似顔絵の仕事を受ける場所と、描き手としての始め方

@SOHO編集部
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似顔絵の仕事を受ける場所と、描き手としての始め方

この記事のポイント

  • ✓似顔絵の仕事を探している描き手に向けて
  • ✓イベント出張・店舗・オンライン受注・企業からの依頼という受ける場所ごとの違い
  • ✓フリーランス法で守られる範囲

似顔絵の仕事を探し始めると、「似顔絵師募集」の求人、ネットで似顔絵を受け付けるサービス、イベントでの出張似顔絵と、入口がいくつも見つかります。ところが、どれも同じ「似顔絵の仕事」に見えて、契約の形も、求められる技能も、収入の安定のしかたもまったく違います。入口を選び間違えると、絵の腕とは関係のないところでつまずきます。

この記事では、似顔絵の仕事を受ける場所を4つに分けて特徴を比べたうえで、雇用と業務委託の違い、企業から依頼を受けるときに知っておきたい法律、見本作りから最初の1件を受けるまでの進め方、税金の基本までを順番に書きます。描き手として仕事を受ける側の視点で、次に何をすればよいかが分かるように整理します。

似顔絵の仕事は、大きく4つの形に分かれる

似顔絵の仕事は、どこで誰から受けるかによって、おおむね次の4つに分けられます。

1つ目は、イベントや催事で対面で描く仕事です。商業施設の催事、結婚式の二次会、企業のパーティー、学校や地域の祭りなどに出向き、その場でお客さんを描いて渡します。似顔絵を専門に派遣する会社に所属して現場に行く形と、自分で主催者と直接やり取りする形があります。

2つ目は、店舗やテーマパークなどの決まった場所で描く仕事です。似顔絵のコーナーを持つ店舗や観光地で、シフトに入って来店したお客さんを描きます。雇用されて働く場合もあれば、業務委託で場所を借りて描く場合もあります。

3つ目は、オンラインで依頼を受けて描く仕事です。写真を送ってもらい、SNSのアイコン、結婚式のウェルカムボード、退職や誕生日の贈り物、家族の記念の絵などを描いてデータや色紙で納めます。スキルを売り買いするサービスに出品する形と、自分のSNSやWebサイトで直接受け付ける形があります。

4つ目は、企業や団体から依頼を受ける仕事です。社内報や会報に載せる社員の似顔絵、名刺やWebサイトに使う似顔絵、広告や書籍の挿絵としての似顔絵などがこれに当たります。1件ごとの枚数が多かったり、継続して依頼が来たりすることがあります。

同じ似顔絵でも、対面で描く仕事は「短い時間で似せて、その場で喜んでもらう」技能が中心で、オンラインや企業の仕事は「打ち合わせの内容どおりに仕上げて、期限までに納める」技能が中心になります。どちらが得意かで、向いている入口が変わります。

受ける場所ごとの特徴を比べる

4つの形を、仕事を受ける側から見た特徴で並べると次のようになります。

受ける場所 契約の形 主に求められること 収入の安定
イベント・催事 派遣会社との業務委託が多い。主催者と直接契約も 1人を短い時間で描く速さと、場を盛り上げる会話 繁忙期と閑散期の差が大きい
店舗・観光地 雇用またはシフト制の業務委託 決まった時間にいること、接客 比較的安定しやすい
オンライン受注 サービス経由または直接 写真から描く力、やり取りの丁寧さ、納期 実績と評価がたまるまで不安定
企業・団体 業務委託 指示どおりの仕上がり、修正への対応、請求書などの事務 継続の依頼になれば安定

最初に選ぶなら、自分の生活の時間と照らし合わせるのが現実的です。週末にまとまった時間が取れる人はイベントの仕事、平日の決まった時間に外で働ける人は店舗の仕事、家族の事情で外に出にくい人や会社員の副業として始めたい人はオンラインの仕事が入りやすいでしょう。企業の仕事は、ある程度の見本と実績がそろってから狙うほうが話が進みやすくなります。

