定款を変えても登記が要らない場合がある

ここが、費用を無駄にしないためのいちばんの分かれ目です。定款の内容がすべて登記されているわけではありません。

登記が必要になる主な変更は、商号、目的、本店の所在地、社員に関する事項(合同会社では業務執行社員と代表社員が登記されます)、資本金の額、公告の方法、存続期間を定めた場合のその期間、支店の設置や移転、といったところです。会社法第915条第1項は、登記事項に変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければならないと定めています。

これに対して、定款を変えても登記が要らない変更もあります。代表的なのが事業年度の変更です。決算月を変えたいというのはよくある相談ですが、事業年度は登記事項ではないため、社員の同意で定款を変えるだけで完了します。ただし税務署や都道府県税事務所、市区町村への異動届出は別に必要です。ほかにも、利益や損失の分配方法、社員が退社するときの持分の払戻しのルール、業務執行の細かい決め方などは、定款だけの話で終わります。

逆の方向の勘違いもあります。登記だけ変えれば済むと思い込んで、定款を直していないケースです。たとえば本店を移したときに、登記は司法書士に頼んで済ませたけれど、手元の定款は古い住所のままという会社は珍しくありません。登記と定款がずれていると、融資審査や許認可の申請で整合性を聞かれて手間が増えます。登記を伴う変更をしたら、必ず定款の側も書き換えてください。

変更の種類ごとに、手順と費用を確認する

ここからは具体的な場面ごとに見ていきます。登録免許税の額は、登録免許税法の別表第一第24号に会社の登記の種類ごとに書かれています。

商号(会社名)を変える

社員の同意で定款の商号の条文を書き換え、2週間以内に本店所在地を管轄する法務局へ変更登記を申請します。登録免許税は、別表第一第24号(一)ツの「登記事項の変更、消滅又は廃止の登記」にあたり、申請1件につき3万円です。

商号を変えるときは、法務局へ行く前に確認すべきことがあります。同じ住所に同じ商号の会社がないか、そして先に同じ名前で商標を取っている会社がないかです。登記そのものは通っても、後者に引っかかると名称の使用をやめるよう求められることがあります。変更後は、会社の実印(代表社員の印鑑)に商号が彫られている場合、印鑑も作り直して改印届を出す必要があります。

目的(事業内容)を変える

新しい事業を始めるとき、目的の欄にその事業が書かれていなければ、定款を変えて追加します。手順は商号と同じで、社員の同意のあと2週間以内に変更登記を申請します。登録免許税も同じく申請1件につき3万円です。

目的の追加でつまずきやすいのは、許認可が要る事業のときです。建設業、古物商、人材派遣、旅行業などは、その事業を行う旨が目的に書かれていることが許可の要件になっています。許可の申請より先に目的の変更登記を終えておかないと、申請そのものを受け付けてもらえません。逆に、将来やるかもしれない事業を先回りして大量に書き足すと、融資の審査で「結局何をしている会社なのか」と見られることがあります。今やる事業と、近いうちに手を付ける事業に絞るのが実務的です。

本店を移す

本店の所在地は必ず定款に書かれているため、市区町村をまたぐ移転であれば定款変更が必要です。定款に「本店は東京都渋谷区に置く」と番地まで書かずに市区町村までしか書いていない場合、同じ区の中での引っ越しなら定款を変える必要はありません。番地まで書いていれば、同じ区の中の移転でも定款変更が要ります。定款を作るときに市区町村までにとどめておくのが、後々の手間を減らす作り方です。

登録免許税は別表第一第24号(一)ヲで、本店1箇所につき3万円と定められています。ここで注意が要るのは、法務局の管轄をまたいで移転する場合です。旧所在地と新所在地の双方について登記が必要になるため、合計で6万円かかります。移転先を決める段階で、同じ管轄内か外かを調べておくと予算が立てやすくなります。

社員が入る、抜ける

合同会社では社員の氏名と住所が定款の必要記載事項なので、社員が変われば必ず定款変更になります。新しく社員が入るときは出資を受け入れる手続きも伴い、資本金の額が増えるのが通常です。

