引き継ぎ資料の作り方|後任が迷わない項目の決め方と書き方


この記事のポイント
- ✓引き継ぎ資料の作り方を
- ✓引き継ぎの日程の組み方の順に解説します
- ✓後任が迷わない書き方の例
引き継ぎ資料を作ることになったとき、多くの人が最初に悩むのは「何をどこまで書けばよいのか」です。自分にとっては当たり前の作業ほど、言葉にしようとすると手が止まります。しかも退職や異動の日は決まっていて、普段の仕事をこなしながら資料を作らなければなりません。
引き継ぎ資料の作り方は、大きく4つの段階に分けられます。担当している業務を洗い出す、業務ごとに書く項目を決める、後任が迷わない書き方で手順を書く、引き継ぎの日程を組んで一緒に確かめる、の4つです。この記事では、それぞれの段階で何をすればよいかを、具体的な書き方の例とともに説明します。引き継ぎのやることを担当と期限つきで見える形にしたいときは、ボードやガントチャートでタスクを共有できるPinatecaのような道具も役に立ちます。
引き継ぎ資料とは何か
引き継ぎ資料とは、担当している仕事を別の人に渡すときに、その人が一人で仕事を続けられるように、仕事の中身、手順、関係者、注意点をまとめた資料のことです。引き継ぎ書、業務引継書とも呼ばれます。
業務マニュアルとの違い
業務マニュアルは、ある作業を誰がやっても同じ結果になるように、手順を標準の形でまとめたものです。一方、引き継ぎ資料は、「いまのあなたの担当」を次の人に渡すための資料です。進行中の案件の状況、相手先との約束、まだ終わっていない作業といった、その時点だけの情報が入るのが特徴です。
社内にすでに業務マニュアルがあれば、引き継ぎ資料ではマニュアルの場所を示し、マニュアルに書かれていない個別の事情や進行中の状況を中心に書きます。マニュアルがない業務は、引き継ぎを機に手順を書き起こすことになります。
引き継ぎが終わるのはいつか
引き継ぎは、資料を渡したら終わり、ではありません。マネーフォワードの解説では、引き継ぎの完了について次のように書かれています。
引き継ぎの完了は「書類を渡した時点」ではなく、「後任者がひとりで業務を遂行できた時点」です。わかりにくい箇所があれば、関連資料の共有や実際に業務を一緒に行うなど、後任者が自立できるまでフォローを続けましょう。 出典: マネーフォワード クラウド
資料は、後任が一人で仕事を回せるようになるための道具です。この考え方を最初に持っておくと、何を書けばよいかの判断がしやすくなります。
引き継ぎが必要になる場面
引き継ぎが必要になる場面は、退職だけではありません。
- 退職:最も時間に限りがある引き継ぎ。最終出社日までに終える必要がある
- 異動や担当替え:同じ社内にいるので、引き継いだあとも質問に答えられる
- 産休や育休、長期の休み:戻ってくる前提で、休みの間だけ代わりの人に渡す
- 業務委託の契約の終了:外部の人に任せていた仕事を、社内か別の委託先に移す
- 突然の休み:病気などで急に休むときに、最低限の情報を渡す
場面によって、資料に必要な深さが変わります。退職と契約の終了では、あとから聞ける相手がいなくなるので、資料だけで仕事が回るところまで書く必要があります。異動や休みの場合は、要点を押さえた資料と、困ったときの連絡方法があれば足りることも多くあります。
退職の場合の時間の目安
期間の定めのない雇用では、民法の第627条で、解約の申し入れの日から2週間を経過すると雇用が終了すると定められています。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。 出典: e-Gov法令検索 民法
実際の退職の時期は、会社の就業規則で退職の申し出の期限が決められていることが多く、話し合いで決まります。いずれにしても、退職が決まってから最終出社日までの期間は、長くても1か月から数か月程度で、その間に普段の仕事と引き継ぎを並行して進めることになります。有給休暇をまとめて取る場合は、実際に出社して引き継ぎができる日はさらに少なくなります。早めに資料づくりに取りかかることが大切です。