似顔絵の派遣を行う会社の中には、描き手の募集ページで働き方の考え方を示しているところがあります。たとえば似顔絵の制作と派遣を手がける会社は、作家の募集ページで次のように書いています。

SNSやAIの進化がアーティストのあり方を大きく変える時代にきています。 どこにいても世界と繋がり、アートを仕事にできる環境が整いました。 出典: nigaoe-inc.jp

場所を問わずに仕事を受けられる環境は確かに広がっています。ただし、どこからでも受けられるということは、どこからでも競争相手が現れるということでもあります。オンラインで受ける場合ほど、自分の絵柄が見る人にすぐ伝わる見本と、やり取りの丁寧さが差になります。

雇用か業務委託か:契約の形で変わること

似顔絵の仕事を受けるときに、最初に確認したいのが契約の形です。求人に「似顔絵師募集」とあっても、雇用なのか業務委託なのかで、守られる範囲が大きく違います。

雇用とは、会社に雇われて働く形のことです。労働基準法などの労働関係の法律が適用され、最低賃金や労働時間の決まり、条件を満たせば社会保険や雇用保険の対象になります。店舗の似顔絵コーナーでアルバイトやパートとして働く場合は、多くがこちらです。

業務委託とは、仕事の完成や作業の遂行を引き受けて、その対価として報酬を受け取る形のことです。描き手は個人事業主として扱われ、最低賃金の決まりはかからず、税金の申告も自分で行います。イベントの派遣、オンラインの受注、企業からの依頼は、ほとんどがこちらです。

注意したいのは、契約書の名前が業務委託でも、実際の働き方によっては労働者に当たる場合があることです。厚生労働省は、形式的には業務委託契約を結んでいても、実質的に労働基準法上の労働者と判断される場合には労働関係の法律が適用されると説明しています。たとえば、描く時間や場所、描き方を細かく指示され、断る自由がなく、時間に対して報酬が決まっているような働き方は、雇用に近いと判断される要素になります。

求人を見るときは、報酬が「1枚いくら」なのか「1時間いくら」なのか、交通費や画材費は誰が負担するのか、売上が少ない日の報酬はどうなるのかを確かめてください。イベントの仕事では、描いた人数に応じた歩合で報酬が決まる例もあります。その場合、客足が少ない日は拘束時間に対して報酬が少なくなります。契約前に条件を書面で受け取り、分からない点は質問しておくことが大切です。

企業から受けるときに知っておきたいフリーランス法

業務委託で企業から似顔絵の依頼を受ける場合に知っておきたいのが、令和6年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法、いわゆるフリーランス法です。個人で働く人が事業者から仕事を受けるときの取引を公正にするための法律です。厚生労働省は、この法律の内容を次のように説明しています。

個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられます。 出典: mhlw.go.jp

似顔絵の仕事に当てはめると、企業から依頼を受けたときは、何を何枚、いつまでに、いくらで描くのかといった条件を明示してもらえるということです。納品した日から原則として60日以内に報酬を支払うことも求められます。同じページでは、会社員が副業として事業者から業務委託を受けている場合も、この法律で守られる対象に含まれると説明されています。

一方で、この法律が守るのは事業者から受ける仕事です。家族の記念に似顔絵を頼みたい個人のお客さんから直接受ける仕事は、相手が事業者ではないため対象外になります。オンラインで個人から受ける場合は、自分で条件を文章にして相手に伝え、合意してから描き始める習慣が身を守ります。

また厚生労働省は、SNSなどでフリーランスを募集する際に、募集する人の氏名または名称、住所、連絡先、業務の内容、業務に従事する場所、報酬の6つを記載しないと、誤解を生じさせる表示として法律違反になると示しています。「似顔絵師募集、高収入、在宅OK」のような募集で、運営者の住所や報酬の書き方があいまいなものは、応募する前に慎重に確かめてください。

