引き継ぎ書の書き方|業務ごとにまとめる項目と例


この記事のポイント
- ✓業務ごとに書く項目と記入例に分けて解説します
- ✓営業・経理・総務・Web担当・進行中の案件など業務別の例
- ✓パスワードや個人情報の扱い
異動や退職、休職が決まって引き継ぎ書を作ることになったものの、何から書けばよいのか分からない。思いつくままに書くと抜けが出そうで、かといって全部を書こうとすると終わらない。引き継ぎ書の書き方で悩む人の多くは、この「何を、どこまで、どの順番で」で手が止まっています。
結論から言うと、引き継ぎ書は「業務の一覧」「業務ごとの目的と手順」「関係者と連絡先」「進行中の案件と期限」「資料と道具の保存場所」の5つを、後任が1人で動ける粒度で書けば役目を果たします。書く順番は、まず業務を全部書き出し、次に業務ごとに目的と手順を書き、最後に進行中の案件を整理する流れが最も抜けが少ない方法です。この記事では、基本の項目、作る手順、営業・経理・総務・Web担当・進行中の案件など業務ごとに書く項目と記入例、分かりやすく書くコツ、注意点までを順に説明します。進行中の仕事を担当と期限つきで後任と共有する方法として、Pinatecaのようなボード型の管理サービスを使う方法も紹介します。
引き継ぎ書とは
引き継ぎ書とは、担当していた業務を後任の人に渡すときに、その業務を続けるために必要な情報を1つにまとめた文書のことです。業務引継書、引継書と呼ばれることもあります。
業務マニュアルとの違い
似たものに業務マニュアルがあります。違いを整理すると次のようになります。
| 項目 | 引き継ぎ書 | 業務マニュアル |
|---|---|---|
| 目的 | 特定の担当者から後任へ仕事を渡す | 誰がやっても同じ手順で進められるようにする |
| 作る時期 | 異動・退職・休職などが決まったとき | 平時に、業務ごとに作る |
| 中心になる内容 | 進行中の案件、関係者、注意点、今の状況 | 手順そのもの |
| 使う期間 | 引き継ぎの前後の数か月が中心 | 業務が続く限り使う |
業務マニュアルが「手順の説明書」なら、引き継ぎ書は「今の状況を含めた申し送り」です。すでに業務マニュアルがある業務は、引き継ぎ書には「マニュアルの保存場所」と「マニュアルに書いていない例外や今の状況」だけを書けば済みます。マニュアルがない業務は、引き継ぎ書の中で手順まで書くことになるので、手間がかかります。
なぜ口頭だけでは足りないのか
隣の席で一緒に作業しながら教えれば十分だと思うかもしれません。しかし口頭の説明は、聞いた側が覚えきれないうえ、前任者がいなくなった後で確かめる手段がありません。月に1回、年に1回しか発生しない業務は、引き継ぎの期間中に一度も実際の作業が来ないこともあります。文書にしておけば、後任は必要になったときに読み返せます。
引き継ぎ書に書く基本の項目
どんな業務でも、引き継ぎ書には次の項目を入れておくと抜けが減ります。
| 項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 基本情報 | 前任者と後任の名前、引き継ぎの日付、引き継ぎ後の前任者の連絡先 |
| 業務の一覧 | 担当していた業務の名前を全部。頻度(毎日・毎週・毎月・年に1回・不定期)も添える |
| 業務の目的 | その業務が何のためにあるのか、誰の役に立っているのか |
| 手順 | 業務を進める順番。マニュアルがあれば保存場所 |
| 期限と時期 | 締め切りや、毎月何日に何をするかといった時期 |
| 関係者 | 社内外の相手の名前、部署、連絡先、やりとりの注意点 |
| 進行中の案件 | 今動いている仕事の状況、次にやること、期限 |
| 資料と道具 | ファイルの保存場所、使うシステムや道具、権限の申請先 |
| 判断の基準 | 迷ったときにどう決めてきたか。例外の扱い |
| 過去のトラブル | 起きたことと、そのときの対応 |
