特別養護老人ホームを辞めたいと思ったとき|出ていく前に切り分けておくこと


この記事のポイント
- ✓特別養護老人ホームを辞めたいと感じたら
- ✓辞める前に「この施設の問題か
- ✓特養という形態の問題か
特別養護老人ホーム(特養)を辞めたい。そう思いながら、今日も夜勤明けの帰り道でこの記事を開いてくださったのかもしれません。
まずお伝えしたいのは、その気持ちは甘えではない、ということです。特養は、介護の職場の中でも負担が集まりやすい仕組みを持っています。辞めたいと感じる人がいるのは、あなたの根性が足りないからではありません。
ただ、辞める前にひとつだけやっておいてほしいことがあります。それは「何がつらいのか」を切り分けることです。この施設が合わないのか、特養という形態が合わないのか、それとも介護の仕事そのものから離れたいのか。ここが混ざったまま辞めると、次の職場でも同じ苦しさを抱えることになりがちです。
この記事では、特養の中で実際に何が起きているのかを整理したうえで、辞めたい理由の切り分け方、心と体のサイン、辞める前に打てる手、転職先ごとの違い、円満な辞め方までを順番にお話しします。
特養で「辞めたい」が生まれやすいのは、職場の仕組みに理由がある
特養を辞めたい理由を考える前に、特養がどんな職場なのかを少しだけ確認させてください。自分を責める気持ちが、少し軽くなるはずです。
特養は、介護保険では「介護老人福祉施設」と呼ばれます。2015年の制度改正以降、新しく入所できるのは原則として要介護3以上の方になりました。つまり、寝たきりに近い方、認知症が進んだ方、食事や排せつのほとんどに介助が要る方が、暮らしの場として長く住んでいる施設です。
ここに、ほかの介護の職場との大きな違いがあります。
・介護度が高い方が多いので、移乗やおむつ交換など体を使う介助が1日の中で何度も続く ・「終の棲家」として入所する方が多く、看取りまで施設で行うことが珍しくない ・24時間365日の暮らしを支えるので、夜勤が避けられない ・医師は非常勤の配置医師が多く、夜間は看護師もオンコール対応の施設が多い
人員の基準は、介護職員と看護職員を合わせて、入所者3人に対して常勤換算で1人以上です。数字だけ見ると手厚く感じますが、これは24時間を通した常勤換算の数です。早番、日勤、遅番、夜勤、それに休みの人を割り振ると、ある時間帯のフロアに立っている職員は、思っているよりずっと少なくなります。
介護の仕事全体の離職率は、介護労働安定センターの調査で近年13%前後で推移しています。一時期より下がってきてはいますが、職場によって差が大きいのが実態です。同じ特養でも、職員が長く定着している施設と、毎月のように誰かが辞めていく施設があります。
私のところにも「特養で働いているけれど、もう限界かもしれない」というご相談がよく届きます。お話を伺っていくと、つらさの中身は人によってまったく違います。夜勤で体が悲鳴を上げている方もいれば、看取りが続いて気持ちが追いつかない方もいます。人間関係で眠れなくなっている方もいます。
「特養を辞めたい」というひとつの言葉の下に、いくつもの違う理由が隠れています。だからこそ、次の章から、特養の中で負担がどこに集まるのかを具体的に見ていきます。
特養の1日と人員体制:負担が集まる時間帯と場面
特養の1日は、だいたい次のように動いています。施設によって時刻は前後しますが、流れはほぼ共通です。
| 時間帯 | 主な業務 | 負担が集まるポイント |
|---|---|---|
| 早朝(夜勤の終わり) | 起床介助、排せつ介助、着替え、朝食の準備 | 夜勤者1人で多くの方を起こす |
| 午前 | 朝食介助、服薬の確認、入浴介助、記録 | 入浴日は人手が浴室に取られる |
| 昼 | 昼食介助、口腔ケア、排せつ介助 | 食事介助が重なり、誤嚥に神経を使う |
| 午後 | レクリエーション、入浴、おやつ、家族対応 | 会議や委員会が入り、フロアが手薄に |
| 夕方 | 夕食介助、服薬、就寝介助 | 日勤が帰り、遅番と夜勤で回す |
| 夜間 | 巡回、体位変換、排せつ介助、ナースコール対応 | 急変時の判断を少人数で担う |