休みの間だけ渡す場合
産休や育休、長期の休みで一時的に仕事を渡す場合は、退職の引き継ぎとは書き方の重点が変わります。戻ってくる前提なので、すべてを書き尽くす必要はありません。その代わり、休みの間に起こりそうなことと、その対応を中心に書きます。
- 休みの間に来る締め切りと、その準備
- 休みの間に判断が必要になりそうなことと、判断してよい範囲
- 休みの間は連絡を取らない、緊急のときだけ連絡する、などの連絡の決まり
- 戻ったときに、何をどこまで進めてもらったかを確かめる方法
最後の点は見落とされがちです。代わりの人が進めた内容を記録しておいてもらうと、戻ったあとにすぐ仕事に入れます。
段階1:担当している業務を洗い出す
引き継ぎ資料づくりの最初の一歩は、自分が担当している業務をすべて書き出すことです。ここで漏れた業務は、引き継がれないまま残ってしまいます。
頻度で分けて書き出す
業務は、頻度で分けて書き出すと漏れが減ります。
- 毎日の業務:メールの確認、日報、受注の入力など
- 毎週の業務:定例会議、週次の報告、在庫の確認など
- 毎月の業務:請求書の発行、月次の集計、締めの作業など
- 年に数回の業務:決算の準備、年度の更新、季節の案内など
- 不定期の業務:問い合わせへの対応、トラブルの対応、臨時の依頼など
年に数回の業務と不定期の業務は、思い出しにくいので特に注意します。過去1年分の予定表、送ったメール、作ったファイルの履歴を見返すと、忘れていた業務が見つかります。
業務一覧の表を作る
書き出した業務は、1つの表にまとめます。これが引き継ぎ資料の目次になります。
| 業務名 | 頻度 | 時期 | かかる時間 | 関係者 | 手順書の有無 | 引き継ぎ先 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 請求書の発行 | 毎月 | 月末 | 2時間 | 経理、取引先 | あり | 山田さん |
| 定例会議の議事録 | 毎週 | 月曜 | 1時間 | 部内 | なし | 佐藤さん |
| 問い合わせへの対応 | 不定期 | 随時 | 1日30分程度 | 顧客 | なし | 山田さん |
表の列は、業務名、頻度、時期、かかる時間、関係者、手順書の有無、引き継ぎ先の7つが基本です。かかる時間を書いておくと、後任が自分の予定を組むときの目安になります。手順書の有無の列は、このあと何を書き起こす必要があるかを見極めるのに使います。
優先順位を付ける
洗い出した業務すべてを、同じ深さで書く時間はないのが普通です。業務一覧ができたら、次の順で優先順位を付けます。
- 引き継ぎの直後に発生する業務(最終出社日の翌週に締め切りがあるものなど)
- 間違えると影響が大きい業務(お金、契約、顧客への約束に関わるもの)
- 手順書がなく、自分しか知らない業務
- 手順書があり、そのとおりに進めれば済む業務
1から3を先に書き、4は手順書の場所を示すだけにとどめると、限られた時間で効果の大きい資料になります。
段階2:業務ごとに書く項目を決める
業務一覧ができたら、業務ごとに詳しい資料を作ります。毎回同じ項目で書くと、書く側も読む側も迷いません。
業務ごとに入れる8つの項目
業務ごとの資料には、次の8つの項目を入れます。
- 業務の目的:何のための仕事か。誰が、何に使っているか
- 頻度と時期:いつ、どのくらいの間隔で行うか。締め切りはいつか
- 手順:作業の順番。使う道具やファイル
- 関係者と連絡先:社内外で誰と関わるか。どう連絡を取るか
- 判断の基準:迷ったときにどう決めるか。誰に確認するか
- よくあるトラブルと対処:過去に起きた問題と、そのときの対応
