アンケートの自由記述のまとめ方|意見を分けて読み取る方法


この記事のポイント
- ✓アンケート結果の自由記述のまとめ方を
- ✓意見を分けるアフターコーディング
- ✓個人情報の扱いまで手順で解説します
アンケートを取ったものの、選択式の設問はグラフにできたのに、自由記述の欄だけが何百行も残って手が止まっている。そんな状態でこのページにたどり着いた人は多いはずです。自由記述は数字のように平均を出せないため、どこから手をつければよいかが分かりにくく、結局「印象に残った声を3つ抜き出して終わり」になりがちです。
結論から言うと、アンケート結果の自由記述のまとめ方は、「整える」「分ける」「数える」「読み取る」「伝える」の5つの段階に分けると迷いません。回答を1件ずつ読んで意見の種類ごとに印を付け(これをアフターコーディングと呼びます)、印ごとの件数を数え、件数の多さと内容の重さの両方から結論を出します。この記事では、Excelやスプレッドシートで実際に手を動かす手順、件数と内容のどちらを重く見るかの判断、報告書での書き方、個人情報の注意点までを順に説明します。返信や対応が必要な声が混ざっているときに、1件ごとに担当と状況を付けて追えるHalictのような道具の使いどころにも触れます。
自由記述を読み解く5つの段階
自由記述をまとめる作業が難しく感じるのは、「何を答えにすればよいか」が決まっていないまま読み始めてしまうからです。選択式の設問なら「満足が何%」という答えが自動的に出ますが、自由記述は答えの形を自分で決める必要があります。最初に全体の流れを頭に入れておくと、途中で迷っても戻る場所ができます。
統計の解説をしている記事でも、つまずく理由は同じように整理されています。
数字で答える設問であれば、平均や割合を出すことで一定の整理ができますが、自由記述はそう簡単ではありません。「似た意見をまとめればよいのか」「印象的な回答を抜き出せばよいのか」「件数を数えればよいのか」と迷い始めると、一気に難しく感じられます。 出典: note.com
この迷いは、次の5つの段階に分けると解消できます。
- 整える:回答を1行1件の表にし、空欄や「特になし」を分け、長い回答を意見ごとに区切る
- 分ける:回答を読み、意見の種類ごとに短いラベル(コード)を付ける
- 数える:ラベルごとの件数を数え、選択式の回答(満足度や属性)とかけ合わせる
- 読み取る:件数の多い意見と、件数は少ないが重い意見を分けて結論を出す
- 伝える:結論、根拠の件数、代表的な原文、次の行動の順に報告する
大切なのは、最初の「目的の確認」を飛ばさないことです。自由記述を読む目的が「講座の改善点を見つける」のか「解約の理由を知る」のか「新しい商品の要望を集める」のかで、付けるラベルの粒度も、報告で重く見る意見も変わります。読み始める前に、アンケートを作ったときの目的と、結果を見て誰が何を決めるのかを1行で書き出しておきます。たとえば「オンライン講座の受講者200人の自由記述から、来期に直す点を3つに絞り、運営会議で決める」のように書けば、その後の判断がぶれにくくなります。
もう1つ決めておきたいのが、作業にかける時間です。回答が100件程度なら、1件あたり30秒で読んでラベルを付けても1時間ほどで終わります。1,000件を超える場合は全件を同じ深さで読むのは現実的ではないため、後で説明するように、まず100件を読んでラベルの一覧を作り、残りはその一覧に当てはめていく進め方に切り替えます。
分析を始める前の下ごしらえ
自由記述の分析で時間がかかる原因の多くは、読む前の表の状態にあります。回答が複数の列に散らばっていたり、1つのセルに3つの意見が入っていたりすると、ラベルを付けるたびに迷います。最初の30分を下ごしらえに使うと、後の作業が大きく楽になります。
1行1件の表にする
フォームの集計結果をExcelやGoogleスプレッドシートに書き出し、1行が1人の回答、列が設問になっている形にします。自由記述の列の隣に、回答者の番号、回答日、満足度などの選択式の回答を並べておくと、後で「不満を書いた人の満足度は何点だったか」を確かめられます。回答者の名前やメールアドレスの列は、分析に使わないなら別のシートに移すか削除しておきます。理由は後の「個人情報と回答者への配慮」の節で説明します。
空欄と「特になし」を分ける
自由記述は任意の設問であることが多く、空欄や「特になし」「ありません」「とくに」が一定の割合で入ります。これらは意見ではないので、分析の対象から外します。ただし、外した件数は記録しておきます。「200人中、何か書いた人は64人」という数字は、それ自体が報告の材料になるためです。書いた人の割合が極端に低い場合は、設問の聞き方に問題があった可能性もあります。
