就労移行支援事業所を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

長谷川 奈津
長谷川 奈津
就労移行支援事業所を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

この記事のポイント

  • ✓就労移行支援を辞めたいと感じる理由を
  • ✓数字の圧力・役割のズレ・利用者との距離・職員体制の4つに切り分けます
  • ✓報酬が成果で決まる仕組み

就労移行支援を辞めたい。そう検索して、この記事にたどり着いた方から相談を受けることがあります。話を聞いていくと、支援という仕事が嫌になったわけではない、という点がほぼ共通しています。むしろ利用者の方と向き合う時間そのものは好きだと言う。それなのに毎月の数字を見るたびに胃が重くなり、朝に足が止まる。

この感覚には理由があります。就労移行支援事業所は、福祉の枠組みの中にありながら、事業所の収入が成果で決まる仕組みになっているからです。これ、外から見ていると本当に分かりにくい部分なんです。

この記事では、まずこの職場の中で何が起きているのかを制度の骨組みから説明します。そのうえで「辞めたい」を4つの要素に切り分け、職場を変えれば済むものと、職種そのものを変える必要があるものを分けます。そして出ていく前に必ず取っておくべき書類について書きます。ここを飛ばして辞めると、数年後に確実に困ります。

就労移行支援事業所は、成果が事業所の収入に直結する福祉の職場

まず制度の骨格を確認します。就労移行支援は障害者総合支援法にもとづく訓練等給付のサービスで、一般企業への就職を目指す障害のある方に、就労に必要な知識と能力の向上のための訓練を行う事業です。全国におよそ3,000か所あり、利用者は3万人台半ばで推移しています。

この事業には、他の障害福祉サービスにない特徴が3つあります。

1つめは、利用期間に上限があることです。原則24か月、つまり2年です。延長は市町村審査会の個別審査を経て最大12か月まで認められますが、無条件ではありません。生活介護や就労継続支援B型のように、何年でも通い続けられるサービスではないのです。つまり利用者にも職員にも、最初から締め切りが設定されています。

2つめは、人員配置です。定員は20人以上(多機能型は6人以上)、職業指導員と生活支援員を合わせて利用者15人に対して1人以上、就労支援員も利用者15人に対して1人以上、そしてサービス管理責任者を置くことが求められます。定員20人の事業所なら、常勤換算でおおむね4人前後という規模感です。この人数で、訓練の実施、個別支援計画の作成、企業開拓、実習の調整、就職後のフォローまでを回します。

3つめが、この記事の中心です。就労移行支援の基本報酬は、前年度の実績、具体的には就職して6か月以上定着した人が利用者のうちどれくらいいたかという割合によって段階的に決まります。定着率が高い区分の事業所は高い単価を受け取り、低い区分は低い単価になります。就職者ゼロが続けば、最も低い区分に落ちます。

つまり、利用者が就職できたかどうか、そしてその後半年勤め続けられたかどうかが、そのまま事業所の売上を左右します。これ、知らずに入職する人が本当に多いんです。求人票には「障害のある方の就労を支援するお仕事」としか書かれていませんから。

この構造を理解すると、「辞めたい」の正体がだいぶ見えてきます。数字の圧力は、上司の性格の問題でも法人の方針の問題でもなく、制度そのものに埋め込まれた設計だからです。管理者が就職者数の話ばかりするのは、そうしないと事業所が回らないからです。この点だけは、転職先を変えても付いてきます。

この職場の1日は、利用者が帰ったあとに本番が来る

就労移行支援事業所の一日は、他の福祉施設と比べてとても静かです。夜勤がなく、送迎も原則なく、土日祝は休みのところが大半です。介護の現場から移ってきた人が「生活が変わった」と言うのはこの部分です。

典型的な流れを追います。職員の始業は9時前後。利用者が来るのは9時30分や10時からで、それまでの30分から1時間で職員のミーティングをします。話す内容は、昨日欠席した人への連絡、今日の体調が心配な人の共有、実習中の人の様子、面接を控えている人の進捗です。

