ひとり法人を作るのにかかるお金の内訳

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ひとり法人を作るのにかかるお金の内訳

この記事のポイント

  • ✓マイクロ法人設立費用の内訳を
  • ✓登録免許税・定款認証・収入印紙・資本金・毎年かかる固定費に分けて整理しました
  • ✓合同会社と株式会社でいくら違うか

マイクロ法人設立費用を調べ始めると、最初に出てくるのは「株式会社なら約25万円、合同会社なら約10万円」という数字だ。ところがこの数字は、何をどこまで含めたものなのかが書かれていないことが多い。資本金は入っているのか、印鑑代は入っているのか、専門家に払う報酬は入っているのか。そこが曖昧なままだと、手元にいくら用意すればいいのかが決まらない。

この記事では、ひとり法人を作るときに実際に財布から出ていくお金を、支払先ごとに分解する。法務局に納めるもの、公証役場に払うもの、印刷や印鑑にかかるもの、そして作ったあと毎年必ず出ていくもの。この4つに分けて見ると、削れるところと削れないところがはっきりする。

先に結論。削れない部分は合同会社で6万円、株式会社で16万5,000円

支払先が国か公証役場かで、性格がまったく違う。国に納める登録免許税は、どう工夫しても法律で決まった下限を下回れない。一方、公証役場に払う手数料と紙の定款に貼る印紙代は、会社の形と作り方で大きく変わる。

削れない最低額を先に置くと、こうなる。

会社の形 登録免許税 定款の認証 紙の定款の印紙 最低合計
合同会社 6万円 不要 不要(電子で作った場合) 6万円
株式会社(条件を満たすひとり法人) 15万円 1万5,000円 不要(電子で作った場合) 16万5,000円
株式会社(条件を外れる場合) 15万円 3万円から5万円 4万円(紙で作った場合) 22万円から24万円

ここに、定款の謄本代、印鑑の作成費、市区町村で取る印鑑証明書の代金といった細かい実費が数千円から1万円程度乗る。資本金はこの表に入っていない。理由は後で書くが、資本金は費用ではなく、会社の口座に移すだけのお金だからだ。

以下、1行ずつ根拠を確かめていく。

国に納める登録免許税は、法律で下限が決まっている

会社を登記するときに国へ納める税金が登録免許税だ。これは会社の形によって額が違う。

株式会社の設立登記について、法務局が公開している記載例には、こう書かれている。登録免許税は資本金の額の1000分の7の額であり、ただしこの額が15万円に満たない場合は15万円になる。100円未満の端数は切り捨てる。収入印紙または領収証書で納める。

合同会社の記載例も同じ書き方で、下限だけが違う。資本金の額の1000分の7の額で、その額が6万円に満たない場合は6万円になる。

つまり、計算はこうなる。

・株式会社で資本金100万円 … 100万円×0.7%=7,000円。下限に届かないので15万円
・株式会社で資本金3,000万円 … 3,000万円×0.7%=21万円。下限を超えるので21万円
・合同会社で資本金100万円 … 7,000円。下限に届かないので6万円
・合同会社で資本金1,000万円 … 7万円。下限を超えるので7万円

株式会社で下限の15万円を超えるのは、資本金が約2,143万円を超えたときだ。合同会社なら約858万円を超えたときになる。ひとり法人の資本金でそこまで積む例は多くないので、実務上はほぼ下限の額をそのまま納めることになる。

様式と記載例は法務局の商業・法人登記の申請書様式から誰でも無料で手に入る。株式会社の発起設立、合同会社の設立、それぞれに記載例のPDFと申請書のWordが並んでいて、添付する書類の一覧まで書かれている。ここを開かずに有料のひな型を買う必要はない。

株式会社だけにかかる「定款の認証」

定款とは、会社の決まりを書いた文書のことだ。商号、本店の場所、事業の目的、株式の内容などを書く。この文書を、公証人という公の資格を持つ人に「正しい手続きで作られた」と証明してもらう作業が定款の認証になる。

