カンバンボードとは|タスクを列で動かす管理のしかたと向いているチーム

杉山 リュウ
杉山 リュウ
カンバンボードとは|タスクを列で動かす管理のしかたと向いているチーム

この記事のポイント

  • ✓仕事をカードにして「未着手」「進行中」「完了」などの列の間で動かしながら進み具合を見える形にする管理のしかたです
  • ✓同時に抱える仕事の上限(WIP制限)
  • ✓向いているチームと向かないチーム

チームの仕事が増えて、誰が何をしているのか、どこで止まっているのかが見えなくなってきた。そんなときに名前を聞くのが「カンバンボード」です。カンバンボードとは、仕事を1枚ずつのカードにして、「未着手」「進行中」「完了」といった列の間で動かしながら、進み具合を見える形にする管理のしかたのことです。

この記事では、カンバンボードの基本の仕組みから、列の決め方、カードの書き方、同時に抱える仕事の数を絞る「WIP制限」の考え方、向いているチームと向かないチームの違いまでを順に整理します。最後に、無料で始められるツールを選ぶときに比べたい点もご紹介します。

カンバンボードの基本の仕組み

カンバンボードは、とても単純な仕組みでできています。ホワイトボードに縦の線を引いて列を作り、仕事を書いた付箋を貼って、進み具合に合わせて左から右へ動かしていく。これがカンバンボードの原型です。

一番よく使われる列の組み合わせは、次の3つです。

列 入るカード
未着手(To Do) これから取りかかる仕事
進行中(Doing) いま手を動かしている仕事
完了(Done) 終わった仕事

仕事を始めたらカードを「進行中」に動かし、終わったら「完了」に動かします。たったこれだけで、ボードを見れば、いま何が進んでいて、何が待っていて、何が終わったのかが一目で分かります。

アジャイル開発の解説で知られるアトラシアンは、カンバンボードを構成する要素として、見えるシグナル(カード)、列、進行中の作業の上限、注力ポイント、達成ポイントの5つを挙げています。注力ポイントは仕事に取りかかる地点、達成ポイントは仕事が相手に引き渡される地点のことです。カードが注力ポイントから達成ポイントまで移動するのにかかる時間を「リードタイム」と呼び、これを短くしていくことが、カンバンで仕事を改善するときの目標になります。

カンバンボードには、ホワイトボードと付箋を使う物理的なボードと、Webのツールで作るデジタルのボードがあります。同じ部屋で働くチームなら物理的なボードでも十分ですが、在宅勤務や、社外のメンバーと一緒に仕事をする場合は、どこからでも同じボードを見られるデジタルのボードが便利です。

カンバンボードのよいところは、特別な訓練がいらないことです。カードを書く、列を動かす、という操作は、初めての人でもすぐに覚えられます。そのため、開発チームだけでなく、営業、人事、経理、編集、制作など、さまざまな仕事で使われています。

カンバンボードで解決できること

カンバンボードを使うと、チームの仕事のどんな困りごとが解決するのかを整理しておきます。導入する目的がはっきりしていると、ボードの作り方にも迷いません。

1つ目は、仕事の全体像が見えることです。表計算のタスク一覧やメールのやりとりでは、仕事が何件あって、それぞれどの段階にあるのかを把握するのに時間がかかります。カンバンボードなら、列ごとのカードの数を見るだけで、どこに仕事がたまっているかが分かります。

2つ目は、止まっている仕事に気づけることです。「進行中」の列に何日も同じカードが残っていれば、何かの理由で止まっているサインです。確認待ち、資料待ち、担当者の手が空かないなど、原因を早めに話し合えます。

3つ目は、「あの件どうなりました?」という確認が減ることです。進み具合がボードで分かるので、担当者にいちいち聞く必要がなくなります。聞く側も聞かれる側も、本来の仕事に時間を使えます。

4つ目は、仕事の偏りが分かることです。カードに担当者の名前を付けておけば、誰に仕事が集中しているかが一目で分かります。1人が「進行中」のカードを5枚抱えている一方で、別の人は1枚だけ、という状態に気づけば、仕事を割り振り直せます。

5つ目は、終わった仕事が記録として残ることです。「完了」の列にたまったカードは、そのまま1週間や1か月の仕事の記録になります。振り返りの会議で、何に時間がかかったのかを話し合う材料にもなります。

逆に言えば、カンバンボードは、作っただけでは何も解決しません。チーム全員がカードを動かし、ボードを見る習慣があって初めて役に立ちます。この点は、後の節で触れる「定着させるコツ」につながります。

