資本金を増やすやり方の違い|現金を入れる場合と物で入れる場合

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
資本金を増やすやり方の違い|現金を入れる場合と物で入れる場合

この記事のポイント

  • 外から財産を入れる形と
  • 会社の中の数字を振り替える形に分かれます
  • 貸付金の3つの出し方と

結論から書きます。資本金を増やす方法は、外から財産を入れる形と、会社の中にある数字を振り替える形の2系統に分かれます。前者はさらに、現金で入れる、物で入れる、会社への貸付金を振り替える、の3つに分かれます。

どれを選ぶかで、必要な決議も、書類も、かかる費用も、税金への影響も変わります。とくに大きく違うのが手間です。現金を入れる形なら書類は数枚で済みますが、物で入れる形は価額をどう決めたかを裁判所が選んだ調査人に調べてもらうのが原則で、例外にあてはまるかどうかの判断が先に要ります。

そして、どの方法を選んでも共通して効いてくるのが、資本金の額そのものが持つ意味です。1,000万円1億円という2つの線を越えると、税金の扱いが変わります。金額を決める前に、この線を越えるかどうかを確かめてください。

この記事では、5つのやり方を並べて比べます。法務局が公開している申請書の記載例、会社法の条文、国税庁が公開している資料で確かめた内容だけを載せます。

資本金を増やす方法は、大きく5つに整理できる

まず全体を並べます。

方法 会社に新しい財産が入るか 株式が増えるか 主な決議
現金を出資してもらう 入る 増える 株主総会の特別決議など
物を出資してもらう 入る 増える 株主総会の特別決議など
会社への貸付金を振り替える 入らない(負債が減る) 増える 株主総会の特別決議など
資本準備金を資本金に振り替える 入らない 増えない 株主総会の決議
利益剰余金を資本金に振り替える 入らない 増えない 株主総会の決議

上の3つをまとめて有償増資、下の2つを無償増資と呼びます。有償という言葉が付いているのは、出資する人が対価として株式を受け取るからです。無償のほうは、すでに会社の中にある数字を動かすだけなので、新しい株主は生まれず、今の株主の持ち分の割合も変わりません。

ここで押さえておきたいのが、資本金とは何かという点です。資本金は、会社の金庫に眠っているお金ではありません。出資された財産のうち、会社が「これを資本金として登記する」と決めた額の表示です。資本金1,000万円の会社の口座に1,000万円が残っているとは限りません。出資されたお金は設備や人件費に使われ、資本金という数字だけが登記簿に残ります。

この理解があると、無償増資の意味も分かります。資本準備金や利益剰余金を資本金に振り替えても、会社が持っている財産の総額は1円も変わりません。純資産の中での内訳が動くだけです。それでも登記簿の資本金の数字は大きくなるので、対外的な見え方は変わります。

正直なところ、この「中身は変わらないのに見え方だけ変わる」性質は、使い方を間違えると誤解のもとになります。金融機関の担当者は決算書の中身を見るので、無償増資で資本金だけ大きくしても評価はあまり変わりません。

現金を出資してもらう方法。いちばん多く、いちばん素直

新しく株式を発行して、その株を現金で買ってもらう。これが最も多い方法です。会社法では募集株式の発行と呼びます。

流れは5段階です。株主総会で募集事項を決め、引き受けてもらう相手に条件を伝え、申し込んでもらい、割り当てを決め、会社の口座に振り込んでもらう。そのあと法務局に登記を申請します。

募集事項として決めるのは5つの項目です。発行する株式の数、1株あたりの払込金額、物で出資してもらう場合はその内容と価額、払込みの期日または期間、そして増える資本金と資本準備金の額。この5つ目を書き落とす例が多いので注意してください。

株式に譲渡制限が付いている会社、つまり株を売るときに会社の承認が要ると定款に書いてある会社では、募集事項を株主総会の特別決議で決めます。特別決議とは、議決権の過半数を持つ株主が出席して、出席した議決権の3分の2以上の賛成で成立する決議のことです。譲渡制限が付いていない会社では取締役会で決められますが、実態より明らかに安い値段で出す場合は株主総会の特別決議が必要になります。

払込みは、会社の口座に振り込んでもらいます。設立のときと違って、金融機関に保管証明書を出してもらう必要はありません。代表者が払い込みを受けたことを証明する1枚の書面に、通帳の写しを添えれば足ります。法務局の記載例では、通帳の写しには口座の名義人が分かる部分を含め、入金の行にマーカーか下線を引くよう案内されています。