企業向けの見積もりと請求の進め方

企業や団体から依頼を受けるときは、個人のお客さんとのやり取りよりも書類の比重が大きくなります。最初の問い合わせから入金までの流れを、あらかじめ頭に入れておくと慌てずに済みます。

見積もりの段階では、次の項目をそろえて伝えると、相手の社内で話が通りやすくなります。

・描く人数と枚数、1枚あたりの単価
・絵柄(カラーか白黒か、上半身か顔だけか、背景の有無)
・納品の形式(画像の形式と大きさ、印刷用か画面用か)
・修正の回数と、回数を超えた場合の扱い
・納期と、写真をいつまでにもらう必要があるか
・使ってよい範囲(社内報だけか、Webサイトや広告にも使うか)
・権利の扱い(譲るのか、利用を認めるのか)

この項目は、フリーランス法で発注する側が明示することになっている取引条件とも重なります。相手から条件の書面が届かない場合でも、こちらから見積書の形で示しておけば、後から「聞いていない」という行き違いを防げます。

請求の段階では、もう1つ知っておきたいことがあります。企業がイラストレーターに支払う報酬は、所得税の源泉徴収の対象になる場合があるという点です。国税庁の質疑応答事例では、広告用のポスターのイラストを外注した場合のイラストレーターへの報酬について、デザインの報酬に当たるので源泉徴収が必要と回答しています。国税庁のタックスアンサーによると、源泉徴収される額は支払金額が100万円以下の部分で10.21%です。つまり、請求した金額から一定の額が差し引かれて振り込まれることがあります。差し引かれた分は確定申告で精算されるので損をするわけではありませんが、入金額が請求額と違って戸惑う人は少なくありません。どの報酬が対象になるかは用途や契約の内容で変わるので、企業の担当者に確認し、請求書にも報酬額と消費税の額を分けて書いておくと処理がスムーズです。

練習のしかたは、対面とオンラインで分ける

似顔絵の上達の道筋は、どの仕事を受けたいかで少し変わります。

対面の仕事を狙うなら、時間を区切って描く練習が中心になります。最初は1人に長い時間をかけてよいので、特徴をつかむ順番を決めます。顔の輪郭、目と眉の位置関係、髪型、口元というように、毎回同じ順番で観察すると、短い時間でも描き漏らしが減ります。慣れてきたら時間を短くし、本番で想定する時間内に仕上げられるようにします。人の前で描くことに慣れるために、家族や友人に座ってもらって会話をしながら描く練習も効果があります。

オンラインの仕事を狙うなら、写真から描く練習が中心です。写真は角度や光の当たり方で印象が変わるため、同じ人の別の写真を見比べて、その人らしさがどこに出ているかを探す練習が役に立ちます。依頼では、正面の写真が1枚しかないことも、逆光や暗い写真しかないこともあります。条件の悪い写真から描く経験を積んでおくと、受けられる依頼の幅が広がります。

どちらの場合も、描いた絵を本人や周りの人に見てもらい、「似ている」と言われた点と言われなかった点を記録しておくと、自分の癖が見えてきます。似顔絵は、上手な絵より似ている絵が喜ばれる仕事です。

描き手としての始め方:見本作りから最初の1件まで

ここからは、これから似顔絵の仕事を受けたい人が、最初の1件を受けるまでの進め方を順番に書きます。

見本を作る

仕事を頼む側が最初に見るのは、見本の絵です。見本は、年齢や性別、髪型の違う人物を幅広く描いておくと、依頼する人が自分の場合を想像しやすくなります。家族や友人に許可をもらって描かせてもらう、写真の素材サイトで似顔絵の練習に使ってよいとされている写真を使うなど、元の写真の扱いに問題がない方法で集めてください。他人がSNSに載せた写真を無断で使って見本を作るのは避けます。