列の決め方

カンバンボードを作るときに最初に悩むのが、どんな列を作るかです。基本の3列から始め、仕事の流れに合わせて少しずつ増やしていくのが失敗しにくい進め方です。

仕事の種類ごとの列の例を挙げます。

仕事の種類 列の例
記事の制作 企画、執筆中、編集中、確認待ち、公開済み
Webサイトの制作 要件確認、デザイン、実装、テスト、公開
問い合わせの対応 受付、対応中、回答待ち、完了
採用 応募、書類選考、面接、内定、入社
経理 受領、入力、承認待ち、支払済み

列を作るときのコツは、3つあります。

1つ目は、「待ち」の列を分けることです。たとえば記事の制作なら、「編集中」と「確認待ち」を分けておくと、自分たちの手で進められる仕事と、相手の返事を待っている仕事を区別できます。「進行中」の列がふくらんでいるように見えて、実は半分が相手待ちだった、という状況を見える形にできます。

2つ目は、列を増やしすぎないことです。列が10を超えると、カードをどこに動かせばよいのか迷う場面が増え、ボードを更新する手間がかかります。最初は5列前後に抑え、使っていくうちに必要な列だけを加えます。

3つ目は、列の意味をチームで揃えることです。「完了」の列に入れてよいのは、納品が済んだときなのか、作業が終わった時点なのか。こうした定義が人によって違うと、ボードの情報が当てにならなくなります。列の名前の横に「ここに入れる条件」を一言書いておくと、迷いが減ります。

もう1つ、よく使われる工夫として「スイムレーン」があります。スイムレーンとは、ボードを横に区切って、担当者や案件、優先度ごとに段を分ける方法のことです。プールのコースのように横の段ができるので、この名前で呼ばれます。複数の案件を同じボードで管理する場合に便利です。

カードの書き方

列が決まったら、次はカードです。カード1枚が仕事1件を表します。カードの書き方ひとつで、ボードの使いやすさは大きく変わります。

カードに書いておきたい項目は、次のとおりです。

項目 書く内容の例
タイトル 「A社 LPの見出し案を3つ出す」のように動作で書く
担当者 誰がこの仕事を持っているか
期限 いつまでに終えるか
説明 完了の条件、参考資料、決まったこと
ラベル 案件名、優先度、仕事の種類

タイトルは、動作で書くのがコツです。「A社 LP」とだけ書くと、何をすればこのカードが終わるのかが分かりません。「A社 LPの見出し案を3つ出す」のように、何をしたら完了かが分かる書き方にします。

カードの大きさも大切です。1枚のカードが、終わるまでに何週間もかかる大きな仕事だと、いつまでも「進行中」に残り続け、進み具合が見えません。目安として、1日から数日で終わる大きさに分けると、カードが列の間を動くようになり、ボードが生きてきます。大きな仕事は、作業ごとに複数のカードに分けるか、カードの中にチェックリストを作って、小さな作業を順に消していきます。

カードの説明欄には、完了の条件を書いておきます。「見出し案3つをクライアントに送り、どれを採用するかの返事をもらう」のように書いておけば、担当者が変わっても、何をすれば終わるのかが伝わります。

コメント欄も活用しましょう。カードに関するやりとりを、メールやチャットではなくカードのコメントに残しておくと、あとからそのカードを開いた人が経緯を追えます。「あの件、どこで話したっけ」と探す手間がなくなります。

最初のボードを作る手順

ここまでの内容を踏まえて、チームで最初のカンバンボードを作る手順を整理します。ツールを使う場合も、ホワイトボードで始める場合も、流れは同じです。

  1. 対象にする仕事を1つに絞ります。「部署のすべての仕事」ではなく、「記事の制作」「問い合わせの対応」のように、流れが似ている仕事から始めます
  2. いま抱えている仕事を、すべてカードに書き出します。1枚に1件、動作で書くのが原則です
  3. 列を決めます。最初は「未着手」「進行中」「完了」の3列に、必要なら「確認待ち」を加えた4列程度にします
  4. 書き出したカードを、いまの状態に合わせて列に並べます
  5. 「進行中」の列に、仮のWIP制限を決めます。チームの人数と同じ数が目安です
  6. ボードを見る時間と、カードを動かすルールを決めます。「朝の打ち合わせで全員で見る」「自分のカードは自分で動かす」の2つだけで十分です

