支店を出したときの届出|税務署と市町村に出すもの


この記事のポイント
- ✓支店設置届出は法務局だけで終わりません
- ✓登記の期限と登録免許税6万円
- ✓税務署の給与支払事務所等の開設届出書
支店を出すと決まった瞬間に、やることの数が一気に増えます。支店設置届出という言葉で調べている人の多くは、法務局に出す登記のことを指しているつもりで検索しているのですが、実際に動かす窓口は法務局だけではありません。結論から書くと、窓口は最大で5つあり、期限はそれぞれ違います。いちばん短いものは5日、いちばん長いもので2か月です。
ここでは法務局、税務署、都道府県税事務所、市区町村、年金事務所と労働基準監督署という順に、どこへ何をいつまでに出すのかを一次資料で確認しながら並べます。登記が要る場合と要らない場合の線引き、支店を作ると毎年いくら固定費が増えるのかという話も含めて、初めて支店を出す会社が順番に潰せる形にしてあります。
支店を出したときに動く窓口は5つある
先に全体像を置きます。支店を設置したときに関係しうる届出を、窓口ごとに並べるとこうなります。
| 窓口 | 出すもの | 期限 |
|---|---|---|
| 法務局 | 支店設置の登記 | 本店の所在地で2週間以内 |
| 税務署 | 給与支払事務所等の開設届出書 | 開設の日から1か月以内 |
| 都道府県税事務所 | 法人設立・設置届出書 | 東京都は15日以内(自治体ごとに異なる) |
| 市区町村 | 法人設立・設置届出書 | 各市町村が条例で定める期間内 |
| 年金事務所 | 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 事実発生から5日以内 |
| 労働基準監督署とハローワーク | 労働保険 保険関係成立届、雇用保険適用事業所設置届 | いずれも翌日から起算して10日以内 |
この表を見て「全部やらないといけないのか」と身構える必要はありません。実際には、支店の性格によって必要なものが変わります。人を置かず倉庫として借りただけなら保険の手続きは出てきませんし、給与の計算を本社でまとめてやるなら税務署の届出も不要になります。逆に、その場所で人を雇って給与も現地で計算するなら、上の全部が出てきます。
判断の分かれ目になるのは3つです。1つ目は登記上の「支店」にするかどうか。2つ目はその場所で給与の支払事務を扱うかどうか。3つ目はその場所に社会保険や雇用保険の対象になる人を置くかどうか。この3つを先に決めてから窓口を回ると、無駄な書類を作らずに済みます。
法務局。支店の登記は本店の管轄だけで済むようになった
支店設置の登記でまず押さえたいのは、2022年9月に手続きが軽くなったという点です。以前は本店の管轄法務局と支店の管轄法務局の両方に登記を出す必要があり、遠方に支店を出すと登記が二重になっていました。これが廃止されています。
令和4年9月1日から、支店・従たる事務所の所在地における登記が廃止されます。 したがって、同日から、支店の所在地における登記は不要となり、仮にこれを申請しても、商業登記法第24条第2号により却下されることとなります。 なお、本店の所在地における支店の設置、移転又は廃止等の登記は引き続き必要ですので、御注意ください。 出典: moj.go.jp
つまり今は、本店を管轄する法務局に1回出せば終わりです。支店の所在地の法務局へ行く必要はありません。ここを古い情報のまま準備すると、要らない登録免許税を用意してしまうので注意してください。
期限は、支店を設置したときから本店の所在地において2週間以内です。会社の登記は種類を問わず期間が法令で決まっていて、法務局はこう案内しています。
登記すべき期間内に登記を怠り、その後に登記申請をする場合であっても、そのことだけをもって申請が却下されることはありませんが、会社・法人の代表者に対して、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。 出典: houmukyoku.moj.go.jp
過料というのは、刑事罰ではない行政上のペナルティのことです。会社ではなく代表者個人に課されます。実務では、何か月も遅れると裁判所から通知が届くケースがあり、金額は遅れた期間に応じて決まります。2週間という期間は短いので、支店の物件を決めた段階で書類の準備を始めるのが現実的です。
出す書類と、かかるお金
法務局が公開している株式会社支店設置登記申請書の様式を見ると、必要なものは驚くほど少ないことが分かります。
・登録免許税は6万円(支店1か所あたり)
・添付書類は取締役会議事録が1通
・代理人に頼む場合のみ委任状が1通
