病院の薬剤部で求められる資格|無くても入れる範囲はどこまでか【2026年版】

中西 直美
中西 直美
病院の薬剤部で求められる資格|無くても入れる範囲はどこまでか【2026年版】

この記事のポイント

  • 病院の薬剤部で求められる資格を
  • 入るときに必要なものと入ってから取るものに分けて整理しました
  • 認定薬剤師と専門薬剤師の違い

病院の薬剤部で働くには、どんな資格が必要なのか。求人票に「認定薬剤師歓迎」「がん専門薬剤師在籍」といった言葉が並んでいるのを見て、自分には足りないものがあるのではないかと不安になった方もいると思います。

先に答えを書くと、病院の薬剤部に入るために必要な資格は薬剤師免許だけです。認定薬剤師や専門薬剤師の資格は、ほとんどが病院で数年働いて症例を積んでから取るものなので、入る時点で持っている人のほうが少数です。

ただし、入ったあとに資格がどう効いてくるかは、薬局やドラッグストアとはかなり違います。病院では、特定の資格を持つ薬剤師がいるかどうかで、病院が算定できる診療報酬や、薬剤師が入れるチームが変わるからです。この記事では、入口で必要なもの、入ってから取るもの、そして薬剤師免許が無くても薬剤部で働ける範囲までを、薬剤部の中の動き方と合わせて整理します。

病院の薬剤部に入るのに必要な資格は、薬剤師免許だけ

病院の薬剤部の求人で、応募の必須条件として書かれているのは、ほぼ例外なく「薬剤師免許」です。新卒採用では、国家試験の合格を条件に内定を出し、合格発表を待って正式に採用する流れが一般的です。国家試験は例年2月に行われ、合格発表は3月なので、4月入職の場合は発表から入職までの期間が短くなります。

中途採用でも、必須条件は薬剤師免許と「病院勤務経験○年以上」のような経験の条件が中心で、認定資格を必須にしている求人は多くありません。認定資格が条件として書かれているのは、がん診療や感染対策の専任者を補充したい場合など、欠員の穴がはっきりしている募集に限られます。

なぜ資格を入口で求めないのかというと、病院の認定資格の多くが「病院で働いた経験」を取得条件に含んでいるからです。たとえば感染制御の分野では、取得の条件として次のように実務経験と症例が求められています。

感染制御認定薬剤師を取得するには、薬剤師としての実務経験が5年以上、3年以上感染制御に関わる業務を実施、日本病院薬剤師会が認定する研修会において10単位取得、認定試験に合格、感染制御に関する報告を20例以上提出し、日本病院薬剤師会に認定される必要があります。 出典: shimizuhospital.com

実務経験5年以上、感染制御に関わる業務3年以上、症例報告20例以上という条件は、病院の中で感染制御チームに入って仕事をしていないと満たせません。つまり資格は、病院で働いた結果として手に入るものであり、病院に入る前に準備できるものではないのです。

では、入る前に何も準備できないかというと、そうではありません。応募の時点で評価されやすいのは、資格そのものより次のような経験です。

・調剤薬局で、抗がん剤の内服薬や吸入薬、自己注射薬の服薬指導をした経験 ・在宅医療で、高カロリー輸液や麻薬を扱った経験 ・日本薬剤師研修センターの研修認定薬剤師の単位を集めている、あるいは取得している ・学会や研修会に自分で参加している

研修認定薬剤師は、職場を問わず取得できる数少ない資格です。研修会やe-ラーニングで単位を集めて申請する仕組みで、病院に限らず薬局に勤めながら取れます。後で触れる認定実務実習指導薬剤師など、ほかの資格の前提になっていることもあるため、転職を考え始めた段階で単位を集めておくと、面接で学ぶ姿勢を示す材料にもなります。

薬剤師全体の年収の相場や、病院と薬局での違いを確認したい場合は、薬剤師の年収・単価相場で職場の種類ごとの数字を見られます。病院は初任給が低めに出やすい一方、資格や当直の手当で後から差がつく職場だという点も、入る前に知っておくとよいでしょう。

