手話通訳士を副業にする働き方と、依頼を受けられる窓口


この記事のポイント
- ✓手話通訳士を副業にしたい人に向けて
- ✓資格の位置づけと第36回試験の合格率11.2%などの実数
- ✓自治体の意思疎通支援事業や聴覚障害者情報提供施設
手話通訳士の資格を持っている、あるいはこれから目指している人の中には、本業を続けながら手話通訳の仕事を副業として受けたいと考える人が少なくありません。手話通訳は、きこえない人ときこえる人の会話をつなぐ専門的な仕事で、通訳の機会があればあるほど技術も磨かれます。
ただ、手話通訳の依頼は、一般の副業のように仲介サイトで探して受ける形ばかりではありません。自治体の派遣の仕組み、聴覚障害者のための情報提供施設、電話リレーサービスなど、公的な仕組みを通じて依頼が届くことが多い分野です。どこに登録すれば依頼を受けられるのか、本業との両立で何を確かめればよいのかが分かりにくいのは、そのためです。
この記事では、手話通訳士という資格の位置づけと試験の実数を確認したうえで、副業として依頼を受けられる主な窓口、2025年に施行された手話施策推進法の中身、本業と両立するときに確かめておくこと、長く続けるための体の管理までを順に整理します。
手話通訳士とはどんな資格か
手話通訳士は、厚生労働大臣の認定を受けた試験に合格し、登録した人に与えられる称号です。根拠になっているのは、「手話通訳を行う者の知識及び技能の審査・証明事業の認定に関する省令」という厚生労働省の省令です。省令とは、法律にもとづいて大臣が定めるルールのことです。
この試験は「手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)」と呼ばれ、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが実施しています。同センターは、資格制度の目的を次のように説明しています。
「手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)」の実施により、手話通訳技能の向上を図るとともに、手話通訳を行う者に対する社会的信頼を高め、聴覚障害者等の社会参加を促進し、併せて手話の発展を図るとともに、手話通訳事業の適切な実施を確保し、もって国民の福祉の増進に寄与することを目的としています。 出典: 社会福祉法人聴力障害者情報文化センター
注意したいのは、手話通訳士でなければ手話通訳をしてはいけない、という決まりではないことです。つまり、手話通訳士は「この人は一定以上の知識と技能を持っている」ことを証明する資格で、医師や弁護士のように資格がないとできない仕事を定めたものではありません。
手話に関わる資格や役割には、手話通訳士のほかにも次のようなものがあります。
| 名称 | 主な内容 |
|---|---|
| 手話通訳士 | 厚生労働大臣が認定した試験に合格し登録した人 |
| 手話通訳者 | 手話通訳に必要な知識や技術を習得し、地域で手話通訳活動を行う人 |
| 手話奉仕員 | 手話を習得し、地域の聴覚障害者と手話で会話ができ、行事やサークル活動などで手話活動を行う人 |
手話通訳者と手話奉仕員の説明は、同センターが厚生省の通知(平成11年)を引いて示しているものです。地域の派遣の仕組みでは、手話通訳者として自治体などに登録した人が通訳を担うことも多く、手話通訳士だけが通訳の担い手というわけではありません。
試験の難しさと、合格者の実像
手話通訳士試験は、難しい試験として知られています。同センターが公表している第36回(令和7年度)の結果では、受験者1,113名に対して合格者は125名で、合格率は11.2%でした。第1回から第36回までの累計でも、受験者32,230名に対して合格者は4,426名、合格率は13.7%です。
合格者の年齢にも特徴があります。第36回の合格者の平均年齢は47.1歳で、50代が40.0%、40代が29.6%を占めました。手話の技術は、長い時間をかけて地域の活動や通訳の経験を積みながら磨いていくもので、仕事や子育てと両立しながら合格を目指す人が多いことがうかがえます。
最新の第37回(令和8年度)の試験は、学科試験が2026年7月26日、実技試験が2026年9月27日に行われました。試験の内容は次のとおりです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 受験資格 | 20歳以上(受験する年度の末までに20歳になる人を含む) |
| 学科試験 | 障害者福祉の基礎知識、聴覚障害者に関する基礎知識、手話通訳のあり方、国語の4科目 |