このうち、上位の解説記事の多くが強調しているのが「業務の目的」です。手順だけが書かれていると、後任は想定外のことが起きたときに判断できません。業務の改善について発信しているメディアでも、次のように書かれています。
まず記載すべきなのは、業務の全体像と目的(Why) です。良くない引き継ぎ書は、いきなり手順(How)から書き始めてしまいます。しかし、業務の全体像や目的が理解できていなければ、後任者は判断軸を持てず、作業が機械的になってしまいます。 出典: lean-operation.com
たとえば「毎週金曜日に売上の表を部長に送る」という業務なら、目的は「月曜の会議で前週の動きを議論するため」かもしれません。目的が分かっていれば、金曜日が祝日のときに木曜日に送るべきか、月曜の朝でも間に合うのかを、後任が自分で判断できます。
引き継ぎ書を作る手順
引き継ぎ書は、いきなり文章を書き始めるより、次の順番で進めると抜けが少なく、時間も短く済みます。
- 業務を全部書き出す。1週間、1か月、1年の予定表やメールの送信履歴を見ながら、担当していた業務を箇条書きにします。年に1回の業務(決算の資料作り、契約の更新、年末の挨拶状など)を忘れやすいので、去年の同じ時期の予定表も見返します
- 業務に優先順位を付ける。止まると困る業務、期限が近い業務、後任が初めて扱う業務から先に書きます
- 業務ごとに、目的・手順・期限・関係者を書く。上の基本の項目を使い、1業務につき1ページ程度を目安にします
- 進行中の案件を整理する。今動いている仕事について、状況、次にやること、期限、相手を書きます
- 資料と道具の一覧を作る。ファイルの保存場所、使うシステム、必要な権限を書き出します
- 後任に読んでもらい、分からない点を直す。書いた本人には当たり前のことでも、後任には分からないことがたくさんあります。読んでもらって質問が出た箇所を書き足します
書き出しの段階で、1日の作業を記録してみるのも有効です。引き継ぎが決まった日から1週間、自分が何をしたかを30分単位でメモしておくと、無意識にやっていた作業まで拾えます。
全体の分量は業務の数によりますが、担当業務が10個前後なら、A4で10〜20ページ程度になることが多いはずです。分量より、後任が1人で業務を進められるかどうかで判断してください。
引き継ぎ書を後任に渡すときは、ファイルを送るだけで終わらせず、30分から1時間ほど時間を取って全体を一緒に読み合わせるのがおすすめです。読み合わせの中で後任が引っかかった箇所は、その場で印を付け、後で書き足します。前任者が説明したつもりでも伝わっていない部分は、こうして一緒に読まないとなかなか見つかりません。
業務ごとに書く項目と記入例
業務の種類によって、引き継ぎ書に特に書いておきたい項目は違います。代表的な業務ごとに整理し、記入例を示します。例の社名や名前は仮のものです。
営業・顧客対応
営業や顧客対応の引き継ぎでは、相手との関係を途切れさせないことが最も大事です。
書いておきたい項目
- 担当顧客の一覧と、それぞれの取引の内容、取引の始まった時期
- 先方の担当者の名前、役職、連絡の取り方(メールを好むか電話を好むかなど)
- 取引の条件(価格、支払いの条件、納期の決まり)
- 商談の進み具合と、次の約束
- 過去にあった要望やクレームと、その対応
記入例
- 顧客名:株式会社〇〇(取引開始は3年前)
- 先方担当:営業部の△△課長。連絡はメールが基本。急ぎのときだけ携帯に電話
- 取引内容:毎月の消耗品の定期納品。単価は年1回、4月に見直し
- 進行中:来期の数量について見積もりを10月末までに提出する約束
- 注意点:昨年、納品の遅れで一度お詫びに伺った。それ以降、出荷日を前日にメールで知らせている
最後の「注意点」のように、相手との間で決まった慣習は、前任者の頭の中にしかないことが多いものです。これが抜けると、後任が知らずに慣習を破り、関係がこじれることがあります。
経理・事務
経理や事務の引き継ぎでは、期限と手順の正確さが最も大事です。
書いておきたい項目
- 月ごと、年ごとの作業の予定表(何日に何をするか)
- 支払いと入金の確認の手順
