役員報酬を決議した議事録のひな形|総額と各人の配分の書き分け

前田 壮一
前田 壮一
役員報酬を決議した議事録のひな形|総額と各人の配分の書き分け

この記事のポイント

  • ✓役員報酬決定議事録の書き方を
  • ✓総額の上限だけを決める方式と各人別に決める方式の違いから整理
  • ✓株主総会と取締役会で議事録を2枚作る場合の書き分け

役員報酬決定議事録を作ろうとして、ひな形を探し始めた方の多くが、途中で別の疑問にぶつかります。議事録に、各取締役の金額をそれぞれ書くのか。それとも全員分の合計の上限だけを書いて、誰がいくらかは別で決めるのか。ひな形によって書き方が違うので、どちらが正しいのか分からなくなります。

まず、安心してください。どちらも正しい形です。会社の機関の作りによって、選べる道が2つ用意されているだけです。そして、どちらを選ぶかで、作る議事録の枚数が1枚になるか2枚になるかが決まります。

この記事では、2つの方式の違い、自社がどちらを選ぶべきか、それぞれのひな形、設立1期目の決め方、そして決めた金額が税務でどう見られるかを順に並べます。専門用語は出てくるたびに言い換えるので、初めて法人の書類を作る方でも読み通せます。

役員報酬を誰が決めるのか、という出発点

役員報酬は、会社のお金を役員個人に移す行為です。取締役が自分で自分の額を決められると、会社の財産を自由に自分へ動かせてしまいます。だから会社法は、決める権限を株主の側に置きました。

会社法第361条第1項は、取締役の報酬等のうち額が確定しているものについてはその額を、定款に定めていないときは株主総会の決議によって定める、としています。ここでいう報酬等には、報酬だけでなく賞与その他の職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益が含まれます。

定款に金額を書いている中小企業はほとんどありません。定款を変えるには株主総会の特別決議が必要になり、報酬を変えるたびに定款変更の手続きを踏むことになるからです。したがって実務では、株主総会の決議で決める形がほぼすべてを占めます。

そして会社法第318条第1項が、株主総会の議事については法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならない、と定めています。決議をしたら議事録を作る。ここまでは、会社の規模にかかわらず共通です。

分岐が生じるのは、その先です。株主総会で「各取締役にいくら」まで決めてしまうのか、「全員分の合計で年額いくらまで」という枠だけを決めて、個別の配分は取締役会に委ねるのか。この選択が、議事録の形を決めます。

各人別に決める方式と、総額の枠だけを決める方式

各人別に決める方式は、株主総会の議事録に取締役ひとりひとりの金額を書く形です。「取締役◯◯は月額60万円、取締役△△は月額40万円」と並べます。決議が1回で完結するので、議事録は1枚で済みます。

総額の枠だけを決める方式は、株主総会で「取締役の報酬の総額は年額3,000万円以内とする」といった上限を決め、その枠内で誰にいくら配るかは取締役会の決議で決める形です。この場合、株主総会議事録と取締役会議事録の2枚が必要になります。

なぜ2つの方式があるのか。取締役の人数が多い会社では、個々の金額を株主総会で1人ずつ決議するのが現実的でないからです。上場企業のように株主が多数いる会社では、各役員の金額を株主総会の議案にすること自体が難しく、枠だけを承認してもらう運用が定着しました。

もうひとつの理由が、金額を公にしたくないという事情です。株主総会の議事録は、株主と債権者が閲覧や謄写を請求できます。各人の金額が書いてあれば、その情報が外に出ます。枠だけを決めておけば、個別の配分は取締役会の議事録に留まります。

中小企業ではどちらも見られますが、取締役会を置いていない会社では、そもそも配分を委ねる先がありません。取締役会が無い会社は、各人別に決める方式を選ぶことになります。自社が取締役会設置会社かどうかは、登記事項証明書を見れば分かります。

どちらを選ぶべきか

判断の軸は3つです。

1つ目、取締役会があるかどうか。無ければ各人別に決める方式です。ここで迷う余地はありません。

2つ目、取締役の人数と、報酬を動かす頻度です。取締役が2人か3人で、報酬を年に1回しか変えないなら、各人別に決める方式のほうが書類が少なくて済みます。逆に、取締役が5人以上いて、期中に職務の変更が起きる可能性があるなら、枠だけ決めておくほうが動かしやすくなります。

3つ目、金額を誰に見せたくないかです。株主が親族だけの会社なら、各人の金額が議事録に出ても困りません。外部の株主がいる会社では、配分を取締役会に留めておく意味があります。