| 実技試験 | 聞取り通訳試験(音声の出題を手話で答える)、読取り通訳試験(手話の出題を音声で答える)の2科目 |
| 試験地 | 埼玉、東京、大阪、福岡 |
| 受験手数料 | 22,000円(税込み) |
前の年度の学科試験で合格基準を満たした人は、申請すれば学科試験が免除されます。実技で惜しくも届かなかった人が、翌年は実技に集中できる仕組みです。
本業を続けながら受験する人にとっては、この仕組みが大きな助けになります。仕事の繁忙期と試験の準備が重なる年は、まず学科の合格基準を満たすことを目標にし、翌年に実技の練習へ時間を集中させる、という2年がかりの計画を立てる人もいます。自分の生活の中で確保できる練習時間から逆算して、無理のない受験の計画を組むことが大切です。
登録している手話通訳士の数は、令和8年4月1日現在で4,378名です。全国の人口と比べると、決して多い数ではありません。手話通訳士の資格を持っていることは、それだけで地域の中で頼られる存在になり得ることを意味します。
副業として依頼を受けられる主な窓口
手話通訳の依頼は、主に次のような窓口から届きます。それぞれの特徴を整理します。
自治体の意思疎通支援事業
もっとも身近な窓口が、市区町村や都道府県が行う意思疎通支援事業です。意思疎通支援事業とは、障害のために会話がしにくい人に、手話通訳者や要約筆記者を派遣する公的な仕組みのことです。厚生労働省は、この事業について次のように説明しています。障害や難病のために意思疎通に支障がある人に、手話通訳、要約筆記などの方法で意思疎通を支援する人の派遣などを行うものです。
具体的には、きこえない人が病院を受診するとき、役所で手続きをするとき、子どもの学校の面談に出るときなどに、自治体を通じて手話通訳者が派遣されます。通訳者として派遣を受けるには、自治体や、自治体から事業を任された団体に登録する必要があります。登録の条件や報酬の決め方は自治体によって違うため、住んでいる地域の障害福祉の担当窓口に問い合わせて確認します。
この窓口の特徴は、生活に密着した場面の通訳が多いことです。平日の日中の依頼が中心になりやすいため、本業との両立を考えるなら、自分がどの曜日や時間帯なら受けられるかを登録の段階で伝えておくことが大切です。
聴覚障害者情報提供施設
聴覚障害者情報提供施設は、字幕や手話の入った映像の製作や貸し出し、手話通訳者や要約筆記者の派遣、聴覚障害者の相談などを行う施設です。厚生労働省の説明によると、この施設は全国に設置されています。地域によっては、この施設が手話通訳者の派遣の窓口を担っていることもあります。
派遣のほかに、手話の入った映像の製作に関わる仕事が生まれることもあります。映像に手話を付ける作業は、通訳の技術に加えて、画面の中で見やすく表現する工夫が求められます。
電話リレーサービスの通訳オペレータ
在宅に近い働き方や、決まった時間に働く形を考えるなら、電話リレーサービスも選択肢になります。電話リレーサービスとは、きこえない人ときこえる人の電話での会話を、通訳オペレータが手話や文字と音声の間で通訳してつなぐサービスのことです。
このサービスは、2020年に成立した「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」にもとづき、2021年7月から公共インフラとして提供されています。総務大臣の指定を受けた提供機関である一般財団法人日本財団電話リレーサービスが運営し、24時間365日、緊急通報にも対応しています。厚生労働省も、オペレータになり得る通訳者の養成などを通じて協力すると説明しています。
日本財団電話リレーサービスは、2026年10月1日に、手話通訳活動をしている人を対象とした「手話通訳オペレータ体験講座」の募集を公表しています。大阪と名古屋の会場で、2026年11月23日と12月5日に各回定員15名、参加費無料で開かれ、締め切りは各開催日の2週間前です。講座の受講が採用を保証するものではない、と案内されていますが、オペレータの仕事の中身を知る機会になります。
講演会、イベント、企業の会議
講演会や式典、企業の会議、研修などで手話通訳を付ける場面も増えています。こうした依頼は、主催者から手話通訳の団体や派遣の事業者に寄せられ、登録している通訳者に割り振られることが多くあります。資料の事前の受け取りや打ち合わせが必要で、専門用語の多い分野では準備に時間がかかります。
教育の場
