フリーランス新法に違反した発注者はどうなる|勧告・命令・企業名公表までの流れ 2026


この記事のポイント
- ✓フリーランス新法に違反した発注者に何が起きるかを行政書士が解説
- ✓勧告・命令・企業名公表・罰金までの流れと
- ✓外注実務で気をつけるべき7つの義務を具体例つきで整理します
先日、ある広告代理店の担当者さんから相談を受けました。「フリーランスのライターに記事を発注したけれど、口約束で条件を伝えただけで、書面を交付していなかった。これって問題になりますか」と。結論から言うと、これは2024年施行のフリーランス新法(正式名称:フリーランス・事業者間取引適正化等法)で明確に義務付けられている「書面等による取引条件の明示」を怠っている状態です。つまり、悪意がなくても、業務委託の実務フローが古いままだと知らないうちに違反状態になっているケースが本当に多いんです。
この記事は「フリーランス新法 違反 発注者」と検索して、外注業務の担当者・個人事業主・中小企業の経営者としての立場から「自社は大丈夫か」「違反したらどうなるのか」を確認しようとしている方に向けて書いています。行政書士としてフリーランス向けの法務相談を受ける中で、実は相談の半数近くが受注者側ではなく発注者側、つまり「自社が違反していないか不安」という内容です。この記事では、フリーランス新法に違反した発注者に実際どんな処分が下るのか、勧告から企業名公表、罰金までの流れを整理したうえで、外注実務で見落としがちなポイントを具体的に解説します。
フリーランス新法とは何か、なぜ今これほど話題になっているのか
フリーランス新法は2024年11月に施行された法律で、正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。目的はシンプルで、フリーランス(法律上は「特定受託事業者」)と業務委託契約を結ぶ発注者(「業務委託事業者」)との間の力関係の差を是正し、フリーランスが安心して働ける取引環境を整備することにあります。
2024年11月の施行から1年以上が経過し、公正取引委員会や中小企業庁への相談件数は施行直後から右肩上がりで増え続けています。行政書士としてフリーランス向けの相談を受ける立場から見ても、施行から半年ほどは「新法ができたらしい」という認知レベルの問い合わせが多かったのに対し、直近では「実際に取引先とトラブルになった」「自社の契約フローが違反していないか確認したい」という具体的な相談が急増しています。つまり、法律が「知っているだけの段階」から「実際に運用でつまずく段階」に移ってきているということです。
背景にあるのは、フリーランスとして働く人の数そのものの増加です。内閣官房の調査などでも、副業・兼業を含めたフリーランス人口は年々拡大しており、企業側も業務委託を柔軟な人材活用の手段として積極的に使うようになっています。一方で、フリーランスは雇用契約と違って労働基準法などの保護対象外になることが多く、報酬未払い・一方的な発注取消し・不当な減額といったトラブルが後を絶ちませんでした。フリーランス新法は、こうした「雇用でも完全な対等取引でもない」曖昧な立場のフリーランスを守るために作られた法律です。
発注者側から見ると、この法律は「フリーランスに仕事を依頼する際の最低限のルールブック」と捉えるのが実務的です。知らなかったでは済まされません。次の章で、発注者に課される具体的な義務を見ていきましょう。
フリーランス新法で発注者に課される7つの義務
フリーランス新法は、フリーランスに業務委託をする事業者(発注者)に対していくつかの義務を課しています。義務の内容は、取引の規模や継続性によって変わりますが、代表的なものは次の7つです。
1. 取引条件の書面等による明示義務
業務委託をする際、発注者は報酬額・業務内容・納期・支払期日などの取引条件を、書面またはメール・チャットツールなどの電磁的方法で明示しなければなりません。「口頭でざっくり伝えて、あとはよろしく」というやり方は違反にあたります。
冒頭で紹介した相談者のように、長年の取引慣行で口約束のまま発注していた事業者は少なくありません。つまり、悪意がなくても「これまでのやり方」を続けているだけで違反状態になっているケースが本当に多いんです。
2. 報酬支払期日の設定・遵守義務(60日ルール)
発注者は、フリーランスから成果物を受け取った日(給付を受領した日)から起算して60日以内のできるだけ早い時期に報酬支払期日を定め、その期日までに報酬を支払わなければなりません。
