増資の登記申請書の書き方と添える書類

丸山 桃子
丸山 桃子
増資の登記申請書の書き方と添える書類

この記事のポイント

  • ✓増資登記申請書の書き方を
  • ✓記載する項目の1行ずつと添付書類の役割から解説します
  • ✓差し戻しになりやすい箇所

増資登記申請書という言葉を検索してたどり着く人の多くは、書類の様式そのものを探しているわけではありません。本当に知りたいのは「この紙に何を書けば通るのか」「ほかに何を添えるのか」「間違えたらどうなるのか」の3点です。法務局のサイトには様式が置かれていますが、空欄の並んだ用紙を見ても、どの数字をどこから持ってくるのかまでは分かりません。

増資、つまり資本金を増やす手続きは、会社の内部で決めて終わりにはなりません。資本金の額は登記事項、つまり誰でも取れる会社の公的な記録に載っている項目なので、金額が変われば記録も書き換える必要があります。その書き換えを申し込む紙が増資登記申請書です。

この記事では、申請書に書く行を1つずつ分解し、添える書類がそれぞれ何を証明するための紙なのかを説明します。登録免許税の計算方法、提出の3通りのやり方、差し戻しの原因になりやすい箇所、合同会社の場合との違い、そして登記が終わった後に残っている手続きまで、法務局と国税庁が公開している資料で確かめられる範囲を中心にまとめます。

増資の登記には期限がある。日付から逆算して動く

最初に押さえるべきは締め切りです。会社の登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に変更の登記をしなければならないと会社法が定めています。増資は資本金の額の変更なので、この2週間のルールがそのまま当てはまります。

起算日は「変更が生じた日」です。増資の場合、お金が会社の口座に入った日、正確には払込みの期日、または払込期間を定めたときはその期間の末日が変更日になります。法務局が公開している募集株式発行の記載例にも、変更の年月日として払込期日または払込期間の末日を書くよう注記が付いています。株主総会を開いた日ではない点に注意してください。総会の日を変更日だと思い込んで申請書を作ると、添えた書類の日付と食い違って差し戻されます。

期限を過ぎたらどうなるのか、という点も多くの人が気にします。期限を過ぎても登記そのものは受け付けてもらえます。窓口で「もう2週間を過ぎているので受理できません」と言われることはありません。ただし、登記を怠ったこと自体に制裁の規定があり、代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。過料は会社ではなく代表者個人に届きます。

変更登記の期日は変更の事実があった日から2週間です。会社がするべき登記を怠った場合、代表者に100万円以下の過料を科される可能性があります。 出典: koyano-cpa.gr.jp

実務では、2週間を数日過ぎた程度で即座に過料の通知が来るわけではありません。ただ、何か月も、あるいは何年も放置していた分がまとめて発覚すると、裁判所から通知が届くことがあります。金額は遅れの長さや事情によって変わるため、一律いくらとは言えません。

逆算の考え方はこうなります。払込みの期日を決めた時点で、その日から14日後がゴールです。書類の作成と押印集めに数日、収入印紙の購入と最終チェックに1日、郵送するならさらに2日。この逆算をすると、払込みの前から申請書のひな型を用意しておくのが現実的だと分かります。払込みが終わってから様式を探し始めると、それだけで3日から4日が消えます。

増資登記申請書に書く行を1つずつ分解する

法務局が公開している「株式会社変更登記申請書(募集株式発行)」の様式は、A4用紙1枚におさまる構成です。書く項目は多くありません。それぞれ何を書くのかを順に見ていきます。

会社法人等番号。12桁の番号です。登記事項証明書の冒頭に載っています。国税庁の法人番号公表サイトで出てくる13桁の法人番号とは別物で、法人番号の先頭1桁を取ると会社法人等番号になります。分かる場合に記載してくださいという扱いなので、空欄でも受理されますが、書いておくと登記官が会社を特定しやすくなります。

フリガナと商号。商号は登記されているとおりに、一字一句そのまま書きます。フリガナは会社の種類を表す部分、つまり「株式会社」の4文字を除いて、片仮名で左に詰めて書きます。このフリガナは国税庁の法人番号公表サイトを通じて公表されます。

本店。これも登記されているとおりに書きます。ビル名や部屋番号を登記していない会社は、申請書にも書きません。普段の郵便物の宛名と登記の表記は違うことがあるので、登記事項証明書を手元に置いて写すのが確実です。

