決算書を承認した議事録|承認が要る会社と要らない会社


この記事のポイント
- ✓株主総会議事録の決算承認は
- ✓ほとんどの会社で毎年必ず必要です
- ✓事業報告は報告という違い
結論から書きます。決算書を株主総会で承認する手続きは、ほとんどの中小企業で毎年必ず必要です。承認が要らないのは、会計監査人を置いていて一定の要件を満たす会社だけで、これは上場企業や大会社の話です。株主が社長ひとりの会社でも、承認の手続きと株主総会議事録の決算承認の記録は省けません。
そして、ここを何年も飛ばしている会社が実際にあります。税理士が申告書を作り、社長が押印して提出する。その流れの中に株主総会が入っていない。これで回ってしまうため、指摘されるまで気づかないのです。
この記事では、承認が必要な理由、計算書類と事業報告の扱いの違い、議事録の文例、株主総会を開かずに済ませる方法、そして議事録を作っていない会社が後で困る場面を順に見ていきます。
決算の承認は「定時株主総会」で行う
会社は、毎事業年度が終わったあと一定の時期に、定時株主総会を招集しなければなりません。3月決算の会社が6月に総会を開くのは、この決まりに従った結果です。
定時株主総会でやることは、大きく3つあります。計算書類の承認。事業報告の報告。そして役員の任期が来ていれば役員の選任です。配当を出す会社なら剰余金の処分も加わります。
ここで扱う計算書類とは、貸借対照表、損益計算書、そのほか会社の財産と損益の状況を示すために必要なものを指します。株主資本等変動計算書と個別注記表が含まれます。会計の世界で「決算書」と呼ばれているものと、おおむね同じです。
そして計算書類は、定時株主総会の承認を受けなければならないと定められています。「報告すればよい」ではなく「承認を受ける」です。株主が1人しかいない会社でも、この構造は変わりません。承認する人と承認される人が同じ人になるだけです。
なぜ承認が必要なのか。計算書類は、会社の財産が今どうなっているかを株主に示す書類だからです。株主は出資した立場として、自分のお金がどう使われ、どれだけ残っているかを確認する権利を持っています。経営陣が作った数字を、株主が承認する。この構造が会社法の設計です。
承認が要る会社と、報告で足りる会社
タイトルにある「承認が要る会社と要らない会社」の分かれ目を、はっきりさせます。
原則は、すべての株式会社で計算書類の承認が必要です。
例外は1つだけあります。会計監査人を置いている会社で、取締役会の承認を受けた計算書類が、法令と定款に従って会社の財産と損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件に該当する場合です。この場合、承認の規定は適用されず、取締役は計算書類の内容を定時株主総会に報告すれば足ります。
会計監査人とは、公認会計士または監査法人のことです。大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)や、上場している会社などが置いています。中小企業が任意で置くことはできますが、実際にはほとんどありません。
つまり、この記事を読んでいる会社のほぼすべてで、計算書類の承認は必要です。「うちは小さいから」「株主が自分だけだから」は理由になりません。
もう1つ確認しておきたいのが、取締役会を置いている会社の追加の手続きです。取締役会設置会社では、計算書類と事業報告、そしてそれらの附属明細書は、株主総会に出す前に取締役会の承認を受けなければなりません。監査役を置いている会社なら、その前に監査役の監査も入ります。
まとめると、手順は会社の形で次のように変わります。取締役会も監査役も置いていない会社は、計算書類を作って定時株主総会で承認する。監査役を置いている会社は、監査役の監査を挟む。取締役会を置いている会社は、さらに取締役会の承認を挟む。会計監査人を置いている会社は、会計監査人の監査も入り、要件を満たせば株主総会は報告で足りる。
計算書類と事業報告は扱いが違う
ここが実務で最も混同される部分です。
計算書類は「承認」を受けます。事業報告は「報告」をします。条文の書き分けは明確で、取締役は事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならないと定められています。承認ではありません。
議事録の書き方もこれに従います。計算書類については「承認可決された」と書き、事業報告については「報告した」「議長が報告し、出席株主はこれを了承した」と書きます。事業報告まで「承認可決」と書いてある議事録は、法律の構造と合っていません。実害が出る場面は限られますが、金融機関や専門家が見れば、テンプレートをそのまま埋めただけの書類だと分かります。
附属明細書も、株主総会に提出する対象には含まれません。作成と備置きの義務はありますが、総会に出すのは計算書類と事業報告です。
