リモートワーク・副業解禁に対応した就業規則の作成費用と注意点

永井 海斗
永井 海斗
リモートワーク・副業解禁に対応した就業規則の作成費用と注意点

この記事のポイント

  • リモートワークや副業解禁など
  • 新しい働き方に対応した就業規則の作成・改定費用を解説
  • 社労士に依頼するメリットや相場

働き方の多様化が加速する中、多くの企業が頭を悩ませているのが「就業規則」のアップデートです。特に2026年現在、リモートワークの定着や副業・兼業の一般化により、従来の画一的な規則では対応しきれないケースが激増しています。

私はこれまでに数百社の労務改善をサポートしてきましたが、就業規則を放置していたために、未払い残業代や情報漏洩、副業を巡るトラブルで1,000万円以上の損害を被ったケースも見てきました。

この記事では、社会保険労務士(社労士)に就業規則の作成を依頼した際の費用相場と、リモートワーク・副業時代に必ず盛り込むべきポイントを、実体験を交えて詳しく解説します。

就業規則の作成・改定を社労士に依頼する費用相場

社労士に支払う報酬は、会社の規模や改定の範囲によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

項目 費用相場(目安) 内容
新規作成(標準型) 20万円 〜 40万円 法律に準拠した基本セットの作成
全面的改定(既存あり) 15万円 〜 30万円 現状の課題に合わせたリニューアル
特定規定の追加(副業等) 5万円 〜 10万円 副業規定やテレワーク規定の単発作成
月額顧問料(相談含む) 3万円 〜 10万円 継続的な労務相談と軽微な規定修正

最近では、生成AIを活用した下書き作成により、相場よりも20%ほど安く提案する事務所も増えていますが、重要なのは「自社の実態に合っているか」という点です。テンプレートの流用では、後述するようなリスクを防ぎきれません。

リモートワーク対応:必ず盛り込むべき3つの規定

リモートワークを「なんとなく」で運用していると、労務管理が崩壊します。以下の3点は必須項目です。

1. 労働時間の算定と中抜けの取り扱い

在宅勤務では、仕事と私生活の境界が曖昧になりがちです。「中抜け時間」を労働時間から除外するのか、あるいは休憩時間として処理するのかを明確に定める必要があります。また、始業・終業の報告義務を課し、PCのログ等による客観的な記録と照合する仕組みを明文化しましょう。

2. 通信費・光熱費の負担区分

自宅での電気代やネット代を会社がどこまで負担するか、あるいは一律で「在宅勤務手当」を支給するのかを決めます。支給額の相場は月額3,000円から5,000円程度ですが、これを定めずに従業員から後出しで請求されるトラブルを未然に防ぎます。

3. セキュリティ・場所の制限

「自宅以外(カフェや実家など)での勤務を認めるか」という点も重要です。情報漏洩リスクを考慮し、公共Wi-Fiの使用禁止や、周囲に画面が見えない環境での勤務を義務付ける規定を設けます。

副業解禁:自由と管理のバランス

厚生労働省のモデル就業規則も「副業を原則認める」方向に変わっていますが、無条件に認めるのは危険です。

許可制か届出制か

現在は「届出制」が主流ですが、競合他社での副業や、本業の労働時間に支障が出る場合は「制限できる」旨を必ず記載します。特に週40時間を超える労働時間の通算管理については、社労士のアドバイスが必須です。

競合禁止と守秘義務

副業先で自社のノウハウを流用されたり、顧客を引き抜かれたりするリスクを最小限にするため、競合禁止規定を副業に特化させて記述します。違反時の制裁規定(懲戒解雇等)も含めて、心理的な抑止力を高めることが重要です。

【実体験セクション】「副業トラブル」で生じた予想外の損害

以前、従業員数30名ほどのIT企業のコンサルティングに入った際の話です。その会社では、就業規則に「副業禁止」と書かれたまま、口頭で「多少のアルバイトならOK」と許可していました。

ある時、エース級のエンジニアが、実は深夜まで競合他社の業務委託を受けていたことが発覚。本業のパフォーマンスが目に見えて低下し、最終的に重要なプロジェクトの納期が2週間遅延。クライアントへの賠償金等で300万円以上の損害が発生しました。

会社側は懲戒処分を検討しましたが、就業規則が形骸化していたため、「どこまでが許される副業か」の基準が法的に曖昧で、十分な処分が下せませんでした。この一件の後、私たちは25万円をかけて就業規則をフルリニューアルし、厳密な「副業申請フロー」を構築しました。

