病院の薬剤部を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと


この記事のポイント
- ✓病院の薬剤部を辞めたいと感じたときに
- ✓辞める前に切り分けておきたいことをまとめました
- ✓キャリアの行き詰まりを病院特有の事情から整理し
まず、安心してください。病院の薬剤部を辞めたいと思うのは、皆さんが弱いからではありません。
朝の注射薬の払い出しに追われ、病棟からの電話で調剤が何度も止まり、夕方には翌日の準備、月に何度かは当直。そういう毎日の中で「このままでいいのか」と考えるのは、ごく自然なことです。
ただ、辞めたい気持ちが強いときほど、判断は急ぎがちになります。そして、病院の薬剤部には、辞めてから「もう少し考えればよかった」と感じやすい事情がいくつかあります。認定資格の途中だった、夏の賞与の直前だった、実は院内で異動の道があった、といったことです。
この記事では、辞めたい理由を病院の薬剤部という職場の仕組みに沿って切り分け、辞める前に院内でできること、辞めると決めたときに確かめておくこと、病院を出たあとの行き先までを順に書いていきます。
病院の薬剤部で「辞めたい」と感じる人は少なくない
最初に、皆さんの気持ちが特別なものではないことを確かめておきます。
薬剤師の就職先として、病院は調剤薬局に次いで大きな受け皿です。厚生労働省の統計では、薬剤師のおよそ2割が病院や診療所で働いています。人数が多いぶん、職場の状況にも大きな幅があります。
薬剤師の転職を扱う情報サイトは、病院薬剤師の離職の状況について次のように書いています。
ただし、病院機能別に離職率を見ると、50%以上の病院もあり、職場によって大きな違いがあります。このことから、病院薬剤師全体の離職率は一見安定しているように見えても、実際には職場環境の違いによって大きな差があり、辞めたいと感じるのは決して特別なことではないと言えます。 出典: 38-8931.com
ここで大事なのは「職場によって大きな違いがある」という部分です。
病院の薬剤部は、病院の規模や機能によって、同じ免許でもまったく違う働き方になります。500床を超える急性期病院と、100床の療養型病院では、1日の流れも、人数も、当直の有無も違います。
つまり、「病院の薬剤部を辞めたい」という気持ちには、2つの中身がありえます。
1つは「病院で働くこと自体が、自分に合わない」。 もう1つは「いまのこの病院が、自分に合わない」。
この2つを混ぜたまま辞めると、次の職場選びでまた同じことが起きます。薬局に移ったら病院の仕事が恋しくなった、別の病院に移ったらもっと忙しかった。そうならないために、ここから気持ちを分けて見ていきます。
辞めたい理由を、4つに分けてみる
紙とペンを用意して、いま辞めたいと感じている理由を書き出してみてください。多くの場合、次の4つのどれかに入ります。
業務量と当直
病院の薬剤部の忙しさは、薬剤師の人数と病床数、そして病棟にどれだけ薬剤師を出しているかで決まります。
診療報酬で病棟薬剤業務実施加算を取っている病院では、病棟ごとに週20時間相当以上の業務が求められます。病棟に人を出したぶん、調剤室に残る人数が減り、朝と夕方の山がきつくなります。欠員が出ても補充が遅れ、1人あたりの負担が膨らんでいく。これが、病院の薬剤部で「辞めたい」が起きる典型的な流れです。
当直も大きな要素です。救急を受け入れている病院では、薬剤師が夜も残ります。月に4回を超えるような当直が続くと、体力だけでなく、家族との時間にも影響します。
この理由が中心なら、確かめるべきは「人が足りないのは一時的か、ずっとか」です。
人間関係
病院の薬剤部の人間関係には、2つの層があります。
1つは薬剤部の中です。人数の少ない病院では、同じ顔ぶれで何年も働くことになり、相性の悪い人がいても逃げ場がありません。大きな病院では、担当ごとのグループの中で序列や派閥ができることがあります。
