オーディオブックの朗読の仕事を受けるには|在宅収録の準備と案件の探し方

佐々木 美月
佐々木 美月
オーディオブックの朗読の仕事を受けるには|在宅収録の準備と案件の探し方

この記事のポイント

  • ✓オーディオブックの朗読の仕事を受けたい人向けに
  • ✓ナレーターの仕事の中身
  • ✓在宅収録に必要な機材と環境

オーディオブックの朗読の仕事に興味を持って調べはじめると、「声優の養成所を出ていないと無理なのか」「自宅で収録してよいのか」「どこで案件を探せばよいのか」と、最初の一歩で迷う人が多いはずです。耳で聴く読書が広がり、本を音声にする仕事は確かに増えていますが、その多くは「1冊を最後まで、同じ品質で読み切る」ことを求める、根気と準備のいる仕事です。

この記事では、オーディオブックの朗読がどのような仕事か、ほかのナレーションとどこが違うか、在宅で収録するための機材と環境、案件の探し方と応募の準備、契約で確かめておく権利と報酬の扱い、税金の基本までを順に整理します。結論を先に書くと、オーディオブックの朗読の仕事を受ける近道は、短いサンプル音声で「長く聴いても疲れない声と読み」を示せるようにし、自宅の収録環境を整えたうえで、制作会社のオーディションや在宅ワークの案件に継続して応募することです。

オーディオブックの朗読とはどんな仕事か

オーディオブックとは、書籍の内容を音声で読み上げ、耳で聴けるようにしたものです。小説やビジネス書、自己啓発書、語学の教材など、さまざまな本が音声になっています。朗読の仕事は、その本を1冊まるごと声で表現する役割を担います。

聴き手にとっての価値

オーディオブックが選ばれる理由について、ナレーターの仕事を紹介する記事では次のように説明されています。

紙の本を読むのが難しい方や、新しい読書体験を求めている方におすすめ。主なメリットは、移動中などでも手軽に読書できること、文字を追う手間がないため集中して内容を理解できることです。 出典: music-bunker.jp

通勤や家事のあいだに本を聴く人、目の疲れや視覚の障害で紙の本を読みにくい人にとって、オーディオブックは本に触れる大切な手段です。朗読する人の声と読み方は、その本の印象をそのまま左右します。

法律の上では「実演」にあたる

本を声に出して読むことは、著作権法の上では「実演」にあたります。著作権法は実演を次のように定めています。

実演 著作物を、演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、又はその他の方法により演ずること(これらに類する行為で、著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含む。)をいう。 出典: 著作権法 第2条(e-Gov法令検索)

実演を行う人は「実演家」と呼ばれ、自分の実演を録音する権利などを持ちます。つまり、朗読した音声には読み手としての権利が生まれるということです。この点は、後の「契約で確かめること」の節で詳しく扱います。

ほかのナレーションとの違い

声の仕事には、企業の紹介動画のナレーション、電話の自動音声、ゲームのキャラクターボイス、テレビ番組のナレーションなどがあります。オーディオブックの朗読は、その中でも独特の性格を持っています。

1本の長さがまったく違う

企業紹介の動画なら、原稿は数百字から数千字で、収録は1時間もかかりません。オーディオブックは1冊の本をすべて読むため、仕上がりの音声が数時間から十数時間に及びます。読み間違いや雑音を取り直す時間を含めると、収録だけで仕上がりの長さの数倍の時間がかかるのが普通です。

「聴き疲れしない」ことが何より求められる

短いナレーションでは、印象に残る声や張りのある読み方が好まれることがあります。オーディオブックでは、聴き手が何時間も耳を傾けるため、強すぎる抑揚や癖のある声はかえって疲れを招きます。求められるのは、落ち着いた一定の調子で、文章の意味がすっと頭に入ってくる読み方です。