実務でよく見るのは、中小企業が総額の枠方式を選んだものの、取締役会議事録を作り忘れているケースです。株主総会で「年額3,000万円以内」と決めたまま、各人の配分を決めた記録が無い。この状態だと、誰にいくら払うことになっているのかを示す書類が存在しません。税務上も、株主総会の決議だけでは個別の金額が確定していないため、説明が難しくなります。

枠方式を選ぶなら、取締役会議事録まで含めて1セットです。2枚作る手間を惜しむなら、各人別に決める方式のほうが確実です。

なお、取締役会が配分の決定をさらに代表取締役に委ねる、いわゆる再一任という運用も見られます。実務上は行われていますが、決定の記録がどこにも残らない形になりやすいため、少人数の会社では避けたほうが無難です。委ねるなら、代表取締役が決めた内容を書面に残してください。

各人別に決める場合のひな形

定時株主総会議事録

開催日時 令和◯年◯月◯日 午前10時00分 開催場所 当会社本店会議室 出席状況 発行済株式の総数 200株      議決権を行使することができる株主の数 3名      議決権を行使することができる株主の議決権の数 200個      出席株主数 3名      出席株主の議決権の数 200個 出席役員 取締役 ◯◯◯◯(議長兼議事録作成者)      取締役 △△△△      監査役 □□□□

議長は定刻に開会を宣言し、上記のとおり本総会は適法に成立した旨を述べ、議案の審議に入った。

第1号議案 第◯期計算書類承認の件

(省略)

第2号議案 取締役の報酬の額決定の件

議長は、第◯期の業績および各取締役の職務の内容を踏まえ、取締役の報酬を次のとおり定めたい旨を提案し、その理由を説明した。

 代表取締役 ◯◯◯◯ 月額60万円  取締役   △△△△ 月額35万円  適用開始 令和◯年◯月支給分から

第3号議案 監査役の報酬の額決定の件

議長は、監査役の報酬を月額10万円と定めたい旨を提案した。

各議案について議長がその可否を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の全部の賛成をもって、いずれも原案のとおり承認可決された。

以上をもって本総会の議案の審議を終了したので、議長は午前10時40分閉会を宣言した。

上記の決議を明確にするため、この議事録を作成する。

令和◯年◯月◯日  株式会社◯◯◯◯ 定時株主総会   議長 代表取締役 ◯◯◯◯ 印

このひな形で押さえている点は3つです。取締役と監査役の報酬を別の議案に分けていること。各人の金額を明示していること。適用開始の支給月を書いていること。

監査役の報酬を分けるのには理由があります。会社法は監査役の報酬を取締役とは別の条文で扱っており、監査役の独立性を確保するために、取締役と一緒に決めない建て付けになっています。監査役を置いている会社は、議案を分けてください。

適用開始は必ず書きます。書かないと、いつの支給分から新しい金額なのかが議事録から読み取れません。給与計算の担当者が判断に迷い、結果として振込額と議事録がずれる原因になります。

総額の枠だけを決める場合のひな形

株主総会側は、こう書きます。

第◯号議案 取締役の報酬額決定の件

議長は、取締役の報酬額を年額3,000万円以内(使用人兼務取締役の使用人分給与を含まない)と定め、各取締役に対する配分は取締役会の決議に一任したい旨を提案した。

議長がその可否を議場に諮ったところ、出席株主の議決権の過半数の賛成をもって、原案のとおり承認可決された。

これを受けて、取締役会側で配分を決めます。

取締役会議事録

開催日時 令和◯年◯月◯日 午前11時00分 開催場所 当会社本店会議室 取締役の総数 3名 出席取締役の数 3名 監査役の総数 1名 出席監査役の数 1名

代表取締役◯◯◯◯は議長となり、上記のとおり定足数に足る取締役の出席があったので、本取締役会は適法に成立した旨を述べ、議案の審議に入った。

第1号議案 取締役の報酬の配分決定の件

議長は、本日の定時株主総会において承認された取締役の報酬総額年額3,000万円以内の範囲で、各取締役への配分を次のとおり定めたい旨を提案した。

 代表取締役 ◯◯◯◯ 月額80万円  取締役   △△△△ 月額50万円  取締役   ▽▽▽▽ 月額40万円  適用開始 令和◯年◯月支給分から

議長がその可否を議場に諮ったところ、出席取締役全員の賛成をもって、原案のとおり承認可決された。

以上をもって本取締役会の議案の審議を終了したので、議長は午前11時20分閉会を宣言した。

上記の決議を明確にするため、この議事録を作成し、出席取締役および出席監査役が次に記名押印する。

令和◯年◯月◯日  株式会社◯◯◯◯ 取締役会   議長 代表取締役 ◯◯◯◯ 印   取締役 △△△△ 印   取締役 ▽▽▽▽ 印   監査役 □□□□ 印

株主総会議事録と取締役会議事録で、形式の要求が違う点に注意してください。会社法第369条第3項は、取締役会の議事録が書面で作られているときは、出席した取締役と監査役が署名または記名押印しなければならない、と定めています。株主総会議事録には、この署名義務がありません。取締役会議事録のほうが要求が厳しいということです。

