調剤薬局で求められる資格|無くても入れる範囲はどこまでか【2026年版】


この記事のポイント
- ✓調剤薬局で求められる資格を
- ✓薬剤師にしかできない業務
- ✓資格が無くても担える調剤事務や調剤補助の範囲
まず、安心してください。調剤薬局で働くのに、全員が資格を持っている必要はありません。薬を調剤して患者さんに渡す仕事は薬剤師にしかできませんが、受付、会計、処方箋の入力、医薬品の検品や棚入れといった仕事は、資格が無くても担えます。実際に、未経験で調剤事務として働き始める人は少なくありません。
ただし、「資格が無くても入れる」ことと、「資格が無くても長く働きやすい」ことは、同じではありません。調剤薬局という職場には、法律で薬剤師にしかできないと決められた線がはっきりあり、その線のどちら側で働くかによって、任される仕事も、給与の上がり方も変わります。
この記事では、調剤薬局で求められる資格を、薬剤師の国家資格、薬剤師が取る認定、調剤事務の民間資格に分けて整理し、資格が無くても入れる範囲がどこまでなのかを、2026年時点の制度に沿って確かめていきます。皆さんがこれから調剤薬局を目指すときに、何を先に準備すればよいかの見通しが立つようにまとめました。
調剤薬局で働く人と、それぞれに必要な資格
調剤薬局で働く人は、大きく分けて3つの立場があります。どの立場で働くかによって、必要な資格がまったく違うので、最初に全体を見ておきます。
1つ目は薬剤師です。
薬剤師は国家資格で、薬学部の6年制の課程を修了し、薬剤師国家試験に合格して、厚生労働大臣の免許を受けた人だけが名乗れます。調剤薬局の中心となる調剤、監査、服薬指導は、薬剤師でなければ行えません。薬局には、処方箋の枚数に応じて一定数の薬剤師を置くことが求められていて、1日平均の処方箋40枚につき1人が目安です。
2つ目は調剤事務です。
受付、保険の確認、処方箋の入力、会計、レセプトと呼ばれる調剤報酬の請求などを担います。調剤事務には国家資格がなく、資格を持っていなくても働けます。民間の資格がいくつかあり、取得していると採用や仕事の覚えやすさの面で有利になることがあります。
3つ目は、その他のスタッフです。
医薬品の配送、在宅訪問の運転や補助、本部での経理や人事、店舗の運営を支える仕事などです。こうした仕事にも、特別な資格は必要ありません。ドラッグストアに併設された調剤薬局では、市販薬の販売を担う登録販売者が働いていることもあります。
つまり、調剤薬局の中には「薬剤師にしかできない仕事」と「資格が無くてもできる仕事」が混ざっていて、その境目がどこにあるかを知ることが、この記事のテーマになります。
調剤事務について、資格試験を実施している団体は次のように説明しています。
調剤事務は、調剤薬局での受付や処方せんの内容確認、調剤報酬請求(レセプト)業務などを行う専門的な事務職です。 出典: ginou.co.jp
「専門的な事務職」という言葉のとおり、資格は必須ではないものの、専門の知識が求められる仕事だという点は押さえておきたいところです。
薬剤師にしかできないこと:法律が引いている線
資格が無くても入れる範囲を知るには、まず「薬剤師にしかできないこと」を正確に知っておく必要があります。
薬剤師法では、販売や授与の目的で調剤を行えるのは、原則として薬剤師に限られています。医師や歯科医師が自分の患者さんのために調剤する場合などの例外を除けば、処方箋にもとづいて薬を調剤できるのは薬剤師だけです。
処方箋の内容を確認して問題がないかを判断すること、薬を量ったり混ぜたりすること、調剤された薬が正しいかを最終的に確かめる監査、そして患者さんに薬の飲み方や注意点を説明する服薬指導。これらは、薬剤師の専門的な判断が必要な仕事で、資格の無い人が行うことはできません。
処方の内容に疑問があるときに医師へ問い合わせる疑義照会も、薬剤師の役割です。
もうひとつ、薬剤師の資格が必要なのが、薬局の管理者です。
薬局には、その薬局の業務を管理する管理薬剤師を1人置くことが法律で定められています。管理薬剤師は薬剤師でなければならず、医薬品の管理、スタッフの監督、薬局の運営に関わる責任を負います。管理薬剤師になるための特別な試験はありませんが、薬局を適切に管理できるだけの実務経験があることが望ましいとされていて、実際には数年の経験を積んでから任されることがほとんどです。
ここまでが、法律によって薬剤師にしかできないと決められている範囲です。
