公務員がnoteで発信するとき|副業に当たる線引きと届け出 2026

丸山 桃子
丸山 桃子
公務員がnoteで発信するとき|副業に当たる線引きと届け出 2026

この記事のポイント

  • ✓公務員がnoteで副業をしてよいのか
  • ✓国家公務員法と地方公務員法の条文に戻って
  • ✓無料記事・有料記事・メンバーシップ・広告収入のどこから許可が必要になるかを線引きします

公務員がnoteで発信していいのか。結論から書きます。書くこと自体は禁じられていません。禁じられているのは「許可を受けずに報酬を得て事業や事務に従事すること」であって、無料で記事を公開する行為そのものを止める条文はありません。線が引かれるのは、有料記事の販売やメンバーシップのように継続して報酬が入る形にしたときです。そして、収益がゼロでも常に効いている義務が3つあります。守秘義務、信用失墜行為の禁止、職務専念義務です。

ここを混ぜて語る解説が多いので、この記事では条文に戻って整理します。どの条文が何を禁じているのか、noteの収益化の形ごとにどの条文に当たるのか、許可を求めるときに何をどう書くのか、税金はどの順番で処理するのか。ネットの体感ではなく法令の文言を出発点にします。

公務員の副業を規律している条文を先に押さえる

まず国家公務員です。国家公務員法第103条は「職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない」と定めています。同条第2項で、人事院規則の定めるところにより所轄庁の長の申出により人事院の承認を得た場合はこの規定を適用しないとされています。

続く第104条は範囲が広いです。「職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する」とあります。営利企業でなくても、報酬を得て何かの事業や事務に従事するなら許可が必要だと読めます。noteの有料販売が問題になるのは、主にこの第104条の側面です。

そして第101条が職務専念義務です。「職員は、法律又は命令の定める場合を除いては、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」。勤務時間中にnoteの下書きを書く、庁舎のパソコンで編集する、といった行為はこの条文に触れます。

地方公務員の場合は地方公務員法です。第38条が中心で、条文は次のようになっています。「職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」。ここも「報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」という広い書き方です。同条第2項では、人事委員会が規則により任命権者の許可の基準を定めることができるとされています。つまり許可されるかどうかの実際の基準は、自治体ごとに違います。

あわせて地方公務員法第33条(信用失墜行為の禁止)、第34条(秘密を守る義務)、第35条(職務に専念する義務)が常に効いています。第34条は「職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする」と書かれていて、退職後も続く義務です。条文そのものはe-Govから検索できます。

ここまでを整理すると、noteをやるときにチェックすべき問いは3つになります。報酬を得ているか。勤務時間と職場の設備を使っていないか。職務上知った情報を書いていないか。この3つがすべてクリアなら、条文上の問題は生じにくいという構造です。

noteの収益の形ごとに、当たる条文が変わる

noteには収益化の仕組みが複数あります。形が違うと、報酬性の評価も変わります。

無料記事だけを公開する場合

報酬が発生しないので、国家公務員法第104条や地方公務員法第38条の「報酬を得て」に当たりません。許可の話にはならないのが原則です。ただし守秘義務と信用失墜行為の禁止は変わらず効いています。匿名で書いていても、所属が推測できる書き方をした上で内部の不満を並べれば、職の信用を傷つける行為として問題になり得ます。ここは金額ではなく内容の問題です。

有料記事とメンバーシップ

継続して収入が入る形です。有料noteを1本だけ出して以後は放置、というケースと、毎月更新して月額会費を受け取るケースでは、実質がかなり違います。後者は「継続的に報酬を得て事務に従事している」と評価される可能性が高く、許可を取らずに続けるのはリスクがあります。前者も報酬が生じている事実は変わらないので、金額の大小で自己判断するのではなく、所属の服務担当に聞くのが確実です。

クリエイターサポートと広告

読者からの任意の支援や、記事内に置いた広告からの収入も報酬です。「投げ銭だから対価ではない」という説明は通りにくいです。任意であっても発信という行為に対して支払われているので、継続すれば事業性を帯びます。