事業報告に何を書くかは法務省令で決まっていますが、公開会社でない中小企業では記載事項が絞られています。事業の経過と成果、主要な事業内容、主要な営業所の状況、従業員の状況、株式の状況、役員の状況といった項目です。数ページで足ります。「作っていない」という会社が多い書類ですが、作成義務がある点は計算書類と同じです。
株主総会議事録の文例
取締役会を置いていない会社が、定時株主総会で計算書類を承認する場合の骨格です。会社名・日付・氏名は自社のものに置き換えてください。
定時株主総会議事録
1. 日時 2026年6月25日 午前10時00分
2. 場所 東京都渋谷区○○1丁目2番3号 当会社本店
3. 出席者
発行済株式の総数 100株
議決権を行使できる株主の総数 2名
議決権を行使できる株主の議決権の数 100個
出席株主数(委任状による者を含む) 2名
出席株主の議決権の数 100個
4. 出席役員 代表取締役 ○○ ○○
取締役 △△ △△
5. 議長 代表取締役 ○○ ○○
6. 議事録作成者 代表取締役 ○○ ○○
議長は、定刻に開会を宣し、上記のとおり定足数を満たしている旨を述べ、
議案の審議に入った。
報告事項 第12期(2025年4月1日から2026年3月31日まで)
事業報告の内容報告の件
議長は、第12期の事業報告の内容を詳細に報告し、
出席株主はこれを了承した。
第1号議案 第12期(2025年4月1日から2026年3月31日まで)
計算書類承認の件
議長は、第12期の計算書類(貸借対照表、損益計算書、
株主資本等変動計算書および個別注記表)を提出し、
その内容を説明したうえで、承認を求めた。
議長がこの議案の賛否を議場に諮ったところ、
出席株主の議決権の過半数の賛成をもって、原案どおり承認可決された。
以上をもって本日の議案の全部を終了したので、議長は閉会を宣した。
上記の決議を明確にするため、この議事録を作成する。
2026年6月25日
株式会社○○ 定時株主総会
議長 代表取締役 ○○ ○○ 印
議事録に書く項目は法務省令で決まっています。開いた日時と場所(オンラインで参加した人がいればその方法)、議事の経過の要領とその結果、法定の場面で述べられた意見や発言があればその概要、出席した取締役・会計参与・監査役・会計監査人の氏名、議長がいれば議長の氏名、議事録を作った取締役の氏名。この枠を埋めれば形式としては足ります。
計算書類そのものを議事録に添付する必要はありませんが、実務では別紙として綴じておくのが一般的です。何を承認したのかが数年後に分かる状態にしておくためです。
開く時期と、基準日という落とし穴
定時株主総会をいつ開くかは、法律で日付が指定されているわけではありません。「毎事業年度の終了後一定の時期」と定められているだけです。
では、なぜ3月決算の会社が6月に開くのか。理由は基準日にあります。
会社は、一定の日を基準日と定めて、その日に株主名簿に載っている株主を権利行使できる人と決めることができます。そして、基準日株主が権利を行使できるのは、基準日から3か月以内に限られます。多くの会社は定款で「毎年3月31日の最終の株主を、その事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする」と定めています。この場合、6月末までに総会を開かなければなりません。
自社の定款に基準日の定めがあるなら、その日から3か月という制限がかかります。定めがないなら、この制限は働きません。ただし、税務の申告期限が別に走っています。
法人税の確定申告は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。定款で「3か月以内に定時株主総会を開く」と定めている会社などは、申告期限を延長する特例の申請ができますが、申請には事業年度終了の日の翌日から45日以内という期限があります。何も手当てをしていない会社は、2か月以内に申告することになるため、それまでに決算を確定させる必要があります。
つまり、実務上の順番はこうなります。決算を締める。計算書類と事業報告を作る。定時株主総会で承認する。申告書を提出する。この順番が崩れて、申告書を先に出してから後付けで議事録を作る会社が多いのですが、本来の順序は承認が先です。
招集の通知も忘れないでください。取締役会を置いていない非公開会社では、総会の1週間前までに通知を出すのが原則で、定款でこれを短縮できます。株主全員の同意があれば、招集の手続き自体を省略することもできます。
株主総会を開かずに承認する方法
株主が社長ひとり、あるいは家族だけという会社では、全員を集めて会議を開く意味が薄くなります。こうした会社のために、会社法には決議を省略する仕組みがあります。
取締役または株主が提案し、議決権を持つ株主の全員が書面または電子的な記録で同意の意思を示せば、その提案を可決する株主総会の決議があったものとみなされます。計算書類の承認も、この方法で行えます。