枠の金額をいくらにするかも決めておく必要があります。実際の支給見込みぎりぎりに設定すると、期中に1人追加したいときに枠が足りなくなり、もう一度株主総会を開くことになります。ある程度の余裕を持たせた金額にしておくのが一般的な運用です。

設立1期目はどう決めるか

会社を作ったばかりの場合、決めるタイミングに制約があります。

役員に毎月同じ額を払う給与を定期同額給与と呼びます。定期同額給与とは、支給時期が1か月以下の一定の期間ごとで、各支給時期の金額が同じ給与のことです。この形に当たらない支払いは、経費として認められない可能性があります。

国税庁の整理では、事業年度が始まった会計期間の開始日から3か月を経過する日までにされた改定が、定期同額給与の範囲に含まれます。設立1期目については、設立の日から3か月を経過する日までに決めることになります。

つまり、会社を作ってから3か月以内に役員報酬を決議して、議事録を残す。これが設立直後にやるべき作業です。売上の見通しが立たないから後で決めよう、と先延ばしにすると、1期目は報酬を経費にできない、あるいは払った額の一部が経費にならない、という結果になりかねません。

設立時の議事録は、定時株主総会ではなく臨時株主総会の形で作ります。定時株主総会は毎事業年度の終了後に開くものなので、設立直後には存在しないからです。表題を「臨時株主総会議事録」にして、開催日を設立から3か月以内の日にしてください。

金額の決め方は、1期目がいちばん難しい部分です。売上の実績が無いので、見込みで決めるしかありません。低めに設定して翌期から上げるほうが、資金繰りの面では安全です。期の途中で上げることは原則としてできないので、高く設定して払えなくなるリスクのほうが重く効きます。制度の詳細は国税庁の役員給与の説明で確認できます。

決めた金額が税務でどう見られるか

議事録の形式が整っていても、金額そのものが高すぎると、その超える部分は経費になりません。

イ 内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与(法第三十四条第二項に規定する給与のうち、退職給与以外のものをいう。以下この号において同じ。)の額(第三号に掲げる金額に相当する金額を除く。)が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額 出典: laws.e-gov.go.jp

判断の材料として並んでいるのは4つです。その役員が実際にどんな仕事をしているか。会社がどれだけ稼いでいるか。従業員にいくら払っているか。同じ業種で規模の似た会社が役員にいくら払っているか。

中小企業で問題になりやすいのは、実質的に仕事をしていない親族を役員に入れて報酬を払っているケースです。名前だけの役員に高額な報酬を払っていると、職務の内容に照らして相当かという観点で見られます。議事録に名前が並んでいるだけでは、仕事の実体を示したことにはなりません。

もうひとつ、枠方式を選んだ会社には別の落とし穴があります。同じ条文のロは、定款や株主総会の決議で報酬の限度額を定めている会社が、その限度額を超えて支給した場合、超える部分は経費にならないという扱いを定めています。年額3,000万円と決めておきながら、実際の支給合計が3,200万円になっていれば、200万円分が経費から外れる可能性があるということです。

枠を決めたら、実際の支給額の合計が枠に収まっているかを、決算のたびに確認してください。役員が増えた年や、賞与を出した年に超えやすくなります。

議事録を作ったあとの実務

議事録を作ったら、3つの作業が続きます。

1つ目、給与計算の変更です。適用開始として書いた支給月から、実際の振込額を新しい金額にします。議事録と振込額がずれていると、定期同額給与の要件を満たしていない状態になります。

2つ目、源泉徴収税額の見直しです。報酬が変われば天引きする所得税の額も変わります。源泉徴収税額表で新しい金額に対応する額を確認してください。

3つ目、社会保険の手続きです。報酬が大きく変わったときは、標準報酬月額を見直す随時改定に当たる場合があります。条件は、固定的賃金に変動があったこと、変動した月から3か月の報酬の平均から計算した標準報酬月額が従来と2等級以上離れていること、その3か月とも支払基礎日数が17日以上あることの3つです。すべて満たすと4か月目から新しい等級になります。届出は月額変更届で、案内は日本年金機構にあります。

