役員変更の登記にかかるお金|登録免許税と実費の内訳

前田 壮一
前田 壮一
役員変更の登記にかかるお金|登録免許税と実費の内訳

この記事のポイント

  • 登録免許税・証明書の手数料・司法書士報酬の3つに分けて内訳を整理します
  • 1万円と3万円の分かれ目
  • 全国調査による報酬の平均額と分布

役員変更の登記にいくらかかるのか。まず、安心してください。この手続きの費用は、相場が分からず言い値になるようなものではありません。中心になる登録免許税は法律で金額が決まっていますし、司法書士の報酬についても全国規模の調査結果が公開されています。この記事では、役員変更登記の費用を登録免許税、実費、専門家への報酬の3つに分けて、それぞれいくらなのか、どこで金額が変わるのかを順に整理します。読み終えるころには、自分の会社の場合いくら用意すればよいかが具体的に見えているはずです。

費用は3つの層に分かれている

最初に全体像を押さえておきます。役員変更登記でかかるお金は、性質の違う3種類の合計です。

1層目が登録免許税です。登記を申請するときに国に納める税金で、金額は法律で決まっています。自分で申請しても司法書士に頼んでも、必ずかかります。

2層目が実費です。就任する人の印鑑証明書や住民票の取得費、法務局へ行く交通費、郵送で出すなら郵便代、登記が終わった後に取る登記事項証明書の手数料などです。金額は小さいものの、通数が増えると無視できなくなります。

3層目が専門家への報酬です。司法書士に依頼した場合にかかる分で、ここだけが自由に決められます。自分で申請すればゼロです。

多くの人が知りたいのは3層目の相場でしょう。ただ、1層目と2層目を先に押さえておかないと、見積もりを見たときに何が報酬で何が実費なのか区別できません。順に見ていきます。

登録免許税は、資本金1億円が分かれ目

役員変更登記の登録免許税は、登録免許税法の別表第一に定められています。取締役、代表取締役、監査役、会計参与、会計監査人、執行役、あるいは持分会社の社員などに関する事項の変更の登記は、申請件数1件につき3万円。ただし資本金の額が1億円以下の会社、および一般社団法人等については1万円です。

中小企業や個人が設立した会社のほとんどは資本金1億円以下なので、実際に納めるのは1万円です。資本金1円で作った会社も、資本金9,000万円の会社も、同じ1万円になります。ここは規模に応じて細かく変わったりしません。

法務局が公開している申請書の記載例にも、登録免許税の欄に「金3万円(又は1万円)」と書かれ、その下に「資本金の額が1億円を超える場合は3万円、1億円以下の場合は1万円になります」という注記が付いています。納め方は収入印紙か領収証書です。

覚えておきたいのが「申請件数1件につき」という数え方です。取締役が1人辞任して1人就任し、同じ総会で監査役も入れ替わったとしても、1枚の申請書にまとめれば1万円で済みます。日をまたいで別々に申請すれば、そのたびに1万円ずつかかります。法務局の記載例にも、役員の辞任または死亡と就任の登記は合わせて1件として申請できると明記されています。役員の出入りが近い時期に重なりそうなら、まとめられないかを先に考えてください。

ただし、同じ申請書に書いても税金の枠が違う登記は別計算になります。取締役会を廃止する、監査役設置会社の定めを廃止するといった機関設計の変更は役員の変更とは別の区分で、それぞれ3万円です。本店移転を同時に行う場合も3万円が別途かかります。役員変更だけのつもりが、定款変更を伴う内容を含んでいて合計が膨らむことがあるので、申請書を作る段階で合計額を確かめてから収入印紙を買ってください。

書類を集めるのにかかる実費

2層目の実費は、場面によってゼロに近くなることもあります。

新しく役員になる人がいる場合、その人の印鑑証明書か本人確認証明書が必要です。市区町村が発行する印鑑登録証明書や住民票の手数料は自治体ごとに決められているので、住んでいる市区町村のページで確認してください。マイナンバーカードを持っていればコンビニで取れる自治体が多く、窓口より安く設定されている場合もあります。

一方、重任だけの場合は市区町村へ行く必要がありません。再任の人には本人確認証明書も印鑑証明書も不要だからです。氏名の変更や代表取締役の住所移転も同じで、法務局の記載例には「申請書に住民票を添付する必要はありません」と明記されています。つまりこの3つの場面では、実費は郵送費か交通費だけになります。

