公告のやり方を変えるときの定款変更と登記

前田 壮一
前田 壮一
公告のやり方を変えるときの定款変更と登記

この記事のポイント

  • ✓公告方法の変更に必要な定款変更と登記の手順をまとめました
  • ✓電子公告を選んだときに増える義務
  • ✓そして変更せずに決算公告だけウェブで済ませる方法まで

公告方法を変えたい。そう考えて調べ始めると、定款の書き換えと登記という2つの手続きが出てきて、どちらから手を付ければいいのか分かりにくくなります。まず、安心してください。手順そのものは複雑ではありません。株主総会で定款を書き換えて、2週間以内に登記する。これだけです。ただし、変更先に電子公告を選ぶと後々の義務が増えるので、そこだけは先に知っておく必要があります。この記事では、手順と費用、そして変更しないほうがよい場合までを、法令と公式資料で確かめた範囲で整理します。

公告方法とは何で、なぜ登記簿に載っているのか

公告とは、会社が世の中に向けて何かを知らせることです。決算の内容、合併すること、資本金を減らすこと、解散すること。会社法はいくつかの場面で公告を義務づけていて、その知らせをどこに出すかを「公告方法」と呼びます。

会社法が用意している選択肢は3つです。官報に掲載する方法、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法、そして電子公告。このいずれかを定款で決められます。

そして、決めなかった場合はどうなるか。会社法には、定めがない会社の公告方法は官報とする、と書かれています。つまり、設立のときに何も決めていなければ自動的に官報になります。設立時の定款を見返さずに来た会社は、まずここを確認するところから始まります。

公告方法は登記事項です。定款の定めがあるならその定めが登記され、定めがないなら官報である旨が登記されます。電子公告を選んだ場合は、そのアドレスも登記されます。だから、取引先が登記簿を取れば、その会社がどこに公告を出すことにしているかが分かります。

ここに実務上の落とし穴があります。登記簿には「官報に掲載する方法」と書いてあるのに、官報を検索しても決算公告が一度も出てこない。この食い違いは外から確認できてしまいます。公告方法を変えるかどうかを考えるとき、この点も判断材料に入れてください。

変更の手続きは2段階

公告方法を変える流れは、次の2段階です。

第1段階は、定款を書き換えることです。 公告方法は定款に書いてある事項なので、変えるには定款そのものを直す必要があります。株式会社の定款を変えるには株主総会の決議が要ります。

この決議は、普通の決議より重い要件が課されています。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。定款で要件を加重している会社もあるので、自社の定款も確認してください。

株主が創業者1人だけなら、実質的には書面を1枚作るだけの話になります。株主が複数いて意見が割れている場合は、ここが最大の関門です。

なお、定款を書き換えるのに公証人の認証は要りません。認証が必要なのは会社を作るときの最初の定款だけです。株主総会の議事録を作って、それを定款の変更の証拠として残す形になります。

第2段階は、登記することです。 定款を変えただけでは登記簿の記載は変わりません。法務局に変更登記を申請して初めて、外から見える情報が更新されます。

期限があります。会社法には、登記事項に変更が生じたときは2週間以内に本店の所在地で変更の登記をしなければならない、と定められています。株主総会で決議した日が起算点になります。

期限を過ぎたらどうなるか。法務局のページには、登記すべき期間内に登記を怠り、その後に登記申請をする場合であっても、そのことだけをもって申請が却下されることはないが、会社の代表者に対して裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があると書かれています。申請自体は受け付けてもらえますが、遅れたこと自体の責任は残ります。決議したらそのまま登記まで進めるのが安全です。

費用はいくらかかるか

かかる費用は、登録免許税と、専門家に頼む場合の報酬です。

登録免許税は、国税庁が公開している税額表で確認できます。公告方法の変更は「登記事項の変更、消滅または廃止の登記」にあたり、申請件数1件につき3万円です。

ここで知っておくと得をする点があります。この3万円は申請1件あたりの金額なので、他の変更登記と同じタイミングで出せば、まとめて1件として扱われる場合があります。本店を移転する、目的を変える、役員が変わる。そういう予定があるなら、同時に出すことで税額を抑えられる可能性があります。区分の仕方によって扱いが変わるので、まとめて出す予定があるなら申請前に法務局へ確認してください。

なお、役員の変更に関する登記は、資本金の額が1億円以下の会社なら1件につき1万円という扱いになっています。何と何が同じ区分に入るかで金額が変わるので、複数の変更をまとめるときは事前の確認が効きます。