手順2の書き出しは、思った以上に時間がかかります。頭の中やメールの中に散らばっていた仕事を集めると、予想より多くのカードができ、「進行中」が多すぎることに気づくはずです。この気づき自体が、カンバンボードを作る最初の成果です。

手順4で「進行中」の列がWIP制限を大きく超えてしまう場合は、いったん止めてもよい仕事を「未着手」に戻します。すべてを同時に進めようとしていたことが、仕事が終わらない原因になっていることがよくあります。

最初の2週間は、試しの期間と考えます。使ってみて、列が多すぎる、カードが大きすぎる、といった点が見えてきたら、その場で直していきます。最初から完璧なボードを作ろうとしないことが、長く続けるための近道です。

WIP制限で同時に抱える仕事を絞る

カンバンボードを使いこなすうえで、もっとも大切な考え方がWIP制限です。WIPとは「Work In Progress」の略で、進行中の仕事のことです。WIP制限とは、1つの列に同時に入れてよいカードの数の上限を決めることを指します。

アトラシアンは、WIP制限について次のように説明しています。

WIP の上限とは同時に 1 列に配置可能なカードの最大数を指します。WIP の上限が 3 の場合、その列で 4 枚以上のカードを配置することはできません。 出典: atlassian.com

同じページでは、上限に達した列があれば、新しいカードを入れる前に、チームでカードを先に進めることに力を合わせる必要があると続けています。WIPに上限を設けることで、仕事の流れの詰まりがはっきりし、仕事を抱え込みすぎていることにも早く気づける、という説明です。

なぜ同時に抱える仕事を絞るとよいのでしょうか。理由は、仕事の切り替えにかかる時間です。5つの仕事を同時に少しずつ進めると、どれも終わらないまま時間だけが過ぎ、切り替えるたびに「どこまでやったか」を思い出す時間がかかります。2つに絞って1つずつ終わらせるほうが、結果として早く多くの仕事が完了します。

WIP制限の数は、最初は「チームの人数と同じ」か「人数より1つ多い」くらいから始めるのが目安です。3人のチームなら、「進行中」の上限を3か4にします。使ってみて、カードがたまる列、空く列を見ながら調整します。

WIP制限を決めたら、「上限に達したら新しい仕事を始めない」というルールを守ることが大切です。上限に達しているのに新しいカードを入れてしまうと、制限の意味がなくなります。上限に達したときは、新しい仕事に手を付ける前に、止まっているカードを動かすために何ができるかを話し合います。ほかの人の確認を手伝う、相手に返事を催促する、といった行動につながるはずです。

ツールによっては、列にWIP制限を設定でき、上限を超えると色が変わって知らせてくれるものもあります。ツールに機能がなくても、列の名前に「進行中(上限3)」と書いておくだけで、意識は変わります。

カンバンとスクラムの違い

カンバンボードを調べていると、「スクラム」という言葉もよく目にします。スクラムとは、ソフトウェア開発などで使われる進め方の1つで、1週間から数週間の決まった期間(スプリント)を区切って、その期間に終える仕事を決めて進める方法のことです。どちらもボードを使うので混同されがちですが、考え方には違いがあります。

アトラシアンの解説をもとに、主な違いを整理します。

項目 カンバン スクラム
期間の区切り なく、仕事が続けて流れる スプリントごとに開始日と終了日がある
ボードの扱い 続けて使い続ける スプリントが終わるたびにリセットする
役割 決まった役割はない プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームが決まっている
仕事の入れ替え 必要に応じて優先順位を変えられる スプリント中の仕事は原則として固定

問い合わせ対応や保守のように、仕事がいつ来るか分からないチームには、期間で区切らないカンバンが合います。新しい機能の開発のように、まとまった単位で計画して進めたいチームには、スクラムが合うことがあります。

同じ解説では、カンバンは「今行っていることから始める」方式だと説明しています。いまのやり方や役割を変えずに、仕事の見える化から始められるのが、カンバンの取り入れやすさです。スクラムのように新しい役割や会議の仕組みを整える必要がないため、小さなチームや、開発以外の部署でも始めやすいと言えます。

向いているチームと向かないチーム

カンバンボードはさまざまな仕事に使えますが、すべての仕事に向いているわけではありません。向いているチームと、ほかの方法と組み合わせたほうがよいチームの違いを整理します。

カンバンボードが特に向いているのは、次のようなチームです。

・問い合わせ対応や保守のように、仕事が次々に入ってくるチーム ・記事の制作や採用のように、決まった段階を順に進む仕事が多いチーム ・メンバーが在宅や別の拠点で働き、進み具合を顔を合わせずに共有したいチーム ・業務委託のメンバーなど、社外の人と一緒に仕事を進めるチーム

