株主総会の招集通知のひな形|何日前までに出すか

前田 壮一
前田 壮一
株主総会の招集通知のひな形|何日前までに出すか

この記事のポイント

  • ✓株主総会の招集通知を何日前までに出すのか
  • ✓会社の形でどう変わるのかを整理した
  • ✓株主総会書面決議招集通知という組み合わせの正しい理解まで

まず、いちばん誤解の多いところから書く。書面決議で株主総会を済ませる場合、招集通知は出さない。出すのは提案書であって、招集通知ではない。この2つを混ぜて「書面決議の招集通知の書き方」を探している人が多いが、制度としては別ものだ。そのうえで、実際に総会を開くことにした場合、通知は何日前までに出すのか。会社の形によって2週間前と1週間前に分かれ、さらに定款で短くできる場合もある。この記事では、通知の期限、書く項目、ひな形、そして通知そのものを省ける場面までを、会社法の条文に沿って順に整理する。

何日前までに出すのか。会社の形で3つに分かれる

期限を定めているのは会社法第299条第1項だ。条文をそのまま読むと入れ子が深いが、要点は次のとおりである。

株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

言葉を置き換えて表にすると、こうなる。

会社の形 期限
公開会社 総会の日の2週間前まで
公開会社でない会社 総会の日の1週間前まで
公開会社でなく、取締役会も置いていない会社 定款で1週間より短く定めればその期間
書面投票または電子投票を採用する会社 会社の形にかかわらず2週間前まで

ここで言う公開会社とは、株式を証券取引所に上場している会社という意味ではない。発行する株式の全部または一部について、譲渡に会社の承認が要らない会社のことを指す。中小企業の多くは、定款で全部の株式に譲渡制限を付けているので、公開会社ではない。つまり1週間前までという期限が適用されることが多い。

自社がどちらかを確かめるには、登記事項証明書を見るのが早い。株式の譲渡制限に関する規定が登記されていれば、公開会社ではない。定款の株式に関する条文でも確認できる。

4行目の例外も押さえておきたい。総会に出席しない株主が書面で議決権を行使できることにする、あるいは電磁的方法で議決権を行使できることにする、と決めた場合は、会社の形にかかわらず2週間前までになる。株主に賛否を判断する時間を与える必要があるからだ。株主が数人の会社でこの仕組みを使うことはまずないが、採用すると期限が伸びる点は覚えておきたい。

なお、日数の数え方には注意がいる。実務では、通知を発した日と総会の当日を数に入れず、間に丸1週間または丸2週間を置く扱いをするのが一般的とされている。1日ずれると通知の効力が問題になりうるので、余裕を持って発送するのが安全だ。日数の計算に不安があれば、司法書士に確認しておきたい。

招集通知に書く項目

何を書くかは、会社法第298条第1項が定めている。招集にあたって取締役が決めるべき事項がそこに並び、第299条第4項が「その事項を通知に記載する」としている。

・株主総会の日時および場所 ・株主総会の目的である事項があるときは、その事項 ・出席しない株主が書面で議決権を行使できることとするときは、その旨 ・出席しない株主が電磁的方法で議決権を行使できることとするときは、その旨 ・そのほか法務省令で定める事項

「株主総会の目的である事項」というのが、いわゆる議題だ。第1号議案、第2号議案として並べるものを指す。取締役会を置いている会社では、招集通知に書いていない事項について総会で決議することができない、という定めもある。当日になって別の議案を持ち出すことはできないので、議題は漏れなく書いておく。

法務省令で定める事項には、書面投票や電子投票を採用する場合の細かい取り決めが含まれる。株主が数人の会社でこれらを使わないのであれば、上の4つを書けば足りる。

もうひとつ、取締役会を置いている会社では、これらの事項の決定は取締役会の決議によらなければならない、と定められている。つまり招集通知を出す前に、取締役会を開いて日時と場所と議題を決め、その議事録を残す必要がある。取締役会を置いていない会社では、取締役が決めればよい。

招集通知のひな形

取締役会を置いていない会社の、もっとも簡素な形から見ていく。

令和〇年〇月〇日

株主各位
            東京都〇〇区〇〇1丁目1番1号
            株式会社〇〇〇〇
            代表取締役 〇〇〇〇

     第〇期定時株主総会招集ご通知

拝啓 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、当社第〇期定時株主総会を下記のとおり開催いたしますので、
ご出席くださいますようご通知申し上げます。
                          敬具

