小規模多機能型居宅介護を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

長谷川 奈津
長谷川 奈津
小規模多機能型居宅介護を辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと

この記事のポイント

  • ✓小規模多機能型居宅介護を辞めたいと感じたとき
  • ✓仕事の性質・運営・人間関係のどこがつらいのかを切り分ける方法を整理しました
  • ✓退職の申し出の法的ルール

小規模多機能型居宅介護で働いていて、「もう辞めたい」と感じている方へ。朝の送迎、フロアの入浴介助、昼過ぎの訪問、月に何度かの夜勤。1つの職場で全部をこなしているのですから、疲れるのは当然です。

結論から言うと、辞めるかどうかを決める前に、「何がつらいのか」を3つに分けてください。小規模多機能という仕事の性質がつらいのか、今の事業所の運営のしかたがつらいのか、特定の人との関係がつらいのか。この3つのどれかによって、選ぶべき道がまったく変わります。仕事の性質が合わないならサービスの種類を変える。運営が合わないなら同じ小規模多機能の別の事業所へ移る。人間関係なら、相談や異動で解決できることもあります。

これ、混ぜたまま辞めてしまう人が本当に多いんです。そうすると、次の職場でも同じつらさを抱えます。この記事では、切り分けの方法と、辞めると決めたときに知っておくべき法律上のルールを順に整理します。

小規模多機能を辞めたくなる理由は、職場の仕組みから来ている

まず、小規模多機能で「辞めたい」という声が出やすい背景を押さえておきます。自分の弱さのせいだと思い込んでいる方が多いのですが、多くは職場の仕組みから来ています。

小規模多機能型居宅介護は、登録した利用者に「通い」「訪問」「泊まり」の3つを組み合わせて提供する地域密着型サービスです。登録定員は29人以下、1日の通いは原則15人以下、泊まりは9人以下と小さな単位で運営されています。そして、多くの事業所では、同じ職員がこの3つを行き来します。

小規模多機能居宅介護は業務の幅が広いのが特徴ですが、「業務量と給与が見合っていない」と感じる介護職員も少なくありません。厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、小規模多機能型居宅介護に従事する介護職員の平均給与は289,520円となっており、ほかの介護サービスに比べてやや低めの金額です。 出典: job.kiracare.jp

つまり、仕事の幅が広いわりに、給与がそれに見合って高いわけではない、という構造があるということです。これが、辞めたい理由の土台になっています。

仕組みから来るつらさは、主に次の4つです。

1つ目は、当日の予定変更の多さです。料金が月額定額なので、家族は「今日は夕方まで預かってほしい」「午後に様子を見に行ってほしい」と気軽に頼めます。事業所がそれを受けると、職員のその日の段取りが組み直しになります。

2つ目は、業務の幅の広さです。身体介護、送迎の運転、訪問での家事支援、夜勤、家族との連絡調整。1つのことに集中できないまま1日が終わる感覚を持つ方が多いです。

3つ目は、夜勤の負担です。泊まりの夜は少ない人数で見るので、一人で判断する場面が出てきます。

4つ目は、職員の少なさです。十数人程度の職場では、誰か1人が休むと残りの人に負担が集中し、人間関係の影響も大きくなります。

この4つは、どの小規模多機能にもある程度共通しています。ただし、その「程度」が事業所ごとにかなり違う。ここが、切り分けのポイントになります。

最初にやること:つらさを「仕事の性質」「運営」「人」に分ける

辞めたい気持ちが強いときほど、つらさが1つの大きなかたまりに見えます。それを分解する作業から始めてください。

やり方は簡単です。1週間ほど、つらいと感じた場面をメモに書き出します。「月曜、急な泊まりの依頼で訪問の時間がずれて、利用者宅で謝った」「水曜の夜勤、転倒があってオンコールがなかなかつながらなかった」「金曜、申し送りで意見を言ったら先輩に無視された」。できるだけ具体的に書きます。

そのうえで、1つずつ次の3つに分類します。

仕事の性質から来るもの:予定変更の多さそのもの、業務の幅の広さそのもの、家族対応があること自体、夜勤があること自体。これは小規模多機能というサービスに固有の特徴なので、別の小規模多機能に移っても大きくは変わりません。