登記に出す書類は、株主総会議事録、株主リスト、割当てを決めた書面、申込書、払込証明書、資本金の額の計上に関する証明書。司法書士に頼むなら委任状も付けます。様式と記載例は法務局のサイトで公開されています。なお、議事録は会社の手元にも残しておきたい書類です。法務局は、添付した書類の原本を返してもらう方法を次のように案内しています。

申請書の添付書面は、原本を添付することが原則であるため、議事録・許可書等、当事者が原本を保管する必要があるもの等については、その原本の還付を請求することができます。 その場合には、原本をコピーしたもの(コピーが複数枚にわたる場合には、それらを合わせてとじたもの)に、申請書に押印した人が「原本に相違ありません。」と記載して記名したものを、必ず原本とともに提出してください。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

引き受ける人が最初から全員決まっているなら、総数引受契約という形を使うと申込書と割当ての決議を省けます。役員が1人で出資する場合や、親会社から出資を受ける場合はこの形が向いています。

物を出資してもらう方法。何を出せて、何が難しいか

お金ではなく、物を出資してもらうこともできます。会社法ではこれを現物出資と呼びます。車、パソコン、機械、不動産、有価証券、ソフトウェアの権利。金銭に見積もることができて、会社に引き渡せるものなら対象になります。

よく使われるのは、個人事業から法人に切り替えた会社が、個人で使っていた設備を会社に移す場面です。現金を用意しなくても資本金を増やせるので、手元の資金が薄い時期に選ばれます。

ただし、この方法には大きな関門があります。物の値段は誰が決めるのか、という問題です。100万円の価値しかない中古の機械を「500万円の価値がある」として出資したら、会社の帳簿に実体のない資産が載ります。他の株主も、会社と取引する相手も損をします。

そこで会社法は、物で出資を受けるときは、その価額を調べさせるために裁判所へ検査役の選任を申し立てなければならないと定めています。検査役とは、価額が妥当かどうかを外から調べる役割の人のことで、裁判所が選びます。

この調査には時間と費用がかかります。申し立てから報告まで数か月かかることもあり、検査役に支払う報酬は裁判所が決めます。中小企業の増資では、費用と期間の両面で現実的ではありません。

だから実務では、次に説明する例外にあてはめて進めるのが普通です。

検査役の調査が要らなくなる5つの例外

会社法は、次のいずれかにあてはまる場合には検査役の調査が要らないと定めています。

1つ目は、引受人に割り当てる株式の総数が、発行済株式の総数の10分の1を超えない場合です。すでに1,000株発行している会社なら、新しく出す株が100株までなら調査が要りません。

2つ目は、物の価額の総額が500万円を超えない場合です。中小企業の現物出資でいちばんよく使われるのがこの例外です。500万円という線は覚えておく価値があります。

3つ目は、市場価格のある有価証券を出資する場合で、定めた価額がその市場価格を超えないときです。上場株式を出資する場面で使われます。

4つ目は、定めた価額が妥当であることについて、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人の証明を受けた場合です。出資するのが不動産のときは、この証明に加えて不動産鑑定士の鑑定評価も要ります。ただし、取締役や監査役、会社の使用人、そして引き受ける本人は証明できません。

5つ目は、出資する物が会社に対する金銭債権で、弁済期が来ていて、その債権について定めた価額が帳簿に載っている負債の額を超えない場合です。これが次に説明する方法の根拠になります。

実務でよく使われるのは2つ目と5つ目です。500万円までの設備なら調査なしで出資できますし、役員が会社に貸しているお金なら帳簿の金額どおりに振り替えられます。

なお、現物出資には税務の論点も付いてきます。個人が持っていた資産を会社に出資すると、個人の側では資産を譲渡したことになり、譲渡所得の対象になる場合があります。消費税の課税の対象になる場合もあります。一般にはこう扱われるという説明はできますが、資産の種類と金額で結論が変わるので、実行の前に税務署か税理士に確認してください。