登記の事由の欄には「支店設置」とだけ書き、登記すべき事項として「支店番号」「支店の所在地」「原因年月日(令和○年○月○日設置)」を記載します。取締役会を置いていない会社の場合は、取締役会議事録の代わりに取締役の決定書を付けます。
登録免許税は収入印紙で納めます。申請書に貼付台紙を付け、そこに6万円分の印紙を貼って提出する形です。印紙は法務局内の印紙売り場か郵便局で買えます。2か所同時に支店を出すなら12万円になります。ここは1か所ごとの課税なので、まとめて申請しても割引はありません。
申請方法は、窓口に持ち込む通常の書面申請のほかに、オンライン申請と、QRコード付き書面申請という方法があります。QRコード付き書面申請は、電子証明書を持っていなくても申請書をオンラインで作れる仕組みで、登記すべき事項の入力ミスが減るという利点があります。法務局は申請用総合ソフトを無料で配布しているので、費用面での負担はありません。
登記すべき事項は、CD-Rに記録して申請書と一緒に提出する方法も残っています。この場合はメモ帳などでテキスト形式のファイルを作り、申請書には「別添CD-Rのとおり」と書きます。紙に手書きするより確実ですが、いまから始めるならオンラインかQRコード付きのほうが手戻りが少ないでしょう。
申請書が複数ページにわたる場合は、収入印紙貼付台紙も含めて各ページのつづり目に契印を押します。契印には、申請書に押したのと同じ印鑑、つまり代表取締役が法務局に届け出ている印鑑か、代理人の印鑑を使います。ここで別の印鑑を使うと補正になります。細かい話ですが、補正が入ると受け取りに行く手間が1往復増えるので、押す前に確認してください。
取締役会がない会社は、何を添付するか
中小企業では取締役会を設置していない会社が多数あります。取締役が1人だけの会社、あるいは取締役が複数いても取締役会を置いていない会社です。この場合、添付するのは取締役会議事録ではありません。
取締役が2人以上いて取締役会を置いていないなら、支店の設置は取締役の過半数で決めるので、その決定を書き残した取締役の決定書を作って添付します。取締役が1人だけなら、その取締役が決めたことを記した決定書になります。定款で支店の設置を株主総会の決議事項にしている会社なら、株主総会議事録が必要です。自社の定款に支店に関する定めがあるかどうかを、書類を作る前に一度開いて確認してください。
どの形でも、書き残すべき中身は同じです。設置する支店の所在地と、設置する日。法務局の様式例では「当会社の支店を下記の地に設置すること」「支店設置の時期は、令和○年○月○日とする」という2点が決議事項として書かれています。この日付が、登記すべき事項の原因年月日になります。
そもそも登記が要る「支店」なのかを確かめる
ここで一度立ち止まる価値があります。会社法上の支店として登記するかどうかは、実は会社が選べる部分があるからです。
登記が必要になるのは、本店から離れた場所で、ある程度独立して取引の決定ができる営業所を置く場合です。逆に、本社の指示どおりに作業をするだけの事務所、倉庫、単なる連絡所、社員の常駐しないサテライトオフィスなどは、会社法上の支店には当たらないと整理されるのが一般的です。この場合は登記をしないので、登録免許税の6万円もかかりません。
ただし、登記をしないからといって税金や保険の届出まで不要になるわけではないのが、ここの落とし穴です。地方税の世界では「事務所又は事業所」という別の物差しを使います。東京都主税局は、その物差しをこう説明しています。人的設備とは事業活動に従事する自然人をいい、正規従業員だけでなく派遣労働者やアルバイト、パートタイマー、役員も含まれます。物的設備とは事業を行うために必要な土地、建物、機械設備、事務設備などを指します。そして、その場所での事業がある程度の期間続くことが必要で、2、3か月程度の一時的な現場事務所や仮小屋は該当しません。
人がいて、設備があって、そこで継続して事業をしている。この3つが揃えば、登記上の支店でなくても地方税の届出は必要になります。「登記しないから何も出さなくていい」と考えるのがいちばん危ない誤解です。
税務署に出すのは給与支払事務所等の開設届出書
支店を出したときに税務署へ出す書類は、会社設立のときとは違います。法人設立届出書はすでに出しているので、もう一度出すことはありません。代わりに出てくるのが、給与支払事務所等の開設届出書です。
これは、給与を払う事務を取り扱う場所を新しく作ったことを税務署に知らせる書類です。給与から所得税を天引きして国に納める仕組み(源泉徴収)の窓口がどこにあるかを、税務署が把握するために使われます。国税庁の手続案内はこうなっています。