単発の執筆依頼や講演

外部の媒体から依頼を受けて原稿を書き、原稿料を受け取る形は、noteでの自主的な発信とは別の扱いになることがあります。多くの職場では、単発の執筆や講演について兼業の届け出や許可の様式が用意されています。「これは副業ではないから届け出なくていい」と自分で決めないでください。様式があるかどうかを聞くだけで済む話です。

発信を副業として考える人の心理は、次のような言葉でよく表されます。

💡最後にひとこと公務員だからといって「副業できない」と諦める必要はありません!正しい手順を踏めば、noteや執筆活動で自分の経験を収益化することは十分可能です。 出典: note.com

「正しい手順を踏めば」の部分が肝心です。手順を飛ばして収益化を先に始めてしまうと、あとから遡って許可を取ることはできません。

職場の空気も、法令と同じくらい実務に影響する

条文の話と、職場で実際に何が起きるかは別の問題です。現場の感覚として、発信する公務員が増えていること自体は事実で、次のような書き方をする人もいます。

公務員として働いていると、副業という言葉を聞くだけで、どこか後ろめたいような、あるいは自分たちには関係のない遠い国の話のように感じてしまう。そんな時代が、いま明確に終わりを迎えようとしています。 出典: note.com

ただ、正直なところ、この空気の変化を「だから黙って始めても大丈夫」と読むのは危険です。地方公務員法第38条第2項が人事委員会規則で許可基準を定められる仕組みにしているのは、判断を各自治体に委ねているということです。隣の市で認められた活動が、自分の市では認められないことが普通に起こります。他人の許可事例は参考資料であって、自分の根拠にはなりません。所属の基準を確認する作業は省けません。自治体の運用の考え方は総務省が公開している地方公務員制度の資料からも追えます。

任用の形で、当たる条文が変わる

同じ公務員という言葉でも、適用される条文は任用の形で違います。ここを取り違えると、必要のない申請を出したり、必要な申請を出さないまま始めたりします。

国家公務員は、営利企業を営む側面が国家公務員法第103条、報酬を得て事業や事務に従事する側面が第104条に分かれています。地方公務員は地方公務員法第38条第1項に両方が書かれていて、許可を出すのは任命権者です。

その第38条第1項には、ただし書があります。「ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない」という一文です。ここで除かれている第22条の2第1項第2号は、1週間当たりの通常の勤務時間が常勤の職員と同一である会計年度任用職員、つまりフルタイムの会計年度任用職員です。短時間勤務の職を占める職員とフルタイムの会計年度任用職員には第38条第1項が及び、それ以外の非常勤職員はただし書の側に入ります。自分がどちらなのかは、辞令や任用の通知書に書かれた1週間の勤務時間で判別できます。ただし書に入る場合でも、秘密を守る義務と信用失墜行為の禁止、職務に専念する義務は変わらず効いています。

教員には別のルートがあります。教育公務員特例法第17条第1項は、教育に関する他の職を兼ね、または教育に関する他の事業もしくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者が認める場合には、給与を受け、または受けないでその職を兼ね、その事業や事務に従事できると定めています。同条第3項は、この場合には地方公務員法第38条第2項により人事委員会が定める許可の基準によることを要しないとしています。教育に関する内容の発信であれば、この枠組みで判断される余地があります。支障がないと認めるのは任命権者なので、自分で当てはめて始める話ではありません。

条文の文言はe-Gov法令検索で読めます。改正が入ることがあるので、申請の前に条文そのものを開いて、今の文言を確かめてから書くほうが確実です。

許可や届け出を出すときの組み立て方

申請が通るかどうかは、書き方でかなり変わります。審査する側が見るのは、だいたい次の観点です。

観点1:職務との利害関係がないか

自分が許認可や契約、指導監督に関わっている分野で発信して報酬を得ると、利害関係の疑いが立ちます。税務課にいる人が節税の有料noteを売る、建築指導の担当者が建築確認の攻略法を売る。どちらも内容が正しくても、立場が問題になります。担当分野から一歩外した題材を選ぶのが実務的です。

観点2:勤務に支障が出ないか

作業する時間帯を具体的に書きます。「勤務時間外に行う」だけでは弱いので、平日は21時以降、休日は午前中、月の作業時間は10時間程度、といった粒度で書くと審査する側が判断しやすくなります。私用の端末と回線だけを使うことも明記します。