司法書士に頼む場合は、登録免許税とは別に報酬が乗ります。金額は事務所によって違うので、見積もりを取って比べてください。自分で申請すれば登録免許税だけで済みます。

申請の方法は3通りあります。電子証明書を持っているならオンライン申請、持っていないなら二次元バーコード付きの書面申請、あるいは通常の書面申請です。法務局は2番目を勧めていて、電子証明書がなくてもオンライン申請と同じ利点が得られると案内しています。

申請書の様式については、正直に書いておきます。法務局の申請書様式のページに並んでいるのは、役員変更、商号や目的の変更、本店移転といったよく使うものです。公告方法の変更だけのための様式は用意されていません。変更登記の様式を使い、登記すべき事項の欄に新しい公告方法を書く形になります。

登記申請に付ける書類

申請書のほかに、何を添えるかを確認しておきます。ここで不足があると、法務局から連絡が来て手続きが止まります。

株主総会の議事録。 定款を変えたことを示す書類です。いつ、どこで開き、何人が出席し、どの議案にどれだけの賛成があったかを書きます。公告方法を変える議案なら、変更後の文言をそのまま書き込んでおくと、登記すべき事項との食い違いが起きません。

株主リスト。 ここが見落とされがちです。商業登記規則には、登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合、申請書に株主リストを添付しなければならないと定められています。載せるのは、議決権の割合が高い順に上位の株主で、10名か、割合を多い順に足していって3分の2に達するまでの人数か、少ないほうの人数です。それぞれの氏名または名称と住所、持っている株式の数と議決権の数、そして議決権の割合を書きます。

株主が1人の会社なら1行で済みます。株主が多い会社でも、上限は10名までなので、全員分を書く必要はありません。

委任状。 司法書士などの代理人に申請を任せる場合に必要です。自分で申請するなら要りません。

定款そのものを添える必要は、原則としてありません。変更後の定款は会社で保管しておき、求められたときに出せる状態にしておきます。

申請書に書く「登記すべき事項」の欄には、変更後の公告方法と、変更した年月日を書きます。年月日は、定款変更を決議した株主総会の日です。将来の日付を効力発生日として決議した場合は、その日になります。

議事録と申請書には何と書くか

書類の名前だけ分かっても、実際の文面が浮かばないと手が止まります。どこに何を書くのかを具体的にしておきます。

議事録には、まず議案の見出しを立てます。「第1号議案 定款一部変更の件」のような形です。続けて、議長が公告方法を変えたい理由を説明し、定款の条文をどう書き換えるかを諮り、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を得て承認可決した、という流れを書きます。

大事なのは、変更前と変更後の条文をそのまま並べることです。変更前が「当会社の公告は、官報に掲載する方法により行う」であれば、変更後として「当会社の公告方法は、電子公告とする」と書きます。事故などで電子公告ができない場合の代わりの方法を定款に置くなら、その一文も変更後の条文に含めます。条文を並べておけば、登記すべき事項との食い違いが起きません。

議事録の末尾には、開催した日時と場所、議決権を行使できる株主の数とその議決権の数、出席した株主の議決権の数、議長と出席した役員の氏名を書きます。登記所が見るのは、この記載から決議の要件を満たしていると読み取れるかどうかです。

申請書の「登記の事由」には、公告方法を変えた旨を書きます。「登記すべき事項」の欄には、変更後の公告方法と、変更した年月日を書きます。電子公告に変えるなら、公告を掲載するページのアドレスも書きます。代わりの方法を定款に定めたなら、その方法も並べます。

この欄の書き方は細部が決まっているので、初めてなら申請の前に登記所へ確認してください。公告方法の変更だけを扱った様式は用意されていないため、記載例をそのまま写すことができない部分です。電話で聞けばその場で教えてもらえます。

決議から登記までを日付で並べる

期限の感覚をつかむために、日付に置き換えてみます。3月決算の会社が、6月26日の定時株主総会で公告方法の変更を決議した場合です。

6月26日。総会で定款変更を決議します。議事録はこの日のうちに作ります。記憶が新しいうちに書いたほうが、出席者の議決権の数などを正確に書けます。

6月27日から30日。株主リストを作ります。議決権の割合を計算する作業があるので、株主名簿を開きながら進めます。あわせて申請書を作り、登録免許税3万円分の収入印紙を買っておきます。

7月1日。申請します。窓口に持ち込むか、郵送するか、オンラインで送信します。郵送の場合、申請日になるのは登記所に届いて受け付けられた日です。投函した日ではありません。

