納棺屋と呼ばれる納棺師の仕事とは|働き方と未経験からの就き方


この記事のポイント
- ✓納棺屋と呼ばれる納棺師の仕事について
- ✓葬儀社と納棺専門会社の働き方の違い
- ✓年収の目安と求人票の読み方
納棺屋という言葉で調べている人は、映画やドラマで納棺の場面を見て興味を持った人か、転職先の候補として葬儀の仕事を考え始めた人が多いはずです。結論から言うと、納棺屋とは納棺師や、納棺を専門に請け負う会社を指す呼び方で、資格がなくても未経験から就ける仕事です。ただし、給与や働き方は勤め先の形で大きく変わり、求人票の月給の数字だけで選ぶと、入社後に「思っていた条件と違う」と感じやすい仕事でもあります。
この記事では、納棺の仕事の中身、働き方の違い、年収の目安と求人票の読み方、資格の位置づけ、未経験からの就き方を順番に整理します。お金の面で損をしないための確認点にも触れます。
「納棺屋」とは誰のことか
納棺屋は正式な職業名ではなく、納棺の仕事をする人や会社をまとめて呼ぶ、くだけた言い方です。求人や会社の案内では、次のような名前で出てきます。
| 呼び方 | 主な仕事 |
|---|---|
| 納棺師 | 亡くなった人の体を整え、旅立ちの装いをして棺に納める |
| 湯灌師 | 専用の浴槽などで体を洗い清める湯灌を行う |
| 納棺専門会社 | 葬儀社から依頼を受けて、納棺や湯灌を専門に請け負う会社 |
| 葬儀社の納棺担当 | 葬儀社の社員として、葬儀の準備の一部として納棺を行う |
湯灌とは、亡くなった人の体を湯で洗い清める儀式のことです。家族が見守る中で行われることが多く、納棺の前の大切な時間として選ばれています。
「納棺屋」という呼び方が使われる背景には、納棺を葬儀社の社員がすべて行うのではなく、専門の会社に任せる形が広がったことがあります。葬儀社は、通夜や告別式の準備、会場の運営、遺族との打ち合わせなど多くの仕事を抱えています。そこで、技術と経験が要る納棺や湯灌を、専門の会社に依頼するのです。依頼を受けた会社のスタッフが、各地の自宅や安置施設、葬儀会館に出向いて納棺を行います。
そのため、納棺師として働く人の勤め先は、大きく分けて葬儀社と納棺専門会社の2つになります。どちらに勤めるかで、1日の動き方も、身につく技術の幅も、給与の決まり方も変わります。この違いは後の節で詳しく整理します。
納棺の仕事の中身
納棺師の仕事は、亡くなった人の体を清め、整え、装いを施して棺に納めるまでの一連の作業です。代表的な流れは次のとおりです。
- 遺族への挨拶と、これから行う作業の説明
- 体を清める(湯灌、または清拭と呼ばれる拭き清め)
- 髪を整え、顔の化粧(死化粧)を施す
- 旅立ちの衣装や、故人が生前好んだ服に着せ替える
- 遺族と一緒に棺に納め、副葬品を添える
死化粧とは、亡くなった人の顔色を整え、穏やかな表情に見えるように施す化粧のことです。病気で長く闘病した人や、事故で亡くなった人の場合は、より高い技術が求められます。
納棺の時間は、遺族にとって故人の体に触れられる最後の機会になることが多く、納棺師は作業をしながら遺族に声をかけ、手を添えてもらう場面をつくります。そのため、技術と同じくらい、遺族への説明の仕方や間の取り方が大切になります。
日本では、亡くなってからすぐに火葬することはできません。法律で次のように決められています。
埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後二十四時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。 出典: e-Gov法令検索(墓地、埋葬等に関する法律)
火葬までに少なくとも24時間を空ける決まりがあるため、亡くなってから火葬までの間に、体の保全と納棺の時間が必要になります。実際には、火葬場の予約の状況などで数日空くことも多く、その間の体の状態を保つための処置も、納棺師の大切な仕事です。