1人で何役も演じ分ける

小説の朗読では、地の文に加えて、複数の登場人物のせりふを1人で読み分けます。声色を大きく変えるのではなく、話し方の速さや間、語尾の調子で人物を描き分ける技術が求められます。ビジネス書なら、図表の説明や箇条書きを、耳で聴いて分かる形に読み替える工夫も必要になります。

言葉の選び方に向き合う仕事でもある

朗読は書かれた文章をそのまま読む仕事ですが、実際には文章の解釈がたえず問われます。たとえば英語の小説の翻訳書で「彼女は微笑んだ」という一文を読むとき、それが安心の微笑みなのか、皮肉を含んだ微笑みなのかで、声の温度はまったく変わります。翻訳の仕事で「同じ英文でも、文脈しだいで訳語が変わる」ことを日々経験している人ほど、朗読の現場でも文章の前後を読み込む大切さを実感するはずです。文字の上では1つでも、声にすると選択肢がいくつもある。その選択を1冊を通して一貫させることが、朗読の難しさであり面白さです。

必要な技術と、身につける順番

オーディオブックの朗読に、必須の資格はありません。必要なのは、次のような技術です。

正確に読む力

まず求められるのは、読み間違えないことです。漢字の読み、固有名詞の読み、数字の読み方、アクセントを、収録の前にすべて確かめておきます。アクセント辞典を手元に用意し、迷う言葉は原稿に書き込んでおく習慣をつけると、取り直しの回数が大きく減ります。人名や地名、専門用語の読み方が分からない場合は、出版社や制作会社に確認を求めるのが基本です。

一定の調子で長く読み続ける力

1冊の収録は何日にも分かれます。初日と最終日で声の高さや速さ、マイクとの距離が変わると、聴き手は違和感を覚えます。毎回の収録の前に、前回の録音の最後の部分を聴き直して声の調子をそろえる、マイクとの距離を印で決めておく、といった工夫が欠かせません。

体と喉を整える力

長時間の朗読は喉に負担がかかります。こまめな水分補給、収録の前の発声練習、乾燥を防ぐ工夫は、声を仕事にする人の基本です。体調を崩して声が変わると、それまでの収録と音がそろわなくなるため、体調管理そのものが仕事の一部になります。

身につける順番の目安

未経験から始めるなら、次の順番で進めると無理がありません。

  1. 著作権の保護期間が切れた短編を選び、毎日10分の音読を録音して聴き直す
  2. 読み間違い、息の音、口の中の音(リップノイズ)がどこで出るかを書き出して直す
  3. 30分の作品を、日を分けて調子をそろえながら最後まで読み切る
  4. 1分前後のサンプル音声を、ジャンル別に2本から3本つくる
  5. 制作会社のオーディションや在宅の案件に応募する

練習の題材には、著作権の保護期間が終わった作品を選ぶと安心です。著作権法は、著作権の存続期間を原則として著作者の死後70年までとしています。保護期間中の作品を朗読して公開するには、著作者の許諾が必要になる点に注意します。著作権法は、言語の著作物を公に口述する権利、つまり人前で読み上げる権利を著作者に与えているからです。

在宅収録に必要な機材と環境

オーディオブックの案件には、スタジオに通って収録するものと、自宅で収録して音声ファイルを納品するものがあります。在宅で受けるなら、制作会社が求める品質の音を、自分の部屋でつくれるかどうかが分かれ目になります。

最低限そろえる機材

機材 役割 選ぶときの考え方
マイク 声を拾う 朗読ではコンデンサーマイクがよく使われる。USB接続のものも選択肢
オーディオインターフェース マイクの音をパソコンに取り込む USBマイクなら不要
モニターヘッドホン 自分の声と雑音を聴き分ける 音を正確に聴ける密閉型
ポップガード 「ぱ行」などの息の破裂音を和らげる マイクの前に取り付ける
マイクスタンド 距離を一定に保つ 机に振動が伝わりにくいもの
録音と編集のソフト 収録、取り直し、雑音の処理 無料のものから始められる