入ってから取る資格の地図、認定と専門の違い

病院薬剤師が取る資格は数が多く、名前も似ているため、最初は全体像がつかみにくいものです。大まかには、次の3つの層に分けて考えると整理しやすくなります。

主な資格 取得の目安
土台 研修認定薬剤師、病院薬学認定薬剤師 入職後数年以内
領域別の認定 がん薬物療法認定薬剤師、感染制御認定薬剤師、精神科薬物療法認定薬剤師、妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師、HIV感染症薬物療法認定薬剤師 実務5年前後から
専門 がん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師、医療薬学専門薬剤師 認定のあと、さらに数年

土台の資格は、特定の領域に偏らず、病院薬剤師として必要な研修を継続していることを示すものです。日本病院薬剤師会の病院薬学認定薬剤師は、病院や診療所に勤める薬剤師を主な対象とした制度で、研修の単位を集めて申請します。

領域別の認定は、日本病院薬剤師会が中心になって運営している制度が多く、実務経験の年数、その領域に関わった年数、研修の単位、症例の報告、試験といった条件を組み合わせて審査されます。がん薬物療法認定薬剤師の場合、複数のがん種にわたる薬学的な関わりの症例を数十例そろえる必要があり、化学療法をあまり扱わない病院では条件を満たすこと自体が難しくなります。

専門の資格は、認定の上位に位置づけられるもので、日本医療薬学会などが運営しています。学会発表や論文の実績が求められることが多く、研修施設に指定された病院で一定期間働いていることが条件になる場合もあります。

このほかに、学会が運営する職種横断の資格もあります。栄養サポートチームに関わる薬剤師が取るNST専門療法士、糖尿病の療養指導に関わる日本糖尿病療養指導士、抗菌薬の適正使用に関わる抗菌化学療法認定薬剤師などです。これらは看護師や管理栄養士と同じ資格を取ることになるため、チームの中で共通の言葉を持てるという利点があります。

ここで注意したいのは、どの資格が取れるかは、勤める病院で決まる部分が大きいという点です。症例を積める領域は、その病院が受け入れている患者で決まります。がん診療連携拠点病院なら化学療法の症例は多く集まりますが、精神科の症例は集まりにくいでしょう。精神科病院なら逆です。取りたい資格がすでに決まっているなら、応募先の病院にその領域の認定を持つ薬剤師が在籍しているかを確認するのが確実です。在籍者がいれば、症例の積み方や研修の受け方を身近で教わることができます。

研修施設として認定を受けている病院では、薬剤師の受け入れや学生の実習について、次のように公表していることがあります。

薬学生:5年次の実務実習を受け入れ、将来の臨床薬剤師を育成しています。また大学からの要望に応じて早期体験実習も行っています。 薬剤師:関連学会や職域団体の研修認定施設として、薬剤師の研修受け入れを行っています。 出典: kch-org.jp

研修認定施設であることは、資格を取るための環境が整っている目安になります。病院の公式サイトの薬剤部のページには、在籍する認定薬剤師や専門薬剤師の人数、研修施設としての認定の一覧が載っていることが多いので、応募前に必ず目を通しておきましょう。

薬剤部の中で、資格が仕事の範囲を変える場面

病院で資格が重く扱われる理由は、個人の勉強の成果という以上に、病院の運営に直接かかわるからです。ここが薬局やドラッグストアとの大きな違いです。

診療報酬の算定条件になっている場面。 病院が算定する加算や管理料の中には、施設基準として「一定の経験や研修を修了した薬剤師がいること」を求めるものがあります。たとえば感染対策向上加算では、感染制御チームに病院勤務の経験を持つ専任の薬剤師を置くことが求められます。がん患者への指導に関する管理料でも、化学療法に一定年数関わった経験のある薬剤師が指導することが条件になっています。

こうした条件を満たす薬剤師が辞めると、病院はその加算を算定できなくなるおそれがあります。求人票に「がん専門薬剤師歓迎」「感染制御の経験者優遇」と書かれているのは、単に意欲的な人を求めているのではなく、病院の収入を支える体制を守りたいという事情があるのです。