葬儀の件数から見た将来性
納棺の仕事の量は、亡くなる人の数に左右されます。厚生労働省の人口動態統計では、令和7年の死亡数が次のように報告されています。
死亡数は 158 万 9533 人で、前年の 160 万 5378 人より 1 万 5845 人減少し、5年ぶりの減少となった。 出典: 厚生労働省 令和7年人口動態統計(確定数)の概況
令和7年は前年より減ったものの、年間で158万人を超える人が亡くなっています。高齢化が進む中で、この水準は当面続くと見られており、葬儀そのものがなくなる仕事ではありません。
ただし、将来性を考えるうえでは、件数だけでなく葬儀の形の変化も見ておく必要があります。家族と近しい人だけで行う小さな葬儀や、通夜や告別式を行わずに火葬だけで見送る形が増えているという指摘は、葬儀業界の中でよく聞かれます。葬儀が小さくなると、1件あたりの売上は下がりやすくなりますが、一方で「式は簡素でも、納棺や湯灌だけは丁寧にしたい」と考える遺族もいます。
お金の面から見ると、納棺や湯灌は葬儀の中で追加の選択肢として扱われることが多く、遺族が費用をかける場所を選ぶ時代には、選ばれる側の質が問われます。技術と説明の力がある納棺師ほど、葬儀社から指名され、仕事が安定しやすいと言えます。将来性は「業界全体が伸びるか」より「選ばれる人になれるか」で考えるほうが現実的です。
働き方は大きく3つ
納棺の仕事に就く形は、大きく3つに分かれます。
| 働き方 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 葬儀社の社員 | 納棺だけでなく、打ち合わせ、会場設営、式の進行も担当することが多い | 葬儀の仕事全体を学びたい人 |
| 納棺専門会社の社員 | 納棺と湯灌が中心で、1日に複数の現場を回ることがある | 納棺の技術を深めたい人 |
| 業務委託や個人での請け負い | 経験を積んだ後に、会社から仕事を受ける | 経験と人脈がある人 |
葬儀社の社員として働く場合、納棺は仕事の一部です。遺族との打ち合わせから、通夜と告別式の進行、火葬場への同行まで、葬儀全体にかかわります。仕事の幅が広く、葬儀の流れを一通り理解できる反面、納棺の技術を深める機会は、専門会社より少なくなることがあります。
納棺専門会社の社員として働く場合は、納棺と湯灌が仕事の中心です。1日に複数の現場を車で回り、それぞれの葬儀社や遺族に合わせた納棺を行います。同じ作業を数多くこなすため、技術は早く身につきますが、移動が多く、1日の予定が依頼の入り方で大きく変わります。
業務委託とは、会社に雇われるのではなく、仕事ごとに契約して報酬を受け取る働き方のことです。経験を積んだ納棺師が、独立して複数の会社から仕事を受ける例もありますが、未経験からいきなりこの形で始めるのは現実的ではありません。
年収の目安と、求人票で損しないための読み方
納棺師の給与について、葬祭の専門学校の案内では次のように紹介されています。
納棺師の多くは葬儀会社で働いており、平均月給は25万円、年収300〜400万円程度とされており、一般的な会社員より若干低い水準となっています。大手の葬儀会社の場合は、年収500〜600万円ほどになります。 出典: tit.ac.jp
これは学校が示している目安で、公的な統計の数字ではありません。実際の給与は、地域、会社の規模、経験年数で大きく変わります。
求人票を見るときに損をしやすい人には、共通点があります。月給の数字だけを比べて、その中身を見ないことです。たとえば、次の2つの求人を比べてみます。
| 項目 | 求人A | 求人B |
|---|---|---|
| 月給 | 27万円 | 24万円 |
| 内訳 | 基本給20万円+固定残業代7万円(40時間分) | 基本給24万円 |
| 賞与 | なし | 年2回 |
| 年間休日 | 少なめ | 多め |