登記が終わった後の費用も見込んでおきます。新しい内容の登記事項証明書は、法務局の窓口で書面請求すると1通600円です。金額は登記手数料令で決まっています。パソコンから請求して窓口で受け取るなら490円、郵送してもらうなら520円と安くなります。

会社の印鑑証明書も同様に、窓口で1件500円、オンラインで請求すれば420円、送付を頼む場合は450円です。代表取締役が交代した後は、銀行や許認可の窓口でこれらを何通も求められます。5通、10通と必要になる場面では、オンライン請求のほうが確実に安く済みます。

司法書士の報酬は、全国調査で平均33,009円

3層目の報酬について、根拠のある数字があります。日本司法書士会連合会が2024年3月に実施した報酬に関するアンケートです。全国の司法書士に、具体的な業務ごとの報酬額を尋ねたもので、結果がPDFで公開されています。

調査の設定はこうです。取締役3名、代表取締役1名、監査役1名の取締役会設置会社である株式会社において、定時株主総会の終結により役員全員が任期満了して改選した場合の変更登記手続の代理業務を受任し、株主総会議事録や取締役会議事録などの登記に必要な書類をすべて作成して、登記申請の代理をした場合。つまり、丸ごと任せたケースです。

この条件での結果が、有効回答数1,009件、平均33,009円でした。

取締役3名、代表取締役1名、監査役1名で取締役会がある株式会社の取締役及び監査役の任期(最長10年;通常は取締役2年、監査役4年)が満了し改選(再任を含む。)した場合の変更登記を司法書士に依頼した場合の報酬額です。会社の形態により必要となる書面が異なりますので、作成する書面の種類と内容により報酬が異なります。 出典: shiho-shoshi.or.jp

平均だけでは実感がわかないので、分布も見ておきます。公開されている度数分布では、3万円台が398件でもっとも多く、次いで2万円台が302件、4万円台が138件です。この3つを足すと838件で、全体の83%を占めます。つまり、この設定であれば2万円台から4万円台に収まるのが標準だということです。

裾野も見ておくと、1万円台が74件、5万円台が67件、6万円台が17件、7万円台が5件、8万円台が4件。1万円未満は1件だけで、10万円を超える回答も数件しかありません。極端に高い見積もりが出てきたら、内容が標準と違うのかどうかを確認する材料になります。

大事な前提が1つあります。連合会は、司法書士が業務を行ったときに受ける報酬については各司法書士が自由に定めることになっている、と明記しています。会則では、報酬の額や算定方法、諸費用を明示して依頼者との合意によって決めることとされています。つまりこの数字は相場の目安であって、決められた料金表ではありません。

見積もりを読むときに確かめる3点

報酬の数字が分かっても、見積もりを見たときに比べられなければ意味がありません。確かめるべきは3点です。

1点目は、登録免許税が報酬に含まれているかどうかです。連合会も、司法書士報酬のほかに登録免許税が別途必要であると注記しています。総額いくらと書かれている見積もりの場合、そこに1万円の税金が入っているのかどうかで、実際の報酬額が変わります。

2点目は、作成してもらう書類の範囲です。連合会の調査は「登記に必要な書類をすべて作成して申請の代理をした場合」という条件で聞いています。議事録は自社で作るから申請だけ、という頼み方なら当然安くなるはずですし、逆に定款の確認や株主リストの作成まで含めれば重くなります。どこからどこまでを頼むのかを揃えないと、金額は比べられません。

3点目は、登記の件数です。役員変更と同時に本店移転や機関設計の変更をするなら、登記としては複数件になります。報酬も登録免許税もそれぞれ発生するので、合計は単純に積み上がります。見積もりの内訳が登記ごとに分かれているかを確認してください。

自分で申請した場合との差額

自分で申請すれば、3層目の報酬はゼロになります。数字だけ並べれば、およそ3万円前後が浮く計算です。

ただし、その3万円は時間で払うことになります。定款を読んで任期と代表取締役の選定方法を確認し、法務局の様式から自分の場面に合うものを選び、議事録と株主リストと就任承諾書を作り、申請書に転記し、収入印紙を貼って綴じる。初めてなら、記載例を読む時間を含めて半日から1日はかかると見ておくべきです。