登記の費用は、変わる内容によって分かれます。業務執行社員や代表社員に関する事項の変更は、別表第一第24号(一)カにあたり、申請1件につき3万円、ただし資本金の額が1億円以下の会社であれば1万円です。ほとんどの中小の合同会社は後者にあたります。

社員が抜けるときは、持分の払戻しをどうするかという話が必ず出ます。定款に払戻しの方法が書かれていればそれに従い、書かれていなければ社員間で決めることになります。金額の決め方は会社の財産の状況によって変わり、税務上の扱いも一律ではありません。ここは税務署か税理士に事前に確認してください。決めてから相談すると、やり直しになることがあります。

資本金を増やす

社員が追加で出資する、または新しい社員が出資して入ってくると、資本金の額が増えます。資本金は登記事項なので、変更登記が必要です。

登録免許税は別表第一第24号(一)ニにより、増加した資本金の額に1000分の7を掛けた額で、これが3万円に満たないときは3万円となります。つまり、増資の額がおよそ429万円を超えたあたりから、税額が3万円を上回り始める計算です。少額の増資であれば、税額は一律3万円だと考えておけば見積もりを誤りません。

なお、出資を受け入れても全額を資本金にせず、一部を資本剰余金にする方法もあります。資本金の額が小さいほうが税務上有利になる場面があるためです。ただし合同会社の場合、株式会社と異なる制約があるので、増資の設計は実行前に税理士に確認したほうが安全です。

登録免許税の早見と、2件まとめて申請するときの計算

変更ごとの税額を並べておきます。いずれも登録免許税法の別表第一第24号(一)に定められた額です。

変更の内容 登録免許税
商号の変更 1件につき3万円
目的の変更 1件につき3万円
本店の移転 1箇所につき3万円(管轄をまたぐと合計6万円)
業務執行社員・代表社員に関する変更 1件につき3万円(資本金1億円以下は1万円)
資本金の増加 増加額の1000分の7(最低3万円)
支店の設置 1箇所につき6万円
解散 1件につき3万円
登記の更正 1件につき2万円

まとめて申請するときの計算方法は、登録免許税法第18条に書かれています。同じ申請書で2つ以上の登記を受ける場合、それぞれの税額を計算して合計する、という考え方です。商号と目的を同時に変えれば3万円と3万円で6万円になります。1件にまとめたから安くなる、という仕組みではありません。

ただし、まとめる意味はあります。申請の回数が減れば、書類の作成も法務局とのやり取りも1回で済むからです。近いうちに複数の変更を予定しているなら、時期を寄せて1回の申請にするほうが手間の面では有利です。

納付の方法については、登録免許税法第22条で、税額が3万円以下の場合には収入印紙を申請書に貼って納めることができると定められています。それを超える額は、金融機関で納付して領収証書を貼る形になります。

変更定款に収入印紙は貼らない

ここは費用の誤解が生まれやすい部分なので、はっきりさせておきます。会社を作るときに紙で定款を作ると、収入印紙4万円が必要です。国税庁が公開している印紙税額の一覧表では、定款は第6号文書として次のように整理されています。

[定款](注)株式会社、合名会社、合資会社、合同会社または相互会社の設立のときに作成される定款の原本に限ります。 4万円 出典: nta.go.jp

注意書きの「設立のときに作成される定款の原本に限ります」という一文が重要です。設立のときの原本に限られるので、設立後に定款を変更して作り直した定款には印紙税がかかりません。変更のたびに4万円がかかるのではないかと心配する声をよく聞きますが、その必要はありません。

もう1つ、公証人の認証も不要です。日本公証人連合会のページには、認証が必要なのは設立当初の定款だけであり、その後定款を変更するときは必要ないと明記されています。さらに、合名会社・合資会社・合同会社のいわゆる持分会社の定款については、設立のときですら公証人の認証を必要としないと説明されています。株式会社から法人化した経験のある人ほど「公証役場に行かなくていいのか」と不安になりますが、合同会社では行く場面がありません。