一見すると、求人Aのほうが月給が3万円高く見えます。しかし、求人Aの月給には40時間分の残業代があらかじめ含まれています。固定残業代とは、一定の時間分の残業代を、実際の残業の有無にかかわらず毎月の給与に含めて払う仕組みのことです。求人Bで40時間残業すれば、その分の残業代が基本給24万円に上乗せされるので、同じ時間働くなら求人Bのほうが手元に残るお金が多くなることもあります。
さらに、賞与の有無で年収は大きく変わります。月給27万円で賞与がなければ年収は324万円ですが、月給24万円でも賞与が年に2か月分あれば、年収は336万円になります。給与を比べるときは、月給ではなく年収で、そして年収は休日の数や残業時間と一緒に見ることが、損をしないための基本です。
夜間の呼び出しへの手当や、資格手当、運転手当なども、会社によって付き方が違います。面接では「夜間に呼ばれたときはどう計算されますか」と聞いて、手当の条件を確かめておきます。
遺族から聞かれる費用の質問と、答え方の基本
納棺の現場では、遺族から費用について聞かれることがあります。「湯灌は追加でいくらかかるのか」「衣装を替えると料金は変わるのか」といった質問です。働く側として、この質問にどう向き合うかを知っておくと、現場で慌てずに済みます。
まず押さえておきたいのは、納棺や湯灌の料金は、多くの場合、葬儀社が遺族に示す見積もりの中に含まれているという点です。納棺専門会社のスタッフは、葬儀社から依頼を受けて現場に来ているため、料金を決める立場にはありません。その場で金額を答えてしまうと、葬儀社の見積もりと食い違い、遺族の不信感につながることがあります。
そのため、料金について聞かれたときは「料金については、担当の葬儀社の方から改めてご説明があります」と伝え、葬儀社の担当者にすぐ連絡するのが基本です。葬儀社の社員として働く場合も、自社の料金表と見積もりの内容を正確に理解し、追加でかかる可能性のある費用を、作業の前に伝えることが大切です。
料金の相場は、地域や葬儀社、選ぶ内容によって大きく違い、一律の金額を示すことはできません。遺族の中には、他社の料金と比べたいと考える人もいますが、比べる相手の内容が分からないまま金額だけを比べると、判断を誤りやすくなります。働く側としては、自社のプランで何が含まれ、何が別料金なのかを、分かりやすく説明できるようにしておくことが、遺族の安心につながります。
お金の話は、悲しみの中にいる遺族にとって切り出しにくいものです。だからこそ、働く側から先に、丁寧に、はっきり伝えることが、信頼される納棺師の条件の1つになります。
資格は必要か
納棺師になるために、国家資格や公的な免許は必要ありません。多くの人が、資格を持たずに入社し、現場で先輩から技術を学んでいます。
葬儀の仕事に関わる資格として知られているのが、厚生労働省が認定している葬祭ディレクター技能審査です。葬儀の相談、会場の設営、式の運営などの知識と技能を審査するもので、1級と2級があります。受験には実務の経験が必要で、審査を行う協会の受験要項では次のように説明されています。
葬祭実務とは、葬儀業務に実際に従事してお客様に接していること(受注業務、設営業務、接客業務など葬祭業務 全般に当っている)を意味し、経験年数とは、上記の業務を恒常的に遂行している期間をいいます。 出典: sousai-director.jp
同じ受験要項では、2級は葬祭の実務経験が2年以上、1級は5年以上、または2級に合格してから2年以上の実務経験が必要とされています。協会が認めた専門学校の課程を修了した人は、2級の受験でその期間を実務経験に含められます。
この資格は納棺の技術そのものを審査するものではありませんが、葬儀全体の知識を証明できるため、葬儀社の中で仕事の幅を広げたいときや、転職のときに役立ちます。納棺専門会社でも、葬儀社とのやり取りで葬儀全体の知識は欠かせないため、取得を勧める会社があります。
受験料などの費用は年度によって変わることがあるので、受験を考えるときは協会の最新の要項を確かめてください。会社が費用を負担してくれるかどうかも、面接や入社後に確かめておくとよいでしょう。
