会社の実印と銀行印と角印の違い|証明書が出るのはどれか


この記事のポイント
- ✓会社実印の印鑑証明が取れるのはどの印鑑か
- ✓銀行印や角印と何が違うのかを整理しました
- ✓印鑑証明書の手数料と取り方までを
会社を作ると、印鑑屋から「実印・銀行印・角印の3本セット」をすすめられる。値段は材質によって数千円から数万円まで開きがある。ところが、この3本のうち法律が形や大きさまで決めているのは1本だけで、印鑑証明書が出るのもその1本だけだ。残りの2本は、法律ではなく取引先や銀行との約束で使われている。会社実印の印鑑証明を取ろうとして「どの印鑑を登録したのか分からない」と止まってしまう人が多いのは、ここが混ざっているからだ。この記事では、3本の役割の違い、証明書が出る印鑑はどれか、その証明書をどこでいくらで取るのかを、順番に切り分けていく。
3本セットのうち、国が形を決めているのは1本だけ
まず整理しておきたい。会社の印鑑に「実印」「銀行印」「角印」という法律上の分類はない。法律が扱っているのは、登記所に提出した印鑑という1種類だけだ。
・会社実印。登記所(法務局)に届け出た印鑑。代表者印、会社代表印、丸印とも呼ばれる。この印鑑だけが印鑑証明書の対象になる ・銀行印。金融機関に口座の届出印として登録した印鑑。登録先は銀行であって国ではない ・角印。請求書や見積書に社名を示す目的で押す四角い印鑑。社印、角判とも呼ばれる。どこにも登録しない
3本セットが売られているのは、この3つを別の印鑑に分けておくと、万一どれかが持ち出されたときの被害を切り離せるからだ。法律が3本を要求しているわけではない。極端に言えば、会社実印1本で銀行口座も請求書もまかなうことは可能だが、実務では分けるのが一般的になっている。理由は後半で触れる。
「会社実印印鑑証明」と検索する人がぶつかりやすいのは、この最初の切り分けだ。手元に3本あって、そのうちどれを登記所に出したのかが分からないと、印鑑証明書を取っても照合できない。届出印が分からないときの調べ方も後述する。
会社実印は、大きさまで規則で決まっている
会社実印には、押さえておくべき決まりがある。商業登記規則という法務省令に、提出できる印鑑の条件が書かれている。
大きさの条件はこうだ。印鑑の大きさは、辺の長さが1センチメートルの正方形に収まるもの、または辺の長さが3センチメートルの正方形に収まらないものであってはならない、とされている。
言い換えると、1辺1cmの四角にすっぽり入ってしまう小さすぎる印鑑は受け付けられず、1辺3cmの四角に入りきらない大きすぎる印鑑も受け付けられない。使える範囲は直径でおおよそ1cm超から3cm以内で、市販の会社実印が直径18mmや21mmで作られているのはこの範囲に収めるためだ。
もう1つ、印鑑は照合に適するものでなければならない、という条件もある。ゴム印のように押すたびに形が変わるもの、欠けているもの、輪郭がつぶれて読み取れないものは、後から照合できないので提出できない。シャチハタ型のスタンプ印が使えないと言われるのはこの条件によるものだ。
彫られている文字についての決まりは、大きさほど細かくない。市販品は外側の円に「株式会社○○」という商号、内側の円に「代表取締役印」と彫るものが多い。内側を「代表者印」としても構わないし、個人の実印をそのまま会社の印鑑として届け出ることも、規則上は妨げられていない。ただし個人の印鑑と共用すると、会社の債務と個人の財産が混ざる場面で不都合が起きやすいので、分けて作るほうが後の説明が楽になる。
印鑑証明書が出るのは、登記所に出した印鑑だけ
ここが、この記事でいちばん伝えたい線引きになる。
商業登記法は、印鑑を登記所に提出した者は、手数料を納付してその印鑑の証明書の交付を請求することができる、と定めている。裏を返すと、登記所に出していない印鑑については、証明書そのものが存在しない。