もう1つは、医師や看護師との関係です。処方の提案を強い口調で退けられる、病棟で薬剤師の意見が軽く扱われる。こうした経験が積み重なると、仕事そのものへの意欲が削られていきます。
この理由が中心なら、「特定の誰かとの問題か、職場の文化の問題か」を分けて考えます。
給与
病院の薬剤師は、調剤薬局やドラッグストアと比べて初任給が低めのことが多いです。公立病院であれば地方公務員の給料表に沿って上がっていくので、若いうちは差が開きやすくなります。
同年代の友人が薬局で自分より高い年収をもらっていると聞くと、「この忙しさでこの給料か」と感じるのは無理もありません。
この理由が中心なら、「いまの差」だけでなく、「10年後にどうなっているか」を比べる必要があります。
仕事の中身とキャリア
意外と多いのが、「このままここにいて、自分は何になるのか」という迷いです。
調剤ばかりで病棟に出してもらえない、認定資格を取りたいのに支援がない、逆に研究や学会発表を求められて疲れた。病院の薬剤部は、病院の方針によって薬剤師の役割が大きく変わるので、自分のやりたいことと合わなくなることがあります。
この理由が中心なら、「病院でしかできないことを、まだやりたいか」が分かれ目になります。
4つのうち、どれが一番大きいでしょうか。複数あっても構いません。一番大きいものに丸をつけておいてください。次の節で、それぞれの切り分け方をお話しします。
病院の薬剤部ならではの疲れ方がある
4つの理由とは別に、病院の薬剤部には、ほかの職場ではあまり見られない疲れ方があります。自分の状態を知る手がかりとして、書いておきます。
仕事を何度も中断される疲れ
病院の薬剤部では、1つの作業を最後まで続けられる時間がとても短いです。
内服薬の監査をしている途中に、病棟から「この点滴、いま混ぜてもいいですか」と電話が入る。答えて戻ると、救急外来から臨時の処方が届いている。それを片づけて監査に戻ると、どこまで確認したかを思い出すところからやり直しです。
こうした中断が1日に何十回も起きると、実際にこなした仕事の量以上に、頭が疲れます。帰り道に「今日は何をしていたんだろう」とぼんやりするのは、この疲れのせいであることが多いです。
責任の重さを、ずっと抱えている疲れ
病院では、抗がん剤や麻薬、インスリン、抗凝固薬など、量を間違えると命に関わる薬を毎日扱います。
監査で見落としがなかったか、提案した量は本当に正しかったか。帰宅してからも気になって、夜中に目が覚める。こうした状態が続くと、休みの日にも心が休まりません。
医師と看護師の間に立つ疲れ
病院の薬剤師は、処方を出す医師と、実際に投与する看護師の間に立ちます。
医師に処方の変更を提案して聞き入れてもらえず、看護師からは「薬剤部はどう考えているのか」と問われる。どちらにも気を遣いながら、薬の専門家として言うべきことは言わなければならない。この板挟みは、薬局ではあまり経験しない種類の疲れです。
疲れの種類が分かると、選ぶ職場が変わる
中断の疲れが大きい人は、担当業務がはっきり分かれている大きな病院のほうが楽になることがあります。責任の重さがつらい人は、ハイリスクの薬を扱う場面が少ない療養型や、確認の仕組みが整った病院が合うかもしれません。板挟みがつらい人は、薬剤師の役割が院内で明確に位置づけられている病院を探すことになります。
「疲れた」の一言で片づけずに、どの種類の疲れなのかを見分けておくと、次の節の切り分けがぐっとやりやすくなります。
「病院が合わない」のか「この病院が合わない」のか
丸をつけた理由ごとに、切り分けの問いを置いてみます。
業務量と当直が理由のとき
問いは「人員の体制が変われば、続けたいと思えるか」です。
もし人が足りて、当直が月2回になれば続けられる。そう思えるなら、合わないのは「この病院」です。同じ病院の仕事でも、人員に余裕のある病院や、当直のない療養型の病院に移ることで解決する可能性があります。