未経験からの就き方
未経験から納棺師になる方法は、大きく2つあります。
1つ目は、葬儀社や納棺専門会社に直接就職し、現場で学ぶ方法です。求人には「未経験歓迎」「研修あり」と書かれているものが多く、入社後に先輩に同行しながら、湯灌や着せ替え、化粧の技術を覚えていきます。学費がかからず、給与を受け取りながら学べる点が大きな利点です。
2つ目は、葬祭の専門学校で学んでから就職する方法です。専門学校の案内では、学びの中身が次のように紹介されています。
葬祭ディレクター学科では、宗教学やパソコン実習、葬祭に関するサービス接遇、ビジネスマナー、マーケティングなど、葬儀会社で働く際に必要とされるあらゆる知識と技術を総合的に学びます。 出典: tit.ac.jp
専門学校では葬儀全体を体系的に学べますが、学費と、学ぶ期間の生活費がかかります。社会人が転職のために学校へ通う場合は、その間の収入が減ることも計算に入れる必要があります。
お金の面から比べると、社会人の転職なら、まずは直接就職して現場で学ぶほうが負担は小さくなります。10代や学生で、葬儀の仕事を長く続けたいと決めているなら、専門学校で基礎から学ぶ道も選択肢になります。
求人を探すときは、「納棺師」「湯灌師」「納棺スタッフ」「葬祭スタッフ」といった言葉で検索します。ハローワークや求人サイトのほか、納棺専門会社のサイトの採用情報も確かめます。納棺専門会社は、葬儀社に比べて数が少なく、都市部に集まりやすい傾向があります。住んでいる地域に専門会社がない場合は、葬儀社に就職して納棺を担当する道を考えるのが現実的です。
向いている人、向いていない人
納棺師に向いているのは、次のような人です。
・遺族の気持ちを察して、言葉を選んで話せる人
・細かな作業を、最後まで丁寧に仕上げられる人
・急な依頼にも、落ち着いて対応できる人
・人の死を、仕事として冷静に受け止められる人
化粧や美容の経験、介護や看護の経験は、納棺の仕事にそのまま生かせます。体の扱い方や、相手に声をかけながら作業を進める感覚は、こうした仕事で身につくものと共通しているからです。
反対に、向いていないと感じやすいのは、気持ちの切り替えが苦手な人です。若い人や子どもの葬儀、事故や病気で大きく体が傷ついた人の納棺に立ち会うと、強く心が動きます。それ自体は自然なことですが、その気持ちを次の現場まで引きずってしまうと、疲れがたまり続けます。
お金の相談の仕事で人生の節目に立ち会ってきた中で感じるのは、人の大きな出来事に関わる仕事ほど、「自分の生活を守る仕組み」を持っている人が長く続くということです。休みの日は仕事のことを考えない、信頼できる人に話を聞いてもらう、といった小さな習慣が、気持ちの負担を軽くします。
体力の面でも、湯灌の準備や、体の移動、長時間の運転など、体を使う場面が多くあります。腰を痛めないための持ち上げ方を、入社後の早い時期に身につけておくことが大切です。
年齢については、20代から50代まで幅広い人が働いています。前職で接客や介護を経験してから転職する人も多く、年齢が上であることが不利になるとは限りません。人生経験のある人の落ち着いた話し方が、遺族の安心につながる場面もあるからです。
体と心の負担を減らすために知っておきたいこと
納棺の仕事は、体と心の両方に負担がかかる仕事です。続けるために知っておきたい点を整理します。
まず、衛生面です。納棺の作業では、手袋やマスク、エプロンなどを身につけ、感染を防ぐための手順を守ります。会社によって備品の用意や手順の決まりが違うので、入社したら最初に、どの場面で何を身につけるかを確かめます。体調が悪いときに無理をしないことも、自分と周りを守るうえで大切です。
次に、勤務時間です。人が亡くなる時間は選べないため、夜間や早朝の依頼、急な残業が発生することがあります。会社によっては、夜間の電話当番を交代で受け持ちます。当番の頻度、呼び出されたときの手当、翌日の勤務の扱いを、入社前に確かめておくと、生活の計画を立てやすくなります。