- 使っている会計ソフトや表計算のファイルと、その保存場所
- 書類の保管場所と保管のルール
- 例外の処理(期限を過ぎた請求書、金額の違う入金など)の扱い
記入例
- 業務名:毎月の支払いの処理
- 目的:取引先への支払いを期限までに漏れなく済ませるため
- 時期:毎月20日までに請求書を集め、25日に振り込む。25日が土日祝日なら前の営業日
- 手順:届いた請求書を会計ソフトに入力し、部長の確認を受けてから振り込みを予約する
- 例外:請求書の金額が注文書と違うときは、支払いを止めて先方に確認する。過去に2回あった
経理の作業は、間違えると会社の外にまで影響が出ます。手順の中で「誰の確認を受けるか」を必ず書いておきます。
総務・人事
総務や人事の引き継ぎでは、年に1回しか来ない作業と、社外の窓口との手続きが抜けやすい部分です。
書いておきたい項目
- 年間の行事と手続きの予定(健康診断、年末の調整、社内の行事など)
- 社外の窓口(役所、保険の会社、ビルの管理会社など)と連絡先
- 社員からの問い合わせでよくあるものと、その答え
- 備品や契約の一覧と、更新の時期
記入例
- 業務名:社員の健康診断の手配
- 時期:毎年5月に予約を取り、7月に実施。結果は9月までに届く
- 手順:前年の受診者の一覧をもとに対象者を確かめ、契約している医療機関に日程を相談する
- 関係者:医療機関の担当窓口、各部署の取りまとめ役
- 注意点:結果の書類は個人の健康の情報なので、決められた鍵付きの棚に保管する
Web担当・システム管理
Webサイトやシステムの担当の引き継ぎでは、アカウントと契約が最も大事です。ここが抜けると、サイトの更新ができなくなったり、契約の更新を忘れてサービスが止まったりします。
書いておきたい項目
- 管理しているサイトやシステムの一覧
- 使っているサービスの一覧と、契約の名義、支払いの方法、更新の時期
- アカウントの管理方法(会社の管理の仕組みのどこに登録されているか)
- 定期的な作業(更新、バックアップ、点検)の予定
- 外部の制作会社や保守の会社の連絡先
記入例
- サービス名:会社のサイトのサーバー契約
- 契約の名義:会社名義。支払いは会社のカード
- 更新の時期:毎年3月。更新の案内が2月に担当者のメールに届く
- 引き継ぎで必要なこと:更新の案内の送り先を、前任者のメールから後任のメールに変える
- 注意点:独自ドメインの契約は別のサービスで、更新は毎年11月
最後の「送り先の変更」は見落とされがちです。前任者のメールアドレスが退職で止まると、更新の案内が誰にも届かなくなります。
店舗や現場の仕事
店舗の運営や工場、倉庫などの現場の仕事では、日々の作業の段取りと、物や設備の扱いが中心になります。
書いておきたい項目
- 開店から閉店まで、または始業から終業までの1日の流れ
- 発注の時期と量の決め方、発注先の連絡先
- 設備や機械の点検の予定と、故障したときの連絡先
- アルバイトやパートのシフトの組み方と、連絡の方法
- 鍵や金庫、レジの締めの手順
記入例
- 業務名:週2回の食材の発注
- 時期:毎週月曜と木曜の午前11時までに発注。翌日の朝に届く
- 量の決め方:前の週の同じ曜日の売れ行きを見て決める。雨の予報が出ている日は1割ほど減らしている
- 注意点:連休の前は締め切りが前倒しになる。案内は発注先から2週間前にメールで届く
「雨の日は減らす」のような加減は、数字の表には出てこない現場の知恵です。こうした判断の基準を書き残しておくと、後任が同じ失敗を繰り返さずに済みます。
問い合わせの窓口
お客様や社内からの問い合わせを受ける仕事では、答え方の基準と、答えられないときの回し先が大事です。
書いておきたい項目
- 問い合わせの受付の手段(電話、メール、フォームなど)と受付の時間
- よくある問い合わせと、答え方の例
- 自分で答えてよい範囲と、他の部署に回す基準
- 対応中の問い合わせの一覧と、次にやること
- 返信の文面のひな形の保存場所