学校や大学での通訳も、今後広がっていくと考えられる分野です。次の節で紹介する手話施策推進法は、手話を使うこどもが学ぶ学校や、大学などで、手話通訳を行う人の確保に取り組むことを国と地方公共団体に求めています。
登録から最初の依頼までの流れ
窓口が分かっても、実際にどう動けばよいかが見えないと最初の一歩が踏み出せません。自治体の派遣の仕組みを例に、登録から最初の依頼を受けるまでの一般的な流れを整理します。細かな手順は自治体ごとに違うため、あくまで目安として読んでください。
- 住んでいる市区町村の障害福祉の担当窓口に、手話通訳者の派遣の仕組みと登録の方法を問い合わせる
- 派遣の事業を自治体から任されている団体があれば、その団体を紹介してもらう
- 登録の条件を確認する。手話通訳士の資格、手話通訳者の登録試験の合格、研修の受講などが条件になっていることが多い
- 登録の申込をし、必要に応じて面談や研修を受ける
- 受けられる曜日や時間帯、対応できる場面を伝える
- 依頼が届いたら、日時と場所、場面の内容を確認して引き受ける
この流れの中で大切なのが、5番目の伝え方です。本業がある人は、受けられる時間帯が限られます。最初に正直に伝えておくと、無理のない依頼だけが届くようになり、直前の断りで依頼元に迷惑をかけることも防げます。
また、登録したからといって、すぐに依頼が届くとは限りません。地域によっては、経験の浅い通訳者は、先輩の通訳者と一緒に現場に入る形から始めることもあります。最初のうちは研修や勉強会に積極的に参加し、地域の通訳者や聴覚障害者の団体の人たちと顔を合わせておくと、依頼につながりやすくなります。
場面ごとに求められる準備
手話通訳の依頼は、場面によって求められる準備が大きく違います。代表的な場面ごとに整理しておきます。
病院の受診
病院での通訳では、症状の伝え方や、医師の説明、薬の飲み方などを正確に伝えることが求められます。体の部位や病気の名前、検査の名前の手話表現を確認しておくと安心です。医師の判断に通訳者が意見を加えることはせず、質問はそのまま医師に伝えます。受診の内容は、もっとも慎重に扱うべき個人の情報です。
役所や銀行の手続き
役所や銀行の窓口では、制度の名前や手続きの用語が次々に出てきます。年金、保険、税金など、普段は使わない言葉も多いため、事前に手続きの内容を聞いておき、関係する言葉の意味を確認しておきます。書類の記入の場面では、通訳者が代わりに書くのではなく、本人が内容を理解して記入できるよう支えます。
学校の面談や行事
子どもの学校の面談や保護者会では、学校特有の言い回しや行事の名前が出てきます。複数の保護者が同時に発言する場面では、誰が話しているのかを伝える工夫も必要です。
講演会や会議
講演会や会議では、専門用語や固有名詞が多く出てきます。事前に資料や話す内容の要点を受け取り、手話表現を確認しておくことが欠かせません。登壇者が早口の場合や、時間が長い場合は、交代の通訳者を付けてもらうよう主催者と相談します。
電話の通訳
電話リレーサービスのような電話の通訳では、相手の顔が見えないきこえる人と、画面越しのきこえない人の間をつなぎます。会話の相手がどんな人か分からない状態で、話の流れをつかみながら通訳する力が求められます。予約、問い合わせ、緊急の連絡など、内容も幅広くなります。
手話施策推進法で何が変わるのか
2025年6月25日に、「手話に関する施策の推進に関する法律」(手話施策推進法)が公布され、同じ日に施行されました。この法律は、手話を使う人にとって手話が日常生活や社会生活を送るうえで言語その他の重要な意思疎通の手段であることをふまえ、手話に関する施策を総合的に進めることを目的としています。
手話通訳を仕事にする人にとって注目したいのが、人材の確保について定めた条文です。
国及び地方公共団体は、手話通訳を行う者その他の手話に関する専門的な知識及び技能を有する人材の安定的な確保、養成及び資質の向上のため、研修の機会の確保、適切な処遇の確保その他の必要な施策を講ずるものとする。 出典: e-Gov法令検索 手話に関する施策の推進に関する法律
「適切な処遇の確保」とは、つまり手話通訳者が仕事として続けられるだけの待遇を整えるということです。手話通訳は、長く地域のボランティアの延長として支えられてきた面があり、技術に見合った報酬が得られないという声もありました。法律に人材の確保と処遇が明記されたことで、自治体の取り組みが進むことが期待されます。
この法律は、ほかにも9月23日を「手話の日」とすること、学校で手話による教育を受けられるよう手話通訳を行う人などの配置を進めること、大学などで手話通訳を行う人の確保を促すことなどを定めています。施行後おおむね5年をめどに、施行の状況をふまえて見直しを検討することも定められています。