利用者が到着すると、朝礼があります。体調チェックと今日の予定確認。ここで表情や声のトーンを見て、午前のプログラムに参加できそうかを判断します。精神障害や発達障害のある方が利用者の中心なので、前日の睡眠や服薬の状況で当日のコンディションが大きく変わります。この見極めが支援の起点です。

午前は訓練プログラムです。内容は事業所によって違い、パソコンの操作訓練、ビジネスマナー、軽作業、コミュニケーションの練習、グループワークなどが組まれます。IT系に特化した事業所ではプログラミングやWebデザインを扱い、事務系に寄せた事業所では文書作成と表計算を中心に据えます。職員は講師役として前に立つこともあれば、個別に机を回って手を止めている人に声をかけることもあります。

昼休みを挟んで、午後も同じ構成です。15時から15時30分ごろに一日の振り返りをして、利用者は帰ります。

ここからが本番です。職員の仕事の大半は、利用者が帰ったあとの2時間に詰まっています。個別支援記録の入力、個別支援計画の作成と見直し、実習先との連絡、ハローワークや障害者就業・生活支援センターとの調整、そして企業開拓です。企業開拓というのは、実習や採用を受け入れてくれる会社を探して訪問することです。電話をかけ、資料を送り、面談に行く。この時間が確保できない日は、記録と計画が持ち帰りになります。

就職した人のフォローも、この時間帯に入ります。定着支援のために職場を訪問し、本人と話し、企業の担当者とも話す。制度上は就労定着支援という別のサービスに移行しますが、移行しない人のフォローも実際には発生します。前述したとおり、この定着が事業所の報酬区分を決めるため、ここを手抜きできる事業所はありません。

つまりこの職場の忙しさは、介護施設のような身体的な忙しさではなく、締め切りと段取りの忙しさです。夜勤がない代わりに、頭が休まらない。ここを「楽になった」と感じるか「別の疲れ方だ」と感じるかは、人によってはっきり分かれます。

「辞めたい」を4つに切り分ける

気持ちのまま辞めると、次の職場で同じことが起きます。逆に、原因を切り分けておくと、転職先の選び方が変わります。就労移行支援で「辞めたい」となる理由は、おおむね次の4つに整理できます。

1つめは数字の圧力です。就職者数と定着率が自分の評価に直結しているように感じる。これは制度由来なので、同じ事業種別に移っても付いてきます。

2つめは役割のズレです。支援がしたくて入ったのに、実際には企業開拓という営業活動が業務の相当部分を占めている。これは事業所ごとの分担の設計によるので、職場を変えれば変わる可能性があります。

3つめは利用者との距離です。支援する立場と、就職の可否を見立てる立場を、同じ人が同時に持つことの居心地の悪さ。これは職種の構造に由来します。

4つめは職員体制です。人が足りない、サービス管理責任者が不在、相談できる先輩がいない。これは事業所固有の問題で、移れば解決する確率が最も高い項目です。

自分がどれに引っかかっているかを、紙に書き出してみてください。1つめと3つめが主因なら、事業種別そのものを変えることを検討したほうがいい。2つめと4つめが主因なら、同じ就労移行支援の別の事業所に移るだけで状況は変わります。この見立てを間違えると、転職を繰り返すことになります。

なお、辞めたいと感じているのはあなただけではありません。利用者向けの解説記事にも、同じ趣旨のことが書かれています。

就労移行支援を利用していると、「このまま続けていいのだろうか」「もう通いたくない」と感じる場面に直面することがあります。こうした気持ちは決して特別なものではありません。実際、多くの方が何らかの理由で一度は退所を考えた経験を持っています。むしろ、悩みながら向き合っているからこそ、自分に合った道を模索する視点が生まれるとも言えるでしょう。 出典: mlda.jp