この線は、薬局の規模や人手の状況によって動くものではありません。どれほど忙しい時間帯でも、資格の無い人が監査や服薬指導を代わりに行うことはできないので、求人を見るときもこの前提で読むことが大切です。
この線を知っておくと、求人票の読み方も変わります。
たとえば「薬剤師のサポート業務」「調剤補助」と書かれた求人があったとき、その中身が受付や棚入れなのか、錠剤の取りそろえまで含むのかは、職場によって違います。資格の無い人に任せてよい範囲は決まっているので、「薬剤師の代わりに監査もお願いします」「服薬の説明をしておいてください」といった業務が含まれていたら、その職場の体制には注意が必要です。
反対に、薬剤師として働く人にとっても、この線は大切です。自分にしかできない仕事がどこにあるのかを知っていると、資格の無いスタッフに任せられる作業を上手に分担し、患者さんと話す時間を確保しやすくなります。
資格が無くても担える範囲:調剤補助という考え方
実はここに、ここ数年で整理された大切なルールがあります。厚生労働省は2019年に、薬剤師以外の人が行ってもよい調剤に関わる業務の考え方を示しました。現場では、この通知が出た日付から「0402通知」と呼ばれています。
この通知では、薬剤師の目が届く範囲で、薬剤師の責任のもとに行うことを前提に、資格の無い人でも次のような作業を行ってよいとされました。
・処方箋にもとづいて、錠剤のシートなどを棚から取りそろえること ・薬剤師が一包化した薬について、数量が合っているかを確かめること ・納品された医薬品を、調剤室の棚に収めること
一方で、散剤を量る、水剤を量り取る、軟膏を混ぜるといった、薬を直接量ったり混ぜたりする作業は、資格の無い人が行ってよい範囲に含まれていません。そして、取りそろえた薬が正しいかの最終的な確認は、必ず薬剤師が行います。
この考え方の背景には、薬剤師の仕事を「薬を正確にそろえること」から「患者さんに向き合うこと」へ移していこうという流れがあります。薬剤師にしかできない判断や説明に時間を使えるよう、資格が無くてもできる作業を分担しよう、ということです。
現場では、この範囲の作業を担う人を「調剤補助」や「ピッキングスタッフ」と呼んでいる薬局もあります。調剤事務の人が、受付の合間に調剤補助も担当する形が多く見られます。
皆さんが調剤事務として働く場合、この範囲を知っておくことは、自分を守ることにもつながります。忙しさのあまり、通知の範囲を超える作業を頼まれることがないとは言い切れません。「これは薬剤師の確認が必要な作業ですよね」と落ち着いて言えるよう、線の位置を知っておいてください。
薬局の現場では、この通知の範囲をどう運用するかが、職場ごとに少しずつ違います。
取りそろえの作業を事務スタッフに任せている薬局もあれば、薬剤師がすべて行い、事務スタッフは受付と入力に専念している薬局もあります。どちらが正しいということではなく、薬剤師の人数、処方箋の枚数、監査の機械の有無などによって、分担の形が決まっています。
調剤補助の仕事に興味がある人は、面接で「事務スタッフは調剤室でどんな作業を担当していますか」と聞いてみてください。受付だけの仕事を想像して入ったら、実際には調剤室での作業が半分だった、あるいはその逆だった、というずれを防げます。調剤室での作業を担当する場合は、どの薬剤師の確認のもとで行うのか、手順が書面で決まっているのかも確かめておくと安心です。
調剤事務は資格が無くても働けるのか
調剤事務は、資格が無くても働ける仕事です。これは制度の面からも、求人の実態からも言えることです。
調剤薬局事務の仕事を行うにあたって必要な国家資格はありません。求人に応募して採用されれば、未経験からでも就業が可能です。ただし、調剤薬局事務には民間の資格があり、取得しておくと就職活動の際、採用されやすいなどのメリットがあります。 出典: u-can.co.jp
求人を見ても、「未経験歓迎」「資格不問」と書かれた調剤事務の募集は珍しくありません。特に、人手が足りていない地域や、パートの短い時間の勤務では、資格よりも人柄や勤務できる曜日を重視して採用するケースが多く見られます。
いちばん大きいのは、入ってから覚えることの量です。健康保険の種類、高齢者の自己負担の割合、公費で医療費が助成される制度、処方箋の見方、薬の名前、調剤報酬の計算の仕組み。資格の勉強で一度触れていれば「聞いたことがある」ことが、まったくの初めてだと、1つずつ理解しながら仕事をこなすことになります。