チームに入れるかどうかが決まる場面。 感染制御チーム、抗菌薬適正使用支援チーム、栄養サポートチーム、緩和ケアチームには、それぞれ薬剤師の枠があります。認定資格を持っていることが、チームのメンバーに選ばれる条件になっている病院もあります。チームに入ると、病棟を横断して抗菌薬の使い方を確認したり、医師に処方の提案をしたりと、調剤室の中にいるときとは全く違う仕事になります。

外来や化学療法室での役割。 がん化学療法を行う病院では、薬剤師が外来で患者さんに副作用の説明をしたり、レジメン(抗がん剤の投与計画)の審査をしたりしています。院外の保険薬局との連携も進んでおり、次のように副作用対策の資料を薬局向けに共有している病院もあります。

がん化学療法 副作用対策シート 本シートは、がん化学療法施行に伴う副作用対策を院内で標準化した一覧です。 実際の処方内容は、個々の患者さまの状態、状況により変更される事もありますのでご了承ください。 出典: hosp.itami.hyogo.jp

こうした標準化の資料を作り、院内の手順として整えるのは、がん領域の認定や専門を持つ薬剤師が中心になって進めることが多い仕事です。

給与への反映。 資格手当を出す病院もありますが、額は月に数千円〜2万円程度と控えめなことが多く、資格によって大きく年収が上がるわけではありません。むしろ、資格を持っていることで役職や専任のポストに就きやすくなり、結果として給与が上がるという形が一般的です。資格取得にかかる学会の年会費や研修会の参加費、更新のための単位の取得費用を病院が負担するかどうかのほうが、実質的な差になります。

資格が無い若手や中途は、薬剤部で何を任されるか

資格を持たずに病院の薬剤部に入った場合、最初の数年で何を任されるのかを見ておきましょう。多くの病院では、次のような順番で担当を広げていきます。

入職から半年ほど。 内服薬と外用薬の調剤、処方監査、注射薬の払い出しから始めます。病院独自の約束処方や、電子カルテでの処方の出し方、病棟ごとの定数配置薬の管理といった、病院特有のルールを覚える期間です。薬局から移った人でも、注射薬の配合変化や投与ルートの確認は初めてのことが多く、ここでつまずきやすくなります。

半年から2年目。 抗がん剤や高カロリー輸液の無菌調製、病棟での持参薬確認や服薬指導、当直に入ります。当直は、先輩と組んで何回か入ったあとに1人で入る形が多く、1人立ちの時期は病院の人員によって大きく変わります。

3年目以降。 担当病棟を持ち、チーム医療のカンファレンスに出るようになります。この頃から、関わった症例を記録し、領域別の認定に向けて準備を始める人が増えます。

資格が無いことで、最初の数年に任されない仕事はほとんどありません。逆に言えば、最初の数年の担当の回り方が、その後にどの資格を取れるかを決めます。無菌調製や病棟業務を早く経験できる病院と、調剤室に長く置かれる病院とでは、5年後に持っている症例の数が大きく違ってきます。

私が以前、病院の薬剤部で働く方に話を聞いたとき、「資格の条件の症例数を数え始めたのは、担当病棟を持ってからだった。調剤室にいた頃の経験は、症例としては一例も数えられなかった」と言われたことがあります。条件の数字だけを見ると先の話に思えますが、どの病棟を担当するか、どのチームに入るかで、症例が集まる速さはまったく違うということでした。

中途で入る場合は、年齢によって期待される速さが違います。30代で病院が初めての場合、若手と同じ研修から始めつつも、前職での経験を生かせる場面では早めに担当を任されることがあります。たとえば在宅医療で麻薬を扱っていた経験は、緩和ケアの領域で評価されやすくなります。病院薬剤師への転職全体の流れについては、病院薬剤師の転職ガイド|年収アップとスキルアップを両立させる方法【2026年版】で詳しく整理しています。