銀行印は銀行に登録されているだけなので、国が「この印影は御社のものです」と証明する書面は出ない。角印はどこにも登録されていないので、なおさら出ない。取引先や役所から「会社の印鑑証明書を出してください」と言われたときに用意するのは、必ず会社実印のほうだ。
もう1点、混同しやすいのが個人の印鑑証明書との違いだ。個人の印鑑証明書は住んでいる市区町村が出す。会社の印鑑証明書は法務局が出す。窓口が違うので、市役所に行っても会社の印鑑証明書は取れない。逆に、会社を作るときに登記所へ提出する印鑑届書には、代表者個人の印鑑証明書を添えることになっている。ここで市区町村と法務局の両方に用事ができるため、順番を取り違えて二度手間になる人がいる。
印鑑証明書に何が書かれているか
会社の印鑑証明書は、A4判1枚の書面だ。載っているのは、登録されている印影と、その印鑑を出した人が誰かを示す情報になる。
印鑑を届け出るときに証明してほしい事項として登記所へ伝えるのは、会社の代表者の場合、商号、本店、資格、氏名、生まれた年月日だ。証明書には、この内容と印影が印刷される。
ここで意外に思われるのが、生年月日が載るという点だ。同姓同名の代表者と取り違えないためのものだが、取引先に渡す書面に代表者の生年月日が出ることは、あらかじめ知っておいたほうがよい。
登記事項証明書(会社の登記簿謄本)と混同されることも多いが、中身は別物だ。登記事項証明書は、商号、本店、目的、資本金、役員といった登記されている内容を写した書面で、印影は載らない。手数料も別に定められていて、窓口で紙の請求書を出す場合は1通600円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合は490円、オンラインで請求して郵送してもらう場合は520円とされている。取引先から「登記簿と印鑑証明を1通ずつ」と言われたら、この2種類を別々に請求することになる。
登記所に印鑑を届け出る手順
会社実印を登記所に届け出る書面は、印鑑届書という。設立の登記を申請するときに一緒に出すのが一般的で、様式は法務局のサイトで配布されている。
商業・法人登記の申請書様式のページには、株式会社や合同会社の設立・変更の申請書とあわせて、印鑑届書と印鑑カード交付申請書の様式も並んでいる。
書き込む内容は、証明してもらいたい事項として商号、本店、資格(代表取締役など)、氏名、生まれた年月日。それに加えて、届け出る人の氏名、住所、年月日、提出先の登記所名を書く。届出印そのものは、書面の枠内に実際に押して示す。
添えるものは、代表者個人の印鑑について市区町村長が作った証明書で、作成後3か月以内のものと決まっている。つまり、先に市区町村で個人の印鑑登録を済ませ、個人の印鑑証明書を取ってから登記所へ行く流れになる。個人の印鑑登録をしていない人は、そこから始めることになるので、設立の日程を逆算するときは数日の余裕を見ておきたい。
なお、代理人に届け出てもらうこともできる。その場合は、代理権を示す書面をあわせて提出する。
今は印鑑を出さずに会社を作ることもできる
以前は、登記を申請する人は印鑑を提出しなければならないと定められていた。この規定は削除され、現在の商業登記法では、該当する条文が「削除」となっている。印鑑の提出は義務ではなくなった。
ただし、出さなくてよくなったのは、オンラインで登記を申請する場合に道が開けたという意味であって、印鑑がまったく要らなくなったわけではない。書面で登記を申請する場合は、申請書に申請人や代理人が記名押印しなければならないとされているので、押す印鑑が必要になる。そして冒頭で触れたとおり、印鑑を提出していない会社は印鑑証明書を取れない。
金融機関の口座開設、不動産の取引、官公庁の入札、自動車の登録など、会社の印鑑証明書の提出を求められる場面は今も残っている。求められてから届け出ることもできるが、その都度、代表者個人の印鑑証明書を取り直すことになる。設立のタイミングでまとめて済ませておくほうが手数は少ない。
