ペイオフマトリクスとは|効果と手間で施策を選ぶ方法


この記事のポイント
- ✓ペイオフマトリクスとは
- ✓施策やアイデアを「効果」と「手間」の2軸で4つに分け
- ✓どれから手を付けるかを決める方法です
ペイオフマトリクスを調べている人の多くは、会議でアイデアがたくさん出たのに、どれから手を付ければよいか決められずに困っています。ペイオフマトリクスは、アイデアや施策を「効果」と「手間」の2つの軸で4つの区画に分け、効果が大きく手間の小さいものから着手するための整理の方法で、紙1枚と付箋があれば30分ほどで最初の版を作れます。この記事では、4つの区画の意味、作り方の手順、効果と手間の点の付け方、仕事での例、失敗しやすい点までを順に説明します。選んだ施策を複数人で分担して進める段階では、2軸のマス目にカードを並べられるプロジェクト管理ツールのPinatecaのような道具を使う方法もあり、後半で紹介します。
ペイオフマトリクスとは何か
ペイオフマトリクスとは、縦軸と横軸の2つの物差しで作った表(マトリクス)に、アイデアや施策を配置して、優先順位を決めるための枠組みです。「ペイオフ」は英語で見返りや成果という意味で、かけた労力に対してどれだけの見返りがあるかを見比べる道具だと考えると分かりやすくなります。
一般的には、縦軸に「効果」、横軸に「手間(実行の難しさ)」を取ります。効果は、その施策を実行したときに得られる成果の大きさです。売上が伸びる、作業時間が減る、問い合わせが減る、ミスが減る、といったものが当たります。手間は、実行に必要な時間、費用、人の数、技術の難しさ、関係者との調整の量などをまとめたものです。
販売とマーケティングの支援を行う会社のコラムは、ペイオフマトリクスを次のように説明しています。
ペイオフマトリクスとは、縦軸に「効果」、横軸に「難易度」をとった2軸のマトリクスに複数のアイデアをマッピングし、優先順位や実行可否を判断するための意思決定フレームワーク。「高効果・低難易度」の領域を最優先とし、目的の明確化→アイデア出し→評価軸設定→マッピング→優先順位決定という手順で活用する。 出典: sellwell.jp
ここで大事なのは、ペイオフマトリクスはアイデアを生み出す方法ではなく、出てきたアイデアを選ぶ方法だという点です。アイデアを出す段階では、良し悪しを判断せずに数を集めます。そのあとで、集めたアイデアを同じ物差しで並べ直し、限られた時間と人手をどこに使うかを決めるのが、この表の役割です。
軸の名前は「効果と手間」「効果と難易度」「効果とコスト」「インパクトと実現性」など、会社や本によって少しずつ違います。どの名前でも考え方は同じで、得られるものと支払うものを比べています。この記事では、日常の仕事で使いやすい「効果」と「手間」という言葉で説明します。
なぜペイオフマトリクスが仕事で使われるのか
仕事の現場では、やりたいことの数に対して、使える時間と人手がいつも足りません。会議で改善案を出し合うと、10個や20個の案がすぐに集まりますが、全部を同時に進めることはできません。そこで、何をやるかと同じくらい、何を後に回すか、何をやめるかを決める必要が出てきます。
このとき、話し合いだけで決めようとすると、声の大きい人の案や、最後に出た案、上の立場の人が好む案が通りやすくなります。案の中身ではなく、出した人や出した順番で決まってしまうと、選ばれなかった案を出した人は納得しにくく、次の会議で案が出にくくなります。
ペイオフマトリクスを使うと、すべての案を「効果」と「手間」という同じ物差しで見比べることになります。表に並べた結果を全員で見ながら話すので、なぜその案を先にやるのかを説明しやすくなります。選ばれなかった案も、「手間が大きいので今期は見送る」「効果が小さいのでやらない」と理由がはっきりするため、出した人の納得感が高まります。