[概要]給与の支払者が、国内において給与等の支払事務を取り扱う事務所等を開設、移転又は廃止した場合に、その旨を所轄税務署長に対して届け出る手続です。 [提出時期]開設、移転又は廃止の事実があった日から1か月以内に提出してください。 [手続根拠]所得税法230条、所得税法施行規則第99条 出典: nta.go.jp
判断のポイントは、支店に人がいるかどうかではなく、支店で給与の支払事務を扱うかどうかです。支店に従業員が10人いても、給与計算も振込も源泉徴収も本社の経理がまとめてやっているなら、給与支払事務所は本社1か所のままなので、この届出は要りません。逆に、支店に経理担当を置いて現地で給与を計算するなら、支店の所在地を管轄する税務署にこの届出を出します。
出す先は、給与支払事務所等の所在地を管轄する税務署です。本社の管轄税務署ではない点に注意してください。提出方法は、e-Taxソフトで作って送信するか、紙で作って持参または郵送します。税務署の開庁時間は8時30分から17時までですが、閉庁日でも時間外収受箱に投函すれば提出できます。
なお、支店ごとに源泉所得税を納めると事務が煩雑になるため、納期の特例や、源泉所得税の納付を本店にまとめる承認の仕組みを使う会社もあります。どの形が有利かは、支店の数と給与計算の体制で変わります。判断に迷う場合は、届出を出す前に税務署に電話で確認しておくと、後で納付先を変える手間が減ります。
本丸は都道府県と市区町村。期限は自治体ごとに違う
実務でいちばん漏れやすいのが、ここです。国の税金(法人税)は税務署の管轄ですが、地方の税金(法人住民税と法人事業税)は都道府県と市区町村の管轄で、届出も別々に出します。そして期限は国のルールではなく各自治体の条例で決まっているので、自治体ごとにばらばらです。
東京都の場合を見てみます。
【届出・申請】Q2 東京都以外に本店のある法人が、都内に初めて支店を設置する場合の手続について教えてください。 A2 事務所・事業所を設けた日から15日以内に、法人設立・設置届出書を所管の都税事務所(都税支所)・支庁に提出してください。 なお、都内に複数支店を設置する場合は、その中のひとつを「都内の主たる事務所等」として、主たる事務所等の所在する区を所管する都税事務所等へ届出をしてください。 出典: tax.metro.tokyo.lg.jp
期限は15日。法務局の2週間とほぼ同じ短さです。根拠は東京都都税条例第26条第1項で、添付するのは定款や規約等の写しと、支店の住所や設置日が確認できる書類です。都内に複数の支店を同時に出す場合は、そのうち1つを都内の代表として扱い、そこを管轄する都税事務所へまとめて届ければよい、という扱いになっています。
東京都が公開している法人設立・設置届出書の記載要領には、市町村分の扱いについても書かれています。
また、本店移転や支店等の設置により東京都内に初めて事務所等を設置した場合には、その設置の日以後 15 日以内(市町村においてはそれぞれの定める期間内)に法人設置届出書を納税地の所管都税事務所長及び市町村長に提出しなければならないことになっております 出典: tax.metro.tokyo.lg.jp
同じ記載要領には、市町村提出分は支店等の存する市町村ごとに各1通必要と書かれています。つまり3つの市に支店を出すなら、3つの市役所それぞれに1通ずつ出すことになります。まとめて1通で済ませることはできません。
添付書類の扱いも自治体で分かれます。東京都の記載要領では、定款等の写しは全機関に必要ですが、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)は税務署と都税事務所への提出分には不要とされています。市町村分では求められるのが通常です。ここも「1か所分の書類を人数分コピーすれば済む」わけではないので、提出先ごとに要否を確認してください。
届出を出さないと何が起きるか
地方税の届出を出し忘れても、すぐに罰金が来るわけではありません。ただ、後から確実に発覚します。法人税の申告書は税務署に出しますが、その情報は自治体側でも突き合わせが行われますし、登記した支店の情報も自治体は把握できます。
そして厄介なのは、遡って課税されることです。法人住民税の均等割は、事務所や事業所がある自治体ごとにかかり、赤字でも納める必要があります。東京都主税局は、赤字決算でも都内に事務所または事業所を有する法人は申告と納付が必要であり、均等割は決算の状況にかかわらず資本金等の額および従業者の数に応じて課税されると説明しています。届出を3年怠れば、3年分の均等割をまとめて納めることになります。
支店を1つ出すと毎年の固定費が増える、というのはこの均等割のことです。支店を出す判断をするときは、家賃や人件費だけでなく、この分の地方税も見込みに入れておくと、後から「思ったより重い」となりにくくなります。