観点3:守秘義務に触れないか

題材の選び方を先に説明しておくと通りやすくなります。職務上知り得た情報は書かない、実在の案件や個人が特定できる記述はしない、公開情報と自分の一般的な知見の範囲で書く、という方針を文章にして添えます。

観点4:報酬の見込みと透明性

年間の収入見込みを書きます。金額が小さいほど通りやすいという話ではなく、把握できていることが評価されます。あわせて、収入が見込みを大きく超えたときは改めて報告する、と書いておくと後の手続きが楽になります。

申請を出す前に読んでおくと視点が増えるのが、専門職の兼業に関する整理です。士業の側から見た兼業の考え方は税理士の副業ガイド|確定申告代行・記帳代行で稼ぐ方法【2026年版】と会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】にまとめられています。どちらも「本業と利益が衝突しない範囲をどう設計するか」という同じ問題を扱っていて、公務員の兼業申請にそのまま応用できる考え方が入っています。

観点5:許可が下りなかったときの選択肢も書いておく

申請が認められないこともあります。そのときに「では無許可で続ける」という選択をしてしまう人がいるので、先に代替案を考えておいてください。報酬を受け取らずに無料記事だけで続ける、題材を職務から完全に切り離して再申請する、収益化の時期を異動後まで延ばす。このどれかに切り替えられる前提で始めれば、判断を誤りにくくなります。申請書に「認められない場合は無償での公開に留める」と書き添えておくと、審査する側も判断しやすくなります。

なお、許可を得た後に活動の中身が変わったときは、改めて届け直すのが原則です。無料記事だけの予定だったものを有料化する、記事の販売から月額制に移す、広告を置く。どれも報酬の性質が変わるので、当初の許可の範囲を超えます。ここを黙って変えてしまうと、最初の許可があるだけに事後の説明が難しくなります。変更の報告は面倒に見えますが、活動を長く続けるための保険です。

税金の手順を先に決めておく

報酬が発生したら税の処理が必要になります。順番を間違えると、職場に知られる経路を自分で作ることになるので、ここは先に決めておきます。

給与を受けている人は、給与以外の所得の合計が20万円以下であれば確定申告書の提出を要しないという規定があります。所得税法第121条第1項第1号で、1か所から給与を受けて年末調整を受けていること、給与の金額が2,000万円以下であることが条件です。ただしこれは所得税の申告の話で、住民税は別です。20万円以下でも住民税の申告は原則として必要になります。

副業を始める場合、税務処理を軽視してはならない。副業による所得(売上-経費)が年間20万円を超える場合は確定申告が必要となる。また、20万円以下であっても住民税の申告は原則として必要である。 出典: jichitai.works

noteの売上は、継続性や規模によって雑所得か事業所得に分かれます。少額で不定期なら雑所得、継続して相当の規模で行っているなら事業所得という整理が一般的です。事業所得にする場合は開業届が必要で、所得税法第229条は、事業を開始した日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに届出書を提出すると定めています。青色申告の承認を受けたい場合は所得税法第144条で、その年の3月15日まで、その年の1月16日以後に業務を開始した場合は開始日から2か月以内に申請します。具体的な様式は国税庁で確認してください。

経費として認められるのは、発信のために直接使った費用です。取材にかかった交通費、参考書籍、画像素材の利用料、業務に使った通信費の按分。私用と兼用しているものは、使った割合を合理的に説明できる形で按分します。領収書は最初の月から残してください。

有料noteの手取りを先に計算しておく

販売価格がそのまま手元に残るわけではありません。noteでは売上金額から事務手数料が引かれ、その残りにプラットフォーム利用料が乗ります。事務手数料の料率は購読者が選んだ決済手段で決まり、クリエイター側が登録している決済手段では決まりません。クレジットカード決済は5%、PayPay決済とAmazon Pay決済は7%、PayPal決済は6.5%、noteポイントでの決済は10%、携帯キャリア決済は15%です。プラットフォーム利用料は、売上金額から事務手数料を引いた金額に対して、有料記事と有料マガジン、チップ、メンバーシップで10%、定期購読マガジンで20%です。売上金の振込を受けるときは、1回あたり270円の振込手数料がかかります。料率はnoteヘルプセンターに一覧で載っています。