もう1つの理由は、短い時間で結論を出せることです。細かい費用対効果の計算をすべての案について行うと、それだけで何日もかかります。ペイオフマトリクスは、大まかな見積もりで案をふるいにかけ、詳しく検討すべき案を絞り込むための道具なので、1回の会議の中で使えます。小さな会社やチーム、個人で仕事をしている人にとっても、準備に手間がかからない点が使いやすさにつながっています。
4つの区画の意味と扱い方
ペイオフマトリクスは、2つの軸で表を4つに区切ります。それぞれの区画には、扱い方の決まった考え方があります。
| 区画 | 効果 | 手間 | 扱い方 |
|---|---|---|---|
| 左上 | 大きい | 小さい | すぐに着手する |
| 右上 | 大きい | 大きい | 計画を立てて取り組む |
| 左下 | 小さい | 小さい | 空いた時間に片付ける |
| 右下 | 小さい | 大きい | 原則として見送る |
効果が大きく手間が小さい区画
最も優先する区画です。少ない労力で大きな成果が見込めるので、決まったらすぐに着手します。「クイックウィン(早く得られる成果)」と呼ばれることもあります。たとえば、よくある質問をホームページに載せて問い合わせを減らす、請求書の書式をそろえて確認の時間を減らす、といった案がここに入りやすくなります。
ここに入った案は、担当者と期限をその場で決めてしまうのがこつです。すぐできるはずの案ほど、誰がやるかを決めないまま放置されがちだからです。
効果が大きく手間も大きい区画
成果は大きいものの、時間や費用がかかる区画です。新しい商品やサービスの開発、業務の仕組みの作り直し、システムの導入などが当たります。すぐには終わらないので、段階に分けて計画を立て、取り組む順番と期間を決めます。
この区画の案は、さらに小さな作業に分けてみると、一部が「効果が大きく手間が小さい」区画に移ることがあります。たとえば「顧客管理の仕組みを作り直す」は大きな案ですが、「顧客の一覧の項目をそろえる」だけなら、すぐにできるかもしれません。
効果が小さく手間も小さい区画
成果は小さいものの、簡単にできる区画です。手が空いたときや、待ち時間に片付ける作業として扱います。数が多くなりやすいので、優先する区画の作業を後回しにしてまで取り組まないように注意します。
効果が小さく手間が大きい区画
労力に見合う成果が見込めない区画で、原則として見送ります。ただし、法律や取引先との約束で必ずやらなければならない作業が、ここに入ることもあります。その場合は、やめるのではなく、手間を減らす方法がないかを考えます。
ペイオフマトリクスの作り方の手順
ペイオフマトリクスは、次の6つの手順で作ります。会議で使う場合は、最初の2つを事前に済ませておくと、当日の時間を短くできます。
研究と開発の支援を行う会社は、ペイオフマトリクスの雛形を公開し、使い方の流れを紹介しています。
以下、ペイオフマトリクス活用の簡単な流れを紹介します。実際にペイオフマトリクスを使ってみようと考えている方は参考にしてみてください。 出典: and-tankyu.com
手順1:目的を1文で決める
最初に、何のために施策を選ぶのかを1文で書きます。「問い合わせへの返信を今より早くする」「新しい顧客を月に5件獲得する」「月末の締め作業の時間を半分にする」のように、達成したい状態が分かる文にします。目的が決まっていないと、効果の大きさを判断する基準がぶれてしまいます。
手順2:アイデアを出す
目的に役立ちそうなアイデアを、良し悪しを判断せずにできるだけ多く出します。付箋1枚に1つのアイデアを書くと、あとで表に配置しやすくなります。この段階では、手間が大きそうな案も、効果が小さそうな案も、すべて出しておきます。
手順3:軸の意味をそろえる
「効果」と「手間」が何を指すかを、参加者の間でそろえます。効果は「月の作業時間がどれだけ減るか」、手間は「完了までに必要な人と日数」のように具体的にしておくと、人によって判断が分かれにくくなります。
手順4:アイデアを表に配置する