運営のしかたから来るもの:夜勤の回数が多すぎる、夜勤が1人きりでオンコールの体制があいまい、訪問の担当が特定の職員に偏っている、予定の組み直しを管理者が引き受けず現場に丸投げしている、人員が基準ぎりぎりで休みが取れない、給与の説明がない。これは事業所ごとの違いなので、職場を移ると変わる可能性が高いです。

人から来るもの:特定の上司や同僚の言動、管理者の姿勢、職員同士の派閥。少人数の職場では影響が大きいですが、相談や配置の見直しで変わる余地があります。

分類してみると、意外なことに気づく方が多いです。以前、介護の現場で働く方の相談にのったとき、その方は「小規模多機能はもう無理」と話していました。ところが一緒に書き出してみると、つらさのほとんどが「夜勤明けにそのまま日勤の人手に数えられている」という運営の問題でした。仕事の中身は好きだったんです。その方は結局、夜勤明けの扱いがはっきり決まっている別の事業所に移って、今も小規模多機能で働いています。

この切り分けをせずに辞めると、「介護そのものが向いていない」と結論づけて、せっかく積んだ経験を手放してしまうことがあります。逆に、仕事の性質が合っていないのに同じ種類の事業所を渡り歩いて、毎回同じ理由で辞めてしまうこともあります。どちらも避けたいところです。

分類するときに1つ注意してほしいのは、同じ出来事でも、見方によって分類が変わることです。たとえば「急な泊まりの依頼が入って大変だった」という出来事。依頼が入ること自体は仕事の性質ですが、「依頼を受けるかどうかを管理者が現場の状況を聞かずに決めた」のであれば運営の問題です。「依頼が入ったとき、特定の職員だけが残業を押しつけられた」のであれば人の問題です。

ですから、書き出すときは「何が起きたか」だけでなく、「そのとき、何が一番嫌だったか」まで書いてください。出来事そのものより、そのときの自分の気持ちのほうが、つらさの正体を正確に教えてくれます。

もう1つ、体調の変化も合わせて記録しておくことをおすすめします。眠れない、食欲がない、出勤前に動悸がする、休日も仕事のことが頭から離れない。こうした状態が2週間以上続いている場合は、切り分けより先に、医療機関で相談してください。心身が限界に近い状態で冷静な判断をするのは、誰にとっても難しいことです。

夜勤と一人での判断がつらいとき

小規模多機能を辞めたい理由で、とくに多いのが夜勤です。

前述のとおり、小規模多機能型居宅介護は宿泊にも対応するので、夜勤もあります。夜勤中に利用者さんの急変があった場合は、自らの判断で責任を持って対処していかなければなりません。特に、1人で夜勤に対応する場合は、精神的な負担が大きいと感じる介護職員も多いでしょう。なお、小規模多機能型居宅介護の1日の定員は、通いが18名、宿泊が9名と小規模であるのが特徴です。そのため、宿泊に対応する夜勤の介護職員の人数も少なく、1~2名で対応するのが基本となります。 出典: job.kiracare.jp

人員配置の基準では、夜間は夜勤の職員1人以上と、宿直の職員1人以上を置くことになっています。宿直の職員は、登録者の自宅から呼び出しがあったときに訪問に出る役割を担うことが多いので、泊まりのフロアを実際に見ているのは夜勤者1人、という時間帯が生まれます。

夜勤のつらさも、切り分けが必要です。

「夜勤があること自体がつらい」「生活リズムが崩れて体調を崩した」という場合は、仕事の性質の問題です。夜勤のないデイサービスや訪問介護に移るか、同じ小規模多機能でも夜勤なしの雇用形態に切り替えられないか相談することになります。

「夜勤の回数が多すぎる」「急変時に相談できる人がいない」「オンコールの電話がつながらない」という場合は、運営の問題です。看護職員や管理者のオンコール体制、急変時の対応手順書、夜勤の回数の上限は、事業所の努力で改善できる部分です。

ここで1つ、知らない人が本当に多い法律の話をしておきます。夜勤中の「仮眠時間」の扱いです。

夜勤の中に仮眠時間が設けられていて、その時間は休憩扱いで賃金が出ていない、というケースがあります。ところが、仮眠中であっても、コールが鳴れば起きて対応しなければならない状態に置かれているなら、その時間は労働時間にあたると判断された最高裁の判例があります(大星ビル管理事件、平成14年2月28日判決)。つまり、「仮眠していいけど、何かあったら起きてね」という状態は、法律上は休憩ではなく待機、つまり働いている時間と評価される可能性があるということです。