会社への貸付金を資本に振り替える方法

役員が会社に貸しているお金を、資本金に振り替える。これも実務でよく使われる方法です。会社に対する金銭債権を出資するので、形のうえでは現物出資の一種になります。

使われる場面ははっきりしています。創業からしばらく、代表者が自分のお金を会社に入れて資金繰りをつないできた。決算書の負債には役員借入金が積み上がっている。この状態は、金融機関から見ると負債が厚い会社に映ります。そこで、この借入金を資本に振り替えると、負債が減って純資産が増え、財務の見え方が変わります。

手続きは募集株式の発行と同じです。株主総会で募集事項を決め、割り当てを決め、出資を実行します。出資の実行とは、この場合は債権を会社に引き渡すことです。現金の振込は発生しません。

検査役の調査は、先ほどの5つ目の例外にあてはめれば不要です。条件は、弁済期が来ている金銭債権であること、そして定めた価額が帳簿に載っている負債の額を超えないことです。返済の期限を定めていない貸付金は、会社が請求されればいつでも返す必要があるので、弁済期が来ていると扱われるのが一般的です。

注意したいのは税務です。会社の業績が悪く、その借入金を返せる見込みがない状態で資本に振り替えると、会社の側で利益が生じたとみなされる場合があります。債務が消えたぶんが利益になる、という考え方です。繰越欠損金があれば相殺できることもありますが、そうでなければ課税されます。この判断は会社の状況によって変わるので、実行の前に必ず税理士に確認してください。

もうひとつ、貸している人の持ち株の割合が上がる点にも注意が要ります。代表者1人の会社なら問題になりませんが、複数の株主がいる会社では、貸付金の多い株主だけが持ち分を増やすことになります。

資本準備金や利益剰余金を資本金に振り替える方法

ここからは、外から財産を入れない方法です。

会社の純資産は、資本金、資本剰余金、利益剰余金などに分かれています。このうち資本準備金は、過去の出資のうち資本金に載せなかった分が積み上がったものです。利益剰余金は、過去の利益のうち配当せずに社内に残した分です。

資本準備金を資本金に振り替えるには、株主総会の決議で、減らす準備金の額、資本金にする額、効力が生じる日を決めます。ここでの決議は特別決議ではなく、通常の決議で足ります。

準備金を減らすときは、会社と取引のある相手に異議を述べる機会を与える手続きが必要になる場合があります。ただし、減らす準備金の全額をそのまま資本金にする場合は、この手続きは要りません。純資産の総額が変わらないからです。全額を資本金にするか、一部だけにするかで、手続きの重さが変わるということです。

利益剰余金を資本金に振り替える場合も、株主総会の決議で、減らす剰余金の額と、資本金が増える日を決めます。こちらも通常の決議で足り、取引先に異議を述べる機会を与える手続きは要りません。

どちらの方法も、株式は増えません。新しい株主も生まれません。持ち分の割合はそのままです。だから、支配権を動かしたくないけれど資本金の額は大きくしたい、という場面で使われます。

費用の面では、登録免許税は同じようにかかります。増えた資本金の額に1000分の7を掛けた額で、3万円に満たなければ3万円です。現金が1円も入らないのに登記の税金だけはかかる、という点は先に理解しておいてください。

税務の扱いには注意が要ります。利益剰余金からの振替は、法人住民税の均等割の判定で使う金額の計算に影響する場合があります。均等割は資本金等の額と従業員の数で段階が決まる税金で、計算の基礎になる金額の定義が会社法上の資本金と完全には一致しません。振り替える前に、自治体の案内か税理士に確認してください。

どの方法を選ぶか。判断の軸は3つ

ここまでの5つを、選ぶときの視点で並べ直します。

聞きたいこと 答え 向いている方法
会社に新しい資金が要るか 要る 現金の出資
資金は要らないが設備を会社に移したい そう 物の出資
役員借入金を整理したい そう 貸付金の振替
資金は要らず、持ち分も動かしたくない そう 資本準備金または利益剰余金の振替

判断の軸は3つに整理できます。

1つ目の軸は、会社にお金が要るかどうかです。要るなら現金の出資しかありません。他の方法は、どれも会社の口座残高を増やしません。

2つ目の軸は、出資してくれる相手がいるかどうかです。外部の投資家や取引先から出資を受けられるなら現金の出資、相手がいないなら会社の中の振替になります。

3つ目の軸は、持ち分の割合を動かしてよいかどうかです。動かしたくないなら中の振替、あるいは今の株主に持ち株の割合どおりに引き受けてもらう形を選びます。

この3つに答えると、選ぶべき方法はほぼ1つに絞られます。迷うのは、複数の目的が同時にある場合です。資金も要るし持ち分も動かしたくない、という場面では、代表者本人が出資する形が現実的な答えになります。