負担がいちばん集まるのは、朝と夕方と夜です。朝は夜勤の職員が、日勤が来るまでの間に何人もの方を起こし、トイレにお連れし、着替えを済ませます。夕方は日勤の職員が帰ったあと、遅番と夜勤の少ない人数で夕食と就寝の介助を回します。
夜勤の体制は、施設のつくりで変わります。従来型と呼ばれる大部屋中心の特養では、フロア単位で夜勤者を置きます。一方、ユニット型では、おおむね2ユニットに1人の夜勤者を置くのが基準です。1ユニットはおよそ10人なので、夜間は1人で約20人の方を見ることになります。
ユニット型と従来型の違いについては、次のように説明されています。
ユニット型の特別養護老人ホームでは、定員10~15人程度の利用者さんを1ユニットとして、専任スタッフが介護します。従来型の大規模な施設と比べ、アットホームな雰囲気なのが魅力です。その反面、「スタッフ1人にかかる責任が重い」と負担を感じる可能性があります。「ユニット型は家のような雰囲気で寄り添ったケアができる」「従来型はチームの多数の職員で協力できる」という違いがあるので、特養で働きたい方は、自分に合うタイプの施設を選ぶと良いでしょう。 出典: job.kiracare.jp
これは、辞めたい理由を考えるうえでとても大事なポイントです。ユニット型で「一人で抱える重さ」に疲れている方が、従来型に移ると楽になることがあります。反対に、従来型で「流れ作業のようなケア」に心がすり減っている方は、ユニット型のほうが合うかもしれません。
もうひとつ、特養に固有の場面が看取りです。特養では、入所している方が施設で最期を迎えることが増えています。医師は常駐していないことが多く、夜間に呼吸が変わったとき、最初にそばにいるのは介護職員です。看護師にオンコールで連絡し、指示を受け、ご家族に連絡を入れる。この一連の流れを、夜勤の少ない人数で担います。
看取りは、うまくいったときには深いやりがいになります。けれど、看取りが何件も続いたり、急変の対応に一人で当たったりすると、気持ちの回復が追いつかなくなります。これは心の弱さではなく、誰にでも起こる自然な反応です。
辞めたい理由を3つに切り分ける
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
辞めたい理由を、次の3つの箱に分けてみてください。紙に書き出すのがおすすめです。頭の中だけで考えていると、つらさがひとかたまりになって、どこから手をつければいいのか分からなくなります。
1つ目の箱:この施設だから起きていること
・特定の上司や先輩との関係がつらい ・人手不足が慢性化していて、休憩が取れない ・有給休暇を申請しづらい雰囲気がある ・研修がなく、分からないまま任されている ・事故が起きたときに個人の責任にされる
これらは、同じ特養でも施設を変えれば変わる可能性が高いものです。人員の配置や職場の雰囲気は、運営している法人や施設長の方針で大きく違います。
2つ目の箱:特養という形態だから起きていること
・夜勤が体に合わない ・介護度の高い方の身体介助が続き、腰や肩が限界 ・看取りが続いて気持ちがついていかない ・会話やレクリエーションを楽しむ余裕がない
これらは、別の特養に移っても大きくは変わりません。特養の仕組みそのものから来ているからです。この箱に多く入る方は、特養以外の介護の職場を検討する価値があります。
3つ目の箱:介護の仕事そのものから離れたい
・人の体に触れる仕事自体がしんどくなった ・誰かの命に関わる責任を負い続けることに疲れた ・もっと自分の時間を持てる働き方がしたい
この箱に入る理由が多いなら、介護の職場を変えるだけでは解決しないかもしれません。資格や経験を生かしつつ、介護の現場から少し距離を置く道も含めて考えるのが自然です。
こういうご相談がよくあります。「人間関係がつらいので辞めたい」とおっしゃる方に、もう少し詳しくお話を伺うと、実は夜勤明けの寝不足で気持ちの余裕がなくなり、先輩のちょっとした一言が深く刺さるようになっていた、ということがあるのです。この場合、根っこにあるのは2つ目の箱の「夜勤が体に合わない」です。