7月10日。ここが期限です。6月26日の翌日から14日を数えた日に当たります。7月1日に出していれば9日分の余裕が残ります。

効力発生日を将来に置いて決議した場合は、起算点がその日に移ります。総会の日から2週間ではなくなるので、議事録に効力発生日を書いたなら、そこを基準に日程を引き直してください。

決算公告の日程と重なることも意識しておきます。3月決算なら7月から8月が公告の作業時期です。官報を使うなら申し込みから掲載まで4週間ほどかかるので、総会が終わった直後に取次店へ連絡する段取りが必要になります。公告方法の変更を同じ時期に進めるなら、登記の申請と公告の申し込みを別々の担当に振り分けておくと止まりません。

官報から日刊新聞紙へ変えるという選択

あまり知られていない使い方も紹介しておきます。公告方法を日刊新聞紙に変えるという判断が、特定の場面でなされることがあります。

資本金を減らす手続きでは、債権者に対して異議を述べる機会を与えるため、官報への公告に加えて、知れている債権者へ個別に知らせる必要があります。ただし、公告方法が日刊新聞紙または電子公告の会社であれば、官報とその方法の両方で公告することにより、個別の通知を省略できる仕組みがあります。いわゆる二重公告と呼ばれるやり方です。

債権者の数が多い会社では、一人ひとりに通知を出す手間とコストが大きくなります。そこで、減資の前に公告方法を官報から日刊新聞紙へ変えておき、二重公告で個別通知を省くという組み立てが検討されます。

この頁では二重公告をするために、既存の公告方法(実際は公告媒体といったほうがいいかも)である官報を日刊新聞に変更してから減資の手続を行う方法とその諸問題を紹介する。なお、開催する株主総会の回数を極力少なくし、登録免許税も最安になる方法を模索する。 出典: niitsu-office.com

ただし、これは費用の計算が必要な判断です。日刊新聞紙の掲載料は官報よりかなり高く、個別通知を省いて浮く手間と比べて本当に得なのかは、債権者の人数によって変わります。株主総会を何回開くか、登記をどうまとめるかでも登録免許税が変わります。実行するなら、司法書士に具体的な条件を伝えて試算してもらうのが確実です。

こうした特殊な事情がない会社にとっては、日刊新聞紙を選ぶ理由はほとんどありません。

電子公告に変えると、義務が1つ増える

変更先として電子公告を選ぶ会社が増えています。ただ、ここには知っておくべき負担があります。メリットだけ並べても仕方がないので、正直に書きます。

電子公告を選ぶと、会社が出す公告全般を自社サイトで出せるようになります。合併のお知らせも、資本金を減らすお知らせも、解散のお知らせも。官報の枠代がその都度かからなくなるので、こうした場面が多い会社には効きます。

代わりに、義務が1つ増えます。電子公告で公告をするときは、その内容が本当にインターネット上に置かれていたかどうかを、法務大臣の登録を受けた調査機関に調べてもらわなければなりません。費用がかかり、金額は調査機関ごとに異なるので、検討するなら見積もりが要ります。

そして、ここが分かれ目です。調査の対象から決算公告だけが明確に外されています。条文が対象を定めるところで、決算の公告を除くと書かれているためです。つまり、毎年の決算公告に調査は要りません。調査が必要になるのは、合併や減資や解散といった、滅多に起きない場面です。

掲載を続ける期間も公告の種類で変わります。決算公告なら株主総会の終結日から5年。期間内に異議を述べてもらう種類の公告ならその期間が終わる日まで。それ以外は、始めてから1か月です。

サーバーが止まった場合の救済も用意されています。次の3つをすべて満たせば、止まっていた時間があっても公告の効力に影響しないとされています。1つ目は、止まったことについて会社に悪意も重い過失もないか、正当な理由があること。2つ目は、止まっていた時間の合計が掲載期間の10分の1を超えないこと。3つ目は、止まったことを知った後すみやかに、止まった旨と時間と内容を、その公告に付け加えて公告することです。

もう1つ、電子公告を選ぶときに一緒に決めておける事項があります。事故その他やむを得ない事由で電子公告ができない場合の代わりの方法として、官報または日刊新聞紙のどちらかを定款で定めておくことです。定めておけば、サイトが長期間使えなくなったときの逃げ道になります。定めるなら定款に書き、登記もします。