手数料は決済ごとに計算され、小数点以下は切り捨てられます。月額500円のメンバーシップに30人が参加していて、全員がクレジットカードで払っている場合を計算します。1件あたりの事務手数料は25円、プラットフォーム利用料は475円の10%で47円なので、引かれるのは72円です。月の売上15,000円に対して手数料は2,160円で、残るのは12,840円です。12か月続けると売上は180,000円、手数料は25,920円になります。毎月振込を申請すると振込手数料が270円の12回で3,240円かかりますが、年2回にまとめれば540円で済みます。

ここから経費を引いた額が所得です。通信費の按分と画像素材の利用料で年30,000円を使ったとすると、所得は120,840円です。給与を1か所から受けて年末調整を受けている人なら、給与以外の所得の合計が20万円以下なので所得税の確定申告書の提出は要りません。住民税の申告は別に必要です。

参加者が60人になると景色が変わります。売上360,000円、手数料51,840円、振込手数料を年2回で540円、経費50,000円とすると、所得は257,620円です。20万円を超えるので確定申告が必要になります。所得税の速算表では、課税される所得金額が3,300,000円から6,949,000円までの帯で税率20%です(国税庁タックスアンサーNo.2260、令和8年4月1日現在法令等)。この帯にいる人の所得税は257,620円に対して約51,500円増え、これに復興特別所得税が基準所得税額の2.1%で乗り、住民税がおおむね10%で約25,700円です。手元に残るのはおよそ18万円という計算になります。どの帯に入るかは給与の額と所得控除で変わるので、自分の源泉徴収票の数字を当てはめてください。税額そのものの判断が必要なら税務署に確認します。

申請してから初報酬までを日付順に並べる

順番を先に決めておくと、迷って止まる時間が減ります。

1日目は、所属の服務担当に問い合わせます。兼業の届け出様式があるか、単発の原稿料はどの様式で扱うか、この2点です。人事課と総務課のどちらが服務を持っているかもあわせて確かめておくと、差し戻しが減ります。

2日目から3日目で題材を決めます。自分が許認可や契約、指導監督に関わっている分野は外します。担当分野から一歩離れた場所で、公開情報と一般的な知見の範囲で書ける題材を選びます。

4日目から7日目で申請書を書きます。書く項目は、作業する時間帯、月の作業時間、使う端末と回線、題材の選び方の方針、年間の収入見込み、見込みを超えたときに報告する旨の6点です。どれも数字と固有名詞で書きます。

提出から決定までの日数は所属によって違います。人事委員会規則で許可の基準が定められている自治体では、担当課の判断だけで終わらないこともあります。決定を待つ間は、報酬が発生しない無料記事だけを公開します。

許可が出たら、noteのダッシュボードで銀行口座を登録します。口座の登録が済んでいないと、売上金が立っても振込の申請ができません。有料記事やメンバーシップを公開して最初の売上が立ったら、振込の申請をします。売上金の受け取りは自動ではないので、申請を忘れると残高のまま置かれます。振込手数料は1回につき発生するため、初月から毎月申請するより、数か月分をまとめたほうが引かれる額は小さくなります。

記録は最初の月から残します。売上の明細はダッシュボードから書き出せるので、月ごとに保存しておきます。書籍や画像素材の領収書も同じ場所にまとめます。確定申告の時期に集め直そうとすると、必ず抜けが出ます。

確定申告でどの科目にどう書くか

noteの収入は、副業に係る所得として雑所得に区分されるのが原則です。国税庁は雑所得の例に原稿料を挙げていて、営利を目的とした継続的なものを業務に係る雑所得として扱っています。

申告書には収入金額と必要経費を分けて書きます。先の年間180,000円の例なら、収入金額は180,000円です。必要経費の内訳は、支払手数料として事務手数料とプラットフォーム利用料の合計25,920円、振込手数料として540円、通信費として回線費用の按分12,000円、新聞図書費として参考書籍6,600円、消耗品費として画像素材の利用料11,400円。合計56,460円なので、所得は123,540円になります。