高価な機材をそろえる前に、手持ちの機材で録った音を何度も聴き直し、何が足りないのかを確かめることが大切です。多くの場合、音の質を左右するのは機材の値段よりも、部屋の響きと周りの雑音です。

部屋の響きと雑音を抑える

何もない部屋で声を出すと、壁や天井で音が跳ね返り、お風呂場のような響きが録音に混ざります。クローゼットの中で衣類に囲まれて録る、マイクの後ろに吸音材や毛布を掛ける、といった工夫で響きは大きく減らせます。

雑音の元になるのは、エアコンや冷蔵庫の動作音、外を走る車の音、パソコンのファンの音です。収録のときは家電を止める、交通量の少ない時間帯を選ぶ、パソコンをマイクから離すなど、身の回りの音を1つずつ消していきます。

スタジオ収録との違い

スタジオでの収録では、録音を担当する技術者やディレクターが同席し、読み間違いや雑音をその場で指摘してくれます。在宅収録では、こうした役割を自分1人で担うことになります。読む人であると同時に、録音を管理する人、仕上がりを確かめる人でもあるということです。その分、移動の時間がかからず、自分の都合のよい時間に収録できる利点があります。一方で、機材の不具合や部屋の雑音への対処も自分で行う必要があり、録音や編集の基本的な知識が欠かせません。在宅で受けるなら、声の練習と並行して、録音ソフトの操作や雑音の処理の方法を身につけておくことが、仕事の幅を広げる近道になります。

納品の形式は発注側の指定に従う

在宅収録の案件では、音声ファイルの形式、音量の基準、無音の長さ、章ごとのファイルの分け方などが細かく指定されることがあります。指定がある場合は必ずその通りに仕上げます。指定がない場合も、自己判断で圧縮した形式にせず、どの形式で納めればよいかを事前に確かめておくと、手戻りを防げます。

収録から納品までの作業の流れ

在宅で朗読の仕事を受けると、声を出して読む時間は作業全体の一部にすぎません。受注してから納品するまでには、次のような段階があります。

原稿の下読みと準備

原稿を受け取ったら、まず最後まで黙読して、作品の調子や登場人物の性格、話の山場をつかみます。そのうえで、読み方の分からない語、アクセントに迷う語、人名や地名を書き出し、辞典や発注者への問い合わせで確かめます。登場人物が多い小説なら、人物ごとに声の高さや話す速さの方針を表にしておくと、何日にも分かれる収録でも読み分けがぶれません。この準備を丁寧にするほど、収録中に止まる回数が減り、全体の作業時間が短くなります。

収録

収録は、1日に読む量を決めて、毎日同じ時間帯、同じ姿勢、同じマイクとの距離で進めます。喉の調子は時間帯で変わるため、朝に録った部分と夜に録った部分で声の響きが違ってしまうことがあります。読み間違えたときは、その文の頭から読み直し、あとで編集しやすいように、間違えた位置が分かる合図(手を叩く、少し長めの間を空けるなど)を入れておくと便利です。

編集と仕上げ

収録が終わったら、読み間違えた部分を取り除き、正しく読んだ部分をつなげていきます。そのうえで、息の音や口の中の音、紙をめくる音、外の雑音などを1つずつ確かめて処理します。章ごとの音量をそろえ、冒頭と末尾の無音の長さを指定に合わせ、ファイル名の付け方も発注者の決まりに従います。編集にかかる時間は、収録時間と同じかそれ以上になることも珍しくありません。

確認と納品

仕上げた音声は、原稿と照らし合わせながら最初から最後まで聴き直します。読み飛ばしや読み間違いが残っていないか、つなぎ目が不自然でないかを確かめてから納品します。納品後に発注者から修正の依頼が来ることを見込んで、元の録音データは一定期間保存しておきます。

作業時間の見積もり方

このように、朗読の仕事は「下読み」「収録」「編集」「確認」の4段階に分かれ、仕上がりの音声の長さの何倍もの時間がかかります。初めて受ける案件では、短い章で実際にかかった時間を測り、それをもとに全体の時間を見積もると、納期に無理のない計画を立てられます。報酬を作業時間で割った額が、ほかの仕事と比べて見合うかどうかも、この見積もりで判断できます。