保管も忘れないでください。会社法第318条第2項は、株主総会の日から10年間、議事録を本店に備え置くことを求めています。取締役会議事録についても、会社法第371条第1項が10年間の備置きを定めています。年度別のファイルを作り、株主総会と取締役会の議事録を時系列で綴じるのが、いちばん探しやすい形です。

使用人兼務役員がいる場合の書き分け

取締役でありながら、部長や工場長といった従業員としての職務も持っている人がいます。使用人兼務役員と呼ばれる形です。この人がいる会社は、議事録の書き方にひと手間かかります。

使用人兼務役員に払うお金は、役員としての報酬と、従業員としての給与に分かれます。役員報酬の部分は株主総会の決議が必要ですが、従業員としての給与の部分は会社の給与規程で決まります。

株主総会で枠を決めるとき、この枠に従業員分の給与を含めるのか含めないのかを明記してください。含めない場合は「使用人兼務取締役の使用人分給与を含まない」と括弧書きで入れます。書かないと、枠の中に従業員分が入っているのかどうかが読み取れず、限度額を超えているかの判定ができなくなります。

金額の区分も、給与台帳の上で分けておく必要があります。役員報酬いくら、使用人分給与いくら、と分けて記録しておかないと、あとから説明できません。従業員分の給与については、他の従業員への給与の支給状況に照らして相当と認められる金額かが見られます。

なお、代表取締役や専務取締役、常務取締役は、使用人兼務役員になれないとされています。同族会社の一定の株主である役員も対象外です。該当するかどうかは持株の状況で変わるので、判断に迷う場合は税務署か税理士に確認してください。

議事録に書く項目は法務省令で決まっている

形式の話を押さえておきます。株主総会議事録に何を書くかは、会社法施行規則第72条第3項が列挙しています。

書くのは、開催された日時と場所、議事の経過の要領とその結果、一定の規定により述べられた意見や発言があるときはその概要、出席した取締役や監査役などの氏名、議長がいるときは議長の氏名、議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名です。

場所の欄には、その場にいない取締役や株主が出席した場合、その出席の方法も書きます。オンライン会議で参加したなら、その旨を記載するという意味です。近年は遠方の役員がオンラインで参加する形が増えているので、該当する会社は忘れないでください。

議事の経過の要領という言葉は堅いですが、発言の書き起こしは求められていません。何が提案され、どのような説明があり、どう決まったかを要約すれば足ります。役員報酬の決議であれば、提案の内容、理由の説明、採決の結果の3つを書けば十分です。

取締役会議事録については、会社法施行規則第101条第3項が別に定めています。開催された日時と場所、議事の経過の要領と結果のほか、決議を要する事項について特別の利害関係を有する取締役がいるときは、その取締役の氏名を書くとされています。

この特別の利害関係という点が、役員報酬の配分決議では論点になります。会社法第369条第2項は、決議について特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができないとしています。自分の報酬額を決める決議で、その取締役が特別の利害関係を有するかについては見解が分かれており、実務では全員が出席して全員一致で決議する形が多く取られています。判断に迷う場合は、決議の前に専門家に確認してください。

議事録と現実がずれたときに起きること

作った議事録が、実際の運用と食い違う例をいくつか挙げておきます。

議事録では月額60万円と決めているのに、実際の振込額が月によって違う。定期同額給与は各支給時期の金額が同じであることが要件なので、この揺れは説明が難しくなります。資金が足りない月に払う額を減らして調整する運用をしていると、議事録の意味が消えます。払えない月が出るなら、そもそもの金額設定を見直すのが筋です。

決議の日付より前から新しい金額で振り込んでいる。通帳と議事録を並べれば一目で分かります。決議の日は、適用開始の支給日より前でなければ筋が通りません。

議事録の役員の顔ぶれと、登記されている役員が違う。任期が満了しているのに再任の登記をしていない、辞任したのに変更登記をしていない、といった状態です。役員の任期は原則として選任後2年以内に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までですが、非公開会社では定款で最長10年まで伸ばせます。任期の管理を怠ると、議事録に出てくる役員が登記上は存在しないという矛盾が生じます。

枠方式で決めた限度額を、実際の支給合計が超えている。決算のたびに、役員報酬の合計額が枠に収まっているかを確認してください。役員が増えた年や賞与を出した年に超えやすくなります。