按分の割合は、説明できる根拠を残します。月の通信量のうち執筆と調べ物に使った割合、作業した時間の割合など、数え方を先に決めて毎月同じやり方で通します。年の途中で割合を変えると、説明が崩れます。

帳簿の義務は収入の規模で変わります。前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える人は、請求書や領収書などの現金預金取引等関係書類を保存する必要があります。1,000万円を超える人が確定申告書を提出するときは、総収入金額と必要経費の内容を記載した書類の添付が必要です。300万円以下の人は、その年に収入した金額と支出した費用で計算する現金主義の特例を使えますが、申告書にその旨を記載しなければ適用されません。ここは国税庁タックスアンサーNo.1500に書かれています。

注意すべきなのは、雑所得の計算上生じた損失を他の所得と損益通算できない点です。初年度に機材や素材を先に買って赤字になっても、給与から引かれた所得税が戻ってくるわけではありません。経費を積めば節税になるという説明は、雑所得では成り立ちません。

身元が割れる経路を知っておく

匿名で発信していても、身元が推測される経路はいくつかあります。過去に公開した写真の背景、方言や言い回しの癖、書いた出来事の日付と場所の組み合わせ、勤務先で共有した話題が同じ時期に記事に出ること。特に危ないのは、自分では一般化したつもりの事例が、関係者には一目で分かってしまうケースです。

編集の現場では、書き手が特定されそうな原稿を公開前に止めることがあります。本人は個人名も社名も出していないつもりでも、記述された取引の時期と商品の組み合わせが業界内で1社しか該当しない、という形で手がかりが残ります。書き手の視点からは匿名でも、読み手の視点からは特定できることがある。この非対称を前提に、公開前に「その業界の人が読んだら誰か分かるか」を一度確かめます。

実務的な対策は3つです。第一に、題材を自分の職務から遠ざける。第二に、具体的な日時と固有名詞を外し、数を丸める。第三に、公開前に第三者の目で読み直す。読み直す相手がいないなら、書いてから3日置いて自分で読むだけでもかなり違います。

発信で積んだものが、どこで仕事に変わるか

条文の話が続いたので、最後に前向きな話をします。noteで書き続けた経験は、収益化できるかどうかとは別に、仕事としての市場価値を持ちます。

まず、文章そのものの仕事です。文章を書く職種の収入帯は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職業分類別に確認できます。公務員として制度や手続を扱ってきた人は、制度をかみ砕いて説明する原稿を書ける人材として需要があります。この領域は書き手が足りていません。

次に、経験を相談に変える形です。どんな依頼が実際に出ているかはキャリア・副業・人生相談のお仕事で業務内容の粒度で見られます。公務員から民間への転職、自治体の制度の使い方、試験の準備。自分が通ってきた道が、そのまま誰かの知りたいことになっている分野です。

法律や行政手続の知識を資格として形にするなら行政書士が近い位置にあります。試験範囲に行政法が含まれるので、行政の実務経験はそのまま学習の下地になります。資格を取った後に兼業として活動する場合も、やはり許可の手続は必要になる点は変わりません。

業務の型そのものを売る道も広がってきました。生成AIの導入が進んだ結果、現場では「どの業務をAIに寄せるかを整理できる人」が不足しています。行政の事務手続を分解した経験は、この整理の作業と直接つながります。実際の依頼内容はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で確認できます。

転職を考えているなら、発信の使い方が変わる

読者の中には、収益化より先に「外に出る準備として書いておきたい」という動機の方もいます。この場合、記事の書き方は変わります。

収益化を目的にすると、読まれる題材を追うことになります。一方で転職を目的にするなら、自分が何を考えて何をやってきたかが伝わる記事のほうが役に立ちます。読者の数は増えませんが、読んだ1人が採用側だったときの効果がまるで違います。

具体的には、次の3つを書いておくと効果があります。第一に、担当した業務の構造。制度の目的、関係する主体、手続の流れ、詰まりやすい箇所。固有名詞を外しても構造は書けます。第二に、改善しようとして試したこと。うまくいかなかったことも含めて書くと、考える過程が伝わります。第三に、行政の外に出たときに何を持っていけるかの自己評価。過大にも過小にもせず、できることとできないことを分けて書きます。