つまずきやすい失敗と防ぎ方

朗読の仕事を始めたばかりの人がつまずきやすい点と、その防ぎ方を整理しておきます。

声の調子が日によって変わる

体調や天気、収録の時間帯で、声の高さや響きは変わります。前回の収録の最後の数分を聴いてから始める、収録の前の発声練習を毎回同じ内容にする、といった決まりをつくると、調子をそろえやすくなります。

雑音に気づかないまま納品してしまう

自分の耳は、部屋の雑音に慣れてしまいます。エアコンの低い音や、遠くを走る車の音は、録音を聴き直しても気づきにくいものです。ヘッドホンで音量を上げて無音の部分を聴く、録音の波形を見て雑音の山がないか確かめる、といった方法で、耳だけに頼らない確認を習慣にします。

納期の見積もりが甘くなる

前の節で書いたとおり、朗読は仕上がりの長さの何倍もの時間がかかります。最初の案件で納期を短く約束してしまい、編集の時間が足りなくなる失敗はよくあります。受注の前に、短い範囲で実際の作業時間を測ってから納期を決めるのが安全です。

録音図書の音訳との違い

本を音声にする活動には、オーディオブックのほかに、視覚に障害のある人などに向けた録音図書をつくる「音訳」があります。音訳とは、目で読むことが難しい人のために、本の内容を正確に音声へ置き換える活動のことです。

著作権法は、視覚障害者等の福祉に関する事業を行う一定の団体が、公表された著作物の文字を音声にして複製することなどを、必要と認められる限度で認めています。点字図書館や公共図書館の一部で行われている録音図書づくりは、この規定にもとづくものです。

音訳では、オーディオブックのような演技や感情表現よりも、書かれている内容を正確に、聴き手の解釈を邪魔しない形で伝えることが重んじられます。図や写真の説明を言葉で補う技術も求められます。多くはボランティアとして行われる活動ですが、正確に読む力、読み方を調べる習慣、長い文章を一定の調子で読み続ける力は、オーディオブックの朗読とも共通しています。地域の図書館や点字図書館が開く音訳者の養成講座で基礎を学び、その経験を朗読の仕事に生かす人もいます。

案件の探し方

オーディオブックの朗読の仕事は、いくつかの経路で見つけられます。経路ごとに、求められる準備が違います。

制作会社のオーディション

オーディオブックを制作する会社や、声の仕事を扱う事務所は、ナレーターのオーディションを定期的に行っています。サンプル音声を送って選考を受け、登録されると、作品ごとに声をかけてもらえる仕組みが一般的です。応募の条件として、宅録の環境があること、指定された原稿を読んだ音声を提出することが求められる場合があります。

在宅ワークの仲介サイト

在宅ワークの仲介サイトやクラウドソーシングには、朗読やナレーションの案件が出ることがあります。数分程度の短い朗読から、電子書籍1冊の音声化まで、規模はさまざまです。初めのうちは短い案件で実績を積み、発注者からの評価を得てから、長い作品に挑むのが現実的な順番です。

求人サイトの雇用の募集

求人サイトでは、オーディオブックや音声コンテンツを扱う会社の正社員やアルバイトの募集が見つかることもあります。ただし、「オーディオブック」で検索して出てくる求人の多くは、制作の進行管理、営業、配信の運用といった周辺の仕事です。朗読そのものを担う募集かどうか、仕事の内容をよく読んで見分けます。

応募の前に注意したい募集

声の仕事の募集の中には、「誰でも声の仕事ができる」とうたって高額な講座やレッスンの受講を勧めるものもあります。仕事を紹介すると言いながら、先にお金を払わせる形の募集には慎重になる必要があります。厚生労働省は、フリーランスに仕事を委託する事業者向けの案内で、SNSなどを通じて募集する際には氏名や名称、住所、連絡先、業務の内容、業務に従事する場所、報酬を記載する必要があると示しています(厚生労働省 フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ)。募集の段階でこうした基本の情報が書かれていない案件は、応募の前に問い合わせて確かめるのが安全です。

