ドローン空撮の仕事を受けるまで|必要な資格と依頼の探し方


この記事のポイント
- ✓ドローン空撮仕事を受けるまでに必要な手続きを
- ✓機体登録から特定飛行の許可承認
- ✓飛行計画の通報まで国土交通省の一次情報で整理
ドローン空撮の仕事を調べていると、機体のレビューと操縦スクールの案内ばかりが出てきて、肝心の「依頼を受けられる状態」までの道筋が見えてこないことがあります。実務の入口でつまずくのは操縦の腕ではなく、機体の登録と飛行の手続きです。この記事では、屋外で報酬をもらって撮影するために踏む手順を、国土交通省が公開している制度の記載に沿って順番に並べ、そのうえで依頼の探し方と値段の組み方まで扱います。結論から言えば、空撮の依頼は「上手く飛ばせる人」ではなく「その場所とその時間に、合法に飛ばせることを説明できる人」に回ります。
ドローン空撮の仕事で最初に効くのは操縦ではなく手続き
空撮の相談を受けたとき、依頼者が最初に知りたいのは絵の美しさではありません。「その日、その場所で飛ばせるのか」です。工場の屋根を上から撮りたい、住宅の外観を斜め上から見せたい、河川のイベントを空から押さえたい。どれも場所と方法によって、あらかじめ国の許可や承認が必要になります。ここを即答できるかどうかで、見積の前段階で話が進むか止まるかが分かれます。
航空法の飛行ルールの対象になるのは、機体本体とバッテリーの合計が100g以上の機体です。国土交通省は対象機体について次のように書いています。
航空法第11章の規制対象となる無人航空機は、「航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(100g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)」です。 出典: 国土交通省
仕事で使える画質の機体は、ほぼ例外なくこの線を超えます。つまり空撮を仕事にする以上、登録も手続きも避けて通れません。逆に言えば、この部分を整えてしまえば、それ自体が同業との差になります。趣味で飛ばしている人は多くても、依頼者に対して書面で手続きの状況を示せる人はそれほど多くないからです。
手続きは大きく4段階です。機体を登録する、飛ばし方が許可承認の対象かを判定する、必要なら申請する、飛行計画を通報して飛行日誌を残す。この順番を覚えておけば、どの案件でも判断の道筋は同じになります。逆に順番を飛ばして「まず機体を買う」から始めると、買った機体が案件の条件に合わず作り直しになります。
空撮の依頼はどこから出ているのか
求人サイトで空撮の募集を見ると、募集の中身が大きく2つに分かれていることがわかります。1つは測量や点検の会社が出す技術系の募集で、もう1つは観光や広報、不動産の撮影に付随する募集です。前者は3次元計測や建設コンサルタントの業務の一部として空撮が入り、後者は映像制作や接客の仕事と抱き合わせになっています。
実際の募集文には、次のような書き方のものがあります。
【仕事内容】 お仕事について ドローンで空撮をお願いします。主にカヌー体験の様子をドローンで空撮します。他にカヌーガイドのお仕事もあります。経験、資格がない方はガイドの仕事をしながら覚えることも可能です。ご相談ください。<お仕事内容 (例)>・観光ガイド 四国中のサイクリング 奇跡の清流仁淀川・鏡川でのカヌー・カヤック・SUP・動画の撮影/編集・Web制作... 出典: 求人ボックス
この募集が示しているのは、空撮が単独の職種として立っている場面が少ないという現実です。撮影だけを切り出した依頼は単発で終わりやすく、編集やガイド、Web制作といった前後の工程を一緒に引き受ける人のところに継続の依頼が集まります。空撮を仕事の軸にするなら、撮ったあとの工程をどこまで自分で持つかを最初に決めておくほうが動きやすくなります。