対応中の問い合わせは、引き継ぎの日に「誰が、いつまでに、何を返すか」を1件ずつ決めておきます。担当が変わったことでお客様への返信が止まると、それだけで信頼を失うからです。
進行中のプロジェクト
期間の決まったプロジェクトの途中で引き継ぐ場合は、全体像と今の位置を伝えることが大事です。
書いておきたい項目
- プロジェクトの目的とゴール、期限
- 全体の予定と、今どこまで進んでいるか
- 作業ごとの担当者と期限
- 決まったこと、決まっていないこと
- 関係者と、意思決定をする人
記入例
- プロジェクト名:社内の申請の手続きを紙からオンラインに移す
- ゴール:来年3月末までに、交通費と備品の申請をオンラインで出せるようにする
- 今の位置:申請の画面の案は完成。各部署への説明会の日程を調整中
- 決まっていないこと:承認の段階を2段階にするか3段階にするか。11月の部長会で決める予定
- 次にやること:説明会の日程を11月15日までに決めて各部署に知らせる
分かりやすく書くコツ
引き継ぎ書は、書いた人ではなく読む人が使う文書です。読む人の立場で書くためのコツを挙げます。
「いつも通り」を書かない
前任者にとっての「いつも通り」は、後任には何のことか分かりません。前出のメディアでも、悪い引き継ぎ書の例として次のように挙げられています。
失敗例1:記載内容が“担当者の頭の中”前提になっている 例:「A社の担当はBさんです。いつも通りで大丈夫です。」
「いつも通り」「例の件」「適当に」「なんとなく」のような言葉を見つけたら、具体的な手順や基準に書き換えます。
1つの文に1つのことを書く
「請求書を確認して、問題があれば先方に連絡し、なければ入力して部長に回す」と1文で書くより、手順を番号付きで分けたほうが読みやすくなります。
頻度と期限を必ず書く
業務ごとに「毎日」「毎週月曜」「毎月25日」「毎年3月」のような頻度と期限を書きます。頻度が分からないと、後任はいつその業務が来るのか分からず、気づいたら期限を過ぎていた、ということが起きます。
画面の写真や見本を付ける
システムの操作は、文章で説明するより画面の写真を付けたほうが早く伝わります。書類の作り方も、完成した見本を1つ付けておくと迷いません。
判断の基準を書く
「この場合はどうするか」という判断の基準は、前任者の経験の中にしかないことが多いものです。「金額が10万円を超える注文は、部長の確認を受ける」「問い合わせに即答できないときは、当日中に回答の予定日だけ返す」のように、自分が判断してきた基準を言葉にしておきます。
社内の言葉や略語に説明を付ける
長く同じ業務を担当していると、部署の中だけで通じる言葉や略語を当たり前に使うようになります。「月次の突合」「例の定例」「B案件」のような言葉は、別の部署から来た後任や、新しく入った人には意味が分かりません。引き継ぎ書の最後に、こうした言葉の一覧と短い説明を付けておくと、後任は本文を読みながら何度も前任者に聞かずに済みます。書き上げたら、社内の事情を知らない人が読んでも分かるかという目で一度読み直し、説明が要りそうな言葉に印を付けていくと、一覧を作りやすくなります。
書くときの注意点
パスワードを引き継ぎ書に書かない
システムやサービスのパスワードを引き継ぎ書に直接書くのは避けます。引き継ぎ書は多くの人の目に触れる可能性があり、パスワードが漏れると不正に使われるおそれがあります。会社のパスワードの管理の仕組みがあればそれを使い、引き継ぎ書には「どこに登録されているか」「誰に権限の申請をするか」だけを書きます。前任者が個人で作ったアカウントがある場合は、会社の管理に移すか、後任が新しく作り直すかを、情報システムの担当と相談して決めます。
情報の扱いのルールを見直したい会社は、IPA(情報処理推進機構)が公開している中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインも参考になります。
個人情報を必要以上に書かない
顧客や社員の個人情報は、業務に必要な範囲だけを書きます。住所や電話番号の一覧をそのまま引き継ぎ書に貼るのではなく、「顧客の情報は顧客管理のシステムにある」と保存場所を書く形にします。