登記の事由。「募集株式発行」と書きます。増資といっても、新しく株式を発行して出資を受ける方法と、準備金や剰余金を資本金に振り替える方法があり、様式も添付書類も変わります。この記事で扱うのは前者、新しく株式を発行して外からお金を入れる方法です。

登記すべき事項。ここが本体です。書くのは2つで、変更後の発行済株式の総数と、変更後の資本金の額です。増えた分ではなく、増えた後の合計額を書きます。それぞれに原因年月日として「令和○年○月○日変更」を添えます。この日付が前の節で説明した払込期日または払込期間の末日です。

課税標準金額。ここには資本金の増加分を書きます。全体額ではありません。1,000円未満の端数があるときは切り捨てます。

登録免許税。課税標準金額から計算した税額を書きます。計算方法は次の節で詳しく扱います。

添付書類。添える書類の名前と通数を並べます。

申請人の欄。本店、商号、代表取締役の住所と氏名を書き、登記所に提出した印鑑、いわゆる会社実印を押します。司法書士などの代理人が出す場合は代理人の住所氏名を書き、代理人の認印を押します。この場合、代表取締役の押印は不要です。

申請書が収入印紙貼付台紙を含めて複数ページになるときは、各ページのつづり目に契印を押します。契印に使う印鑑は、申請書に押したものと同じでなければなりません。

添える書類は「何を証明する紙なのか」で覚える

添付書類は名前だけ並べると暗記の対象に見えますが、1枚ずつ「何を証明しているのか」で捉えると順番も理由も分かります。法務局の記載例では、取締役会を設置していない非公開会社の場合として次の書類が挙がっています。

株主総会議事録。増資の条件を決めたのが株主総会であることを示す紙です。何株を、いくらで、いつまでに払い込んでもらい、そのうちいくらを資本金にするのか。この4点を決議した記録が必要になります。会社法は、これらの条件の決定は株主総会の決議によらなければならないと定めており、しかもこの決議は通常の過半数ではなく、出席株主の議決権の3分の2以上という重い要件です。非公開会社ではこの原則どおりになります。公開会社は取締役会で決められるため、添えるのは取締役会議事録になります。

株主リスト。正式には「株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面」です。株主総会の決議を要する登記では必ず添えます。全株主を書くのではなく、議決権の割合が高い順に、上位10名か、割合を足していって3分の2に達するまでの人数か、少ないほうの人数まで書きます。株主が3人しかいない会社なら3人全員になりますし、株主が50人いても上位10名で止まることがあります。代表者が作成して記名押印します。

取締役決定書。株主総会で募集の条件だけを決め、誰に何株を割り当てるかを取締役が決めた場合に添えます。会社の構成によって取締役会議事録になったり、この決定書になったりします。

募集株式の引受けの申込みを証する書面。出資する人が「この条件で引き受けます」と申し込んだ記録です。株式申込証と呼ばれる書式を使うのが一般的です。銀行や信託会社が出す株式申込取扱証明書を使う方法もあります。なお、割り当てる相手が最初から決まっていて総数引受契約を結ぶ場合は、この申込証の代わりに契約書を添えます。

払込みがあったことを証する書面。お金が実際に会社に入ったことを示す紙です。法務局の記載例では、払込金受入証明書、または代表取締役が払込みを受けたことを証明する旨を記載した書面に、預金通帳の写しや取引明細書を合わせてとじたもの、といった例が挙がっています。実務では後者が多く使われます。通帳の表紙、見開きの1ページ目、そして入金が記帳されたページの3枚をコピーし、代表者が作成した証明書と一緒にとじます。ここで注意したいのは、入金の日付が登記すべき事項に書いた原因年月日と合っていることです。ずれていると理由を説明する必要が出ます。

資本金の額の計上に関する証明書。払い込まれた金額のうち、いくらを資本金に計上したのかが会社法と会社計算規則のルールどおりであることを示す紙です。これは登記の細かいルールを定めた規則で、設立の登記と、資本金の額が増えたり減ったりする変更登記では必ず添えるとされています。法務局のサイトには募集株式発行の場合を含む複数パターンの記載例が置かれているので、自社の状況に近いものを選んで写すのが早道です。