保険の手続き。社会保険は5日、労働保険は10日
支店に人を置くなら、保険の届出が出てきます。ここが期限としてはいちばん短いので、物件の契約と同時に準備を始めるつもりでいてください。
健康保険と厚生年金保険
厚生年金保険は事業所単位で適用される仕組みです。日本年金機構は、適用事業所となるのは株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)であるとしています。つまり支店であっても、そこが独立した事業所として扱われるなら、支店単位で適用の手続きが必要になります。
新規適用届の期限は、日本年金機構の手続説明にこう書かれています。
この届出は、事業所が健康保険、厚生年金保険に適用されることになった場合、事実発生から 5 日以内に事業主が行わなければなりません。 出典: nenkin.go.jp
添付するのは法人の登記簿謄本です。ここで注意点が1つあります。同じ説明資料には、登記簿謄本と住民票は提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものを提出することと書かれています。支店設置の登記が終わってから取り寄せれば新しい証明書が手に入るので、順番としては登記を先に済ませるのが合理的です。また、事業所の所在地が登記上の所在地と異なる場合は、賃貸借契約書のコピーなど所在地が確認できるものを別に添付します。
支店の数が増えてくると、支店ごとに資格取得届や喪失届を出すのが負担になります。そのために一括適用という仕組みがあります。本社で人事と給与が集中的に管理されていて、事業主が同一であるなど一定の基準を満たす場合に、本社について支社等を含めた1つの適用事業所とすることを申請できる制度です。承認されると、本社と支社の間で人事異動があっても資格の取得や喪失の届出が不要になります。根拠は厚生年金保険法第8条の2と健康保険法第34条です。
ただし承認申請には、人事・労務・給与に関する事務の範囲とその方法、各種届書の作成過程、被保険者への通知方法を説明した文書の提出が必要で、それなりの準備が要ります。支店が1つか2つのうちは、素直に支店ごとに届け出たほうが早いでしょう。
労働保険と雇用保険
労働保険のほうは、労働基準監督署とハローワークの2か所を回ります。厚生労働省の案内では、一元適用事業(労災保険と雇用保険の保険料をまとめて扱う事業。農林漁業や建設業以外は通常こちら)の手続きは次の順番です。
・保険関係成立届は、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に所轄の労働基準監督署へ
・概算保険料申告書は、保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内
・雇用保険適用事業所設置届は、設置の日の翌日から起算して10日以内に所轄のハローワークへ
・雇用保険被保険者資格取得届は、資格取得の事実があった日の翌月10日まで
順番が決まっている点が重要です。労働基準監督署に保険関係成立届を出し、その受理印が押された事業主控えを持ってハローワークへ行きます。逆順では受け付けてもらえません。手続きを怠ったまま放置すると、行政庁の職権で保険料が認定決定され、遡って徴収されるうえ追徴金も取られます。さらに、故意または重大な過失で労災保険の保険関係成立届を出していない期間に労災が起きた場合は、給付額の一部を事業主から徴収する扱いになります。ここは金額が大きくなりうるところなので、後回しにしないでください。
なお、支店ごとに労働保険の手続きをすると事務が増えるため、継続事業の一括という仕組みも用意されています。本社で一括して労働保険料を申告納付する形にできるもので、こちらも所轄の労働局の認可が要ります。支店を増やす計画があるなら、最初の支店を出す段階で労働基準監督署に相談しておくと、後の切り替えが楽になります。
届出の前に決めておく4つのこと
窓口を回る前に、社内で固めておいたほうがいいことがあります。ここが曖昧なまま書類を作ると、後から全部出し直しになります。
1つ目は、設置日をいつにするかです。賃貸借契約の開始日、内装工事の完了日、実際に人が入った日は全部ずれます。登記の原因年月日、地方税の設置年月日、保険の事実発生日は、それぞれこの中のどれを採るかが変わります。取締役会で「支店設置の時期は令和○年○月○日とする」と決議して日付を固定しておくと、書類の間で日付がばらつきません。
2つ目は、登記上の支店にするかどうかです。前述のとおり、登記をすると6万円の登録免許税がかかり、移転や廃止のたびにまた登記が必要になります。数年で畳む可能性のある拠点なら、登記をしない事務所として扱う選択肢もあります。ただし取引先から登記簿の記載を求められる業種もあるので、営業上の必要性とセットで判断してください。