この事業所では、支援する側と支援される側の両方に同じ期限がかかっています。2年という上限は、利用者の焦りであると同時に、職員の焦りでもあります。構造が同じである以上、感じることが似るのは当然です。

数字の圧力:就職者数が、自分の力量の採点表に見えてくる

月末が近づくと、事業所の中の空気が変わります。今月は何人が内定を取ったか、実習に何人出せたか、面接に進んでいる人は何人いるか。管理者はこれを法人の本部に報告し、本部はこれを見て事業所を評価します。

問題は、この数字が職員個人の努力だけでは動かないことです。利用者の就職は、本人の状態、家族の理解、地域の求人状況、企業の障害者雇用の進み具合、その年の景気、これら全部が絡んだ結果として起きます。職員が良い支援をしても、本人の体調が崩れれば就職は先送りになります。逆に、たまたま条件の良い求人が出れば、支援の質と関係なく決まることもあります。

それでも数字は残ります。そして数字だけが記録されます。ここに、この職場で消耗する人の典型的なパターンがあります。自分の支援の良し悪しと、就職者数を同一視してしまうのです。

この二つを切り離す方法が一つだけあります。自分の仕事を「就職させること」ではなく「本人が判断できる材料を揃えること」と定義し直すことです。実習に出て合わなかったという結果も、材料としては成功です。この定義で仕事を記録に残していくと、数字が伸びない月でも自分が何をしたのかを説明できるようになります。面接でも、この言語化ができている人は評価されます。

もう一つ現実的な話をします。就職実績が極端に少ない事業所は、報酬区分が下がり、経営が苦しくなります。すると人員を増やせず、一人あたりの負担が増え、さらに実績が落ちるという循環に入ります。あなたの事業所がこの循環に入っている場合、個人の頑張りで抜け出すのは難しい。事業所の前年度の就職者数と定着率は、管理者に聞けば分かります。聞いてみて、区分が下位に張り付いているなら、それは職場を変える理由として十分です。

役割のズレ:支援職として入ったのに、業務の半分が企業開拓だった

これは転職相談でよく出る話です。求人票には「就労支援員」「生活支援員」と書かれていた。面接でも支援の話をした。ところが入ってみると、週の半分は企業を回っていた。

就労移行支援事業所において企業開拓は不可欠な業務です。実習先がなければ訓練は実務につながらないし、採用の可能性がある企業を知らなければ就職支援は成立しません。ただし、この業務が誰の担当になるかは事業所ごとにまったく違います。

分担の型は3つあります。1つめは、就労支援員が企業開拓を専任する型。この場合、職業指導員と生活支援員は訓練と日常の支援に集中できます。2つめは、管理者やサービス管理責任者が企業開拓を引き受ける型。3つめは、全職員が担当利用者の就職先を自分で開拓する型です。3つめの事業所に、支援だけをやりたい人が入ると、確実にズレます。

企業開拓の仕事の中身は、率直に言って営業です。電話でアポイントを取り、会社に出向き、自社の事業と障害者雇用の制度を説明し、実習の受け入れを打診する。断られる回数のほうが圧倒的に多い。福祉の勉強をしてきた人にとっては、技術的にも心理的にも慣れない仕事です。

ただし、この経験には市場価値があります。企業側の事情を理解している支援員は、どの現場でも重宝されます。障害者就業・生活支援センター、就労定着支援事業所、特例子会社、人材紹介会社の障害者雇用部門。いずれも企業と話せる人を求めています。今つらい業務が、次の職場での強みになる可能性はきちんと計算に入れてください。

ズレが我慢できないレベルなら、転職時に確認する質問は決まっています。「企業開拓は誰が担当していますか」「就労支援員と生活支援員の業務分担を教えてください」「一週間の中で、外出と事業所内の仕事の比率はどれくらいですか」。この3問で分担の型は判明します。