応募に使うサンプル音声のつくり方

オーディションでも在宅の案件でも、最初に見られるのはサンプル音声です。数十秒から数分の音声で、「この人に1冊を任せられるか」が判断されます。

ジャンル別に用意する

サンプルは1本ではなく、ジャンル別に2本から3本用意しておくと応募の幅が広がります。たとえば、落ち着いた調子のビジネス書、会話の多い小説、子ども向けの物語といった組み合わせです。それぞれ1分前後に収め、冒頭の数秒で声の印象が伝わるようにします。

聴き手の立場で仕上げる

サンプルを聴く担当者は、多くの応募者の音声を続けて聴いています。冒頭に長い無音がある、音量が小さすぎる、雑音が目立つ、といった音声は、内容を聴く前に外されてしまうことがあります。音量をそろえ、不要な無音を整え、ヘッドホンとスピーカーの両方で聴き直してから提出します。

経歴の書き方

経歴の欄には、声の仕事の実績だけでなく、朗読に生きる経験を書きます。読み聞かせのボランティア、放送部や演劇の経験、語学や翻訳の仕事で文章を読み込んできた経験などは、朗読の仕事と結びつけて説明できます。宅録の機材と環境、対応できる収録時間の目安、納品までの日数の目安も書いておくと、発注する側が判断しやすくなります。

ジャンルごとに求められる読み方

オーディオブックと一口に言っても、本のジャンルによって求められる読み方は大きく違います。自分の声と読み方がどのジャンルに合うかを知っておくと、応募先を絞りやすくなります。

ビジネス書と実用書

ビジネス書や実用書では、内容を正確に、分かりやすく伝えることが最優先です。感情を込めすぎず、要点の前でわずかに間を取る、数字や固有名詞をはっきり発音する、といった工夫が求められます。箇条書きや図表の多い本では、見出しと本文の区別が耳で分かるように、読む速さや間の長さを変えます。落ち着いた低めの声や、ニュースを読むような明瞭な発音が強みになるジャンルです。

小説

小説では、地の文と会話文の読み分け、登場人物ごとの話し方の違い、場面の緊張や静けさを声で表す力が問われます。ただし、演技を大きくしすぎると聴き手が物語に入り込みにくくなるため、抑えた表現の中で人物を描き分ける加減が大切です。長編では、物語の後半になって人物の話し方が変わってしまわないよう、最初に決めた方針を最後まで守ります。

児童書と絵本

子ども向けの本では、ゆっくりと、はっきりした発音で、場面の楽しさが伝わる読み方が好まれます。擬音語や繰り返しの言葉を生き生きと読む力も求められます。読み聞かせの経験がある人は、その経験がそのまま強みになるジャンルです。

語学の教材

語学の教材の音声では、外国語と日本語を交互に読む、指定された速さで読む、といった正確さが重視されます。外国語の発音に自信がある人には、日本語の部分だけでなく、外国語の例文の読み上げを任されることもあります。英語の例文を読むときは、単語ごとの発音だけでなく、文全体の抑揚が自然に聞こえるかどうかが評価の分かれ目になります。

副業として続けるための時間の使い方

会社員や家事の合間に朗読の仕事を受ける場合、時間の使い方が続けられるかどうかを左右します。収録には静かな時間が欠かせないため、家族が寝たあとの夜や、外の交通量が少ない早朝に収録の時間を固定する人が多いようです。一方で、下読みや読み方の確認は、通勤の電車の中などの細切れの時間でも進められます。

声を使う仕事は、喉を休める日を予定に入れておくことも大切です。毎日長時間の収録を続けると、声がかすれて取り直しが増え、かえって時間がかかります。1週間の予定の中に、収録する日、編集する日、喉を休める日を分けて組み込むと、無理なく続けられます。