一方で、カンバンボードだけでは管理しにくい仕事もあります。

1つ目は、締め切りと順番が細かく決まった大きなプロジェクトです。建物の工事やシステムの入れ替えのように、「この作業が終わらないと次が始められない」という関係が多い仕事では、作業の期間を横棒で並べるガントチャートのほうが、遅れの影響を見通しやすくなります。カンバンボードは「いまどこにあるか」を見るのが得意で、「いつ終わるか」を見通すのは得意ではありません。

2つ目は、仕事の数がごく少ないチームです。1人で2、3件の仕事を回しているだけなら、紙のメモで十分なこともあります。ボードを更新する手間のほうが大きくなるなら、無理に使う必要はありません。

3つ目は、メンバーがボードを見る習慣のないチームです。カードを動かす人が一部だけだと、ボードの情報が古くなり、かえって混乱を招きます。

実際には、カンバンボードとガントチャートやカレンダーを組み合わせて使うチームが多くあります。日々の仕事の流れはカンバンボードで、締め切りの重なりはガントチャートで、と見方を使い分けると、それぞれの弱点を補えます。

カンバンボードを定着させるコツ

カンバンボードは、作るよりも続けるほうが難しい道具です。ツールを入れたものの、1か月後には誰も更新しなくなっていた、という話は珍しくありません。定着させるためのコツを5つ挙げます。

1つ目は、毎日決まった時間にボードを見ることです。朝の短い打ち合わせで、ボードを全員で見ながら「昨日進めたカード」「今日進めるカード」「止まっているカード」を確かめます。15分程度で十分です。ボードを見る時間が決まっていると、更新する理由ができます。

2つ目は、カードを動かすのは担当者本人にすることです。管理する人がまとめて動かす運用にすると、担当者はボードを見なくなります。自分のカードは自分で動かす、というルールにすると、ボードが自分の仕事の道具になります。

3つ目は、最初からルールを作り込みすぎないことです。列の数、ラベルの種類、カードの書き方を最初に細かく決めすぎると、覚えることが増えて続きません。基本の3列とカードのタイトルだけで始め、困ったことが出てきたら、そのつどルールを加えます。

4つ目は、終わったカードを定期的に片付けることです。「完了」の列にカードがたまり続けると、ボードが見づらくなります。週に1回、完了したカードをアーカイブして、ボードをすっきりさせておきます。

5つ目は、振り返りに使うことです。月に1回程度、完了したカードを見返して、時間がかかった仕事、何度も止まった仕事を話し合います。カンバンボードは、仕事のやり方そのものを改善するための材料にもなります。

この5つに共通するのは、ボードを「報告のための道具」ではなく「自分たちが次に何をするかを決めるための道具」として扱うことです。ボードを見れば次にやることが分かる、という状態になれば、誰に言われなくても更新されるようになります。反対に、更新しても誰も見ない状態が続くと、ボードは数週間で使われなくなります。定着しないと感じたら、まず毎日見る時間が確保されているかを確かめてください。

よくある失敗と立て直し方

カンバンボードを使い始めたチームが陥りやすい失敗と、その立て直し方を整理します。

1つ目は、「進行中」の列があふれることです。新しい仕事が来るたびに手を付けてしまい、終わらないカードが「進行中」に積み上がります。WIP制限を決めていても、守られていないことが原因です。立て直すには、まず「進行中」のカードを1枚ずつ確かめ、本当にいま手を動かしているものだけを残します。止まっているものは、止まっている理由をカードに書いたうえで、「保留」の列を作って移します。

2つ目は、カードが古いまま放置されることです。終わった仕事が「進行中」に残っていたり、取りやめになった仕事が「未着手」に残っていたりすると、ボードの情報が信用されなくなります。週に1回、ボード全体を見直す時間を決め、動きのないカードを整理します。

3つ目は、カードが大きすぎることです。「サイトのリニューアル」のような大きなカードは、何週間も「進行中」から動かず、進み具合が見えません。作業ごとに分けて、1日から数日で動くカードにします。

4つ目は、ボードが複数に分かれすぎることです。案件ごと、人ごとにボードを作りすぎると、どこを見ればよいのかが分からなくなります。似た流れの仕事は1枚のボードにまとめ、ラベルやスイムレーンで分けるほうが見通しがよくなります。