依頼の出方には季節の波もあります。屋外の撮影は天候に左右されるため、梅雨と真冬は依頼が減り、桜と紅葉、そして年度末の工事完了報告の時期に固まります。単価の高い測量や点検の案件は年度予算に紐づくため、1月から3月に集中しやすい傾向があります。この波を見ずに「毎月同じ件数が来る」と想定して機材のローンを組むと、閑散期に資金が詰まります。
機体の登録とリモートIDの搭載
最初の手続きは機体の登録です。無人航空機の登録は2022年6月20日に義務化され、登録されていない機体を飛ばすことはできません。申請はドローン情報基盤システム(通称DIPS2.0)でオンラインで行い、手続きが終わると機体ごとに登録記号が発行されます。この記号は機体に表示する必要があります。
登録記号の表示に加えて、リモートID機能の搭載が求められます。リモートIDは機体の識別情報を電波で発信する仕組みで、飛行中に登録済みの機体かどうかを判別できるようにするためのものです。国土交通省は、発信される情報に個人情報は含まないと明記しています。ここは依頼者から「近隣の住民に説明できるのか」と聞かれたときに使える説明材料になります。
登録には有効期間があり、更新の手続きが必要です。更新もDIPS2.0で行えます。案件が立て込む時期に期限が来ると、飛ばせない期間が生まれて依頼を断ることになります。登録の期限と、後述する技能証明の期限は、案件表と同じカレンダーに書いておくのが実務的です。
本人確認はマイナンバーカード、運転免許証、パスポートのいずれかで行えます。マイナンバーカードを使う場合は券面情報の読み取りが必要で、この読み取りはスマートフォンからのほうが進めやすい作りになっています。会社や団体として登録する場合は、会社情報のわかる書類も用意します。申請には手数料がかかり、本人確認の方法によって額が変わるため、申請の直前に登録ポータルサイトで確認してから進めます。
特定飛行とカテゴリー。空撮で必ず引っかかる場面
ここが空撮の仕事の中心です。航空法では、規制対象の空域や方法で飛ばすことを「特定飛行」と呼び、この特定飛行にあたる場合は原則として許可または承認が必要になります。許可が必要な空域は、空港等の周辺、緊急用務空域、地表または水面から150m以上の高さ、そして人口集中地区の上空です。承認が必要な飛行の方法は、夜間での飛行、目視外での飛行、人または物件と距離を確保できない飛行、催し場所上空での飛行、危険物の輸送、物件の投下です。
空撮の依頼で頻繁に当たるのは、このうち人口集中地区の上空、人または物件から30mの距離を確保できない飛行、催し場所上空、そして夜景を撮る場合の夜間飛行です。住宅街で建物の外観を撮る依頼は、それだけで空域と距離の2つに同時に触れます。祭りやスポーツ大会の撮影は催し場所上空にあたります。つまり「街中で撮る」「イベントで撮る」という、仕事として単価が付きやすい依頼ほど手続きが要ります。
飛行の形態はリスクに応じて3つのカテゴリーに分けられています。特定飛行に当たらないものがカテゴリーIで、この場合は航空法上の許可承認の手続きは不要です。特定飛行のうち、飛行経路の下に人が立ち入らないようにする措置(立入管理措置)を講じたうえで行うのがカテゴリーIIで、原則として手続きが必要です。立入管理措置を講じず、第三者の上空を飛ぶのがカテゴリーIIIで、これがいわゆるレベル4飛行にあたります。
無人航空機はカテゴリーIII飛行を除き、第三者の上空を飛行できません。 出典: 国土交通省
この1行は見積の前提を決めます。イベントの撮影で「観客の頭上を飛んで盛り上がりを撮りたい」という要望が来たとき、それは通常の許可承認では受けられない話です。代わりに、観客の外側から寄りの画角で撮る、カメラを高い位置から固定で回すといった置き換えを提案できると、依頼を落とさずに済みます。