ここで会社の形による差が出る。日本公証人連合会の説明はこうだ。

いわゆる持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)の定款については、公証人の認証を必要としません。 出典: koshonin.gr.jp

合同会社を選ぶと、この工程が丸ごと消える。公証役場へ行く必要も、手数料を払う必要もない。合同会社のほうが安いと言われる理由の半分は、登録免許税の下限の差(15万円と6万円)で、残り半分がこの認証の有無だ。

手数料は資本金で3段階に分かれる

株式会社を選んだ場合、認証手数料は資本金の額で変わる。公証人手数料令35条にもとづく額は次のとおりだ。

・資本金の額等が100万円未満 … 3万円 ・資本金の額等が100万円以上300万円未満 … 4万円 ・それ以外 … 5万円

注意したいのが、定款に資本金の額を書かず「設立に際して出資される財産の最低額」とだけ書いた場合の扱いだ。この書き方をすると、上の区分のうち「それ以外」に当たることになり、手数料は5万円になる。資本金を小さくして手数料を下げるつもりでも、書き方ひとつで2万円多く払うことになる。

ひとり法人なら1万5,000円まで下がる

ここが、2026年時点で知らないと損をするところだ。令和6年11月22日に公証人手数料令の一部を改正する政令が公布され、同年12月1日から新しい区分が加わった。

現行手数料令第35条第1号の規定が改正され、3万円と定められていた資本金の額等が100万円未満の株式会社の定款の認証手数料について、次の(1)から(3)までのいずれにも該当する場合にあっては、1万5,000円とされました。 (1) 発起人の全員が自然人であり、かつ、その数が3人以下であること。 (2) 定款に発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載又は記録があること。 (3) 定款に取締役会を置く旨の記載又は記録がないこと。 出典: koshonin.gr.jp

この3つの条件は、ひとりで会社を作る人ならほぼ自動的に満たす。発起人は本人1人で、法人ではなく人間。株式は全部自分で引き受ける。取締役会は置かない。あとは資本金を100万円未満にするかどうかだけの判断になる。

資本金を100万円にするか99万円にするかで、認証手数料が4万円と1万5,000円に分かれる。差は2万5,000円だ。資本金の額は後から増やせるので、最初は小さく始めて、必要になってから増資するという選び方はできる。ただし増資にも登録免許税がかかるので、何度も動かす前提なら最初から必要額を入れておくほうが安く済む場合もある。

謄本の手数料は別に取られる

認証手数料とは別に、登記申請で使う謄本の代金がかかる。公証人連合会は謄本1枚につき250円と説明しており、定款の分量からすると「おおむね8枚2000円くらい」を目安として挙げている。金額としては小さいが、見落とすと当日の持ち合わせが足りなくなる。

紙で作ると4万円、電子で作るとゼロ

株式会社と相互会社の定款は、電子定款によらない場合、公証人が保存する原本に収入印紙4万円を貼る。電子定款で作る場合は貼る必要がない。合同会社も、電子で作れば同じく不要になる。

この4万円は、印刷した紙に貼るという一点だけで発生する。中身が同じでも、PDFで作って電子署名を付ければ消える。設立費用を下げる工夫のなかで、いちばん効き目が大きいのがここだ。

ただし電子定款を自分で作るには、いくつか道具が要る。PDFに電子署名を付けるための環境と、本人であることを示す電子証明書だ。マイナンバーカードと、カードを読み取れるスマートフォンかICカードリーダーが手元にあるかどうかで、この工程の難易度は変わる。道具を一式そろえる費用が4万円に近づくようなら、紙で作って印紙を貼るほうが結果的に安いこともある。

司法書士や行政書士に依頼すると、報酬を払う代わりに電子定款で作ってもらえることが多い。報酬額は事務所によって幅があるため、印紙代4万円が浮く分と報酬を並べて比べるのが正しい判断のしかたになる。