また、22時から翌朝5時までの深夜の時間帯に働いた分には、労働基準法で25%以上の割増賃金を払うことが決められています。夜勤手当が定額で出ていても、深夜割増の分が含まれているのかどうかは、給与明細と就業規則で確認しておきましょう。

※実際に未払いの賃金を請求するかどうか、いくらになるかは、勤務実態によって判断が分かれます。このケースでは、労働基準監督署の相談窓口や、労働問題を扱う弁護士に相談してください。

給与と業務量が見合わないとき

先ほど引用したとおり、小規模多機能の介護職員の給与は、ほかの介護サービスと比べて突出して高いわけではありません。一方で、仕事の幅は広い。この差に不満を持つのは、まったくおかしなことではありません。

給与の不満も、切り分けてみます。

まず、相場と比べて低いのかどうかを確かめます。介護職員の給与は、地域や法人の規模、資格の有無、夜勤の回数で大きく変わります。職種ごとの給与の分布は介護職員の年収・単価相場にまとめられているので、自分の給与が相場のどのあたりにあるかを一度確認してみてください。相場並みなのに不満がある場合は、給与の額より「業務の幅」のほうに不満の中心があるのかもしれません。

次に、処遇改善の手当がどう支給されているかを見ます。2024年6月から、介護職員の処遇改善のための加算は「介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。事業所はこの加算を受け取った場合、その額を職員の賃金改善に使う決まりになっています。どういう配分で支給されているかは、職員に周知することが求められています。明細に処遇改善の手当が見当たらない、説明を受けたことがない、という場合は、管理者に配分の方法を聞いてみてよい内容です。

3つ目に、残業代や夜勤の割増が正しく払われているかを確認します。訪問の記録を勤務時間外に書いている、送迎が終わったあとの片付けが毎日30分ほどタイムカードを押したあとになっている。こうした時間も、使用者の指示のもとで行っているなら労働時間です。

給与の問題は、事業所を変えれば改善することが多い部分です。同じ小規模多機能でも、法人が大きく複数の事業所を運営しているところと、単独で運営しているところとでは、給与の体系や昇給のしくみがかなり違います。資格手当の額、夜勤手当の額、賞与の実績は、転職活動の際に必ず比べてください。

介護福祉士の資格を持っている、あるいは取得が近いという方は、資格手当や役職の有無で給与が大きく変わる事業所を選ぶことで、同じ仕事内容でも手取りが増える可能性があります。

給与の不満を管理者に伝えるときは、感情ではなく事実で伝えるのがコツです。「給料が安い」ではなく、「今月は夜勤が5回、訪問が20件あり、記録のために毎日30分ほど残っています。この時間の扱いを確認させてください」と伝える。こうすると、相手は具体的に答えざるを得なくなります。答えがあいまいだったり、話そのものを嫌がられたりした場合は、その反応自体が、その事業所の運営を判断する材料になります。

なお、雇用契約を結ぶときには、賃金の決め方や支払い方法、労働時間などを書面で明示することが労働基準法で義務づけられています。入職時にもらった労働条件通知書や雇用契約書が手元にあれば、今の給与の支給内容と食い違っていないか見直してみてください。書面をもらった記憶がない場合は、事業所に交付を求めることができます。

人間関係やハラスメントがつらいとき

少人数の職場では、人間関係の問題が逃げ場のない形で表に出ます。同じ職員と毎日のように顔を合わせ、夜勤の引き継ぎでも、送迎の車の中でも一緒です。

人間関係のつらさは、2つに分けて考えてください。

1つは、仕事の進め方の違いから来る摩擦です。「あの人は訪問に出たがらない」「ケアのやり方が統一されていない」「申し送りで情報が回ってこない」。これは、業務の決まりごとを話し合う場があれば、ある程度は解消できます。管理者に「この方の対応を全員で統一したい」と業務の話として持ちかけると、個人攻撃に聞こえにくくなります。

もう1つは、ハラスメントにあたる言動です。人前で繰り返し怒鳴られる、無視される、必要な情報を意図的に渡されない、休みを取らせてもらえない、体を触られる。これは我慢すべきものではありません。

