教育訓練計画の作り方|年間の研修を組む手順


この記事のポイント
- ✓教育訓練計画の作り方を
- ✓スキルマップでの現状把握
- ✓年間の研修を組む6つの手順
教育訓練計画を作るように言われたものの、何を書けばよいのか、去年の研修の一覧を並べ直すだけでよいのか、と迷っている人は多いはずです。結論から言うと、教育訓練計画は「会社が求める人材像」「職務ごとに必要なスキル」「いまの社員のスキル」の3つを先に整理し、その差を埋める研修を1年の暦に並べ、実施した記録と効果の確かめ方まで決めておくと、形だけの書類で終わらなくなります。この記事では、法律上の位置づけから、年間の研修を組む手順、計画表の書き方、実施後の振り返りまでを順に説明します。研修の準備を複数の担当者で分けるときに、Pinatecaのようなボードで担当と期限を共有する方法にも触れます。
教育訓練計画とは何か
教育訓練計画とは、社員にどんな力を、いつまでに、どんな方法で身につけてもらうかを、前もって1年や数年の単位で決めておく計画のことです。社内では「研修計画」「人材育成計画」「教育計画」などとも呼ばれ、呼び方は会社によって違いますが、中身はほぼ同じです。
法律の上では、職業能力開発促進法という、働く人の職業能力の開発を進めるための法律に根拠があります。この法律の第11条は、事業主が社員の能力開発を段階的かつ体系的に進めるための計画を作るよう努めることを定めています。厚生労働省はこの計画を「事業内職業能力開発計画」と呼び、次のように説明しています。
事業内職業能力開発計画は、雇用する労働者の職業能力の開発及び向上を段階的かつ体系的に行うために事業主が作成する計画です。 なお、この計画の作成は、「職業能力開発促進法」第11条に基づき、事業主の努力義務となっています。 出典: 厚生労働省 事業内職業能力開発計画
努力義務とは、作るよう努めなければならないが、作らなくても罰則はない、という決まりのことです。つまり、一般の会社にとって教育訓練計画は「作らないと法律違反になる書類」ではありません。ただし、後で説明するように、助成金を申請するとき、派遣会社として許可を受けるとき、ISO9001の認証を受けるときには、計画があることが前提になる場面があります。
同じページには、計画には決まった様式や記載内容の定めがないこと、形よりも会社の独自性が分かりやすく表現され、社員に正しく伝わることが大切だということも書かれています。そのうえで、計画に先立って「経営理念」「人材育成の基本方針」「雇用管理の方針」「各職務に必要な職業能力」「教育訓練体系図」を書いておくとよい、と案内されています。この5つは、この記事で説明する手順の土台にもなります。
また、同じ法律の第12条は、計画を作って進める担当者として「職業能力開発推進者」を選ぶよう努めることを定めています。厚生労働省の案内では、人事や教育を担当する部署の部長や課長などを選ぶことが想定されています。小さな会社なら社長や総務の責任者が兼ねることになりますが、誰が計画の持ち主なのかを決めておくことは、規模にかかわらず役に立ちます。
教育訓練計画が求められる4つの場面
同じ「教育訓練計画」という言葉でも、どんな目的で作るのかによって、書くべき項目や守るべき条件が変わります。自分の会社がどの場面に当たるのかを先に確かめておくと、必要な項目を取りこぼさずに済みます。
1つ目は、社内の人材育成のために自主的に作る場面です。この場合は決まった様式がないので、自社の課題に合わせて自由に組み立てられます。この記事の手順は、主にこの場面を想定しています。
2つ目は、助成金を申請する場面です。厚生労働省は、事業内職業能力開発計画の作成が人材開発支援助成金の一部のコースで支給の要件になっていると案内しています。人材開発支援助成金とは、社員に職業訓練を受けさせた事業主に対して、訓練の経費や訓練中の賃金の一部を国が助成する制度のことです。コースごとに要件や手続きの期限が細かく決まっており、年度によって変わることもあるので、申請を考えている場合は、計画を作り始める前に厚生労働省の案内や都道府県の労働局で今年度の要件を確かめてください。テレワークの導入に使える助成金についてはテレワーク 助成金 2026で、制度ごとの対象と申請の流れを整理しています。