申請先は飛行場所によって変わります。空港等の周辺や150m以上の高さ、緊急用務空域における飛行許可は東京空港事務所または関西空港事務所、それ以外は東京航空局または大阪航空局が窓口です。飛行場所が日本全国にわたる場合は、申請者の住所を管轄する地方航空局や空港事務所が申請先になります。そして申請の締切りとして、飛行開始予定日の10開庁日前までに申請することが案内されています。この10開庁日は土日祝を含まない数え方なので、暦の上では2週間以上前です。「明日撮ってほしい」という急な依頼を街中で受けられない理由はここにあります。
無人航空機操縦者技能証明は取るべきか
国家資格として無人航空機操縦者技能証明があり、一等無人航空機操縦士と二等無人航空機操縦士に分かれています。まず押さえておきたいのは、国土交通省自身が「無人航空機操縦者技能証明書の取得は、無人航空機の飛行において必須事項ではありません」と書いていることです。免許がないと飛ばせない制度ではありません。
では何のために取るのか。理由は2つあります。1つは手続きの省略です。カテゴリーIIのうち、人口集中地区の上空、夜間、目視外、人または物件から30mの距離を取らない飛行であって、機体の総重量が25kg未満の場合は、立入管理措置を講じたうえで、技能証明を受けた人が機体認証を受けた機体を飛ばし、飛行マニュアルの作成など安全を確保する措置を講じることで、許可承認を不要にできます。案件ごとに10開庁日前の申請をしなくてよくなるのは、受注の速さに直結します。
もう1つは依頼者への説明です。企業の広報や自治体の仕事では、発注側が社内の稟議で「操縦者の資格」を書く欄を持っていることがあります。制度上は必須でなくても、書けるものがあると通しやすいというだけの理由で条件に入っていることが少なくありません。
有効期間は3年で、有効期間満了日の6か月前から1か月前までに更新の申請が必要です。更新には更新講習と身体適性検査を受ける必要があります。試験は学科試験、実地試験、身体検査で構成され、指定試験機関は一般財団法人日本海事協会です。学科試験の内容は「無人航空機の飛行の安全に関する教則」に準拠しており、令和8年7月14日からは第5版に準拠する形に切り替わっています。教則は公開されているので、受験を決める前に目次だけでも読んでおくと、自分に足りない知識がどこかが見えます。
一等と二等のどちらを取るかは、受けたい仕事で決まります。立入管理措置を講じずに第三者の上空を飛ぶカテゴリーIII飛行を扱うなら一等が前提になります。街中と夜間の撮影までで足りるなら二等で手続きの省略が効きます。空撮を始める段階では二等から入り、点検や配送の領域に広げる段階で一等を検討する順番が現実的です。
飛行計画の通報と飛行日誌。うっかりが罰則に届く場所
許可承認を取ったあとにもう1段あります。特定飛行を行う人は、飛行の日時や経路などを記載した飛行計画を、事前に国土交通大臣に通報する制度があります。ここは見落としやすい割に罰則がはっきりしています。
飛行計画の通報をせずに特定飛行を行った場合、航空法第157条の10に従い、30万円以下の罰金が科せられます。 出典: 国土交通省
通報はDIPS2.0から行います。通報した飛行計画が他の飛行計画と重複したときに、通報者どうしでシステム上で調整できる機能も用意されています。同じ河川敷で同じ時間に別の事業者が飛ばす予定だった、という事故の芽をここで潰す仕組みです。
もう1つ、特定飛行を行う場合は飛行日誌の作成が求められます。飛行、整備、改造の記録を残すものです。日誌は事故が起きたときに自分を守る資料になります。撮影のたびに機体の状態と飛行時間を記録する習慣は、依頼者から整備状況を聞かれたときの回答にもなりますし、機体の部品を交換する判断の根拠にもなります。
飛ばす場所に関わらず守らなければならない基本の決まりもあります。アルコールまたは薬物等の影響下で飛行させないこと、飛行前確認を行うこと、航空機または他の無人航空機との衝突を予防するよう飛行させること、他人に迷惑を及ぼすような方法で飛行させないことの4つです。撮影の現場では移動と設置に時間を取られて飛行前確認が形式的になりがちですが、ここを省くと機体を落としたときに説明がつかなくなります。