反対に、人が足りていても、途切れ途切れに問い合わせが入る働き方そのものがつらいなら、病院という職場が合っていないのかもしれません。
人間関係が理由のとき
問いは「その人がいなくなったら、ここで働き続けたいか」です。
特定の上司や先輩との関係が問題なら、異動や、相手の異動を待つという選択肢もあります。公立病院やグループ病院では、数年ごとに人が入れ替わることも少なくありません。
一方で、医師が薬剤師の意見を聞かない、薬剤部が病院の中で軽く見られている、という職場全体の文化の問題なら、個人の努力ではなかなか変わりません。この場合は、薬剤師がチームの一員として位置づけられている病院を探す価値があります。
給与が理由のとき
問いは「病院で身につく専門性に、給与の差を払う価値を感じるか」です。
病院の薬剤師の強みは、注射薬や抗がん剤、感染症の治療、病棟での多職種との連携といった、薬局では積みにくい経験です。これに価値を感じているなら、同じ病院の中で役職や認定資格の手当を目指す道があります。
薬剤師の年収が働く場所や年齢でどう違うのかは、薬剤師の年収・単価相場で統計をもとに整理しています。辞める前に、いまの年収が相場のどのあたりにあるのか、移った先でどれくらい変わりそうかを数字で確かめておくと、気持ちだけで決めずに済みます。
仕事の中身とキャリアが理由のとき
問いは「やりたいことは、別の病院なら叶うのか、病院の外でしか叶わないのか」です。
病棟業務やがん領域をやりたいなら、別の病院で叶います。在宅医療に関わりたい、患者さんの暮らしに近いところで働きたい、というなら、薬局や訪問の分野のほうが合っているかもしれません。
私自身、40代で長く勤めた職場を辞めたとき、最初は「とにかくここから出たい」という気持ちしかありませんでした。でも、辞める前の半年ほど、自分が何に疲れているのかを毎週ノートに書き出してみたんです。すると、仕事の中身ではなく、会議と調整に時間を奪われることが一番の不満だと分かりました。そこが分かっていたから、次の働き方を選ぶときに迷わずに済んだ。遠回りに見えて、あの半年が一番の準備だったと思っています。
辞める前に、院内でできること
切り分けてみて「この病院が合わない」に近いと感じた方も、すぐに退職届を書く前に、院内で試せることがあります。
担当業務の変更を相談する
大きな病院の薬剤部では、調剤、注射、製剤、医薬品情報、病棟といった担当があります。いまの担当がつらいなら、別の担当に移れないかを相談してみてください。
たとえば、夜間の呼び出しが多い病棟を担当していて疲れているなら、医薬品情報の担当に移ることで、働き方がかなり変わることがあります。
当直の回数や勤務の形を相談する
子育てや介護、体調の事情があるなら、当直の免除や回数の調整を相談できる病院もあります。育児・介護休業法では、子育てや介護をしている人が請求すれば、深夜の勤務を免除する仕組みが定められています。
言い出しにくいかもしれませんが、辞められるよりは調整したいと考える病院は多いです。
誰に相談するかを選ぶ
薬剤部の中で話しにくいなら、病院の人事や、看護部と共同で設けている相談窓口、産業医に話すという道もあります。
心や体の不調が出ているなら、辞めるかどうかより先に、休むことを考えてください。眠れない、朝になると動悸がする、休日も仕事のことが頭から離れない。そういう状態で大きな決断をするのは、皆さんにとって損になります。
常勤から、時間を短くした働き方に切り替える
病院によっては、常勤から短時間の勤務や非常勤に切り替えることを認めているところがあります。
子育てが一段落するまでの数年だけ時間を短くする、当直のない日勤だけの勤務にする。そうすれば、病院で積んできた経験を手放さずに、生活との折り合いをつけられます。