ただし、この法律は国や自治体が進める施策の方向を定めたもので、手話通訳者の報酬の額を直接決めるものではありません。実際にどのような取り組みが行われるかは、自治体ごとに違います。住んでいる地域の施策は、自治体の障害福祉の窓口で確認してください。
本業と両立するときに確かめておくこと
手話通訳を副業として受けるときは、本業との関係で確かめておくことがいくつかあります。
勤め先の副業のルール
まず確認したいのが、勤め先の就業規則です。就業規則とは、会社で働くうえでのルールを書いた規程のことです。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)では、副業や兼業について第70条で定めており、労働者は勤務時間外に他の会社の業務に従事できるとしたうえで、会社が禁止や制限をできる場合として、労務の提供に支障がある場合、企業秘密が漏れる場合、会社の名誉や信用を損なう場合、競業により会社の利益を害する場合の4つを挙げています。
実際のルールは会社によって違います。届出が必要な会社もあるので、副業を始める前に自分の会社の就業規則を確認しておきます。公務員の場合は、法律にもとづく兼業の制限があるため、所属する組織の担当部署に確認します。
平日の日中の依頼との兼ね合い
手話通訳の依頼は、病院の受診や役所の手続きなど、平日の日中に集中しがちです。本業が平日の日中の仕事であれば、受けられる依頼は限られます。土日や夜間の講演会、電話リレーサービスのシフトなど、本業と重ならない時間帯の仕事を中心にするのか、本業の休みの日を通訳にあてるのかを、あらかじめ考えておきます。
税金の申告
副業の収入が増えてきたら、税金の申告も必要になります。会社員の場合、給与以外の所得の合計が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要です。自治体からの報酬が、給与なのか、謝礼や業務の対価なのかによって、所得の種類が変わることがあります。受け取る報酬の扱いは、依頼元と税務署に確認しておくと安心です。住民税は20万円以下でも申告が必要になる場合があるため、住んでいる市区町村の案内も確かめておきます。
報酬の考え方と、仕事の組み立て方
手話通訳の報酬は、依頼の窓口によって大きく違います。自治体の派遣では、自治体ごとに時間単位の報酬が決められていることが多く、講演会や企業の会議では主催者や派遣元との契約で決まります。電話リレーサービスの通訳オペレータは、提供機関の雇用や契約の条件によります。
いずれの場合も、登録や契約の前に次の点を確認しておきます。
・時間単位の報酬と、最低の拘束時間
・移動時間と交通費の扱い
・事前の打ち合わせや資料の読み込みの時間が報酬に含まれるか
・依頼が直前に取り消された場合の扱い
・長時間の通訳で交代の通訳者が付くかどうか
正直なところ、手話通訳の副業だけで大きな収入を得るのは簡単ではありません。それでも、地域の派遣、講演会の通訳、電話リレーサービスのように性格の違う仕事を組み合わせると、本業の空いた時間を生かしながら通訳の機会を確保できます。
報酬を考えるときは、目先の額だけでなく、経験として得られるものも含めて判断するのが現実的です。たとえば、講演会の通訳は準備に手間がかかる一方で、専門分野の手話表現を身に付ける機会になります。電話リレーサービスは、短い会話を数多く通訳する経験を積めます。どの仕事が自分の技術を伸ばすかを考えながら組み合わせると、数年後に受けられる依頼の幅が変わってきます。
文章を書く仕事と組み合わせる人もいます。手話や聴覚障害に関する記事の執筆、講座の教材づくり、手話の入った映像の台本づくりなどは、手話通訳の知識が生きる仕事です。文章を扱う職業の収入の目安は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、公的統計をもとに整理されています。
要約筆記や文字の通訳と組み合わせる道
きこえない人やきこえにくい人の中には、手話より文字のほうが分かりやすい人もいます。特に、大人になってから聞こえにくくなった人は、手話を使わないことも少なくありません。こうした人の会話を支えるのが要約筆記です。要約筆記とは、話の内容を要約して文字で書き、画面や紙に表示して伝える方法のことです。
厚生労働省の説明でも、意思疎通支援事業は手話通訳と要約筆記などの方法で行うものとされ、電話リレーサービスも手話と文字の両方で通訳を行っています。手話通訳の技術に加えて、文字で要点を素早くまとめる力を身に付けると、対応できる依頼の幅が広がります。