心の面では、1人で抱え込まないことが大切です。職場の先輩や同僚と、印象に残った現場について話す時間を持っている人は、長く続けやすい傾向があります。会社によっては、相談窓口や面談の仕組みを設けているところもあります。
お金の相談の仕事で、転職して半年で辞めてしまった人の話を聞いたことがあります。理由は「仕事の内容」ではなく、「休日が決まらず、家族との予定が立てられなかったこと」でした。気持ちの準備だけでなく、働く条件を入社前に確かめておくことが、損をしない転職につながります。
入社前に確かめたい、保険と働き方のお金の話
納棺の仕事を始めるとき、給与の額と同じくらい大切なのが、社会保険と働き方の確認です。
正社員として葬儀社や納棺専門会社に雇われる場合、健康保険と厚生年金、雇用保険に加入するのが原則です。保険料は会社と本人で分けて負担し、本人の分は給与から差し引かれます。額面の月給と、実際に受け取る手取りの差は、この保険料と税金の分だと考えてください。
パートやアルバイトとして働く場合は、働く時間で扱いが変わります。雇用保険は、週の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば加入の対象になります。健康保険と厚生年金は、週20時間以上などの条件を満たし、勤め先の従業員数が一定以上であれば加入の対象です。以前あった「月額8.8万円以上」という賃金の条件は、2026年10月に撤廃されました。
業務委託で働く場合は、会社の社会保険には入れません。自分で国民健康保険と国民年金に加入し、保険料を全額自分で払います。国民年金の保険料は令和8年度で1か月あたり17,920円です。業務委託の報酬が会社員の給与と同じ額に見えても、保険料を自分で払う分、手元に残るお金は少なくなります。
働き方を選ぶときは、額面の金額だけでなく、保険料を誰が負担するか、休んだときの保障があるかまで含めて比べてください。お金の面で損をしないための一番の近道は、契約の前に条件を書面で確かめることです。
葬儀社と納棺専門会社、1日の流れの違い
同じ納棺の仕事でも、勤め先によって1日の過ごし方は大きく違います。代表的な例を並べると、次のようになります。
| 時間帯 | 葬儀社の社員 | 納棺専門会社の社員 |
|---|---|---|
| 朝 | 会館の準備、当日の式の確認 | 事務所で当日の依頼の確認、車に道具を積む |
| 午前 | 告別式の進行、火葬場への同行 | 1件目の現場へ移動し、湯灌と納棺 |
| 昼前後 | 遺族との打ち合わせ、見積もりの説明 | 2件目の現場へ移動 |
| 午後 | 通夜の準備、会場の設営 | 2件目、3件目の納棺、事務所へ戻って片付け |
| 夕方以降 | 通夜の進行、翌日の準備 | 翌日の依頼の確認、道具の補充 |
葬儀社の社員は、1つの葬儀に通夜から告別式まで長く関わるため、遺族と過ごす時間が長くなります。納棺は1日の中の一場面で、それ以外の時間は式の準備や進行に使います。
納棺専門会社の社員は、1日に複数の現場を回るのが一般的です。1件ごとに遺族も宗教も違うため、毎回、事前に伝えられた情報をもとに準備を整えます。移動の時間が長く、車の運転に慣れていることが求められます。
お金の面で見ると、この違いは残業や手当の付き方に表れます。葬儀社では通夜の時間帯に働くことが多く、夕方から夜の勤務が日常になります。納棺専門会社では、依頼の入り方によって終業時刻が日ごとに変わります。どちらの働き方が自分の生活に合うかを考えるとき、1日の流れを具体的に思い描いてみることが役に立ちます。面接では「昨日のスケジュールを例に教えてください」と聞くと、実際の働き方が見えてきます。
応募書類と面接で見られること
未経験から納棺の仕事に応募するとき、採用する側が見ているのは、技術よりも人柄と覚悟です。応募書類と面接で、何を伝えればよいかを整理します。