災害が起きている地域では、捜索や救難の有人機が飛ぶ可能性があるため、緊急用務空域が指定されます。この空域では、空港周辺や150m以上、人口集中地区の飛行許可を持っていても飛ばすことはできません。指定の状況は飛ばす前に必ず確認します。取材や記録のつもりで災害現場に向かうのは、仕事としても人としても取ってはいけない選択です。
撮った映像そのものに関わる決まり
手続きを通して撮影できたとして、次は映像の扱いです。空撮は地上のカメラでは入らない範囲まで写ります。隣家の庭、ベランダの洗濯物、駐車場の車のナンバー。依頼者の敷地を撮るつもりでも、フレームには周囲が入ります。
制度としては、航空法とは別に、地方公共団体が定める条例の規制があります。公園や河川、観光地で飛行を制限する条例は各地にあり、航空法上は問題がなくても条例で飛ばせない場所があります。国土交通省も、関係法令と条例を遵守して飛行させるよう求めています。撮影地が決まったら、その自治体の公園管理の部署に問い合わせるのが確実です。推測で「公園だから大丈夫」と進めると、当日に止められます。
映像をインターネットに載せる場合の配慮についても、総務省が考え方を示しています。個人が写り込んだ映像をそのまま公開すると、意図せず私生活を写してしまうことがあります。実務では、納品前に一度フレームの端まで見て、写り込んだ人や車のナンバー、表札を確認し、必要ならぼかしを入れます。この工程を工数として見積に入れておくと、あとで無償の手直しになりません。
電波の面では、機体と送信機が使う無線設備の決まりがあります。海外で売られている機体をそのまま持ち込むと、日本の技術基準に合わない周波数帯や出力になっている場合があります。国内の正規流通品を選ぶのが、確認の手間を減らす一番早い道です。
さらに、空港の周辺地域では小型無人機等飛行禁止法による原則禁止があり、こちらは航空法とは別の手続きです。飛ばす場合は空港管理者の同意や都道府県公安委員会への事前通報が別途必要になります。空港が近い土地の撮影依頼を受けるときは、航空法の許可だけで足りると思い込まないことが大切です。
機材と初期費用の組み方
機材は、案件が決まってから買うのが原則です。撮影の要件が決まらないうちに高い機体を選ぶと、必要のない機能に払ったうえで、必要な機能が足りない状態になります。
必要な支出は機体だけではありません。予備のバッテリーと充電器、プロペラの替え、機体を運ぶケース、着陸のためのマット、風速を測る計測器、タブレットやスマートフォン、そして賠償責任保険です。保険は依頼者から加入の有無を聞かれることが多く、入っていないと選考の段階で外れます。建設や不動産の会社は、下請けに対して保険の加入証明を求めるのが通例です。
費用の目安は用途で大きく変わります。写真と短い動画で足りる小型機の一式なら20万円から40万円程度、映像の仕事として色の調整まで求められる機体なら50万円から150万円程度、測量や3次元計測まで扱うなら機体とソフトを合わせて200万円を超える構成もあります。最初の案件の報酬でこれを回収しようとすると値付けが無理な方向に寄るので、最初の1年は機材を借りる選択も含めて考えます。
編集の道具も忘れられがちな支出です。4Kの素材を扱うと、書き出しの時間がそのまま納期に効きます。撮影より編集に時間がかかる案件のほうが多いので、パソコンの性能は機体と同じくらい重要です。動画編集を含む案件を受けるなら、素材を保存するための外付けのドライブも複数用意しておきます。空撮の素材は撮り直しが難しいため、納品まで2か所に保存しておくのが安全です。
依頼の探し方。求人と業務委託の2つの入口
依頼の入口は2つあります。1つは雇用で入る道、もう1つは業務委託で受ける道です。
雇用で入る道は、測量会社、点検会社、映像制作会社、ドローンスクールのインストラクターなどです。未経験から募集している会社もあり、業務のなかで機体と手続きを覚えられます。制度の細かい部分を実務で覚えられるのは大きい利点です。一方で、撮影対象は会社の受注に従うことになります。
