公務員のダブルワークはどこまで|認められる条件と手続き 2026

丸山 桃子
丸山 桃子
公務員のダブルワークはどこまで|認められる条件と手続き 2026

この記事のポイント

  • ダブルワークを考えている公務員が最初に確かめるべき条文と許可の線引きを整理しました
  • 国家公務員法第103条・第104条と地方公務員法第38条の構造
  • 不動産や太陽光の自営の目安

ダブルワークを考えている公務員の方が最初にぶつかる壁は、「禁止されている」という言葉の射程がどこまでなのか誰も教えてくれないことです。結論から言うと、公務員のダブルワークは全面禁止ではなく、許可が要らないもの、任命権者の許可を取れば認められるもの、どう申請しても通らないものの3層に分かれています。この記事では、どの条文がどこを縛っているのか、規模の目安として使われている具体的な数字はいくらなのか、申請はどの順番で進めるのかを、条文と公表資料で確かめられる範囲だけを使って整理します。

先に断っておくと、この記事は「バレない方法」を書くものではありません。法律に禁止規定がある以上、隠して続ける前提の情報は読者を守りません。書くのは、許可の枠組みを使って堂々と続けるための手順です。実際、許可を得て活動している公務員は珍しくありませんし、所属の側も基準を公表して受け入れる方向に動いてきています。

判断の軸を先に置いておきます。公務員のダブルワークで問われるのは「稼いだかどうか」ではなく、「営利企業の経営や役員に関与していないか」「報酬を得て事業や事務に従事していないか」「職務専念義務を崩していないか」の3点です。この軸を持っているだけで、ネット上の「公務員は副業禁止」という雑な結論に振り回されなくなります。

公務員のダブルワークが原則禁止と言われる法律上の理由

民間企業の副業禁止は就業規則の話ですが、公務員は法律そのものに書かれています。ここが決定的な違いです。

国家公務員の場合、根拠は国家公務員法の2本です。第103条(私企業からの隔離)が、営利を目的とする私企業の役員や顧問などを兼ねること、自ら営利企業を営むことを制限しています。もう1本の第104条(他の事業又は事務の関与制限)は、報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員を兼ねたり、その他いかなる事業に従事し事務を行うにも、内閣総理大臣と所轄庁の長の許可が必要だと定めています。第104条の射程の広さに注目してください。ここには「営利企業以外」も入っています。NPOの理事だろうと、報酬を受け取る形で継続的に関わるなら許可の対象です。

地方公務員の場合は、地方公務員法第38条第1項が同じ役割を果たします。任命権者の許可を受けなければ、営利企業等の役員を兼ねたり、自ら営利企業を営んだり、報酬を得ていかなる事業や事務にも従事してはならない、という構造です。国と地方で条文番号は違いますが、「許可を取れば道がある」という設計は共通しています。

そしてもう1つ、兼業の許可とは別に効いてくる3つの義務があります。職務専念義務(国家公務員法第101条、地方公務員法第35条)、信用失墜行為の禁止(国家公務員法第99条、地方公務員法第33条)、守秘義務(国家公務員法第100条、地方公務員法第34条)です。許可を得たダブルワークであっても、勤務時間中に作業していれば職務専念義務の問題になり、業務で知った情報を持ち出せば守秘義務の問題になります。つまり許可は「入口の鍵」でしかなく、走り出したあとの縛りは別にかかり続けます。

法律に書かれている以上、違反したときの扱いも民間より重くなります。停職、減給、戒告といった懲戒処分が実際に出ていますし、規模が大きければ処分の重さも上がります。ここは「バレなければいい」という発想でくぐれる領域ではありません。