例外として、融資や取引先の求めで変更後の定款に公証人の認証を付けたい場合には、私署証書の認証に準じた扱いで6,500円の手数料で受けられると案内されています。この場合も収入印紙は貼りません。必要になるのはまれなケースですが、知っておくと選択肢が増えます。

期限は2週間。遅れるとどうなるか

会社法第915条第1項は、登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければならないと定めています。この2週間は、定款変更の効力が生じた日、つまり社員全員の同意が成立した日から数えます。

では2週間を過ぎたらどうなるのか。登記そのものは受け付けてもらえます。3か月遅れても1年遅れても、申請すれば通ります。ただし、登記を怠った場合には代表者個人に過料が科されることがあると会社法に定められており、実際に裁判所から通知が届くことがあります。金額は事案によって異なるため一律ではありません。

もう1つ、現実的な影響があります。登記簿の内容が古いままだと、取引先や金融機関が見る情報が実態とずれます。新しい事業で契約を取りたいのに、登記簿の目的にその事業が入っていない、という状態は審査で不利に働きます。期限そのものよりも、この実務上の不利益のほうが重いと考えたほうがよいでしょう。

長期間放置した場合、さらに厄介なことも起きます。登記が12年以上動いていない株式会社や5年以上動いていない一般社団法人などは、みなし解散の対象として職権で解散登記をされる制度があります。合同会社はこの制度の対象外ですが、動いていない会社という印象は登記簿から伝わります。変更があったら早めに出す、が結局いちばん楽な進め方です。

登記が終わったあとに残っている手続き

変更登記が完了しても、それで全部が終わりではありません。登記事項証明書(登記簿謄本)を取り直して、関係先に届け出る作業が残っています。

税務署には異動届出書を提出します。商号、本店、事業年度、代表者などが変わったときが対象です。都道府県税事務所と市区町村にも同様の届出が要ります。年金事務所に社会保険の適用がある場合は、名称変更届や所在地変更届を出します。労働保険に入っていれば労働基準監督署とハローワークにも届出が必要です。

さらに、銀行口座の名義変更、取引先への通知、請求書や契約書のひな形の修正、ウェブサイトの会社概要の書き換え、許認可の変更届と続きます。許認可の変更届には期限が定められているものが多く、建設業許可であれば変更から一定期間内に届け出る決まりになっています。登記が終わった時点で、届出先を書き出したチェックリストを作っておくと漏れが出ません。

自分でやるか、司法書士に頼むか

合同会社の変更登記は、申請書の様式と添付書類が決まっているため、自分で進めることも十分可能です。法務局は申請書の記載例を公開しており、相談窓口で書き方を確認することもできます。商号変更や目的変更のように内容が単純なものは、自分で申請する人が多い部類です。

一方で、司法書士に頼んだほうが結果的に早いケースもあります。社員の入退社が絡むもの、持分の譲渡を伴うもの、複数の変更が同時に起きるもの、組織の種類そのものを変えるものは、添付書類の組み合わせが複雑になります。補正(法務局からの修正指示)が入ると、そのたびに窓口へ出向くか郵送でやり取りすることになり、結局のところ時間を失います。

費用の目安としては、司法書士への報酬は登記の種類によって幅がありますが、単純な変更1件であれば数万円台、複数の変更が絡むと十数万円という水準が一般的です。ここに登録免許税が実費として乗ります。見積もりを取るときは、報酬と実費を分けて出してもらうと比較しやすくなります。

自分でやると決めた場合も、書類を作る前に一度、管轄の法務局に電話で相談の予約を入れておくことをすすめます。申請してから直すより、作る前に確認するほうが圧倒的に速いからです。

つまずきやすい5つの場面

長く続いている会社ほど、同じ形で間違えています。よく見かけるものを挙げておきます。

1つ目は、定款を変えずに登記だけ変えるパターンです。司法書士に登記を依頼すると登記は正しく通りますが、手元の定款の書き換えは会社の仕事として残ります。ここが抜けると、登記簿と定款が食い違ったまま何年も経ちます。