これらは、どれも年に1回の確認で防げるものばかりです。決算のときに、議事録と総勘定元帳と登記事項証明書を並べて見る時間を取ってください。

賞与を出したいときは、別の届出が要る

役員報酬の決議と合わせて相談が多いのが、役員に賞与を出したい場合です。ここは仕組みがまったく違います。

毎月同じ額を払う定期同額給与とは別に、あらかじめ決めた時期に決めた額を払う形があります。事前確定届出給与と呼ばれるものです。この形を使うには、株主総会などで支給の時期と額を定めたうえで、税務署に届出をする必要があります。決議だけでは足りません。

国税庁の整理では、届出の期限は、株主総会などの決議によりその定めをした日から1か月を経過する日と、その会計期間の開始の日から4か月を経過する日のうち、いずれか早い日とされています。新しく設立した法人がその設立時に開始する職務について定めた場合は、設立の日以後2か月を経過する日が期限です。

届け出た内容と実際の支給が一致していることも条件になります。届出では12月に100万円と書いたのに、実際には12月に80万円しか払わなかった、という場合、その支給は届出のとおりではないことになります。金額を減らす場合も増やす場合も、届出との一致が求められる点に注意してください。

議事録には、支給する時期と金額を具体的に書きます。「令和◯年12月15日に、取締役◯◯に対し100万円を支給する」という形です。時期を「12月」とだけ書くと、いつ払うのかが確定していないことになります。

賞与まで含めて設計すると、株主総会で決める枠の金額にも影響します。枠方式を選んでいる会社は、賞与の分が枠の中に入るのかどうかを確認してください。

書類を整える手間を、誰の時間で払うか

運営者として20年この市場を見てきた限りでは、法人を持った人がいちばん後回しにするのが、売上に直結しないこの種の書類です。年に1回か2回しか作らないので手順が身に付かず、そのたびに調べ直す。1回あたり2時間から3時間が消えていきます。

打開策は単純で、最初の1回に時間を使って自社用の型を固めることです。会社名、本店、株数、議決権の数、役員の氏名を埋めた雛形を、株主総会用と取締役会用に1つずつ作る。次からは日付と金額を差し替えるだけになり、30分で終わる作業に変わります。

長く続いている人ほど、単発の作業を数多くこなすことより、依頼側が毎回同じ相手に頼みたくなる状態をつくることに時間を使っています。会社の書類を整える仕事はその典型で、会社の機関構成や役員の顔ぶれを知っている相手に頼むほど、説明の手間が消えて双方の時間が浮きます。中間の手数料が乗らない直接の取引なら、同じ予算で依頼側はより多くを頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%という条件が効いてくるのは、単発の金額よりも、こうした続く関係の中です。

文章や書式を整える仕事の報酬水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場が目安になります。書類の型を体系的に押さえたいならビジネス文書検定の出題範囲が学習の地図として使えます。経理や決算の周辺で働く道の形は会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】に整理されています。

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よくある質問

Q. 議事録には各取締役の金額を書くべきですか?

どちらでもかまいません。株主総会で各人別に金額を決めれば議事録は1枚で済みます。総額の上限だけを決めて配分を取締役会に委ねる場合は、株主総会議事録と取締役会議事録の2枚が必要です。取締役会を置いていない会社は委ねる先が無いので、各人別に決める方式になります。

Q. 総額の枠を決めたあと、取締役会議事録を作り忘れるとどうなりますか?

誰にいくら払うことになっているのかを示す書類が存在しない状態になります。株主総会の決議だけでは個別の金額が確定していないため、税務調査の場面で説明が難しくなります。枠方式を選ぶなら、株主総会と取締役会の議事録は必ず1セットで作ってください。

Q. 設立したばかりの会社は、いつまでに決めればよいですか?

設立の日から3か月を経過する日までに決議して、議事録を残してください。会計期間の開始日から3か月以内の改定であれば定期同額給与として扱われるためです。この期間を過ぎてから決めると、支払った額の一部が経費にならない可能性があります。売上の見通しが立たない場合でも、低めの金額で先に決めるほうが安全です。

Q. 議事録の形式が整っていれば、金額はいくらでもよいですか?

いいえ。不相当に高額な部分は経費になりません。判断の材料は、その役員の職務の内容、会社の収益、従業員への給与の支給状況、同じ業種で規模の似た会社の支給状況です。名前だけの役員に高額な報酬を払っている場合は問題になりやすいため、金額の妥当性は税務署か税理士に確認してください。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月26日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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