利用者との距離と、職員体制の薄さが重なると逃げ場がなくなる

就労移行支援の支援員は、二つの立場を同時に持っています。本人に寄り添って一緒に考える立場と、この人は今就職できる状態かを見立てる立場です。この二つは、本来なら別の人が担うほうが自然です。医療で言えば主治医と産業医が別人であるのと同じ構図です。

ところが事業所の規模では分けられません。同じ職員が、朝は「無理しなくていいですよ」と言い、午後には「そろそろ実習に出ましょう」と言うことになります。利用期間に2年という上限がある以上、後者を言わないわけにはいかない。この矛盾を毎日抱えるのは、想像以上に消耗します。

ここに職員体制の薄さが重なると、逃げ場がなくなります。就労移行支援事業所は、常勤換算で数名という小さな職場です。相性の合わない同僚が一人いるだけで、日常の大半が苦しくなります。判断に迷ったときに相談できる先輩がいなければ、自分の見立てが正しいのかを確かめる手段がありません。

特に深刻なのが、サービス管理責任者が不在または不在に近い状態です。サービス管理責任者は個別支援計画の作成とサービス提供プロセスの管理を担う要の役職で、配置されていなければ報酬の減算対象になります。この人が実質的に機能していない事業所では、個別支援計画の作成が形骸化し、支援の方向性が職員ごとにばらばらになります。そして計画の作成期限が迫るたびに、現場が慌てて帳尻を合わせる。この状態が続いている職場は、支援の質以前に運営が壊れています。

判断の目安を一つ挙げます。過去1年で職員が何人辞めたか。定員20人規模の事業所で、常勤職員が1年に2人以上入れ替わっているなら、それは個人の問題ではなく職場の問題です。面接でこの質問をするのは失礼ではありません。むしろ答え方でその事業所の誠実さが分かります。

運営法人の性格で、同じ制度の事業所がここまで変わる

同じ就労移行支援でも、運営している法人の種類によって、職場の空気はまったく違います。ここを知らずに転職すると、また同じ場所に着地します。

株式会社が運営する全国展開型の事業所は、管理の仕組みが整っています。訓練プログラムが標準化されており、マニュアルがあり、研修の体系もある。未経験で入っても、教わる順番が決まっているので迷いません。その代わり、数値管理は細かい。週次で進捗を報告し、目標に対する達成度を問われます。本部の方針で訓練内容が変わることもあります。

社会福祉法人やNPO法人が運営する事業所は、地域に根ざしていることが多く、利用者一人ひとりに時間をかける傾向があります。長く勤めている職員が多く、地域の企業や関係機関とのつながりも厚い。一方で、仕組みが属人的で、マニュアルが整備されていないことがあります。人手が足りず、一人が何役も兼ねている事業所も珍しくありません。

医療法人が運営する事業所では、併設の精神科と連携が取れているため、医療情報の共有がスムーズです。主治医との距離が近いことは、精神障害のある方の支援において大きな利点になります。

どれが良いという話ではありません。数字の管理が苦しいなら株式会社系から福祉法人系へ、教えてくれる人がいないのがつらいなら福祉法人系から株式会社系へ、という具合に、自分が何に耐えられないかで選ぶ方向が決まります。

もう一つ見ておくべきは、その法人が就労移行支援以外にどんな事業を持っているかです。就労継続支援A型やB型、グループホーム、相談支援事業所を併設している法人なら、事業所内で異動する道があります。就労移行支援だけを単独でやっている法人は、合わなかったときの逃げ道が退職しかありません。