3つ目は、労働者派遣事業を行う会社の場面です。派遣会社には、派遣で働く人のキャリアアップにつながる教育訓練の実施計画を定めることが、許可の基準として求められています。厚生労働省の告示には、計画が満たすべき要件が次のように並んでいます。
イ 実施する教育訓練がその雇用する全ての派遣労働者を対象としたものであること。 ロ 実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること。 ハ 実施する教育訓練が派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること。 出典: 厚生労働省 キャリアアップ告示
有給かつ無償とは、研修を受けている時間にも賃金を払い、受講料を本人に負担させない、という意味です。このほか、派遣労働者として雇うときの研修を含めること、期間の定めのない雇用の人には長い目で見たキャリアを念頭に置いた内容にすることも求められています。派遣会社の計画は、自主的な計画よりも条件が厳しいと考えておくとよいでしょう。
4つ目は、ISO9001の認証を受けている、または受けようとしている会社の場面です。ISO9001とは、製品やサービスの品質を安定させるための仕組みについての国際規格のことです。この規格では、仕事の品質に影響する人に必要な「力量」(知識や技能を使って結果を出す力)を決め、教育訓練などでその力量を身につけさせ、取った手段が効いたかを評価し、記録を残すことが求められます。審査では、計画があるかだけでなく、力量の基準、実施の記録、効果の評価がつながっているかを見られます。
計画を作る前に決めておく3つのこと
教育訓練計画が形だけの書類になってしまう一番の原因は、「何のために、誰に、どこまで」を決めないまま、研修の名前を暦に並べてしまうことです。去年の研修をそのまま今年の欄に写す、評判のよい外部セミナーを申し込む、という進め方では、社員は研修を受けても仕事が変わらず、計画を作る側も毎年同じ悩みを繰り返すことになります。
最初に決めるのは、会社が求める人材像です。経営方針や今後3年ほどの事業の計画から、「どんな仕事ができる人が、何人くらい必要になるか」を書き出します。たとえば、来年から新しい商品の販売を始めるなら、その商品を説明できる営業が必要になります。紙の書類を減らす方針なら、クラウドの表計算や共有の道具を使いこなせる事務の人が必要になります。
次に決めるのは、職務ごとに必要なスキルです。営業、事務、製造、開発など、職務ごとに「1年目でここまで」「3年目でここまで」「主任ならここまで」という段階を書き出します。ここで大切なのは、「コミュニケーション力」「主体性」のような抽象的な言葉で止めず、「見積書を1人で作れる」「新人に作業の手順を教えられる」のように、できたかどうかを周りが判断できる言い方にすることです。
最後に決めるのが、計画の対象と期間です。全社員を1つの計画で扱うのか、新入社員、中堅、管理職のように階層ごとに分けるのか、部署ごとに分けるのかを決めます。期間は1年が基本ですが、資格の取得や管理職の育成のように時間がかかるものは、3年ほどの中期の計画を別に持ち、その中から今年分を年間の計画に落とし込むと、無理のない並びになります。
この3つを1枚にまとめたものが、厚生労働省の案内にある「教育訓練体系図」に当たります。縦に階層(新人、中堅、管理職など)、横に研修の種類(全社共通、職務別、自己啓発の支援など)を並べ、どの階層の人がどの研修を受けるのかを一覧にした図です。体系図があると、毎年の計画を作るときに「今年はこの枠を埋める」という判断がしやすくなります。
編集の仕事でも、新しく入った人に記事の作り方を教えるとき、「赤字の入れ方」「見出しの付け方」「引用の確かめ方」のように段階を分けて書き出しておくと、教える側によって内容がばらつかずに済みます。会社の研修でも同じで、段階が言葉になっているかどうかで、計画の質はほぼ決まります。