悪口や個人的な評価を書かない
「この取引先は面倒」「〇〇さんは仕事が遅い」のような書き方は避けます。後任に先入観を与えるうえ、文書が人の目に触れたときに問題になります。注意点として伝えたいことは、「この取引先は仕様の変更が多いので、決まったことはその日のうちにメールで確認している」のように、事実と対応の形で書きます。
古い情報を混ぜない
使われていない手順や、すでに終わった案件の情報が混ざっていると、後任が混乱します。書き上げたら、今も有効な情報かどうかを1つずつ確かめます。
異動・退職・休職で変わる書き方
引き継ぎ書の基本の項目は同じでも、引き継ぐ理由によって力を入れる部分が変わります。
異動の場合
同じ会社の中にいるので、引き継ぎの後も前任者に質問できます。このため、手順の細かい部分より、業務の全体像と進行中の案件を厚めに書きます。引き継ぎ書の最初に「異動後の部署と連絡先」「質問を受けられる期間の目安」を書いておくと、後任は安心して質問できます。ただし、前任者は新しい部署の仕事で忙しくなるので、いつまでも頼れるわけではありません。質問が出るたびに引き継ぎ書に書き足し、少しずつ前任者に頼らなくても済む形にしていきます。
退職の場合
退職した後は、原則として前任者に質問できなくなります。引き継ぎ書だけで後任が1人で業務を回せるように、手順、判断の基準、過去のトラブルまで細かく書きます。年に1回しか来ない業務は、引き継ぎの期間中に実際の作業が来ないことが多いので、去年の作業の記録や書類の見本を必ず付けます。前任者だけが持っていたファイルやアカウントは、退職の日までに会社の共有の場所や管理の仕組みに移します。
休職の場合
病気や家族の事情、出産や育児などで休む場合は、戻ってくることを前提に書きます。休む期間に発生する業務と、戻ってから自分で再開する業務を分けて書いておくと、後任は手を付ける範囲が分かります。休みに入る前に、休んでいる間に連絡を取ってよいかどうか、取るならどんな方法かを上司と決めておきます。体調によっては連絡を取れないこともあるので、引き継ぎ書は「連絡が取れなくても進められる」ことを目標に書きます。
引き継ぎ書のひな形
項目の並べ方に迷ったら、次の順番で見出しを作ると、読む側が全体をつかみやすくなります。WordやGoogleドキュメントで、この見出しをそのまま使ってください。
- 表紙:題名、前任者と後任の名前、作成日、最終更新日
- はじめに:引き継ぎの理由と期間、引き継ぎ後の前任者の連絡先
- 業務の一覧:業務名、頻度、優先度、マニュアルの有無を表にしたもの
- 業務ごとの説明:業務1つにつき、目的、手順、期限、関係者、判断の基準、注意点
- 進行中の案件:案件ごとの状況、次にやること、期限、相手
- 年間の予定:月ごとに発生する業務を並べた表
- 関係者の一覧:社内外の相手の名前、部署、連絡先、やりとりの注意点
- 資料と道具:ファイルの保存場所、使うシステムと権限の申請先
- 過去のトラブルと対応
- 引き継ぎで確かめたことの記録:後任から出た質問と答え
最終更新日を表紙に入れておくのは、書き足しを重ねるうちに、どれが新しい版か分からなくなるのを防ぐためです。
引き継ぎでよくある失敗
最後に、引き継ぎ書があっても引き継ぎがうまくいかなかった例として、よく見られるものを挙げます。
- 引き継ぎ書を作ること自体が目的になり、後任と一緒に作業する時間が取れなかった
- 毎日の業務は丁寧に書いたのに、年に1回の業務が抜けていた
- 社外の相手に担当の交代を伝え忘れ、前任者あてに連絡が来続けた
- 共有の場所に保存したつもりが、前任者の個人のフォルダに残っていた
- 書いた後に状況が変わったのに、引き継ぎ書を直していなかった
どれも、引き継ぎ書の中身よりも、作った後の確かめ方の問題です。前任者が離れる前に、後任が引き継ぎ書だけを見て1つの業務を最後までやってみる時間を取ると、こうした失敗の多くは見つけられます。
引き継ぎの日程の組み方