辞めると決めたら、書類を取ってから出る

ここからは実務の話です。退職そのものより、退職の前後に取るべきものがあります。順に説明します。

最優先は実務経験を証明する書類です。サービス管理責任者や相談支援専門員になるには、定められた年数の実務経験が必要で、その年数は勤務先の事業所が発行する実務経験証明書で証明します。この書類は、在職中か退職直後なら数日で出ます。ところが辞めて数年経つと、担当者が代わり、法人が事業を撤退し、最悪の場合は事業所そのものが閉鎖して、証明のしようがなくなります。これで研修の受講要件を満たせなくなった方を、私は何人も見ています。辞めると決めた時点で、総務か管理者に「実務経験証明書をいただきたい」と伝えてください。様式は自治体が指定していますが、勤務期間と職種と業務内容が書かれた書面を先にもらっておくだけでも違います。

次に退職の申し出時期です。就業規則に「退職の1か月前までに申し出ること」と書かれている事業所が多いはずです。一方で民法では、期間の定めのない雇用契約は、解約の申し入れから2週間が経過すれば終了すると定められています。つまり法律上は2週間で辞められます。ただし、これを盾に短期で辞めると、引き継ぎが不十分になり、担当していた利用者に影響が出ます。就労移行支援は担当制を取っている事業所が多く、支援の引き継ぎには時間がかかります。私の意見としては、就業規則の期間に従ったうえで、個別支援計画と記録を整理して渡すのが現実的です。なお、退職を認めないと言われたり、損害賠償をほのめかされたりした場合は、その時点で労働基準監督署か弁護士に相談してください。辞める自由は法律で守られています。

有給休暇も忘れずに確認します。残日数は給与明細か勤怠システムで分かります。退職日を有給消化の後ろに設定すれば、消化しきれる可能性が高くなります。買い取りは原則として義務ではないため、消化するほうが確実です。

賞与の支給要件も確認してください。就業規則に「支給日に在籍していること」と書かれている場合、支給日の前日に退職すると受け取れません。数週間の調整で結果が変わる話です。

最後に、資格取得のための研修受講歴や、事業所で受けた外部研修の修了証を手元にまとめておきます。転職先で提出を求められることがあります。

辞めた後、どこへ行くと何が変わるか

就労移行支援で働いた経験は、隣接する領域でそのまま使えます。行き先ごとに、任される範囲がどう変わるかを整理します。

就労継続支援B型に移ると、期限のプレッシャーが消えます。B型には利用期間の上限がなく、一般就労を目指すことが必須ではありません。工賃向上という目標はありますが、就職者数で報酬が決まる構造ではないため、数字の圧力の質が変わります。じっくり関わりたい人に向いています。

就労継続支援A型は、利用者と雇用契約を結ぶ点が決定的に違います。つまり利用者は労働者であり、最低賃金が適用され、労働時間の管理が必要です。支援員は支援者であると同時に、事業運営の一部を担うことになります。生産活動の収支で賃金を賄う必要があるため、経営的な視点が求められます。

就労定着支援事業所は、就職した後の支援に特化しています。企業訪問と本人面談が中心で、訓練は行いません。就労移行支援で企業開拓をやってきた人には、経験がそのまま活きる場所です。

障害者就業・生活支援センター、いわゆるナカポツは、地域の中核機関として就業面と生活面の両方を支援します。守備範囲が広く、関係機関との調整が仕事の中心になります。就労移行支援で外部との調整を多く経験した人が移ると、力を発揮しやすい。

特例子会社や一般企業の障害者雇用担当も選択肢です。この場合、立場が支援機関から企業側に変わります。受け入れる側の事情を内側から見ることになり、視野が変わります。

相談支援専門員として相談支援事業所に移る道もあります。ただしこれには実務経験年数と研修修了が必要です。だからこそ、前の節で書いた実務経験証明書が効いてきます。

福祉の外に出る人もいます。人材紹介会社の障害者雇用部門、企業の人事、健康経営の支援部門。いずれも障害のある人の就労について実務を知っている人を探しています。

支援の技術は、事業所の外でも値段がつく

20年にわたって在宅ワークとフリーランスの市場を見てきた立場から言うと、就労移行支援の職員が持っている技術は、外の市場でかなり評価されます。本人の状態を見立てて、できることとできないことを切り分け、実行可能な手順に落とす。これは、業務設計そのものです。