記

1 日時 令和〇年〇月〇日(〇)午前10時00分

2 場所 当会社本店会議室
    (東京都〇〇区〇〇1丁目1番1号)

3 目的である事項
 報告事項 第〇期事業報告の内容報告の件
 決議事項
  第1号議案 第〇期計算書類承認の件
  第2号議案 取締役3名選任の件
  第3号議案 取締役の報酬額改定の件

 なお、当日ご出席いただけない場合は、同封の委任状に
 ご署名のうえ、〇月〇日までにご返送ください。

以上

書面投票を採用する会社では、これに加えて株主総会参考書類と議決権行使書面を通知と一緒に交付することになる。会社法は、書面投票を採用した場合、招集通知に際して議決権の行使について参考となるべき事項を記載した書類と、株主が議決権を行使するための書面を交付しなければならない、と定めている。株主が数人の会社でここまでやることはまずないが、採用した場合は書類が2種類増える点を知っておきたい。

株主が家族数人という会社では、これほど丁寧な文面でなくてもよい。次のように1枚で済ませても、条文が求める項目は満たせる。

株主総会招集通知

令和〇年〇月〇日

株主 〇〇〇〇 殿

          株式会社〇〇〇〇
          取締役 〇〇〇〇

下記のとおり臨時株主総会を招集します。

1 日時 令和〇年〇月〇日 午前10時00分
2 場所 当会社本店(東京都〇〇区〇〇1丁目1番1号)
3 目的である事項
  第1号議案 定款一部変更の件
       (事業目的に〇〇〇〇を追加する)

以上

大切なのは体裁より、日時と場所と議題が明確に書かれていることだ。とくに議題は、あとから「聞いていない議案が決議されていた」と言われないために、具体的に書いておく。

書面決議を使うなら、招集通知は出さない

冒頭に書いた点をここで詳しく見ておく。

会社法には、株主総会の決議の省略という仕組みがある。取締役または株主が提案をして、議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録で同意すれば、その提案を可決する決議があったものとみなす、という内容だ。実務では書面決議、みなし決議と呼ばれる。

この仕組みを使う場合、総会そのものを開かない。日時も場所も存在しない。したがって招集通知という書類は登場しない。代わりに出すのが提案書だ。

書類 総会を開く場合 書面決議の場合
招集通知 出す 出さない
提案書 出さない 出す
同意書 不要 株主全員から集める
議事録 開催の記録として作る みなされた記録として作る

「株主総会書面決議招集通知」という言葉で探している人は、おそらくこのどちらかで迷っている。総会を開いて書面で議決権を行使してもらいたいのか、それとも総会を開かずに全員の同意で済ませたいのか。

前者なら、招集通知に「書面によって議決権を行使することができる」旨を書き、参考書類と議決権行使書面を同封する。期限は2週間前までになる。後者なら、招集通知は作らず、提案書と同意書と議事録の3枚を作る。期限の定めはない。

書面決議の提案書は、次のような形になる。

株主総会の決議の省略に関する提案書

株主 〇〇〇〇 殿

          株式会社〇〇〇〇
          取締役 〇〇〇〇

会社法第319条第1項の規定に基づき、下記のとおり提案いたします。
ご同意いただける場合は、同封の同意書にご署名のうえ、
令和〇年〇月〇日までにご返送ください。

【提案の内容】
第1号議案 第〇期計算書類承認の件
 第〇期(令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで)の
 貸借対照表および損益計算書を、提示のとおり承認する。

以上

見た目は招集通知に似ているが、日時と場所がない。ここが決定的な違いだ。

招集の手続きそのものを省く方法

もうひとつ、総会は開くけれども通知は出さない、という選択肢もある。

会社法は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく株主総会を開催できる、と定めている。ただし、書面投票または電子投票を採用する場合は、この省略は使えない。

株主が自分ひとり、あるいは家族だけという会社では、この形がよく使われる。全員が「通知はいらない、この日に集まろう」と合意していれば、通知を発送する必要がない。この場合、議事録の冒頭に「株主全員の同意があったため、招集手続を経ることなく開催した」旨を書いておく。

この一行がないと、通知を出し忘れたまま開いた総会に見えてしまう。後から議事録を見た第三者が、手続きに瑕疵があると判断しかねない。省略したときは、省略した根拠を記録に残す。