労働施策総合推進法によって、事業主にはパワーハラスメントを防ぐための措置を講じることが義務づけられています。つまり、相談を受ける窓口を設けたり、相談があったときに事実を確認して対応したりすることは、事業所の義務だということです。小さな事業所であっても、この義務は変わりません。

ハラスメントを受けていると感じたら、まず記録を残してください。日時、場所、言われたことやされたこと、その場にいた人。スマートフォンのメモでかまいません。記録があると、法人の本部や相談窓口、外部の機関に相談するときに、話が具体的に伝わります。

事業所の中で相談できる相手がいない場合は、法人の本部に相談窓口がないか確かめます。それも難しい場合は、各都道府県の労働局や労働基準監督署の中にある総合労働相談コーナーに相談できます。相談は無料で、予約なしで電話でも受け付けています。

※身体的な暴力や、セクシュアルハラスメントで被害が大きい場合は、早めに弁護士や警察への相談も検討してください。

小規模多機能に特有の問題として、利用者や家族からのハラスメントもあります。訪問で自宅に一人で入ったときに暴言を受ける、家族から深夜に何度も電話がかかってくる、送迎の車内で体を触られる。職員が一人で利用者宅に行く訪問があるぶん、施設よりも逃げ場がない状況が生まれやすいのです。

厚生労働省は、介護現場における利用者や家族からのハラスメントについて、事業者向けの対策マニュアルを公表しています。そこでは、ハラスメントを受けた職員が一人で抱え込まず、事業所として組織的に対応することが求められています。つまり、「利用者さんだから我慢して」と職員に言うだけの対応は、本来あるべき姿ではないということです。訪問を2人体制にする、担当を変える、ケアマネジャーや家族と話し合う。こうした対応を事業所に求めてかまいません。

辞める前に、変えられることがないか確かめる

切り分けの結果、運営や人の問題が中心だと分かったら、辞める前に変えられることがないか確かめておく価値があります。職場を移るのにも、けっこうな労力がかかるからです。

1つ目は、管理者への具体的な相談です。「つらいです」だけでは、相手も何をすればよいか分かりません。「夜勤を月3回までにしてほしい」「訪問の担当を持ち回りにしてほしい」「夜勤明けは日勤の人数に数えないでほしい」と、具体的な要望にして伝えます。少人数の事業所だからこそ、要望が通りやすいこともあります。

2つ目は、法人内の異動です。複数の事業所を運営している法人なら、同じ法人のデイサービスやグループホーム、特養に異動できる場合があります。退職金や勤続年数、有給休暇の日数を引き継げるので、転職よりも失うものが少ない選択肢です。

3つ目は、雇用形態の変更です。常勤から、夜勤のない日勤のみのパートに切り替える。あるいは週の勤務日数を減らす。子育てや介護、体調の問題で今の働き方が難しい場合、辞めるのではなく働き方を変えることで続けられることがあります。

4つ目は、休職です。心身の不調で辞めたい気持ちが強くなっている場合は、就業規則に休職の制度がないか確認してください。医師の診断書があれば、健康保険の傷病手当金を受けながら休むことができる場合もあります。辞めるかどうかの判断は、体調が戻ってからでも遅くありません。

相談するときは、口頭で伝えただけで終わらせないことも大切です。話し合った日付と、管理者が「来月から夜勤を減らす」「訪問の担当を見直す」と答えた内容を、自分のメモに残しておきます。可能であれば、面談のあとに「本日はありがとうございました。夜勤の回数については来月のシフトから見直していただけるとのこと、よろしくお願いします」と、短いメッセージで確認しておくと、言った言わないの行き違いを防げます。

少人数の職場では、相談したこと自体が他の職員に伝わってしまうのではないか、と心配される方もいます。その不安がある場合は、面談の最初に「この話は、まず管理者さんだけに聞いていただきたいです」と伝えておきましょう。

これらを試しても変わらなかったとき、あるいは話を聞いてもらえなかったときに、はじめて辞める判断をする。この順番を踏んでおくと、あとで「あのとき相談しておけば」と後悔することが少なくなります。

辞めると決めたときの手順と、法律上のルール

辞めると決めたら、次は手順です。ここは法律の話が多いので、1つずつ説明します。

退職の申し出はいつまでに

期間の定めのない雇用、つまり正社員などの無期雇用の場合、民法627条によって、退職を申し出てから2週間がたてば雇用契約は終了します。つまり、法律上は、会社の許可がなくても2週間前に申し出れば辞められるということです。