紙やホワイトボードに十字を書いて4つの区画を作り、付箋を配置していきます。まず1枚を基準として真ん中あたりに配置し、ほかの付箋はその基準と比べて上か下か、右か左かを決めていくと迷いにくくなります。
手順5:配置を見直す
全部配置し終えたら、全員で表を見渡して、違和感のある付箋を動かします。「この案は思ったより手間がかかるのではないか」「この案は効果が大きいはずだ」という意見が出たら、その理由を話し合ってから位置を決めます。
手順6:やる順番と担当を決める
効果が大きく手間が小さい区画の案から、担当者と期限を決めていきます。効果も手間も大きい案は、次の会議までに計画を作る担当者を決めます。見送る案は、見送る理由を一言書き添えて記録しておくと、あとで状況が変わったときに見直せます。
効果と手間の見積もり方
ペイオフマトリクスでつまずきやすいのは、効果と手間の大きさをどう判断するかです。感覚だけで配置すると、人によって位置がばらばらになります。そこで、簡単な点数表を作っておくと便利です。
効果の点数表の例
| 点数 | 目安 |
|---|---|
| 3点 | 目的の達成に直接つながり、効果が数字で見込める |
| 2点 | 目的の達成に役立つが、効果の大きさははっきりしない |
| 1点 | 目的とのつながりが弱い、または効果が一部の人に限られる |
手間の点数表の例
| 点数 | 目安 |
|---|---|
| 1点 | 1人で1週間以内に終わり、費用がほとんどかからない |
| 2点 | 複数人で1か月程度、または一定の費用がかかる |
| 3点 | 部署をまたいだ調整が必要、または数か月以上かかる |
アイデアごとに効果と手間の点数を付け、効果の点数を縦の位置、手間の点数を横の位置にすれば、表への配置が自然に決まります。点数が同じ案が並んだときは、目的への近さで順番を決めます。
効果を見積もるときは、できるだけ数字で考えます。たとえば「請求書の書式をそろえる」という案なら、「毎月の確認作業が1件あたり5分短くなり、月に40件あるので200分減る」のように考えると、ほかの案と比べやすくなります。手間も同じで、「誰が」「何日」かかるかを書き出すと、思い込みで小さく見積もることを防げます。
点数は正確である必要はありません。大事なのは、全員が同じ物差しで比べていることです。点数を付けた理由を短く書いておけば、あとで見直すときにも役立ちます。
仕事での使い方の例
ここでは、小さな会社の問い合わせ対応の改善を例に、ペイオフマトリクスの使い方を見ていきます。
目的は「問い合わせへの最初の返信を、平均で1日以内にする」です。会議では次のような案が出ました。
- よくある質問のページを作る
- 返信の定型文を用意する
- 問い合わせの受付窓口を1つにまとめる
- 問い合わせを担当者ごとに振り分ける決まりを作る
- 専用の問い合わせ管理の仕組みを導入する
- 電話の受付時間を延ばす
- 問い合わせの件数を毎週集計して共有する
これらに点数を付けて配置すると、たとえば次のように分かれます。
| 案 | 効果 | 手間 | 区画 |
|---|---|---|---|
| 返信の定型文を用意する | 3点 | 1点 | すぐに着手 |
| 担当者の振り分けの決まりを作る | 3点 | 1点 | すぐに着手 |
| よくある質問のページを作る | 3点 | 2点 | 計画を立てて取り組む |
| 問い合わせ管理の仕組みを導入する | 3点 | 3点 | 計画を立てて取り組む |
| 件数を毎週集計して共有する | 1点 | 1点 | 空いた時間に |
| 電話の受付時間を延ばす | 1点 | 3点 | 見送る |
この結果から、まず定型文と振り分けの決まりを今週中に作り、よくある質問のページは来月までに作る計画を立て、問い合わせ管理の仕組みは必要かどうかを3か月後に改めて判断する、という順番が決まります。電話の受付時間を延ばす案は、人手が必要なうえに、目的である返信の早さへの効果が小さいので見送ります。