1つの回答を意見ごとに区切る
「動画は分かりやすかったです。ただ、課題の締め切りが短く、質問への返事も遅かったです」という回答には、称賛が1つと不満が2つ入っています。これを1つのラベルで扱うと、どの意見も正しく数えられません。1つの回答に複数の意見があるときは、行を複製して意見ごとに1行にするか、ラベルの列を3列ほど用意して複数のラベルを付けられるようにします。行を分ける方法は件数を数えやすく、列を増やす方法は元の回答のつながりを保てます。回答が200件以下なら行を分ける方法、それより多いなら列を増やす方法が扱いやすいでしょう。
表記のゆれをそろえる
「スマホ」「スマートフォン」「携帯」、「動画」「映像」「ビデオ」のように、同じものを指す言葉が混ざっていると、検索や数え上げで漏れが出ます。原文の列は書き換えずに残し、隣に「整えた文」の列を作って言葉をそろえておくと、後で原文を引用するときにも困りません。誤字の修正も、この整えた文の列だけで行います。
アフターコーディングで意見を分ける手順
自由記述のまとめ方の中心になるのが、アフターコーディングです。アフターコーディングとは、集まった回答を読んだ後で意見の種類ごとに分類の名前(コード)を作り、1件ずつ当てはめていく方法のことです。選択肢を先に用意する選択式の設問とは逆に、回答を見てから分類を決めるので「アフター」と呼ばれます。
最初の50件から100件でラベルの一覧を作る
いきなり全件にラベルを付けようとすると、途中で分類の名前が増えすぎて収拾がつかなくなります。まずは回答の一部、50件から100件ほどを読み、出てきた意見を短い言葉で書き出します。この段階では細かくてかまいません。「締め切りが短い」「課題の量が多い」「質問の返事が遅い」「動画が分かりやすい」「音声が小さい」のように、具体的に書きます。
書き出した言葉を眺めて、似たものを1つにします。「締め切りが短い」と「課題の量が多い」は「課題の負担」にまとめられます。こうして整理したラベルの一覧を、コードブックと呼びます。コードブックには、ラベルの名前だけでなく「どんな回答をこのラベルに入れるか」という説明と、典型的な回答の例を1つ書いておきます。
| ラベル | 入れる回答 | 回答の例 |
|---|---|---|
| 課題の負担 | 課題の量や締め切りへの不満 | 締め切りが仕事と重なってきつい |
| 質問への対応 | 質問の返事の早さや丁寧さ | 質問の返事に3日かかった |
| 教材の分かりやすさ(良い) | 動画や資料への称賛 | 図が多くて理解しやすかった |
| 教材の分かりやすさ(悪い) | 動画や資料への不満 | 専門用語の説明がなかった |
| 機能の要望 | 新しく欲しい仕組み | スマホで課題を出したい |
| その他 | どれにも当てはまらない回答 | 次の講座の案内が欲しい |
全件に当てはめる
コードブックができたら、全件を読んでラベルを付けていきます。1件に迷う時間は長くても30秒までと決め、迷ったら「保留」の印を付けて先に進みます。保留が10件ほどたまったら見直し、新しいラベルを作るか、既存のラベルの説明を直します。
ラベルの数は、最終的に7個から12個程度に収まると報告しやすくなります。20個を超えると、聞く側がすべてを覚えられません。逆に3個程度では、「不満」「要望」「称賛」のように粗すぎて、次に何を直せばよいかが分かりません。
「その他」が多すぎないかを確かめる
全件に付け終わったら、「その他」の件数を確かめます。目安として全体の1割を超えているなら、その他の中に共通する意見が埋もれている可能性があります。その他の回答だけを並べて読み直し、3件以上似たものがあれば新しいラベルとして独立させます。
2人で付けると偏りが減る
回答を読む人の受け取り方によって、同じ回答に別のラベルが付くことがあります。可能なら、2人が同じ30件に別々にラベルを付け、結果が食い違ったものを話し合って、コードブックの説明を直します。1人で作業する場合も、翌日に最初の30件を読み直すと、前日の自分の判断の癖に気づけます。
Excelやスプレッドシートで集計する方法
ラベルを付け終えたら、件数を数えます。ここからは選択式の設問と同じように、数字で扱えるようになります。Excelでもスプレッドシートでも、使う機能はほぼ同じです。
COUNTIF関数でラベルごとに数える
ラベルの一覧を別のシートに並べ、隣のセルにCOUNTIF関数を入れると、ラベルごとの件数が出ます。COUNTIF関数とは、指定した範囲の中で条件に合うセルの数を数える関数のことです。Microsoftの公式ヘルプでは、次のように説明されています。