見本には、描き上がりまでの時間も一緒に記録しておきます。対面の仕事では1人あたりの時間が収入に直結し、オンラインの仕事では納期の設定に使えるからです。

絵柄と商品を決める

似顔絵には、特徴を大きく強調するデフォルメの強い絵柄、写真に近い写実的な絵柄、かわいらしさを優先した絵柄など、さまざまな方向があります。全部に対応しようとするより、自分が得意で、見る人に伝わりやすい絵柄を1つか2つに絞ったほうが、依頼する側は選びやすくなります。

あわせて、商品の形を決めます。データのみか、色紙や額に入れて送るのか、人数が増えたときはどうするのか、背景や小物を描き込むかどうか。選択肢を整理しておくと、価格も決めやすくなります。

価格を決める

価格は、相場を眺めて決めるより、自分の作業時間から逆算するほうが続けやすくなります。1枚を仕上げるのにかかる時間、やり取りにかかる時間、修正の時間を合計し、その時間に対して受け取りたい金額を考えます。最初は実績を作るために低めに設定する人が多いのですが、低すぎる価格は依頼が増えるほど自分を追い込みます。実績がたまったら段階的に見直す前提で、見直す時期をあらかじめ決めておくとよいでしょう。

受け付ける場所を決めて、最初の1件を受ける

オンラインで受けるなら、スキルを売り買いするサービスに出品するか、自分のSNSで受け付けるかを選びます。サービスを使う場合は、決済や評価の仕組みが用意されている代わりに手数料がかかります。手数料の率は各サービスの公式ページで確認してください。自分のSNSで受ける場合は手数料はかかりませんが、支払いの受け取りや条件の取り決めを自分で用意する必要があります。

最初の1件は、知り合いの紹介や、身近な人からの依頼で受けることも多いものです。その場合でも、条件を文章で確認し、代金を受け取り、納品するという流れを1回きちんと経験しておくと、2件目以降の依頼で慌てずに済みます。

対面のイベントで描くときの準備と、場所の許可

対面で描く仕事は、絵の技術に加えて、現場の段取りが大切になります。

まず道具です。紙や色紙、ペン、マーカー、画板、椅子、照明、見本を見せるための掲示物、完成した絵を入れる袋などが必要です。屋外では風や日差し、雨への備えも要ります。デジタルで描いてその場で印刷する形をとる場合は、タブレットと小型のプリンター、電源の確保が欠かせません。

次に時間配分です。イベントでは待っている人の列ができることがあり、1人にかけられる時間が限られます。普段から時間を計って描く練習をしておくと、本番で焦らずに済みます。描きながら相手と会話をして、その人らしい表情を引き出すのも対面の似顔絵の大事な技能です。

そして、どこで描くかの許可です。イベントの中で描く場合は、主催者の許可と出店の条件に従います。公園で描きたい場合は、その公園の管理者のルールを確認する必要があります。道路で描く場合は、警察署長の道路使用許可が関係します。警視庁の案内では、東京都内で一般交通に著しい影響を及ぼす場合に道路使用許可が必要になる行為として、物の販売や、道路上で人寄せをする行為が挙げられています。手数料は工事・作業以外の申請で2,100円とされていますが、許可が出るかどうかは場所や状況によります。詳しくは警視庁の道路使用許可申請手続きのページで確認し、東京都以外では各道府県警察に問い合わせてください。駅前や繁華街の路上で無断で店を広げるのは避けましょう。

オンラインで受けるときの流れと、トラブルを防ぐ取り決め

オンラインの似顔絵の仕事は、おおむね次の流れで進みます。

  1. 依頼の内容を聞く。人数、用途、絵柄、背景、納期、納品の形
  2. 見積もりを出し、条件に合意してもらう
  3. 写真を受け取る
  4. 下描きやラフを見てもらい、修正の希望を聞く
  5. 仕上げて納品する
  6. 代金を受け取る(前払いの場合は最初に受け取る)