いつ、どこに払うのか

金額と同じくらい詰まりやすいのが、支払いの順番だ。出す順番を間違えると、窓口で止まって出直しになる。株式会社をひとりで作る場合、おおよそこの流れになる。

  1. 定款を作る。商号、本店、目的、資本金、発行する株式の内容を決める。ここで会社の実印を作っておく
  2. 発起人の印鑑登録証明書を取る。市区町村の窓口。発行後3か月以内のものが要る
  3. 公証役場で認証を受ける。認証手数料と謄本代をここで払う。紙で作った場合は収入印紙4万円もここで使う。認証は本店の所在地を管轄する法務局に所属する公証人でなければできない。東京都内に本店を置くなら東京都内の公証役場になる。管轄の外で受けた認証は無効になるので、行き先だけは先に確認しておきたい
  4. 資本金を払い込む。発起人個人の口座に入金し、その通帳の写しなどを払込みを証する書面として作る。会社の口座はまだ作れないので、個人の口座を使う
  5. 法務局に登記を申請する。登録免許税をここで払う。収入印紙または領収証書で納め、収入印紙貼付台紙に貼る
  6. 登記が終わったら証明書を取る。登記事項証明書と会社の印鑑証明書。ここで初めて会社の口座を開ける

つまり、公証役場に払う分と法務局に納める分は、別の日に別の窓口で出ていく。合計額だけを見て1回の支出として考えていると、順番のところでつまずく。

なお、登記の申請には様式そのものを間違えやすい罠がある。同じ株式会社の設立でも、取締役会を置くかどうか、発起設立か募集設立かで様式が4通りに分かれている。ひとりで作る場合は「取締役会を設置しない会社の発起設立」に当たる。ダウンロードする前に、どれが自分の形かを決めておきたい。

マイナポータルからまとめて出す道もある

国税庁は、法人設立ワンストップサービスについてこう案内している。これまで法人を設立する際には、設立届出書の提出のような複数の各種手続を行政機関ごとにそれぞれ個別に行う必要があったが、マイナポータルという1つのオンラインサービスを利用して、一連の手続を一度で行えるようになる。

対象になるのは、国税と地方税の設立届、年金事務所やハローワークへの雇用に関する届出、そして定款認証と設立登記だ。定款認証と設立登記が対象に加わったのは令和3年2月26日からで、それ以外の手続はその前年から使えるようになっている。運用時間はメンテナンス期間を除いて24時間とされている。

使うために必要なものは3つだ。法人代表者本人のマイナンバーカード、カードに対応したスマートフォンまたはパソコン、そしてパソコンを使う場合はICカードリーダー。代表者以外が出した届出については、税務署から後日問い合わせが入ると明記されているので、代表者本人の環境で操作する必要がある。

注意したいのは、この仕組みを使っても費用そのものは変わらないという点だ。登録免許税も認証手数料も同じ額を納める。減るのは窓口を回る回数と、同じ内容を何度も書き写す手間になる。ただし、設立直後にやるべき届出が複数の役所に散らばっていることを考えると、この手間の削減は小さくない。

合同会社を選ぶとき、費用以外に変わること

金額だけを見ると合同会社が有利に見えるが、会社の仕組みそのものが違うので、金額以外の差も並べておきたい。

・役員の任期。株式会社の取締役には任期があり、任期が切れたら改めて選び直して登記する必要がある。この重任の登記にも登録免許税がかかる。合同会社の業務執行社員には任期の定めがない
・決算の公告。株式会社は決算の公告が求められる。合同会社にはこの義務がない
・肩書き。株式会社なら代表取締役、合同会社なら代表社員になる。名刺や契約書に出る呼び名が変わる
・定款を変えるときの手続き。設立のときの定款だけが公証人の認証を必要とするので、その後の変更については株式会社でも認証は要らない。ここは両者に差がない

長い目で見ると、役員の任期と重任登記の有無は効いてくる。株式会社で任期を最長にしておいても、期が来れば手続きが発生する。設立費用の差だけでなく、10年動かしたときの手数と費用の差で比べると、判断の材料が増える。

資本金は「費用」ではない

設立費用の記事で資本金が合算されていることがあるが、性格がまったく違う。登録免許税は納めたら戻ってこないが、資本金は会社の口座に移したあとも会社のお金として残る。仕入れにも家賃にも使える。出ていくのではなく、財布が個人から会社に変わるだけだ。