スキルマップでいまの力を測る
求める人材像と職務ごとのスキルが決まったら、次はいまの社員がどこまでできているかを測ります。このときに便利なのが、スキルマップ(力量表とも呼ばれます)です。スキルマップとは、縦に社員の名前、横に業務やスキルの項目を並べ、1人ずつどこまでできるかを段階で書き込んだ表のことです。
段階の付け方は、4段階にすると使いやすくなります。
- 段階1: 説明を受けながらなら作業できる
- 段階2: 手順書を見れば1人で作業できる
- 段階3: 手順書を見なくても1人で作業でき、困ったときの対応もできる
- 段階4: ほかの人に教えられる
5段階や10段階にすると細かく評価できる反面、付ける人によって判断がばらつきやすくなります。最初は4段階ほどに抑え、それぞれの段階が具体的にどんな状態なのかを言葉で決めておくのが確実です。
スキルマップは Excel や Google スプレッドシートで十分に作れます。項目の行に業務名、列に社員名を並べ、各セルに段階の数字を入れます。条件付き書式で段階ごとに色を付けると、どの業務を教えられる人が少ないのか、誰に仕事が集中しているのかが一目で分かります。たとえば、ある業務で段階3以上の人が1人しかいなければ、その人が休んだときに仕事が止まるということです。そうした業務は、今年の研修で優先して扱う候補になります。
評価は本人の自己評価だけでなく、上司の評価も合わせて付けます。本人の評価と上司の評価がずれている項目は、面談で話し合うきっかけになります。本人は「できる」と思っているのに上司は「まだ手順書が要る」と見ているなら、どの場面でそう見えたのかを具体的に話し合うことで、研修の中身も絞り込めます。
スキルマップは、1回作って終わりではありません。研修の後、半年ごと、または年度の終わりに付け直すことで、研修の効果を数字で追えるようになります。ISO9001の審査で求められる「力量の評価」も、このスキルマップの付け直しで示すことが多くあります。
年間の研修を組む6つの手順
求める人材像、職務ごとのスキル、いまの社員の力が見えたら、いよいよ年間の計画を組みます。ISO9001の教育訓練を扱った解説でも、計画は目的と力量を明らかにしてから作るものだと説明されています。
教育訓練の目的や、従業員に求められる力量が明らかになったら、それに基づいて教育訓練計画を作成します。 出典: tebiki.jp
ここでは、どの会社でも使える形で、6つの手順に整理します。
手順1: 足りない力を一覧にする
スキルマップで、求める段階に届いていない項目を書き出します。人数が多い項目、仕事が止まると影響の大きい項目、来年の事業の計画に関わる項目から順に、優先度を付けます。全部を1年で埋めようとすると、研修が多すぎて通常の仕事が回らなくなります。優先度の高い項目から5項目から10項目ほどに絞るのが目安です。
手順2: 研修の方法を決める
項目ごとに、OJT(職場で仕事をしながら教える方法)、Off-JT(職場を離れて研修や講座で学ぶ方法)、自己啓発の支援(本人が学ぶ費用や時間を会社が支える方法)のどれで身につけてもらうかを決めます。方法の選び方は次の節で詳しく説明します。
手順3: 時期を決める
1年の暦に研修を並べます。繁忙期を避けること、新入社員の研修は入社の時期に合わせること、資格の試験がある場合は試験日から逆算することが基本です。年度の初めに研修を詰め込みすぎると、後半に何も残らず、計画が途中で止まりやすくなります。四半期ごとに1つか2つの山を作るくらいが、続けやすい並び方です。
手順4: 担当と費用を決める
研修ごとに、準備をする人、講師をする人、受講者を集める人を決めます。外部の講座を使うなら、受講料と交通費、研修中の賃金も含めて費用を見積もります。助成金を使う予定がある場合は、申請の締め切りがいつか、研修の前に届け出が必要かを、この段階で確かめておきます。後から申請しようとして、届け出の期限を過ぎていたという失敗はよくあります。