心理学では、疲れがたまると物事を悪いほうに解釈しやすくなることが知られています。難しい言い方をすると「認知のゆがみ」ですが、要するに、しんどいときほど何もかもが悪く見える、ということです。ですから、箱に分けるときは「いちばん最初につらくなったのは何だったか」を思い出してみてください。それが本当の理由であることが多いです。
心と体のサインを見逃さないでください
切り分けの話をしてきましたが、その前に確認してほしいことがあります。いまのあなたの心と体が、どのくらい疲れているかです。
次のようなサインが2週間以上続いているなら、切り分けより先に休むことを考えてください。
・寝つけない、夜中に何度も目が覚める、夜勤明けでも眠れない ・朝、職場に向かおうとすると動悸がする、涙が出る ・休みの日も仕事のことが頭から離れない ・食欲がない、または食べすぎてしまう ・好きだったことに興味が持てない ・利用者さんへの声かけが雑になっている自分に気づく
最後の項目は、介護の仕事をしている方にとって、とてもつらい気づきです。「こんなの介護職失格だ」と自分を責めてしまう方が多いのですが、それは心がエネルギー切れを起こしているサインです。燃え尽き症候群と呼ばれる状態で、真面目で責任感の強い人ほどなりやすいと言われています。
私自身の話を少しさせてください。会社勤めをしていたころ、忙しさが続いた時期に、朝の電車でいつも決まった駅で息苦しくなることがありました。当時は「疲れているだけ」と思い込んで、半年ほどそのまま働き続けました。後になって振り返ると、あのとき体はずっと休めと言っていたのです。立ち止まるのが遅れた分、回復にも時間がかかりました。カウンセラーになってから、同じように我慢を重ねて来られる方にお会いするたびに、あのころの自分を思い出します。
サインが出ているときに取れる手は、辞めることだけではありません。
・心療内科や精神科を受診し、必要なら診断書をもらって休職する ・施設に産業医がいる場合は面談を申し込む ・健康保険の傷病手当金を使い、給与のおよそ3分の2を受け取りながら休む ・都道府県の労働局や、厚生労働省が案内している働く人のメンタルヘルスの相談窓口を使う
休職は「逃げ」ではありません。心と体を回復させてから、落ち着いた頭で辞めるか続けるかを決めるための時間です。疲れ切った状態で決めた退職は、次の職場選びでも焦りを生みます。相談窓口の情報は厚生労働省のサイトからたどれます。
大丈夫です。休んでも、介護の資格と経験はなくなりません。
辞める前に打てる手:夜勤・配置・資格・給与
心身のサインがそこまで強くなく、「辞めたい理由が1つ目や2つ目の箱に多い」という方は、辞める前に職場の中で打てる手を試してみる価値があります。
夜勤の回数や時間帯を相談する
夜勤がつらい場合、夜勤の回数を減らしてもらう、日勤のみの時期をつくってもらう、といった相談ができる施設もあります。体調を理由にした相談は、遠慮しなくて大丈夫です。一方で、夜勤は収入に直結する面もあります。
給料が少ないと感じるときは、夜勤の回数を増やして夜勤手当をもらう方法もあります。夜勤手当は1回につき3,000円~8,000程度が一般的。レバウェル介護(旧 きらケア)の調査によると、1回あたり1万円以上の夜勤手当が支給される方もいるようです。 出典: job.kiracare.jp
夜勤を月4回減らすと、手当が1回5,000円の施設なら月2万円ほど収入が下がる計算です。体を守ることと家計のバランスを、数字で一度確かめておくと、相談するときに迷いが減ります。
ユニットやフロアの異動を願い出る
人間関係のつらさが特定のユニットに集中しているなら、異動で解決することがあります。同じ法人でデイサービスやショートステイ、訪問介護を運営している場合は、そちらへの異動も選択肢です。辞めずに働き方を変えられるので、勤続年数や賞与の条件を失わずに済みます。
資格を取って、任される範囲を変える
介護福祉士を持っていない方は、実務経験3年と実務者研修で受験資格が得られます。資格手当がつくだけでなく、リーダーやユニットの責任者を任されることで、仕事の見え方が変わる方もいます。喀痰吸引等研修を修了すれば、医療的なケアの一部を担えるようになり、看取りの場面でも自分にできることが増えます。
