商号変更の登記申請書の書き方と記載例

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
商号変更の登記申請書の書き方と記載例

この記事のポイント

  • 商号変更登記申請書の書き方を
  • 法務局が公開している記載例に沿って欄ごとに解説します
  • 商号欄に書くのは旧社名か新社名か

商号変更登記申請書は、A4で1枚に収まる書類です。項目数も10個ほどしかありません。それでも書き損じが起きるのは、どの欄に旧社名を書いてどの欄に新社名を書くのか、という一点に集中しています。ここでは法務局が公開している記載例の内容に沿って、欄ごとに何を書くのかを順番に見ていきます。様式そのものも法務局が無料で配布しているので、自分で作る必要はありません。

申請書の用紙は法務局が配っている

まず前提として、申請書を白紙から作る必要はありません。法務局のサイトには商業・法人登記の申請書様式というページがあり、株式会社の商号変更については「株式会社変更登記申請書(商号の変更)」という様式が置かれています。ページ内では1-11という番号が振られています。

このページで手に入るのは2種類です。

種類 中身 使い方
記載例 書き方の注意が欄外に付いた見本 先にこちらを読む
申請書様式 空欄の用紙(Word形式とPDF形式) Wordを開いて入力する

法務局自身が「記載例を最初にご覧ください」と案内しているとおり、いきなり空の様式を埋めようとせず、記載例を先に開いてください。欄外に注意書きが付いているので、迷う箇所はそこで解決します。

Word形式があるので、手書きにこだわる必要もありません。画面上で入力して印刷すれば、文字の読み違いによる補正を避けられます。

申請書に書く項目は10個

記載例に沿って並べると、書く項目は次のようになります。

  1. 会社法人等番号
  2. フリガナ(旧商号と新商号)
  3. 商号(旧商号と、括弧書きで新商号)
  4. 本店
  5. 登記の事由
  6. 登記すべき事項
  7. 登録免許税
  8. 添付書類
  9. 申請年月日と申請人(本店、商号、代表取締役の住所と氏名)
  10. 連絡先の電話番号と提出先の法務局名

これだけです。順番に中身を見ていきます。

会社法人等番号とフリガナ

会社法人等番号は12桁の数字で、登記事項証明書の上のほうに載っています。記載例には「分かる場合に記載してください」と注記があるので、どうしても見つからなければ空欄でも申請はできます。ただ、書いてあるほうが登記所側の特定が早くなります。法人番号公表サイトで調べられる13桁の法人番号とは桁数が違うので、混同しないでください。会社法人等番号の頭に1桁足したものが法人番号になります。

フリガナは、旧商号と新商号の両方を書きます。書き方には決まりがあり、次の3点を守ります。

・株式会社という種類を表す部分は書かない ・カタカナで、左に詰めて書く ・間に空白があっても、空白を削除した文字で登録される

たとえば新社名が「ABC商事株式会社」なら、フリガナは「エービーシーショウジ」のようになり、株式会社の部分は入れません。

このフリガナには、知っておくべき性質が1つあります。国税庁の法人番号公表サイトを通じて外部に公表される一方で、登記事項証明書には表示されません。つまり、あとから登記簿を見ても自分がどう登録したかを確認できないのに、外からは見えている情報です。申請書の控えを取って、社内でどう登録したかを残しておいてください。

商号の欄には旧社名を書く。ここが最大の落とし穴

申請書でいちばん間違えられるのがこの欄です。

申請書上部の「商号」の欄に書くのは、変更前の社名です。新しい社名ではありません。この欄は「どの会社についての申請か」を特定するための欄なので、今まさに登記簿に載っている名前を書きます。記載例にも「旧商号を記載してください」という注記が付いています。

そのうえで、新商号を括弧書きで添えます。記載例の形はこうです。

フリガナ  ○○コウギョウ
1.商  号  ○○興行株式会社

フリガナ  ○○ショウジ
(新商号   ○○商事株式会社)

旧社名のフリガナと旧社名、そのあとに新社名のフリガナと新社名を括弧付きで書く、という並びです。

一方で、申請書の末尾にある申請人の欄に書く商号は、変更後の社名です。同じ申請書の中で、上部は旧社名、下部は新社名という使い分けになります。ここを揃えて書いてしまうと補正の対象になるので、記載例と見比べながら確認してください。