薬剤師免許が無くても、薬剤部で働ける仕事

「病院の薬剤部 資格」で検索する方の中には、薬剤師ではないけれど薬剤部で働けないかと考えている方もいます。結論から言えば、薬剤師免許が無くても薬剤部で働ける仕事はあります。ただし、任される範囲ははっきり線が引かれています。

薬剤助手(調剤補助)。 病院の薬剤部では、薬剤師の指示のもとで、薬品の発注や在庫の管理、納品された薬の棚入れ、定数配置薬の補充、分包機の準備や清掃、病棟への薬の搬送などを担当する助手を置いていることがあります。厚生労働省は2019年に、薬剤師の目が届く範囲で、一定の条件のもとに薬剤師以外の職員が調剤に関わる作業の一部を行える考え方を示しました。これにより、薬を棚から取りそろえる作業(ピッキング)などを助手が担う病院も増えています。

ただし、処方の内容を確認して判断する処方監査、最終的な監査、服薬指導、疑義照会、注射薬の混合といった、薬学的な判断を伴う仕事は薬剤師にしかできません。助手の仕事は、薬剤師がこうした仕事に時間を使えるように、周りの作業を引き受けることだと理解しておくとよいでしょう。

薬剤部の事務。 薬品の購入や価格の交渉、医薬品の採用に関する委員会の資料作り、診療報酬の請求に関わるデータの整理などを担う事務職を置く病院もあります。医療事務の知識があると、薬剤の算定や請求の流れを理解しやすくなります。医療事務の知識を示す資格としては、医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)があり、受付や会計、診療報酬の請求に関する知識を問う試験の内容や学び方を確認できます。

求人の探し方。 薬剤助手や薬剤部の事務は、薬剤師の求人とは別に、病院の職員募集のページや地域の求人サイトで「薬剤助手」「調剤補助」「薬局助手」といった名前で出ていることが多いです。応募の条件は特に定められていないことが多いものの、医療機関での勤務経験や、登録販売者、医療事務の資格を持つ人が優遇される傾向があります。

助手として働くことを入口に、薬学部への進学を考える人もいますが、薬剤師になるには6年制の薬学部を卒業して国家試験に合格する必要があります。助手の経験があとで薬剤師の資格に換算されることはないので、その点は分けて考える必要があります。

資格を取るまでにかかる時間と費用、更新の負担

病院の認定資格を目指すときに、見落とされやすいのが「取ったあとも続く負担」です。取得までの道のりと合わせて、どのくらいの時間とお金がかかるのかを見ておきます。

取得までの時間。 領域別の認定は、実務経験の年数に加えて、その領域に関わった年数が条件になるため、最短でも入職から5年前後かかるのが一般的です。症例の報告は、日々の病棟業務の中で関わった患者さんの記録を、決められた書式でまとめ直す作業になります。勤務時間中にまとめる時間が取れる病院は少なく、多くの人が勤務後や休日に作業しています。報告の数が数十例に及ぶ場合、1例ごとに経過と薬学的な介入の内容を書くため、まとめるだけで数か月かかることもあります。

費用。 学会や職能団体の年会費、研修会の参加費、認定試験の受験料、認定の申請料がかかります。学会の年会費は1団体あたり年に1万円前後のことが多く、研修会の参加費は1回あたり数千円から、全国規模の学術大会になると参加費に交通費と宿泊費が加わります。複数の学会に所属し、毎年の大会に参加すると、年に10万円を超えることも珍しくありません。病院がどこまで負担するかで、実際の持ち出しは大きく変わります。

更新の負担。 認定資格の多くは、数年ごとの更新制です。更新のためには、期間内に研修の単位を集め、症例や活動の実績を改めて報告する必要があります。資格を取ったあとに担当が変わり、その領域の症例に関われなくなると、更新の条件を満たせなくなることもあります。たとえば感染制御の認定を持っていても、感染制御チームから外れて調剤室の管理に回ると、更新に必要な活動の実績が積めなくなるおそれがあります。