個人で仕事をしている人も、同じ方法が使えます。たとえば在宅で業務委託の仕事をしている人が「月の作業時間を10時間減らしたい」という目的を立てた場合、「よく使う連絡文をひな形にする」「請求書の作成を表計算ソフトの雛形にする」「作業の記録を毎日5分つける」などの案を並べて、効果と手間で順番を決められます。
この例で点数を付けてみると、連絡文のひな形は1回作れば毎日使えるので効果が大きく、作るのに1時間もかからないので手間は小さい区画に入ります。請求書の雛形も、月末の作業が毎月短くなるので効果が大きく、手間は小さい区画です。作業の記録は、続けると時間の使い方の偏りが見えて効果が出ますが、すぐには成果が見えないので、効果は中くらいと考えられます。一方で「作業用のアプリを一から作る」のような案は、効果が大きくても手間が大きすぎるので、計画を立てて取り組む区画か、見送る区画に入ります。
個人で使う場合は、相談相手がいないぶん、点数が甘くなりがちです。付けた点数を1週間後に見直す、取引先や同業の知人に一度見てもらう、といった工夫で、思い込みによる判断を減らせます。
会議でペイオフマトリクスを使うときの進め方
ペイオフマトリクスを会議で使うときは、時間の配分を先に決めておくと、話が脱線しにくくなります。ここでは、5人から8人ほどの参加者で、60分の会議を行う場合の進め方の例を紹介します。
| 時間 | やること |
|---|---|
| 最初の5分 | 目的の1文と、効果と手間の意味を確認する |
| 次の15分 | アイデアを付箋に書き出す(1人5枚以上が目安) |
| 次の10分 | 似ている付箋をまとめ、重複を整理する |
| 次の15分 | 付箋を表に配置し、位置について話し合う |
| 次の10分 | 優先する案の担当者と期限を決める |
| 最後の5分 | 見送る案と理由、次の見直しの日を確認する |
進行役は、案を出す時間と選ぶ時間をはっきり分けることに気を配ります。案を出している最中に「それは無理だ」「前にやって失敗した」といった意見が出ると、参加者が案を出しにくくなるからです。判断は配置の時間にまとめて行う、と最初に伝えておきます。
配置の時間には、進行役が付箋を1枚ずつ読み上げ、「効果は大きいか小さいか」「手間は大きいか小さいか」を参加者に聞いていきます。意見が割れた付箋は、いったん表の中央に寄せておき、ほかの付箋を配置し終えてから改めて話し合うと、時間内に収まりやすくなります。
会議の前に、参加者に目的の1文を伝えておき、アイデアを考えてきてもらうのも効果的です。当日の15分だけでは案が出そろわないことがあるので、事前に考える時間があると、案の数も質も上がります。
点数や位置の意見が割れたときの決め方
ペイオフマトリクスを使っていると、同じ案について「効果は大きい」という人と「小さい」という人に分かれることがよくあります。意見が割れたこと自体は悪いことではなく、案についての理解が人によって違うことが分かったという意味で、むしろ価値のある情報です。
意見が割れたときは、まずそれぞれの理由を聞きます。効果を大きく見ている人は、どの数字がどれだけ変わると考えているのか。小さく見ている人は、何が理由で効果が出にくいと考えているのか。理由を並べてみると、前提にしている条件が違うだけだと分かることがあります。たとえば「よくある質問のページを作る」という案について、効果を大きく見る人は問い合わせの半分がよくある質問だと考えており、小さく見る人は問い合わせの多くが個別の相談だと考えている、という具合です。
前提が違うと分かったら、その前提を確かめる方法を考えます。この例なら、過去1か月の問い合わせを分類すれば、どちらの前提が正しいかが分かります。確かめるのに時間がかかる場合は、案の位置を仮に決めておき、確かめた結果で見直すことにします。