さらに実務経験を積むと、ケアマネジャー(介護支援専門員)の受験資格も得られます。身体介助から離れて、ケアプランを立てる立場に移る道です。
処遇改善加算の配分を確認する
介護職員の給与は、国の処遇改善の仕組みで少しずつ上がっています。厚生労働省の調査では、処遇改善の加算を取っている事業所の常勤の介護職員の平均給与は、月33万円台(手当や賞与の月割りを含む)まで上がってきました。ただ、加算の配分方法は施設ごとに違います。自分の施設がどう配分しているかは、就業規則や賃金規程、施設内の掲示で確認できます。説明を求める権利もあります。
どの手も、相談する相手が大切です。直属の上司に言いにくい場合は、施設長や法人の人事担当、労働組合があればそちらに話してみてください。
転職するなら、同じ資格で何が変わるのか
職場の中で手を尽くしても変わらない、あるいは2つ目や3つ目の箱の理由が大きいという方は、転職を考えるときです。ここでは、特養から移る人が多い職場について、特養と比べて何が変わるかを整理します。
| 職場 | 特養と比べて変わること | 合いやすい人 |
|---|---|---|
| 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目指すリハビリ中心。医師が常勤し、看護師も多い。入退所が多く、記録や連携が増える | 医療職と連携しながら学びたい人 |
| グループホーム | 認知症の方が9人単位で共同生活。身体介助は比較的軽めだが、夜勤は1ユニット1人 | 家庭的な関わりを大事にしたい人 |
| デイサービス | 通いの施設で基本的に夜勤なし。送迎やレクリエーションの比重が大きい | 夜勤から離れたい人 |
| 訪問介護 | 利用者さんの自宅で1対1。移動が多く、一人で判断する場面がある | 自分のペースで動きたい人 |
| 有料老人ホーム | 運営会社でサービス水準も介護度の幅も大きく違う。接遇が重視されることが多い | 生活支援寄りの関わりをしたい人 |
| 病院の介護職(看護助手) | 看護師の指示のもとで動く。夜勤がある病棟とない外来がある | 医療の現場を知りたい人 |
同じ介護福祉士の資格でも、職場によって任される範囲はかなり変わります。特養では介護職員が暮らし全体を担いますが、老健ではリハビリ職や看護師と役割を分け合います。デイサービスでは送迎や家族との連絡も介護職の大事な仕事になります。
求人票を見るときは、給与の額だけでなく、次の項目で職場の実態を確かめてください。
・人員配置:「2.5対1」「2対1」のように、利用者と職員の比率の記載があるか。基準の3対1より手厚いと書いてあれば、配置に余裕がある可能性が高い ・夜勤の体制:夜勤1回あたりの人数、仮眠や休憩の取り方、1か月の夜勤回数の目安 ・施設のタイプ:ユニット型か従来型か。定員は何人か ・看取りの実施:看取りを行っているか。行っているなら、研修や振り返りの場があるか ・離職率や平均勤続年数:記載があれば目安になる。書いていない場合は面接で聞いてよい ・同じ求人が出続けていないか:一年中同じ職種の募集が出ている施設は、定着に課題があることがある
面接の前に見学を申し込むのもおすすめです。職員同士の声かけの雰囲気、利用者さんの表情、朝や夕方のフロアの慌ただしさは、求人票からは読み取れません。
介護職の年収の相場は、職場の種類や地域、夜勤の有無で幅があります。介護職員の年収・単価相場では、介護職員の平均的な年収や、経験年数による違いをまとめています。いまの給与が相場と比べてどの位置にあるかを知っておくと、転職で何を優先するかを決めやすくなります。
続けるか辞めるかを決めるときの目安
ここまで読んで、「結局、自分は辞めたほうがいいのか分からない」と感じている方もいると思います。迷うのは当然です。ここでは、私がご相談を受けるときに一緒に確かめている目安をお伝えします。
辞める方向で考えてよいサイン