「検収が終わってから支払う」「請求書を確認してから」という運用をしている会社は多いですが、検収に時間がかかりすぎて60日を超えてしまうと違反になります。特に月末締め翌々月払いのような支払サイクルを採用している企業は、起算点と支払期日の関係を一度見直す必要があります。
3. 禁止行為(受領拒否・報酬減額・返品・買いたたき等)
継続的な業務委託(1か月以上の期間にわたる取引)については、以下のような行為が禁止されています。
・フリーランスに責任がないのに成果物の受領を拒否すること ・あらかじめ定めた報酬額を発注後に減額すること ・成果物を受け取ったあとに正当な理由なく返品すること ・通常相場より著しく低い報酬を一方的に定めること(買いたたき) ・正当な理由なく自社の指定する物品やサービスの購入・利用を強制すること ・金銭や役務の提供など、経済上の利益を不当に提供させること ・フリーランスの責任がないのに、内容を変更させたり、やり直しをさせたりして、フリーランスの利益を不当に害すること
冒頭のエピソードでも触れましたが、「イメージと違う」という主観的な理由での支払い拒否や、成果物受領後の一方的な減額要求は、この禁止行為に該当する可能性が非常に高い行為です。
4. 募集情報の的確表示義務
広告やクラウドソーシングサイトなどでフリーランスを募集する際、虚偽の表示や誤解を招く表示をしてはいけません。「単価○円〜」と書きながら実際には最低ラインの単価しか支払わない、といった表示は問題視されます。
5. 育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
継続的な業務委託を行う場合、フリーランスから申し出があったときは、育児や介護と業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。
6. ハラスメント対策に係る体制整備義務
フリーランスに対するハラスメント行為を防止するため、相談窓口の設置など必要な体制を整備する義務があります。これは正社員向けのハラスメント対策と同水準の配慮が、業務委託先にも求められるということです。
7. 中途解除等の事前予告義務
継続的な業務委託契約を中途解除する場合や、契約を更新しない場合には、原則として30日前までにその旨を予告しなければなりません。「来月から発注を打ち切ります」と直前に伝えるやり方は、この義務に反する可能性があります。
これら7つの義務のうち、義務1・2(書面明示・60日ルール)はすべての業務委託に、義務3〜7は取引の期間や規模に応じて適用対象が変わります。自社がどの義務の対象になるかは、取引形態を棚卸しして確認するのが確実です。
フリーランス新法に違反したらどうなるのか|勧告・命令・企業名公表・罰金の流れ
ここが今回いちばん確認したいポイントだと思います。フリーランス新法に違反した発注者には、段階を踏んだ行政上の措置が用意されています。いきなり罰金が科されるわけではなく、次のようなステップで進みます。
ステップ1:報告徴収・立入検査
公正取引委員会、中小企業庁長官、厚生労働大臣は、フリーランス新法違反の疑いがある事業者に対して、取引状況の報告を求めたり、事業所への立入検査を実施したりする権限を持っています。フリーランス本人からの申告や相談をきっかけに、この段階に入ることが多いです。
ステップ2:助言・指導
違反の疑いが確認された場合、まずは行政庁から助言・指導という形での是正が促されます。この段階では公表されることはなく、事業者が自主的に改善すれば大きな問題にはなりません。行政書士として相談を受ける際、「この段階で終わらせる」ことを最優先の目標にお伝えしています。
ステップ3:勧告
助言・指導に従わず改善が見られない場合、行政庁は事業者に対して勧告を行います。勧告は「このように是正しなさい」という具体的な行政指導であり、この段階までは公表を前提としていません。
ステップ4:公表
勧告を受けたにもかかわらず正当な理由なく従わない場合、行政庁はその旨を公表することができます。つまり、社名・違反内容が公になるということです。企業にとってはレピュテーションリスクが極めて大きい段階です。
フリーランス新法に違反した場合は「公正取引委員会、中小企業庁長官又は厚生労働大臣は、特定業務委託事業者等に対し、違反行為について助言、指導、報告徴収・立入検査、勧告、公表、命令をすることができるものとする。また、命令違反及び検査拒否等に対し、50万円以下の罰金に処する」とされています。 出典: houjin-kessan.yoshida-zeimu.jp
ステップ5:命令