手話と文字の両方に対応できる人は、講演会のように多くの人が参加する場面で特に重宝されます。会場には手話を使う人と文字を必要とする人が混在することがあるため、主催者は両方の通訳を手配したいと考えるからです。地域で要約筆記者の養成講座が開かれていれば、手話通訳と並行して学ぶことも検討してみてください。
長く続けるための体の管理
手話通訳は、手や腕、肩を長時間使い続ける仕事です。同時に、聞いた言葉を瞬時に手話に置き換え、手話を音声に置き換える作業を休みなく続けるため、頭も強く疲れます。副業として本業の後に通訳を重ねると、知らないうちに体に負担がたまります。
体を守るために、次のような点を意識しておきます。
・長時間の通訳では、交代の通訳者を付けてもらうよう依頼元に相談する
・通訳の前後に、手首や肩のストレッチをする
・本業と通訳の予定を詰め込みすぎず、休みの日を確保する
・腕や肩の痛み、しびれが続くときは、無理をせず医療機関に相談する
手話通訳者の健康の問題は、長く現場で指摘されてきました。通訳の依頼を受けすぎて体を壊せば、本業にも影響が出ます。続けられる量を自分で見極めることも、手話通訳を副業にする人に欠かせない力です。
体の負担は、腕や肩だけではありません。通訳の間は、聞こえてくる言葉と目に入る手話に全神経を集中させるため、終わった後に強い疲れを感じる人が多くいます。本業で頭を使った後に通訳に入ると、集中が続かず、言葉を取りこぼしやすくなります。通訳の前に短い休憩をとる、通訳の後はすぐに次の予定を入れないといった、自分なりの区切り方を見つけておくと、通訳の質を保ちやすくなります。
副業で受けるときに起こりがちなつまずき
手話通訳を副業として始めた人が、最初の1年ほどでつまずきやすい点を整理しておきます。先に知っておけば、多くは避けられます。
1つ目は、依頼を受けすぎることです。登録したばかりの頃は、声がかかるのがうれしくて、本業の後や休みの日に依頼を詰め込みがちです。しかし、手話通訳は体と頭を強く使う仕事で、疲れがたまると通訳の質が落ちます。1か月に受ける件数の上限を自分で決めておくと、本業も通訳も長く続けられます。
2つ目は、準備の時間を見込まないことです。通訳の時間そのものは1時間でも、資料の読み込みや移動を含めると、半日がかりになることがあります。報酬を時間あたりで考えるときは、準備と移動の時間も含めて考えておかないと、思った以上に負担が大きくなります。
3つ目は、本業の予定とのぶつかりです。依頼を引き受けた後に、本業の急な会議や出張が入ることがあります。直前の断りは依頼元にも利用者にも大きな迷惑がかかるため、本業の繁忙期は最初から依頼を受けない、といった線引きをしておくと安心です。
4つ目は、一人で抱え込むことです。通訳の現場では、うまく訳せなかった、利用者に負担をかけてしまったと落ち込む場面もあります。地域の通訳者の仲間や、派遣の窓口の担当者に相談できる関係を作っておくと、気持ちを立て直しやすくなります。
画面越しの通訳という選択肢
最近は、ビデオ通話を使って画面越しに手話通訳をする場面も増えています。電話リレーサービスのほか、オンラインの会議や講座、自治体の窓口の遠隔通訳などがその例です。
画面越しの通訳は、移動の時間がかからないため、本業がある人にとっては取り入れやすい働き方です。一方で、対面とは違う準備が必要になります。手話がはっきり見えるように、背景は無地にし、服は手の動きが見やすい落ち着いた色を選びます。照明の向きや、カメラに上半身が収まる位置も確認しておきます。通信が途切れたときにどう連絡を取り合うかを、依頼元と事前に決めておくことも大切です。
自宅で通訳をする場合は、利用者の話が家族に聞こえない部屋を使うなど、秘密を守るための環境も整えておきます。
信頼される手話通訳者であるために
手話通訳の依頼が続くかどうかは、技術だけでなく、通訳者としての姿勢で決まります。
1つ目は、秘密を守ることです。病院の受診や家庭の相談など、手話通訳者は利用者の生活の深い部分に触れます。通訳で知ったことを、家族や知人を含めて誰にも話さないことは、通訳者としての前提です。
2つ目は、中立の立場を守ることです。手話通訳者は、きこえない人ときこえる人のどちらかの味方をする存在ではありません。双方の言葉を正確に伝え、判断は当事者に委ねます。
3つ目は、学び続けることです。手話は生きた言語で、新しい表現が生まれ続けています。地域の研修や手話通訳者の勉強会に参加し、自分の通訳を振り返る機会を持ち続けることが、通訳の質を保つ土台になります。