選択肢を整理すると、次の3つになる。

進め方 通知 開催 全員の同意
原則どおり 出す 開く 不要
招集手続の省略 出さない 開く 必要
決議の省略(書面決議) 出さない 開かない 必要

株主が少なく全員の意見が揃う会社では、下の2つのどちらかを選ぶことになる。議事録に残したい形が「開催した記録」なのか「みなされた記録」なのかで決めればよい。

定時と臨時で、通知はどう変わるか

株主総会には2種類ある。会社法は、定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない、と定め、それとは別に、株主総会は必要がある場合にはいつでも招集することができる、としている。後者が臨時株主総会だ。

通知の期限や記載項目に、定時と臨時で違いはない。同じ条文が適用される。違うのは、扱う議題と、開く時期の縛りだ。

比べる点 定時株主総会 臨時株主総会
開く時期 毎事業年度の終了後、一定の時期 必要があるときはいつでも
主な議題 計算書類の承認、役員の選任、報酬の決定 定款変更、本店移転、増資など随時発生するもの
通知の期限 会社の形に応じて2週間前または1週間前 同じ
事業報告の報告 行うことが多い 通常は行わない

定時株主総会については、決算から3か月以内に行うのが実務の通例になっている。会社法にその日数が直接書かれているわけではないが、法人税の申告期限が原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内であること、株主が多い会社で議決権を行使できる人を確定する基準日の制度が、基準日から3か月以内に行使する権利を対象としていることなどが背景にある。

臨時株主総会は、必要が生じたときに開く。事業目的を追加したい、本店を移したい、役員を途中で交代させたい。こうした場面で使う。年に何度開いても構わないし、開かない年があっても問題ない。

注意したいのは、臨時のほうが準備期間が短くなりがちな点だ。決定を急いでいるときほど期限の計算を飛ばしやすい。取締役会を置いている会社では、招集の内容を決める取締役会も開く必要があるので、逆算するとさらに日数が要る。急ぐなら、通知を出す形にこだわらず、全員の同意で手続きを省く方法を先に検討したほうが早い。

株主から総会を開けと言われたとき

通常、株主総会を招集するのは取締役だ。ただし会社法には、株主の側から招集を請求できる仕組みもある。

総株主の議決権の3%以上の議決権を6か月前から引き続き持っている株主は、取締役に対して、株主総会の目的である事項と招集の理由を示して招集を請求できる、というものだ。定款でこれを下回る割合や期間を定めることもできる。公開会社でない会社では、6か月という保有期間の条件は適用されない。

請求を受けた取締役が動かない場合はどうなるか。条文は2つの場合を挙げている。請求の後に遅滞なく招集の手続が行われない場合と、請求があった日から8週間以内の日を総会の日とする招集の通知が発せられない場合だ。この場合、請求をした株主は裁判所の許可を得て自分で株主総会を招集できる。

株主が自分ひとりの会社には縁のない話だが、共同で出資して会社を作った場合には現実味がある。経営を任された側が総会を開かないまま何年も過ぎ、出資した側が説明を求めても応じない。こうした行き違いから、この条文が持ち出されることがある。

そうならないための現実的な対策は単純だ。年に1度の定時株主総会をきちんと開き、通知を出し、議事録を残す。出資してくれた人に対して、決算の内容と会社の状況を定期的に伝える。この当たり前の運用が、結果として会社を守ることになる。

請求を受けた場合は、放置がいちばん悪手になる。招集するかどうかの判断を含めて、早い段階で弁護士か司法書士に相談するほうが、選べる手が多く残る。

通知の出し方と、電子で送るときの条件

通知を書面で出さなければならない場合が、条文で定められている。書面投票または電子投票を採用した場合と、取締役会設置会社である場合だ。この2つに当たらない会社、つまり取締役会を置いておらず書面投票も使わない会社では、口頭や電話での通知も理論上は可能とされている。

ただし、口頭で通知したことは後から証明できない。株主が複数いる会社では、書面かメールなど形の残る方法で出しておくほうが安全だ。

電磁的方法で通知を発することもできる。会社法は、書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより株主の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる、と定めている。この場合、書面による通知を発したものとみなされる。

押さえておきたいのは「株主の承諾を得て」という条件だ。会社が一方的にメールで送ると決めることはできない。あらかじめ株主から、電子で受け取ることへの承諾を得ておく必要がある。承諾も形に残しておきたい。

実務的には、次のように進めると整理しやすい。

・株主に対して、電子での受け取りを承諾するかを書面かメールで確認する ・承諾した株主にはメールで通知し、送信した記録を保存する ・承諾していない株主には書面を郵送する ・発送した日付が分かるよう、控えを1部残す