3つ目は、給与計算をどこでやるかです。ここが税務署への届出の要否を決めます。支店に経理を置くのか、本社で一括するのか。多くの会社は本社で一括します。
4つ目は、支店長に何をどこまで任せるかです。会社法上の支配人として登記すると、その支店の事業に関して包括的な代理権を持つことになります。契約の締結権限をどう設計するかは、登記の有無より実務に影響します。
これらを詰める作業は、書類を書く時間より長くかかります。逆に言えば、ここさえ決まっていれば書類自体は半日で作れます。
窓口に行かずにどこまで済ませられるか
支店を出す先が遠方だと、書類を持って回るだけで数日つぶれます。実際には、かなりの部分が窓口に行かずに済みます。
法務局への登記は、オンライン申請か、QRコード付き書面申請で郵送する形が選べます。税務署への給与支払事務所等の開設届出書は、e-Taxソフトで作って送信できます。紙で出す場合も持参ではなく郵送で構いませんし、閉庁日でも時間外収受箱への投函が認められています。
社会保険の新規適用届は、日本年金機構の案内で提出方法が電子申請、郵送、窓口持参の3つと示されています。労働保険と雇用保険も電子申請の窓口が用意されています。地方税の法人設立・設置届出書は自治体によって対応が分かれますが、東京都は電子申告の仕組みを持っています。
つまり、理屈のうえでは全部を遠隔で済ませられます。ただし1つだけ、現地に行かないと難しいものがあります。事業所の所在地が登記上の所在地と違う場合に求められる、賃貸借契約書のコピーのような所在地を確認できる書類です。物件の契約時にコピーを何部か取っておくと、後で慌てません。
もう1つ、証明書の有効期間にも気をつけてください。社会保険の添付書類として使う法人の登記簿謄本は、提出日からさかのぼって90日以内に発行されたものである必要があります。登記が終わった直後にまとめて数通取り寄せておくと、保険の手続きと市町村への届出の両方に回せます。登記事項証明書は法務局のホームページからオンラインで交付請求もできるので、窓口に並ぶ必要はありません。
支店を移す、畳むときにも同じ数だけ届出がある
見落とされがちですが、支店は出すときより畳むときのほうが手続きが分かりにくくなります。出すときは「新しく始める」という意識があるので調べますが、畳むときは業務の引き継ぎに気を取られて届出が後回しになりやすいからです。
登記上の支店なら、移転すれば支店移転の登記、廃止すれば支店廃止の登記を、いずれも本店の所在地でします。法務局は支店移転登記申請書の様式も公開しています。登録免許税がまたかかる点は、支店を登記するかどうかを決めるときの判断材料になります。
税務署へは、支店で給与支払事務を扱っていた場合に、給与支払事務所等の廃止の届出を出します。使う用紙は開設のときと同じで、開設・移転・廃止のどれかを選ぶ形式です。期限も同じく、廃止の事実があった日から1か月以内です。
地方税は、すでに届出をしている自治体に対して異動届出書を出します。東京都の記載要領にも、各機関に既に設立または設置の届出をしている法人がさらに支店を設置するなど既届出内容を変更する場合は異動届出書を使う、と書かれています。新規の設置届ではなく異動届、という使い分けです。
保険のほうは、支店に被保険者がいなくなる時点で資格喪失の手続きが必要になり、事業所そのものを畳むなら適用事業所の全喪の手続きになります。ここは従業員の社会保険が切れるタイミングに直結するので、業務の終了日と保険の切り替え日を先に決めてから動いてください。
畳む可能性が少しでもあるなら、出すときの記録を1か所にまとめておくのが結局いちばん効きます。どの窓口に、いつ、どの書類を出したのか。受付印のある控えをスキャンしてフォルダに入れておくだけで、数年後の作業が半日で終わります。
支店を出す前に、外に出せる仕事がないかを見直す
ここからは、在宅ワークと業務委託の市場を20年見てきた運営者の視点で、届出の手前にある判断について書きます。
支店設置の相談で多いのは、「この地域に営業拠点が要る」という前提が、実は数年前の商習慣のまま止まっているケースです。運営者として見てきた限りでは、拠点を出す理由として挙がるものの半分くらいは、物理的な場所がなくても成立するようになっています。地域の顧客対応、資料作成、経理、問い合わせ一次対応。このあたりは業務委託で外に出せる領域で、固定費の形も変わります。支店を1つ持つと、家賃と人件費に加えて、前述の均等割と、毎年の申告が自治体の数だけ増えます。届出の手間は初年度だけですが、申告は毎年続きます。