2006年の会社法施行で、資本金1円でも株式会社を作れるようになった。ただし実務では、いくつか理由があって1円にはしないことが多い。

・当面の経費を払えない。登記が終わった直後から、家賃、通信費、会計ソフトの利用料が出ていく。資本金がゼロに近いと、その都度代表者が立て替えて役員借入金として記録する手間が増える
・取引先や金融機関に見られる。資本金の額は登記事項なので、誰でも登記簿で確認できる。額そのものより、額から読み取れる事業の規模感が判断材料になる
・許認可の要件に引っかかることがある。業種によっては、一定の資産や資本金が要件になっている

一方で、上げすぎるとこちらも損をする。資本金等の額が1,000万円を超えると、次の章で触れる法人住民税の均等割が上がる。消費税の扱いでも、資本金1,000万円以上の新設法人は別の区分になる。ひとり法人で1,000万円を超える資本金を積む理由は、よほどの事情がない限り見当たらない。

印鑑と証明書の実費

ここは金額が小さいが、忘れると当日動けなくなる。

・会社の実印。登記所に届け出る印鑑で、印鑑証明書が出るのはこれだけだ。市販品は材質によって数千円から数万円の幅がある。銀行印や角印と3本セットで売られていることが多いが、法律が3本を要求しているわけではない
・発起人の印鑑登録証明書。定款の認証のときに公証役場へ提出する。発行後3か月以内のものに限られる。市区町村の窓口で取る
・設立時取締役の印鑑証明書。就任承諾書に押した印鑑について、市町村長が作成した証明書を登記申請に添える。同時に印鑑を提出している場合は、印鑑届書に添える証明書として使い回せる
・登記が終わったあとの登記事項証明書と印鑑証明書。銀行口座を開くとき、年金事務所へ届け出るときに要る。何通取るかで額が変わる

会社の印鑑については、登記所に届け出るものだけ規則で大きさが決まっている。安さだけで選んで規格から外れると作り直しになるので、購入前に規格を確認しておきたい。

作ったあと、毎年必ず出ていくお金

設立費用だけを見て決めると、ここで想定が崩れる。法人には、売上がゼロでも消えない固定費がある。

法人住民税の均等割は赤字でも消えない

地方税法が定める標準税率はこうなっている。道府県民税の均等割は、資本金等の額が1,000万円以下の法人で年額2万円。市町村民税の均等割は、資本金等の額が1,000万円以下で従業者数の合計が50人以下の法人で年額5万円。合わせて年7万円が目安になる。

標準税率なので、自治体によってはこれより高い税率で課している場合がある。市町村は標準税率の1.2倍を超えて課すことはできないという上限が法律に書かれている。東京都の特別区のように、都税事務所へまとめて申告する地域もある。自分の会社の所在地がどういう扱いかは、その自治体の税務窓口のページで確認するのが確実だ。条文そのものはe-Gov法令検索の地方税法で読める。

この均等割は、事業年度の途中で会社を作った場合、事務所を持っていた月数で按分される。1か月未満の端数は切り捨てて計算する。

社会保険は「入らない」を選べない

日本年金機構は、常時従業員を使用する法人事業所について、厚生年金保険および健康保険の加入が法律で義務づけられていると明記している。この「常時従業員」には事業主のみの場合も含まれる。個人事業のときに国民健康保険と国民年金だった人が法人を作ると、社会保険に切り替わる。

保険料は役員報酬の額で決まり、会社負担と本人負担を合わせるとそれなりの額になる。マイクロ法人という言葉が節税と一緒に語られる背景にはこの仕組みがあるが、有利になるかどうかは報酬の設定、家族の扶養、他の収入の有無で変わる。ここは一般論で断定できる領域ではないので、具体的な金額で比べるなら年金事務所か社会保険労務士、税理士に自分の数字を出して確認したい。

決算と申告を人に頼むかどうか

法人の決算申告は、個人の確定申告と比べて作る書類の数が多い。貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表に加えて、法人税、地方法人税、法人住民税、法人事業税、消費税の申告書が必要になる。