発送日の記録は地味に重要だ。期限を満たしたかどうかは発送した日で判断されるので、いつ出したかが分からないと後から確認できない。郵便で出すなら発送記録の残る方法を使い、メールなら送信済みフォルダを残しておく。

間に合わないときにどうするか

期限を計算したら、すでに足りない。この相談は珍しくない。決算の数字が固まるのが遅れて、気づいたら総会の予定日まで数日しかない、という状況だ。

取れる手は3つある。

1つ目は、総会の日程を後ろにずらす。 定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない、と定められているが、具体的な日数は会社法には書かれていない。実務では決算から3か月以内に行うのが通例で、その範囲に収まるなら数日ずらすことに支障は少ない。ただし法人税の申告期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内なので、申告との前後関係には注意がいる。

2つ目は、株主全員の同意を得て招集手続を省略する。 全員が集まれるなら、通知を出さずに開催できる。臨時の議案で急ぐ場合はこの形が現実的だ。

3つ目は、書面決議に切り替える。 全員の同意が見込めるなら、開かずに決めてしまう。提案書を出して同意を集めるだけなので、期限の定めもない。

どれを選ぶにしても、株主が全員同じ方向を向いていることが前提になる。意見が割れている状況で手続きを省こうとすると、あとから決議の有効性を争われる火種になる。急いでいるときほど、正規の手続きを踏んだほうが結果的に早い。

出す前に開いておく3つの書類

通知の雛形を埋める前に、手元に用意しておきたい書類が3つある。これを見ないまま書き始めると、事実と食い違う通知ができあがる。

1つ目は定款だ。 会社の基本ルールを書いた文書で、株式に譲渡制限が付いているか、取締役会を置いているか、招集通知の期間を短く定めているか、決算期がいつかが書かれている。通知の期限を決める情報がここに集まっている。設立を専門家に任せた人は手元に控えがないこともあるので、この機会に取り寄せておきたい。

2つ目は登記事項証明書だ。 法務局で取得できる、会社の現在の登記内容を証明する書類である。譲渡制限の規定が登記されているか、取締役会設置会社かどうか、役員が誰でいつ就任したか、発行済株式の総数はいくつか。外から見える事実がここに載っている。定款と登記が食い違っている会社も実際にあるので、突き合わせておく。

3つ目は株主名簿だ。 誰が何株持っているかを記録した帳簿で、会社に備え置く義務がある。通知の宛先はここから拾う。名簿の住所が古いまま発送して届かない、という事故がいちばん多い。株式を譲渡したのに書き換えていない、相続が起きたのに名義が変わっていない、という状態も珍しくない。

この3つから、次の項目を紙に書き出しておく。公開会社かどうか、取締役会設置会社かどうか、通知の期限は何日前か、株主は誰で何株ずつ持っているか、決算期はいつか。ここまでやれば、あとは雛形の空欄を埋めるだけの作業になる。

書き出したメモは、そのまま翌年も使える。毎年ゼロから調べ直すのが、この種の作業でいちばん時間を食う部分だ。1度作って保存しておき、翌年は変わった箇所だけを直す形にすると、作業時間が大きく変わる。

つまずきやすい点

実際に作業した人が引っかかる箇所を挙げておく。

取締役会の議事録を作り忘れる。 取締役会を置いている会社では、招集する日時と場所と議題は取締役会の決議で決める。招集通知だけ作って取締役会の議事録がない、という状態は形が整っていない。

議題が抽象的すぎる。 「その他」とだけ書いて、当日に議案を出すのは避けたい。取締役会設置会社では、通知に書いていない事項を決議できないという定めがある。

基準日の扱いを飛ばす。 株主が多い会社では、議決権を行使できる人を確定するために基準日を定めることがある。基準日を定めた場合は、その2週間前までに公告が必要になる。ただし定款に基準日の定めがあるときは公告が不要とされている。株主が数人の会社では基準日を定めないことがほとんどなので、この論点は出てこない。

通知の宛先が古い。 株主名簿の住所が現在のものでない会社は多い。名簿を更新しないまま発送すると、通知が届かない株主が出る。総会の前に名簿を確認しておく。

委任状の期限を書き忘れる。 出席できない株主に委任状を返送してもらう場合、いつまでに返すのかを書いておかないと、当日に間に合わない。代理権の授与は株主総会ごとに行う必要があるので、前回の委任状を流用することもできない。

書類の形式や宛名の書き方といった基礎を体系的に押さえ直したい人には、ビジネス文書検定の学習範囲が実務の下敷きとして使える。招集通知に限らず、社内外に出す文書全般に応用が効く。