2つ目は、同意書を作らずに済ませるパターンです。一人会社だと、自分1人で決めたのだから書面は要らないと考えがちです。しかし登記の添付書類として求められますし、将来の証明にもなりません。1枚で済む書面なので必ず作ってください。

3つ目は、本店の移転で管轄をまたぐことに気づかず、予算を3万円で組んでしまうパターンです。管轄外への移転は6万円になります。法務局の管轄は市区町村の区切りとは一致していないため、移転先が決まった時点で確認してください。

4つ目は、目的の追加を許認可の申請より後に回してしまうパターンです。許可を出す側は登記簿を見て判断するため、順番を逆にすると申請が止まります。

5つ目は、事業年度の変更を登記が必要だと思い込むパターンです。事業年度は登記されないので、定款変更と税務署などへの異動届出だけで完了します。逆に言えば、登記が要らないぶん税務の届出を忘れやすい変更でもあります。

株式会社に変えたいときは「定款変更」では終わらない

合同会社で数年やってきて、取引先の都合や採用の事情から株式会社にしたい、という相談も増えています。ここで気をつけたいのが、これは定款変更の延長では処理できない手続きだという点です。

合同会社から株式会社への変更は、法律上は組織変更と呼ばれます。総社員の同意で組織変更計画を作り、債権者に対して異議を述べる機会を与える公告と個別の催告を行い、効力が生じたら合同会社の解散の登記と株式会社の設立の登記を同時に申請します。公告には一定の期間を置く必要があるため、思い立ってから完了まで2か月程度はみておくのが現実的です。

なお、合同会社から合名会社や合資会社に変わる場合は、組織変更ではなく種類の変更として扱われます。会社法第919条は、持分会社が他の種類の持分会社になったときは、定款変更の効力が生じた日から2週間以内に、変更前の会社について解散の登記を、変更後の会社について設立の登記をしなければならないと定めています。定款を書き換えただけでは登記簿は動かない、という点は共通しています。

どちらの場合も、単に定款の条文を差し替える話ではなく、会社を1つ閉じてもう1つ開くのに近い手続きになります。費用も期間も通常の変更登記とは桁が変わるため、検討の段階で司法書士に全体の流れと見積もりを出してもらってください。

定款の写しを求められる場面を想定しておく

定款は会社の内部文書ですが、外に出す機会は意外と多くあります。金融機関で法人口座を開くとき、融資を申し込むとき、許認可を申請するとき、大きな取引先と初めて契約するとき、補助金や助成金に応募するときなどです。

このとき求められるのは、たいてい「現在の内容が分かる定款」です。設立時の定款に変更の同意書を何枚も付けて渡す形でも通ることはありますが、読む側の手間が増えるぶん確認に時間がかかります。変更のたびに、変更後の内容を反映した定款を1通作り直し、最後のページに代表社員が現行の定款に相違ない旨を記して記名押印しておくと、そのまま提出できる状態になります。

日本公証人連合会も、電子で認証を受けた定款について、銀行などでは紙の定款を求める運用がなされていると注意を促しています。電子データで持っているから大丈夫と考えず、印刷して綴じたものも手元に1部置いておくと、急に求められたときに慌てずに済みます。

在宅ワーク市場から見た、法人化と定款変更の位置づけ

フリーランスと在宅ワークの市場を20年にわたって運営してきた立場から見ると、定款変更は「事業が次の段階に入った合図」として現れることがほとんどです。個人事業から合同会社にして、最初の1年から2年は設立時の定款のまま走り、仕事の幅が広がった時点で目的を足す。この流れが最も多いパターンです。