もうひとつ、失敗したときの損失があります。書類に不備があれば法務局から補正の連絡が来て、直して出し直す日数が加わります。役員変更の登記には変更が生じた日から2週間という期限があり、これを過ぎると会社法976条により代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性が残ります。過料は登記が遅れた事実そのものに対するものなので、後から登記しても消えません。

線引きの目安はこうです。重任だけ、あるいは1人の単純な入れ替わりで、定款の内容もはっきりしている場合は、自分でやって浮く3万円が素直に利益になります。一方、機関設計を同時に変える、種類株式がある、株主が多い、解任でもめているといった事情があるなら、3万円を払って確実に1回で通したほうが安く付きます。

中間の選択肢として、書類作成を支援するオンラインサービスを使う方法もあります。数千円から1万円程度の利用料で必要書類を作れるもので、申請そのものは自分で行います。司法書士に頼むより安く、ゼロから自分で作るより速い、という位置づけです。

会社の形によって、費用はどう変わるか

株式会社以外の場合も見ておきます。

合同会社の役員にあたるのは業務執行社員と代表社員です。登録免許税は株式会社と同じ枠で、役員の変更として括られる区分に「社員」も含まれているため、資本金1億円以下なら1万円です。

費用面で合同会社が有利なのは、そもそも登記が発生する頻度が低いことです。業務執行社員には任期という考え方がないため、出入りがなければ何年経っても登記は要りません。法務局が用意している様式も「業務執行社員の退社及び加入」という名前で、株式会社のような重任の様式はありません。

これに対し株式会社は、誰も辞めていなくても任期満了ごとに重任の登記が必要です。取締役の任期は会社法332条1項で原則2年、非公開会社なら定款で最長10年まで伸ばせます。任期を2年にしている会社は、2年ごとに1万円の登録免許税と手間が発生します。10年にしておけば、10年に1度で済みます。

長い目で見れば、これは無視できない差です。任期2年の会社が20年で10回登記するのに対し、10年にしておけば2回です。登録免許税だけで8万円、司法書士に毎回頼むなら差はもっと開きます。会社を作る段階、あるいは定款を変更する機会があるときに、任期を何年にしておくかは費用の問題として考える価値があります。

ただし任期を長くすることにはもう1つの面もあります。次の登記が10年後だと、そのころには手続きの存在ごと忘れているという問題です。株式会社は最後の登記から12年が経つと休眠会社として整理の対象になり、官報公告から2か月以内に届出も登記もしないと、解散したものとみなされます。任期10年の設定は、この12年という期間との距離が近い。カレンダーに登録しておくなどの備えが要ります。

一般社団法人の場合は、休眠法人として整理されるまでの期間が株式会社の12年ではなく5年と短く設定されています。理事に任期がある以上、5年も登記が発生しない状態は本来起こりにくいのですが、活動が細っている法人ほど登記が後回しになりがちです。

場面ごとに、合計額を出してみる

数字が散らばったので、よくある4つの場面で合計を組み立て直します。いずれも資本金1億円以下の株式会社を前提にしています。

役員全員が重任するだけで、自分で申請する場合。登録免許税1万円に、郵送費と完了後の登記事項証明書の手数料が加わる程度です。重任には印鑑証明書も本人確認証明書も要らないので、市区町村での出費はゼロです。合計は1万円台で収まります。

取締役1人が辞任して1人が就任し、自分で申請する場合。登録免許税1万円に、就任する人の印鑑証明書または本人確認証明書の取得費、辞任する代表取締役が実印を押したならその印鑑証明書の取得費が加わります。市区町村の手数料は自治体ごとに決まっているので、合計はやはり1万円台の後半あたりになります。

同じ内容を司法書士に全部頼む場合。登録免許税1万円に、報酬がおおむね2万円台から4万円台。連合会の調査の平均に近い金額を当てはめるなら、合計は4万円台が目安です。実費が別立てになっている見積もりなら、そこに証明書の取得費が乗ります。

代表取締役が引っ越しただけの場合。登録免許税1万円だけです。添付書類は代理人に頼む場合の委任状のみで、住民票すら要りません。書類が1枚なのに税金が1万円というのは納得しにくいところですが、法律上は役員に関する事項の変更として同じ扱いになります。

こうして並べると、費用の大部分は登録免許税か報酬のどちらかで、実費は誤差の範囲だと分かります。節約を考えるなら、証明書を1通減らすことより、申請を1件にまとめることのほうがはるかに効きます。