本店の欄は、登記されているとおりの表記で書きます。住居表示と地番が違う地域では、普段使っている住所と登記簿上の住所がずれていることがあるので、登記事項証明書の表記をそのまま写すのが確実です。

登記の事由と登記すべき事項

登記の事由の欄には「商号の変更」と書きます。これだけです。

登記すべき事項の欄には、登記簿に実際に記録される内容を書きます。記載例の形は次のとおりです。

「商号」○○商事株式会社
「原因年月日」令和○年○月○日変更

ここに書く商号は新社名です。記載例にも「商号は、新商号を記載してください」と明記されています。上部の商号欄が旧社名、この欄が新社名、という対応を頭に入れておいてください。

原因年月日には、定款の変更の効力が生じた日を書きます。株主総会で決議してその場で効力が生じるなら、決議した日です。議案の中で「令和○年○月○日から効力を生じる」と別の日を定めた場合は、その日になります。議事録に書いた日付と、この欄の日付が一致していなければなりません。

日付について1つ注意があります。効力が生じる前に申請することはできません。来月から新社名にすると決めていても、その日が来るまで申請は受け付けられません。名刺や看板の準備を先に進めるのはかまいませんが、登記だけは順番を守ってください。

カギ括弧の記号も、記載例どおりに使います。登記すべき事項は登記所側でそのまま取り込む内容なので、独自の書き方にせず見本の形を写すのが安全です。

登録免許税の欄と、収入印紙の貼り方

登録免許税の欄には「金3万円」と書きます。商号の変更は登録免許税法が定める「登記事項の変更」にあたり、1件につき3万円です。資本金の額によって金額が変わることはありません。

納め方は収入印紙か領収証書です。収入印紙は法務局のほか、郵便局でも買えます。3万円分を1枚で買う必要はなく、組み合わせてかまいません。

貼る場所は申請書そのものではなく、収入印紙貼付台紙という別の紙です。これも法務局の様式に含まれています。記載例に付いている注意は2つです。

・割印をしないで貼ること ・消印作業の都合上、右側に寄せて貼ること

割印をしてしまうとその印紙は使えなくなります。法務局のサイトでも「印紙を汚したり、印紙に割印をした場合、その印紙は使用できなくなるので、ご注意ください」と案内されています。貼るだけにとどめてください。

なお、事業目的の変更も同時にするなら、目的の変更も同じ「登記事項の変更」の区分に入ります。1通の申請書にまとめて出せば登録免許税は3万円のままです。別々に申請すると3万円が2回で6万円になるので、社名と事業目的の両方を見直すなら同じ申請にまとめてください。

添付書類は3つ。書く順番も記載例どおりに

添付書類の欄には、何を何通付けるかを書きます。記載例が挙げているのは次の3つです。

書類 通数 必要な場面
株主総会議事録 1通 常に必要
株主の氏名又は名称、住所及び議決権数等を証する書面(株主リスト) 1通 常に必要
委任状 1通 代理人に頼む場合のみ

株主リストは長い名前ですが、申請書にはこの正式名称で書きます。括弧書きで「株主リスト」と添えるのが記載例の形です。

代表者本人が申請するなら委任状は不要なので、その行は書きません。

添付する株主総会議事録の中身

議事録は会社が自分で作ります。法務局の記載例には見本が付いていて、次の項目が並んでいます。

・開催した日時と場所 ・株主の総数 ・発行済株式の総数(自己株式がある場合はその数も) ・議決権を行使することができる株主の数と、その議決権の数 ・出席した株主の数(委任状による者を含む)と、その議決権の数 ・出席した取締役と監査役の氏名 ・議長が誰か ・議案と決議の内容 ・閉会した時刻

議案の部分は、定款の何条をどう変えるかを書きます。記載例ではこの形です。

議案 定款変更の件
1 定款第1条を次のとおり変更すること。
 (商号)
第1条 当会社は、商号を○○商事株式会社と称する。

変更前の条文を併記する必要はありません。変更後の条文をそのまま書けば足ります。

最後に、議長と出席した取締役、監査役が記名します。定款変更は特別決議にあたるので、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。議事録に書いた出席議決権数と賛成の状況が、その要件を満たしているかを確認してください。