もうひとつは、レセプトの業務です。月の初めには、前の月の調剤報酬を審査支払機関に請求する作業があり、入力の誤りや保険の情報の不備を確かめます。受付や会計は数週間で慣れても、レセプトのエラーの意味が分かるようになるには、しばらく時間がかかります。
私の知人に、事務の経験はあったものの医療の分野は初めてという状態で、調剤薬局の受付に入った人がいます。最初の1か月は、処方箋に書かれた略語や保険証の記号の意味が分からず、休憩時間に先輩のメモを書き写していたそうです。3か月ほどで受付は1人で回せるようになったものの、「入る前に基礎だけでも勉強しておけば、あんなに焦らずに済んだ」と振り返っていました。
つまり、資格は入るための条件ではありませんが、入ってからの数か月を楽にする準備にはなる、ということです。
ドラッグストア併設の調剤薬局と、登録販売者の資格
調剤薬局と一口に言っても、ドラッグストアの中に調剤のカウンターがある形の店舗も増えています。こうした店舗では、調剤薬局だけの店舗とは違う資格が関わってくるので、分けて整理しておきます。
ドラッグストア併設の店舗で特徴的なのは、登録販売者という資格です。
登録販売者は、都道府県が実施する試験に合格して登録を受けた人で、市販薬のうち第2類医薬品と第3類医薬品を販売できます。かぜ薬や胃腸薬、湿布など、市販薬の大部分がこの区分に含まれます。受験に学歴や実務経験の条件はなく、薬学部を出ていなくても挑戦できる資格です。
ただし、登録販売者が扱えるのは、あくまで市販薬の一部です。
処方箋にもとづく調剤は、登録販売者にはできません。市販薬の中でも、第1類医薬品や、薬剤師が対面で説明する必要がある要指導医薬品は、薬剤師でなければ販売できません。つまり、ドラッグストア併設の店舗では、薬剤師、登録販売者、資格の無いスタッフの3つの立場が、それぞれの範囲で役割を分けて働いています。
調剤薬局だけの店舗では、市販薬をほとんど扱わないことも多いため、登録販売者の資格が活きる場面は限られます。一方、ドラッグストア併設の店舗では、調剤事務として入った人が、あとから登録販売者の資格を取り、売り場での相談にも応じられるようになる、というキャリアの広げ方があります。
登録販売者として、店舗の管理者のような責任ある立場を担うには、試験に合格するだけでなく、一定の期間、実務に従事した経験が求められます。資格を取ってすぐにすべてを任されるわけではない点は、薬剤師の管理薬剤師と同じ考え方です。
自分が働きたいのが、処方箋の対応に集中する調剤薬局なのか、市販薬の相談にも応じる併設の店舗なのか。その違いによって、先に取っておくと役に立つ資格も変わってきます。
併設の店舗は営業時間が長く、夜や土日にシフトが入ることも多いので、資格の選び方と合わせて、働ける時間帯が自分の生活に合うかも一緒に考えておくと、入ってからのずれを小さくできます。
調剤事務の民間資格にはどんなものがあるか
調剤事務の資格は、すべて民間の団体が実施しているものです。代表的なものをいくつか紹介しますが、名前や試験の形式、受験料は団体によって違い、見直されることもあるので、受験を考える場合は各団体の最新の案内を確かめてください。
調剤事務管理士は、技能認定の団体が実施している資格です。調剤報酬の請求に関する知識と、レセプトを作成する実技の両方が問われます。在宅で受験できる形式があり、働きながらでも挑戦しやすいのが特徴です。
調剤報酬請求事務技能認定は、医療事務の講座を運営する団体が実施している資格です。こちらも、調剤報酬の計算やレセプトの作成に関する知識が中心になります。
通信講座と組み合わせた検定もあります。テキストで学んだあと、自宅で試験を受けられる形式のものが多く、未経験の人が基礎を学ぶ入り口として使われています。
どの資格を選ぶかで迷ったら、次の3つの点で比べてみてください。
・学ぶ範囲に、レセプトの作成の実技が含まれているか ・自宅で受験できるか、会場に行く必要があるか ・学習にかかる期間と費用が、自分の生活に合っているか
調剤事務の資格だけでなく、医療事務全般の資格を学んでおく方法もあります。医療事務の資格では、病院やクリニックでの受付や診療報酬の請求を学ぶので、調剤薬局の前段にある医療機関の仕組みも理解できます。医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)では、試験の範囲や受験の流れが紹介されていて、医療保険の仕組みをどこから学べばよいかの目安になります。