公表を経てもなお改善しない、あるいは特に悪質性が高いと判断される場合、行政庁は事業者に対して命令を発することができます。命令は勧告よりも強制力の強い行政処分であり、これに従わない場合は罰則の対象になります。
ステップ6:罰金(命令違反・検査拒否等)
命令に違反した場合、または報告徴収・立入検査に応じなかった場合(検査拒否・妨害・虚偽報告等)には、50万円以下の罰金が科される可能性があります。この罰金は「違反行為そのもの」に対してではなく、「行政の命令や検査に従わなかったこと」に対して科される点に注意してください。つまり、初回の違反でいきなり罰金になるわけではなく、行政指導を無視し続けた結果として科されるものです。
フリーランス新法に違反し、公正取引委員会や中小企業庁の長官、厚生労働大臣などの関係省からの命令に違反した場合や、立入検査・報告の要求に応じなかった場合には、50万円以下の罰金が科される可能性があります。 出典: houmu-pro.com
罰則以上に重いのは「取引先からの信頼失墜」
行政書士として多くの相談を受けてきた実感として、企業にとって本当に痛いのは50万円の罰金額そのものより、勧告・公表段階で社名が出ることによる信用毀損です。フリーランスとの取引はSNSや口コミで広がりやすく、「あの会社はフリーランスに厳しい」という評判が立つと、今後の外注先確保そのものが難しくなります。近年はフリーランス同士の情報共有も活発なので、一度の違反が想像以上に広く伝わるリスクがあることは、発注者側も認識しておくべきです。
発注者が違反しやすい典型的なケース7選
行政書士として実際に相談を受けてきた中で、発注者が「悪意なく」違反してしまいがちな典型パターンを紹介します。
ケース1:口約束・チャットの流れだけで発注してしまう
長年の取引先だから、あるいは急ぎの案件だからという理由で、条件を明文化せずに口頭やチャットの雑談的なやり取りだけで発注してしまうケースです。書面等による明示義務は取引金額の大小にかかわらず適用されるため、「小さい仕事だから」は言い訳になりません。
ケース2:検収に時間がかかり60日を超えてしまう
社内の稟議フローが複雑で、成果物の検収から支払い処理まで時間がかかりすぎるケースです。特に大企業や多段階の承認フローを持つ組織では、起算点(給付受領日)を正確に管理できていないと、気づかないうちに60日を超過してしまいます。
ケース3:「イメージと違う」を理由に支払いを拒否・減額する
冒頭で紹介したエピソードのように、主観的な満足度を理由に報酬の支払いを拒否したり減額したりするケースです。発注時に具体的な仕様や基準を明示していなかった場合、この種のトラブルは非常に起きやすくなります。
ケース4:継続発注を前提にしていたのに直前で打ち切る
「来月からも継続でお願いします」と口頭で伝えていたのに、実際には直前になって「今月で終了です」と告げるケースです。継続的業務委託の中途解除・不更新には30日前予告の義務があるため、これに反する可能性があります。
ケース5:自社の指定サービスの購入を暗に強制する
「うちのツールを使ってもらわないと困る」という形で、フリーランスに費用負担を強いる指定サービスの購入・利用を求めるケースです。業務上必要な範囲を超えた強制は禁止行為に該当し得ます。
ケース6:相場を大きく下回る単価を一方的に提示する
予算の都合を理由に、市場相場から著しく乖離した低単価を提示し、それをそのまま受け入れさせるケースです。買いたたきに該当する可能性があるため、単価設定の根拠を持っておくことが重要です。
ケース7:担当者の私的な言動がハラスメントに該当してしまう
フリーランスに対する高圧的な指示や人格否定的な発言は、社員に対するものと同様にハラスメントとみなされる可能性があります。相談窓口を整備していない企業ほど、こうした個別の言動が問題化しやすい傾向にあります。
※このようなケースに心当たりがある場合、自己判断で対応方針を決めるのではなく、弁護士や行政書士などの専門家に相談することを強くおすすめします。特に既にトラブルが発生している場合は、初動対応を誤ると解決が長引く傾向があります。
発注者が今すぐできる違反予防の実務対応
違反を避けるために、発注者側が実務レベルで取り組めることを整理します。
取引条件通知書のテンプレート化
業務委託のたびに個別に条件を作成するのは手間がかかるうえ、抜け漏れの原因になります。報酬額・業務内容・納期・支払期日・検収基準などの必須項目をあらかじめ盛り込んだ取引条件通知書のテンプレートを用意し、発注のたびに項目を埋めるだけで明示義務を満たせる体制を作ることをおすすめします。