それでも決まらないときは、効果を低めに、手間を高めに見積もる側に合わせるのが安全です。期待より成果が小さかったり、手間が大きかったりしたときの影響を小さくできるからです。
ペイオフマトリクスを使うメリット
ペイオフマトリクスを使うメリットは、大きく4つあります。
1つ目は、限られた時間と人手を、成果の出やすいところに集中できることです。効果が大きく手間の小さい案から取り組むので、早い段階で成果が見えやすく、チームの意欲を保ちやすくなります。
2つ目は、決めた理由を説明しやすいことです。表を見せれば、なぜその案を先にやるのかが一目で伝わります。上司や取引先に報告するときにも、判断の根拠として使えます。
3つ目は、やらないことを決めやすいことです。効果が小さく手間の大きい案は見送る、という決まりがあるので、なんとなく続けている作業や、誰も得をしない作業をやめるきっかけになります。
4つ目は、話し合いの質が上がることです。表に配置する過程で、「この案の効果はどれくらいか」「どこに手間がかかるのか」を具体的に話すことになるので、案の中身についての理解が深まります。
これらのメリットは、表を1回作って終わりにすると半分しか得られません。取り組んだ結果を表に書き戻し、予想と実際の差を確かめることで、次に効果と手間を見積もるときの精度が上がっていきます。最初のうちは見積もりが外れることも多いので、外れたこと自体を失敗と考えず、次の判断に生かす材料として記録しておくことが大切です。
よくある失敗と注意点
ペイオフマトリクスは手軽な方法ですが、使い方を誤ると、かえって判断を誤ることがあります。
手間を小さく見積もりすぎる
最も多い失敗は、手間を実際より小さく見積もることです。案を出した人は、その案を実現したい気持ちから、手間を少なく見積もりがちです。関係者との調整、テスト、運用の引き継ぎといった、見えにくい作業を書き出してから手間を判断すると、見積もりの甘さを減らせます。
効果が大きく手間の小さい案ばかり選ぶ
すぐにできる案ばかりを選び続けると、大きな成果につながる案がいつまでも後回しになります。効果も手間も大きい区画の案は、小さく分けて少しずつでも進める計画を立てておくことが大切です。
配置したまま見直さない
表を作った時点の見積もりは、あくまで予想です。実際に取り組んでみると、思ったより効果が小さかったり、手間が大きかったりすることがあります。1か月や四半期ごとに表を見直し、案の位置を更新します。
軸の意味が人によって違う
「効果」を売上と考える人と、作業時間の短縮と考える人が混ざっていると、話がかみ合いません。手順3で軸の意味をそろえる作業を省かないようにします。
数字のふりをした思い込み
点数を付けると客観的に見えますが、点数そのものは参加者の判断です。点数の根拠を一言添えておくと、思い込みで付けた点数に気づきやすくなります。
ペイオフマトリクスが向かない場面
ペイオフマトリクスは便利な方法ですが、どんな判断にも使えるわけではありません。向かない場面を知っておくと、ほかの方法に切り替える判断がしやすくなります。
1つ目は、案どうしが互いに影響し合う場合です。たとえば「新しい料金の仕組みを作る」と「申し込みの画面を作り直す」は、片方の結果によってもう片方の効果が変わります。こうした案は、1枚ずつ別々に評価すると判断を誤るので、組み合わせとして評価するか、どちらを先にやるかを先に決めます。
2つ目は、失敗したときの損失が大きい場合です。ペイオフマトリクスは成果と手間を比べる方法で、失敗したときの影響の大きさは表に出てきません。お金や安全、信用に関わる判断では、起こりうる問題とその影響を別に洗い出してから決めます。
3つ目は、案の数が少ない場合です。案が2つか3つしかないなら、表を作らなくても、それぞれの良い点と悪い点を並べるだけで決められます。ペイオフマトリクスが力を発揮するのは、案が多く、全体を見渡さないと順番が決められないときです。
見送った案の記録と見直し