運営者として長く見てきて感じるのは、法人化そのものより、法人化したあとに何を扱えるようになったかのほうが受注の中身を変えている、ということです。個人では受けられなかった規模の案件、継続的な業務委託、複数人を束ねる形の仕事が入ってくるようになります。たとえばシステム開発の領域であればアプリケーション開発のお仕事のように、要件定義から運用まで長い期間で関わる案件が中心になり、契約の相手も法人であることが増えます。生成AIの導入支援のような新しい分野でも、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように企業の業務改善に踏み込む案件では、法人格が前提条件になっている募集を見かけます。

報酬の面でも、見えている金額と実際に手元に残る金額は別物です。仲介が何層も入る仕組みでは、依頼側が払った金額と受け手が受け取る金額の差が大きくなります。中間マージンが乗らない直接取引であれば、同じ予算で依頼者はより多くを頼めますし、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の仕組みが効くのは、単価そのものを上げるからではなく、この差を消すからです。法人化して固定費が増えた会社ほど、この差が経営に効いてきます。

単価の水準を把握しておくことも、定款の目的をどう書くかを決めるうえで役に立ちます。ソフトウェア作成者の年収・単価相場著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような職種別のデータを見ると、同じ「制作」でも領域によって報酬の相場がかなり違うことが分かります。目的に書く事業を決めるときは、やりたい事業だけでなく、その領域の相場と案件量を合わせて見たほうが現実的な判断ができます。

もう1つ、法人化のあとに効いてくるのが書類の質です。契約書や請求書、業務報告の体裁が整っている会社は、取引先の経理部門から信頼されて支払いも滞りにくくなります。文書の基本を体系的に押さえたい場合はビジネス文書検定のような資格が参考になりますし、技術系のインフラ案件を扱うならCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が提案の裏づけになります。定款の目的に書ける事業を広げるということは、その事業を説明できる裏づけも併せて用意するということです。

支払いが止まったときの備えも、法人化した段階で一度考えておく価値があります。取引の規模が大きくなるほど、1件の未回収が資金繰りに与える打撃も大きくなるからです。回収の手順と費用感については未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】が具体的です。あわせて、発注側との力関係を法律がどう調整しているかを押さえておくと交渉の土台になります。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストでは、発注書に何が書かれていなければならないかが整理されています。会計や監査の周辺で仕事の幅を広げたい人には会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】も参考になります。

定款は、作ったら終わりの書類ではありません。会社が何をする会社なのかを、その時々の実態に合わせて書き直していく文書です。総社員の同意という軽い手続きで変えられるようになっているのは、合同会社が変化を前提にした器だからだと考えると、手続きの位置づけが見えやすくなります。

よくある質問

Q. 合同会社の定款変更に公証人の認証は必要ですか?

必要ありません。日本公証人連合会は、公証人の認証が必要なのは設立当初の定款だけで、その後定款を変更するときは不要だと説明しています。さらに合同会社は設立時の定款でも認証が要りません。変更後の定款は、社員の同意書と一緒に会社で保管しておけば足ります。

Q. 定款を変えたら必ず登記も必要になりますか?

いいえ。商号、目的、本店、社員に関する事項、資本金などは登記事項なので変更登記が必要ですが、事業年度や利益の分配方法のように登記されない事項もあります。登記されない事項なら社員の同意で定款を書き換えるだけで完了します。ただし事業年度を変えた場合は税務署などへの異動届出が別に必要です。

Q. 商号と目的を同時に変えると費用は安くなりますか?

登録免許税は安くなりません。登録免許税法第18条により、1つの申請書で2つ以上の登記を受ける場合はそれぞれの税額を合計します。商号3万円と目的3万円で計6万円です。ただし申請の手間は1回で済むので、時期を寄せてまとめるメリットはあります。

Q. 定款変更から登記までの期限を過ぎてしまいました。どうなりますか?

期限を過ぎても登記の申請自体は受け付けてもらえます。会社法は登記事項の変更から2週間以内の登記を定めており、怠った場合には代表者に過料が科されることがあります。気づいた時点ですみやかに申請してください。登記簿が実態とずれたままだと、融資審査や許認可の申請で不利に働きます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月19日最終更新:2026年9月22日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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