4つ目は、準備を惜しまないことです。講演会や会議の通訳では、事前に資料を読み込み、専門用語の手話表現を確認しておくかどうかで、当日の通訳の質が大きく変わります。依頼元に資料の提供を早めにお願いすることも、通訳者の大事な仕事です。
手話通訳を目指す人がまず踏む段階
まだ資格を持っていない人が、将来の副業として手話通訳を目指す場合の道のりも整理しておきます。
多くの人は、地域の手話講習会や手話サークルから始めます。手話講習会は、自治体などが開いている手話を学ぶ講座で、入門から始まり、段階を踏んで手話通訳者を目指す課程に進めるようになっていることが多くあります。
手話の会話ができるようになったら、手話奉仕員として地域の行事に参加したり、手話通訳者の登録を目指したりしながら経験を積みます。手話通訳士の試験は、その先の目標として位置づける人が多くいます。第36回の合格者の平均年齢が47.1歳であることからも分かるように、時間をかけて着実に力を付けていく資格です。
試験の勉強では、学科の国語や障害者福祉の知識に加えて、実技の聞取り通訳と読取り通訳の練習が欠かせません。同センターは過去の試験に関する情報も公開しているので、受験を考えたら早めに目を通しておきます。
報告書や依頼元とのやり取りの文書を整えたい人は、文書作成の基本を問うビジネス文書検定の範囲も参考になります。通訳の依頼を受ける側になると、日程の調整や報告のメールを書く機会が意外と多いものです。
運営者の視点:続く人は「つながり」を大事にしている
フリーランスと在宅ワークの市場を20年見てきた運営者の立場から言えば、通訳のように人と人の間に立つ仕事で長く続く人ほど、依頼元や利用者との関係を丁寧に育てています。手話通訳の現場では、「前回もあの人に頼んで安心できた」という声が、次の依頼につながっています。技術の高さと同じくらい、約束の時間を守る、準備を怠らないといった基本の積み重ねが評価されています。
もう1つの実感は、直接つながれる関係の価値です。講演会や企業の会議の通訳を、主催者と直接やり取りして受けられれば、仲介の手数料が乗らない分、同じ予算でも主催者は打ち合わせの時間や交代の通訳者まで含めて頼みやすくなり、通訳者の手取りも厚くなります。手数料0%で直接やり取りできる場は、指名で依頼が続きやすい専門職ほど、双方にとって使いやすい環境になります。
手話通訳士を副業にする道は、仲介サイトで案件を探すより、地域の派遣の仕組みや電話リレーサービス、講演会の通訳といった窓口に登録し、少しずつ依頼を受ける形が中心です。手話施策推進法で人材の確保と処遇の改善が国と自治体の責務として明記された今、まずは住んでいる地域の障害福祉の窓口に、通訳者の登録の方法を問い合わせるところから始めてみてください。
よくある質問
Q. 手話通訳士の資格がないと手話通訳の仕事はできませんか?
手話通訳士は、厚生労働大臣が認定した試験に合格して登録した人に与えられる称号で、通訳の技能を証明するものです。資格がなければ通訳してはいけないという決まりではなく、地域の派遣では手話通訳者として自治体などに登録した人も通訳を担っています。依頼元によって登録の条件が違うので確認が必要です。
Q. 手話通訳士試験の合格率はどのくらいですか?
聴力障害者情報文化センターの公表では、第36回(令和7年度)は受験者1,113名に対して合格者125名で、合格率は11.2%でした。第1回から第36回までの累計の合格率は13.7%です。合格者の平均年齢は47.1歳で、時間をかけて経験を積んでから合格する人が多い試験です。
Q. 手話通訳を副業にするにはどこに登録すればよいですか?
主な窓口は、市区町村や都道府県の意思疎通支援事業、聴覚障害者情報提供施設、講演会などの通訳を扱う団体、電話リレーサービスの提供機関です。登録の条件や報酬の決め方は窓口ごとに違うため、まずは住んでいる自治体の障害福祉の担当窓口に問い合わせると全体像がつかめます。
Q. 会社員が手話通訳を副業にするときに注意することはありますか?
勤め先の就業規則で副業の扱いを確認し、届出が必要なら手続きをします。また、手話通訳の依頼は平日の日中に集中しやすいので、受けられる時間帯を整理しておきます。給与以外の所得が年間20万円を超えると所得税の確定申告が必要になるため、報酬の扱いも依頼元や税務署で確かめておくと安心です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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