ペイオフマトリクスで見送った案は、捨てるのではなく記録として残しておきます。状況が変わると、見送った案の効果や手間が変わることがあるからです。たとえば、新しい道具が出て手間が小さくなった、取引先が増えて効果が大きくなった、といった変化です。
記録には、案の名前、付けた点数、見送った理由、見直す時期の4つを書いておけば足ります。表計算ソフトなら、見送った案だけを別の一覧にしておくと、見直しの会議で確認しやすくなります。見直しの会議では、見送った案の中から、点数が変わったものだけを取り出して表に戻します。
この記録は、新しく入った人への説明にも役立ちます。「なぜこの案をやっていないのか」と聞かれたときに、当時の理由を示せるので、同じ議論を繰り返さずに済みます。
紙や表計算ソフトで作る方法
ペイオフマトリクスは、特別な道具がなくても作れます。参加者の人数や働き方に合わせて、作り方を選びます。
対面の会議なら、ホワイトボードか模造紙に十字を書き、付箋を使うのが最も手軽です。付箋はあとから動かせるので、話し合いの中で位置を変えやすくなります。会議が終わったら、表を写真に撮って記録しておきます。
オンラインの会議では、表計算ソフトが使いやすい方法です。1行に1つの案を書き、「効果の点数」「手間の点数」「区画」「担当者」「期限」「理由」の列を作ります。区画の列には、効果と手間の点数から自動で区画名が出る式を入れておくと、点数を変えるだけで区画が更新されます。オンラインのホワイトボードの道具を使えば、付箋の形で表を共有することもできます。
表計算ソフトで管理する場合も、最後に4つの区画の図を作って全員で見るようにします。数字の一覧だけでは、どの案がどこに集まっているかが見えにくいからです。
選んだ施策を複数人で進めるときの道具
案が10個を超え、担当者が3人、4人と増えてくると、表計算ソフトの一覧では、誰がどの案をどこまで進めているかが追いにくくなります。案ごとのやり取りがセルのメモに書き込まれていき、最新の状況がどれなのか分からなくなることもあります。
その段階では、施策を1枚ずつのカードにして、担当者、期限、話し合いを1か所で扱えるプロジェクト管理ツールを使う方法があります。候補の1つがPinatecaです。公式サイトの使い方ガイドによると、Pinatecaには縦と横の軸を自分で決めてカードを2次元に並べる「グリッドボード」があり、「効果 × 手間」で優先順位を決める使い方が例として挙げられています。カードには担当者、期限、チェックリスト、コメント、添付を付けられ、優先順位を決めたあとの進み具合はカンバンボードで列から列へ動かして管理できます。料金ページによると、5人までのチームなら期限なしで無料で、ボードは10個まで作れます。6人目、または11個目のボードからはスタンダードプランで、料金は1人あたり月額500円(年払いなら1人あたり月額400円、税抜)です。紙やホワイトボードで表を作って話し合い、決まった施策の分担と進み具合をPinatecaで共有する、という使い分けもできます。Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
道具を入れる前に、どの軸で並べるか、どの区画の案を誰が担当するかを、紙の表で一度試しておくと、道具の設定で迷いません。道具は進め方を見えやすくするためのもので、どの案を選ぶかを決めるのは、あくまで参加者の話し合いです。
ほかの方法との組み合わせ
ペイオフマトリクスは、ほかの整理の方法と組み合わせると、さらに使いやすくなります。
アイデアを出す方法と組み合わせる
ペイオフマトリクスは案を選ぶ方法なので、その前に案を出す方法と組み合わせます。参加者が自由に案を出し合うブレインストーミングや、付箋に書いた案を似たもの同士でまとめる方法で案を集め、そのあとでペイオフマトリクスにかけると、出す段階と選ぶ段階をはっきり分けられます。
緊急度と重要度の表との違い