支払期日の起算点を可視化する
給付受領日から60日以内という起算点は、社内の会計システムや発注管理ツールで自動的に管理できるようにしておくと安全です。特に検収に時間がかかりやすい業種(デザイン・開発・コンサルティングなど)では、検収完了を待たずに支払期日を先に確定させる運用に切り替える企業も増えています。
発注前に業務範囲と評価基準を明文化する
「イメージと違う」というトラブルの多くは、発注時点で仕様や評価基準が曖昧だったことに起因します。参考画像・文字数・修正回数の上限などを事前にすり合わせておくことで、支払い拒否や一方的な減額を招くリスクを大幅に下げられます。
継続発注の終了は必ず30日前に通知する
継続的な取引を終了する際は、カレンダーやタスク管理ツールにリマインダーを設定し、30日前予告を機械的に運用する仕組みを作っておくと安心です。
直接依頼と仲介経由のコスト構造の違い
発注者にとって、フリーランス新法対応は義務の話であると同時に、外注先そのものの選び方を見直すきっかけにもなります。ここで押さえておきたいのが、仲介会社(制作会社・代理店など)を経由する発注と、フリーランスへの直接依頼とではコスト構造が異なるという点です。
仲介会社を通す場合、フリーランスへの実際の支払額に加えて、仲介会社の取り分(中間マージン)が上乗せされます。業種にもよりますが、この中間マージンは発注金額の20%〜50%程度になることも珍しくありません。一方、フリーランスへ直接依頼する形態であれば、この中間マージンが発生しない分、同じ予算でより多くの業務を依頼できたり、より高いスキルを持つ人材に依頼できたりします。
もちろん、仲介会社を通すメリット(進行管理の代行、品質保証、契約トラブル時の窓口一本化など)もあるため、一概に直接依頼が優れているとは言えません。ただし、フリーランス新法によって取引条件の明示や支払期日の遵守が発注者の義務として明確化された今、直接依頼であっても法令を遵守した適正な取引を行いやすい環境が整ってきているとも言えます。
業務委託マッチングサービスを活用して直接フリーランスとつながる場合は、契約条件の明示や支払期日の管理を自社側できちんと運用する必要がありますが、その分、中間マージンを削減できるという実利があります。
例えば、ソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ると、開発案件の単価は経験年数やスキルセットによって大きな幅があることがわかります。仲介経由でこの相場に手数料が上乗せされると、同じ予算でも依頼できる工数が目減りしてしまいます。同様に、著述家,記者,編集者の年収・単価相場も参考にしながら、自社の予算とスキル要件に見合った単価設定を検討することが、買いたたきの回避にもつながります。
業務内容別に見る発注時の注意点
発注者が依頼する業務内容によって、フリーランス新法上の注意点は微妙に変わってきます。
AI関連の業務委託を検討している場合は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、専門性の高い分野ほど成果物の評価基準を事前にすり合わせておくことが重要です。専門知識のギャップがあると、発注者側が「思っていたものと違う」と感じやすく、これが冒頭で紹介したような支払い拒否トラブルの温床になります。
システム開発を外注する場合も同様です。アプリケーション開発のお仕事にあるように、要件定義の段階で仕様を明文化しておかないと、追加要望が積み重なって「フリーランスの責任がないのに内容を変更させる」という禁止行為に抵触するリスクが高まります。
こうした専門分野の外注は、発注者側の担当者が業務内容を完全には理解していないケースも多く、それがフリーランス新法違反の温床になりやすいという特徴があります。専門用語や納品物の形式について、事前に用語集や参考事例を共有しておくことをおすすめします。
運営者の視点から見るフリーランス新法施行後の変化
20年近くフリーランス・在宅ワーク市場を見てきた運営者の立場から言えば、フリーランス新法の施行は、これまで「業界の慣習」として片付けられてきたグレーな取引を、明確な違法・適法の線引きに変えた大きな転換点だったと感じています。以前は「発注元が強い立場にあるのは当然」という空気が業界全体に漂っていましたが、この法律によって、取引条件の明示や支払期日の遵守が「マナー」ではなく「義務」として位置づけられるようになりました。