・心と体のサインが続いていて、休んでも回復しない ・事故やヒヤリハットが起きても、改善ではなく個人を責める職場の空気が変わらない ・人員不足を理由に、休憩や有給休暇が恒常的に取れない状態が半年以上続いている ・異動や夜勤の調整を相談したが、具体的な返答がないまま時間が過ぎている ・3つ目の箱、つまり介護の仕事そのものから離れたい気持ちがはっきりしている
もう少し様子を見てもよいサイン
・つらさの中心が特定の出来事(大きな事故、看取りが重なった時期など)で、時間とともに和らいでいる ・異動や配置の変更が決まっていて、数か月以内に環境が変わる見込みがある ・資格の取得が目前で、取得後に任される仕事や手当が変わる ・職場に話を聞いてくれる人が一人でもいて、相談できている
どちらにも当てはまる場合は、期限を決めるのがおすすめです。たとえば「3か月後の面談までに夜勤の回数が変わらなければ転職活動を始める」と決めておくと、毎日「辞めたい、でも」と揺れ続ける苦しさが和らぎます。人は先が見えない状態がいちばん疲れるので、区切りをつくるだけで気持ちが落ち着く方は多いです。
もうひとつ大切なのは、辞めることを決める前に、転職活動を始めてしまってもいい、ということです。在職中に求人を見たり、見学に行ったりするのは、決して裏切りではありません。ほかの施設の様子を知ることで、「いまの施設は思っていたより恵まれていた」と気づく方もいれば、「やっぱり移ったほうがいい」と確信する方もいます。比べる材料があると、判断はずっとしやすくなります。
経験年数が浅い方は、「1年は続けないと次で不利になる」と心配されることがあります。確かに職歴の長さを見る採用担当者もいます。けれど、介護の業界は人手を求めている職場が多く、短い期間で辞めた理由をきちんと説明できれば、それだけで不採用になることはまれです。体を壊してまで続ける理由にはなりません。面接では「特養で夜勤と身体介助を経験し、そのうえで自分に合う働き方を考えた」と、経験したことと次に求めることを並べて話せば十分に伝わります。
円満に辞めるための手順
辞めると決めたら、できるだけ穏やかに出ていけるよう準備しましょう。介護の業界は地域の中で人のつながりがあり、前の職場の方と研修や行事で顔を合わせることもあります。
退職の意思を伝える時期
法律では、期間の定めのない雇用契約なら、退職を申し出てから2週間で辞められます。ただ、多くの施設の就業規則では「1か月前まで」や「2か月前まで」と定めています。特養は夜勤のシフトを1か月以上前に組むことが多いので、少なくとも2か月前に伝えると、職場も受け止めやすくなります。
伝える相手と伝え方
最初に伝えるのは直属の上司です。同僚に先に話すと、噂が広がって上司の耳に入り、関係がこじれることがあります。理由は正直にすべてを話す必要はありません。「家庭の事情」「体調のため」「別の分野に挑戦したい」など、前向きで角が立たない言い方で十分です。
引き止められることもあります。人手不足の施設ほど、強く引き止められがちです。辞める気持ちが固まっているなら、「決めたことなので」と穏やかに繰り返してください。条件の改善を提示されて迷う場合は、その場で答えず持ち帰りましょう。
引き継ぎと有給休暇
担当している利用者さんの生活の様子、ご家族との約束事、委員会の仕事などを、書面で残しておくと安心です。有給休暇が残っているなら、最終出勤日の前にまとめて取るか、シフトに組み込んでもらうよう早めに相談します。有給休暇の取得は働く人の権利なので、遠慮はいりません。
次が決まっていない場合
雇用保険に入っていれば、失業給付を受けられます。自己都合の退職では、原則として給付が始まるまで待つ期間がありますが、心身の不調で辞めた場合など、事情によって扱いが変わることがあります。ハローワークで相談してみてください。
辞めるときに受け取る書類
退職後に困らないよう、次の書類は必ず受け取ってください。離職票(失業給付の手続きに使います)、雇用保険被保険者証、源泉徴収票(次の職場や確定申告で使います)、年金手帳や基礎年金番号の分かる書類を施設に預けている場合はその返却です。介護福祉士の登録証や研修の修了証の原本を施設に預けている方も、忘れずに返してもらいましょう。実務経験証明書は、後から資格の受験で必要になることがあります。辞めた後に依頼すると手間取ることがあるので、在職中に発行をお願いしておくと安心です。