議事録の見本には、もう1つ重要な注意が付いています。同じ本店の住所に同じ商号の会社がすでにある場合、商号変更の登記はできません。だから定款を変更する前に、本店を管轄する登記所でそのような会社がないか必ず確認するように、という内容です。調査は無料です。株主総会を開いたあとで衝突が判明すると決議をやり直すことになるので、順番を守ってください。

株主リストは誰まで書けばいいのか

株主リストは、誰が何株持っていて議決権が何個あるかを一覧にし、会社の代表者名義で証明する書類です。記載例に付いている注意書きから、実務で迷う点を整理します。

書く株主の範囲には上限があります。議決権の割合が高い順に並べて、次のどちらか少ない人数までで足ります。

・議決権の割合の合計が3分の2に達するまで ・10位に達するまで

株主が100人いても、上位の数人で議決権の3分の2に達するならそこまでで終わりです。全員を書く必要はありません。

同じ順位の株主が複数いて、10位までに11人以上が並んでしまう場合は、その株主全員を任意の形式の別紙に書きます。記載例では、同順位1位が20人いる場合は20人全員を書き、次の人は21位なのでそこで10位に達したことになる、と説明されています。

議決権のない株式は書きません。自己株式がその代表例です。表の下に書く総議決権数にも、自己株式は加えません。一方で、議決権を持っているなら、株主総会に出席しなかった株主や議決権を行使しなかった株主も書きます。出席者名簿ではないという点に注意してください。

表に書く項目は、氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合です。証明書の冒頭には、対象となる株主総会の日付と、全議案を対象とするのかどの議案を対象とするのかを書きます。

作成者は登記申請人、つまり会社の代表者名義です。株主本人が作るものではありません。

委任状、押印、契印のルール

司法書士などに申請を頼む場合は委任状を付けます。記載例の委任状には、委任する事項として次の2つが挙がっています。

1 当会社の商号の変更の登記の申請をする一切の件
1 原本還付の請求及び受領の件

原本還付というのは、添付した議事録などの原本を返してもらう手続きです。代理人に返却まで受け取ってもらうなら、この行を入れておきます。

押印については、誰が申請するかでルールが変わります。

申請する人 押印する書類 使う印鑑
代表者本人 申請書 登記所に届け出た印鑑
代理人 委任状 委任状には届出印、申請書には代理人の印(認印可)

代理人が申請する場合、申請書には代表取締役の押印は不要です。ここを両方押してしまう人がいますが、記載例には「この場合、代表取締役の押印は、必要ありません」と明記されています。

契印は、申請書が複数ページになるときにつづり目へ押す印です。収入印紙貼付台紙も申請書の一部として数えるので、台紙を付ける時点でほぼ必ず契印が必要になります。契印に使う印は、申請書に押したものと同じでなければなりません。代表者が申請するなら届出印、代理人が申請するなら代理人の印です。

原本を返してほしいときと、書き損じたとき

添付書類は原本を出すのが原則です。ただし議事録のように会社で保管しておきたい書類は、原本還付を請求できます。

方法は決まっています。原本をコピーし、そのコピーに申請書へ押印した人が「原本に相違ありません。」と書いて記名します。コピーが複数枚になるときは綴じます。これを原本と一緒に提出すると、原本が返ってきます。コピーだけを出しても返ってこないので、必ず両方を出してください。

書き損じた場合の直し方にも決まりがあります。

申請書・添付書面に記載した文字・数字を訂正する方法としては、例えば、訂正したい文字・数字を二重線で削除し、その近くに正しい文字・数字を記載して、押印するという方法があります。 なお、申請書を訂正する場合には申請書に押印した印鑑を、添付書面を訂正する場合には添付書面に押印した印鑑を押印してください。 修正液等を用いて修正したり、修正部分が見えないように塗りつぶしたりしないでください。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

修正液は使えません。二重線で消して近くに正しい内容を書き、押印します。押印する印は、申請書を直すなら申請書に押した印、添付書類を直すなら添付書類に押した印です。押した近くに「何字削除何字加入」と書いてもかまいません。

Word形式の様式を使って印刷しているなら、書き損じたときは訂正せずに印刷し直すほうが早い場面も多くあります。訂正のルールは、手書きの部分や、すでに押印を済ませてしまった書類のためのものだと考えてください。