印鑑カードがないと証明書は受け取れない
印鑑を届け出たら、次は印鑑カードを受け取る。これを飛ばすと、印鑑証明書は1通も出ない。
印鑑カードは、印鑑を提出した人が、印鑑カード交付申請書を出して受け取るものだ。登記官が磁気帯の付いたカードを作って交付する、と規則に書かれている。銀行のキャッシュカードに近い見た目で、カード番号が記載されている。
このカードは、印鑑証明書を請求するときの本人確認の役割を果たす。窓口で請求するときは提示を求められるし、後で触れるオンライン請求で窓口受取を選んだ場合も、受け取りのときに提示する必要がある。
カードの交付そのものについて、手数料を定めた規定は置かれていない。ただし、カードを郵送してほしい場合は、送付に要する費用を納付することとされている。窓口で受け取るなら郵送料もかからない。
代表者が交代したときは、前の代表者のカードを引き継いで使うこともできる。新しく印鑑を提出する人が、提出と同時に申し出れば、前任者のカードをそのまま使えるという定めがある。会社ごとに1枚という運用なので、代表交代のたびに番号が変わると面倒だ、という現場の事情に合わせた仕組みになっている。
逆に、資格を失ったとき、印鑑を廃止したとき、カードを廃止する届出をするときは、カードを返す決まりだ。
印鑑証明書の取り方と手数料
取り方は大きく3つある。金額は請求のしかたで変わる。
登記手数料令という政令が、印鑑の証明書の交付についての手数料を定めている。
印鑑の証明書の交付についての手数料は、一件につき五百円とする。 前項の規定にかかわらず、(中略)電子情報処理組織を使用して行う印鑑の証明書の交付の請求に関する手数料(中略)は、一件につき四百二十円(当該印鑑の証明書の送付を求める場合にあつては、四百五十円)とする。 出典: laws.e-gov.go.jp
金額を整理すると次のようになる。
| 請求のしかた | 受け取り方 | 1通あたりの手数料 |
|---|---|---|
| 窓口や郵送で、紙の請求書を出す | 窓口または郵送 | 500円 |
| オンラインで請求する | 登記所の窓口で受け取る | 420円 |
| オンラインで請求する | 指定した住所に郵送してもらう | 450円 |
オンラインで請求したほうが50円から80円安い。年に数通しか取らない会社なら差は小さいが、入札や許認可の更新で一度に何通も必要になる会社では差が出る。
窓口で取る
いちばん早い。印鑑カードを持って登記所へ行き、交付請求書に会社法人等番号か商号・本店、代表者の氏名と生年月日を書いて出す。手数料は収入印紙を請求書に貼って納める。登記所の窓口や庁舎内の売店で印紙を買えることが多い。
どの登記所でも取れる。自社の登記を扱っている登記所でなくても構わない。出張先の最寄りの法務局で取れるので、急ぎのときは覚えておくと役に立つ。管轄は管轄のご案内から確認できる。
郵送で取る
交付請求書に印紙を貼り、返信用の封筒と切手を同封して送る。窓口に行けないときの方法だが、往復の日数がかかる。急ぎの提出期限があるときは向かない。
オンラインで請求する
自宅や事務所から請求できる。受け取りは郵送か、登記所の窓口かを選べる。
印鑑提出者本人が会社・法人の印鑑証明書を取得する場合、以下の方法により、オンラインで交付請求をすることができます(電子証明書が必要です。マイナンバーカードでも請求可能です。)。 印鑑証明書は、指定した住所に郵送します(お急ぎの場合は、指定した登記所等での窓口受取も可能です。印鑑カードをご持参ください。)。 出典: houmukyoku.moj.go.jp
押さえておきたい条件が3つある。
1つ目。請求できるのは印鑑を提出した本人で、請求のときに電子署名が要る。そのための電子証明書は、法務局が発行する商業登記用のものでもよいし、マイナンバーカードでもよい。