なぜここまで厳しいのかという理由も、押さえておくと判断が速くなります。1つ目は公正さの担保です。職務の相手になり得る企業と金銭のやりとりがあれば、判断が偏っていないかを住民や国民が確かめられなくなります。2つ目は職務専念の確保。外の仕事に体力を吸われて本業が回らなくなれば、行政サービスの受け手が損をします。3つ目は職の信用です。公務員という立場そのものが持っている信用を、私的な商売の集客に使われると困る、という発想です。この3つの理由を知っていると、審査で何を聞かれるのかが予測できるようになります。逆に言えば、この3つに触れない活動は、許可の対象であっても通る余地があるということです。

許可が要らないこと、許可で認められること、通らないこと

読者が本当に知りたいのは条文の解説ではなく線引きでしょう。実務で使われている考え方を3層に分けると、次のように整理できます。

具体例 判断の勘所
許可が要らない 預貯金の利息、株式や投資信託の売買、国債などの保有、自家消費の範囲の家庭菜園、一時的な原稿の執筆で継続性がないもの 事業の経営にも、報酬を得て継続的に事務に従事することにも当たらない
許可を取れば認められうる 小規模な不動産賃貸、規模の小さい太陽光発電、家業の手伝い、講師や講演、審査員、専門知識を活かした活動、地域活動への参加 規模、職務との関係、勤務時間への影響、職の信用への影響を審査される
通らない 本業と利害関係のある企業での勤務、許認可や補助金の相手先での就労、勤務時間と重なるアルバイト、風俗営業など職の信用を損なうもの 許可の枠組みでは救えない類型

誤解が多いのは2つです。1つ目は「株式投資は副業ではないから、暗号資産やFXも自由」という発想。資産運用そのものは事業の経営ではありませんが、取引の規模や態様が事業と見られる水準まで大きくなれば、話は変わります。2つ目は「土日だけなら勤務時間外だから大丈夫」という発想。勤務時間外であることは条件の1つにすぎず、報酬を得て事業に従事している事実が残ります。時間の問題と許可の問題は別立てです。

比較のために民間の副業と並べると違いが分かりやすくなります。民間は「就業規則で禁止されていないか」「競業に当たらないか」の2点が主な関門です。公務員は、そこに「法律上の許可が必要か」「職の信用を損なわないか」が加わります。門が2つ多いと考えてください。

不動産や太陽光の自営の目安として使われている数字

ダブルワークの中でも相談が多いのが不動産賃貸です。ここは珍しく、規模の目安が数字で示されています。根拠として参照されているのは「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」で、自営に当たるかどうかの線として次のような規模が挙げられています。

独立家屋の賃貸は5棟以上、アパートなど独立家屋以外の建物は独立的に区画された部分が10室以上、土地の賃貸は賃貸契約の件数が10件以上。この水準を超えると自営として扱われ、許可の対象になります。さらに賃料収入の額にも線があり、実務ではこの金額のほうが先に効いてくることが多いです。

所有する不動産からの賃料収入がどれくらいになるかは、「賃貸予定の不動産の賃料収入額(月額)×室数×12ヶ月分」で計算しておきましょう。実際に賃料収入が500万円を超えてしまい、減給や懲戒処分を受けたケースも発生していますので、家賃設定を含めた経営プランには細心の注意を払ってください。 出典: relo-fudosan.jp

500万円という線を「そんなに稼がないから関係ない」と流す人が多いのですが、相続で物件が転がり込んでくると一気に届きます。親の家とアパート1棟を相続した時点で、本人の意思とは無関係に自営の水準に乗ってしまう。だから公務員の不動産は、買うときよりも相続したときが危ないのです。相続のように本人が選べない事情で規模を超える場合は、申請して許可を得る道が用意されています。黙って放置するのが最悪の選択です。

処分が実際に出ていることも押さえておいてください。

実際に、2019年に仙台市で年600万円の賃料収入が発覚した仙台市職員が減給処分に、2013年には妻の経営する不動産投資会社の役員となって約7,000万円の年収を得ていた宝塚市の職員が停職6ヶ月と降格処分となっています。 出典: relo-fudosan.jp