- 関連する資料とファイルの場所:手順書、ひな形、過去の記録の保存先
- 進行中の案件の状況:いまどこまで進んでいて、次に何をするか
このうち、後任が一番困るのは5の判断の基準と、8の進行中の状況です。手順は見れば分かっても、「この場合は値引きしてよいのか」「この取引先には何日前に連絡するのか」といった判断は、書いておかないと後任には分かりません。
目的から書く理由
手順だけを書いた資料は、手順どおりに進まなかったときに役に立ちません。業務の目的が分かっていれば、想定と違うことが起きても、後任が自分で考えて対応できます。たとえば「月次の売上の集計」の目的が「部長が翌月の仕入れの量を決めるため」と分かっていれば、締め切りに間に合わないときに、誰に何を先に伝えるべきかが見えてきます。
関係者の書き方
関係者は、名前と連絡先だけでなく、その人とどんな関係にあるか、どんな点に気を付けているかも書きます。
- 名前と部署、役割
- 連絡の方法(メール、電話、チャット)と、つながりやすい時間帯
- これまでのやりとりで気を付けていたこと(返事は午前中に送る、書面で残すことを好む、など)
取引先の担当者には、引き継ぎの前に後任を紹介しておくのが理想です。資料には、紹介を済ませたかどうかも書いておきます。
社内の関係者についても同じです。「経理の誰に、何を、いつまでに渡しているか」「情報システムの担当者に、どんな頼みごとをしてきたか」といった、普段は意識せずにしているやりとりほど、後任には見えません。自分の1か月分の送ったメールを見返し、繰り返し連絡している相手を書き出すと、関係者の一覧の漏れを防げます。
職種ごとに書き足す項目
基本の8つの項目に加えて、職種によって書き足しておくと後任が助かる項目があります。
- 営業:取引先ごとの取引の経緯、決裁する人、見積もりの値引きの幅、次の商談の予定、先方から預かっている宿題
- 経理:締めの日程、支払いと入金の予定、税理士や銀行とのやりとりの窓口、使っている会計ソフトの設定の注意点
- 総務:契約の更新の時期(賃貸、保守、リース)、社内の届け出の受け付けの流れ、備品の発注先
- 人事:採用の進み具合、面接の予定、社員からの相談の記録の扱い(個人の情報なので保存先と閲覧できる人を明記)
- 制作やシステム:作業の環境の作り方、使っている外部サービスの一覧と契約の名義、ファイルの保存のルール
特に、契約や外部サービスの名義が退職する人の個人になっている場合は、引き継ぎの間に会社の名義に移す手続きが必要です。後から気づくと、サービスを止められない、ログインできない、といった問題が起こります。
資料の形式の選び方
引き継ぎ資料は、文書、表計算、共有の道具のどれで作ってもかまいません。それぞれ向いている内容が違います。
- 文書(ワープロのファイルなど):業務の目的、判断の基準、トラブルの対処のように、文章で説明する内容に向いている
- 表計算:業務一覧、関係者の一覧、締め切りの一覧のように、並べて見比べる内容に向いている
- 共有の道具(タスク管理やプロジェクト管理の道具):引き継ぎの進み具合、担当、期限のように、更新し続ける内容に向いている
1つの形式にこだわるより、業務一覧は表計算、業務ごとの説明は文書、進み具合は共有の道具、というように組み合わせると、それぞれの良さを生かせます。ファイルが散らばらないよう、業務一覧の表に、各資料の保存場所を書いておきます。
段階3:後任が迷わない書き方で手順を書く
1つの手順に1つの動作
手順は、1つの行に1つの動作だけを書きます。悪い例と良い例を比べます。
悪い例は「共有フォルダの請求書のひな形を開いて、今月分を作り、部長の確認をもらって送る」です。1行に4つの動作が入っていて、どこで何をするかが分かりにくくなっています。
良い例は次のとおりです。
- 共有フォルダの「経理」から「請求書」のフォルダを開く
- 「請求書のひな形」のファイルを複製し、名前を「請求書_取引先名_年月」に変える