退職の手続きで一人で抱えきれないと感じたら、キャリアの専門家に相談するのも一つの手です。
20年この市場を見てきた立場から考える、介護職の次の選択肢
最後に、フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見えていることをお話しします。
運営者として見てきた限りでは、介護の現場を離れた方の多くは、介護で身につけた力をまったく別の形で生かしています。利用者さんの小さな変化に気づく観察力、ご家族の不安を受け止める聞く力、限られた人数で段取りを組む力。こうした力は、介護の外に出ても通用します。
実際に、介護の経験を持つ方が、介護記録の書き方や認知症ケアをテーマにした文章を書く仕事、介護事業所向けの研修資料づくり、介護職の悩みを聞く相談の仕事などに移っていく流れは珍しくありません。長く続いている人ほど、いきなり大きく稼ごうとするのではなく、「この人に頼むと現場のことが分かっていて話が早い」と思ってもらえる関係を少しずつ積み上げています。
こうした仕事では、依頼する側と受ける側が直接やり取りできる場のほうが、同じ予算でも受け手の手取りが厚く残ります。手数料0%で直接つながる形は、依頼者はより多くを頼めて、受け手は時間に見合った報酬を受け取れる、双方にとって無理のない構造です。体力の限界を感じて特養を離れた方にとって、働く時間を自分で決められることは大きな意味を持ちます。
人の悩みを聞く仕事に関心がある方には、国家資格のキャリアコンサルタントという道もあります。キャリアコンサルタントでは、資格の概要や受験の流れ、どんな場面で生かせるかを整理しています。介護の現場で職員の相談役を担ってきた方が、この資格をきっかけに働き方を広げる例もあります。
また、職場・転職・キャリア相談のお仕事では、転職や職場の悩みに関する相談の仕事がどのように行われているか、どんな経験が求められるかをまとめています。介護の現場で同僚の悩みを聞いてきた経験は、この分野での強みになります。
介護の仕事を続けるにしても、特養から別の職場に移るにしても、あるいは介護から離れるにしても、大切なのは「何がつらかったのか」を自分の言葉で説明できる状態で次に進むことです。そうすれば、次の職場を選ぶときの物差しがはっきりします。
あなたは一人ではありません。特養で毎日を支えてきた経験は、どの道を選んでも、あなたの中にちゃんと残っています。
よくある質問
Q. 特養を辞めたいと思うのは、介護職に向いていないということですか?
向いていないとは限りません。特養は介護度の高い方が多く、夜勤や看取りもあるため、負担が集まりやすい職場です。辞めたい理由が夜勤や身体介助の重さなら、デイサービスやグループホームなど別の介護の職場で力を発揮できる方も多くいます。まず理由を切り分けてから判断するのがおすすめです。
Q. 特養から老健に転職すると、仕事はどう変わりますか?
老健は在宅復帰を目指す施設なので、リハビリ職や常勤の医師、看護師と連携する場面が増えます。入退所の回転が早く、記録や情報共有の量も多くなります。一方で、長期の看取りは特養より少ない傾向があります。医療職と一緒に学びたい方には合いやすい職場です。
Q. 辞める前に休職したほうがいいのはどんなときですか?
眠れない、出勤前に動悸や涙が出る、休日も仕事が頭から離れないといった状態が2週間以上続く場合は、辞めるかどうかを決める前に心療内科を受診し、休職を検討してください。健康保険の傷病手当金を使えば、給与のおよそ3分の2を受け取りながら休めます。
Q. 退職はどのくらい前に伝えればいいですか?
法律上は申し出から2週間で辞められますが、多くの施設の就業規則は1か月から2か月前と定めています。特養は夜勤のシフトを早めに組むため、2か月前を目安に直属の上司へ伝えると円満に進みやすくなります。引き継ぎ内容は書面に残しておくと安心です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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