事業目的も一緒に変える場合の書き方

社名と事業内容を同時に見直す会社は多いので、この場合の書き方にも触れておきます。

登記の事由の欄には、商号の変更と目的の変更を並べて書きます。登記すべき事項には、商号のブロックと目的のブロックを両方書きます。目的の記載例はこの形です。

「目的」
1 ○○の製造販売
2 ○○の売買
3 前各号に附帯する一切の事業
「原因年月日」令和○年○月○日変更

ここで絶対に外せない注意が1つあります。法務局の記載例は「目的は変更部分だけでなく、変更後の全ての目的を記録してください」と書いています。1つ追加するだけの場合でも、追加する項目だけを書くのではなく、変更後に残るすべての目的を1番から並べ直して書く、という意味です。追加分だけを書いて出すと、それ以外の目的が消えた内容で登記されかねないので、ここは記載例の指示どおりにしてください。

添付書類は、商号だけを変える場合と同じ3つです。1つの株主総会で商号と目的の両方を決議していれば、議事録も株主リストも1通ずつで足ります。

登録免許税は、まとめて申請すれば3万円のままです。商号の変更と目的の変更は登録免許税法上の同じ区分に入るためで、別々の日に出すと3万円が2回発生します。手続きの手間はほとんど変わらないので、両方を変える予定があるなら同じ申請書にまとめてください。

有限会社のままの会社は、この申請書を使わない

今も商号が「○○有限会社」で登記されている会社が、社名から有限会社の文字を外して株式会社にしたい場合、ここまで説明してきた申請書は使いません。

この場合は、法律上は株式会社へ移行したことになるため、商号変更による解散の登記と、株式会社の設立の登記を同時に申請する形になります。法務局の記載例も冒頭で「商号変更による解散の登記と設立の登記の申請は、同時に行う必要があります」と明記しています。

書く内容も大きく変わります。登記すべき事項には、商号、本店、公告をする方法、会社成立の年月日、目的、発行可能株式総数、発行済株式の総数、資本金の額、株式の譲渡制限に関する規定、役員に関する事項までを並べます。新しく会社を作るときとほぼ同じ量です。

添付書類も、定款、株主総会議事録、株主リストが必要になり、同時に役員を新しく選んだ場合は就任承諾書が加わります。定款については、記載例に「公証人の認証は不要です」という注記があります。会社を新規に設立するときは公証役場での認証が必要ですが、この移行では不要だという意味で、費用面では助かる部分です。

登録免許税も別計算です。設立分は資本金の額の1000分の1.5で、3万円に満たない場合は3万円になります。これに解散分の3万円が加わります。株式会社どうしの商号変更が3万円で済むのに対して、有限会社からの移行は最低でも6万円かかる計算です。有限会社のままの会社は、様式のページで特例有限会社の欄を見てください。

提出する前の最終確認

封をする前に見ておきたい点をまとめます。

・上部の商号欄は旧社名になっているか ・登記すべき事項の商号は新社名になっているか ・末尾の申請人の商号は新社名になっているか ・原因年月日が、議事録に書いた効力発生日と一致しているか ・原因年月日が将来の日付になっていないか ・登録免許税の額と、貼った収入印紙の額面の合計が一致しているか ・収入印紙に割印や消印を押していないか ・申請書と台紙のつづり目に契印を押したか。押した印は申請書の印と同じか ・添付書類の欄に書いた通数と、実際に入れた枚数が合っているか ・代理人が申請する場合、申請書に代表取締役の印を押していないか ・連絡先の電話番号を書いたか。日中つながる番号か ・提出先の法務局名を書いたか。本店を管轄する登記所か

最後の管轄も見落とされがちです。申請先は本店の所在地を管轄する登記所であって、近所の法務局ではありません。管轄は法務局のサイトで調べられます。郵送で出す場合は、返信用の封筒と切手を同封するかどうかも、事前に管轄の登記所へ確認しておくと確実です。

提出の方法は3通り

作った申請書の出し方は3つあります。

1つ目はオンライン申請です。電子証明書を持っている場合に使えます。

2つ目がQRコード付き書面申請です。法務局が推奨している方法で、電子証明書を持っていなくても使えます。申請用総合ソフトという法務局の無料ソフトで申請内容を作り、印刷した申請書に付くQRコードから登記所が内容を読み取ります。手で書き写す工程が減るので、文字の読み違いによる補正が起きにくくなります。