報酬を受け取らない無料記事であれば、国家公務員法第104条や地方公務員法第38条の許可の対象にはなりません。転職の準備としての発信は、この範囲で十分に成立します。もちろん守秘義務と信用失墜行為の禁止は変わらず効いているので、題材の選び方は同じ注意が必要です。

そして、書いた記事がそのまま職務経歴書の補足になります。面接で「行政の仕組みをどう説明できるか」を問われる場面で、すでに文章になっていることは強い材料です。媒体が書き手を探すときは、履歴書より先に過去に書いたものを読みます。読めば、考える順番が分かるからです。採用側の視点も、それほど違いません。

運営者として市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークと業務委託の市場を20年運営してきた立場から言えば、発信から仕事につながる人には共通点があります。書いた量ではなく、同じ読者に対して同じ場所で続けているかどうかです。100本を散らして書いた人より、30本を一つの題材で積んだ人に依頼が行きます。依頼する側は「この人に任せると楽だ」と判断できる材料を探しているので、話題が散っていると判断できないのです。

もう一つ、額面と手取りの話です。仲介の手数料が乗る取引では、依頼者が払った金額と受け手に届く金額の間に差が生まれます。差が20%あるなら、100万円の取引で20万円が中間に残ります。業務委託マッチングサービスの中には手数料0%で当事者どうしが直接やりとりする形のところもあり、その構造だと同じ予算で依頼者はより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。金額の話ではなく、同じ仕事に残る割合の話です。兼業の許可を得て活動する公務員の場合、報酬の見込み額を職場に説明する必要があるので、同じ収入を得るために引き受ける仕事の量が少ないほど、勤務への影響も小さく説明できます。手取りが厚いことは、許可を維持するうえでも実利があります。

運営者として見てきた限りでは、公務員から発信を始めた人の強みは文章力より正確さです。制度の説明で数字を間違えない、根拠を示す、断定できないところを断定しない。この習慣は民間の書き手にはなかなか身についていません。noteで書くにしても、許可を取って原稿を受けるにしても、この正確さを前面に出したほうが早く評価されます。逆に、注意を引くために表現を強めるやり方は、公務員という立場では信用失墜のリスクと隣り合わせになります。強みと弱みが同じ場所にあることを意識しておくと、題材の選び方が変わってきます。

よくある質問

Q. 公務員がnoteに無料記事を投稿するだけでも許可は必要ですか?

報酬が発生しないため、国家公務員法第104条や地方公務員法第38条の「報酬を得て」には当たらず、許可の対象にはならないのが原則です。ただし守秘義務と信用失墜行為の禁止、職務専念義務は収益に関係なく効いています。職務上知り得た情報を書かないこと、勤務時間と職場の設備を使わないことは必ず守ってください。

Q. 有料noteを1本だけ販売する場合も届け出が必要ですか?

金額が小さくても報酬が発生した事実は変わりません。継続性の有無で評価が変わるため一律には言えませんが、自分で「これは副業に当たらない」と判断するのは避けてください。所属の服務担当に、兼業の届け出様式があるか、単発の原稿料はどう扱うかを先に確認するのが確実です。

Q. 隣の自治体で認められている活動なら、自分も大丈夫ですか?

大丈夫とは言えません。地方公務員法第38条第2項は、人事委員会が規則により任命権者の許可の基準を定めることができるとしています。つまり許可の実際の基準は自治体ごとに違います。他の自治体の事例は参考にはなりますが、自分の許可の根拠にはなりません。所属の基準を直接確認してください。

Q. noteの収入がいくらから確定申告が必要ですか?

給与を1か所から受けて年末調整を受けている人は、給与以外の所得の合計が20万円以下なら所得税の確定申告書の提出を要しません(所得税法第121条第1項第1号)。ただし住民税の申告は20万円以下でも原則として必要です。経費として何を計上できるかも含め、最初の月から領収書を残しておいてください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月13日最終更新:2026年9月21日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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