定時株主総会に特有の規定もあります。定時株主総会の目的である事項のすべてについて提案を可決する決議があったものとみなされた場合には、その時に定時株主総会が終結したものとみなされます。つまり、会議を開かなくても「定時株主総会が終わった」ことになります。
このとき作る書類は通常の議事録と中身が変わります。決議があったものとみなされた事項の内容、提案をした人の氏名、決議があったとみなされた日、議事録を作った取締役の氏名。この4つが中心です。日時や場所は書きません。会議を開いていないからです。
同意を示す書面は、決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く義務があります。
ただし、事業報告の扱いには注意が要ります。事業報告は決議ではなく報告なので、決議の省略とは別の仕組みが用意されています。株主の全員に報告すべき事項を通知し、全員がその事項を総会に報告することを要しないことに同意すれば、報告があったものとみなされます。議事録には、報告があったものとみなされた事項の内容、みなされた日、議事録を作った取締役の氏名を書きます。
手間としては、提案書と同意書と議事録で紙3枚です。株主が1人なら30分で終わります。「会議を開く時間がない」は、手続きを省く理由にはなりません。
承認のあとに残る決算公告の義務
承認して終わりではありません。株式会社は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表を公告しなければなりません。大会社なら損益計算書も対象です。
公告の方法は定款で決めます。官報、日刊新聞紙、電子公告のいずれかです。官報または日刊新聞紙で公告する会社は、貸借対照表の要旨を載せれば足ります。
もう1つ、費用のかからない方法があります。官報または日刊新聞紙を公告方法としている会社は、貸借対照表の内容を、定時株主総会の終結の日後5年を経過する日までの間、継続して電子的な方法で誰でも見られる状態に置く措置をとることができます。この措置をとれば、官報などへの公告は不要になります。自社のウェブサイトに決算の内容を載せておく、という形です。
正直なところ、この決算公告を実行している中小企業はごく一部です。実務では守られていないのが実態で、それを前提に話をする専門家もいます。ただし義務であることに変わりはなく、公告を怠ると過料の対象になります。ウェブサイトを持っているなら、貸借対照表を1ページ載せておくだけで義務を満たせるので、費用対効果は高い手当てです。
条文そのものを確認したいときは、e-Gov法令検索の会社法で計算書類と決算公告に関する条文を読むことができます。
取締役会を置いている会社の追加の手順
取締役会を置いている会社では、株主総会の前に1つ会議が増えます。
計算書類と事業報告、そしてそれらの附属明細書は、監査を受けたうえで取締役会の承認を受けなければなりません。監査役を置いている会社なら監査役の監査が先に入り、会計監査人を置いている会社なら会計監査人の監査も入ります。
つまり、流れはこうなります。計算書類を作る。監査役(と会計監査人)が監査する。取締役会が承認する。株主に招集通知とあわせて計算書類を提供する。定時株主総会で承認を受ける。
このとき作る書類は2つです。取締役会議事録と、株主総会議事録。取締役会議事録には、出席した取締役と監査役が署名または記名押印します。株主総会議事録にはこの定めがないので、ここは明確な違いです。
取締役会議事録に書く項目も法務省令で決まっていて、開催の日時と場所(オンラインで参加した人がいればその方法)、議事の経過の要領とその結果、決議について特別の利害関係を持つ取締役がいればその氏名、取締役会に出席した執行役・会計参与・会計監査人・株主の氏名、議長がいれば議長の氏名などが含まれます。
取締役会も、決議を省略する方法が用意されています。ただし使うには定款に定めが必要です。取締役の全員が書面または電子的な記録で同意の意思を示し、監査役が異議を述べないときに、決議があったものとみなされます。定款に定めがなければ使えないので、まず定款を確認してください。
取締役会を置いている会社では、招集通知の期限も変わります。取締役会設置会社では、総会の日の2週間前までに通知を出すのが原則です。非公開会社なら1週間前まで短縮でき、さらに定款で短縮できる場合もあります。自社がどの区分に当たるかは、登記事項証明書で確認できます。
承認した数字を後から直したくなったとき
決算を承認したあとに誤りが見つかることがあります。経費の計上漏れ、在庫の数え違い、売上の期ずれ。実務では珍しくありません。
このとき、承認済みの計算書類をさかのぼって作り直すべきかどうかが問題になります。結論としては、中小企業では過去の計算書類を作り直さず、見つかった期の決算で修正を反映させる扱いが一般的です。過去の株主総会の承認をやり直す形は、実務ではほとんど取られません。