もう一つ、長く伸びている会社に共通しているのが、報酬の額面ではなく手取りの厚みで外注先を選んでいる点です。仲介が何割か抜く仕組みを通すと、同じ予算でも実際に手を動かす人に届く額は減ります。中間マージンが乗らない直接取引なら、発注する側は同じ予算でより多く頼め、受ける側は手数料0%で手取りが厚くなる。この構造を理解している会社ほど、拠点を増やすか外部の力を借りるかの比較を、額面ではなく実効コストで計算しています。
外に出しやすい領域を具体的に見るなら、いくつか目安があります。業務の棚卸しと効率化そのものを外部に頼むならAIコンサル・業務活用支援のお仕事が近い領域で、生成AIの導入設計から社内研修までを引き受ける仕事です。営業拠点の代わりにオンラインでの集客を強化するならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事が該当します。社内システムや顧客管理を作り直すならアプリケーション開発のお仕事の範囲です。
外注の予算を決めるときは、相場を先に見ておくと交渉が早く済みます。開発系ならソフトウェア作成者の年収・単価相場に全国平均と都道府県別の水準が並んでいます。資料作成や広報文を頼むなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場のほうが参考になります。地域ごとの水準差が見えるので、支店を置く候補地の人件費を概算するときにも使えます。
拠点を増やす判断そのものを外部の目で検証したいなら、経営の全体を見る資格を持つ人に相談する手もあります。中小企業診断士は、事業計画や資金繰りを含めて拠点戦略を組み立てられる国家資格です。医療や介護の分野で支店を出すなら、現場の事務フローを理解している人が要ります。医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)のような資格を持つ人材は、レセプト業務や窓口対応の立ち上げで力を発揮します。
補助金を使って拠点を立ち上げる場合は、対象になる経費の範囲を先に確認してください。設備の導入が絡むなら介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化のような制度の使い方が参考になりますし、送迎や車両が関わる業種なら送迎バス安全装置の設置補助金2026|介護施設の義務化対応と申請手順の申請手順が近い形です。拠点を持たずに人を増やす方向ならテレワーク 助成金 2026で扱っている制度のほうが合うこともあります。
届出そのものは、慣れれば1日で回れます。時間がかかるのは、その支店を本当に持つべきかという判断と、持つと決めた後に毎年発生し続ける固定費の見積もりのほうです。書類を書き始める前に、この2つを先に数字にしておくと、出したあとで後悔しません。
よくある質問
Q. 支店の所在地の法務局にも登記を出す必要がありますか?
必要ありません。2022年9月1日から支店・従たる事務所の所在地における登記は廃止され、申請しても商業登記法第24条第2号で却下されます。本店の所在地を管轄する法務局に、支店設置の登記を1回出せば完了です。登録免許税は支店1か所につき6万円で、添付書類は取締役会議事録(取締役会がない会社は取締役の決定書)です。
Q. 支店を登記しなければ、税金の届出もしなくてよいですか?
違います。登記上の支店かどうかと、地方税でいう事務所・事業所に当たるかどうかは別の物差しです。人がいて設備があり、そこで継続して事業をしている場所なら、登記の有無にかかわらず都道府県と市区町村への法人設立・設置届出書が必要になります。2、3か月程度の一時的な現場事務所は該当しないとされています。
Q. 支店を出すと毎年の負担はどれくらい増えますか?
法人住民税の均等割が、事務所等のある自治体ごとにかかります。赤字決算でも納める必要があり、金額は資本金等の額と従業者の数で決まります。加えて、支店のある自治体ごとに申告書を出す事務も毎年発生します。家賃と人件費だけで判断せず、この固定費を含めて採算を見積もってください。
Q. 期限をうっかり過ぎてしまったらどうすればよいですか?
まずは速やかに提出してください。登記は期限を過ぎても受け付けてもらえますが、代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。労働保険は職権で保険料が認定決定され、追徴金が加算されます。地方税は遡って課税されます。いずれも放置するほど不利になるので、気づいた時点で各窓口に電話して事情を伝え、指示に従うのが最短です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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