手順5: 効果の確かめ方を決める
研修ごとに、終わった後に何を見て「身についた」と判断するかを決めます。受講後のアンケート、理解度のテスト、スキルマップの付け直し、仕事の成果(ミスの件数、作業時間など)のどれを使うかを、研修の前に決めておきます。後で説明する実施記録の欄も、この段階で用意しておくと楽になります。
手順6: 社員に知らせる
職業能力開発促進法の第11条は、計画を作ったら社員に知らせるよう努めることも定めています。計画を人事の引き出しにしまっておくのではなく、全体の研修の予定と、自分が受ける研修、自分で申し込める支援が社員から見える形で知らせます。研修の目的が分かっていると、社員は自分の仕事とのつながりを考えながら受講できるようになります。
計画表に書く項目と記入例
教育訓練計画の計画表には、最低限次の項目を書いておくと、後から見返したときに迷いません。
| 項目 | 書く内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 研修名 | 何の研修か | 見積書作成の基礎 |
| 目的 | 身につける力 | 見積書を1人で作れるようにする |
| 対象者 | 誰が受けるか | 営業部の入社1年目 |
| 方法 | OJT、Off-JT、自己啓発 | OJT(先輩と同行) |
| 時期 | いつ行うか | 6月から8月 |
| 時間 | 合計の時間 | 1回2時間を4回 |
| 講師・担当 | 誰が教えるか | 営業部の主任 |
| 費用 | 見込みの費用 | 社内で行うため外部費用なし |
| 評価の方法 | どう確かめるか | 9月に見積書を3件作成し主任が確認 |
| 実施結果 | 終わった後に書く | 受講者4人中3人が合格 |
表の最後にある「実施結果」の欄は、計画を作る時点では空けておき、研修が終わったら書き込みます。計画と結果を1枚の表で管理すると、翌年の計画を作るときに、どの研修が効いて、どの研修が効かなかったのかがすぐに分かります。
計画表は、全社で1枚にまとめる方法と、部署ごとや階層ごとに分ける方法があります。社員が50人を超えるような会社では、全社共通の研修だけを1枚にまとめ、職務ごとの研修は部署ごとに分けて作るほうが、更新の手間が少なく済みます。どちらの場合も、表のどこかに作成日と改訂日を書いておくと、どの版が最新なのかで迷いません。
無料で使える様式を探す場合は、厚生労働省の事業内職業能力開発計画のページに、作り方の案内や質問と回答の資料が掲載されています。ISO9001向けには、民間の会社が配布している計画表の様式もあります。ただし、様式をそのまま使うことにこだわらず、自社の研修の数や管理の仕方に合わせて列を削ったり、項目を追加したりしてかまいません。厚生労働省も、決まった様式はなく、自社らしさが伝わることが大切だとしています。
研修の方法の選び方
研修の方法は大きく分けて、OJT、Off-JT、自己啓発の支援の3つがあります。それぞれに向いている内容と、うまくいかないときの原因が違うので、項目ごとに使い分けることが大切です。
OJTは、職場で先輩や上司が仕事をしながら教える方法です。手順が決まっている作業や、現場でしか身につかないコツを教えるのに向いています。費用がほとんどかからない反面、教える人によって内容がばらつきやすく、忙しい時期には後回しにされやすいという弱点があります。OJTを計画に入れるときは、教える人と教わる人の組み合わせ、教える期間、教える内容の一覧、終わったときの確かめ方まで書いておきます。教える人には、教える時間を通常の仕事とは別に確保できるよう、上司が仕事量を調整することも必要です。
Off-JTは、職場を離れて、社内の集合研修や外部の講座で学ぶ方法です。考え方や知識をまとめて学ぶ内容、法律や制度のように正確さが求められる内容、管理職の役割のように職場の中だけでは学びにくい内容に向いています。外部の講座を使う場合は、受講料だけでなく、研修中の賃金や交通費も費用に含めて見積もります。オンラインの講座は移動の時間がかからない一方、受講したことの確認や、受講後の理解度の確かめ方を工夫する必要があります。