自分で作ることは可能だが、時間のかかり方が個人事業とは別物になる。外注する場合の報酬は事務所や関与の深さで幅があるため、複数の事務所に見積もりを取って比べるのが基本になる。会計ソフトの年間利用料も固定費に加わる。

ひとり法人でよくある誤算

役員報酬をゼロにすると社会保険に入れない

節税の話を追っていると、役員報酬を極端に小さくする、あるいはゼロにするという設計を見かける。ところが日本年金機構の案内には、こう書かれている。法人事業所で、被保険者となる者がいない場合(無報酬の役員しかいない場合等)は、適用事業所の要件を満たさないため、適用を受けることができない。

つまり、報酬をゼロにすると社会保険の適用そのものが受けられない。社会保険に入ることを目的に法人を作ったのに、報酬設計を間違えて入れなくなるという順序の逆転が起きる。必要書類の一覧は日本年金機構の新規加入に必要な書類一覧にまとまっているので、届出の前に一度目を通しておきたい。

登記簿謄本の有効期限に気づかない

年金事務所へ新規適用届を出すとき、添付する法人登記簿謄本は、書類提出日からさかのぼって90日以内に交付された原本と決められている。しかもコピー不可だ。設立のタイミングで多めに取っておいた謄本が、手続きを先延ばしにしているうちに期限切れになり、取り直しになる例がある。

費用を回収できる売上の水準を先に決めていない

設立費用と毎年の固定費を足すと、初年度に上乗せされる金額が見えてくる。合同会社で電子定款なら、設立時の6万円台と、均等割の7万円、会計ソフト代、社会保険料。この合計を上回る利益が出てはじめて、法人にした意味が金額として出る。設立費用の安さだけで会社の形を決めると、この計算が後回しになりやすい。

現物出資を使うときの注意

手元のパソコンや機材を資本金の代わりに出すことを現物出資という。現金を用意しなくてよいので、資本金を積みたいが手持ちが少ないという場面で検討されることがある。

ただし、手続きが増える。法務局の記載例には、会社法28条各号に規定する変態設立事項に関する定めが定款に定められている場合には、設立時取締役の調査報告書とその附属書類を添付するという注記がある。さらに、現物出資をした場合には検査役の調査報告書とその附属書類、あるいは弁護士等の証明書とその附属書類が必要になる場合があるとも書かれている。

検査役の調査が要る場面に当たると、時間も費用も大きく増える。一定の条件を満たせば調査を省ける仕組みがあるため、実務では省ける範囲に収めて使うのが一般的だ。現金で足りるなら現金にしたほうが、設立の手間は圧倒的に軽い。

なお、現物出資したものは会社の資産になるので、その後は会社の帳簿で管理することになる。個人のときから使っていたパソコンを会社のものにすると、私用との切り分けの説明が必要になる場面が出てくる。金額の小さいものを無理に現物出資に回すメリットは薄い。

費用を下げる順番

削れる額の大きい順に並べると、判断が早くなる。

  1. 会社の形を決める。合同会社にすると、登録免許税で9万円、定款認証で1万5,000円から5万円が消える。役員の任期がない、決算公告の義務がないといった運営面の違いもあるので、金額だけでは決めないほうがよい
  2. 電子定款にする。紙の印紙代4万円が消える。自分でやる環境がないなら、専門家報酬と比べて判断する
  3. 株式会社なら資本金を100万円未満にできるか考える。認証手数料が1万5,000円になる条件を満たせるかを先に確認する
  4. 法務局の記載例をそのまま使う。申請書、定款の記載例、印鑑届書、添付書類の一覧まで無料で公開されている
  5. 登記が終わったあとに取る証明書の枚数を数える。銀行口座、年金事務所、取引先と、必要な先を洗い出してから窓口に行くと、取り直しの往復が減る

