顧客管理システム(CRM)の開発を外注する前に決めること|既製CRMとの比較軸 2026

中西 直美
中西 直美
顧客管理システム(CRM)の開発を外注する前に決めること|既製CRMとの比較軸 2026

この記事のポイント

  • crm開発を外注する前に決めておきたいこと
  • 既製CRMとの費用比較
  • 失敗しないための注意点を発注者視点で整理しました

「顧客管理システムを外注したいけれど、既製のCRMツールとどちらが自社に合うのか分からない」。そんなご相談を、最近よくいただくようになりました。売上が伸びてきて、Excelやスプレッドシートでの顧客管理が限界を迎えたタイミングで、多くの経営者や担当者がこの分岐点に立ちます。この記事では、CRM開発を外注する前に決めておくべきことと、既製CRMとの比較軸を、発注する側の視点で具体的に整理していきます。

crm開発の外注を検討する会社が増えている背景

まず、なぜ今このテーマで悩む方が増えているのか、少し俯瞰した話をさせてください。

中小企業庁の調査でも触れられているように、日本の中小企業はここ数年でデジタル化への投資意欲を高めています。顧客管理という業務は、営業・マーケティング・カスタマーサポートのすべてに関わるため、一度仕組みを整えると効果が波及しやすい領域です。だからこそ「そろそろ本気で顧客管理システムを整えたい」という相談が増えているのだと感じます。

一方で、CRMという言葉自体が指す範囲はとても広いです。名刺管理ソフトのような簡易なものから、営業支援(SFA)機能を統合した本格的なシステムまで、粒度がバラバラなまま「CRM開発」という言葉で語られてしまうことが少なくありません。まず最初に決めるべきは、自社が本当に必要としているのは「既製のCRM/SFAツールの導入」なのか、それとも「自社の業務フローに合わせたオリジナルのCRM開発」なのか、という一点です。ここを曖昧にしたまま外注先を探し始めると、見積もりの比較すらまともにできなくなります。

50万円程度からのオーダーメイド開発もあれば、月額数千円のSaaS型CRMもあります。金額のレンジが非常に広いジャンルだからこそ、比較の軸を先に決めておくことが何よりも重要になります。

既製CRMと開発(オリジナルCRM)の違いを整理する

既製CRM(SaaS型)とは何か

既製CRMとは、Salesforce、HubSpot、kintone、Zoho CRMのように、あらかじめ機能が用意されたクラウド型のサービスを指します。月額課金制で、契約すればすぐに使い始められるのが最大の特徴です。カスタマイズの自由度は製品によって差がありますが、基本的には「用意された機能の枠内で使う」という前提になります。

多くの企業がまず既製CRMの導入を検討するのは、初期費用の低さと導入スピードが理由です。無料プランやトライアル期間を用意している製品も多く、まずは触ってみて判断できる手軽さがあります。

オリジナルCRM開発とは何か

一方でオリジナルCRM開発は、開発会社やフリーランスのエンジニアに依頼して、自社の業務フローに完全に合わせたシステムをゼロから作ってもらう方法です。既製ツールでは表現しきれない独自の顧客管理ルール、業界特有の帳票フォーマット、既存の基幹システムとの連携などが必要な場合に選ばれます。

初期費用は既製CRMより高くなりますが、月額のランニングコストはユーザー数に依存せず、保守費用のみで済むケースが多いという特徴があります。次のような整理を見てください。

業務に合わせた専用システムを作ります。初期費用は50万円〜と、3つの中で最も高く感じられます。ただし、月額はユーザー数に依存せず、保守費用(月1〜3万円程度)で済みます。人数が多い・長く使うほど、外注の方が割安になっていく構造です。費用の内訳や相場は業務システム開発の費用相場も参考にしてください。 出典: frame-script.com

この指摘は非常に重要です。既製CRMは「1ユーザーあたり月額」という課金体系が多いため、利用人数が増えるほどランニングコストが線形に増えていきます。対してオリジナル開発は、初期投資こそ大きいものの、利用人数が増えても保守費用はほぼ一定です。長期的に見れば、社員数が多い企業や、5年10年と使い続ける前提の企業ほど、外注開発のほうがトータルコストで割安になる可能性があります。