運営者として見てきた限りでは、長く安定して外注先と付き合えている発注者ほど、契約書や取引条件通知書を丁寧に整備している傾向があります。逆に、条件を曖昧にしたまま発注を繰り返す事業者は、優秀なフリーランスから敬遠されやすくなり、結果的に外注先の質が下がっていくという悪循環に陥りがちです。フリーランス新法は罰則を避けるための最低ラインですが、それを上回る丁寧な取引運用こそが、良い外注先との長期的な関係構築につながっているのが実務での実感です。
また、中間マージンが乗らない直接取引の構造は、双方にとって得のある関係を生みやすいという実感もあります。同じ予算でも、仲介手数料が発生しない分、発注者はより多くの業務量を依頼でき、受け手であるフリーランスは手取りが厚くなります。手数料0%で直接つながる仕組みは、単に「安く済む」という話ではなく、双方が納得できる報酬設計をしやすくするという質的なメリットがあると、長年この市場を見てきた立場から感じています。
私自身が発注する側として経験した失敗談
行政書士事務所を運営する立場として、実は私自身も外部のライターやデザイナーに業務を委託することがあります。開業したばかりの頃、事務所のロゴデザインを外注した際、複数のデザイナーから見積もりを取ったものの、いちばん安い金額を提示してくれた方にほとんど吟味せず依頼してしまったことがあります。
結果として、修正のやり取りに想定以上の時間がかかり、最終的な成果物のクオリティにも納得しきれない部分が残りました。振り返ってみると、見積もり比較の際に金額だけを見て、過去の制作実績や修正対応の範囲を確認していなかったことが原因でした。それ以降、外注する際は必ず「修正は何回まで対応可能か」「参考にしたい過去の実績はあるか」を事前にすり合わせるようにしています。この経験は、まさに本記事で触れた「発注時に業務範囲と評価基準を明文化する」ことの重要性を、身をもって実感した出来事でした。
フリーランス新法とほかの関連法令との関係
フリーランス新法を理解するうえで、既存の下請法(下請代金支払遅延等防止法)との違いを整理しておくと実務がわかりやすくなります。下請法は資本金要件があり、一定規模以上の企業と下請事業者との取引にのみ適用されるのに対し、フリーランス新法は資本金要件がなく、フリーランスに業務委託をするすべての事業者(法人・個人事業主を問わず)が対象になります。つまり、個人事業主であっても、他のフリーランスに業務委託をすれば発注者としてこの法律の適用を受ける可能性があるということです。
「うちは小さい会社だから関係ない」という認識は誤りです。取引条件の書面明示や60日以内の支払いといった基本的な義務は、事業規模にかかわらずすべての発注者に課されています。むしろ、小規模事業者ほど契約実務が整備されていないケースが多く、意図せず違反状態になりやすいという傾向すらあります。
まずは自社が現在どのような形でフリーランスに業務委託をしているかを棚卸しし、契約条件・支払フロー・継続契約の管理状況を確認することから始めてみてください。これ、知らない人が本当に多いんです。しかし法律の内容を正しく理解して実務に反映させれば、無用なトラブルやレピュテーションリスクを避けられます。法律はあなたの味方です。
よくある質問
Q. フリーランス新法に違反すると発注者はすぐに罰金を科されますか?
いいえ。まずは助言・指導、勧告という行政指導の段階を経て、命令に違反した場合や検査を拒否した場合にはじめて50万円以下の罰金の対象になります。初回の違反でいきなり罰金になるわけではありません。
Q. 個人事業主として活動している場合もフリーランス新法の対象になりますか?
はい。下請法と異なり資本金要件がないため、個人事業主であっても他のフリーランスに業務委託をすれば発注者として適用対象になります。事業規模の大小は関係ありません。
Q. 口頭での発注はすべて違反になりますか?
取引条件を書面またはメール・チャットなどの電磁的方法で明示しなかった場合、義務違反にあたります。口頭のみでのやり取りは記録も残らず、トラブル時の証拠にもならないため避けるべきです。
Q. 支払期日の60日はいつから数えますか?
フリーランスから成果物などの給付を受領した日が起算点です。検収に時間がかかっても、この受領日から60日以内のできるだけ早い時期に支払期日を設定し、その期日までに支払う必要があります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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