完了までの日数も、見えないコストになる

見積もりには出てきませんが、実務で効いてくるのが完了までの待ち時間です。そしてこれは、どこの法務局に出すかで大きく変わります。

各法務局は登記完了予定日を自分のサイトに掲示しています。2026年9月18日時点の表を見ると、東京法務局の本局では9月18日に申請した商業・法人登記の完了予定日が10月27日でした。39日後です。同じ日の大阪法務局の本局法人登記部門では、9月18日申請分の完了予定日が10月2日、14日後になっています。

同じ手続きで待ち時間が2.8倍違う計算です。東京の本局は23区すべての商業登記を引き受けているため、件数が集中しているのだと考えられます。

この差が費用になるのは、登記完了を待たないと進められない手続きがある場合です。銀行口座の代表者変更、許認可の変更届、取引先への登記事項証明書の提出。東京の会社は1か月以上先を見て段取りを組む必要があります。新しい代表者名義で契約を結ぶ予定があるなら、その日程にも影響します。

申請前に管轄の法務局のサイトで予定日を確認しておくと、後工程が組みやすくなります。東京法務局は登記完了予定日のページで、申請日ごとの予定を掲示しています。不備があって補正になれば、ここからさらに延びます。

放置すると、いちばん高くつく

費用を抑えたいという動機が、登記の先送りにつながるのはよくあることです。しかしこれは、いちばん高くつく選択です。

会社法976条1号は、この法律による登記を怠ったときは100万円以下の過料に処する、と定めています。支払う相手は会社ではなく代表者個人です。裁判所から通知が届き、金額は遅れた期間や事情によって決まります。数万円で済むこともあれば、長期の放置ではもっと重くなります。役員変更の登録免許税が1万円であることを思えば、節約しようとした金額より過料のほうが大きくなる可能性は十分にあります。

さらに重いのがみなし解散です。会社法472条は、株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過した会社を休眠会社と呼び、法務大臣の官報公告から2か月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしないときは、その期間の満了時に解散したものとみなすと定めています。直近で公表されている令和7年度の整理作業では、2025年10月10日に官報公告が行われ、届出も登記もしなかった会社は12月11日付けで解散したものとみなされ、登記官が職権で解散の登記をしています。

解散したものとみなされた会社を元に戻すには、株主総会で継続の決議をして継続の登記をする必要があります。継続の登記には別の登録免許税がかかり、その間に必要な役員変更の登記も入れなければなりません。放置していた分の費用が、まとめて跳ね返ってくる構図です。

そして法務省は、届出や登記申請を行った場合であっても、本来申請すべき時期に登記を怠っていた事実は解消されず、裁判所から100万円以下の過料に処せられると明記しています。先送りしても金額が減ることはありません。

費用を抑えるために、実際に効く4つのこと

ここまでの内容を、支出を減らす観点で並べ直します。

1つめは、1件にまとめることです。辞任と就任、取締役と監査役の入れ替わりが近い時期に起きるなら、1枚の申請書にまとめれば登録免許税は1件分です。数日のずれなら、それぞれの変更から2週間以内に収まる範囲で待つ判断もできます。ただし早いほうの期限を過ぎてはいけないので、待てる日数には限りがあります。

2つめは、証明書をオンラインで請求することです。登記事項証明書は窓口の600円に対してオンラインなら490円、会社の印鑑証明書は500円に対して420円です。1通あたりの差は小さくても、代表者交代の後に10通取るなら差が出ます。

3つめは、任期の設定を見直すことです。非公開会社なら定款で最長10年まで伸ばせます。ただし忘れるリスクと引き換えなので、伸ばすなら管理の仕組みとセットにしてください。

4つめは、頼む範囲を切り分けることです。全部任せると連合会の調査でいう標準の構成になりますが、判断の要る部分だけ相談して書類作成は自分でやる、という頼み方もあります。報酬は合意で決まるものなので、範囲を決めて相談すれば金額も変わります。

なお、費用を抑えるために登記を先送りするのだけは避けてください。登録免許税が節約できるわけではなく、期限を過ぎた事実が積み上がるだけです。

司法書士に払う金額と、振り込む金額は同じではない

司法書士へ報酬を支払うときは、会社の側で所得税と復興特別所得税を差し引いて、代わりに国へ納めます。所得税法204条が定める源泉徴収の対象に、司法書士の業務に関する報酬が入っているためです。請求書の金額をそのまま振り込んでしまうと、納めるべき税金を会社が立て替えた形になり、後から精算する羽目になります。