実際に増えているのが、訓練プログラムの一部を外部の専門家に委託する形です。パソコン操作、文書作成、ビジネスマナー、面接練習。これらを業務委託で担当する人が出てきています。事業所の正職員として勤めながら、別の事業所の講座を単発で引き受けるという働き方も成立します。組織を介さない直接の取引なら中間マージンが乗らないため、依頼する側は同じ予算でより多く頼め、引き受ける側は手取りが厚くなります。運営者として見てきた限りでは、この構造を早くから使っている人ほど、本業の選択肢を広く保てています。

訓練で文書作成を教える立場なら、自分自身が体系的な基準を持っておくと教え方が安定します。ビジネス文書の型と作法を測る検定は、その基準として使いやすいものです。出題範囲と難易度はビジネス文書検定にまとまっています。IT系の訓練を担当している方や、利用者の進路としてIT分野を扱う方には、ネットワークの入門資格の位置づけを整理したCCNA(シスコ技術者認定)が、どの資格がどの職種につながるかを判断する材料になります。

就職先の候補を利用者と一緒に考えるとき、その職種の収入水準を知っているかどうかで会話の具体性が変わります。IT職の収入帯はソフトウェア作成者の年収・単価相場に、文章に関わる職種の相場は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっています。在宅で完結する職種を進路に含めるなら、アプリケーション開発のお仕事のように、実際の仕事の流れが書かれた資料を利用者と一緒に読むのが早い。

オンラインでの面談や在宅訓練を取り入れている事業所も増えました。どのツールを使うかで、参加のしやすさが変わります。主要な会議ツールの違いはZoom・Teams・Google Meetを比較|フリーランスの打ち合わせに最適なのは?【2026年版】に整理されています。

最後にひとつ。辞めるという判断そのものは、あなたの権利です。就業規則と法律の範囲で手続きを踏めば、誰にも止められません。ただ、出ていく前に切り分けだけはしておいてください。何が苦しかったのかを言葉にできていれば、次の職場を選ぶ基準になりますし、面接で説明もできます。切り分けができていない状態で辞めると、同じ理由でまた辞めることになります。法律はあなたの味方ですが、選び方までは守ってくれません。

よくある質問

Q. 就労移行支援の職員は、何か月前に退職を申し出るべきですか?

就業規則に1か月前と定めている事業所が多く、まずはそれに従うのが無難です。法律上は、期間の定めのない雇用なら申し入れから2週間で契約は終了します。ただし担当制の事業所では引き継ぎに時間がかかるため、個別支援計画と記録を整理する期間を見込んで伝えるのが現実的です。

Q. 辞める前に必ずもらっておく書類は何ですか?

実務経験証明書です。サービス管理責任者や相談支援専門員になるには一定年数の実務経験が必要で、その証明は勤務先の事業所が発行します。退職から年月が経つと担当者が代わったり事業所が閉鎖したりして、証明が取れなくなります。辞めると決めた時点で依頼してください。

Q. 就職者数のプレッシャーは、事業所を変えれば軽くなりますか?

完全にはなくなりません。就労移行支援の基本報酬は、前年度に就職して6か月以上定着した人の割合で決まる仕組みだからです。ただし定着率の区分が上位にある事業所は経営に余裕があり、人員も確保できているため、体感の圧力は変わります。面接で前年度の実績を確認してください。

Q. 就労移行支援を辞めたあと、どんな職場に移る人が多いですか?

就労継続支援A型やB型、就労定着支援事業所、障害者就業・生活支援センターが近い行き先です。期限の圧力を外したいならB型、企業開拓の経験を活かすなら就労定着支援やナカポツが向いています。特例子会社や一般企業の障害者雇用担当に移り、受け入れる側に回る人もいます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月7日最終更新:2026年9月14日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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