資格の勉強にかかる時間は、未経験の人でおおむね2〜4か月程度を目安にしている講座が多く見られます。1日30分ほどの学習を続ける前提の講座もあり、仕事や家事と並行しても無理のない範囲で進められます。
資格を取るタイミングにも、ちょっとした工夫があります。応募する前に合格まで済ませられなくても、勉強を始めていることを面接で伝えるだけで、仕事への意欲は十分に伝わります。反対に、合格したあとも実際のレセプトの画面を見るまでは分からないことが多いので、資格を「ゴール」ではなく「現場で覚えるための下地」と考えておくと、入ってからの戸惑いが少なくなります。
薬剤師が入ってから取る資格:認定薬剤師の種類
ここからは、薬剤師として調剤薬局に入ったあとの話です。薬剤師の免許を持っていれば調剤薬局で働けますが、働き始めてから取る「認定」がいくつかあり、これが任される仕事や給与に関わってきます。
いちばん身近なのは、研修認定薬剤師です。
薬剤師の研修を担う機関が認定するもので、決められた期間の中で研修を受けて単位を集めると取得できます。一度取れば終わりではなく、一定の期間ごとに研修を続けて更新する仕組みです。薬の知識は新しくなり続けるので、学び続けていることを示す資格といえます。
このほかにも、分野ごとの認定があります。
がんの治療を外来で受ける患者さんを支える薬剤師の認定、在宅で療養する患者さんへの薬の支援に関する認定、漢方薬や生薬に関する認定、薬学部の学生の実務実習を指導する薬剤師の認定などです。どの認定も、実務の経験、研修の受講、症例の報告といった条件を満たす必要があり、取得までには数年かかるものもあります。
こうした認定は、薬局そのものの役割とも結び付いています。
地域の医療機関と連携して患者さんを支える薬局や、がんなどの専門的な治療を受ける患者さんを支える薬局として、都道府県から認定を受ける仕組みがあります。専門的な治療に対応する薬局として認定を受けるには、その分野の専門性を持つ薬剤師がいることが条件の1つになっています。つまり、薬剤師が取った認定が、薬局が担える役割を広げることにつながっているのです。
認定を取るかどうかは、皆さんがどんな薬剤師になりたいかによって決めればよいことです。すべての認定を取る必要はまったくありません。在宅に関わりたいなら在宅の分野、がんの患者さんを支えたいならがんの分野、というように、関心のある分野から考えてみてください。
認定の取得には、時間だけでなく費用もかかります。研修の受講料、学会の参加費、更新の手数料などが積み重なるため、薬局が研修費用を補助してくれるかどうかは、薬剤師にとって見逃せない条件です。
また、認定の多くは「どこで働いているか」と結び付いています。在宅の分野の認定を目指すなら在宅訪問に取り組んでいる薬局で、がんの分野の認定を目指すならがんの患者さんの処方を多く受ける薬局で、実務の経験を積む必要があります。取りたい認定が決まっているなら、その経験を積める職場かどうかを、就職や転職の段階で確かめておくことが近道になります。
かかりつけ薬剤師になるための要件
調剤薬局で働く薬剤師にとって、特に知っておきたいのが、かかりつけ薬剤師の要件です。
かかりつけ薬剤師とは、患者さんが同意したうえで、その患者さんを継続して担当する薬剤師のことです。ほかの医療機関で出ている薬もまとめて把握し、飲み合わせを確かめ、夜間や休日の相談にも応じます。調剤報酬の上でも、かかりつけ薬剤師として患者さんを担当することが評価される仕組みがあります。
かかりつけ薬剤師として算定するには、主に次のような要件があります。
・保険薬剤師として、薬局での勤務経験が3年以上あること ・その薬局に、週32時間以上勤務していること ・その薬局に、1年以上在籍していること ・研修認定薬剤師などの認定を取得していること ・地域の医療に関わる活動に参加していること
週の勤務時間の要件には、育児や介護のために短い時間で働いている場合の扱いが設けられるなど、見直しが重ねられてきました。調剤報酬の決まりはおよそ2年ごとに改定されるので、最新の要件は厚生労働省の公表資料や、勤め先の薬局で確かめてください。
この要件を見ると、研修認定薬剤師のような認定が、実際の仕事の範囲に直結していることが分かります。認定が無いと、どれほど患者さんに信頼されていても、かかりつけ薬剤師としての役割を制度の上で担うことはできません。