トラブルが起きやすいのは、修正、納期、利用の範囲の3つです。

修正については、何回まで無料で直すか、ラフの段階と仕上げの段階で直せる範囲がどう違うかを、最初に決めて伝えておきます。仕上げた後に「やっぱり髪型を変えたい」と言われると、ほぼ描き直しになることがあります。ラフの段階で全体の印象を確認してもらうのが、双方にとって負担の少ない方法です。

納期については、贈り物や結婚式など期日が決まっている依頼が多いので、余裕を持った日程を提示します。依頼が重なる時期には、受ける件数を絞る判断も必要です。

利用の範囲については、個人で飾るためのものか、SNSのアイコンに使うのか、名刺やWebサイト、商品のパッケージなど商売に使うのかを確認します。商売に使う場合は、個人用より価格を上げる、使える範囲を決めておくなど、条件を分けて考えるのが一般的です。

依頼を受けるときのやり取りの例

オンラインで依頼を受けるときは、最初の返信で条件をまとめて伝えると、その後のやり取りが短く済みます。たとえば、次のような文面です。

〇〇様

お問い合わせありがとうございます。
ご依頼の内容を、次のとおり確認させてください。

・人数:2名(ご夫婦)
・用途:結婚記念日の贈り物(ご自宅で飾る用)
・絵柄:カラー、上半身、背景はシンプルな模様
・納品:画像データと、色紙1枚の郵送
・修正:ラフの段階で2回まで無料
・納期:写真をいただいてから2週間

金額は〇〇円(送料込み)です。
この内容でよろしければ、お写真をお送りください。

ポイントは、相手が「はい」と返せば合意になる形で書くことです。条件を相手に考えてもらう聞き方をすると、やり取りが何往復も続きます。

断るときも、短く丁寧に書きます。「今回のご依頼は用途の関係でお受けできません。ご希望に沿えず申し訳ありません」で十分です。理由を細かく説明すると、かえって交渉が続いてしまうことがあります。

納品のときは、完成した絵に加えて、使ってよい範囲を一言添えておくと、後のトラブルを防げます。「個人でのご利用の範囲でお使いください。商用でのご利用を希望される場合はご相談ください」といった文です。

副業として続けるための時間の組み立て

会社員や子育て中の人が副業として似顔絵の仕事を続けるには、描く時間よりも、やり取りと事務の時間をどう確保するかが課題になります。依頼が来るたびにすぐ返信しようとすると、本業や家事の合間に細切れの対応が続き、疲れてしまいます。

続けやすい人がよく使っているのは、返信の時間を決める方法です。朝と夜の決まった時間にまとめてメッセージを確認し、受け付けのページにも「返信は1日以内」などと書いておきます。依頼する側も、いつ返事が来るかが分かっていれば安心して待てます。

描く時間は、1枚あたりの所要時間から逆算して、1週間に受けられる件数の上限を決めておきます。上限を超える依頼は、納期を先にずらすか、受け付けをいったん止めます。贈り物の需要が増える時期は依頼が集中するので、その時期だけ価格を上げる、受け付けを早めに締め切るといった調整も選択肢です。

対面のイベントの仕事を組み合わせる場合は、移動と準備、片付けの時間も見込んでおきます。描いている時間だけを計算すると、実際の拘束時間との差に驚くことになります。

著作権と、受けないほうがよい依頼

似顔絵を描いて渡したあと、その絵の扱いがどうなるかも知っておきたい点です。著作権法では、作品を創作した人が著作者になるのが原則です。依頼を受けて描いた似顔絵でも、契約で別の取り決めをしない限り、描いた人に権利が残るのが基本的な考え方です。企業から依頼を受ける場合は、権利を譲るのか、使ってよい範囲を決めて利用を認めるのかを、契約書や発注書で確認してください。権利の扱いは個別の事情で変わるので、迷う場合は専門家への相談を検討します。