2つ目。受け取りのときに印鑑カードの提示が必要になる。窓口受取を選んだ場合でも、カードを持っていかないと受け取れない。
3つ目。手数料は電子納付で、収入印紙では納められない。窓口受取を選んだ場合でも印紙は使えない、と法務局が明記している。
コンビニでは取れない
市区町村が出す住民票や個人の印鑑登録証明書は、マイナンバーカードを使ってコンビニの複合機で受け取れる。ここから「会社の印鑑証明書もコンビニで取れるのでは」と考える人がいるが、会社の印鑑証明書を出しているのは登記所であって市区町村ではない。コンビニの仕組みは市区町村の証明書を扱うものなので、法人の印鑑証明書は対象に入っていない。
急ぐなら窓口、動けないならオンライン、という2択で考えるのが現実的だ。
印鑑証明書を出せと言われる場面
どんなときに求められるのかを知っておくと、何通取るかの見当が付く。実務でよく出てくるのは次のような場面だ。
・法人名義の銀行口座を作るとき。金融機関によって必要書類は違うが、登記事項証明書と印鑑証明書をセットで求められることが多い ・不動産を買う、借りる、担保に入れるとき。売買契約や賃貸借契約、抵当権の設定で必要になる ・官公庁の入札に参加するとき。競争入札参加資格の審査で、登記事項証明書とあわせて提出を求められる ・自動車を法人名義で登録するとき。運輸支局での手続きに使う ・許認可を取るとき。建設業、宅地建物取引業、古物商、産業廃棄物の収集運搬など、業種ごとの許可申請で添付を求められる ・金額の大きい業務委託契約を結ぶとき。相手方が、押された印鑑が本当に会社の代表者のものかを確かめるために求めることがある
逆に、日常の請求書や見積書のやり取りで印鑑証明書を求められることはまずない。求められたとしたら、相手が個人の実印と混同しているか、取引の重さが変わったかのどちらかなので、いったん用途を確認したほうがよい。
何通取るかは、提出先ごとに1通と考えておけば足りる。提出した証明書は基本的に返ってこない。ただし先に書いたとおり、日付が古くなると使えなくなるので、まとめ買いはしないほうがよい。
会社を作る流れの、どこで印鑑が出てくるか
設立の段取りの中で印鑑がどこに挟まるかを、順番に並べておく。株式会社を作る場合の流れはこうなる。
1つ目。会社の名前、本店、事業目的、資本金、役員を決める。ここで会社実印の発注もかけておく。彫るのに数日かかることがあるので、早めに動くほうがよい。
2つ目。定款を作り、公証役場で認証を受ける。ここで使うのは、発起人個人の実印と個人の印鑑証明書だ。会社はまだ存在しないので、会社実印の出番はまだない。
3つ目。資本金を発起人の口座に払い込む。
4つ目。設立の登記を申請する。書面で申請する場合は、申請書に押印する。このタイミングで印鑑届書も一緒に出すのが一般的で、代表者個人の印鑑証明書(作成後3か月以内のもの)を添える。
5つ目。登記が完了したら、印鑑カード交付申請書を出してカードを受け取る。
6つ目。カードを使って会社の印鑑証明書を請求する。ここでようやく、会社としての印鑑証明書が手に入る。
7つ目。登記事項証明書と印鑑証明書を持って、銀行で法人口座を開く。このとき銀行印を届け出る。
会社実印が使えるようになるのは、登記が終わって印鑑カードを受け取った後だ、という点を押さえておきたい。「設立したその日から使える」と思って銀行の予約を入れてしまうと、書類がそろわずに出直すことになる。
合同会社の場合も流れは近い。違うのは、定款について公証人の認証が要らないことだ。そのぶん設立までの日数は短くなるが、印鑑届書と印鑑カードの扱いは株式会社と変わらない。代表社員が印鑑を届け出て、カードを受け取り、証明書を請求する。
「有効期限3か月」の正体
印鑑証明書について、有効期限は3か月だと説明されることが多い。ただし、証明書そのものに期限が書かれているわけではない。