家庭との両立。 学会や研修会は週末に開かれることが多く、子育てや介護をしている時期には参加が難しくなります。最近はオンラインで受講できる研修会が増え、以前より単位を集めやすくなりましたが、試験や症例の審査は決まった時期に行われます。取得の計画を立てるときは、その時期に自分の生活がどうなっていそうかも考えておくと、途中で止まってしまうのを防げます。

こうした負担を考えると、「とりあえず資格を取っておく」という考え方は、病院の認定資格には合いません。今の病院でどの領域の症例が集まるか、その領域で働き続けたいか、病院が費用と時間を支えてくれるかを確かめたうえで、1つに絞って取り組むのが現実的です。

資格を持って病院を移るとき、評価されるものと評価されないもの

認定資格を取ったあとに、別の病院へ移ることを考える人もいます。そのとき、資格がどう評価されるかは、移る先の病院の事情によって大きく変わります。

評価されやすいのは、移る先がその資格を必要としている場合です。 加算の算定に必要な専任者が足りない病院や、新たにがん化学療法の外来を立ち上げる病院では、該当する資格を持つ人は優先的に採用されます。給与の条件や役職についても交渉しやすく、専任のポストを最初から用意してもらえることもあります。

評価されにくいのは、移る先がその領域の診療をあまり行っていない場合です。 がん薬物療法の認定を持っていても、化学療法をほとんど行っていない慢性期の病院では、その知識を日々の仕事で使う場面が少なくなります。資格は履歴書の上では目立ちますが、移った先で症例に関われなければ、更新の条件を満たせなくなるおそれもあります。

資格より経験が見られる場面もあります。 面接では、資格名よりも「どんな症例にどう関わったか」「医師にどんな提案をして、どう受け入れられたか」を具体的に聞かれることが多いです。資格の取得のためにまとめた症例の報告は、そのまま面接で話す材料になります。どの症例で何を考えたかを、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。

病院から薬局や企業に移る場合。 病院で取った認定資格は、保険薬局や製薬会社でも一定の評価を受けます。特にがんや感染症の領域の知識は、専門的な医薬品を扱う薬局や、製薬会社の学術や医薬品情報の部門で求められることがあります。ただし、病院の加算の条件としての価値は外では失われるため、資格名そのものより、その領域でどれだけ深く関わってきたかを伝えることが大切になります。薬剤師の転職市場で選ばれやすい人の特徴については、薬剤師転職の厳しい現状と格差|選ばれる人と淘汰される人の違い【2026年版】で整理しています。

求人票の「資格」の書き方から読み取れること

最後に、求人票に書かれた資格の条件から、その薬剤部の事情を読み取る方法をまとめます。

「認定薬剤師歓迎」「専門薬剤師歓迎」とだけ書かれている場合。 必須ではなく、持っていれば評価するという意味です。資格が無くても応募して問題ありません。ただし、なぜ歓迎しているのかを面接で聞くと、薬剤部がどの領域を強化したいのかが分かります。

「がん薬物療法認定薬剤師」など資格名が具体的に書かれている場合。 その資格を持つ人が辞めた、あるいは辞める予定で、加算の算定を維持したいという事情が考えられます。該当する資格を持っていれば、条件の交渉がしやすくなります。持っていない場合でも、その領域の経験が評価される可能性があります。

「資格取得支援制度あり」と書かれている場合。 何を支援しているのかを確認します。学会の参加費や交通費を出す、研修会への参加を勤務扱いにする、資格手当を出す、更新費用を負担するなど、中身は病院によって大きく違います。「支援あり」とだけ書いて、実際には休みを取って自費で参加している病院もあるので、面接で具体的に聞くことが大切です。

在籍者の資格一覧が公開されている場合。 病院の公式サイトで、認定薬剤師や専門薬剤師の人数が年ごとに公開されていることがあります。数年前と比べて人数が増えていれば、資格を取れる環境が機能している証拠です。逆に、公開されている人数が減っていれば、資格を持つ人が外に出ていっている可能性があります。

研修施設の認定一覧。 日本病院薬剤師会や日本医療薬学会などの研修施設に認定されているかは、資格を取るうえで重要な条件になることがあります。取りたい資格の研修施設になっているかは、応募前に必ず確認しておきましょう。