委任状。代理人に申請を任せた場合だけ必要です。自分で出すなら不要です。

書類の順番は申請書に書いた順に重ね、左上をホチキスで留めます。

登録免許税の計算と納め方

増資の登録免許税は、増えた資本金の額に対して計算します。国税庁が公開している税額表には、資本金の増加についての税率がこう示されています。

株式会社等の資本金の増加の登記 1,000分の7(3万円に満たないときは、申請件数1件につき3万円) 出典: nta.go.jp

計算は3段階です。まず課税標準金額を出します。これは増えた資本金の額で、1,000円未満の端数は切り捨てます。次に1000分の7、つまり0.7%を掛けます。最後に100円未満の端数を切り捨てます。この結果が3万円に満たなければ、3万円になります。

具体的に見ます。資本金を300万円増やした場合、300万円の0.7%は2万1,000円です。3万円に届かないので、納める額は3万円になります。資本金を1,000万円増やした場合は、1,000万円の0.7%で7万円です。3万円を超えているので、そのまま7万円を納めます。増資額が429万円ほどを超えたあたりから、最低額の3万円ではなく計算どおりの額になる、と覚えておくと見当が付きます。

納め方は収入印紙か領収証書です。収入印紙は法務局の中にある印紙売り場や郵便局で買えます。買った印紙は収入印紙貼付台紙という白紙に貼ります。ここで大事な注意が2つあります。1つは割印をしないこと。もう1つは、消印の作業の都合で右側に寄せて貼ってほしいと法務局が案内していることです。印紙に自分で消印を押してしまうと使えなくなるので、貼るだけにとどめます。

払い込まれたお金の全額を資本金にしなければならないわけではない点も知っておくと役に立ちます。会社法は、払込みまたは給付に係る額の2分の1を超えない額は資本金として計上しないことができると定めており、計上しなかった分は資本準備金になります。つまり1,000万円の出資を受けたとき、500万円を資本金、500万円を資本準備金とすることができます。この場合、登録免許税の計算対象は資本金として計上した500万円分だけになるため、税額は3万5,000円です。全額を資本金にした場合の7万円と比べると半額になります。

ただし、この選択は税金や社会的な見え方にも影響します。資本金の額は誰でも見られる記録に載り、取引先や金融機関が会社の規模を判断する材料になります。一方で、資本金が一定の額を超えると税務上の扱いが変わる場面もあります。どこで線を引くかは金額や事業の状況で変わるので、実際に決める前に税務署か税理士に確認してください。

申請書を書く前に終わらせておく3つの決定

申請書は、会社の中で決めるべきことが全部終わってから書く紙です。順番を逆にすると、書き上げてから作り直すことになります。終わらせておくべき決定は3つあります。

1つ目は、募集の条件を決めること。何株を発行するのか、1株あたりいくらで払い込んでもらうのか、払込みの期日または期間はいつか、そのうちいくらを資本金にしていくらを資本準備金にするのか。この4点です。会社法はこれらをまとめて募集事項と呼んでいます。非公開会社では株主総会で決め、しかも先ほど触れたとおり3分の2以上の賛成が要る重い決議です。株主が複数いる会社では、この賛成を集められるかどうかが最初の関門になります。

ここで1つ落とし穴があります。既存の株主以外の人に株式を割り当てるとき、払込みの金額がその人にとって特に有利な金額になっていると、取締役は株主総会でその金額にする理由を説明しなければならないとされています。創業者が知人に安く株を持たせるようなケースがこれに当たります。説明を省くと決議の効力に疑いが残ります。

2つ目は、誰に何株を割り当てるかを決めること。募集の条件を決めるのと、割当先を決めるのは別の手続きです。法務局の記載例にも、払込期間の初日または払込期日の前日までに申込者へ割り当てる株式数を通知することになっているため、払込期日を割当決議の当日にすることはできない、という注記が付いています。この日程の制約は見落としやすいので、カレンダーに落とすときに気を付けてください。

3つ目は、発行可能株式総数に余裕があるかを確かめること。会社の記録には、発行できる株式の上限が載っています。増資で発行する株数を足した結果がこの上限を超えるなら、上限そのものを引き上げる手続きが先に必要です。上限の引き上げは会社の基本ルールを書いた文書、つまり定款を変える話なので、株主総会の重い決議が要ります。設立時に上限を発行済株式数の10倍程度に設定している会社が多く、1回目の増資では問題になりにくいのですが、2回目以降で引っかかることがあります。

この3つが終わってから、議事録を作り、申込証をもらい、入金を確認し、申請書を書く。この順番が守れていれば、書類どうしの日付が自然につながります。

出し方は窓口・郵送・オンラインの3通り

できあがった書類の出し方には3つの選択肢があります。

窓口に持参する方法は、本店の所在地を管轄する法務局に直接持っていきます。管轄は法務局のサイトで調べられます。近くにあるから、という理由で選ぶことはできません。窓口の利点は、その場で形式的な不備を指摘してもらえる可能性があることです。ただし、書類の中身を事前に審査してもらえるわけではないので、受け付けられた後に補正の連絡が来ることもあります。