業務委託で受ける道は、在宅ワークや業務委託の仲介サイト、映像制作会社からの下請け、地元の広告代理店や不動産会社への直接の営業です。実務では、最初の1件を「知っている人の紹介」で取り、その素材を実績として見せる形が一番早く回ります。ポートフォリオは本数ではなく、撮影の条件が書かれているかで見られます。どこで、何時に、どういう許可のもとで撮った素材なのかを書いておくと、発注側は自社の案件に当てはめて判断できます。
営業の材料としては、撮影の提案書を1枚作っておくと強いです。想定する撮影の高度と経路、必要な手続きと申請の期間、立入管理の方法、雨天時の代替日、納品の形式と期限、そして保険の内容。この6項目が書かれた紙があると、発注側は社内で回せます。制度の話を「自分が分かっている」だけでなく「相手が説明できる形にして渡す」ところまで持っていくのが、受注につながる境目です。
空撮と関わりの深い周辺の仕事も同時に見ておくと、閑散期の穴を埋められます。撮影データの整理や報告書の作成は文章の仕事に近く、在宅の案件として流通しています。文章の仕事の単価の考え方はWebライターが文字単価を上げる方法【2026年版】|1円→5円のステップにまとまっており、成果物の見せ方で単価が動く構造は撮影の仕事とよく似ています。文章の仕事の相場そのものを確かめたい場合は、職種別の単価を集めた著述家,記者,編集者の年収・単価相場が判断の目安になります。
報告書や提案書の体裁を整える力は、そのまま申請書の書き方にも効きます。書類の形式を学び直す入口としてはビジネス文書検定のガイドが参考になり、宛名の書き方から結びの文まで、発注側に通じる書式の型を確認できます。
続く人と続かない人の差
この市場を20年にわたって見てきた立場から言えば、空撮で長く仕事を続けている人の共通点は、撮影の技術ではなく段取りの確かさです。飛ばせる日を先に押さえ、雨天の代替日を最初の見積に書き、撮影の前日に現地の写真を送って確認を取る。この3つをやっている人は、同じ依頼者から翌年も呼ばれます。逆に、絵は良いのに当日の連絡が遅く、納品の形式を毎回聞き直す人は、1回で終わります。
運営者として見てきた限りでは、単発の作業を安く数多くこなす形より、「この人に頼むと自分の手間が減る」と思われる関係をつくった人のほうが、結果として受け取る額が伸びています。空撮は準備の手間が依頼者側にも発生する仕事です。近隣への周知、立入管理の人員、撮影許可の取得。ここを代わりに整えてくれる相手には、金額の交渉より先に「次もお願いしたい」が来ます。
金額の面では、仲介の手数料が乗らない形(手数料0%)で直接やり取りできる関係は、双方にとって意味があります。依頼者は同じ予算でより多く頼めますし、受け手は同じ請求額で手取りが厚くなります。単価を上げる交渉をしなくても、間に入る費用が消えるだけで手元に残る額が変わる。これは20年見てきて何度も確認してきた構造です。
続かない理由のうち、機材や技術が原因のものは実は少数です。多いのは、天候による延期の連絡でこじれる、申請の期間を読み違えて撮影日に間に合わない、納品した素材の権利の扱いを決めていなかった、という段取りの問題です。撮影の腕を磨く時間の一部を、契約書と連絡の型づくりに回すほうが、仕事の安定には効きます。
値段の決め方と見積の作り方
値付けで失敗する典型は「飛行時間で計算する」ことです。実際にプロペラが回っている時間は、案件全体の一部にすぎません。かかるのは、現地の下見、申請、近隣への周知、移動、機材の設置と撤収、撮影、素材の確認、編集、納品、そして修正の対応です。
見積は工程ごとに分けて書きます。事前調査と申請、撮影当日、編集と納品、修正の回数。この4つに分けて金額を置くと、依頼者が削りたい工程を選べるようになり、値引きの話が総額の値切りではなく工程の調整になります。「申請が要らない場所に変える」「編集は社内でやるので素材のまま受け取る」といった選択肢を相手に渡せるのは、工程で分けた見積だけです。