非常勤になると、病棟の担当や当直から外れることが多く、任される仕事は調剤や監査が中心になります。キャリアの伸びは一時的にゆるやかになりますが、「病院の仕事は好きだけれど、いまの量は無理」という人には、辞めるより納得のいく選択になることがあります。
切り替えの前例があるかどうかは、薬剤部長や人事に聞けば教えてもらえます。前例がなくても、欠員を出すよりはと、相談に応じてくれる病院は少なくありません。
期限を決めて、様子を見る
「3か月後の人事異動まで待ってみる」「新しい薬剤部長が来て、半年様子を見る」のように、期限を決めて待つのも1つの方法です。
期限を決めずに我慢すると、辞めるタイミングを失ったまま疲れだけが積もっていきます。期限を決めておけば、その日が来たときに、落ち着いて判断できます。
辞めると決めたら、確かめておくこと
院内でできることを試しても変わらない、あるいは切り分けてみて病院の外に出たいと分かった。そう決めたら、次の点を確かめてから動いてください。
退職を申し出る時期
民法では、期間の定めのない雇用であれば、退職の申し出から2週間で雇用が終わるとされています。ただ、病院の就業規則では1か月から3か月前の申し出を求めていることが多いです。
病院の薬剤部は、当直や病棟の担当を数か月先まで組んでいます。円満に出るためには、就業規則の期間より少し余裕を持って伝えるほうが、引き継ぎもしやすくなります。
賞与と退職金
賞与は、支給日に在籍していることが条件になっていることが多いです。退職の日を賞与の支給日の後にするだけで、受け取れる金額が大きく変わります。
退職金も、勤続年数の区切りで支給の率が変わる病院があります。あと数か月で次の区切りに届くなら、そこまで待つ価値があるかもしれません。就業規則と退職金規程を、一度きちんと読んでおきましょう。
認定資格や研修の途中でないか
病院の薬剤師が目指す認定資格には、一定の年数、その分野の業務に関わることや、症例の報告を求めるものがあります。たとえば感染制御やがんの領域の認定では、実務の年数や症例の数が要件になっています。
途中で辞めると、次の職場でその分野の業務ができなければ、要件を満たせなくなることがあります。認定を取りたいなら、辞める前に「次の職場でも続けられるか」を確かめてください。
奨学金や資格取得支援の返還条件
病院によっては、奨学金の返還を肩代わりしたり、研修費を負担したりする代わりに、一定期間の勤務を条件にしていることがあります。
退職すると返還を求められる約束になっていないか、書類を確認しておきましょう。不明な点があれば、人事に条件を文書で出してもらうと安心です。
有給休暇の消化と、引き継ぎの段取り
病院の薬剤部は、引き継ぐ内容が多い職場です。担当している病棟の患者さんの経過、進行中の院内製剤、医薬品情報の担当なら作りかけの資料。これを残りの勤務日の中で渡していく必要があります。
有給休暇が多く残っているなら、最終出勤日と退職日を分けて、休暇を消化してから辞めるのが一般的です。ただ、引き継ぎが終わらないまま休暇に入ると、休み中に電話がかかってくることになりかねません。
おすすめは、退職を伝えるときに「引き継ぎに何週間、休暇の消化に何週間」と、自分から段取りの案を出すことです。案があると、上司も当直や担当の組み替えを考えやすくなり、話がこじれにくくなります。
家族や身近な人に、先に話しておく
辞めると決めたら、家族や身近な人には、病院に伝える前に話しておくことをおすすめします。
収入が一時的に下がるかもしれない、次の職場が決まるまでに時間がかかるかもしれない。そうしたことを先に共有しておくと、転職の途中で焦らずに済みます。私自身、仕事を辞める前に家族と何度も話したことで、次の職場を条件だけで急いで決めずにいられました。
次の職場で同じことを繰り返さないために