また、「同じ薬局に1年以上在籍」という要件は、転職を考えるときにも関わってきます。薬局を移ると、新しい薬局で在籍期間を積み直すことになるため、かかりつけ薬剤師として患者さんを担当していた人は、転職のタイミングを考える際にこの点も頭に入れておくとよいでしょう。
これから調剤薬局に入る薬剤師さんにとっては、かかりつけ薬剤師の要件は、数年先の目標を立てる手がかりにもなります。入って最初の数年で研修認定薬剤師の単位を集め、同じ薬局で経験を積み、地域の健康イベントや学校での薬の講座といった活動に参加していく。こうして順番に条件をそろえていけば、かかりつけ薬剤師として患者さんを担当する道が自然に開けていきます。
資格が効いてくる場面:採用、給与、任される仕事
資格や認定は、調剤薬局の中で、具体的にどんな場面で効いてくるのでしょうか。
まず採用です。
調剤事務の場合、資格が無くても採用される一方で、応募者が多い職場や、正社員の募集では、資格を持っている人が選ばれやすくなることがあります。資格そのものより、「基礎を自分で学んできた」という姿勢が評価される面も大きいようです。
次に給与です。
調剤事務では、資格手当を設けている薬局もありますが、手当の額は月に数千円程度のことが多く、資格だけで給与が大きく変わるわけではありません。むしろ、レセプトの業務を任せられるか、受付の責任者を担えるかといった、経験と役割による差のほうが大きく出ます。
薬剤師の場合は、管理薬剤師になると管理職としての手当が付くことが一般的です。認定を取ったことに対して手当を出す薬局もあります。薬剤師の給与の相場や、年代による推移を知っておくと、提示された条件を冷静に判断できます。薬剤師の年収・単価相場では年収の水準がまとまっているので、職場を比べるときの目安にしてください。
そして、任される仕事の範囲です。
これが、資格や認定の効き目がいちばんはっきり出る部分です。調剤事務なら、資格の勉強で得た知識があると、レセプトの確認や、保険の複雑な扱いの判断を任されやすくなります。薬剤師なら、認定があることで、かかりつけ薬剤師や在宅訪問の担当、専門的な治療を受ける患者さんの支援といった役割を担えるようになります。
正直にお伝えすると、資格を取れば必ず報われる、というものではありません。資格はあくまで入り口の1つで、それを実際の仕事で使い、周りに「この人に任せると安心だ」と思ってもらえるかどうかが、長い目で見たときの差になります。
資格の効き方は、職場の規模によっても違います。
大きなチェーンの薬局では、資格や認定の有無が、昇格や手当の基準として制度に組み込まれていることが多く、何を取ればどう評価されるのかが分かりやすい傾向があります。個人経営の小さな薬局では、制度としての手当は少なくても、資格を活かした仕事を早い段階から任されることがあります。どちらが自分に合うかを考えるときも、資格の扱いは1つの目安になります。
年齢や経歴別に、何から準備すればよいか
ここまでの内容を踏まえて、皆さんの状況ごとに、何から準備すればよいかをまとめます。
薬学部の学生さんは、まず国家試験の合格が最優先です。そのうえで、実務実習で調剤薬局の1日の流れをしっかり見ておくと、就職先を選ぶときの判断材料になります。認定は、働き始めてから計画的に取れば十分です。
病院やドラッグストアから調剤薬局に移る薬剤師さんは、研修認定薬剤師の認定を持っているか、更新の期限がいつかを確かめておきましょう。かかりつけ薬剤師の要件には薬局での勤務経験も含まれるため、病院での経験がどう扱われるかも、応募先に確認しておくと安心です。
未経験から調剤事務を目指す人は、資格を取ってから応募するか、応募しながら勉強するかを選べます。すぐに働きたいなら、未経験歓迎の求人に応募し、働きながら資格の勉強を進める方法が現実的です。時間に余裕があるなら、2〜3か月ほどかけて基礎を学んでから応募すると、入ってからの負担が軽くなります。
40代や50代で、事務の経験を活かして調剤事務に移りたい人もいます。まず、年齢を理由に諦める必要はありません。調剤薬局には高齢の患者さんが多く、落ち着いた受付対応は歓迎されます。ただし、新しい用語や、レセプトのシステムの操作を覚える負担は、若い人と同じようにかかります。入る前に基礎を学んでおくことは、年齢を重ねた人ほど、自分を助ける準備になります。