郵送する方法は、書留など追跡できる方法で送ります。登記完了後に書類を返してもらう必要がある場合は、返信用の封筒と切手を同封します。郵送の場合、到着日が受付日になるので、期限が迫っているときは日数を多めに見ておきます。

オンラインで出す方法は、法務省の登記・供託オンライン申請システムを使います。専用のソフトウェアをパソコンに入れ、電子証明書で署名して送ります。慣れれば移動時間がゼロになりますし、初期設定を済ませてしまえば2回目以降は速いのですが、最初の設定と電子証明書の取得に手間がかかります。年に何度も登記をする会社でなければ、紙のほうが結果的に早いこともあります。法務局はこのほかに、申請書に二次元バーコードを付けて窓口や郵送で出す方式も案内しており、こちらは専用ソフトの導入が不要です。

どの方法でも、登記が完了するまでには受付から1週間前後かかるのが一般的です。法務局ごとに混み具合が違うので、正確な日数は管轄の法務局が掲示している登記完了予定日で確認します。完了したという連絡は基本的に来ません。完了予定日を過ぎてから登記事項証明書を取ってみて、資本金の額が書き換わっていれば終わっています。

補正、つまり書類の直しが必要になった場合は、法務局から電話が来ます。申請書に書いた連絡先の電話番号が使われるので、日中につながる番号を書いておきます。軽微な書き間違いなら、法務局に出向いて訂正印を押すだけで済むこともあります。

差し戻しの原因になりやすいところ

登記申請の手続き自体は特別な資格が要るものではなく、専門知識がなくても自分でやり切ることはできます。ただ、添える書類の数が多く、日付や押印について細かいルールが決まっているため、経験のない人が一度で通すのは簡単ではありません。実際につまずきやすい箇所を挙げます。

日付の食い違い。登記すべき事項に書いた原因年月日、通帳に記帳された入金日、議事録の開催日、申込証の日付。この4つが筋の通った順番になっていないと指摘されます。議事録の日付より前に入金が記帳されていたり、割当を決めた日と払込期日が同じ日になっていたりするのが典型です。

株主リストの人数の数え間違い。上位10名と、割合を足して3分の2に達するまでの人数の、少ないほうまで書きます。株主が少ない会社では全員分になりますが、「10名まで書けばよい」と覚えていると、株主が5人の会社で3人しか書かずに出してしまうことがあります。

変更後ではなく増加分を書いてしまう。登記すべき事項の欄に書く資本金の額と発行済株式の総数は、変更後の合計です。課税標準金額の欄だけが増加分です。この2つの欄で数字の意味が違うことを取り違えると、登記される金額そのものが間違います。

収入印紙への消印。前にも触れましたが、自分で印紙に印を押すと使えません。貼るだけにします。

会社実印の押し忘れ、または印鑑の相違。申請書に押すのは登記所に提出した印鑑です。銀行印や角印を押してしまうと通りません。契印も同じ印鑑を使います。

添付書類の記名押印漏れ。議事録には出席した役員が、株主リストには代表者が、それぞれ記名押印します。ページ数が多い議事録では、各ページのつなぎ目にも印が要ります。

発行可能株式総数の超過。前の節で触れたとおりです。これは申請書の書き方の問題ではなく、その前の段階で止まる話なので、発覚するとやり直しの幅が大きくなります。

自分で出すか、司法書士に頼むか

判断の材料は、費用と時間と、失敗したときの影響の3つです。

費用について、登記の専門家に依頼した場合の報酬は案件によって変わりますが、1つの目安が示されています。

専門家に登記申請手続きの代行を依頼する場合は、専門家報酬の支払も必要です。専門家報酬の額はケースによって異なりますが、5万円前後がひとつの目安となります。 出典: koyano-cpa.gr.jp

登録免許税は自分で出しても専門家に頼んでも同じ額なので、上乗せになるのは報酬の部分です。増資額が小さく登録免許税が最低額の3万円で済む会社では、報酬のほうが税額より大きくなることもあります。

時間について、初めて自分でやる場合、様式を探し、記載例を読み、議事録と申込証と払込証明を作り、印紙を買って貼る、という一連の作業に、慣れていない人で合計10時間前後はかかると見ておくと安全です。2回目以降は同じ書式を使い回せるので大幅に短くなります。