- 取引先、品目、金額を入力する(金額は受注の一覧の表から写す)
- 部長にチャットでファイルの場所を送り、確認を頼む
- 確認が取れたらPDFに書き出し、取引先の担当者にメールで送る
- 送った日を受注の一覧の表に記録する
番号の付いた手順にすると、後任がどこまで進んだかを確かめながら作業できます。
あいまいな言葉を使わない
「いつものように」「適宜」「なるべく早く」「例のファイル」といった言葉は、書いた本人にしか意味が分かりません。次のように具体的に言い換えます。
- 「いつものように」→ 具体的な手順を書く
- 「適宜」→「売上が前月より1割以上減ったときは」のように条件を書く
- 「なるべく早く」→「受け取った日の翌営業日までに」のように期限を書く
- 「例のファイル」→ 保存先とファイル名を書く
画面の写真と例を添える
システムの操作を説明するときは、画面の写真(スクリーンショット)を添えると、文章だけより格段に分かりやすくなります。押すボタンに印を付けておくと、さらに迷いません。入力の例や、完成したものの例を添えるのも効果があります。ただし、画面の写真に顧客の名前や個人の情報が写り込んでいないかを、保存する前に必ず確かめます。
パスワードの扱い
システムのIDやパスワードを、引き継ぎ資料にそのまま書くのは避けます。資料が共有されたり、印刷されたりすると、情報が漏れる原因になります。パスワードは会社が決めた方法(管理のための仕組みや、上司を通じた変更)で渡し、資料には「どのシステムのアカウントを、誰から受け取るか」だけを書きます。退職する人のアカウントは、引き継ぎのあとに止めるか、パスワードを変える手続きが必要です。
1業務分の書き方の見本
ここまでの項目を使って、1つの業務の資料を書いた見本を示します。業務は「毎月の請求書の発行」とします。
業務の目的
取引先に、前の月に納めた商品の代金を請求する。経理は、この請求書をもとに入金を確かめる。
頻度と時期
毎月1回。月末の最終営業日までに送る。取引先の締め日に間に合わないと、支払いが1か月遅れる。
手順
- 受注の一覧の表で、前の月に納品済みになった行を絞り込む
- 取引先ごとに、請求書のひな形を複製して作る
- 金額の合計が受注の一覧と合っているかを確かめる
- 部長に確認を頼む
- 確認後にPDFに書き出し、取引先の担当者にメールで送る
- 送った日を受注の一覧に記録し、経理に送付済みの連絡をする
判断の基準
- 納品が月をまたいだ場合は、納品日の月で請求する
- 値引きは、部長の承認があるものだけを入れる。口頭で頼まれても、承認がなければ入れない
- 取引先から請求書の書き方の変更を頼まれたら、経理に確かめてから対応する
よくあるトラブルと対処
- 金額が受注の一覧と合わない:多くは返品の反映漏れ。返品の記録の表を確かめる
- 取引先から届いていないと連絡がある:送信済みのメールを確かめ、届いていなければ別のアドレスに送り直す
関連する資料の場所
請求書のひな形、受注の一覧、返品の記録は、共有フォルダの「経理」の中にある。
進行中の状況
今月分は作成済みで、部長の確認待ち。来月分から後任が担当する。
このように、項目ごとに短く書くだけで、後任は資料を見ながら一人で作業を進められます。すべての業務をここまで書く必要はありません。優先順位の高い業務から、この形で書いていきます。
段階4:引き継ぎの日程を組んで一緒に確かめる
資料ができたら、後任と一緒に確かめる時間を取ります。
日程の組み方
最終出社日から逆算して、日程を組みます。
- 最初の週:業務一覧を後任と一緒に見て、全体像を共有する。優先度の高い業務の資料から渡す
- 2週目:資料を見ながら、自分がやる作業を後任に横で見てもらう
- 3週目:後任に作業してもらい、自分が横で見る。分からなかった点を資料に書き足す