辞めたあとに一番避けたいのは、次の職場でまた同じ理由で辞めたくなることです。ここでは、求人票と見学で確かめておきたい点をまとめます。
求人票で見る項目
・薬剤師の人数と病床数の比率:病床数を薬剤師の人数で割ってみて、いまの職場と比べます ・病棟薬剤業務を行っている病棟の数:多いほど、調剤室の人数が薄くなりやすいです ・当直や夜勤の形と月の回数:当直なのか、二交代や三交代なのか ・中途入職者の教育期間:注射や病棟の業務を、どれくらいの期間で覚える計画か ・認定資格の取得支援:研修費や学会参加の補助、勤務時間内の研修の有無
求人票に書いていない項目は、見学や面接で聞いてください。聞きにくいことに率直に答えてくれる病院は、入ってからも相談しやすい職場です。
見学で見ておくところ
見学では、薬剤部の中の電話の鳴り方と、薬剤師同士の声のかけ方を見てください。
忙しい時間帯でも、困っている人に誰かが声をかけているか。新人が質問したときに、嫌な顔をせずに答えているか。こうした小さな場面に、その職場の人間関係がよく表れます。
できれば、朝の払い出しの時間帯か、夕方の翌日準備の時間帯に見学させてもらうと、一番忙しいときの雰囲気が分かります。
前の職場の不満を、条件の言葉に置き換える
「人間関係が悪かった」「忙しすぎた」という不満のままだと、次の職場を選ぶ基準になりません。
これを「薬剤師が10人以上いて、担当が分かれている病院」「当直が月2回以下」「病棟に出る時間が決まっている」のように、確かめられる条件の言葉に置き換えてみてください。条件の言葉になっていれば、面接でもそのまま質問でき、転職の相談先にも伝えやすくなります。
病院を出たあとの行き先と、そこで生きる経験
病院の薬剤部で積んだ経験は、行き先によって生き方が変わります。
別の病院
同じ病院の仕事を続けたいなら、規模や機能の違う病院を選ぶことで、働き方が大きく変わります。当直のない病院、病棟業務に力を入れている病院、教育の体制が整っている病院。前の職場で何がつらかったのかが分かっていれば、選ぶ基準ははっきりしています。
たとえば、大学病院のような大きな病院では、担当が細かく分かれていて、自分の分野に集中しやすい反面、研究や学会発表を求められることがあります。中小規模の病院では、1人で調剤から病棟、在庫の管理まで幅広く担当し、医師との距離が近い反面、休みの調整がしにくくなります。療養型や回復期の病院では、急な変化が少なく、1人の患者さんとじっくり関わる時間が持てます。精神科の病院では、長く薬を飲み続ける患者さんと、時間をかけて信頼をつくっていく仕事が中心です。
同じ「病院の薬剤部」でも、これだけ働き方が違います。いまの病院で辞めたいと感じた理由が、別の種類の病院なら起きにくいものかどうかを、上の違いと照らし合わせてみてください。
調剤薬局
病院の経験を持つ薬剤師は、病院の前にある門前薬局や、在宅医療に力を入れている薬局で重宝されます。入院中の薬の変更の意味が分かる、退院した患者さんの薬を引き継げる、という強みがあるからです。
薬局に移ると、夜の当直がなくなり、生活のリズムは整いやすくなります。その代わり、注射薬や抗がん剤の調製に関わる機会はほとんどなくなります。病院で積んだ専門性をどこまで手放してよいかは、移る前に考えておきたいところです。
企業
製薬会社の医薬品情報の部門、治験の支援、医薬品の安全性情報を扱う仕事など、病院で身につけた薬の情報を扱う力が生きる場所があります。
企業の仕事は、患者さんと直接向き合う場面がなくなるぶん、文書を読み、まとめ、社内外に説明する時間が中心になります。病院で医師への提案や医薬品情報の資料づくりを経験している人は、その経験がそのまま評価されやすいです。一方で、転勤や、成果を数字で求められる働き方に戸惑う人もいます。
業務委託や在宅での仕事
最近は、薬剤師の知識を生かして、医療系の文章の監修や情報提供の仕事を業務委託で受ける人も増えています。薬局や病院での常勤を続けながら、週末に少しずつ関わる形もあります。