失敗したときの影響について、増資の登記は、間違って登記されると後から直すのに別の手続きと費用がかかります。とくに資本金の額を取り違えて登記してしまうと、記録の訂正と、場合によっては税務上の扱いの整理まで必要になります。

判断の目安を整理すると、株主が1人か2人で、割当先も明確で、金銭のみの出資であれば、自分でやり切れる可能性が高い手続きです。反対に、株主が複数いて意見の調整が必要な場合、出資が現金以外の財産を含む場合、種類株式を発行している場合、外部の投資家から資金を受け入れる場合は、専門家に任せたほうが結果的に安く付きます。投資家が入る増資では、投資契約や株主間契約と登記の内容を整合させる必要があり、書類の作り方が一段複雑になります。

なお、増資と同時に役員を増やしたり、本店を移したりする会社も多いのですが、それぞれ別の登記として登録免許税がかかります。まとめて1件にはなりません。

合同会社の増資は別の様式を使う

株式会社ではなく合同会社を経営している人が「増資登記申請書」を探してこの記事にたどり着くこともあります。合同会社の場合、使う様式も添える書類も別です。

合同会社には株式がありません。出資している人は社員と呼ばれ、資本金を増やす方法は、新しく社員を加入させてその人にお金を出してもらうか、いまいる社員が出資の額を増やすか、会社が持っている資本剰余金を資本金に振り替えるか、のいずれかです。

法務局は「合同会社の資本金の額の変更の登記申請書」という専用の様式を公開しており、その記載例には4つのパターンごとの添付書類が並んでいます。新しく社員が加入する場合に共通して必要になるのは、総社員の同意書、出資に係る払込みまたは給付があったことを証する書面、増やす資本金の額について業務執行社員の過半数の一致があったことを証する書面、そして資本金の額の計上に関する証明書です。ただし金銭のみの払込みであれば、資本金の額の計上に関する証明書は不要とされています。

総社員の同意書が必要になる理由は、合同会社では社員の氏名と住所、出資の額が会社の基本ルールを書いた文書に書き込まれているからです。新しい人が入る、あるいは出資額が増えるということは、その文書を書き換えることを意味し、書き換えには原則として全員の同意が要ります。株式会社の多数決とはここが大きく違います。

登録免許税の計算は株式会社と同じで、増えた資本金の額の1000分の7、3万円に満たないときは3万円です。ただし注意点があり、新しく業務執行社員が加入する場合は、資本金の額の変更とは別に、社員の加入の登記が発生します。この分の登録免許税として、資本金の額が1億円以下の会社なら1万円、1億円を超える会社なら3万円が別途必要になると記載例に明示されています。合計の負担を見積もるときに落としやすい部分です。

増資の登記が終わった後に残っている手続き

登記が完了しても、それで全部が終わるわけではありません。

登記事項証明書の取り直し。資本金の額が書き換わった新しい証明書を取っておきます。金融機関や取引先に提出を求められたときにすぐ出せます。

税務署などへの届出。資本金の額が変わったことについて、異動の届出が必要になる場合があります。何を出すかは自治体や状況で変わるため、国税庁の案内を確認するか税務署に問い合わせてください。

税務上の扱いが変わる境目の確認。資本金の額は、消費税や法人住民税の均等割、中小企業向けの優遇措置の適用可否などに関係します。増資によってこれらの境目を越えると、翌期から負担が変わることがあります。増資の金額を決める前に、この点を税理士か税務署に確認しておくのが安全です。

取引先や銀行への連絡。融資を受けている場合、資本金が増えたことは基本的に良い材料として扱われます。契約書に記載した資本金の額がある場合は更新が要ることもあります。

許認可の確認。業種によっては、許可の要件に資本金の額が入っていることがあります。建設業や人材派遣などが代表例です。増資によって要件を満たすようになる場合も、逆に届出が必要になる場合もあります。

登記の話から見えてくる、独立して働く人の周辺の変化

フリーランスとして働いてきた人が法人を作り、その法人が増資を検討する。この流れをたどる人は着実に増えています。取引先から法人としての契約を求められた、融資を受けたい、税負担の分岐点を越えた、といった理由が重なるタイミングで法人化が起き、その後に資本金の増強が続きます。