引き継ぎ書を作るだけでは、引き継ぎは終わりません。後任が実際に業務を回せるようになるまでの日程を組みます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 引き継ぎが決まった直後 | 業務の書き出しと、引き継ぎの日程の案を上司と相談する |
| 引き継ぎ書の作成 | 優先度の高い業務から書く。並行して日々の業務を記録する |
| 後任との顔合わせ | 引き継ぎ書を渡し、全体の説明をする |
| 一緒に作業する期間 | 前任者がやって見せる、後任がやって前任者が見る、の順で進める |
| 社外への挨拶 | 主な取引先に後任を紹介する。可能なら一緒に訪問するか、オンラインで顔を合わせる |
| 前任者が離れる前 | 後任が1人でやってみて、分からなかった点を引き継ぎ書に書き足す |
全体でどれくらいの期間が必要かは、業務の量と後任の経験によって変わります。月ごとの業務が中心なら、少なくとも1回は月の締めの作業を一緒に経験できる期間を取ると安心です。退職の場合は、会社の就業規則で退職の申し出の時期が決まっていることがあるので、早めに上司と相談して日程を決めます。
引き継ぎ書を受け取る側が確かめること
後任の側も、引き継ぎ書を受け取ったら読むだけで終わらせず、前任者がいるうちに確かめておくことがあります。
- 業務の一覧に、自分が聞いていた業務が全部入っているか
- 年に1回の業務の時期と手順が書いてあるか
- 必要なシステムやファイルに、自分の権限で実際にアクセスできるか
- 社外の主な相手に、担当が変わることが伝わっているか
- 迷ったときに相談できる人が、前任者のほかに社内にいるか
特に権限は、前任者がいる間に実際にログインしたりファイルを開いたりして確かめます。前任者が離れてから権限が足りないと分かると、申請に時間がかかり、業務が止まります。
分からないことは、遠慮せずに質問してください。前任者がいる間に聞けば数分で済むことも、いなくなってからでは何日もかかることがあります。質問したことと答えは、引き継ぎ書に書き足しておくと、次に引き継ぐときにも役立ちます。
作るときの道具と、進行中の仕事の共有
WordやExcel、スプレッドシートで十分
引き継ぎ書は、WordやGoogleドキュメントの文書で作るのが一般的です。業務の一覧や年間の予定は、ExcelやGoogleスプレッドシートの表にすると、頻度や期限で並べ替えられて見やすくなります。文書と表を組み合わせ、文書には業務ごとの目的と手順、表には業務の一覧と予定、と分けると整理しやすくなります。
保存する場所は、前任者の個人のフォルダではなく、部署で共有しているフォルダにします。前任者のアカウントが止まった後も、後任や上司が開けるようにするためです。
進行中の案件が多いとき
担当していた業務の中に、期限も相手も違う進行中の案件がいくつもある場合、文書だけでは「今どれがどこまで進んでいるか」が見えにくくなります。引き継ぎの期間中に状況がどんどん変わるので、文書を書き直すのも手間です。
こうした場面では、1つの案件を1枚のカードにして、担当と期限と進み具合を共有できる道具を使うと、前任者と後任の両方が同じ画面で状況を確かめられます。選択肢の1つが、Pinatecaです。Pinatecaはボードで仕事を進めるプロジェクト管理のサービスで、公式の使い方ガイドによると、カードには担当者、開始日と終了日、チェックリスト、説明、画像やPDFなどの添付、コメントを付けられます。終了日を過ぎたカードは赤く表示され、チェックリストの進み具合がカードの表に出ます。カードは別のリストや別のボードへ移せて、誰がいつ何をしたかはワークスペースの操作ログに残ると説明されています。
料金は、5人までのフリープランが0円で、ボードは10個まで、カンバン・ガント・カレンダーなど8種類のボードが使えます。6人目または11個目のボードからはスタンダードプランで、1人あたり月額500円(税抜)です。Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