- 最後の週:後任が一人で作業し、自分は質問に答えるだけにする。取引先への挨拶を済ませる
期間が短い場合は、2週目と3週目をまとめるなど、自分の状況に合わせて縮めます。大事なのは、最後に後任が一人で作業する機会を、自分がまだいる間に作ることです。
一緒に作業して資料を直す
後任に実際に作業してもらうと、資料の分かりにくい所が見つかります。後任がつまずいた所、質問した所は、その場で資料に書き足します。こうして直した資料は、次に誰かが引き継ぐときにも使えます。
後任には、分からなかった所を遠慮せずに書き込んでもらうよう頼んでおきます。書いた本人は分かっているつもりでも、初めて読む人には伝わらない所が必ずあります。後任の書き込みが多い所ほど、資料を直す価値がある所です。
引き継ぎの進み具合を見える形にする
引き継ぐ業務が多いと、どれが終わってどれが残っているかが分からなくなります。業務一覧の表に「資料作成」「説明」「後任が実施」「完了」の列を足し、業務ごとに進み具合を記録していくと、抜けを防げます。上司にも共有しておけば、最終出社日までに終わりそうかを一緒に確かめられます。
引き継ぎでよくある失敗
引き継ぎの失敗には、よく見られる形があります。前もって知っておけば防げます。
年に数回の業務が漏れる
毎日や毎週の業務は思い出せても、年に1回の更新の手続き、季節ごとの案内の発送などは漏れやすいものです。後任が気づいたときには締め切りを過ぎていた、ということが起こります。業務の洗い出しの段階で、過去1年分の予定表とメールを見返すことが一番の対策です。
資料が最新でない
以前作った手順書をそのまま渡したところ、システムの画面が変わっていて使えなかった、という失敗もよくあります。渡す前に、自分で手順書のとおりに作業してみて、今の手順と合っているかを確かめます。
判断の理由が書かれていない
手順は書いてあっても、なぜそうしているのかが書かれていないと、後任は状況が変わったときに判断できません。「この取引先には必ず電話でも連絡する」という手順の裏に「過去にメールの見落としで納期を誤ったことがある」という理由があるなら、それも書いておきます。
取引先への紹介が間に合わない
資料づくりに時間を取られて、取引先への挨拶と後任の紹介が最終日の直前になってしまうことがあります。相手の都合もあるので、紹介は引き継ぎの前半に済ませておきます。
急な休みに備えた最低限のメモ
退職や異動のように前もって分かっている引き継ぎだけでなく、病気などで急に休むこともあります。そのときに慌てないよう、普段から最低限のメモを用意しておくと安心です。
メモに入れておくのは、次の4つです。
- 今週と来週の締め切りの一覧
- 進行中の案件ごとの状況と、次にやること
- 関係者の連絡先
- よく使うファイルの保存場所
このメモを共有の場所に保存し、週に1回更新しておけば、急に休んでも同僚が最低限の対応をできます。引き継ぎ資料をいきなり作るのは大変でも、このメモなら15分ほどで更新できます。普段からこのメモを続けていると、本格的な引き継ぎのときにも、ここから書き始められます。
引き継ぎのタスクを担当と期限つきで回す
引き継ぎは、1人で完結する作業ではありません。資料を作る人、説明を受ける人、取引先に挨拶する人、アカウントを止める担当者など、複数の人が関わります。表計算のファイルで管理していると、誰がどこまで更新したかが分からなくなったり、ファイルが複数できてしまったりします。
ボードとガントで見える形にする
こうした場面では、タスクを担当と期限つきで共有できる道具が役に立ちます。Pinatecaは、カンバン、ガント、カレンダー、リストなど8種類のボードと、チャットが最初から使えるプロジェクト管理の道具です。公式サイトによると、ガントチャートやカレンダーも無料のプランから使え、無料のプランは5人まで、ボード10個までとされています。
引き継ぎに使う場合は、たとえば次のように使えます。