志望動機では、「なぜ納棺の仕事なのか」を自分の経験と結びつけて書きます。家族の葬儀で納棺師の仕事を見て心を動かされた、介護の仕事で人の最期に関わってきた、といった具体的なきっかけがあれば、それを1つ選んで丁寧に書きます。「映画を見て憧れた」だけでは、ほかの応募者と差がつきません。憧れたきっかけの先に、自分がどんな納棺師になりたいかまで書くと、採用する側に伝わります。
面接では、次のような質問がよく聞かれます。
・人の死に向き合う仕事であることを、どう受け止めていますか
・夜間や休日の勤務について、家族の理解は得られていますか
・体力に不安はありますか
・これまでの仕事で、相手の気持ちに配慮した経験はありますか
特に、家族の理解については、具体的に答えられるように準備しておきます。夜間の呼び出しや休日の勤務は、本人だけでなく家族の生活にも影響します。採用する側は、入社後すぐに辞めてしまうことを最も心配しているため、働く条件を理解したうえで応募していることが伝わると安心してもらえます。
身だしなみも、面接で見られる大切な点です。遺族の前に立つ仕事なので、清潔感のある髪型と服装、落ち着いた話し方を心がけます。面接の日の振る舞いが、そのまま「遺族の前に出せるか」の判断材料になります。
入社して最初の1年で身につけること
納棺師として入社した後、最初の1年でどんなことを身につけていくのか、一般的な流れを整理します。会社によって順番や期間は違いますが、目安として参考にしてください。
最初の数か月は、先輩の現場に同行し、道具の準備や片付け、湯灌の補助から始めます。体の移動の仕方、湯の温度の管理、道具の並べ方など、基本の作業を体で覚える時期です。遺族への挨拶の仕方や、作業の説明の言葉も、先輩の話し方を見て学びます。
半年ほど経つと、着せ替えや化粧など、手順の一部を任されるようになります。化粧は、故人の生前の写真を見ながら、その人らしい表情に近づける技術で、経験を重ねるほど上達します。最初は先輩の確認を受けながら、少しずつ一人で仕上げられる範囲を広げていきます。
1年が近づく頃には、条件の整った現場で、一人で納棺を担当できるようになる人もいます。ただし、事故や長い闘病で体の状態が難しい場合は、経験のある先輩が担当することが一般的です。
この1年で最も大切なのは、技術よりも、遺族との向き合い方を身につけることです。どんな言葉をかけると遺族が安心するのか、どんな沈黙が遺族にとって大切な時間になるのかは、現場でしか学べません。先輩の振る舞いをよく見て、自分の言葉に落とし込んでいくことが、一人前の納棺師への近道です。
お金の面では、最初の1年は試用期間や見習いの扱いで、給与が本採用より低めに設定されている会社もあります。試用期間の長さと、その間の給与、本採用後の条件を、入社前に書面で確かめておくと、思わぬ差に戸惑わずに済みます。
地域と会社の規模で変わること
納棺の仕事は、住んでいる地域と、勤める会社の規模によって、働き方が変わります。
都市部では、葬儀社も納棺専門会社も数が多く、求人の選択肢が広がります。1日に回る現場の数が多い一方、移動は電車や渋滞の多い道を使うため、時間の読み方が難しくなります。地方では、葬儀社の数が限られ、納棺専門会社がない地域もあります。その場合は、葬儀社の社員として納棺を担当するのが一般的です。移動の距離は長くなりますが、地域の葬儀の習わしを深く知ることができます。
会社の規模で見ると、大手の葬儀社やその系列の会社では、研修の仕組みや休日の決まりが整っていることが多く、給与の体系も明確です。一方で、配属先や担当する仕事を自分で選びにくいことがあります。中小の会社では、早い段階から幅広い仕事を任され、経験を早く積めます。ただし、休日の取り方や手当の付き方が、会社の慣習で決まっていることも少なくありません。
地域の習わしにも違いがあります。湯灌を行うことが多い地域、宗教や宗派に応じた装いが重視される地域など、同じ納棺でも求められる内容が変わります。転居を伴う転職を考えている場合は、その地域の葬儀の習わしについても、面接で聞いてみるとよいでしょう。