期限を決めているのは提出先だ。たとえば登記の手続きでは、添付する印鑑証明書は作成後3か月以内のものと規則で決められている。不動産取引や金融機関の手続きでも、同じように3か月以内や6か月以内という条件を先方が付けてくる。
だから正確には、「証明書が3か月で失効する」のではなく、「提出先が3か月以内のものを要求する」ということになる。日付が古いだけで手続きが止まるので、取ってから使うまでの間が空きそうなときは、提出直前に取り直したほうが確実だ。何通も取って保管しておくと、いざ使うときに日付が古くなっている、という失敗が起きやすい。
銀行印は「銀行との約束」でしかない
銀行印には、法律上の定義も、大きさの決まりもない。口座を作るときに金融機関へ届け出た印鑑が銀行印になる、というだけだ。
それでも会社実印と分けて作るのが一般的なのには理由がある。
・持ち出しの範囲を切れる。小切手や手形、出金伝票には銀行印を使う。経理の担当者に銀行印を預ける会社は多いが、会社実印まで渡してしまうと、契約書にも押せる状態になる ・紛失時の影響が小さい。銀行印をなくしても、銀行で改印の手続きをすれば済む。会社実印をなくすと、登記所での改印に加えて、代表者個人の印鑑証明書を用意し直す手間が発生する ・押す回数が違う。銀行印は使用頻度が高い。摩耗して形が変わると照合に通らなくなるので、照合に適することが求められる会社実印とは別にしておくほうが安全だ
会社実印を銀行印として届け出ることも、法律上は禁じられていない。1人で会社を回している段階では兼用でも大きな支障は出ない。ただし人を雇って経理を任せる段階になったら、分けることを検討したい。
角印は押さなくても書類は有効
角印は、請求書、見積書、納品書、社内の証明書などに押す四角い印鑑だ。「株式会社○○之印」のように、社名だけを彫るものが多い。代表者の肩書きは入れない。
角印について、まず知っておきたいのは、押さなくても書類の効力は変わらないということだ。請求書に印が押されていないから無効になる、という決まりはない。消費税の仕入税額控除に必要な請求書の記載事項にも、印鑑は含まれていない。
それでも押されているのは、習慣と、体裁の問題が大きい。紙でやり取りしていた時代に、社名の上に角印を重ねて押すことで、社外の人が勝手に書式を作りにくくする意味合いがあった。取引先の経理から「角印がないと受け付けられない」と言われることが今も残っているのは、その名残だ。
請求書をPDFで送る会社が増えたことで、角印の画像を貼るかどうかという運用の話も出てきている。画像であっても法的な意味は変わらない。求められたら貼る、求められなければ貼らない、という割り切りで足りる。
会社実印を請求書に押すのは避けたほうがよい。印影が外部に多く出回るほど、偽造の材料が増える。証明書が出る印鑑だからこそ、押す場面を絞る意味がある。
届出印が分からなくなったときと、なくしたとき
手元の印鑑のどれを届け出たのか分からなくなったときは、印鑑証明書を1通取ってみるのが早い。証明書には登録されている印影が印刷されているので、手元の印鑑を試し押ししたものと見比べれば分かる。
印鑑そのものをなくした場合は、新しい印鑑を作り、登記所で改印の手続きをする。印鑑届書に新しい印鑑を押して提出する流れで、届け出るときと同じように、代表者個人の印鑑証明書で作成後3か月以内のものを添える。改印が済むまで、古い印影での証明書は出せなくなる。
印鑑を使うのをやめる場合は、印鑑の廃止の届出という手続きがある。このとき印鑑カードを提示すれば押印は要らない、と規則に書かれている。廃止したときや資格を失ったときは、カードを返す。
盗難の可能性があるときは、手続きの前に警察へ届け出ておきたい。悪用された場合に、届出の記録が会社側の主張を支える材料になる。
押さない選択肢としての電子証明書