自己啓発の支援は、社員が自分で選んで学ぶことを、会社が費用や時間の面で支える方法です。資格の取得、通信講座、書籍の購入などが当たります。会社が受講料の一部を出す、合格したら受験料を払い戻す、勤務時間の一部を学習に使ってよいことにする、といった支え方があります。社員自身が教育訓練給付金を使える講座もあり、教育訓練給付金とは、雇用保険に入っている人が厚生労働大臣の指定する講座を受けたときに、受講料の一部が雇用保険から支給される制度のことです。給付の割合や対象の講座は制度の種類によって違うので、社員に案内する場合は厚生労働省の教育訓練給付制度のページで最新の内容を確かめるよう伝えます。
資格の取得を自己啓発の支援として計画に入れる場合は、仕事とのつながりがはっきりしているものを選ぶと、社員の納得感が高まります。たとえば、経営の相談や業務の改善に関わる人なら中小企業診断士、病院や診療所の受付で働く人なら医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)のように、職務に直結する資格です。それぞれのページでは、試験の内容や合格率、資格を生かせる仕事の例を紹介しています。
3つの方法は、1つの項目の中で組み合わせることもできます。たとえば、新しい会計ソフトの使い方なら、まず外部の講座で全体の考え方を学び(Off-JT)、職場で先輩と一緒に実際の伝票を入力し(OJT)、詳しい機能は社員が自分で調べる(自己啓発)という順番にすると、短い時間で身につきやすくなります。
実施記録と効果の確かめ方
研修は、行って終わりではありません。行った記録と、効果を確かめた結果を残しておくことで、翌年の計画をよくすることができます。ISO9001の審査や助成金の申請でも、記録があるかどうかが確認されます。
実施記録には、研修名、実施日、時間、場所、講師、受講者の名前、使った資料、受講後の評価の結果を書きます。外部の講座を使った場合は、受講証明書や修了証の写しも保存しておきます。助成金を申請する場合は、出勤簿や賃金台帳など、研修の時間に賃金を払ったことが分かる書類も求められることがあるので、どの書類が必要かを申請の前に確かめておきます。
効果の確かめ方は、段階を分けて考えると整理しやすくなります。
- 反応: 受講者が研修に満足したか、分かりやすかったか(受講後のアンケートで確かめる)
- 理解: 研修の内容を理解したか(テストや演習で確かめる)
- 行動: 職場で研修の内容を使っているか(研修の1か月から3か月後に上司が確かめる)
- 成果: 仕事の結果が変わったか(ミスの件数、作業時間、売上などで確かめる)
多くの会社は、受講後のアンケートだけで効果を判断しがちです。しかし、アンケートで「満足した」と答えた人が、職場で研修の内容を使っているとは限りません。少なくとも重要な研修については、研修の数か月後に上司が職場での様子を確かめ、スキルマップを付け直すところまでを計画に入れておきます。
効果が出なかった研修は、原因を分けて考えます。研修の内容が難しすぎたのか、時期が悪かったのか、職場で使う機会がなかったのかによって、直し方が変わります。職場で使う機会がなかったのなら、研修の後に実際の仕事を任せる段取りを計画に組み込むことで、効果が出ることがあります。
年度の終わりには、計画と実施結果を並べて振り返ります。予定どおりに行えた研修の割合、受講した人数、スキルマップで段階が上がった項目を確かめ、翌年の計画に反映します。この振り返りを毎年続けることで、教育訓練計画は「作るための書類」から「会社を育てる道具」に変わっていきます。
小さな会社や少人数の職場での回し方
社員が10人に満たないような会社では、専任の教育担当者がいないことがほとんどです。それでも、教育訓練計画を作る意味はあります。むしろ、少人数の職場ほど、1人が休んだり辞めたりしたときの影響が大きいので、誰が何をできるのかを見える形にしておくことが大切です。