資本金の額が持つ意味。2つの線を越えるかどうか

方法を選ぶ前に、増やしたあとの資本金がいくらになるかを確かめてください。資本金の額は、税金の世界でいくつもの判定に使われています。

1つ目の線は1,000万円です。会社を設立して間もない時期、基準となる期間がない事業年度については、原則として消費税の納税義務が免除されます。ところが、事業年度の開始の日の資本金の額または出資の金額が1,000万円以上であるときは、この免除が適用されません。増資でこの線を越えると、免除の期間が短くなる可能性があります。

会社設立時の資本金が1,000万円未満のときは、最大2年間消費税の申告・納税が免除されます。しかし、資本金が1,000万円以上になると、消費税の納税義務が発生します。消費税の節約を目指すなら、設立から一定期間は資本金が1,000万円以上にならないように調整しておきましょう。 出典: biz.moneyforward.com

2つ目の線は1億円です。法人税には中小企業向けの軽減税率があり、資本金1億円以下の法人について、所得のうち年800万円以下の部分に低い税率が適用されます。1億円を超えるとこの軽減から外れます。このほか、交際費の扱いや、事業税の課税方式も1億円を境に変わります。

逆に、資本金が小さすぎることの不利もあります。

資本金は、対外的な信用力を示すひとつの目安になります。特に創業初期で資本金が100万円未満などの少額である場合、取引先や金融機関から「経営体力に不安がある」「倒産リスクがある」などと見なされることもあります。 出典: biz.moneyforward.com

許認可が要る業種では、資本金の額そのものが要件に入っていることもあります。建設業の許可のように、財産的な基礎を求められる業種では、要件を満たすために増資するという順番になります。

線を越えそうな場合の打ち手もあります。払い込まれた額の2分の1を超えない額は、資本金にせず資本準備金として計上できます。1,000万円の出資を受けても、資本金500万円と資本準備金500万円に分ければ、資本金は500万円のままです。登録免許税も資本金の増加額を基準に計算されるので、税額が下がります。

費用を方法別に比べる

かかるお金を並べます。

登録免許税は、どの方法でも同じ計算です。増えた資本金の額に1000分の7を掛けた額で、3万円に満たなければ3万円。計算のもとになる金額は1,000円未満を切り捨て、掛け算の結果は100円未満を切り捨てます。

資本金の増加額 0.7%の計算 納める額
200万円 1万4,000円 3万円
429万円 3万0,030円 3万円
1,000万円 7万円 7万円
5,000万円 35万円 35万円

増加額がおよそ429万円を超えたところから、0.7%の計算結果が3万円を上回ります。それより小さい増資では、いくら増やしても税額は3万円です。100万円の増資を3回に分けると9万円かかり、300万円を1回で増やせば3万円で済みます。分ける理由が特にないなら、まとめたほうが有利です。

方法によって変わるのは、専門家に払う費用のほうです。現金の出資で、株主が代表者1人だけなら、法務局の記載例を使って自分で申請できます。物の出資で、価額の証明を税理士や公認会計士に依頼する場合は、その報酬が乗ります。不動産を出資する場合は不動産鑑定士の費用も加わります。貸付金の振替では、課税されるかどうかの判断を税理士に確認する費用を見込んでおきます。

税率と下限は、国税庁が公開している税額表にそのまま書かれています。

株式会社または合同会社の資本金の増加の登記(一定の登記を除く。) 増加した資本金の額 1,000分の7(3万円に満たないときは、申請件数1件につき3万円) 出典: www.nta.go.jp

司法書士に登記を頼む場合は、これに報酬が乗ります。登録免許税と専門家の報酬を合わせた全体の目安として、5万円から20万円前後という水準が示されることが多く、物の出資や貸付金の振替のように判断が要る方法ほど上のほうに寄ります。