5つ目は、ボードを見るのが管理する人だけになることです。管理する人だけがボードを見て、メンバーには口頭で指示を出す運用になると、ボードは報告書のための道具になってしまいます。メンバー自身が次に何をするかをボードで決められるようにすることが、カンバンボードの本来の使い方です。

どの失敗も、ボードの作り方より、使い方のルールが原因です。問題に気づいたら、ボードを作り直す前に、ルールを1つだけ変えて様子を見ると、立て直しがうまくいきます。

社外のメンバーとボードを共有するときの注意

業務委託のメンバーや取引先とカンバンボードを共有すると、進み具合のやりとりが大きく減ります。一方で、社外の人と共有するときには、気をつけたい点もあります。

1つ目は、見せる範囲です。社内向けの仕事と社外向けの仕事を同じボードで管理していると、取引先に見せるべきでないカードまで見えてしまいます。社外の人と共有するボードは、その案件だけのボードとして分けて作ります。

2つ目は、カードに書く内容です。カードの説明欄やコメントには、金額や社内の事情を書かないようにします。共有する前提で書くと決めておけば、うっかり見せてしまう心配が減ります。

3つ目は、権限です。多くのツールでは、ボードの編集ができる人と、見るだけの人を分けられます。取引先には見るだけの権限で招待し、カードを動かすのは担当者だけにすると、意図しない変更を防げます。

4つ目は、案件が終わったあとの扱いです。業務委託の契約が終わったら、社外のメンバーをボードから外します。契約書の秘密保持の条項で、契約終了後の資料の扱いが決まっていることもあるので、確かめておきましょう。

共有のルールを最初に決めておけば、カンバンボードは社外の人とも安心して使える道具になります。

無料で始められるツールを選ぶときに比べたい点

カンバンボードをデジタルで始めるなら、無料プランのあるツールから試すのが手軽です。ツールを選ぶときに比べたい点を整理します。

1つ目は、無料プランで使える人数とボードの数です。たとえば、カンバンボードのツールとして広く使われているTrelloは、公式の料金ページで、無料プランを次のように説明しています。

項目 Trelloの無料プラン(2026年10月5日に公式ページで確認)
料金 0ドル
人数 ワークスペースあたり10コラボレーターまで
ボード ワークスペースあたり最大10枚
カード 無制限
1ファイルの上限 10MB

チームの人数が10人を超えそうなら、有料プランを前提に考える必要があります。Trelloの有料プランのStandardは、年払いで1ユーザーあたり月額5ドル(月払いなら6ドル)です。カレンダーやタイムラインといったボード以外の見方は、その上のPremium(年払いで1ユーザーあたり月額10ドル、月払いなら12.50ドル)で使えると案内されています。料金はドル建てで、改定されることもあるので、導入の前に公式の料金ページで最新の金額を確かめてください。

2つ目は、カンバン以外の見方があるかです。「向いているチームと向かないチーム」の節で書いたように、締め切りの重なりを見るにはガントチャートやカレンダーが便利です。無料プランでどの見方まで使えるかは、ツールによって大きく違います。

3つ目は、日本語のサポートと料金の通貨です。海外のツールは、料金がドル建てで為替によって負担が変わることがあり、問い合わせが英語中心のこともあります。社内の承認を通すときに、円建ての請求書が必要かどうかも確かめておきましょう。

4つ目は、社外のメンバーの招待です。業務委託のメンバーや取引先をボードに招待する場合、ゲストとして招待できるか、人数に数えられるかで費用が変わります。

5つ目は、今あるデータを移せるかです。すでに別のツールを使っている場合、ボードやカードをそのまま移せるかどうかで、乗り換えの手間が大きく変わります。

ガントチャートも無料で使いたいときの候補

カンバンボードに加えて、ガントチャートやカレンダーも無料プランの範囲で使いたい、という場合の候補の1つが、国産のプロジェクト管理ツールのPinatecaです。

公式サイトの記載によると、カンバン、ガントチャート、カレンダー、リスト、ディスカッション、グリッド、時間割、リソースの8種類のボードがあり、すべての種類が無料プランから使えます。カードへのコメントやチャット、カスタムフィールド、権限ロールも無料プランに含まれています。Trelloのエクスポートファイルを読み込んで、ボードやカード、ラベル、添付を移す機能もあります。