会社の印鑑には、4本目とも言える選択肢がある。法務局が発行する電子証明書だ。
商業登記法は、印鑑証明書の交付を請求できる人が、電磁的記録の作成者を示す措置の確認に必要な事項などの証明を請求できると定めている。これが商業登記電子証明書で、電子データに会社の代表者として署名するときに使う。
紙に押す会社実印と、データに付ける電子証明書は、役割が対応している。登記のオンライン申請、電子入札、一部の行政手続きでは、こちらがないと先に進めない。印鑑証明書の代わりに電子証明書の提出を認める取引先も出てきている。
とはいえ、印鑑証明書がすぐに不要になるわけではない。紙の契約書や不動産の場面では今も求められる。どちらか一方に寄せるのではなく、必要になった側から用意する、という考え方で足りる。
なお、電子契約サービスで使われている「電子印鑑」と、この電子証明書は別物だ。契約書のPDFに印影の画像を貼り付ける機能を電子印鑑と呼んでいるサービスがあるが、画像は誰でも複製できるので、本人であることの裏付けにはならない。法務局が発行する電子証明書は、データに付けた署名が確かにその会社の代表者のものであることを、第三者が確かめられる仕組みになっている。同じ「電子」でも、担っている役割が違う。
電子証明書には有効期間があり、期間に応じて手数料が変わる。紙の印鑑と違って、期限が切れると使えなくなるので、更新の時期を管理する必要が出てくる。登記のオンライン申請を自社で続けるつもりなら、更新を含めた運用まで見ておきたい。
在宅で働く人にも、この知識は他人事ではない
ここからは、在宅ワークやフリーランスの市場を長く見てきた立場からの観察になる。
法人の印鑑まわりの知識は、会社を作った人だけのものだと思われがちだ。実際には、業務委託で働く人の側にも関わってくる。
法人化を考える段階に来た人は、当然ながら当事者になる。売上が伸びて、取引先から「法人としか契約できない」と言われる場面は珍しくない。そのときに印鑑届書の存在を知らないと、設立の日程を組み間違える。
それだけではない。発注する側の会社が押してくる印鑑を見る目も、持っておいたほうがよい。契約書に押されているのが角印だけだった場合、その会社が「社としての体裁」で押しているのか、代表者として押しているのかは印影から読み取れる。金額の大きい契約や、長期の継続契約で、相手方が代表者印を押しているかどうかは、相手がその契約をどの重さで見ているかの手がかりになる。
運営者として見てきた限りでは、長く仕事が続く人ほど、契約の形式面を軽く扱わない。押印や書面の整え方に慣れている人は、支払いのトラブルに巻き込まれにくい。逆に、書面をほとんど交わさずに口頭で進めてきた人は、揉めたときに立証の材料がなくて苦労する。この差は、スキルの高さよりも、事務の習慣の差であることが多い。
もう1つ、直接取引の構造についても触れておきたい。仲介が入ると、発注側が払った金額から手数料が引かれ、受け取る側の手取りは薄くなる。仲介を挟まない直接取引では、同じ予算でも発注側はより多くを頼めるし、受け手の手取りは厚くなる。手数料0%で直接つながる形が支持されているのは、金額の大小というより、この「同じ予算で双方が得をする」という構造のためだ。ただし直接取引になるほど、契約書や請求書を自分で整える力が要る。印鑑の使い分けを知っておく価値は、そこにある。
書類まわりの基礎を体系的に学びたい場合、文書の書き方そのものを問う検定もある。ビジネス文書検定は、社外文書の形式や敬語の使い方を扱う検定で、請求書や契約書の体裁に不安がある人が土台を作るのに向いている。技術職として単価を上げる方向なら、ネットワークの基礎を問うCCNA(シスコ技術者認定)のような資格のほうが直接効く場面が多い。