ただし、就業規則には「退職の1か月前までに申し出ること」と書かれていることが多いです。小規模多機能は職員が少なく、シフトは1か月単位で組まれていることがほとんどです。利用者への影響と、残る職員への負担を考えると、就業規則に沿って1か月から2か月前に伝えるのが、実務上は円満です。

契約社員やパートなど、期間の定めのある雇用の場合は少し違います。原則として、契約期間の途中で辞めるには「やむを得ない事由」が必要です(民法628条)。ただし、1年を超える期間の契約で、働き始めてから1年がたっている場合は、労働基準法137条によって、申し出ればいつでも退職できます。契約書の期間を確認しておきましょう。

有給休暇

退職前に残っている有給休暇を使うことは、労働者の権利です。使用者には、事業の運営に支障がある場合に休暇の時期を変えてもらう「時季変更権」がありますが、退職日より後に変えることはできません。つまり、退職日までの間に有給休暇を消化したいという申し出は、事実上断りにくいということです。

とはいえ、少人数の職場で急に長期間抜けると、残る職員が大変になります。退職の申し出と同時に「最終出勤日」と「有給休暇の消化期間」を示し、シフトを組む管理者と相談しながら決めると、関係をこじらせずに済みます。

雇用保険

次の職場が決まっていない場合は、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)を受けられるかどうかも確認します。自己都合で退職した場合、手当が出るまでに給付制限期間があります。2025年4月からは、この期間が原則1か月に短縮されました。

また、賃金の未払い、長時間の残業、ハラスメントなどが原因で辞めた場合は、「特定受給資格者」などとして給付制限がかからない扱いになる可能性があります。これ、知らない人が本当に多いんです。どちらに当たるかを判断するのはハローワークなので、先ほど書いた記録や給与明細は、退職後もしばらく保管しておいてください。

引き継ぎと利用者への配慮

小規模多機能では、利用者となじみの関係ができています。とくに認知症のある利用者にとって、なじみの職員がいなくなることは不安の原因になります。担当していた利用者について、入浴を嫌がるときの声のかけ方、訪問で気をつけている家の中の段差、家族の連絡の取りやすい時間帯など、記録に残っていない情報を引き継ぎのメモにまとめておくと、残る職員が助かります。

利用者や家族に退職をどう伝えるかは、管理者と相談して決めてください。事業所の方針がある場合が多いです。

次の職場で同じことを繰り返さないために

最後に、次の職場選びです。最初に切り分けた「つらさの中心」によって、選ぶべき職場が変わります。

仕事の性質が合わなかった場合、つまり予定変更の多さや業務の幅そのものがつらかった場合は、別の種類のサービスを検討します。1日の流れが固定されやすいのはデイサービスです。一人で利用者と向き合いたい人には訪問介護、身体介護の技術を深めたい人には特養、認知症ケアに集中したい人にはグループホームが候補になります。小規模多機能で経験した3つのサービスのうち、どれが一番楽しかったかを思い出すと、方向性が見えてきます。

運営が合わなかった場合は、同じ小規模多機能の別の事業所が候補になります。この場合、求人票と面接で次の点を必ず確認してください。

・夜勤の月あたりの回数、夜勤の人数、オンコールを誰が受けるのか ・夜勤明けの扱い、仮眠時間の扱い ・訪問の担当が固定か持ち回りか、運転が必須か ・当日の予定変更を誰が組み直すのか ・処遇改善の手当の配分と、資格手当の額 ・今いる職員の勤続年数

人間関係が合わなかった場合は、見学のときに職員同士のやり取りを見ることが一番の判断材料になります。申し送りの様子、管理者が現場に入っているかどうか、職員が利用者の前で互いにどう声をかけているか。求人票からは分からない部分なので、見学を断る事業所は候補から外してもよいくらいです。

転職活動の順番にも気をつけてください。つらさが強いと、今の職場を先に辞めてから次を探したくなります。ただ、収入が途切れた状態で探すと、焦って条件を十分に確かめないまま決めてしまいがちです。体調に大きな問題がないのであれば、在職中に見学や面接を進め、内定を得てから退職を申し出るほうが、次の職場を冷静に選べます。

面接で前の職場を辞めた理由を聞かれたときは、切り分けた内容がそのまま使えます。「夜勤の体制に不安があり、急変時の相談先が明確な職場で働きたいと考えました」と伝えれば、前の職場の悪口にならず、次の職場に何を求めているのかも伝わります。