料金のページでは、無料プランは5人まで・ボード10個まで・ファイル容量1GBで、期限なしで使えると案内されています。6人目、または11個目のボードからはスタンダードプラン(1人あたり月額500円、年払いなら月額400円、税抜)となり、人数とボードの上限がなくなります。機能は無料プランと同じとされています。閲覧だけのゲストは人数に数えないと書かれているので、取引先に進み具合を見てもらう使い方もできます。

Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

どのツールにも合う人と合わない人がいます。人数、使いたいボードの種類、社外のメンバーの有無を書き出してから、2つか3つのツールを無料プランで試してみるのが確実です。

カンバンボードと在宅の仕事の進め方

最後に、カンバンボードを、在宅で働く人や業務委託で仕事を受ける人の視点から考えてみます。

在宅の仕事では、相手の顔が見えない分、進み具合を伝える工夫が欠かせません。発注する側は「いまどこまで進んでいるのか」が分からないと不安になり、受ける側は確認の連絡に時間を取られます。カンバンボードで進み具合を共有しておけば、この行き違いの多くを防げます。取引先とボードを共有できなくても、自分の仕事をカンバンで管理しておくだけで、問い合わせにすぐ答えられるようになります。

フリーランス・在宅ワーク市場を長く運営してきた立場から見ると、継続して依頼を受け続ける人ほど、進み具合の伝え方が丁寧です。頼まれる前に途中経過を知らせ、止まっている理由を早めに共有する。その積み重ねが「この人に任せると楽だ」という信頼になり、次の依頼につながっています。仲介の手数料が乗らない直接取引であれば、同じ予算でも発注者はより多くを頼め、受け手の手取りは厚くなります。その関係を長く続けるうえで、仕事の見える化は小さくない役割を果たします。

カンバンボードを使う仕事の代表が、アプリやWebサービスの開発です。アプリケーション開発のお仕事では、どんな案件があり、どんなスキルが求められるかを紹介しています。開発の仕事の報酬の水準は、公的な統計をもとにしたソフトウェア作成者の年収・単価相場で確かめられます。

チームの業務の進め方そのものを整える支援の仕事もあります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、生成AIの導入や業務の改善を手伝う仕事の内容を紹介しています。中小企業の経営と業務の改善を助言する立場を目指す方には、国家資格の中小企業診断士の概要も参考になります。

在宅勤務の環境づくりに国の支援を使いたい事業者の方は、テレワーク 助成金 2026で、助成金の対象と申請の流れを確かめられます。カンバンボードは、3つの列とカードから始められる道具です。まずは自分の仕事を1枚のボードに書き出すところから試してみてください。

よくある質問

Q. カンバンボードの列は最初にいくつ作ればよいですか?

最初は「未着手」「進行中」「完了」の3列から始めるのが無難です。使っていくうちに、確認待ちの仕事がたまるなら「確認待ち」の列を加える、というように、困りごとが出てきたところで列を増やします。列が10を超えると、カードをどこに動かすか迷う場面が増えるため、5列前後に抑えるのが目安です。

Q. WIP制限の数はどう決めればよいですか?

WIP制限は、1つの列に同時に入れてよいカードの上限です。最初は「進行中」の上限をチームの人数と同じか、1つ多いくらいに設定するのが目安です。3人のチームなら3か4から始めます。使ってみて、カードがたまる列や空く列を見ながら調整し、上限に達したら新しい仕事を始めず、止まっているカードを先に進めることを優先します。

Q. カンバンボードとガントチャートはどう使い分けますか?

カンバンボードは、仕事がいまどの段階にあるか、どこで止まっているかを見るのが得意です。ガントチャートは、作業の期間を横棒で並べ、締め切りの重なりや遅れの影響を見通すのが得意です。日々の仕事の流れはカンバン、作業の順番と締め切りが細かく決まった大きなプロジェクトの計画はガントチャート、と使い分けると、それぞれの弱点を補えます。

Q. 個人の仕事の管理にもカンバンボードは使えますか?

使えます。在宅で複数の取引先の仕事を受けている場合、取引先ごとにラベルを付けて1枚のボードで管理すると、締め切りの近い仕事や、相手の返事を待っている仕事が一目で分かります。個人で使う場合も、「進行中」に入れる仕事の数を2つか3つに絞ると、切り替えの手間が減り、1つずつ確実に終わらせやすくなります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月7日最終更新:2026年10月6日
杉山 リュウ

この記事を書いた人

杉山 リュウ@SOHO編集部

フリーランスデータアナリスト

外資系コンサルでデータ分析を担当後、フリーランスに独立。Python・SQL・BIツールを駆使し、データ分析・BI・統計系の記事を執筆しています。

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