どの立場を目指すにしても、1人で考えて決めきれないときは、第三者に話を聞いてもらうと整理がつくことがあります。キャリアコンサルタントの資格ページでは、仕事選びの相談に乗る専門家がどんな知識を身に付けているのかが紹介されています。職場・転職・キャリア相談のお仕事では、キャリア相談の担当者が実際にどんな相談に向き合っているのかが分かるので、相談先を探すときの参考になります。
資格より先に確かめておきたい、職場の体制
最後に、資格の話と合わせて、職場の体制について触れておきます。資格を持っていても、職場の体制によって、その資格を活かせるかどうかが変わるからです。
調剤事務として入る場合は、教育の担当者がいるか、レセプトの業務を誰がどのように教えてくれるかを確かめてください。資格を持っていても、実際の薬局のシステムや、その薬局に多い処方の扱いは、現場で覚えるしかありません。教える人が決まっていない職場では、資格があっても最初の数か月が苦しくなります。
調剤補助を担当する場合は、0402通知の範囲で業務が組まれているか、薬剤師の確認の手順が決まっているかを見ておくと安心です。
薬剤師として入る場合は、研修の費用の補助や、研修に参加するための休みが取れるかを確かめましょう。認定の取得や更新には研修が欠かせないため、学び続けることを支える体制があるかは、長く働くうえで大切な条件です。在宅訪問やかかりつけ薬剤師の役割を担いたいなら、その薬局がどの程度取り組んでいるかも聞いておきたいところです。
働き方の面では、パートや短い時間の勤務でも、資格の勉強や研修の機会が与えられるかも確かめたい点です。正社員だけが研修の対象になっている職場では、短い時間で働く人が知識を積み上げにくくなります。
見学ができるなら、スタッフが実際にどんな分担で動いているかを見せてもらいましょう。受付の人数、調剤室にいる人の数、薬剤師が患者さんと話している時間。資格の話は書類の上のことですが、その資格が現場でどう使われているかは、見ればすぐに分かります。
フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、資格は「持っていること」より「使える場にいること」で価値が決まります。運営者として見てきた限りでは、長く仕事を続けている人は、資格を増やすことより、自分の資格と経験がきちんと活かされる場所を選ぶことに時間をかけています。
調剤薬局は、資格が無くても入れる範囲がはっきりしていて、入ってから資格や認定を積み上げていける職場です。薬剤師にしかできない線を正しく知り、自分がどの立場から入り、どこまで役割を広げていきたいかを考える。その順番で準備を進めれば、皆さんの年齢や経歴に関係なく、無理のない形で調剤薬局での仕事を始められます。
よくある質問
Q. 調剤薬局で働くのに資格は必要ですか?
薬の調剤、監査、服薬指導を行うには薬剤師の国家資格が必要です。一方で、受付、会計、処方箋の入力、医薬品の検品などを担う調剤事務には国家資格がなく、未経験や無資格でも働けます。民間の調剤事務の資格を取っておくと、採用や入ってからの仕事の覚えやすさの面で有利になることがあります。
Q. 資格の無い人は調剤室でどこまで作業できますか?
厚生労働省が2019年に示した考え方では、薬剤師の目が届く範囲で薬剤師の責任のもとに行うことを前提に、錠剤のシートなどを棚から取りそろえる、一包化した薬の数量を確かめる、納品された医薬品を棚に収めるといった作業は行えます。散剤や水剤を量る、軟膏を混ぜる、最終的な監査は薬剤師の仕事です。
Q. 調剤事務の資格はどれを選べばよいですか?
調剤事務の資格はすべて民間資格で、調剤事務管理士や調剤報酬請求事務技能認定などがあります。選ぶときは、レセプト作成の実技が含まれているか、自宅で受験できるか、学習期間と費用が生活に合っているかの3点で比べてみてください。名称や試験形式は見直されることがあるので、各団体の最新の案内を確認しましょう。
Q. かかりつけ薬剤師になるにはどんな要件がありますか?
主な要件は、保険薬剤師として薬局での勤務経験が3年以上、その薬局に週32時間以上勤務、同じ薬局に1年以上在籍、研修認定薬剤師などの認定を取得、地域の医療に関わる活動への参加です。調剤報酬の決まりはおよそ2年ごとに改定されるため、最新の要件は厚生労働省の資料や勤め先で確かめてください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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