受けないほうがよい依頼もあります。本人の知らないところで撮られた写真をもとにした依頼、悪口や嫌がらせに使うことが分かる依頼、有名人の似顔絵を商品にして売りたいという依頼、アニメや漫画のキャラクター風に描いて商用で使いたいという依頼などは、描き手も含めてトラブルに巻き込まれるおそれがあります。断るときは、理由を長々と書かず、「こうした用途のご依頼はお受けしていません」と短く伝えれば十分です。

収入と税金の基本

似顔絵の仕事を始めたら、収入の記録と税金の手続きも自分で行う必要があります。

会社員が副業として似顔絵の仕事をする場合、国税庁は、給与を1か所から受けていて給与の全部が源泉徴収の対象になっている人について、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要になるとしています。ここでいう所得は、売上から画材費や送料、サービスの手数料などの経費を差し引いた額です。詳しくは国税庁の給与所得者で確定申告が必要な人のページにあります。

20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別に必要になることがあります。住所地の市区町村に確認してください。

本業として似顔絵の仕事をする場合や、副業でも事業として続けていく場合は、税務署に開業届を出し、青色申告の承認申請をすることを検討します。青色申告とは、帳簿をきちんとつけることを条件に、所得から特別な控除を差し引けるなどの優遇を受けられる申告の方法のことです。どちらを選ぶのがよいかは、売上の規模や働き方で変わるので、税務署の相談窓口で確認してください。

記録は、依頼ごとに日付、相手、金額、手数料、使った画材を残しておくと、申告のときに困りません。画材や紙、プリンターのインク、交通費、サービスの手数料などは経費になり得ますが、私用と分けて記録することが前提です。

見本をまとめるページの作り方

仕事の入口を複数持つようになると、どの入口から来た人にも同じ情報を見てもらえる「見本のページ」が必要になります。SNSのプロフィールからも、サービスの出品ページからも、名刺のQRコードからも、同じページに案内できるようにしておくと、問い合わせの質がそろいます。

ページに載せる内容は、次の順番にすると読む人が迷いません。

  1. 絵柄ごとの見本(年齢や性別の違う人物を並べる)
  2. 商品の種類と価格(データのみ、色紙、額入り、人数が増えた場合)
  3. 依頼から納品までの流れと、標準の納期
  4. 修正の回数、写真の条件、使ってよい範囲
  5. 問い合わせの方法と、返信までの目安

見本は数を多く並べるより、絵柄ごとに代表的なものを選んで並べるほうが、依頼する人は判断しやすくなります。家族や友人を描いた見本を載せる場合は、載せてよいかを本人に確認しておきます。依頼を受けて描いた絵を見本に使いたいときも、依頼者の許可を取ってからにしてください。最初の取り決めの段階で「見本として紹介させていただくことがあります」と伝え、断られた場合は載せないという運用にしておくと、後から気まずくなりません。

価格は、税込みか税抜きか、送料が含まれるかを明記します。追加料金がかかる条件(背景の描き込み、ペットの追加、急ぎの納期など)も書いておくと、見積もりのやり取りが短くなります。ページを作ったら、半年に1度は見本と価格を見直し、今の自分の絵柄と合っているかを確かめましょう。

似顔絵の仕事が向いている人と、つまずきやすい点

似顔絵の仕事が向いているのは、人の顔の特徴を見つけるのが好きな人、短い時間で仕上げる練習を苦にしない人、相手の喜ぶ反応を励みにできる人です。対面の仕事なら会話が好きな人、オンラインの仕事なら文章で丁寧にやり取りできる人が強みを発揮します。

つまずきやすい点は、大きく3つあります。1つ目は、価格を低くしすぎて依頼が増えるほど苦しくなることです。2つ目は、修正の範囲を決めずに受けてしまい、何度も描き直すことになることです。3つ目は、季節による波です。イベントの多い時期と少ない時期、贈り物の需要が増える時期と落ち着く時期で、依頼の数が大きく変わります。