税務の側は別に動きます。すでに提出した申告書の内容に誤りがあり、納める税額が少なかった場合は修正申告、多かった場合は更正の請求という手続きになります。更正の請求には期限があり、原則として法定申告期限から5年以内です。会社法の手続きと税務の手続きは連動していないので、両方を別々に考える必要があります。
ここで効いてくるのが、承認の記録です。どの数字をいつ承認したのかが残っていれば、誤りが見つかったときに「どこから違っていたか」を特定できます。記録がなければ、誤りの起点すら分かりません。
金額が大きい誤りや、過去の役員報酬に関わる誤りは、税務上の影響が複雑になります。自己判断で処理を決めず、税務署か税理士に確認してから進めてください。
議事録がない会社が、後で困る場面
議事録を作っていなくても、日々の経営は回ります。困るのは、外から会社の中身を見られる場面です。
1つ目が融資です。金融機関は決算書を見ますが、審査の過程で議事録の提出を求められることがあります。とくに、役員報酬の決定や増資といった議題が絡むときです。決算承認の議事録が何年分も存在しない会社は、会社としての運営がされていないと見られます。
2つ目が税務調査です。役員報酬の金額は、株主総会または定款で決めることになっています。定期同額給与として損金にするには、その金額がいつどのように決まったかを説明できる必要があります。議事録がなければ、根拠を示せません。役員報酬は中小企業の損金の中でも金額が大きい部分なので、ここを否認されると影響も大きくなります。
3つ目が会社の売却や出資の受け入れです。買い手や投資家は、会社の過去の意思決定を確認します。決算承認の議事録が揃っていない会社は、作業が増えるぶん評価が下がります。
4つ目が株主の間の争いです。株主や債権者は、会社の営業時間内であればいつでも議事録の閲覧や謄写を請求できます。請求されたときに「ありません」とは答えられません。
そして、税務の側では書類の保存期間が別に決まっています。
法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。 出典: nta.go.jp
青色申告書を出した事業年度で欠損金が生じた場合は10年間になります。貸借対照表と損益計算書も、この「書類」に含まれます。
会社法の側でも、計算書類は作成した時から10年間保存する義務があり、株主総会議事録は総会の日から10年間、本店に備え置く義務があります。支店にはその写しを5年間置きます。
結局、どの法律から見ても10年前後は残すことになります。毎年1枚ずつ増える書類なので、作る習慣がある会社とない会社で、10年後の差は10枚分ではなく、説明できるかできないかの差になります。
なお、役員報酬の損金算入や欠損金の扱いといった税務上の判断は、会社の状況で変わります。一般にはこう扱われるという範囲の話なので、個別の判断は税務署か税理士に確認してください。
3月決算の会社の1年を、日付順に置く
順番を言葉で説明されても、自分の会社の予定表に落とせないと動けません。3月決算で、取締役会も監査役も置いていない会社を例に、日付で並べます。
3月31日。事業年度の終了日です。この日の在庫を数え、現金と預金の残高を確定させます。
4月から5月上旬。帳簿を締め、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表を作ります。あわせて事業報告も作ります。事業の経過と成果、主要な事業の内容、主要な営業所の状況、従業員の状況、株式の状況、役員の状況が並び、数ページに収まります。
5月15日ごろ。法人税の申告期限を延ばす特例を使うなら、この時期が締切です。申請できる期限が事業年度終了の日の翌日から45日以内なので、3月31日決算なら5月15日までになります。申請していない会社は、5月31日までに申告することになります。
6月中旬。招集の通知を出します。取締役会を置いていない非公開会社なら、総会の日の1週間前までが原則で、定款で短くできます。株主全員の同意があれば、招集の手続きそのものを省略できます。
6月25日ごろ。定時株主総会を開きます。事業報告を報告し、計算書類の承認を決議します。役員の任期が満了しているなら、その選任もここで決めます。同じ日のうちに議事録を作ってしまうのが、いちばん手間が少ない進め方です。
6月30日まで。基準日を3月31日と定款で定めている会社は、この日が総会の期限になります。基準日の株主が権利を行使できるのは基準日から3か月以内だからです。あわせて、役員報酬を改定するならこの日までに決議します。
総会の直後。決算公告をします。自社のウェブサイトに貸借対照表を置く方法をとれば、費用はかかりません。
6月30日まで、または5月31日まで。法人税の申告書を提出します。延長の特例を使っているなら6月30日、使っていないなら5月31日です。