- カンバンのボードに「資料作成中」「説明済み」「後任が実施中」「完了」の列を作り、業務ごとにカードを並べる
- カードに担当者と期限を入れ、資料のファイルを添付する
- ガントのボードで、最終出社日までの日程を横棒で並べ、引き継ぎが重なる週を確かめる
- カードのコメントで、後任からの質問と答えを残す
質問と答えがカードに残ると、それ自体が資料の補足になります。退職したあとも、後任はそのカードを見返せます。
Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
問い合わせの窓口を個人から切り離す
引き継ぎで見落とされやすいのが、問い合わせの窓口です。お客様や取引先からの問い合わせが、担当者個人のメールアドレスに届く形になっていると、担当者が替わったときに問い合わせが宙に浮いてしまいます。
問い合わせを受けるフォームを用意し、届いた1件ごとに担当と対応の状況を記録しておけば、担当者が替わっても、どの問い合わせがどこまで進んでいるかを後任がすぐに把握できます。Halictは、フォームで受け付けた回答を、担当、ステージ、タグを付けて管理し、同じ画面から返信まで送れる道具です。公式の料金ページによると、無料のプランはメンバー1人まで、フォームの数と回答の数は無制限で、3人まで使えるスタータープランは月額2,980円(税抜)とされています。
Halictは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
上司や管理する人がすること
引き継ぎは、渡す人と受け取る人だけに任せると、うまくいかないことがあります。上司や部署を管理する人が関わると、引き継ぎの質が上がります。
後任を早く決める
後任が決まらないまま資料づくりだけが進むと、誰に向けて書けばよいかが定まりません。後任の経験によって、書くべき深さも変わります。退職や異動が決まったら、できるだけ早く後任を決め、本人に伝えます。後任がすぐに決まらない場合は、業務ごとに一時的な担当を割り振っておきます。
普段の仕事を減らす
退職する人も後任も、普段の仕事を抱えたまま引き継ぎを進めることになります。引き継ぎの期間だけでも、急ぎでない仕事をほかの人に回したり、締め切りを延ばしたりして、引き継ぎに使える時間を確保します。
進み具合を確かめる
週に1回、業務一覧の進み具合を一緒に見て、最終出社日までに終わりそうかを確かめます。間に合いそうにない業務があれば、優先順位を見直し、資料を簡単にする、別の人にも分けて引き継ぐ、などの手を打ちます。
引き継ぎのあとの相談先を決める
退職の場合、引き継ぎのあとに前任者に聞くことは基本的にできません。後任が困ったときに相談できる人を、社内で決めておきます。後任一人に抱え込ませないことが、引き継ぎを成功させる最後の一押しになります。
後任の側から見た、引き継ぎで確かめること
ここまでは渡す側の話でしたが、受け取る側が確かめておくと安心な点もあります。後任になった人は、次の点を引き継ぎの間に聞いておきます。
- 最初の1か月に発生する締め切りの一覧
- 判断に迷ったときに確認する相手
- 過去に起きたトラブルと、そのときの対応
- 取引先ごとの約束ごと(値引き、納期、連絡の方法)
- 前任者に、引き継ぎのあとも質問してよいか、その方法
最後の点は特に大事です。異動であれば社内で聞けますが、退職の場合は、退職後の連絡は基本的に期待できません。聞けるうちに聞いておく、という意識で、遠慮せずに質問します。
業務委託の仕事を引き継ぐときの注意
外部の人に任せていた仕事を、別の委託先や社内に移す場合は、社員どうしの引き継ぎとは違う点に気を付けます。
契約で決めたことを確かめる
業務委託では、成果物の扱い、作業に使ったファイルの権利、秘密を守る約束などが契約で決められています。引き継ぎの資料を渡すとき、作ったファイルを次の委託先に渡してよいかを、契約の内容で確かめます。