画像を作るAIの広がりも、似顔絵の仕事に影響しています。写真から似顔絵風の画像を作る機能は手軽に使えるようになりましたが、その一方で「人が描いた絵」を選ぶ理由がはっきりした依頼が残る傾向があります。対面で描いてもらう体験そのもの、細かな希望を聞いて描き分けてもらえること、贈る相手の思い出話を絵に込めてもらえることなどです。自分の似顔絵の価値がどこにあるのかを言葉にして見本のページに書いておくと、依頼する人に選ばれる理由が伝わります。

波をならすには、受ける場所を1つに絞らず、対面の仕事とオンラインの仕事を組み合わせる、個人からの依頼と企業からの依頼を両方持つ、といった工夫が効きます。見本やこれまでの作品を整理したページを用意しておくと、どの入口から来た人にも同じように自分の絵を見てもらえます。

似顔絵の技能をほかの在宅の仕事につなげる

フリーランスと在宅ワークの市場を長く見てきた運営者の立場から言えば、似顔絵の仕事を長く続けている描き手ほど、似顔絵だけにこだわらず、周辺の仕事も受けられるようにしています。人物を描く力は、Webサイトの人物イラスト、記事の挿絵、SNSの投稿画像、広告のバナーなどにも生かせます。

たとえば、企業のSNS運用やWebマーケティングの現場では、親しみやすい人物のイラストが求められる場面が多くあります。どのような仕事があるかはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で職種ごとの仕事内容を確認できます。また、イラストに短い文章を添える仕事や、自分の作品を紹介する文章を書く力も、依頼につながる場面が増えています。文章の仕事の収入の目安は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとめられています。

企業から依頼を受けるようになると、見積書や請求書、作品の利用条件を書面で伝える場面が出てきます。ビジネス文書の基本を整えておくと、取引先からの信頼につながります。体系的に学びたい人にはビジネス文書検定の内容が参考になります。

運営者として見てきた限りでは、仲介の手数料がかからない直接のやり取りで依頼を受けられる関係を持っている描き手ほど、同じ価格でも手元に残る金額が厚くなります。依頼する側にとっても、中間の手数料がない分、同じ予算で多くの枚数を頼めます。手数料0%で依頼主と直接つながる形は、双方が得をする仕組みです。最初はサービスを使って実績を作り、続けて依頼してくれる相手とは直接の関係を育てていく。この順番で入口を広げていくと、似顔絵の仕事を無理なく続けやすくなります。

よくある質問

Q. 似顔絵の仕事に資格は必要ですか?

似顔絵を描くこと自体に必要な資格はありません。仕事を頼む側が見るのは、資格よりも見本の絵と、やり取りの丁寧さです。年齢や性別、髪型の違う人物を描いた見本をそろえ、1枚にかかる時間を把握しておくと、対面でもオンラインでも仕事を受けやすくなります。

Q. 似顔絵師の求人は雇用と業務委託のどちらが多いですか?

店舗や観光地の似顔絵コーナーでは雇用で働く例があり、イベントの派遣やオンラインの受注、企業からの依頼は業務委託が中心です。業務委託には最低賃金の決まりがかからず、税金の申告も自分で行います。報酬が1枚ごとか時間ごとか、交通費や画材費を誰が負担するかを契約前に書面で確認してください。

Q. 会社員が副業で似顔絵を描くと確定申告が必要ですか?

国税庁は、給与を1か所から受けていて全部が源泉徴収の対象になっている人について、給与と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要としています。所得は売上から画材費や手数料などの経費を引いた額です。20万円以下でも住民税の申告は別に必要になることがあるので、市区町村に確認してください。

Q. 路上で似顔絵を描いて売ってもよいですか?

道路を通行以外の目的で使うには警察署長の道路使用許可が関係し、東京都内では物の販売や人寄せをする行為で一般交通に著しい影響を及ぼす場合に許可が必要とされています。公園なら管理者のルール、イベント会場なら主催者の許可に従います。無断で路上に店を広げるのは避け、描く場所ごとに事前に確認してください。

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年1月19日最終更新:2026年10月2日
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