経験を生かして広げられる道
納棺の仕事で身につく力は、葬儀の仕事の中で広げることも、ほかの仕事に生かすこともできます。
葬儀の仕事の中では、納棺から葬儀全体の担当者へ、さらに葬儀の相談や見積もりを行う役割へと、仕事の幅を広げていく人がいます。遺族への見積もりや案内状、会葬礼状の作成など、文書を扱う場面も増えます。礼状や案内文を正確に書く力を身につけたいなら、ビジネス文書検定が参考になります。ビジネス文書の形式や敬語の使い方を段階的に問う検定です。
葬儀や終活についての文章を書く仕事に広げる人もいます。現場を知る人の文章は、葬儀の準備に悩む人にとって具体的で頼りになるため、葬儀社のサイトのコラムなどで求められています。書く仕事の収入の傾向は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確かめられます。
また、葬儀社では、見積もりや予約の管理、問い合わせへの対応にAIなどの道具を取り入れる動きも出てきています。現場の流れを知っている人が、こうした道具の使い方を学んでおくと、業務を改善する役割も担えます。AIを業務に取り入れる仕事の全体像は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で紹介しています。
運営者の視点から見た、長く続く人の共通点
フリーランスや在宅ワークの市場を20年見てきた立場から言えば、専門の技術で仕事をする人が長く続くかどうかは、技術の高さだけでは決まりません。「この人に任せると安心」と思ってもらえる関係を、依頼する側とどれだけ築けるかで決まります。
納棺の仕事でも同じです。納棺専門会社に仕事を頼む葬儀社は、技術だけでなく、時間を守るか、遺族への言葉づかいが丁寧か、報告が早いかを見ています。こうした積み重ねで指名が増えた人は、働き方を選べるようになります。
また、仲介する立場が間に入るほど、受け取る側の手取りは薄くなります。経験を積んで、葬儀社と直接関係を築ける納棺師は、同じ仕事でも手元に残る報酬が厚くなります。納棺の仕事を考えている人は、まずは会社に入って技術と信頼を積み、その先の働き方を少しずつ広げていく道を描いてみてください。
よくある質問
Q. 納棺屋と納棺師は同じ意味ですか?
納棺屋は正式な職業名ではなく、納棺の仕事をする人や、納棺を専門に請け負う会社をまとめて指す、くだけた呼び方です。求人では「納棺師」「湯灌師」「納棺スタッフ」といった名前で募集されていることが多いので、仕事を探すときはこれらの言葉で検索すると見つけやすくなります。
Q. 納棺師になるのに資格は要りますか?
国家資格や公的な免許は必要ありません。多くの人が未経験で入社し、現場で技術を学んでいます。葬儀全体の知識を証明する資格として厚生労働省認定の葬祭ディレクター技能審査がありますが、受験には2年以上の実務経験が必要です。入社してから目指す人がほとんどです。
Q. 未経験の場合、専門学校に通うべきですか?
社会人の転職であれば、まず葬儀社や納棺専門会社に就職し、給与を受け取りながら現場で学ぶ方法が、費用の負担を抑えられます。専門学校は葬儀全体を体系的に学べる利点がありますが、学費と学ぶ間の生活費がかかります。自分の年齢や貯蓄と照らして選んでください。
Q. 女性でも納棺師として働けますか?
働けます。故人が女性の場合に、着せ替えや化粧を女性の納棺師に任せたいと考える遺族もいて、女性の納棺師を求める会社は少なくありません。体の移動などで力を使う場面はありますが、複数人で作業する会社がほとんどです。面接で作業の分担の仕方を確かめておくと安心です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
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