似た形の表に、縦軸に「重要度」、横軸に「緊急度」を取るものがあります。こちらは、目の前の作業の順番を決めるときに使われます。ペイオフマトリクスは、これから取り組む施策を選ぶときに使うのが向いています。日々の作業の整理には緊急度と重要度の表、改善策や新しい企画の選択にはペイオフマトリクス、と使い分けると混乱しません。
点数を掛け合わせる方法
案の数が多いときは、効果、確からしさ、手軽さなどの点数を掛け合わせて、1つの数字で並べる方法もあります。数字で順位を付けたあとで、上位の案をペイオフマトリクスに配置し直すと、順位だけでは見えにくい「手間の大きさ」が目で確かめられます。
在宅や業務委託の仕事で活きる場面
ペイオフマトリクスの考え方は、会社の会議だけでなく、在宅や業務委託で働く人の仕事でも役に立ちます。
業務の改善やAIの活用を提案する仕事では、取引先の課題に対して複数の改善案を出し、どれから導入するかを一緒に決める場面がよくあります。その際、効果と手間の表を使って説明すると、取引先が判断しやすくなります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、こうした支援の仕事の内容と進め方が紹介されています。アプリやシステムを作る仕事でも、追加したい機能の候補を効果と手間で並べて、最初に作る範囲を決める場面があります。アプリケーション開発のお仕事が参考になります。
デザインの仕事では、ホームページの改善案を複数出し、どれから手を付けるかを依頼主と決める場面で使えます。仕事の内容と報酬の目安は、デザイナーの年収・単価相場で確かめられます。経営の改善を体系的に学びたい人には、中小企業診断士の資格ガイドも参考になります。
在宅ワークの仲介を20年以上続けてきた運営者として見てきた限りでは、長く仕事が続く人ほど、依頼主に案を出すときに「やるべきこと」だけでなく「後に回してよいこと」まで添えています。依頼主は限られた予算と時間の中で判断しているので、優先順位まで示してくれる相手を頼りにするからです。仲介の手数料がかからない直接のやり取りであれば、同じ予算でも依頼主が頼める範囲が広がり、受ける側の手取りも厚くなります。その分、効果の大きい施策に予算を回せるので、ペイオフマトリクスで選んだ案を実行に移しやすくなります。
よくある質問
Q. ペイオフマトリクスの縦軸と横軸は何にすればよいですか?
一般的には、縦軸に「効果」、横軸に「手間(難易度やコスト)」を取ります。効果は売上の伸びや作業時間の短縮など、目的に対する成果の大きさです。手間は時間、費用、人の数、調整の量をまとめたものです。軸の名前より、参加者の間で意味をそろえることが大切です。
Q. ペイオフマトリクスは1人でも使えますか?
使えます。個人で仕事をしている人が、作業の改善案や新しく始めたいことを効果と手間で並べると、どれから手を付けるかを決めやすくなります。紙に十字を書いて付箋を配置するだけで作れるので、準備にほとんど時間はかかりません。1か月ごとに見直すと、状況の変化にも対応できます。
Q. 効果も手間も大きい案はどう扱えばよいですか?
すぐには終わらないので、段階に分けて計画を立てます。大きな案を小さな作業に分けると、一部がすぐに着手できる区画に移ることがあります。担当者と次の会議までに計画を作る期限を決め、少しずつでも進めることで、大きな成果につながる案が後回しのまま止まることを防げます。
Q. 配置した案の位置はいつ見直せばよいですか?
1か月ごと、または四半期ごとに見直すのが目安です。表を作った時点の見積もりは予想なので、実際に取り組むと効果や手間が変わることがあります。見送った案も、状況が変わると優先する区画に移ることがあるため、見送った理由を記録しておくと見直しがしやすくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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