差し引く額の計算方法は決まっています。

源泉徴収すべき所得税および復興特別所得税の額は、同一人に対し、1回に支払われる金額から10,000円を差し引いた残額に10.21パーセントの税率を乗じて算出します。 出典: nta.go.jp

先ほどの調査の平均額を当てはめてみます。報酬が33,009円なら、まず1万円を引いて23,009円。これに10.21%をかけると2,349円です(1円未満は切り捨てます)。会社が実際に振り込むのは30,660円で、残りの2,349円は会社が税務署へ納めます。請求書に書かれた金額と、口座から出ていく金額が違うのはこのためです。

ここで間違えやすいのが、登録免許税の扱いです。司法書士へまとめて渡すお金のうち、登記のために国へ納める登録免許税や証明書の手数料に充てられることが明らかな分は、源泉徴収の対象から外れます。国税庁も、支払者が国等に対し登記、申請等をするため本来納付すべきものとされる登録免許税、支払手数料等に充てるものとして支払われたことが明らかなものについては源泉徴収をする必要がない、と書いています。つまり請求書が報酬と実費に分かれていれば、報酬の欄だけを計算の対象にします。総額でしか書かれていないなら、内訳を出してもらってください。

消費税の扱いも合わせて確認しておきます。報酬の額と消費税の額が請求書で明確に区分されているなら、報酬の額だけを源泉徴収の対象にしてかまいません。区分されていなければ、消費税を含めた金額が対象になります。同じ支払いでも、請求書の書き方ひとつで差し引く額が変わるということです。

差し引いた税金は、支払った月の翌月10日までに納めます。給与を受ける人が常時10人未満で納期の特例の承認を受けている会社なら、1月から6月までの分は7月10日、7月から12月までの分は翌年1月20日がまとめて納める期限になります。役員変更の登記は年に何度もあるものではないので、この納付をうっかり飛ばしやすいところです。

払ったお金を帳簿にどう書くか

支払いが3つの層に分かれている以上、帳簿に立てる科目も分かれます。

登録免許税の1万円は租税公課です。国に納める税金なので、消費税の計算では対象外の取引として扱います。収入印紙を買って貼る形で納めた場合も同じで、印紙を買った時点ではなく申請に使った時点の費用として処理するのが素直です。

登記事項証明書や印鑑証明書の手数料は支払手数料に入れます。こちらは行政手数料なので消費税は非課税です。租税公課でまとめている会社もありますが、どちらで通すかを決めて毎回同じ科目にしておくほうが、後で見返したときに比べやすくなります。

司法書士への報酬も支払手数料です。ただしこちらは消費税の課税取引にあたり、仕入税額控除の対象になります。登録番号の入った請求書を受け取って保存しておいてください。

3つをまとめて仕訳の形にしてみます。報酬33,009円(本体30,008円と消費税3,001円が請求書で区分されているとします)、登録免許税10,000円、証明書の手数料1,200円を、司法書士へ一括で振り込んだ場合です。

借方は、支払手数料30,008円、仮払消費税3,001円、租税公課10,000円、支払手数料1,200円の合計44,209円。貸方は、預り金2,042円と普通預金42,167円です。

預り金の2,042円が源泉徴収した分にあたります。報酬の額と消費税の額が区分されているので、本体の30,008円から1万円を引いた20,008円に10.21%をかけ、1円未満を切り捨てて算出しました。

この預り金は、納付を済ませた時点で消えます。納めるまで貸借対照表に残り続けるので、決算のときに古い残高が残っていたら、納め忘れを疑う手がかりになります。金額の小さい支払いほど後回しになりやすいので、振り込みと同じ日に納付の予定も入れておくのが確実です。

なお、ここで挙げた科目の立て方は一般的な例です。会社の事情や継続してきた処理の仕方によって適切な扱いは変わるので、判断に迷う部分は税務署か顧問の税理士に確認してください。

勘違いしやすい5つ

費用の話で行き違いが起きやすい点を、最後に並べておきます。

1つめ。登録免許税は役員1人あたりではありません。申請1件あたりです。3人をまとめて入れ替えても、1枚の申請書に収まるなら1万円です。人数分を用意しようとして多く印紙を買ってしまう人がいます。