判断の分岐点はどこにあるか

私自身、フリーランスとして独立する前に企業の管理部門で働いていた経験があります。当時、既製の顧客管理ツールを導入するか、社内システムとして作り込むかの議論に何度も立ち会いました。振り返って感じるのは、判断の分岐点は「利用人数」と「利用年数」と「業務の特殊性」の3つの掛け算だということです。利用人数が少なく(5人以下)、業務フローも一般的であれば、既製CRMで十分にまかなえます。逆に利用人数が多く、業界特有の複雑な業務フローがあり、5年以上使い続ける前提があるなら、外注開発を検討する価値が十分にあります。

crm開発の外注にかかる費用相場

開発規模別の費用感

CRM開発を外注する場合の費用相場は、機能の複雑さによって大きく変わります。目安として次のように整理できます。

シンプルな顧客情報管理(顧客リスト・対応履歴の記録程度)であれば、50万円から150万円程度が目安です。営業支援機能(案件管理・進捗管理・売上予測)を含む中規模のCRMになると、150万円から500万円程度まで幅が広がります。さらに既存の基幹システムやECサイトとの連携、外部API連携を伴う大規模なCRMになると、500万円を超えるケースも珍しくありません。

費用の内訳を理解する

見積もりを比較する際に大切なのは、金額の総額だけでなく内訳を確認することです。CRM開発の費用は主に次の要素で構成されています。

要件定義・設計費用は、開発全体の10%から20%程度を占めることが一般的です。ここを丁寧にやってもらえるかどうかで、後々の手戻りの量が大きく変わります。次に画面設計・実装費用が最も大きな比重を占め、全体の50%から60%程度です。エンジニアの人数と稼働時間に直結する部分なので、見積もりの妥当性を判断する際はここを重点的に見る必要があります。テスト・品質保証費用は10%程度、そして保守・運用費用は月額で発生する継続コストです。

見積もりを複数社から取る際、総額だけを比較すると安さだけで選んでしまいがちです。実は私自身、初めて業務システムの開発を外注したときに、まさにこの失敗をしました。3社から見積もりを取って一番安い会社に決めたのですが、後から確認すると要件定義がほとんど省略されており、途中で仕様の認識違いが何度も発生して結局追加費用がかさんでしまったのです。内訳を見て、要件定義にきちんと時間と費用を割いている会社かどうかを確認することが、結果的に安く済ませるコツだと痛感しました。

仲介経由と直接依頼のコスト差

CRM開発を外注する方法には、大きく分けて「開発会社(制作会社)に依頼する」「フリーランスエンジニアに直接依頼する」の2つがあります。開発会社に依頼する場合、営業担当者やプロジェクトマネージャーの人件費、会社の管理コストが見積もりに含まれるため、同じ規模の開発でもフリーランスへの直接依頼より費用が高くなる傾向があります。

仲介会社やエージェントを経由してフリーランスに依頼する場合も同様で、仲介手数料が上乗せされる分、直接契約より割高になりがちです。手数料の相場は案件によって異なりますが、報酬の20%から30%程度が仲介マージンとして差し引かれるケースもあります。フリーランスへ直接依頼すれば、この中間マージンが発生しない分、同じ予算でより高い品質を求めたり、同じ品質をより安く実現したりできる可能性があります。もちろん、直接依頼には発注者自身が要件をまとめ、進捗を管理する手間が伴うため、その手間を許容できるかどうかも判断材料になります。

crm開発を外注する開発会社・フリーランスの選び方

実績とポートフォリオを確認する

CRM開発は業種ごとに求められる機能が大きく異なります。飲食業の顧客管理と、不動産業の顧客管理では、必要なデータ項目も業務フローもまったく違います。だからこそ、依頼を検討している開発会社やフリーランスが、自社の業種に近い開発実績を持っているかを必ず確認してください。実績が公開されていない場合は、直接問い合わせて類似案件の経験を聞くのが良いでしょう。

見積もりの粒度をそろえて比較する

複数社から見積もりを取る際、最も注意すべきなのは「見積もりの前提条件をそろえる」ことです。ある会社は要件定義を含んだ見積もり、別の会社は要件定義を別途費用として出す見積もり、という具合に前提がバラバラだと、単純な金額比較が意味を持ちません。依頼する際は、同じ要件書(仕様のたたき台)を全社に渡し、同じ条件で見積もりを出してもらうことが大切です。