引き継ぎの作業も依頼の範囲に入るか
委託している人に引き継ぎの資料づくりを頼む場合、それが元の契約の範囲に入っているかを確かめます。入っていなければ、別の作業として依頼し、報酬を決めます。契約が終わる直前に、範囲外の作業を無償で頼むと、トラブルの原因になります。
引き継ぎ資料を次に生かす
引き継ぎのために作った資料は、そのまま社内の財産になります。次に担当が替わるとき、新しく人が入るとき、同じ資料を少し直すだけで使えます。
そのためには、資料を個人のパソコンではなく、共有の場所に保存しておくことが大切です。資料の最初に、作った日と、最後に直した日を書いておくと、次に使う人がどの時点の情報かを判断できます。業務の手順が変わったら資料も直す、という習慣を部署で決めておけば、次の引き継ぎはずっと楽になります。
テレワークで離れて働くチームでは、資料と進み具合を共有の場所で管理することが、引き継ぎの質を左右します。テレワーク 助成金 2026では、テレワークの導入で助成の対象になる経費とならない経費の線引き、申請の手順、国と東京都の制度の違いが整理されています。
在宅ワーク市場から見た、引き継ぎの上手な人
在宅ワークとフリーランスの仲介を2004年から続けてきた運営者として見ていると、仕事が長く続く人ほど、引き継ぎを前提に仕事を進めています。普段から手順や判断の理由を書き残しているので、自分が休むときも、契約が終わるときも、慌てずに渡せます。依頼する側から見ると、こうした人は「いなくなっても困らないように仕事をしてくれる人」であり、それが次の依頼につながっています。
もう1つ見えているのは、引き継ぎ資料や業務の手順書を作る仕事そのものを、外部に頼む会社があることです。担当者が忙しくて書く時間が取れない、書き方が分からない、という場合に、聞き取りをして資料にまとめる仕事です。直接の取引であれば、仲介の手数料がかからない分、同じ予算でより多くの作業を頼め、受ける側も手元に残る額が厚くなります。資料の作成を仕事として受けたい人は、契約書・資料・企画書作成のお仕事で、資料づくりの仕事の内容を確かめてみてください。
よくある質問
Q. 引き継ぎ資料には何を書けばよいですか?
業務ごとに、目的、頻度と時期、手順、関係者と連絡先、判断の基準、よくあるトラブルと対処、関連する資料の場所、進行中の案件の状況の8つを書くと漏れが減ります。後任が一番困るのは判断の基準と進行中の状況なので、手順だけでなく、迷ったときにどう決めるか、いまどこまで進んでいるかを必ず書きます。
Q. 引き継ぎ資料はいつから作り始めればよいですか?
退職や異動が決まったら、すぐに業務の洗い出しから始めます。最終出社日までの期間は限られ、普段の仕事と並行して進めることになるうえ、有給休暇を取ると出社できる日はさらに減ります。最後の週に後任が一人で作業できるよう、最終出社日から逆算して日程を組むと安心です。
Q. パスワードを引き継ぎ資料に書いてもよいですか?
避けたほうが安全です。資料が共有されたり印刷されたりすると、情報が漏れる原因になります。パスワードは会社が決めた方法で渡し、資料には、どのシステムのアカウントを誰から受け取るかだけを書きます。退職する人のアカウントは、引き継ぎのあとに止めるかパスワードを変える手続きが必要です。
Q. 引き継ぎはどの時点で完了したといえますか?
資料を渡した時点ではなく、後任が一人で業務を回せるようになった時点です。資料を渡したあと、後任に実際に作業してもらい、つまずいた所を資料に書き足していきます。最後に後任が一人で作業する機会を、自分がまだいる間に作っておくことが大切です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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