看護師の資格を持っている方は、小規模多機能の看護職員から、訪問看護や看護小規模多機能型居宅介護に移る道もあります。職種ごとの働き方と給与の分布は看護師の年収・単価相場で比べられるので、次の職場を考える材料にしてみてください。

現場を長く見てきた立場から、辞めるかどうか迷う人へ

働く人と職場の組み合わせを長く見てきた立場から言うと、辞めたあとに「辞めてよかった」と話す人と、「辞め方を間違えた」と話す人の違いは、辞めた理由をどこまで言葉にできていたかにあります。

辞めてよかったと話す人は、「夜勤明けを日勤に数える運営が合わなかった」「予定が毎日変わる働き方より、流れが決まっている職場のほうが力を出せる」と、理由を具体的に言えます。だから次の職場を選ぶとき、面接で確認すべきことがはっきりしています。

辞め方を間違えたと話す人の多くは、つらさが限界に達したところで、理由を整理しないまま辞めています。退職の申し出でもめたり、有給休暇を使わずに辞めたり、次の職場で同じ問題にぶつかったりしています。

もう1つ見てきたのは、小規模多機能を経験した人は、次の職場で評価されやすいということです。通いのフロアでの集団の見守り、訪問での在宅の生活支援、泊まりでの夜間対応、家族との利用調整。これを全部経験している介護職員は、実はそれほど多くありません。デイサービスに移れば送迎や家族対応に慣れた人として、訪問介護に移れば利用者の生活全体を見られる人として、特養に移れば夜勤経験のある人として重宝されます。

ですから、「小規模多機能で続かなかった自分は、どこへ行っても通用しない」と考える必要はまったくありません。むしろ、幅広い現場を知っていることは、次の職場で自分に合う役割を見つけるための強みになります。

自分一人で整理するのが難しいときは、第三者と話すのも有効です。働き方の悩みや職場選びの軸を一緒に整理する専門職として、キャリアコンサルタントがあります。資格の役割と、どんな相談ができるのかがまとめられています。また、職場の悩みや転職の迷いを聞く仕事の中身は職場・転職・キャリア相談のお仕事で紹介されているので、どんな相談先があるのかを知る手がかりになります。

小規模多機能で、通い・訪問・泊まりを全部経験してきたことは、次にどの職場を選んでも無駄になりません。辞めることは逃げではありませんし、残ることも我慢ではありません。自分のつらさの正体を分けて見たうえで選んだ道なら、どちらを選んでも納得できるはずです。法律は、そうやって自分で選ぶ人の味方です。

よくある質問

Q. 小規模多機能型居宅介護を辞めたいと感じる理由で多いのは何ですか?

当日の予定変更の多さ、通い・訪問・泊まりにわたる業務の幅、少人数での夜勤、そして業務量に比べて給与が見合わないと感じることが多く挙げられます。辞める前に、それが仕事の性質から来るのか、事業所の運営から来るのか、人間関係から来るのかを分けて考えると、次の選択を誤りにくくなります。

Q. 退職は何日前までに伝えればよいですか?

正社員など期間の定めのない雇用なら、民法上は申し出から2週間で退職できます。ただし就業規則で1か月前などと定められていることが多く、シフトが月単位で組まれる小規模多機能では1〜2か月前に伝えるのが円満です。契約社員など期間の定めがある場合は、契約期間と労働基準法137条の要件を確認してください。

Q. 夜勤の仮眠時間に給料が出ないのは違法ですか?

仮眠中でもコールがあれば対応しなければならない状態なら、その時間は労働時間にあたると判断された最高裁判例があります。休憩として無給扱いにされている場合は、勤務実態によって未払いの賃金が生じている可能性があります。実際の判断は実態次第なので、労働基準監督署の相談窓口や弁護士に相談してください。

Q. 小規模多機能を辞めたあと、どんな転職先がありますか?

予定変更の多さがつらかった人には流れが固定されやすいデイサービス、一人で利用者と向き合いたい人には訪問介護、認知症ケアに集中したい人にはグループホームが候補です。運営だけが合わなかった場合は、夜勤体制や訪問の担当のしかたが違う別の小規模多機能へ移ることで解決することもあります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月7日最終更新:2026年9月18日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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