在宅で薬剤師の資格を生かす働き方について、仕事の種類や必要なスキルは在宅薬剤師への転職ガイド|仕事内容・年収・求められるスキルの実態【2026年版】で詳しく紹介しています。病院の外にどんな道があるのかを知っておくだけでも、「辞めたら終わり」という不安は小さくなります。
また、自分一人で考えがまとまらないときは、仕事や転職の相談を受ける専門家に話を聞いてもらうのも有効です。職場・転職・キャリア相談のお仕事では、どんな人がどんな形で相談に乗っているのかをまとめているので、相談先を探すときの目安になります。
運営者として見てきたこと
最後に、少し広い視点から書いておきます。
運営者としてこの市場を20年見てきた限りでは、専門職の人が職場を移るときにうまくいくのは、「何から逃げたいか」だけでなく「何を持って出るか」を言葉にできている人です。病院の薬剤部であれば、注射薬の知識、医師への提案の経験、チームでの記録の残し方。それを持っていると自覚している人は、次の職場でも早く居場所をつくります。
そして、常勤の職場を離れたあとに、業務委託で専門知識を生かす人も増えています。この働き方では、依頼する側と受ける側が直接やりとりできる形のほうが、同じ予算で依頼者は必要な相談を頼みやすく、受け手の手取りも厚くなります。手数料0%の直接のやりとりは、金額の多さよりも、無理のない条件で長く関係を続けられるという点で、専門職の働き方と相性がよいと感じています。
薬剤師の転職市場全体の厳しさや、選ばれる人の特徴については、薬剤師転職の厳しい現状と格差|選ばれる人と淘汰される人の違い【2026年版】で市場の数字を交えて整理しています。辞めたあとの見通しを冷静に持っておくと、いまの職場での判断も落ち着いてできるようになります。
辞めることは、失敗ではありません。ただ、切り分けてから辞めるのと、気持ちに押されて辞めるのとでは、その後の数年がまったく違ってきます。皆さんのペースで、1つずつ確かめていってください。
よくある質問
Q. 病院の薬剤部を1年未満で辞めても大丈夫ですか?
辞めること自体は可能ですが、次の職場で短期間の退職理由を必ず聞かれます。心身の不調など避けられない事情があるなら、無理に続ける必要はありません。そうでない場合は、辞めたい理由を書き出して、担当業務の変更や当直の調整など院内で試せることがないかを先に確かめると、次の職場選びで同じことを繰り返しにくくなります。
Q. 病院の薬剤部を辞めると伝えるのは、何か月前がよいですか?
法律上は2週間前の申し出で雇用は終わりますが、病院の就業規則では1か月から3か月前の申し出を求めていることが多いです。薬剤部は当直や病棟の担当を先まで組んでいるので、就業規則の期間より少し余裕を持って伝えると、引き継ぎがしやすく円満に辞めやすくなります。
Q. 病院薬剤師から調剤薬局に移ると年収は上がりますか?
若いうちは調剤薬局のほうが年収が高いことが多く、移ると上がる場合があります。ただし、公立病院などは年数とともに給与が上がる仕組みがあるため、長い目で見ると差が縮まることもあります。いまの差だけでなく、10年後の見込みや、賞与と退職金の条件まで含めて比べることが大切です。
Q. 認定薬剤師の資格取得の途中で辞めるとどうなりますか?
認定資格の多くは、その分野の実務年数や症例の報告を要件にしています。次の職場でその分野の業務ができないと、要件を満たせずに取得が止まることがあります。取得を続けたいなら、辞める前に次の職場で同じ領域の業務に関われるか、研修や学会参加の支援があるかを確認しておきましょう。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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