総会の日から10年。議事録を本店に備え置きます。年度ごとのファイルに、議事録と計算書類と申告書の控えをまとめて綴じておけば、10年後に探す作業がなくなります。
この並びを見ると、6月末に3つの期限が重なることが分かります。総会の期限、役員報酬を改定できる期限、そして延長した場合の申告期限です。6月の予定を後ろへ詰めると、この3つが同時に崩れます。
役員報酬の改定は、同じ総会で決める
決算承認の総会は、役員報酬を決め直す場でもあります。ここを別の月にずらすと、払った報酬が経費として認められないことがあります。
法人税の扱いでは、役員に払う給与のうち経費にできるのは、定期同額給与、事前確定届出給与、一定の業績連動給与のいずれかに当たるものだけです。中小企業がふつうに使うのは1つ目の定期同額給与で、毎月同じ額を払う形です。
問題になるのが、金額を変えるタイミングです。
その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月(確定申告書の提出期限の特例に係る税務署長の指定を受けた場合にはその指定に係る月数に2を加えた月数)を経過する日(以下「3月経過日等」といいます。)まで(中略)にされる定期給与の額の改定 出典: nta.go.jp
3月決算の会社なら、4月1日から3か月を経過する日、つまり6月30日までに改定することになります。定時株主総会を6月25日に開き、その席で報酬を決議すれば、この期限の内側に収まります。逆に、総会を7月や8月へ延ばして報酬を上げると、その改定は期限の後になります。決算承認の総会を6月に開く理由は、基準日だけではないということです。
この期限を外れても改定できる場合が2つ挙げられています。役員の地位や職務の内容に重大な変更があった場合と、会社の経営状況が著しく悪化した場合です。ただし後者は金額を下げる改定に限られ、一時的な資金繰りの都合や、単に目標に届かなかったというだけでは当たらないと明記されています。
議事録に書くのは、金額と、いつから支給するかの両方です。「取締役の報酬を月額金◯円とし、令和◯年7月分から支給する」という形にします。総額の上限だけを決めて配分を取締役に委ねる会社は、上限の額と、配分を委ねる旨を書きます。金額をぼかした議事録は、実際に払った額との対応がつかなくなります。
なお、実際に経費として認められるかどうかは、金額や支給の仕方によって変わります。金額が大きい場合や、期の途中で変える場合は、税務署か税理士に確認してから決めてください。
合同会社には決算の承認も公告もない
会社の形が合同会社なら、ここまでの手続きの大半が当てはまりません。株主がいないので株主総会がなく、承認の決議という工程そのものが存在しません。
それでも計算書類を作る義務はあります。会社法は持分会社について、各事業年度に係る計算書類を作成しなければならないと定めています。保存の期間も決まっていて、作成した時から10年間です。株式会社の10年と同じ長さです。
社員は、会社の営業時間内であればいつでも計算書類の閲覧や謄写を請求できます。定款で制限を置くことはできますが、事業年度の終了時の請求を封じる定めは置けないと明記されています。社員が複数いる合同会社では、決算の内容を共有する場を年に1回持っておくほうが、後の行き違いを減らせます。
決算公告の義務もありません。公告を義務づけている条文が株式会社を対象にしているため、合同会社は対象から外れます。官報への掲載費用がかからない点は、合同会社を選ぶ理由のひとつとして挙げられることがあります。
ただし、税務の側は株式会社と同じです。法人税の申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内で、帳簿と書類の保存期間も変わりません。会社法の手続きが軽いことと、税務の手続きが軽いことは別の話なので、混同しないようにしてください。
社員が複数いる合同会社で、利益の配当をどう分けるかを決めるときは、書面を残しておくと後で助かります。定款に定めがなければ、損益を分ける割合は各社員の出資の価額に応じて決まります。出資の割合とは違う配分にしたいなら、定款にその定めを置く必要があります。
20年市場を見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、法人化した個人事業主が決算承認の議事録を作らない理由は、忘れているからではありません。「誰も見ないから」だと考えているからです。
その判断は、その時点では正しく見えます。株主は自分ひとり、取締役も自分ひとり。誰に承認してもらうのかという疑問は、もっともです。
運営者として見てきた限りでは、この判断が覆るのは、事業が伸びて外部が関わってきたタイミングです。融資を受ける、人を採る、法人の取引先が与信を取る。そのとき初めて、会社としての体裁が問われます。そして過去5年分をまとめて作ろうとすると、当時の数字と記憶をたどる作業になり、1日仕事になります。