このほか、登記が終わったあとに取る登記事項証明書の費用が1通あたり数百円かかります。金融機関や取引先に出すぶんを数えておくと、予算の取りこぼしがありません。

費用を抑える工夫は2つあります。1つは、回数をまとめることです。先ほど見たとおり、増加額が429万円までは税額が3万円で変わりません。出資してもらう時期が近いなら、1回にまとめられないかを先に検討してください。もう1つは、払い込まれた額の半分を資本準備金に回すことです。登録免許税は資本金の増加額を基準に計算されるので、資本準備金に回した分には税金がかかりません。ただし、資本準備金にすると登記簿に載る資本金の額は小さいままになります。対外的な見え方を重く見るか、税額を重く見るかで判断が分かれます。

よい面とそうでない面を、方法ごとに並べる

判断の材料として、両方を並べます。

現金の出資のよい面は、返済が要らない資金が入ること、自己資本が厚くなること、相手を選べることです。そうでない面は、既存の株主の持ち分が薄まること、1株あたりの利益が薄まること、そして相手がいなければ実行できないことです。

物の出資のよい面は、現金を用意せずに資本金を増やせること、個人で持っていた設備を会社の資産として計上できること、その資産を減価償却の対象にできることです。そうでない面は、価額の算定が難しいこと、検査役の調査が要る場合に時間と費用がかかること、出資した側に譲渡所得や消費税の論点が生じる場合があることです。

貸付金の振替のよい面は、現金を動かさずに負債を減らせること、財務の見え方が大きく改善すること、相続のときに貸付金が財産として課税される問題を避けられることです。そうでない面は、返せる見込みのない借入金を振り替えると会社の側で課税される場合があること、貸している人の持ち分だけが増えることです。

資本準備金や利益剰余金の振替のよい面は、外部の相手が不要なこと、持ち分の割合が動かないこと、決議が通常の決議で足りることです。そうでない面は、会社の財産が1円も増えないこと、それでも登録免許税はかかること、そして資本金を増やしたことで税の区分が重いほうに移る可能性があることです。

どれを選ぶにしても、増やしたあとの届出は共通です。税務署には異動届出書を出します。国税庁の案内では、資本金の額等の異動もこの届出書の対象として挙げられており、提出先は異動前の納税地を担当する税務署、提出の時期は異動のあとすみやかに、添付書類は不要とされています。都道府県税事務所と市区町村にも届出が要ります。法人住民税の均等割は資本金等の額と従業員の数で段階が決まるため、納める額そのものが変わる場合があります。

決算書への表れ方も見ておきます。現金の出資なら資産と純資産が同額だけ増えます。物の出資なら、その物が資産に計上され、純資産が同額増えます。貸付金の振替なら、負債が減って純資産が増え、総額は変わりません。中の振替なら、純資産の中の内訳が動くだけで総額は変わりません。

決める前に確かめておく5つのポイント

方法を選ぶ前に確かめておくと、後戻りしない項目を挙げます。

1つ目は、定款に定めた発行できる株式の上限です。発行可能株式総数という名前で定款に書かれており、登記簿にも載っています。今の発行済株式の数に新しく出す株数を足した結果がこの上限を超えると、増資の前に定款を変えて上限を引き上げる必要があります。定款の変更は株主総会の特別決議で、発行可能株式総数は登記事項でもあるため、登記の内容が1つ増えます。これに気づくのが払込みの直前だと、日程がまるごとずれます。なお、中の振替による増資では株式が増えないので、この確認は要りません。

2つ目は、増資後の議決権の割合です。金額から株数を決めるのではなく、保ちたい割合から逆算して株数を決める。この順番にすると後悔しません。定款の変更や次の増資を単独で通したいなら3分の2以上、取締役の選任を通したいなら過半数、重い決議を止められる立場を保ちたいなら3分の1超。この3つの線を目安にしてください。

3つ目は、事業年度をまたぐかどうかです。消費税の納税義務の判定は事業年度の開始の日の資本金の額で行われ、法人税の軽減税率の判定は事業年度の終了の時の資本金の額で行われます。判定の時点が制度によって違うため、決算期の直前に増資すると、意図していなかった年度から扱いが変わることがあります。

4つ目は、許認可への影響です。建設業のように財産的な基礎を要件とする業種では、増資が要件を満たす手段になります。逆に、中小企業を対象にした補助金や助成金には資本金の上限が設けられていることが多く、増資で対象から外れる場合があります。申請を予定している制度があるなら、その要件を先に確認してください。