配偶者名義にすれば回避できる、という話も出回っていますが、名義を借りただけで実質的に本人が経営していれば、実態で判断されます。役員に就いていれば名義の問題ではなく、その事実だけで兼業です。太陽光発電も同様に、出力の規模で自営に当たるかどうかが分かれます。数字は所属によって運用が異なるので、自分の所属の基準を人事課に確認するのが唯一の正解です。

解禁の動きはどこまで進んでいるか

「公務員の副業解禁」という言葉は、実際よりも広い意味で使われています。正確に言えば、禁止が解けたのではなく、許可の基準が公表されて見通しが良くなった、という変化です。

2017年前後から、職員が地域のNPOやスポーツ団体、文化活動などで報酬を受け取って活動できる基準を公表する自治体が出てきました。国のレベルでも、公益的活動のための兼業について許可の考え方が整理され、職員が判断しやすいように示されるようになっています。地域に人手が足りない、専門知識を持つ人が公務員側に偏っている、という現実に制度が追いついてきた形です。

ただし、この流れが向いているのは「地域貢献」「公益的活動」の方向であって、収入を増やす方向のダブルワークが自由になったわけではありません。ここを混同したまま申請すると、まず通りません。申請書に書くべきは、なぜその活動が職の信用を損なわないか、勤務にどう影響しないかであって、いくら稼げるかではありません。

一方で、自分の知識や技能を活かす活動は、以前より通りやすい領域になってきています。たとえば情報システムに詳しい職員が地域の団体のIT相談に応じる、統計や文章の技能を活かして講師を務めるといったものです。この方向で考えるなら、自分の技能がどんな仕事として世の中で扱われているかを先に知っておくと、申請書の書き方も具体的になります。技能の需要を眺めるなら、企業がAIをどう業務に取り込もうとしているかを整理したAIコンサル・業務活用支援のお仕事や、文章を仕事にする人の職域を扱った著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります。どちらも「その技能に世間がいくら払っているか」を掴むための材料です。

在宅でできる仕事のうち、どれが引っかかりやすいか

在宅のダブルワークは勤務先にも近所にも見えにくいため、公務員の方の関心が集まります。ただ見えにくいことと認められることは違います。類型ごとに整理します。

単発の原稿執筆や講演は、継続性がなく報酬も一時的であれば、事業への従事とまでは見ない運用が一般的です。それでも所属の基準で届け出を求めている場合があります。逆に、月々決まった本数を書く契約、毎週の運用代行、継続的なコンサルティングのように反復するものは、報酬を得て事業に従事している形になり、許可の対象と考えるのが安全です。

物を作って売る活動は、規模で判断が変わります。趣味の延長でフリーマーケットに数点出す程度と、在庫を仕入れてネットショップを回すのは、外形がまるで違います。後者は明確に営利企業の経営です。

会社と雇用契約を結ぶアルバイトは、勤務時間外であっても許可の対象です。労働時間は事業場が異なっても通算されるという労働基準法第38条第1項の規定もあり、本業の勤務時間と合わせた総量が問題になります。

ここで1つ、現場で見た話を書いておきます。私は自治体の観光PRでSNS運用を請け負ったことがあるのですが、打ち合わせのあとに担当職員の方から「自分も同じ仕事を受けたい」と相談されました。その方は「業務で覚えたことだから問題ないはず」と考えていたのです。これは逆で、業務で得た知見や人脈をそのまま外の仕事に使うと、守秘義務と職の信用の両方に触れます。技能を活かすことと、業務で得た情報を持ち出すことは、線がはっきり分かれています。この線を勘違いしている方が、私の経験ではいちばん多いです。

技能の棚卸しをするなら、資格の形で証明できるものを先に押さえるのが遠回りに見えて速い道です。文書の型を整える力は事務職の基礎として評価されやすく、ビジネス文書検定のような資格はその証明になります。ネットワークの知識を活かすならCCNA(シスコ技術者認定)が業界共通の目安として通用します。