変更しないほうがよい場合もある

ここまで手順を書いてきましたが、そもそも変更が必要ない場合があります。むしろ、こちらに当てはまる会社のほうが多いはずです。

多くの人が「決算公告を自社サイトで済ませたい」という動機で公告方法の変更を調べ始めます。ところが、その目的だけなら公告方法を変える必要はありません。

会社法には、貸借対照表の内容を、定時株主総会が終わった日から5年を経過する日まで、インターネットで誰でも見られる状態に置き続ければ、官報にも新聞にも載せなくてよいという定めが別に用意されています。この道を使うのに、公告方法を電子公告に変える必要はありません。登記簿の公告方法が「官報に掲載する方法」のままで構わないのです。

必要なのは、そのページのアドレスを登記することだけです。登記事項としては、公告方法の欄とは別の場所に載ります。登録免許税は同じく3万円で、1回きりです。

この道を選ぶと、電子公告の調査義務はそもそも発生しません。合併や減資のときだけ官報に払う。決算公告は毎年ゼロ円。中小企業にとっては、これが最も負担の軽い組み合わせになります。

逆に、公告方法そのものを変えたほうがよいのは、次のような場合です。合併や会社分割、減資を近く予定していて、官報の枠代を減らしたい。日刊新聞紙を公告方法にしているが実際には使っておらず、官報に戻したい。設立時に司法書士が置いた内容が実態と合っていない。こうした事情があるなら、変更する意味があります。

反対の見方も紹介しておきます。

会社設立の手続きを進めていると、定款の項目に「公告方法」というものが出てきます。「官報」と「電子公告」、選択肢を見て「電子公告の方が今っぽいし、無料っぽくて良さそう」と感じた方もいるのではないでしょうか。実はそこに、ちょっとした落とし穴があります。非上場の中小企業であれば、結論としては「官報」を選んでおく方が安心です。その理由を、費用面の見落としポイントとあわせて解説します。 出典: hitodeki.com

これは公告方法そのものを電子公告に変える選択に向けられた指摘で、妥当だと思います。調査機関への費用と、掲載を切らせない義務。合併も減資も予定がない会社が背負う必要はありません。

官報を使う場合の実際の費用と日数

比較のために、官報の金額と時間も確かめておきます。判断の材料になります。

全国官報販売協同組合が公開している料金表によると、会社等の枠付公告は普通で1枠あたり税込40,882円、ページを指定するなら税込54,979円です。1枠の大きさは2.9センチメートル×6.1センチメートルで、活字は8ポイント。行単位で載せる形なら、会社等は1行あたり税込3,947円で、1行は22文字詰めです。決算公告は2枠に収まることが多く、その場合は税込81,765円になります。

なお、料金は2026年4月1日掲載分から一部が改定されています。特殊法人や地方公共団体の枠付公告が1枠あたり税込37,165円から税込40,882円に上がりました。古い解説記事に載っている金額とは差があるので、最新の料金表で確かめてください。

料金は全国一律です。校正のための追加費用はかかりませんが、クレジットカードは使えません。支払い方法は取次店ごとに違うので、申し込み先に確認が要ります。

日数もかかります。決算公告は本紙ではなく号外に載るため、申し込みから掲載までに間が空きます。2026年9月18日に申し込んだ場合、本紙掲載の目安は10月1日、号外掲載の目安は10月15日です。およそ4週間先になります。

流れは、申し込みと入稿、取次店からの連絡と原稿作成、校正、校了、印刷と掲載という順番です。校了を伝えた後は原則として修正も取消しもできないので、数字や日付の確認は校正の段階で終わらせます。

官報そのものは官報発行サイトで読めます。2025年4月1日に開設されたサイトで、直近90日間は無料で閲覧できます。自社の公告がきちんと載ったかを確かめるときにも使えます。

5年分の費用を並べて比べる

判断の材料として、決算公告だけが目的の会社について、5年間で出ていくお金を3つの道で比べます。株主が創業者1人で、合併も減資も予定がない会社を想定します。

1つ目の道は、公告方法を官報のままにして、毎年の決算公告を官報に出し続ける形です。枠付公告は1枠で税込4万円あまりなので、決算公告が2枠に収まっても年に8万円あまりかかります。5年続けると40万円を超えます。登記の費用はかかりません。

2つ目の道は、公告方法は官報のままにして、貸借対照表の内容を自社サイトに置き続ける形です。アドレスを登記するための登録免許税が3万円、これが1回だけ。毎年の掲載料はかかりません。5年間の合計は3万円です。かかるのはページを5年間消さずに置いておく手間だけになります。