統計関数の 1 つである COUNTIF を使用して、条件を満たすセルの個数を数えます。 出典: support.microsoft.com
たとえば、ラベルがC列の2行目から201行目に入っているなら、「課題の負担」の件数は「=COUNTIF(C2:C201,"課題の負担")」で数えられます。ラベルを3列に分けて付けた場合は、範囲を「C2:E201」のように3列分に広げます。
ピボットテーブルで属性とかけ合わせる
件数だけでは、「誰がそう感じているのか」が分かりません。ここで役立つのがピボットテーブルです。ピボットテーブルとは、表のデータを行と列の項目で自動的に集計し直す機能のことで、関数を書かずにクロス集計(2つの項目をかけ合わせた集計)を作れます。行にラベル、列に満足度や受講の回を指定すれば、「課題の負担を書いた人は、満足度が低い層に多いのか」をすぐに確かめられます。
Microsoftのピボットテーブルの作成方法のヘルプには、元の表をテーブルにしてから挿入する手順が載っています。Googleスプレッドシートでも、「挿入」メニューからピボットテーブルを作れます。
割合は「書いた人」を分母にする
件数を割合にするときは、分母を何にするかを明記します。回答者全体の200人を分母にするのか、自由記述に何か書いた64人を分母にするのか、意見の総数の98件を分母にするのかで、同じ件数でも割合が大きく変わります。報告書では「自由記述に回答した64人のうち、課題の負担に触れた人は23人(36%)」のように、分母と件数を両方書くと誤解がありません。
件数と内容のどちらを重く見るか
ラベルごとの件数が出ると、件数の多い順に並べて上位3つを結論にしたくなります。しかし、自由記述のまとめ方で最も判断が分かれるのがここです。件数の多さだけで結論を出すと、大事な声を見落とすことがあります。
件数が多い意見は「傾向」として扱う
多くの人が同じことを書いているなら、それは受講者全体に共通する傾向です。自由記述に回答した64人のうち23人が課題の負担に触れていれば、優先して見直すべき点と判断できます。件数の多い意見は、選択式の設問の結果と照らし合わせると説得力が増します。満足度の低い人ほど課題の負担を書いていれば、満足度を下げている原因の1つだと言えます。
件数が少なくても重い意見がある
一方で、1件だけでも見過ごせない意見があります。「教材に載っていた手順のとおりに設定したら、データが消えた」「担当者の言葉づかいが威圧的だった」のような回答は、件数が少なくても、事故や信頼の問題につながります。こうした意見は件数で並べると下のほうに埋もれるため、ラベルとは別に「重要度」の列を作り、「すぐ対応」「検討」「参考」の3段階で印を付けておきます。
件数と重要度の2軸で整理する
件数と重要度を2つの軸にして、4つの箱に分けると判断しやすくなります。
| 重要度が高い | 重要度が低い | |
|---|---|---|
| 件数が多い | 最優先で直す | 改善の候補として検討する |
| 件数が少ない | 個別に確かめてすぐ対応する | 記録して次回の参考にする |
左下の「件数は少ないが重要度が高い」箱は、全体の改善というより、個別の事実を確かめる対象です。回答者に連絡できる設計のアンケートなら、担当を決めて事情を聞き、対応した結果を記録します。この箱の扱いを決めておかないと、報告会で「重大な声があったのに誰も動いていなかった」ということが起きます。
声の大きさに引きずられない
長文で強い言葉を使った回答は、読んだ人の印象に強く残ります。しかし、文章の長さや言葉の強さは、その意見を持つ人の多さとは関係がありません。印象に残った回答を報告に使うときは、同じラベルの件数を必ず添え、「強い意見が1件あった」のか「同じ意見が20件あった」のかを読み手が区別できるようにします。
回答の種類ごとの読み取り方
自由記述には、不満、要望、称賛、質問という性格の違う回答が混ざります。種類によって、読み取り方と報告での扱いが変わります。
不満は「何が」「どの場面で」を分ける
「使いにくい」という不満だけでは、何を直せばよいかが分かりません。不満の回答は、対象(課題、動画、サイトの画面、担当者の対応)と場面(申し込み、受講中、質問したとき、修了後)に分けて読むと、直す場所が具体的になります。同じ「使いにくい」でも、申し込みの画面の話と、受講中の動画プレーヤーの話では担当する部署が違います。
要望は「理由」を拾う