5つ目は、必要な書類がどこで手に入るかです。申請書の様式、記載例、議事録の文例、株主リストの様式は、法務省と法務局のサイトで無料で公開されています。WordとPDFの両方が用意されており、記載例には注意書きが細かく入っています。有料の相談に入るのは、この無料の資料を一度読んでからで遅くありません。書類を自動で作るオンラインのサービスもありますが、法務局への提出と登記後の届出は自社でやることになるため、どこまで任せるかの線を先に引いておくと慌てません。

20年この市場を見てきた立場からの観察と、独自データが示すもの

在宅と業務委託の案件を長く見てきた運営者の立場から言うと、資本金を増やした会社が次に何をするかには、はっきりした傾向があります。人を採る前に、業務委託を増やすのです。人を雇うと固定費になりますが、委託なら量を調整できるからです。

そして半年ほど経つと、二手に分かれます。委託先の中から「この人に任せると楽だ」と感じた相手に仕事が集まり、関係が続いていく会社。もう一方は、単発の作業を安く広く配り続けて、半年後に同じ人が1人も残っていない会社です。前者は資金が組織の力に変わっており、後者は同じ金額を使って何も残っていません。

長く続いている関係に共通しているのは、金額の高さではありません。やり取りの回数が少なくて済むことと、支払いが確実なことです。仲介の手数料が乗らない直接の取引では、同じ予算で依頼する側はより多く頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%が効くのは、金額そのものより手取りが厚いという質の部分で、その差が積み上がると相手は他所へ移りません。

資本金を増やした資金を何に投じるかを考えるとき、職種ごとの単価の相場を知っておくと計画が立てやすくなります。開発を内製するか外に出すかを決めるなら、ソフトウェア作成者の年収・単価相場に報酬の幅がまとまっています。広報やコンテンツに投じるなら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場が目安になります。

実際にどんな案件が動いているかは、職種別の案内を見るのが早道です。生成AIを社内の業務に定着させる仕事はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に、システムの実装はアプリケーション開発のお仕事に、広告やデータ分析、情報セキュリティまわりはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、それぞれ仕事の中身が整理されています。

資本金を増やすと、株主や金融機関に出す文書が増えます。文書の型をどこまで押さえている人かを見極める目安になるのがビジネス文書検定で、社外に出す文書の作法を測る試験の範囲がまとまっています。社内の情報システムを任せる相手を探すなら、CCNA(シスコ技術者認定)の範囲を知っておくと判断が早くなります。

取引の件数が増えると、契約と支払いの管理が追いつかなくなる場面が出てきます。発注書や契約書に何を書くべきかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに項目ごとに整理されています。支払いが滞ったときの動き方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に費用の相場とあわせて書かれており、会計や税務の専門家をどう使うかは会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】の内容が参考になります。

ここに書いた税務の扱いは一般的なものです。実際にどう課税されるかは、増やす額、出資する財産の種類、事業年度、自治体によって変わります。判断が要る場面では、所轄の税務署か顧問の税理士に確認してください。登記の書式と税額については、法務局と国税庁が公開している資料が一次の情報になります。

よくある質問

Q. 現金がなくても資本金を増やせますか?

増やせます。設備などの物を出資する方法、役員が会社に貸しているお金を資本に振り替える方法、会社の中にある資本準備金や利益剰余金を資本金に振り替える方法があります。ただしどの方法でも登録免許税はかかり、増えた資本金の0.7%で最低3万円です。

Q. 物で出資すると必ず検査役の調査が必要ですか?

必要ない場合があります。出資する物の価額の総額が500万円を超えないとき、割り当てる株式が発行済株式の10分の1を超えないとき、税理士や公認会計士などの証明を受けたときなどは調査が不要です。中小企業では500万円以内に収める形がよく使われます。

Q. 役員借入金を資本金に振り替えると税金はかかりますか?

会社の状況によります。返済できる見込みがある借入金をそのまま振り替える場合は問題になりにくい一方、返済の見込みが乏しい状態で振り替えると、債務が消えたぶんが会社の利益とみなされて課税される場合があります。実行前に税理士に確認してください。

Q. 資本準備金を資本金に振り替えるのに株主総会の特別決議は必要ですか?

不要です。減らす準備金の額、資本金にする額、効力が生じる日を株主総会の通常の決議で定めます。減らす準備金の全額をそのまま資本金にする場合は、取引先に異議を述べる機会を与える手続きも要りません。株式は増えず、持ち分の割合も変わりません。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月9日最終更新:2026年9月19日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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