資格と経験を、病院の外で生かすときに見えること

病院の薬剤部で身につけた資格と経験は、病院の中だけで使われるものではありません。最後に、市場の動きから見た資格の生かし方を整理しておきます。

ここ数年、薬学の専門知識を場所に縛られずに使う仕事が少しずつ増えています。医薬品情報の調査、医療系の記事の監修、製薬会社の資料の確認、医療系の翻訳などです。こうした仕事では、「がん薬物療法認定薬剤師」や「感染制御認定薬剤師」といった資格名が、その分野の知識を持つことを外に示す分かりやすい目印になります。在宅でできる薬剤師の仕事の中身や、求められるスキルについては、在宅薬剤師への転職ガイド|仕事内容・年収・求められるスキルの実態【2026年版】で詳しく紹介しています。

資格を取ったあとの働き方を考えるときには、キャリアの整理を専門家と一緒に行うのも1つの方法です。国家資格のキャリアコンサルタントは、職業の選択や能力の開発について相談に応じる専門職で、医療職の転職相談を受けている人もいます。

在宅ワークや業務委託の市場を長く見てきた立場から言えば、専門資格を持つ人が外の仕事で長く続くかどうかは、資格の数では決まりません。「この人は根拠を確かめてから答えてくれる」「締め切りまでに確認を終えてくれる」という信頼で、同じ依頼主から繰り返し声がかかる人が残っていきます。病院の薬剤部で身につく、添付文書や文献を確かめてから医師に返す習慣は、その信頼の土台そのものです。

運営者として見てきた限りでは、専門職ほど、仲介の手数料が大きく差し引かれる仕組みを割に合わないと感じて離れていきます。依頼する側と受ける側が直接やり取りでき、手数料0%で報酬がそのまま届く形であれば、依頼主は同じ予算で必要な分を頼めて、受け手の手取りも厚くなります。資格は病院の中で仕事の範囲を広げるものですが、同時に、病院の外で自分の知識を届けるときの名刺にもなります。

よくある質問

Q. 病院の薬剤部に入るのに認定薬剤師の資格は必要ですか?

必要ありません。応募の必須条件はほぼ薬剤師免許だけです。認定薬剤師の多くは、病院での実務経験の年数や症例の報告を取得条件に含んでいるため、病院に入ってから数年かけて取るのが一般的です。入る前に準備するなら、職場を問わず取得できる研修認定薬剤師の単位を集めておくと、学ぶ姿勢を示す材料になります。

Q. 病院で取りやすい資格は何ですか?

土台になるのは研修認定薬剤師や病院薬学認定薬剤師で、研修の単位を集めて申請するため比較的取りやすい資格です。がんや感染制御などの領域別の認定は、その病院が受け入れている患者によって症例の集まりやすさが変わります。取りたい資格があるなら、応募先にその資格を持つ薬剤師が在籍しているかを確認しておくと確実です。

Q. 資格を取ると給与は上がりますか?

資格手当を出す病院はありますが、月に数千円から2万円程度と控えめなことが多く、資格だけで年収が大きく変わるわけではありません。資格を持つことで専任のポストや役職に就きやすくなり、結果として給与が上がる形が一般的です。学会の参加費や更新費用を病院が負担するかどうかも、実質的な差として確認しておくとよいでしょう。

Q. 薬剤師免許が無くても病院の薬剤部で働けますか?

働けます。薬剤助手や調剤補助として、薬品の発注や在庫管理、棚入れ、病棟への搬送などを担当する職員を置く病院があります。薬剤部の事務職を置く病院もあります。ただし処方監査や服薬指導、疑義照会、注射薬の混合など薬学的な判断を伴う仕事は薬剤師にしかできません。医療機関での勤務経験や医療事務の資格があると優遇されやすくなります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月4日最終更新:2026年9月16日
中西 直美

この記事を書いた人

中西 直美@SOHO編集部

産業カウンセラー・キャリアコンサルタント

大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。

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