職種によって別の条文が効く場合がある

ここまで国家公務員法と地方公務員法を軸に説明してきましたが、職種によっては別の法律が上に乗ります。自分に当たる条文を間違えると、調べた内容ごと無駄になるので確かめておいてください。

教員の場合、教育公務員特例法第17条という独立した規定があります。教育に関する他の職を兼ねること、教育に関する他の事業や事務に従事することについて、本務の遂行に支障がないと任命権者が認める場合には、給与を受けて従事できると書かれています。さらに同条第3項では、この場合に人事委員会が定める許可の基準によることを要しないとされています。つまり教員が教育の領域で兼職する場面は、一般の地方公務員より通りやすい設計になっているわけです。ただし「教育に関する」という限定が付いています。塾の講師や教材の執筆は教育の領域に入り得ますが、まったく関係のない業種のアルバイトはこの条文では救えません。なお同条は非常勤の講師には適用されません。

会計年度任用職員のように非常勤で働いている方は、地方公務員法第38条第1項のただし書で扱いが分かれます。ただし書では非常勤職員が除かれており、短時間勤務の職を占める職員などはその例外から外れる形で整理されています。要するに、パートタイムの会計年度任用職員は営利企業への従事の許可を要しない取扱いになる一方、フルタイムの職員は一般の職員と同じ枠に入ります。ここは所属の人事担当が持っている取扱いが最も確実なので、自分の任用形態を示して確認してください。

警察官、消防職員、自衛隊員のように身分上の規律が厚い職種では、兼業の許可以前に所属の内部規程が細かく決まっている場合があります。また自衛隊員については、自衛隊法第63条が兼業の承認について定めていて、国家公務員法の枠とは別建てです。同じ「公務員」という言葉でくくられていても、適用される条文は4種類以上に分かれています。まず自分の足元を確定させることが、遠回りに見えて最短です。

申請から許可までのステップと、審査で見られるポイント

許可の手続きは所属ごとに書式が違いますが、流れはおおむね共通です。ステップで並べます。

1段階は、人事課または所属長への事前相談です。書式を取りに行く前に相談してください。基準に照らして無理なものは、この段階で分かります。第2段階は申請書の作成です。活動の内容、相手先、期間、従事する日と時間帯、報酬の有無と支払形態、本業との関係性を書きます。第3段階は審査です。職務専念義務に支障がないか、職の信用を損なわないか、所属の職務と利害関係がないかを見られます。第4段階が許可、または不許可の通知です。許可には期間が付き、更新のたびに同じ審査を受けます。

審査で落ちやすいのは、活動内容が抽象的すぎる申請です。「地域の活性化に協力する」では判断できません。誰に、何を、いつ、どれだけ提供するのかを具体的に書いた申請のほうが、内容が地味でも通ります。もう1つの落とし穴が相手先です。所属が許認可、補助金、入札、指導監督のいずれかで関わっている相手だと、内容の善し悪しに関係なく利害関係で止まります。申請前に相手先の属性を確かめておいてください。

期間も見ておく価値があります。所属によりますが、申請から結論まで数週間かかることは珍しくありません。相手から声をかけられてから申請すると、間に合わずに断ることになります。順番としては、話を受ける前に「許可が必要なので手続きに時間がかかる」と伝えておくのが実務的です。相手の側も、公務員に依頼するときに手続きが必要だと知らない場合がほとんどです。先に伝えておけば、待つ前提でスケジュールを組んでもらえます。

許可が出たあとの運用にも、押さえるべき点が3つあります。第1に、許可の内容から外れた作業に広げないこと。「資料作成」で許可を得たのに、気づけば営業の同行までしていた、という広がり方が実際に起きます。内容が変わるなら再度の申請です。第2に、期間の更新を忘れないこと。許可には期限が付くので、切れたまま続けていれば無許可の状態と同じです。第3に、記録を残すこと。従事した日、時間、作業内容、受け取った報酬を自分で控えておけば、税の申告にも、更新の申請にもそのまま使えます。あとから思い出して書く作業がいちばん苦しいので、その日のうちに1行だけ書く習慣にしてしまうのが楽です。