契約で確かめること

朗読の仕事を受けるときは、報酬の額だけでなく、権利と仕事の範囲を契約で確かめておくことが大切です。

報酬の決まり方

オーディオブックの朗読の報酬は、仕上がりの音声の長さで決まる形、作品1冊ごとに決まる形、原稿の文字数で決まる形などがあります。いずれの場合も、取り直しや修正が何回まで報酬に含まれるのか、読み間違いの修正と演出の変更による取り直しを区別するのかを、事前に確かめておきます。数時間に及ぶ作品で取り直しの条件があいまいだと、作業の時間が報酬に見合わなくなることがあるからです。

録音した音声の権利

前の節で触れたとおり、朗読した人は実演家として、自分の実演を録音する権利などを持ちます。オーディオブックの制作では、録音した音声を発注側が配信や販売に使えるよう、契約で権利の扱いを決めるのが一般的です。契約書では、音声をどの媒体で、どの期間、どの地域で使えるのか、別の作品や広告に転用されることがあるのかを確かめます。

音声の別の使い道

近年は、収録した声のデータを、音声合成の学習に使うことの是非が話題になっています。自分の声が、自分の知らないところで別の目的に使われることを避けたいなら、契約の段階で、納品した音声をほかの目的に使わないことを確認しておきます。契約書の文言で判断がつかない場合は、発注者に直接問い合わせ、回答を文書で残しておくと安心です。

フリーランスとして守られること

会社に雇われずに仕事を受ける場合、2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)が関わってきます。この法律は、仕事を発注する事業者に、業務の内容や報酬の額、支払期日などを書面や電子メールで明示することなどを求めています。条件が口頭だけで伝えられたときは、メールなどで送ってもらうよう頼むのが自分を守る第一歩です。

報酬と税金の基本

朗読の仕事で収入を得たら、税金の扱いも知っておく必要があります。

源泉徴収された額が振り込まれることがある

個人に支払われる報酬の中には、支払う側が所得税を差し引いてから振り込むことが決まっているものがあります。国税庁は、源泉徴収が必要な報酬・料金等の例として、原稿料や講演料、「映画、演劇その他芸能(音楽、舞踊、漫才等)、テレビジョン放送等の出演等の報酬・料金」などを挙げています(国税庁 No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは)。税率は、1回の支払金額が100万円以下の部分について10.21%です。朗読の報酬が源泉徴収の対象になるかどうかは、仕事の内容や契約の形で判断が分かれることがあるため、支払明細で差し引かれているかを確かめ、分からなければ発注者や税務署に確認します。

確定申告が必要になる場合

会社員が副業として朗読の仕事を受ける場合、給与所得以外の所得の合計が20万円を超えると、確定申告が必要になります。所得とは、受け取った報酬から、機材や通信費などの必要経費を差し引いた額のことです。源泉徴収された税金は、確定申告で精算されるため、払いすぎた分が戻ることもあります。なお、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別に必要になることがあるため、住んでいる市区町村の窓口で確認します。

経費になるもの

在宅収録のためにそろえたマイクやヘッドホン、吸音材、録音ソフト、サンプル音声をつくるための費用は、仕事のための支出として必要経費になりうるものです。一方で、私生活と共用するパソコンや部屋の家賃は、仕事に使った割合で分けて考える必要があります。どこまでを経費にできるかは事情によって変わるため、領収書を保存し、判断に迷うものは税務署で確認します。

収入と支出の記録は、仕事を始めた月からつけておくことをおすすめします。いつ、どの発注者から、いくらの報酬を受け取ったか、何にいくら使ったかを表にしておけば、確定申告の時期に慌てずに済みます。支払明細や請求書の控えも、日付順にまとめて保存しておきます。