登記を伴う議案を扱う場合は、添付書類の要件が別に決まっている。商業登記の手続きの案内は法務省のサイトから法務局のページをたどって確認できる。判断に迷う議案があるときは、申請の前に司法書士に相談しておくと手戻りがない。

通知を出し忘れた総会の決議はどうなるか

期限を過ぎて通知を出した。あるいは一部の株主に通知が届いていなかった。この状態で開いた総会の決議は、どう扱われるのか。

自動的に無効になるわけではない。ただし、取り消しを求める訴えの対象になる。

一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。 出典: laws.e-gov.go.jp

訴えを起こせる期間は、決議の日から3か月以内と定められている。3か月を過ぎれば、この理由で取り消しを求めることはできなくなる。逆に言えば、決議から3か月のあいだは足元が固まらない。

救済の定めもある。招集の手続や決議の方法が法令や定款に違反していても、その違反する事実が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさないものだと裁判所が認めるときは、請求を棄却できるとされている。発送が1日遅れたが全株主が出席して全員が賛成した、という場合はここに当たりやすい。ただし、当たるかどうかを決めるのは裁判所であって、会社の側で決められることではない。

もっと重いのは、決議が存在しないことの確認を求める訴えのほうだ。こちらには期間の制限がない。通知をまったく出さず、一部の株主が総会の存在すら知らないまま決議されていた、という程度になると、取り消しの前に「そもそも決議がなかった」という主張が立つ。

実務で怖いのは、ここから登記が崩れることだ。役員の選任や定款変更を決議して登記したあとに、その決議が取り消されると、登記をやり直すことになる。取引先や銀行に提出済みの登記事項証明書も作り直しだ。発送を数日早めるのと比べて、かかる手間が桁違いに大きい。

したがって、期限を計算したうえで、さらに数日の余裕を置く。これが唯一の実務的な答えになる。

3月決算の会社の逆算スケジュール

期限を「何日前まで」で覚えていると、毎年計算し直すことになる。日付で並べておけば、翌年はそのまま使い回せる。3月決算で、公開会社でない取締役会設置会社を例にする。

・4月上旬から中旬 前期の数字を締める。計算書類の作成に入る ・5月上旬 計算書類が固まる。総会にかける議案を確定させる ・5月中旬 取締役会を開く。総会の日時、場所、議題を決議し、議事録を作る ・5月下旬 株主名簿で宛先を確かめたうえで招集通知を発送する。発送した日を記録に残す ・5月末 法人税の申告と納付。事業年度終了の日の翌日から2か月以内が原則 ・6月中旬 定時株主総会を開く。議事録を作る ・総会から2週間以内 役員の選任や定款変更を決議したなら登記を申請する

並べてみると、申告の期限が総会より先に来ていることに気づく。申告は確定した決算に基づいて行うものなので、この順番に違和感を持つ人は多い。実務では、総会を5月中に開いて申告に間に合わせる会社と、申告期限の延長の特例を申請している会社に分かれる。

延長の特例は法人税法第75条の2に定めがある。定款の定めなどにより、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に定時総会が招集されない状況にあると認められる場合、税務署長は申請に基づいて申告書の提出期限を1か月延長できる、という内容だ。会計監査人を置いている会社などには、さらに長い期間が認められる場合もある。

注意したいのは、延長されるのは申告書の提出期限だけという点だ。納付そのものを待ってもらえるわけではないので、見込みの額を先に納めるかどうかという判断が別に生じる。延長を使うかどうかは、決算の固まる時期と資金の都合の両方で決まるので、申請の前に税務署か税理士に自社の事情を伝えて確認しておきたい。

取締役会を置いていない会社なら、この並びから取締役会の1行が消える。通知の期限も1週間前までになるので、5月下旬の発送を6月上旬まで遅らせる余地が出る。それでも、余裕を取って早めに出すほうが安全だ。

合同会社には招集通知が存在しない

株式会社を前提に書いてきたが、合同会社では前提そのものが変わる。

合同会社に株主総会はない。出資した人が社員であり、原則としてその社員が業務を執行する。したがって、招集通知という書類も、総会の日時や場所という概念も出てこない。

決め方は事項によって分かれる。通常の業務は、定款に別の定めがなければ社員の過半数で決める。社員が2人以上いる場合の扱いで、日常的な業務については各社員が単独で行えるとされている。ただし、完了する前に他の社員が異議を述べたときはこの限りではない。