コミュニケーションの取りやすさ

CRM開発は、一度作って終わりではなく、運用しながら改善を重ねていくシステムです。そのため、開発が終わった後も気軽に相談できる相手かどうかは非常に重要な選定基準になります。初回の打ち合わせで、こちらの業務説明にどれだけ丁寧に耳を傾けてくれるか、専門用語を並べるだけでなく分かりやすく説明してくれるかを見ておくと、後々のミスマッチを防げます。

保守・運用体制の確認

システムは完成した後も、法改正への対応やOSのアップデート、不具合の修正など、継続的なメンテナンスが必要です。開発会社によっては開発だけを請け負い、保守は別会社に依頼する必要がある場合もあります。契約前に、保守費用の相場と対応範囲(何時間まで無償対応か、緊急時の連絡体制はどうなっているか)を必ず確認しておきましょう。

crm開発を外注する際の失敗しない進め方

ステップ1:業務フローを可視化する

依頼する前に、まず自社の顧客管理業務がどのような流れで動いているかを紙やスプレッドシートに書き出してみてください。「誰が」「いつ」「どんな情報を」「どこに記録し」「誰が確認するか」を整理するだけで、必要な機能が驚くほど明確になります。この作業を省略して丸投げしてしまうと、開発会社側も何を作れば良いか判断できず、結果として的外れなシステムができあがるリスクが高まります。

ステップ2:要件定義書のたたき台を作る

完璧な要件定義書を作る必要はありません。箇条書きで構わないので「実現したいこと」「必須の機能」「あれば嬉しい機能」を分けてリストアップしておくと、開発会社との打ち合わせが格段にスムーズになります。

ステップ3:複数社に同時に相談する

1社だけに相談して即決するのではなく、最低でも3社程度に同時に相談することをおすすめします。相見積もりを取ることで、費用相場の感覚がつかめるだけでなく、それぞれの会社の対応の丁寧さや提案力の違いも見えてきます。

ステップ4:小さく始めて段階的に拡張する

いきなり全機能を作り込もうとすると、費用も期間も膨らみがちです。まずは最低限必要な機能(顧客情報の登録・検索・対応履歴の記録程度)だけを作ってもらい、実際に使いながら必要な機能を段階的に追加していく進め方(アジャイル的な開発)のほうが、結果的に無駄な機能を作らずに済み、コストも抑えられます。

crm開発の外注に関するメリットと注意点

メリット

自社の業務フローに完全にフィットしたシステムを作れることが最大のメリットです。既製ツールでは実現できない独自の項目や、他システムとの連携も柔軟に対応できます。また、長期的に見れば月額のランニングコストを抑えられる可能性が高く、利用人数が多い企業ほどコストメリットが大きくなります。

注意点

一方で、開発期間中はシステムが使えないため、既存の業務(Excelやスプレッドシートなど)を並行して続ける必要があります。また、要件定義が不十分なまま開発を進めると、完成後に「思っていたものと違う」というミスマッチが起きやすい点にも注意が必要です。さらに、開発を依頼した会社が将来的に事業を畳んでしまうリスクもゼロではないため、ソースコードの著作権や納品物の扱いについて契約時にきちんと確認しておくことが大切です。

crm開発の外注におけるツール選定と組み合わせ方

CRM開発を外注する場合でも、すべてをゼロから作る必要はありません。既製のノーコードツール(kintoneやAppSheetなど)をベースにしつつ、足りない部分だけをカスタム開発してもらう「ハイブリッド型」のアプローチも近年増えています。この方法であれば、初期費用を抑えつつ、必要な部分だけオーダーメイドの柔軟性を確保できます。

実際に開発会社に相談する際は、「フルスクラッチで作る」「既製ツールをカスタマイズする」のどちらが自社に向いているかを、最初の打ち合わせで率直に相談してみることをおすすめします。経験豊富な開発会社であれば、予算や要件を聞いた上で最適な方法を提案してくれるはずです。

CRMの導入を検討している中小企業向けの支援情報として、次のような紹介もあります。

株式会社hacomonoは、ウェルネス産業に特化した店舗運営SaaSを提供し、1万店舗以上のDXを支援しています。単なる管理ツールではなく、予約・決済・入館管理を統合した「顧客体験(UX)中心」のCRM構築が強みです。 出典: biz.ne.jp