ここで見落とされがちなのが、法人化や増資は「稼ぎ方」を変えるものではなく「器」を変えるものだという点です。器を大きくしても、中に入る仕事の取り方が変わらなければ手取りは増えません。20年この市場を見てきた立場から言えば、長く続いている人ほど、単発の作業をこなすことより、依頼側から「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っています。登記や契約の知識は、その信頼を裏側で支える部品にあたります。請求書の出し方、契約書の条項、下請けとしての保護。こうした地味な部分を自分で押さえている人は、トラブルのときに慌てません。

契約や請求の実務に不安がある人は、発注書と契約書で何を確かめるべきかを整理したフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが参考になります。取引先から入金がないという事態に備えるなら、回収の手段と費用感をまとめた未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】も読んでおくと判断が速くなります。会計まわりを自分で整理したい人には、会計の専門職がどのように業務を切り分けているかを扱った会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】が、外注と自前の線引きを考える材料になります。

もう1つ、運営者として見てきた限りではっきりしているのは、間に手数料が乗らない直接の取引ほど、依頼する側と受ける側の双方に余裕が生まれるということです。同じ予算でも中間の取り分がなければ依頼側はより多くを頼めますし、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%という条件が効いてくるのは、金額の大小そのものより、この「手取りが厚い」という質の部分です。法人を作って増資まで進む人は、たいてい先に取引の構造を整えています。

仕事の幅を広げたい人にとって、どの分野に需要が寄っているかを知ることも判断材料になります。生成系の技術を業務に組み込む支援は、契約単位が大きくなりやすい領域で、業務の整理から始める案件も多い分野です。仕事の中身はAIコンサル・業務活用支援のお仕事にまとまっています。もう少し広く、マーケティングやセキュリティを含めた領域を見るならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事が参考になります。開発そのものを請け負う道を考えるならアプリケーション開発のお仕事で案件の種類を確認できます。

報酬の水準を知りたいときは、職種ごとの相場データが役に立ちます。開発職の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場で、書き手としての水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。法人化や増資を考える段階では、いまの単価が相場のどのあたりにあるのかを把握しておくと、資本金をいくらにするかという判断にも根拠が生まれます。

書類仕事の精度を上げたい人には、資格を1つ通しておく手もあります。議事録や申請書のような定型文書の型を身に付けるならビジネス文書検定が直接的に役立ちますし、技術寄りの案件で信用を示したいならCCNA(シスコ技術者認定)のような基盤系の資格が効きます。登記の書類作りも、突き詰めれば「決まった型に、正しい数字を、正しい順番で入れる」作業です。ここで手が止まらない人は、契約書でも提案書でも同じ速さで進めます。

増資登記申請書は、会社が次の段階に進むときに一度は通る紙です。様式は法務局の商業・法人登記の申請書様式のページに記載例つきで公開されており、登録免許税の税率は国税庁の税額表で確認できます。手を動かす前にこの2つを開き、自社がどのパターンに当たるかを決めてから書き始めれば、迷う時間はかなり減ります。

よくある質問

Q. 増資の登記はいつまでに出せばよいですか?

資本金の額が変わった日から2週間以内です。起算日は株主総会の日ではなく、払込みの期日、または払込期間を定めたときはその期間の末日になります。期限を過ぎても登記自体は受け付けられますが、登記を怠ったことについて代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。書類作成と郵送の日数を見込んで逆算してください。

Q. 増資の登録免許税はいくらかかりますか?

増えた資本金の額の1000分の7です。この額が3万円に満たないときは3万円になります。計算時は課税標準金額の1,000円未満と、税額の100円未満をそれぞれ切り捨てます。たとえば300万円の増資なら計算上は2万1,000円ですが、最低額の3万円を納めます。1,000万円の増資なら7万円です。

Q. 増資の登記申請書に添える書類は何ですか?

取締役会を設置していない非公開会社の場合、株主総会議事録、株主リスト、取締役決定書、募集株式の引受けの申込みを証する書面、払込みがあったことを証する書面、資本金の額の計上に関する証明書が基本です。代理人に頼む場合は委任状も加わります。会社の機関設計によって議事録の種類が変わるため、法務局の記載例で自社のパターンを確認してください。

Q. 司法書士に頼まず自分で申請できますか?

できます。登記申請に資格は不要で、法務局が記載例つきの様式を公開しています。ただし書類の数が多く日付や押印のルールが細かいため、初めてだと漏れが出やすい手続きです。専門家に頼む場合の報酬はケースによりますが5万円前後が1つの目安とされています。株主が少なく金銭のみの出資であれば自分で進めやすく、投資家が入る増資では専門家に任せたほうが安全です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月21日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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