もう1つ気づくのは、長く続けている事業者ほど、こうした定型の作業を「年1回の儀式」として固定していることです。決算が締まったら、議事録を作り、保存し、次の1年の目標を決める。書類を作る時間そのものが、事業を振り返る時間になっています。
中間に人が入らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。手数料0%という仕組みが効いてくるのは、決算書の数字として見たときです。売上から差し引かれる分がないぶん、同じ働きでも利益として残る額が変わります。
決算を締めたあとに考える、次の1年の組み立て
決算承認は、過去1年を確定させる作業です。終わったら、次の1年をどう組み立てるかの話になります。
単価の見直しは、決算の直後が最も判断しやすいタイミングです。1年分の数字が目の前にあるからです。ソフトウェア作成者の年収・単価相場は、職種ごとの年収と単価の水準を公的な統計から整理したページで、自社の単価が市場のどのあたりにあるかを確かめる材料になります。書く仕事が主軸なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場のほうが近い数字が並びます。
売上の柱を増やしたいなら、需要が伸びている領域を知っておくと判断が早くなります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事は、企業の業務にAIをどう組み込むかを支援する仕事の流れと求められる経験をまとめたもので、継続契約になりやすい分野です。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事は、企業側の需要がどこに向いているかを仕事の中身から整理しています。開発の受託を増やすならアプリケーション開発のお仕事が工程ごとの関わり方をまとめています。
資格の面では、議事録や報告書を扱う機会が増える立場にビジネス文書検定が直接効きます。インフラ寄りの案件を取りたいならCCNA(シスコ技術者認定)が入口として機能します。
決算の数字を見ると、売掛金の回収が遅れている取引先が見えることがあります。未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】は、費用の目安と手続きの順番を段階ごとに整理しています。そもそも回収で揉めないための書式はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが項目単位でまとめています。決算の実務を自分で回すか外に出すかを考えている段階なら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】が、会計の専門家がどういう単位で仕事を受けているかを知る手がかりになります。
決算承認の手続きは、会社の機関設計によって必要な工程が変わります。この記事で整理したのは一般的な流れであり、自社の定款と登記事項証明書を確認したうえで判断してください。税務上の扱いや申告期限の特例については、税務署か税理士に確認してから進めてください。
よくある質問
Q. 株主が社長1人の会社でも決算承認の議事録は必要ですか?
必要です。計算書類は定時株主総会の承認を受けなければならないと定められており、株主が1人でもこの構造は変わりません。会議を開く代わりに、株主の同意を書面で残して決議があったものとみなす方法が使えます。提案書と同意書と議事録の紙3枚で完結します。
Q. 事業報告も「承認」と書いてよいですか?
よくありません。計算書類は承認、事業報告は報告と法律で書き分けられています。議事録では計算書類について「承認可決された」、事業報告について「報告し、出席株主が了承した」と書きます。テンプレートによっては事業報告まで承認になっているので確認してください。
Q. 決算承認の議事録は何年保存しますか?
株主総会の日から10年間、本店に備え置く義務があります。支店には写しを5年間置きます。計算書類も作成した時から10年間の保存義務があり、税務の側でも帳簿書類は申告期限の翌日から7年間、欠損金が生じた事業年度は10年間の保存が必要です。
Q. 決算公告はしなくても問題ありませんか?
義務であり、怠ると過料の対象になります。ただし官報や日刊新聞紙を公告方法としている会社は、貸借対照表の内容を定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで自社サイトなどで継続して公開すれば、公告に代えることができます。費用をかけずに義務を満たせます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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