3つ目が通常の書面申請です。申請用総合ソフトが使えない環境の場合はこれになります。

どの方法でも、連絡先の電話番号は必ず書いてください。補正がある場合の連絡はここに来ます。日中つながるものであれば携帯電話でもかまいません。登記完了予定日まで法務局から連絡がなければ、不備なく手続きが完了したという意味になります。完了予定日は、申請した登記所を管轄する法務局のサイトで確認できます。

もう1つ、申請してから登記が完了するまでの間は、その会社の登記事項証明書と印鑑証明書が原則として発行されません。入札や融資の手続きで証明書が必要になる予定があるなら、申請のタイミングを調整するか、先に必要な通数を取っておいてください。

書類作成を自分でやるか、外に出すか

ここからは、在宅ワークと業務委託の市場を長く見てきた立場からの観察です。

商号変更の申請書そのものは、法務局が様式と記載例を配っている以上、自分で作れる書類です。項目も10個しかありません。それでも司法書士に頼む会社が一定数あるのは、申請書が難しいからではなく、その前後にある作業を含めて誰かに預けたいからです。議事録を作り、株主リストの人数を数え、印紙を買い、法務局へ行く。この一連の流れを誰が担当するのかが決まらないまま、時間だけが過ぎていきます。

20年この市場を見てきた立場から言えば、このタイプの仕事、つまり手順は決まっているけれど社内に担当者がいない作業は、外部に切り出すのにもっとも向いた領域です。人を採用するほどの分量ではなく、かといって社長が夜にやると本業が止まる。業務委託で必要な分だけ頼む形が、金額でも時間でも合理的になります。

そのときに効いてくるのが取引の形です。仲介が中間手数料を取る形だと、会社が同じ予算を払っても受け手に届く金額は目減りします。手数料0%の直接取引なら、同じ予算でより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。運営者として見てきた限りでは、長く続いている関係はほぼ例外なく後者です。単価を削り合うのではなく、「この人に渡せば説明しなくても形になる」という状態を双方が作りにいっています。書類の作成を一度でも任せた相手がいると、次に登記や契約の整備が必要になったときの負担がまったく変わってきます。

書類まわりを頼むときの相場の見方

議事録や通知文の作成といった文書の仕事を外部に頼むなら、相場を知っておくと判断が速くなります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場には公的統計をもとにした年収の分布がまとまっているので、社内で抱える場合と外部に出す場合の比較材料になります。あわせて、どの程度まで書式を理解している人に頼むべきかを考えるときはビジネス文書検定の出題範囲が手がかりになります。社外文書の形式や通知文の型が出題されるので、依頼の要件を言葉にしやすくなります。

社名変更に合わせてウェブサイトや社内システムの表記を直す作業が出てくる場合は、開発側の領域になります。単価の目安はソフトウェア作成者の年収・単価相場に、案件の種類はアプリケーション開発のお仕事にまとまっています。テンプレートの差し替えだけで済むのか、データベースに保存された値まで直す必要があるのかで工数が変わるため、依頼する前に社名がどこに埋め込まれているかを洗い出しておくと見積もりが正確になります。

書類を外部の人に頼むときは、発注の条件も一度確認しておくと安全です。発注書や契約書に何を書いておくべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが具体的に挙げています。社名変更のタイミングで契約書のひな形を全部開くことになるので、同じ機会に条項の中身も点検してしまうほうが効率的です。

完了までに実際に出ていくお金を数えてみる

登録免許税の3万円だけを見て予算を組むと、あとから小さな出費が積み上がります。社名を1つ変えるだけでも、実際には何段階かで費用が発生します。

いちばん大きいのが登録免許税の3万円です。次に来るのが、登記が終わったあとに取る登記事項証明書です。社名が変わったことを取引先や金融機関に示すために、新しい内容が反映された証明書が必要になります。手数料は法務省が公表しています。

登記事項証明書(謄抄本) 書面請求 600円/オンライン請求・送付 520円/オンライン請求・窓口交付 490円 出典: 法務省 登記手数料について

同じページによると、印鑑証明書は書面請求で500円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合は420円です。この金額は令和7年4月1日からのものなので、申請の前にもう一度確認してください。

証明書の通数は、思っているより早く増えます。銀行の口座名義の変更、許認可の届出、リース契約や賃貸契約の名義変更で、それぞれ1通ずつ求められます。3か所に出すなら3通、5通取れば3,000円です。窓口へ行く回数を減らしたいなら、必要になりそうな通数を最初にまとめて取ってしまうほうが早く済みます。