このように、業種に特化したSaaS型のCRMが充実してきている点も、既製ツールか外注開発かを判断する上での重要な材料になります。自社の業種にピッタリ合うSaaSが既に存在するなら、無理に外注開発を選ばず、そちらを検討する価値も十分にあります。

crm開発以外の外注も含めた業務委託の考え方

CRM開発の外注を検討する企業の多くは、同時に他の業務のアウトソーシングも検討していることが少なくありません。例えば、CRMに蓄積したデータをもとにマーケティング施策を打ちたい場合は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で紹介されているような、AIを活用した業務改善の支援を受けられる専門家に相談する方法もあります。データ活用と広告運用、セキュリティ対策まで一貫して相談したい場合は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事にまとまった情報が参考になります。

また、CRMそのものの開発だけでなく、周辺のアプリケーションやAPI連携まで含めて依頼したい場合は、アプリケーション開発のお仕事で外注の実務的な進め方を確認しておくと、依頼範囲の切り分けがしやすくなります。

CRM開発を依頼するエンジニアの報酬水準を事前に把握しておきたい方は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場が目安になります。相場感を知っておくことで、見積もりが極端に高いのか安いのかを判断しやすくなります。

発注者として見えてきたこと

20年近くこの市場を見てきた立場から言えば、CRM開発の外注で長く良い関係を築いている発注者ほど、「作って終わり」ではなく「一緒に育てていく」という姿勢で開発会社やフリーランスと向き合っています。最初から完璧な仕様を求めるのではなく、小さく作って使いながら改善していくという進め方を許容できる発注者ほど、結果的に満足度の高いシステムにたどり着いている印象があります。

もう一つ、運営者として見てきた実感としてお伝えしたいのは、中間マージンが乗らない直接取引の構造についてです。仲介会社を経由すると、その手数料分がどこかに転嫁されます。多くの場合、発注者が支払う金額は変わらないまま、実際に開発を担当するエンジニアの手取りが薄くなるという形で現れます。フリーランスへ直接依頼する場合、同じ予算でもエンジニアの手取りが厚くなり、結果として開発への熱量や丁寧さにも良い影響が出やすいというのが、長く現場を見てきた中での実感です。手数料0%で直接つながれる仕組みは、金額そのものよりも、双方が納得感を持って仕事を進められるという「質」の面でのメリットが大きいと感じています。

私自身、フリーランスとして活動を始めてから、複数の事業者の方から業務システムの相談を受ける機会が増えました。その中で気づいたのは、外注先とのやり取りに不安や緊張を感じている発注者が想像以上に多いということです。専門用語が分からない、進捗が見えない、追加費用を切り出されたらどうしようという不安を抱えたまま契約してしまうケースをよく見てきました。大丈夫です。契約前に不明点を遠慮なく質問し、見積もりの根拠を丁寧に説明してくれる相手を選ぶことは、決して失礼な行為ではありません。むしろ、そうした確認を歓迎してくれる開発会社やフリーランスこそ、長く付き合える相手だと考えています。

CRM開発の外注は、決して一部の大企業だけの選択肢ではありません。業務フローを整理し、費用相場を理解し、複数社を比較する準備さえ整えれば、中小企業や個人事業主にとっても十分に現実的な選択肢です。まずは自社の顧客管理業務を紙に書き出すところから、一歩を踏み出してみてください。

よくある質問

Q. CRM開発の外注と既製CRMツール、結局どちらが安いですか?

利用人数と利用年数によります。少人数・短期利用なら既製CRMが安く、多人数・長期利用なら外注開発の方がトータルコストで割安になる傾向があります。

Q. CRM開発を外注する際、最低限いくらぐらいから依頼できますか?

シンプルな顧客情報管理システムであれば50万円程度から依頼可能です。営業支援機能を含む場合は150万円以上を見込んでおくと安心です。

Q. 開発会社とフリーランス、どちらに依頼すべきですか?

大規模で複数人の体制が必要な場合は開発会社、小中規模でコストを抑えたい場合はフリーランスへの直接依頼が向いています。仲介手数料の有無も比較材料になります。

Q. CRM開発を外注する際、契約前に必ず確認すべきことは何ですか?

見積もりの内訳(要件定義・実装・保守費用の区分)、ソースコードの著作権の帰属、保守対応の範囲と費用の3点は必ず契約前に確認してください。

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この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月12日最終更新:2026年7月31日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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