許可が下りるまでの期間に、費用をかけずにできる準備

申請の結論が出るまでの数週間は、待っているだけだと何も進みません。この期間は、報酬が発生しない準備に充てるのが合理的です。報酬を得ていなければ兼業の許可の対象にはならないので、この線の内側でできることは意外に多いです。

1つ目は、実物を作っておくことです。文章なら書いたものを3本、資料作成ならサンプルを2点。依頼する側は経歴よりも成果物を見ます。無料の道具だけで十分に作れますし、公開しなくても構いません。手元に見せられるものがある状態と、口で説明するだけの状態では、話の進み方がまるで違います。

2つ目は、自分の作業時間を実測しておくことです。「土日に4時間使える」と見込んでいた人が、実際に記録を取ると2時間も確保できていない、というのはよくあります。許可の申請書には従事する日と時間帯を書きますから、実測した数字のほうが説明として通ります。無理な見込みで申請して、あとから守れないほうが問題になります。

3つ目は、条文と所属の基準を読んでおくことです。地味ですが、ここを読んだ人と読んでいない人の差は、申請書の1枚目で分かります。基準の言葉をそのまま使って書かれた申請は、審査する側の確認作業が減るので、話が早く進みます。

4つ目は、報酬を受け取らない形の活動です。地域の団体の手伝いや勉強会の運営など、報酬がない活動は兼業の許可の枠外です。ただし勤務時間中に関わればやはり職務専念義務の話になりますし、活動先が所属と利害関係を持っている場合は、無償でも慎重になるべきです。無償だから何でも自由、という話ではありません。

住民税と確定申告で職場に伝わる仕組み

「どうやって職場に知られるのか」は多くの人が気にする点なので、仕組みとして説明します。感情論ではなく経路の話です。

いちばん多い経路は住民税です。給与から住民税を天引きする特別徴収では、市区町村が勤務先に税額の通知を送ります。ここに載る税額は、その人の全所得をもとに計算されています。給与以外の所得が増えれば、給与額から逆算される想定より税額が大きくなり、経理の担当者が気づく余地が生まれます。

2つ目の経路は本人の申告漏れです。給与以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要になります。ここで気をつけたいのが、20万円以下なら何もしなくてよいという誤解です。所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は別に必要になります。所得税と住民税は別の制度なので、ひとまとめに覚えると足元をすくわれます。制度の一次情報は国税庁で確認できます。

3つ目は人の口とSNSです。実名でなくても、投稿の内容、写真の背景、更新の時間帯から特定されることがあります。報酬を得ていない活動でも、勤務時間中に更新した痕跡が残れば職務専念義務の話になります。

ただ、経路を知る目的は隠すためではありません。許可を取っていれば、税額が上がっても説明できる状態でいられます。隠して見つかった場合と、許可を得て堂々と続けている場合では、同じ活動でも結末がまったく違います。手続きは面倒ですが、面倒の対価として「説明できる状態」が手に入ります。

市場を長く見てきた立場からの観察

在宅で働く人と、その人に仕事を頼む側の市場を20年見てきた運営者の立場から、公務員の方のダブルワークについて2つ書いておきます。

1つ目。公務員の方が外の仕事で強いのは、専門知識よりも「手続きを正確に進める力」です。期限を守る、書式を揃える、根拠を示して説明する。この3つができる人は、依頼する側から見て極端に扱いやすい。長く続く関係になっているのは、派手な成果を出した人ではなく、この人に任せると自分の仕事が減ると思われている人です。許可の枠内でできることは限られますが、その限られた範囲でも信頼は積み上がります。