「スマホで課題を出したい」という要望の裏には、「通勤の電車の中で進めたい」「パソコンを持っていない」などの理由があります。要望をそのまま実現するのが難しくても、理由が分かれば別の方法で応えられることがあります。要望のラベルを付けるときは、理由が書かれていればメモの列に残しておきます。
称賛は「続けるべきこと」として扱う
改善点を探す目的のアンケートでは、称賛の声を軽く扱いがちです。しかし、何が評価されているかを知ることは、変えてはいけないところを知ることでもあります。改善の議論で「動画を短くしよう」という案が出たとき、「図が多くて分かりやすい」という称賛が多ければ、図を減らさない形で短くする必要があると分かります。
質問は回答が必要かを判断する
自由記述に「修了証はいつ届きますか」のような質問が書かれていることがあります。アンケートは返信を前提にしていないことが多いですが、質問に答えないまま放っておくと、回答した人の不満につながります。連絡先が分かる設計なら、質問の回答を個別に送るか、質問と回答の案内ページに追記して知らせます。
報告書やスライドで伝える書き方
分析の結果は、読む人が5分で理解できる形にして初めて役に立ちます。報告書では、結論、根拠の件数、代表的な原文、次の行動の順に書くのが基本です。
1枚目は結論だけにする
報告書やスライドの最初には、「自由記述から見えた改善点は3つ」のように結論を書きます。分析の手順や全ラベルの件数は後ろに回します。会議の参加者が最初に知りたいのは、何を決めればよいかだからです。
結論ごとに件数と原文を並べる
結論の1つずつに、件数と代表的な原文を2件から3件添えます。書き方の例を示します。
改善点1:課題の締め切りの見直し 自由記述に回答した64人のうち23人が、課題の量や締め切りに触れています。満足度が5段階で2以下の人に限ると、14人中9人がこの点を書いています。 代表的な回答:「平日に仕事があるので、締め切りが週の半ばだと間に合わない」「課題の量は適切だが、提出期間が3日しかない」 次の行動:締め切りを週末明けに移すか、提出期間を7日に延ばす案を次回の会議で比べる。
原文を引用するときは、誤字だけを直し、意味は変えません。回答者が特定されるような固有名詞や具体的なエピソードは、伏せるか一般的な言い方に直します。
グラフは件数の棒グラフで十分
ラベルごとの件数は、横向きの棒グラフにすると比べやすくなります。円グラフは、ラベルが7個を超えると細い扇が並んで読みにくくなります。ワードクラウド(回答の中で多く出た言葉を大きな文字で並べた図)は見た目の印象は強いものの、「動画」「課題」のような言葉が大きく出るだけで、肯定なのか否定なのかが分かりません。報告の主役にはせず、補助の図として使うのが無難です。
「その他」と少数意見も最後に載せる
報告書の最後に、件数の少なかったラベルと「その他」の中身を箇条書きで載せておきます。会議では扱わなくても、担当者が後で読み返したときに、次の改善の手がかりになります。
よくある失敗と注意点
自由記述のまとめ方で起きやすい失敗を、手順の順に並べます。どれも、作業の途中で気づけば直せるものです。
ラベルを先に決めてから読む
「おそらく価格への不満が多いだろう」と思い込んでラベルを先に決めると、その枠に当てはまる回答ばかりが目に入り、想定していなかった意見を見落とします。ラベルは必ず回答を読んでから作ります。仮説を持つこと自体は悪くありませんが、その仮説は報告の段階で件数と照らし合わせて確かめます。
作業の途中でラベルの意味が変わる
200件目あたりで「課題の負担」に「教材の難しさ」も入れ始めると、最初の100件と後の100件で数え方が変わってしまいます。ラベルの説明を変えたら、それまでに付けた分も見直します。コードブックに変更の日付を書いておくと、どこから見直せばよいかが分かります。
原文を残さない
整えた文やラベルだけを残して原文を消すと、後で「本当にそう書いてあったのか」を確かめられません。原文の列は最後まで残し、報告書に引用するときも原文から取ります。
一部の回答だけで結論を出す
時間がないからと最初の50件だけを読んで結論を出すと、回答の時期によって意見が偏っている場合に誤ります。講座の初日に回答した人と、最終日に回答した人では、書く内容が違うことがあります。全件を読めないときは、回答日がばらけるように抜き出して読みます。
分析した人の解釈を事実のように書く
「受講者は講座の価格が高いと感じている」と書くには、価格に触れた回答の件数が必要です。件数を示さずに解釈だけを書くと、読み手は分析した人の感想なのか、回答の傾向なのかを区別できません。解釈には「価格に触れた回答は64人中5人で、多くはなかった」のように根拠を添えます。
個人情報と回答者への配慮