2つめ。資本金が1億円以下かどうかは、登記されている資本金の額だけで判断します。総資産でも売上高でも従業員数でもありません。増資をした後は登記されている額が変わっているので、そこだけ確認してください。

3つめ。重任も登記が必要です。同じ人が続けて就任する場合でも、任期が満了していれば登記の対象になります。誰も入れ替わっていないから手続きは要らない、という理解は間違いで、これが登記を忘れる原因としてもっとも多い形です。

4つめ。2週間の起算点は、株主総会の日や辞任した日であって、書類が揃った日ではありません。印鑑証明書を取りに行くのに手間取っても、期限のほうは動きません。先に日付を確定させてから逆算して動いてください。

5つめ。司法書士の報酬に決まった料金表はありません。先に見た調査は実際に受け取った額を集めて平均したもので、そこから外れた金額が直ちに不当だという意味にはなりません。仕事の範囲と件数を揃えたうえで比べるのが正しい読み方です。

書類仕事の外注費は、登記費用と同じ物差しで測れる

運営者として20年この市場を見てきた立場から言えば、法人化した個人事業主が見落としがちなのは、自分の時間の値段です。司法書士に3万円払うか自分でやるかを比べるとき、多くの人は自分の労働時間をゼロ円で計算します。しかし半日を使うなら、その半日で本業がどれだけ動いたかが機会費用として発生しています。

そう考えると、選択肢は「自分でやる」か「司法書士に全部頼む」かの二択ではなくなります。判断が要る部分は自分で決めて、手を動かす部分だけを外に出す。議事録の体裁を整える、株主リストの表を作る、申請書に転記する。こうした作業は書式を知っている人なら短時間で片づきます。

在宅で働く人を探せるマッチングの場では、この種の書類仕事の依頼が日常的に動いています。近い職種の報酬相場は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。受け手側の視点でまとまっていますが、頼む側が予算を組むときの目安としても使えます。書式を正確に扱える人かどうかを見る物差しとしては、ビジネス文書検定のような資格ガイドが参考になります。

ここで効いてくるのが仲介の手数料です。何割も抜かれる場で頼むより、手数料0%で直接やり取りできる場のほうが、同じ予算でより多く頼めます。受け手の側も手取りが厚くなるので、次も引き受けてもらいやすい。長く続いている依頼関係を見ていると、単価を削った側ではなく、相手が動きやすい形を整えた側のほうが結局は得をしています。どの作業を外に出せるかを切り分ける観点では、業務の分解を扱ったAIコンサル・業務活用支援のお仕事も材料になります。

最後に、費用の話で唯一の一次情報になるのは公的な資料です。登録免許税の額は登録免許税法、証明書の手数料は登記手数料令、申請書の様式と記載例は商業・法人登記の申請書様式のページ、司法書士の報酬は日本司法書士会連合会の調査結果。この4つを押さえておけば、見積もりを受け取ったときに何が妥当で何が上乗せなのかを自分で判断できます。

よくある質問

Q. 役員変更登記の登録免許税はいくらですか?

申請1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社と一般社団法人等は1万円です。登録免許税法の別表第一に定められており、中小企業のほとんどは1万円で済みます。辞任と就任をまとめて1枚の申請書にすれば1件分で足りるため、時期が近い変更はまとめると節約になります。

Q. 司法書士に頼むと報酬はいくらくらいですか?

日本司法書士会連合会が2024年3月に実施した調査では、取締役3名・代表取締役1名・監査役1名の取締役会設置会社で役員全員が改選した場合、有効回答1,009件の平均が33,009円でした。回答の約83パーセントが2万円台から4万円台に集まっています。報酬は各司法書士が自由に定めるため、目安として使ってください。

Q. 自分で申請すると、費用はどれだけ安くなりますか?

司法書士報酬がまるごと不要になるので、およそ3万円前後の差になります。残るのは登録免許税1万円と、証明書の取得費、郵送費や交通費だけです。ただし書類作成に半日から1日かかり、不備があれば補正で日数が延びるため、時間の価値と合わせて判断してください。

Q. 役員変更と本店移転を一緒に申請すれば安くなりますか?

登録免許税は安くなりません。役員の変更と本店移転は登録免許税の区分が違うため、それぞれに課税されます。本店移転は1か所につき3万円です。一方、役員の辞任と就任のように同じ区分に入るものは1枚の申請書にまとめれば1件分で済みます。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月28日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方