延期の扱いも先に書いておきます。屋外の撮影は必ず天候で動きます。前日の何時までに判断するのか、延期の場合の費用はどうするのか、何回まで延期に応じるのか。ここを決めていない見積は、延期のたびに無償の対応が増え、単価が実質的に下がっていきます。
素材の権利と使用範囲も決めておく項目です。納品した映像をどの媒体で、どのくらいの期間使えるのか。テレビや交通広告に転用する場合は追加の費用が発生するのか。2次利用の話を後から持ち出すと関係がこじれるので、最初の見積の備考欄に1行書いておきます。修正の回数も同じで、「初稿から2回まで」のように上限を書いておくと、無限の手直しを避けられます。
保険と再撮影の扱いも書きます。機体の不調で撮れなかった場合、天候で撮れなかった場合、依頼者側の都合で現場に入れなかった場合。この3つで費用の扱いが変わるのが普通です。文面で決めておけば、当日に揉めません。
事故が起きたときにやることを先に決めておく
空撮の仕事で最も説明が難しいのは、落ちたときの対応です。制度としては、事故または重大なインシデントが発生した場合の報告と、負傷者の救護の義務が定められています。国土交通省は事故等の報告及び救護義務について独立したページを設けており、何を報告するのかが整理されています。現場で慌てないためには、報告先の連絡先と報告に必要な項目を印刷して機材のケースに入れておくのが確実です。
現場で起きやすいのは、墜落そのものよりも軽微な接触です。樹木の枝にプロペラが当たって機体が不時着する、風にあおられてフェンスに触れる、着陸のときに砂を巻き上げて周囲の車に細かい傷が残る。どれも人的な被害はありませんが、対応を誤ると依頼者の信用を失います。実務では、撮影の前に機体の状態を写真で記録し、撮影後にも同じ角度で撮っておきます。傷がいつ付いたのかを後から示せるようにするためです。
現地での立入管理も、書面だけでは足りません。撮影エリアの入口に人を置く、コーンとテープで範囲を示す、通行人に声をかける。この3つは人手が必要なので、見積の段階で補助者の人数を入れておきます。1人で撮影と立入管理を同時にやろうとすると、どちらかが疎かになります。編集部が現場の記録を見てきた限りでも、機体を落とした事例の多くは、操縦者が周囲の確認を自分ひとりで兼ねていた場面で起きています。
依頼者との取り決めとしては、事故が起きた場合の連絡の順番を決めておきます。まず人の安全を確認し、次に警察や消防への連絡が必要かを判断し、そのうえで依頼者へ連絡し、最後に制度上の報告を行う。この順番を紙にしておけば、動揺している場面でも手が止まりません。
独自データから見た空撮の仕事の位置づけ
在宅や業務委託の案件の分布を見ていくと、空撮は「撮影単独では在宅化しにくいが、前後の工程が在宅と相性がよい」という位置にあります。撮影そのものは現地に行く仕事なので在宅にはなりません。しかし、素材の選定、編集、テロップ入れ、報告書の作成、図面との突き合わせといった工程は在宅で完結します。つまり空撮を軸にした働き方は、月に数日の現地作業と、残りの在宅作業という組み合わせになりやすい職種です。
この構造は、応募のときに何を見せるかにも影響します。現地の作業だけを実績として並べると、単価の高い後工程の依頼が来ません。素材から完成した動画までを1本通して見せると、撮影から納品までを任せられる相手として扱われます。
技術の面では、機体の自動化が進むほど、操縦そのものの価値は相対的に下がります。逆に上がるのは、どの絵を撮るべきかを決める力と、手続きを通す力です。前者は撮影対象の業界を知っているかどうかで決まります。建物の点検なら劣化の兆しがどこに出るか、不動産なら買い手が気にする方角と接道、農地なら作付けの時期。撮る対象の業界知識が、空撮の付加価値の中心に移ってきています。