少人数の職場では、計画を大きく作りすぎないことが続けるこつです。スキルマップは主な業務の10項目ほどに絞り、年間の研修も四半期に1つずつ、合わせて4つほどから始めます。研修の多くはOJTになりますが、OJTこそ計画に書いておかないと、忙しさに流されて実施されません。「4月から6月は経理の月次の締めを、Aさんが Bさんに教える」と書いて、毎月の打ち合わせで進み具合を確かめるだけでも、何もしない場合とは大きく違います。
社長が計画の持ち主になる場合は、計画を作る時間を年に1回、決算の後など落ち着いた時期に確保しておくと続けやすくなります。経営の計画を立てる流れの中で「来年はどんな仕事ができる人が必要か」を考え、そのまま教育訓練計画に落とし込むと、経営と研修がつながった計画になります。
外部の講座を使う余裕がない場合は、地域の公的な機関が行っている研修を調べる方法もあります。都道府県や市区町村、商工会議所、職業能力開発促進センターなどが、在職者向けの講座を行っていることがあります。内容や費用は地域によって違うので、自分の会社がある地域の案内を確かめてください。
研修の準備と進み具合を共有する方法
教育訓練計画を作ったあと、実際に研修を進める段階では、講師の手配、会場や資料の準備、受講者への案内、実施後の記録の回収など、細かな作業がいくつも発生します。担当者が1人なら、Excel の計画表に「準備の状況」の列を追加して、自分で管理すれば足ります。Google スプレッドシートなら、複数の人が同じ表を同時に編集でき、変更の履歴も残るので、2人から3人で分担する場合にも使えます。
研修の数が多く、部署ごとに担当者が分かれている場合は、表だけでは「誰がどこまで進めたか」「何が止まっているか」が見えにくくなります。その段階では、研修や作業を1件ずつカードにして、担当と期限とやり取りを1か所に集められるプロジェクト管理の道具を使うと、進み具合を共有しやすくなります。代表的なものに Trello、Asana、Backlog などがあります。
候補の1つがPinatecaです。公式サイトによると、カンバン、ガント、カレンダー、リストなど8種類のボードとチャットが無料プランから使えます。年間の計画にある研修を1件ずつカードにして、準備の担当者と期限を設定すれば、カンバンボードで「準備中」「案内済み」「実施済み」「記録回収済み」の列を動かしながら進み具合を確かめられます。ガントチャートでは1年の研修の並びと準備の期間の重なりを、カレンダーボードでは月ごとの研修の予定を確かめられます。カードにはファイルを添付でき、コメントのやり取りもカードに残るので、研修資料や受講証明書の写し、講師とのやり取りを研修ごとにまとめられます。リソースボードでは、担当者ごとの仕事の偏りも確かめられます。5人までのチームなら期限なしで無料で、ボードは10個まで作れます。6人目、または11個目のボードからはスタンダードプランで、料金は1人あたり月額500円(年払いなら1人あたり月額400円、税抜)です。Pinatecaは計画の中身や研修の教材を作る道具ではなく、研修の準備の担当と進み具合を共有するための道具です。Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
どの道具を使う場合も、計画表そのものは1か所にまとめ、道具の中の情報と食い違わないようにすることが大切です。計画表は Excel やスプレッドシートで管理し、準備の作業だけをボードで分担する、という分け方にすると、年度末の振り返りで計画と実績を並べやすくなります。
外部の専門家に研修を任せる場合の考え方
社内に教えられる人がいない分野は、外部の専門家に研修を頼むことになります。研修会社の講座を使う方法のほか、近年はフリーランスの専門家に、自社向けの研修や勉強会を業務委託で頼む会社も増えています。とくに生成AIの使い方、Webマーケティング、情報セキュリティのように変化の速い分野は、社内で教材を作り続けるのが難しいため、外部の力を借りる場面が多くなります。