議事録を自分で作り、自分で法務局へ持ち込むなら、ここまでの実費は3万円台の前半から半ばに収まります。郵送で出すなら往復の郵便料金が、代理人に頼むならその報酬が上に乗ります。

登記の外側の出費も忘れないでください。代表者印を作り直すなら印章店の費用が、社名入りの名刺や封筒を刷り直すなら印刷費が発生します。登記の3万円より、こちらの合計のほうが大きくなる会社は珍しくありません。

補正の連絡が来たときにどうするか

申請書を出したあとで、登記所から電話がかかってくることがあります。書類の不備を直してほしいという連絡で、これを補正と呼びます。申請書に連絡先の電話番号を書くのは、この連絡を受けるためです。

補正で済む範囲であれば、申請そのものは生きています。指示された箇所を直して期限までに出し直せば、そのまま登記が進みます。多いのは、原因年月日が議事録と合っていない、添付書類の通数が実際と違う、契印が抜けている、といった形式面のものです。直すために窓口へ出向く必要があるのか、郵送で足りるのかは、連絡を受けたその場で聞いてしまうのが早いです。

期限内に直さないままにしておくと、申請が却下されることがあります。そうなると、貼った収入印紙の扱いを含めて話が面倒になります。連絡が来た日のうちに、何をいつまでにすればよいのかを確認してください。

不備の内容が大きく、作り直したほうがよい状態だと判断した場合は、申請を取り下げるという選択もあります。取り下げたあとの収入印紙の扱いは場面によって変わるので、登記所の指示に従ってください。

電話が一度も鳴らないまま登記完了予定日を過ぎた場合は、不備がなかったという意味です。連絡がないことを不安に思って問い合わせる必要はありません。

登記が終わったら、証明書を取って中身を見る

登記が完了しても、法務局から終わりましたという通知が届くわけではありません。完了を確かめる手段は、新しい登記事項証明書を取ることです。

見るべき箇所は3つあります。1つ目が商号の欄で、新しい社名が記録され、旧社名に下線が引かれているか。2つ目が変更の年月日で、議事録に書いた効力発生日と一致しているか。3つ目が、事業目的も一緒に変えた場合に、目的の欄が意図したとおりに1番から並んでいるか。

ここで違いが見つかったら、すぐに登記所へ連絡してください。時間が経つほど、どの書類が原因だったのかを追いにくくなります。

証明書が手元に届いたら、その写しを使って社外の手続きへ進みます。銀行、税務署、都道府県と市町村、年金事務所、許認可の窓口。提出先ごとに必要な通数と期限が違うので、証明書を取る前に提出先の一覧を作っておくと、窓口を往復する回数が減ります。

よくある質問

Q. 申請書の商号の欄には新しい社名を書くのですか?

上部の商号の欄には旧社名を書き、そのあとに括弧書きで新社名を添えます。どの会社についての申請かを特定するための欄だからです。一方で、登記すべき事項の欄と、申請書末尾の申請人の欄には新社名を書きます。同じ申請書の中で使い分けるので、法務局の記載例と見比べながら確認してください。

Q. 申請書の様式はどこで手に入りますか?

法務局のサイトの商業・法人登記の申請書様式というページで、記載例と空欄の様式が無料で配布されています。株式会社の商号変更は1-11という番号が振られており、様式はWord形式とPDF形式の両方があります。先に記載例を開くと欄外に注意書きが付いているので、迷う箇所はそこで解決します。

Q. 株主リストには株主全員を書く必要がありますか?

ありません。議決権の割合が高い順に並べ、割合の合計が3分の2に達するまでか、10位に達するまでか、少ないほうの人数までで足ります。自己株式のように議決権のない株式は書かず、総議決権数にも加えません。総会を欠席した株主でも、議決権を持っていれば記載の対象になります。

Q. 書き間違えた場合はどう直せばいいですか?

修正液は使えません。訂正したい文字を二重線で消し、その近くに正しい文字を書いて押印します。申請書を直すなら申請書に押した印鑑、添付書類を直すならその書類に押した印鑑を使います。押印の近くに「何字削除何字加入」と書いてもかまいません。印刷し直せる段階なら、訂正より作り直すほうが確実です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月18日最終更新:2026年9月19日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方