2つ目。仲介の手数料が乗らない直接のやりとりでは、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側は同じ仕事で手元に残る額が厚くなります。手数料0%の強みは「たくさん稼げる」という話ではなく、同じ働きに対して手元の残り方が違うという質の話です。公務員の方の場合、許可の範囲で受けられる仕事の量そのものが限られます。だからこそ、限られた本数の1本あたりで手元に残る額が厚いかどうかは、民間の方より切実に効いてきます。

もう1つ、運営者として見てきた限りでは、活動を長く続けられた方に共通しているのは、始める前に所属の基準を読み込んでいたことでした。逆に途中で止まった方は、走り出してから確認しています。順番が結果を分けます。

判断材料の集め方と、次に確かめること

ここまでの内容を実際の行動に落とすと、確かめる順番は次のようになります。

1に、自分が国家公務員か地方公務員か、どの条文が適用されるかを確定させること。第2に、所属の兼業許可の基準と書式を取り寄せること。公表していない所属でも、人事課に聞けば手続きは教えてもらえます。第3に、やりたい活動が「許可不要」「許可で可能」「不可」のどこに落ちるかを、相手先の属性まで含めて確かめること。第4に、税の扱いを先に把握しておくこと。この順番を守るだけで、後戻りがほぼなくなります。

どんな仕事が世の中で発注されているかを知ることも、判断材料になります。自分の技能がどの領域で必要とされているかを掴んでおくと、許可を申請するときの説明が具体的になるからです。分野の広がりを見るなら、データ活用やセキュリティまで含めた案件の幅を整理したAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、そして技能に対する報酬の水準を確かめるソフトウェア作成者の年収・単価相場が手掛かりになります。相場を知る目的は値段交渉ではなく、自分が引き受けようとしている作業がどれくらいの重さを持つのかを測ることです。相場の半分以下の条件で受けてしまう人は、たいてい相場を知らないまま「経験のためだから」と引き受けています。

報酬をめぐるトラブルの備えも、活動を始める前に目を通しておくと安心です。契約書に何を書いておくべきかを整理したフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストは、許可を得て活動する場合にも役立ちます。専門職のダブルワークの考え方を知りたい方は、資格職の事情をまとめた会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】が参考になります。

最後に注意点を1つ。ネット上には「公務員でもバレない副業」という趣旨の記事が大量にありますが、そこに書かれている手法の多くは、条文の構造を無視しています。判断の根拠にすべきなのは、国家公務員法第103条と第104条、地方公務員法第38条、そして自分の所属が示している基準です。この3つを手元に置いて読み直せば、何が言い過ぎで何が実務なのか、自分で見分けられるようになります。

よくある質問

Q. 公務員がダブルワークをするには必ず許可が必要ですか?

報酬を得て事業や事務に従事する場合は許可が必要です。国家公務員は国家公務員法第103条と第104条、地方公務員は地方公務員法第38条第1項が根拠です。一方で預貯金の利息や株式などの資産運用、自家消費の範囲の家庭菜園は事業の経営には当たらないため、許可の対象外として扱われます。

Q. 不動産の賃貸はどこから許可が必要になりますか?

人事院規則14-8の運用では、独立家屋5棟以上、アパートなど10室以上、土地の賃貸契約10件以上が自営の目安として示されています。賃料収入が年500万円以上になる場合も同様です。相続で規模を超えることがあるため、超える見込みが立った時点で人事課に相談し、申請するのが安全です。

Q. 副業の所得が年20万円以下なら何も申告しなくてよいですか?

所得税の確定申告は不要になる場合がありますが、住民税の申告は別に必要です。所得税と住民税は別の制度なので、20万円以下だから何もしなくてよいという理解は誤りです。住民税の税額通知は勤務先に届くため、申告を怠ると後から説明が難しくなります。

Q. 許可の申請から結論が出るまでどれくらいかかりますか?

所属によりますが、数週間かかることは珍しくありません。相手先から声をかけられてから申請すると間に合わないため、活動の話が出た段階で人事課に相談し、手続きに時間が必要なことを相手にも伝えておくのが現実的な進め方です。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月10日最終更新:2026年9月20日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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