自由記述には、設問で聞いていない個人の情報が書き込まれることがあります。「先月入院していたので課題が遅れました」「〇〇支店の□□さんの対応が悪かった」といった回答です。分析の担当者は、こうした情報の扱いにも注意が必要です。
個人情報保護法では、個人情報を次のように定めています。
この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。 出典: laws.e-gov.go.jp
条文の続きでは、氏名や生年月日などで特定の個人を識別できるもの、ほかの情報と簡単に照らし合わせて個人を識別できるものが個人情報に当たると書かれています。記名式のアンケートで、回答者の名前と自由記述が同じ行に並んでいれば、その自由記述も含めて個人情報として扱うのが安全です。また、病歴のように、本人が不利益を受けないよう特に配慮が必要な情報は「要配慮個人情報」として、取得や提供に厳しい決まりがあります。
実務では、次のような扱いをしておくと安心です。
- 分析用の表から、名前、メールアドレス、電話番号の列を外す
- 報告書に原文を引用するときは、人名、支店名、病名などを伏せる
- 分析用のファイルを共有する範囲を、作業に関わる人に絞る
- アンケートで示した利用目的(講座の改善など)の範囲を超えて使わない
利用目的の範囲や、社外への提供が許されるかどうかは、アンケートの書き方や会社の規程によって変わります。判断に迷うときは、社内の個人情報の担当者に確かめるか、個人情報保護委員会の相談窓口やガイドラインを確認します。
テキストマイニングやAIを使うときの考え方
回答が数千件になると、すべてを人が読むのは難しくなります。そこで使われるのが、テキストマイニングやAIによる分類です。テキストマイニングとは、文章を単語に分けて、よく出る言葉や一緒に出やすい言葉の組み合わせを数える方法のことです。
メリット
テキストマイニングやAIを使うと、数千件の回答でも短い時間で全体の傾向をつかめます。人が読むと見落としがちな言葉の組み合わせ(「スマホ」と「音声」が一緒に出ることが多い、など)にも気づけます。ラベルの一覧の最初の案をAIに作らせ、それを人が直すという使い方なら、作業の時間を大きく減らせます。
デメリット
一方で、言葉の数え上げは文脈を理解しません。「分かりやすくない」と「分かりやすい」が同じ「分かりやすい」として数えられることがあります。AIによる分類も、もっともらしい分類を作りますが、同じ回答を別の日に分類させると違う結果になることがあります。また、回答をAIのサービスに送ること自体が、前の節で説明した個人情報の扱いの問題になります。社外のサービスに送ってよいかは、会社の決まりを確かめてから判断します。
人が最後に確かめる
道具を使う場合も、結論に使うラベルについては、人が原文を20件ほど読んで、分類が正しいかを確かめます。報告書には「AIで分類した後、各ラベルの回答を人が抜き取りで確認した」のように、どう確かめたかを書いておくと、読み手が結果を信頼しやすくなります。回答が300件程度までなら、道具を使わずにExcelで手作業のアフターコーディングをしたほうが、早く正確に終わることも珍しくありません。
返信が必要な声を取りこぼさない運用
自由記述の分析は、全体の傾向をつかむための作業です。しかし実際には、回答の中に「返金してほしい」「請求の金額が違う」「担当者から連絡がない」のように、個別に返信や対応が必要な声が混ざっています。これらを分析用の表の中だけで扱っていると、件数として数えられるだけで、誰も返信しないまま終わってしまうことがあります。
回答が数十件で、対応する人が1人なら、スプレッドシートに「対応が必要か」「担当」「状況」「返信した日」の列を足して管理すれば十分です。重要度の列で「すぐ対応」の印を付けた行に担当の名前を入れ、返信したら状況を「完了」に変えます。
問題は、アンケートを定期的に取り、対応する人が複数になったときです。スプレッドシートの列を手で更新する運用は、誰かが更新を忘れた時点で、どの声に返信したのかが分からなくなります。返信はメールソフトから送るため、表とメールの2か所を行き来する手間も増えます。
こうした場面の候補の1つが、フォームの作成から回答の管理までを1つの画面で扱うHalict(ハリクト)です。公式サイトによると、Halictは届いた回答の1件ごとに担当と状況が残り、返信も同じ画面から送れて、開封まで記録されるフォームのサービスです。「顧客満足度アンケート」のように作りたいフォームを伝えると、AIが質問や選択肢、必須の設定まで組み立てる機能があり、テキスト、選択肢、評価、日付、メールなど12種類の項目を使えます。集まった回答は一覧で確かめられ、CSVに書き出せるので、この記事で説明したアフターコーディングや件数の集計は、書き出したデータをExcelで行うことになります。料金は、メンバー1人までのフリープランが0円で、フォームの数と回答の数はどのプランでも無制限と案内されています。複数人で使う場合は、メンバー3人までのスタータープランが月額2,980円(税抜)からです。