使い方の例としては、案件ごとにカードを作り、担当者の欄を前任者から後任に付け替えていく形があります。引き継ぎが済んだ案件から担当を変えていけば、どこまで渡し終えたかが一目で分かります。ただし、顧客の個人情報や社外秘の情報を外部のサービスに登録してよいかは、会社の情報管理のルールを確かめてから決めてください。
引き継ぎ書は次の人への贈り物になる
最後に、フリーランスと在宅ワークの市場を20年以上見てきた運営者の視点から、引き継ぎ書について感じていることを書きます。
運営者として見てきた限りでは、仕事を長く任され続ける人ほど、引き継ぎを「去る前の後始末」ではなく「普段の仕事の一部」として扱っています。日頃から手順や判断の基準を書き残している人は、異動や退職が決まっても慌てません。そして、そうした人が残した引き継ぎ書は、次の担当者だけでなく、その次の担当者まで使い続けられます。前出のメディアが書いているとおり、引き継ぎ書を資産として積み上げることが、人が変わっても仕事が止まらない組織をつくります。
外部の人に業務を任せる場面でも同じです。業務委託で仕事を頼む会社が、最初に業務の目的と手順をまとめた資料を渡すと、受ける側は早く仕事に慣れ、質も安定します。仲介の手数料が乗らない直接のやりとりなら、依頼する側は同じ予算で頼める範囲が広がり、受ける側は手取りが厚くなります。手数料0%で直接取引できる仕組みは、こうした丁寧な準備に時間を使える関係を支えます。
業務の手順の整理や、引き継ぎに使う資料づくりを外部の専門家に頼む会社も増えています。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、AIを使った業務の見直しや社内への定着を支援する仕事の内容と始め方をまとめています。社内の手順をアプリやシステムに置き換えたい場合は、アプリケーション開発のお仕事で、業務アプリの開発を請け負う仕事の種類を確認できます。
引き継ぎ書は、書いた人が去った後も働き続ける文書です。後任が1人で動けるかどうかを基準に、業務の目的から順に書いてみてください。
よくある質問
Q. 引き継ぎ書には最低限何を書けばいいですか?
担当していた業務の一覧、業務ごとの目的と手順、期限と頻度、社内外の関係者と連絡先、進行中の案件の状況と次にやること、資料やシステムの保存場所の6つは最低限入れます。手順だけでなく業務の目的を書いておくと、想定外のことが起きたときに後任が自分で判断できます。業務マニュアルがある業務は、その保存場所と例外だけを書けば足ります。
Q. 引き継ぎ書はいつから作り始めればいいですか?
異動や退職、休職が決まったら、できるだけ早く業務の書き出しから始めます。後任が一緒に作業しながら覚える期間や、取引先への挨拶の期間も必要なので、引き継ぎ書の作成だけで時間を使い切らないようにします。月ごとの業務が中心なら、少なくとも1回は月の締めの作業を後任と一緒に経験できる日程を組むと安心です。
Q. 引き継ぎ書にパスワードを書いてもいいですか?
直接書くのは避けます。引き継ぎ書は多くの人の目に触れる可能性があり、パスワードが漏れると不正に使われるおそれがあります。会社のパスワードの管理の仕組みがあればそれを使い、引き継ぎ書にはどこに登録されているか、誰に権限の申請をするかを書きます。個人で作ったアカウントの扱いは、情報システムの担当と相談して決めます。
Q. 引き継ぎ書はWordとExcelのどちらで作ればいいですか?
どちらでも作れますが、組み合わせると整理しやすくなります。業務ごとの目的や手順、注意点のように文章で説明する部分はWordやGoogleドキュメント、業務の一覧や年間の予定のように頻度や期限で並べ替えたい部分はExcelやGoogleスプレッドシートが向いています。保存場所は個人のフォルダではなく、部署で共有しているフォルダにします。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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