結果として、従業員は安心して(ルール内で)副業ができるようになり、会社もリスクをコントロールできるようになりました。初期投資の25万円を惜しんだために、300万円の損失を出してしまった典型的な事例です。

就業規則を社労士に任せるべき理由

「ネットの無料テンプレートで十分」と考える経営者もいますが、それはおすすめできません。

1. 最新の法改正への即時対応

労働法は非常に頻繁に改正されます。育児・介護休業法の改正や、裁量労働制の見直しなど、素人が追いきれない変化に、プロは常にアップデートして対応します。

2. 助成金の受給可能性が高まる

「キャリアアップ助成金」などの雇用関連助成金は、就業規則の記載内容が受給の要件になっていることが多いです。社労士に依頼することで、規則作成費用を助成金で相殺し、実質プラスになるケースも少なくありません。

3. 「会社を守る」ための記述

無料テンプレートは「労働者の権利を守る」側面に強いものが多いですが、社労士が作成する規則は、万が一の紛争時に「会社がいかに適切な対応をしたか」を証明する盾となります。

まとめ:2026年の労務管理は「柔軟性と透明性」

就業規則は一度作って終わりではありません。事業の変化に合わせて1年2年に一度は見直すべき「経営の羅針盤」です。

費用がかかることを嫌って後回しにせず、まずは現状の規則が今の働き方に合っているか、無料診断等を利用してチェックすることをお勧めします。2026年、選ばれる企業になるためには、クリーンで安心できる労働環境の構築が不可欠です。

2026年以降のトレンド:ウェルビーイング規定の導入

最近では、単なる禁止事項や労働条件だけでなく、従業員の「健康」や「働きがい」をサポートする規定を盛り込む企業が増えています。

  • メンタルヘルス休暇の規定(取得率100%を目指す仕組み)
  • ワーケーションの許可条件と費用補助
  • 学び直し(リスキリング)支援金制度の明文化

これらは採用時の強力なアピールポイントとなり、優秀な人材の離職率を5%以下に抑える効果も期待できます。

デジタル化に伴う「デジタルデトックス」の規定

リモートワークの弊害として、24時間いつでも連絡が取れてしまう「つながりすぎる権利」の侵害が問題視されています。欧州で導入が進んでいる「つながらない権利」を就業規則に盛り込み、「平日20時以降および休日のSlack・メール連絡を原則禁止」と定めることで、従業員の燃え尽き症候群を防ぐ対策も2026年のトレンドとなっています。

最後に:経営者の想いを形にする

就業規則は「法律を守るための書類」であると同時に、「私たちはこのような文化で働きたい」という経営者のメッセージでもあります。社労士と対話を重ね、ぜひ自社らしい、前向きな規則を作り上げてください。

就業規則の作成・変更における「労働基準法」の基本要件

社労士に依頼する前に、経営者として最低限知っておきたいのが、就業規則に関する労働基準法の基本要件です。法律を理解せずに作成を依頼すると、後から「規定が不十分だった」「行政指導を受けた」というトラブルに発展する可能性があります。

常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない。また、就業規則を変更した場合においても同様とする。 出典: mhlw.go.jp

労働基準法第89条により、就業規則には絶対的必要記載事項相対的必要記載事項が定められています。絶対的必要記載事項は、(1)始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、(2)賃金の決定・計算・支払い方法、賃金の締切日・支払日、昇給に関する事項、(3)退職に関する事項(解雇事由を含む)の3つで、これらは必ず記載しなければなりません。

相対的必要記載事項としては、(1)退職手当の規定、(2)臨時の賃金(賞与)に関する規定、(3)食費・作業用品その他の負担に関する規定、(4)安全衛生、(5)職業訓練、(6)災害補償・業務外傷病扶助、(7)表彰・制裁、(8)その他全労働者に適用される事項、があります。これらは「定めをする場合」には記載が必要となります。

また、就業規則の作成・変更にあたっては、労働者の過半数を代表する者からの意見聴取が義務付けられています。意見書を就業規則本体と一緒に労働基準監督署に提出する必要があり、この手続きを怠ると30万円以下の罰金が科される可能性があります。

就業規則の作成又は変更について、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。意見書には代表者の氏名等を記載し、就業規則と併せて労働基準監督署に届け出る。 出典: mhlw.go.jp