順番を逆にして、印鑑を安く買うところから始めても、全体の金額はほとんど動かない。

在宅で働く人の市場から見た、法人化の損益分岐

20年この市場を見てきた立場から言えば、法人を作るかどうかで迷う人の多くは、節税の話を入口にして相談に来る。ところが実際に効いているのは、税率の差よりも「受けられる仕事が変わるかどうか」であることが多い。発注側に法人としか契約しない規程がある、請求の処理が法人向けにしか整っていない、継続の案件が法人名義でないと通らない。こうした事情で、売上の上限が先に決まってしまうことがある。

もう1つ、長く見てきて感じるのは、額面の売上より手取りの厚さのほうが働き方を変えるという点だ。同じ金額の仕事でも、間に入る事業者が取る分が乗らない取引では、依頼する側は同じ予算でより多く頼めるし、受ける側は同じ仕事で手元に残る額が増える。手数料0%の直接取引が意味を持つのは、金額そのものより、固定費を抱えたときの耐性が変わるからだ。法人を作ると毎年7万円の均等割と社会保険料が固定で乗る。その固定費を支えるのは、単価の高い1本ではなく、手取りの読める継続の関係になる。

どの職種でどれくらいの単価が動いているかを先に見ておくと、固定費を支えられる水準かどうかの判断がしやすい。開発系の仕事の相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっていて、経験年数や扱う技術による開きが数字で確認できる。書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場のほうが近く、文字単価と月あたりの本数から年間の見込みを組み立てられる。

案件の種類そのものを広げる方向で考えるなら、企業側の相談に応じる仕事の内容を見ておくとよい。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、ツールを作るのではなく使い方を設計する側の仕事がどういう形で発注されているかが整理されている。この種の仕事は法人格を求められることが比較的多く、設立費用を回収する道筋として現実的だ。

資格の面から入口を広げる選択もある。中小企業診断士は、経営の相談に乗る仕事につながる国家資格で、補助金や事業計画の支援を受注する足がかりになる。取得までの負担は小さくないが、法人を作ったあとに受けられる仕事の幅を変える投資として見る価値はある。

最後に、金額の判断について1つ。ここに並べた数字のうち、登録免許税と認証手数料と印紙代は、法律と政令で決まっているので誰が計算しても同じになる。一方で、税務上どちらが有利かという判断は、報酬の額、家族構成、他の収入、事業の見通しで変わる。一般にはこう扱われるという説明を読んでも、自分の数字を入れると逆の答えになることがある。設立の前に、手元の数字を持って税務署か税理士に確認しておくと、作ったあとで設計を組み直す手間を避けられる。

よくある質問

Q. マイクロ法人設立費用は、合同会社と株式会社でどれくらい違いますか?

削れない部分だけを比べると、合同会社は登録免許税6万円のみ、株式会社は登録免許税15万円に定款の認証手数料が加わります。認証手数料は資本金100万円未満で発起人が3人以下の個人、取締役会を置かないという条件をすべて満たせば1万5,000円です。合同会社で電子定款なら6万円、条件を満たす株式会社なら16万5,000円が下限になります。

Q. 資本金1円でも会社は作れますか?

法律上は作れます。ただし登記直後から家賃や通信費が出ていくため、資本金がゼロに近いと代表者の立て替えが増えて記録の手間がかかります。取引先は登記簿で資本金を確認できますし、業種によっては許認可の要件になることもあります。一方で1,000万円を超えると住民税の均等割が上がるので、上げすぎにも注意が必要です。

Q. 電子定款にすると本当に4万円安くなりますか?

紙の定款に貼る収入印紙4万円が不要になるので、その分は確実に消えます。ただしPDFに電子署名を付ける環境と電子証明書が必要で、道具を一式そろえる費用が4万円に近づくこともあります。専門家に依頼して電子定款で作ってもらう場合は、浮く4万円と報酬額を並べて比べて判断してください。

Q. 会社を作ったあと、毎年いくら固定でかかりますか?

法人住民税の均等割が、資本金等1,000万円以下で従業者50人以下なら標準税率で年7万円です。売上がゼロでも消えません。これに社会保険料、会計ソフトの利用料、決算申告を外注する場合はその報酬が加わります。自治体によって税率が異なるため、正確な額は所在地の税務窓口で確認してください。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年2月9日最終更新:2026年10月10日
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