Halictは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
なお、Halictは自由記述を自動で分類したり、ラベルごとの件数を集計したりする機能を公式サイトで掲げてはいません。全体の傾向の分析はExcelやスプレッドシートで行い、個別に返信が必要な声の対応をHalictで管理する、という分け方が現実的です。
アンケートの集計と分析を仕事にする道
ここまで説明した自由記述のまとめ方は、社内の改善に使えるだけでなく、在宅で受けられる仕事にもなります。中小企業や教室、イベントの運営者の中には、アンケートを取っても読み込む時間がなく、自由記述の欄が手つかずのまま残っているところが少なくありません。回答の整理、アフターコーディング、集計、報告書の作成までを請け負う仕事は、市場調査やマーケティングの支援の一部として募集されています。
マーケティングの支援の中でどんな仕事が募集されているかは、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で整理しています。AIを使った分類の下準備や、AIの出力を人が確かめる作業を組み合わせる場合は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事の内容も参考になります。調査や分析を専門にする人の報酬の水準は、研究者の年収・単価相場で確かめられます。
フリーランスと在宅ワークの仲介を長く運営してきた立場から見ると、分析の仕事で継続の依頼につながりやすいのは、件数の多い意見を並べるだけでなく、「件数は少ないが今すぐ確かめたほうがよい声」を別にして報告する人です。依頼する側が本当に困っているのは、自由記述の中に重大な声が埋もれていないかという不安だからです。報告書の最後に、次に取るべき行動を1行ずつ書き添えるだけでも、依頼者の手間は大きく減ります。仲介の手数料がかからない直接の取引であれば、同じ予算で依頼者は分析の範囲を広げやすく、受ける側は手取りが厚くなります。その分を、原文を丁寧に読む時間に回せるのも、直接の取引のよいところです。
調査の結果をもとに事業の改善まで提案したい人は、経営の助言の国家資格である中小企業診断士の学習で、調査の設計や分析の考え方を体系的に学べます。まずは自分の職場や身近な団体のアンケートで、この記事の5つの段階を一度通して試し、コードブックと報告書の型を手元に残しておくと、仕事として受けるときの見本になります。
よくある質問
Q. 自由記述の回答が少ないときも、アフターコーディングは必要ですか?
回答が20件程度なら、全件を読んで似た意見を手で並べるだけでも傾向はつかめます。ただし、件数を報告に使うなら、同じ基準で数えたことが分かるように、簡単なラベルを付けておくと安心です。少ない回答ほど1件の重みが大きいので、件数と合わせて原文も添えて報告します。
Q. ラベルはいくつ作るのがよいですか?
報告のしやすさを考えると、最終的に7個から12個程度が目安です。20個を超えると聞く側が覚えきれず、3個程度では何を直せばよいかが分かりません。最初は細かく書き出し、似たものを1つにしながら数を絞っていきます。どれにも当てはまらない回答は「その他」に入れ、全体の1割を超えたら見直します。
Q. 自由記述の割合は、何を分母にすればよいですか?
回答者全体、自由記述に何か書いた人、意見の総数のどれを分母にするかで割合が変わります。どれを使ってもかまいませんが、報告書には分母と件数を必ず両方書きます。「自由記述に回答した64人のうち23人」のように書けば、読み手が誤解せずに済みます。
Q. 自由記述をAIのサービスで分類してもよいですか?
数千件の回答の傾向をつかむには便利ですが、文脈の取り違えや、同じ回答でも結果が変わることがあります。結論に使う分類は、人が原文を抜き取りで読んで確かめます。また、回答に個人の情報が含まれる場合は、社外のサービスに送ってよいかを会社の決まりで確かめてから使います。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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