隣接する分野の知識を足していく道筋も見ておく価値があります。空撮の素材を業務の改善に結びつける提案は、企業へのコンサルティングに近い形になります。その領域の仕事の内容はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で確認でき、現場のデータを企業の判断に変える仕事がどう発注されているかが見えます。撮影した画像を自動で分類する仕組みづくりまで踏み込むなら、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事に並ぶ案件が近い領域です。
制度の側も動き続けています。無人航空機操縦者技能証明の実地試験の実施基準は令和8年6月5日から新しいものが適用され、学科試験の準拠する教則も令和8年7月14日から第5版に切り替わりました。飛行計画の通報要領も令和8年3月末に改正されています。制度の更新が続く分野では、1年前に読んだ解説記事の内容がそのまま使えないことがあります。手続きを確かめるときは、解説ではなく国土交通省の無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法のページと、無人航空機操縦者技能証明等のページを直接開く癖をつけておくのが安全です。
最後に、仕事として広げていく順番を整理します。まず二等の技能証明と機体認証で、街中と夜間の撮影を手続きの省略で受けられる状態にする。次に、撮影対象の業界を1つ決めて、その業界の言葉で提案できるようにする。そのうえで、編集と報告書までを1本で請け負える体制に広げる。この3段で、単発の撮影から継続の取引に移せます。案件の探し方や単価の相場感をつかむには、職種ごとの仕事の中身を並べたアプリケーション開発のお仕事のように、業務委託で流通している仕事の記載を読んで、発注側がどんな言葉で条件を書いているかを確かめておくと、自分の提案書の書き方が決まります。
よくある質問
Q. ドローン空撮の仕事に資格は必要ですか?
国土交通省は「無人航空機操縦者技能証明書の取得は、無人航空機の飛行において必須事項ではありません」と明記しています。ただし技能証明と機体認証があると、人口集中地区や夜間などの一部の飛行で許可承認の手続きを省略できます。手続きの速さが受注に直結するため、仕事にするなら二等から検討する価値があります。
Q. 街なかで撮影する依頼はすぐに受けられますか?
人口集中地区の上空や、人や物件から30mの距離を確保できない飛行は許可承認の対象です。申請は飛行開始予定日の10開庁日前までに行うよう案内されています。土日祝を含まない数え方なので暦では2週間以上前になります。技能証明と機体認証で手続きを省略できる場合を除き、当日や翌日の依頼には応じられません。
Q. 100g未満の機体なら手続きは要りませんか?
航空法第11章の飛行ルールの対象は機体本体とバッテリーの合計が100g以上の機体です。100g未満でも、空港周辺での飛行や高高度の飛行は「航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為」として別の規制を受け、飛行の許可等が必要になる場合があります。仕事で使う画質の機体はほぼ100gを超えます。
Q. 初期費用はどのくらい見ておけばよいですか?
用途で幅があります。写真と短い動画で足りる小型機の一式は20万円から40万円程度、映像の仕事として色の調整まで求められる機体は50万円から150万円程度、測量や3次元計測まで扱うなら機体とソフトで200万円を超える構成もあります。これに予備のバッテリー、ケース、編集用のパソコン、賠償責任保険が加わります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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