声の仕事と文章の仕事をつなげる

オーディオブックの朗読は、声だけで完結する仕事ではありません。原稿を読み込み、意味を理解し、聴き手に届く形に置き換える点で、文章の仕事と深くつながっています。

文章を書く仕事との組み合わせ

朗読の仕事は、作品ごとに依頼が来る形が多く、受注の量に波があります。その波を埋める方法として、文章を書く仕事を組み合わせる人もいます。本を読み込む力、言葉の響きに敏感であることは、記事や台本を書く仕事でもそのまま生きます。書き手の収入の相場は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確かめられます。

台本や原稿を整える仕事

オーディオブックの制作では、紙の本をそのまま読むと耳で分かりにくい箇所を、聴いて分かる形に直す作業が発生することがあります。図表の説明を言葉に置き換える、読み方の難しい語に読みがなを振る、といった作業です。文章を整える力を体系的に身につけたい人には、文書の書き方を問う検定が目安になります。試験の範囲はビジネス文書検定で確かめられます。

在宅ワーク市場から見た朗読の仕事

最後に、在宅ワークの案件の動きを長く見てきた立場から、朗読の仕事の続け方について考えます。

声の仕事の案件を見ていると、選ばれ続ける人には共通点があります。それは、声の良さそのものより「安心して任せられる」という評価を積み重ねていることです。指定どおりの形式で、約束の日までに、読み間違いのない音声を納める。疑問があれば収録の前に確かめる。こうした当たり前のことを、1冊を通して崩さない人に、次の作品の依頼が集まります。長く続く人ほど、単発の作業ではなく、発注者との関係づくりに時間を使っています。

もう1つ見えてくるのは、仲介の手数料がかからない直接の取引が、双方にとって得のある形だということです。発注する側は同じ予算でより多くの作品を頼め、受ける側は報酬の手取りが厚くなります。朗読のように1本の作業時間が長い仕事ほど、手取りの差は働き方の続けやすさに直結します。声の仕事と並んで、在宅でどのような分野の仕事が増えているかは、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で分野ごとの仕事内容を整理しているので、自分の強みと組み合わせられる仕事を探す材料にしてください。

よくある質問

Q. オーディオブックの朗読の仕事は未経験でも受けられますか?

必須の資格はなく、未経験から始める人もいます。ただし、1冊を最後まで同じ調子で読み切る力と、雑音の少ない音声を自宅で録れる環境が求められます。著作権の保護期間が終わった作品で毎日録音と聴き直しを続け、ジャンル別のサンプル音声を用意してから、制作会社のオーディションや在宅の案件に応募するのが現実的な順番です。

Q. 自宅で収録するにはどんな機材が必要ですか?

マイク、オーディオインターフェース(USBマイクなら不要)、モニターヘッドホン、ポップガード、マイクスタンド、録音と編集のソフトが基本です。音の質は機材の値段より部屋の響きと周りの雑音で決まることが多いため、クローゼットの中で録る、吸音材を使う、家電を止めるといった環境づくりを先に進めると効果が出やすくなります。

Q. 朗読した音声の権利はどうなりますか?

本を声で読むことは著作権法上の実演にあたり、読み手は実演家として録音などに関する権利を持ちます。オーディオブックの制作では、発注側が配信や販売に使えるよう契約で権利の扱いを決めるのが一般的です。使える媒体や期間、別の目的への転用の有無を契約書で確かめ、不明な点は文書で回答をもらっておきます。

Q. 副業で朗読の報酬を得たら確定申告は必要ですか?

会社員の場合、給与以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要になります。所得は報酬から機材費などの必要経費を差し引いた額です。報酬から所得税が源泉徴収されている場合は、確定申告で精算されます。所得税の申告が不要でも住民税の申告は別に必要なことがあるため、住んでいる市区町村で確認します。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月23日最終更新:2026年10月10日
佐々木 美月

この記事を書いた人

佐々木 美月@SOHO編集部

通訳・翻訳フリーランス

外資系メーカーで通訳として8年間勤務後、フリーランスに転身。TOEIC 980点、英検1級、TOEFL 110点。語学資格の活かし方や翻訳フリーランスの実務について発信しています。

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