報酬の水準を確かめたいときは、職種ごとの相場を見ておきたい。ソフトウェア作成者の年収・単価相場では開発職の単価帯を、著述家,記者,編集者の年収・単価相場では文章まわりの仕事の水準を確認できる。法人化して受注する場合、個人で受けるときより単価が上がることがある一方、社会保険料や税務の負担も変わるので、額面だけでなく手元に残る金額で比べる必要がある。
どの分野で法人化を目指すかを決めかねている段階なら、仕事の種類から考える手もある。AIコンサル・業務活用支援のお仕事は、企業の業務にAIを組み込む相談を受ける仕事で、法人相手の契約になりやすい分野だ。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事は複数の領域をまたぐ案件を扱い、アプリケーション開発のお仕事は開発を請け負う形の仕事を整理している。いずれも発注元が法人であることが多く、契約書と請求書のやり取りが前提になる。
未払いが起きたときの備えについては、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で回収の手順と費用感を扱っている。契約時に押した印鑑と交わした書面が、そのときの材料になる。
使い分けのルールは、作った日に決めておく
最後に、実務の落とし込みを整理しておく。
・会社実印。登記所に届け出た1本。使うのは、登記の申請、不動産の取引、官公庁への届出、金額の大きい契約、印鑑証明書を添える書面に限る。金庫か鍵のかかる場所に保管し、代表者以外が単独で持ち出せない状態にする ・銀行印。金融機関の届出印。経理が扱う。会社実印とは別の場所に置く ・角印。請求書、見積書、納品書、社内文書。担当者が日常的に使う。押さなくても書類の効力は変わらない
この3段階を、会社を作った日に決めておくと後が楽だ。人が増えてから「どの印鑑を誰が持つか」を決め直すのは、想像以上に面倒になる。
そして、印鑑証明書が必要になる予定が立った時点で、印鑑カードが手元にあるかを確かめる。カードがなければ証明書は出ない。届出だけ済ませてカードを取っていない会社は意外に多い。提出期限の前日に気づくと間に合わないので、ここだけは先に確認しておきたい。
なお、この記事で触れた手数料や要件は法令の記載に基づいているが、個別の手続きで何が必要になるかは、提出先や事案によって変わる。迷う場面が出たら、管轄の登記所に問い合わせるか、司法書士に確認するのが確実だ。
よくある質問
Q. 会社の印鑑証明書はどこで取れますか?
法務局(登記所)で取ります。市区町村では取れません。窓口、郵送、オンライン請求の3通りがあり、窓口なら全国どこの登記所でも請求できます。受け取りには印鑑カードの提示が必要なので、カードを先に用意しておいてください。
Q. 印鑑証明書の手数料はいくらですか?
登記手数料令では、窓口や郵送で紙の請求書を出す場合は1通500円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合は420円、オンラインで請求して郵送してもらう場合は450円と定められています。オンライン請求では収入印紙は使えず、電子納付になります。
Q. 銀行印や角印の印鑑証明書は取れますか?
取れません。印鑑証明書が出るのは、登記所に提出した印鑑だけです。銀行印は金融機関に届け出ているだけ、角印はどこにも登録されていないので、国が印影を証明する書面は存在しません。取引先から求められたら会社実印のほうを用意します。
Q. 会社実印と銀行印は同じ印鑑でもいいですか?
法律上は禁じられていません。ただし銀行印は経理担当者が扱うことが多く、同じ印鑑にすると契約書にも押せる状態を預けることになります。紛失したときの手続きの重さも違うため、人を雇う段階になったら分けることを検討してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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