社労士に依頼する場合でも、これらの法的要件を理解しておくことで、納品物のチェックポイントが明確になります。「労働者代表の選出方法」「意見書の取得手順」「労基署への提出時期」など、実務的な確認事項を社労士と密接に擦り合わせていきましょう。

「同一労働同一賃金」に対応した規定整備の必須ポイント

2020年4月(中小企業は2021年4月)から施行された「パートタイム・有期雇用労働法」により、企業は同一労働同一賃金への対応が義務化されました。正社員・契約社員・パートタイマー・派遣労働者の間で、不合理な待遇差を設けることが禁止されています。リモートワーク・副業対応と並行して、この点も必ず就業規則に反映させる必要があります。

短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間における不合理な待遇差を解消するため、賃金、福利厚生、教育訓練、安全衛生等のあらゆる待遇について、待遇の性質・目的に照らして適切と認められる基準に基づき判断することが求められる。 出典: mhlw.go.jp

具体的に注意すべき項目として、以下の5つが挙げられます。第一に、基本給です。職務内容、職務に必要な能力、勤続年数等に基づいて合理的に説明できる基準を設ける必要があります。「正社員だから高い」「パートだから低い」という理由は通用しません。

第二に、**賞与(ボーナス)**です。会社業績への貢献度に応じて支給する場合、貢献度の評価基準を雇用形態に関わらず統一する必要があります。第三に、手当です。通勤手当、家族手当、住宅手当、役職手当等について、支給目的に照らして雇用形態間で不合理な差を設けてはいけません。

第四に、福利厚生施設の利用です。給食施設、休憩室、更衣室などの利用について、雇用形態による差別を禁止する規定が必要です。第五に、教育訓練です。職務遂行に必要な能力を付与するための訓練について、雇用形態に関わらず実施する義務があります。

これらに関連して、近年は「説明義務」も強化されています。労働者から待遇差の理由について説明を求められた場合、事業主は説明する義務を負います。この説明責任を果たすためには、就業規則と賃金規定において、各待遇の性質・目的が明確に記述されている必要があります。

社労士に就業規則の作成・改定を依頼する際は、必ず「同一労働同一賃金への対応はどう設計するか」を打ち合わせの議題に含めましょう。法令違反は労働者からの裁判リスクだけでなく、行政指導や社名公表のリスクもあります。後から修正するよりも、最初から正しく設計する方が、結果的にコストも時間も大幅に節約できます。

「ハラスメント防止規定」の具体的な記述例とNGパターン

2020年6月(中小企業は2022年4月)からパワハラ防止措置が義務化され、就業規則にハラスメント防止規定を明記することが事実上必須となっています。実は、社労士に依頼する際の追加費用の中で、ハラスメント関連の規定整備が想像以上に重要な位置を占めていることをご存じでしょうか。

事業主は、職場におけるパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止のために、雇用管理上必要な措置を講じる義務があり、これには相談窓口の設置、就業規則等への明記、研修の実施等が含まれる。 出典: mhlw.go.jp

実務上、就業規則に盛り込むべき具体的な項目は以下の通りです。第一に、ハラスメントの定義を明確にすること。パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、マタニティハラスメント、カスタマーハラスメントなど、それぞれの類型について該当行為を例示します。

第二に、禁止行為の明示です。「上司が部下に対して人格を否定する発言を繰り返すこと」「業務に必要な情報を意図的に与えないこと」「達成不可能なノルマを課すこと」など、具体的な禁止行為を列挙することで、従業員の理解を深めます。

第三に、相談窓口の設置と運用です。社内窓口(人事部や総務部)と社外窓口(顧問弁護士や専門相談機関)の両方を設置し、相談者のプライバシー保護、不利益取扱いの禁止を明記します。

第四に、懲戒処分の規定です。ハラスメント行為が認定された場合、行為の程度に応じて譴責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇のいずれかを科す旨を定めます。曖昧な記述では懲戒処分の正当性が裁判で否定される可能性があるため、社労士の専門的なアドバイスが特に重要となります。

第五に、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対応です。2026年現在、顧客からの不当な要求や悪質クレームに対応する従業員の心身の保護が大きな社会課題となっています。「悪質な顧客対応からの離脱を許可する」「対応記録を保存する」「必要に応じて警察通報・法的措置を講じる」といった企業としての姿勢を就業規則に盛り込むことで、従業員の安心感が大きく向上します。