たとえば、生成AIを業務に取り入れたい会社なら、業務の洗い出しから使い方の研修までを支援する人がいます。こうした仕事の中身や頼み方はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で、マーケティングやセキュリティの分野についてはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で紹介しています。社内の業務システムを作る段階まで進むなら、アプリケーション開発のお仕事のように開発の専門家に頼む選択肢もあります。
外部に頼むときは、研修の目的と、終わった後にできるようになってほしいことを、計画表の項目と同じ言葉で伝えます。「AIの研修をしてほしい」ではなく、「営業部の10人が、提案書の下書きを生成AIで作り、自分で事実を確かめて仕上げられるようにしたい」と伝えれば、相手も内容と時間を見積もりやすくなります。報酬の考え方は分野によって違い、デザインの分野ならデザイナーの年収・単価相場、調査や分析の分野なら研究者の年収・単価相場のように、職種ごとの相場を見ておくと、依頼の予算を立てる目安になります。
在宅ワークとフリーランスの仲介を長く運営してきた立場から見ると、研修の依頼がうまくいく会社には共通点があります。1回の講義で終わらせず、受講後の質問を受ける期間や、社内で実際に使ってみた結果を見てもらう機会まで含めて頼んでいることです。専門家の側も、相手の仕事が実際に変わるところまで関われる依頼のほうが、内容を工夫しやすくなります。仲介の手数料がかからない手数料0%の直接の契約であれば、同じ予算でもそうした受講後の支援の時間まで含めて頼みやすく、受ける側にとっても手取りが目減りしないので、長く付き合える関係を作りやすくなります。
教育訓練計画は、社内の研修だけで完結させる必要はありません。社内で教えられることは社内で、変化の速い分野や専門性の高い分野は外部の力を借りて、という分け方を計画表の「方法」と「講師・担当」の欄に書き込んでおくと、毎年の見直しのときにも判断がしやすくなります。
よくある質問
Q. 教育訓練計画は法律で作らなければいけない書類ですか?
一般の会社では、作るよう努めることが求められる努力義務で、作らなくても罰則はありません。根拠は職業能力開発促進法の第11条です。ただし、人材開発支援助成金の一部のコースでは計画の作成が支給の要件になり、派遣会社は許可の基準として教育訓練の実施計画が必要です。ISO9001の認証でも、力量と教育訓練の記録が確認されます。
Q. 教育訓練計画に決まった様式はありますか?
厚生労働省は、事業内職業能力開発計画に決まった様式や記載内容の定めはないと案内しています。研修名、目的、対象者、方法、時期、講師、費用、評価の方法、実施結果の列があれば、Excel やスプレッドシートで十分に作れます。助成金を申請する場合は、そのコースで求められる様式があるので、申請先の案内を確かめてください。
Q. 研修の効果はどう確かめればよいですか?
受講後のアンケートだけで判断せず、理解度のテスト、研修の1か月から3か月後の職場での様子、仕事の結果の変化まで段階を分けて確かめます。スキルマップを研修の前後で付け直すと、どの項目で段階が上がったかを数字で追えます。効果が出なかった研修は、内容、時期、職場で使う機会のどれに原因があるかを分けて考えます。
Q. 社員が少ない会社でも教育訓練計画は必要ですか?
少人数の会社ほど、1人が休むと仕事が止まりやすいので、誰が何をできるかを見える形にしておく意味があります。主な業務を10項目ほどに絞ったスキルマップと、四半期に1つずつの研修から始めると無理なく続けられます。OJTも、教える人と期間と内容を計画に書いておかないと、忙しさで後回しになりがちです。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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