3つ目の道は、公告方法そのものを電子公告に変える形です。登録免許税が3万円で1回。決算公告は調査の対象から外れているので、毎年の費用はかかりません。5年間で3万円です。ただし、合併や減資、解散をすることになった場面では、調査機関に調べてもらう費用が乗ります。

並べてみると、1つ目の道を続ける理由はほとんどありません。差は5年で37万円を超えます。ウェブサイトを持っていない会社だけが、この道に残ることになります。

2つ目と3つ目の違いは、将来の予定で決まります。合併も減資も見えていないなら2つ目です。手続きが軽く、調査の義務も発生しません。数年のうちに合併や減資を考えているなら3つ目に意味が出てきます。官報の枠代を毎回払う代わりに、自社サイトに載せられるようになるからです。

どちらを選ぶ場合でも、登録免許税の3万円は申請1件あたりの金額です。役員の変更や本店の移転が近いうちにあるなら、同じ時期に出すことで1件にまとまる可能性があります。予定があるなら、申請の前に法務局へまとめられるかを確認してください。

株式会社以外の法人はどうなるか

ここまでは株式会社の話でした。法人の形が違うと、決議の仕方が変わります。

合同会社などの持分会社。 公告方法を定款で決められる点は株式会社と同じです。決めていなければ官報になるという扱いも変わりません。違うのは定款を変える手続きで、持分会社は、定款に別の定めがある場合を除き、総社員の同意によって定款を変更します。株主総会の3分の2ではなく、社員全員の同意です。社員が1人なら書面1枚、複数いるなら全員の署名が要ります。

なお、合同会社には決算公告の義務がありません。決算の公告を義務づけている会社法440条は株式会社についての規定で、持分会社には同じ定めが置かれていないためです。それでも公告方法を定めておくのは、解散したときに債権者へ知らせる公告など、別の場面で公告が必要になるからです。

一般社団法人と一般財団法人。 選択肢が1つ多くなっています。官報、日刊新聞紙、電子公告に加えて、不特定多数の者が公告の内容を知ることができる状態に置く措置として法務省令で定める方法、というものが用意されています。具体的には、事務所の見やすい場所に掲示する方法がこれに当たります。

小規模な法人にとっては、この4つ目が実務的な選択肢になります。官報の掲載料もかからず、ウェブサイトの維持も不要だからです。ただし、掲示している場所に行かなければ誰も読めないので、外部への情報提供という点では弱くなります。会員に対する説明を重視する法人か、対外的な信用を重視する法人かで選び方が変わります。

法人の形ごとに決議の要件が違うので、変更を検討するときは、まず自社の定款で公告方法と定款変更の条項を確認してください。

勘違いされやすい5つ

この手続きは、思い込みで遠回りをする人が多い領域です。よくある5つを並べます。

定款を書き換えれば登記簿も変わる、という勘違い。定款と登記簿は別物です。定款を直しただけでは登記簿の記載は古いままで、外から見える情報は変わりません。登記の申請まで進めて初めて更新されます。

決算公告をウェブで出すには電子公告にしなければならない、という勘違い。これが最も多いものです。公告方法が官報のままでも、貸借対照表の内容を5年間ウェブに置き続ければ、官報にも新聞にも載せなくてよい定めが別に用意されています。必要なのはそのアドレスを登記することだけです。

電子公告にすると毎年調査の費用がかかる、という勘違い。条文は調査の対象から決算公告を除いています。毎年の決算公告に調査は要りません。費用が発生するのは、合併や減資、解散といった場面だけです。

定款の変更に公証人の認証が必要、という勘違い。認証が要るのは会社を作るときの最初の定款だけです。その後の変更は、株主総会で決議して議事録を残せば足ります。

期限を過ぎたら申請を受け付けてもらえない、という勘違い。2週間を過ぎてから出しても、そのことだけで却下されることはありません。ただし、会社の代表者に対して裁判所から100万円以下の過料が科される可能性が残ります。遅れたことに気づいたら、そのまま止めずに申請してください。

変更したあと、何が起きるか

登記が済んだら、いくつか後始末があります。

登記簿の公告方法の欄が書き換わるので、取引先が登記簿を取れば新しい内容が見えます。銀行や主要な取引先に伝えておく必要はありませんが、電子公告に変えた場合は、実際にそのアドレスで公告を出せる状態にしておかないと意味がありません。