ハラスメント防止規定の不備は、企業の社会的信用を大きく損なうリスクがあります。SNSでの炎上、ブラック企業認定、優秀人材の離職、訴訟リスクなど、見えにくいコストが連鎖的に発生します。社労士への依頼費用は、こうしたリスクを未然に防ぐ「保険料」と捉えることができます。

助成金活用で就業規則整備の費用を実質的にゼロにする

就業規則の作成・改定費用を惜しんで放置する企業は多いですが、実は厚生労働省の助成金を活用することで、社労士費用以上のリターンを得られる可能性があります。代表的な助成金とその活用方法を解説します。

第一の選択肢が、働き方改革推進支援助成金です。生産性向上に向けた設備投資や、就業規則の整備(時間外労働の上限設定、年次有給休暇の取得促進等)を行った中小企業に対して、最大数百万円の助成が受けられる制度です。

働き方改革推進支援助成金は、中小企業事業主が時間外労働の上限規制等に対応するため、生産性を向上させ、時間外労働の削減、年次有給休暇の取得促進、勤務間インターバル制度の導入等に取り組む場合に、その費用の一部を助成する制度である。 出典: mhlw.go.jp

第二の選択肢が、キャリアアップ助成金です。非正規雇用労働者の正社員化、賃金規定の改定、共通化等を行った企業に対して、1人あたり数十万円〜100万円超の助成が受けられます。就業規則に「正社員転換制度」「賃金規定の共通化」「諸手当制度の共通化」等を追加することで、助成金の受給要件を満たせます。

第三の選択肢が、両立支援等助成金です。育児・介護と仕事の両立支援に向けた就業規則の整備(テレワーク制度、時短勤務制度、育児介護休業の拡充等)を行った企業に対して、コース別に数十万円〜100万円の助成が受けられます。

これらの助成金は、社労士に支援を依頼することで申請の確実性が大きく高まります。助成金申請の専門社労士は、就業規則の作成・改定を含めた一連のサポートをパッケージで提供しており、「社労士費用が助成金で完全に回収できる」というケースも少なくありません。

具体的な進め方としては、(1)まず社労士に「自社で活用できる助成金診断」を依頼し、(2)助成金の受給要件に合わせて就業規則を整備、(3)助成金申請と就業規則変更届の同時進行、(4)支給決定後に助成金で社労士費用を清算、という流れが理想的です。

経営者にとって就業規則は「コストのかかる義務的な書類」と捉えられがちですが、適切な助成金活用と組み合わせることで、「投資以上のリターンを生む経営資産」へと変わります。2026年の労務管理改革は、ただ法律に従うだけでなく、攻めの姿勢で制度を活用していく企業こそが、優秀な人材確保と業績向上の両方を実現できる時代となっています。

よくある質問

Q. 看護師のダブルワークは就業規則違反になりますか?

本業の就業規則次第です。副業禁止規定がある場合は違反になり得ます。近年は副業容認の流れが強く、申請すれば許可されるケースが多いため、事前確認と書面での許可取得が基本です。

Q. 介護施設の就業規則で副業禁止の場合、絶対にできませんか?

ほぼできません。違反すると懲戒処分の可能性があります。ただし近年は就業規則改定で副業解禁する施設も増えているため、上司や人事に相談して申請ベースで許可を得るルートも検討できます。

Q. 副業として行っても会社にバレませんか?

通常のリモートバイトと同様、住民税の納付方法などを適切に処理していれば、アバターワーク特有の理由で露見することはありません。ただし、就業規則で副業が禁止されている場合は注意が必要です。

Q. 本業の会社に副業がバレないようにフルリモートで働くことは可能ですか?

可能です。フルリモートであれば出勤の必要がないため、物理的に本業の同僚に見つかるリスクはありません。また、確定申告の際に住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」にチェックすることで、副業分の住民税の通知が会社にいかないようにする対策が一般的です。ただし、本業の就業規則で副業が完全に禁止されている場合は、懲戒処分のリスクがあるため、事前に社内規定をしっかり確認することをおすすめします。

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永井 海斗

この記事を書いた人

永井 海斗

ノマドワーカー・オフィス環境ライター

全国100箇所以上のコワーキングスペース・レンタルオフィスを体験した国内ノマドワーカー。フリーランスの働く場所をテーマに、オフィス環境・多拠点生活系の記事を執筆しています。

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