定款を変えるときは重くなる。会社法第637条は、持分会社は定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって定款の変更をすることができる、と定めている。

過半数ではなく総社員の同意である。事業目的の追加も、本店の移転も、社員の加入も、定款を変えることになる場面では全員の同意が要る。株式会社の特別決議が3分の2で通るのに対して、合同会社は1人でも反対すれば動かない。

書類としては、招集通知の代わりに同意書や決定書を作って残す。様式に法律の定めはないが、いつ、誰が、何に同意したのかが読み取れる形にしておく。登記を伴う変更では、この書面が添付書類になるので、作らないという選択はない。

合同会社なのに「株主総会招集通知」と題した書類を作っている例を見かけるが、会社の機関構成と合っていない。自社がどちらの形態かを登記事項証明書で確かめて、様式を合わせておきたい。

手続きの紙を誰が作るか

ここからは、フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場からの観察を書いておく。

招集通知にせよ提案書にせよ、1枚あたりの作業量は知れている。雛形が手元にあれば30分で終わる。時間を食っているのは、毎回ゼロから調べ直す工程のほうだ。自社は公開会社なのか。期限は何日前か。取締役会の決議は要るのか。1年に1度しかやらない判断を、毎年思い出すところからやり直している。

長く続いている会社を見ていて気づくのは、判断の余地が少ない定型作業を自分の手元から外していることだ。通知の作成、議事録の下書き、登記書類の整理、記帳、請求書の発行。手順が決まっている仕事は外部に切り出せる。業務委託でこうした事務を請け負う人は年々増えていて、仕事の性質も「指示された作業をこなす」から「任せておけば社内の紙が回る」という関係に変わってきた。運営者として見てきた限りでは、長く仕事が続く受け手ほど、作業量ではなくこの安心感を作ることに時間を使っている。

そして、仲介手数料が乗らない直接のやり取りには、単純だが無視できない効果がある。同じ予算で依頼する側はより多くを頼めるし、受ける側は手数料0%のぶん手取りが厚くなる。金額の大小の話ではなく、取り分の質が変わるという話だ。会社を作って間もない、売上がまだ小さい時期ほど、この差は効いてくる。

外部に頼む側として相場を知りたい人、受け手として自分の単価の目安を知りたい人は、職種別のデータを先に見ておくと判断が早くなる。文書作成や編集の仕事については著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、開発寄りの仕事についてはソフトウェア作成者の年収・単価相場に、職種ごとの水準がまとまっている。

社内の作業をどう切り出して外に出すかという設計から相談したい場合は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事に、業務の棚卸しから自動化までを請け負う仕事の中身が整理されている。システム開発を伴う委託についてはアプリケーション開発のお仕事が参考になる。

外部に発注する側に回ったとき、書面に何を残すべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されている。報酬の支払いでもめたときの手順と費用感については未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】にまとまっている。

招集通知は、株主に「いつ、どこで、何を決めるのか」を伝えるための紙だ。伝えるべきことが伝わっていれば、体裁の巧拙は本質ではない。逆に、日時と議題があいまいな通知は、どれだけ丁寧な文面でも役目を果たさない。期限を確かめ、議題を具体的に書き、発送した日を記録する。やることはこの3つに尽きる。

よくある質問

Q. 株主総会の招集通知は何日前までに出す?

公開会社は総会の日の2週間前まで、公開会社でない会社は1週間前までとされている。公開会社でなく取締役会も置いていない会社は、定款で1週間より短い期間を定めればその期間になる。ただし書面投票や電子投票を採用する場合は、会社の形にかかわらず2週間前までになる。

Q. 書面決議のときも招集通知を出す?

出さない。書面決議は株主総会そのものを開かない仕組みなので、日時も場所も存在せず、招集通知という書類が登場しない。代わりに提案書を株主へ渡し、同意書を全員から集め、決議があったものとみなされた記録として議事録を作る。

Q. 招集通知を出さずに総会を開くことはできる?

株主の全員の同意があれば、招集の手続きを経ずに開催できると定められている。ただし書面投票や電子投票を採用する場合は使えない。この方法を取ったときは、議事録に株主全員の同意があったため招集手続を省略した旨を記載しておく。

Q. 通知はメールで送ってもよい?

株主の承諾を得たうえで、電磁的方法により通知を発することができると定められている。会社が一方的にメールでの送付に切り替えることはできないため、先に株主から承諾を得ておく必要がある。承諾していない株主には書面を郵送し、発送した日付が分かる控えを残しておく。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月18日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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