定款の原本も更新します。株主総会の議事録と一緒に保管し、次に定款の写しを求められたときに古い内容を渡さないようにします。金融機関や許認可の手続きで定款の提出を求められる場面は意外とあります。

そして、公告を出す作業そのものを誰が回すかを決めます。ここが決まっていないと、手続きだけ整えて中身が動かない状態になります。実際、公告方法を電子公告に変えたのに決算公告を一度も載せていない会社を見たことがあります。制度を変えるより、運用を作るほうが難しい。これは皆さんにも同じことが起きると思います。

決算公告を出す時期は、定時株主総会の終結後、遅れずにとされています。3月決算の会社なら6月下旬に総会を開くことが多いので、7月から8月にかけてが作業の山になります。官報を使うなら4週間前倒しで動く必要があるので、総会の直後に取次店へ連絡する段取りにしておきます。

年に一度の手続きを回す人をどう確保するか

ここからは、市場を長く見てきた立場からの観察です。

手続きの変更は1回で終わりますが、公告そのものは毎年続きます。止まる会社の理由は、判断ではなく人手であることがほとんどです。決算を締めて申告して、株主総会の議事録を作って。そこで力尽きて、公告が落ちる。これを何度も見てきました。

年に1度、数時間の仕事です。正社員を雇う規模ではありません。外部に業務委託で頼むのが現実的な解になります。編集部が取材した中小メーカーの管理担当は、手続きまわりを一人で抱えていた時期は毎年公告が後回しになっていたものの、原稿の作成とページの更新を外部に切り出してから止まらなくなったと話していました。

公告のページを作る作業を頼むなら、まず相場を知っておくと交渉が早く終わります。ソフトウェア作成者の年収・単価相場は、開発系の職種の年収と単価を並べたページで、短期の作業にどの程度の予算を見ておけばよいかの目安になります。

依頼する仕事の中身を整理したいときは、アプリケーション開発のお仕事が参考になります。どんな工程があって、どこを切り出して外に出せるのかが具体的に書かれているので、自社で何を頼むべきかを言葉にするのに使えます。

文書を整える側の仕事として任せたい場合は、ビジネス文書検定のページが判断材料になります。この資格が何を測るもので、どういう仕事に結びつくのかが整理されています。

外に出すときは、契約の形も先に決めておきます。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストは、発注書に何を書いておくべきかを項目ごとに並べた記事です。発注する側が最初に整えておけば、後の行き違いが減ります。

そして、運営者として見てきた限りで言えることがあります。仲介の手数料が乗らない直接の取引では、同じ予算で依頼する側はより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。手数料0%の強みは、金額そのものよりこの構造にあります。年に1度しか発生しない仕事ほど、毎年相手を探し直すコストが重くのしかかります。長く続いている会社を見ていると、1回ごとの値段を削るのではなく、来年も同じ人に頼める状態を作ることに時間を使っています。

公告方法の変更は、登記を1回出せば終わる作業です。難しいのはその後で、毎年の公告を出し続けられるかどうか。手続きを変える前に、誰がそれを回すのかを決めておいてください。順番を逆にすると、整えた制度が使われないまま残ります。

よくある質問

Q. 公告方法を変えるには何が必要ですか?

株主総会で定款を書き換え、2週間以内に変更登記を申請します。定款変更の決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。定款の変更に公証人の認証は要りません。

Q. 公告方法の変更にかかる費用はいくらですか?

登録免許税が申請1件につき3万円です。国税庁の税額表で「登記事項の変更、消滅または廃止の登記」に当たります。他の変更登記と同時に申請すれば1件にまとまる場合があるので、本店移転や目的変更の予定があるなら事前に法務局へ確認してください。司法書士に頼む場合は別途報酬がかかります。

Q. 決算公告を自社サイトで出したいのですが、公告方法を電子公告に変える必要がありますか?

変える必要はありません。公告方法が官報のままでも、貸借対照表の内容を株主総会の終結日から5年を経過する日まで公開し続ければ、官報にも新聞にも載せなくてよいことになっています。必要なのはそのページのアドレスを登記することだけで、電子公告調査の義務も発生しません。

Q. 電子公告に変えると毎回調査費用がかかりますか?

決算公告にはかかりません。電子公告で公告する場合は法務大臣の登録を受けた調査機関に調査を求める義務がありますが、条文でその対象から決算公告が除かれています。調査が必要になるのは合併や資本金の減少、解散といった場面で、費用は調査機関ごとに異なるため見積もりを取ることになります。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月14日最終更新:2026年9月22日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方