求人票の増員募集は本当か、実際の理由を見分ける読み方


この記事のポイント
- ✓求人票の「増員募集」は嘘なのか
- ✓増員と書かれやすい理由
- ✓求人票の数字と言葉から実際の理由を見分ける読み方
求人票に「増員募集」と書かれていると、事業が伸びていて人手が足りない会社なのだろうと受け取る人が多いはずです。ところが、入社してみたら前任者が辞めた穴埋めだった、同じ時期に何人も辞めていた、という話もよく聞きます。「増員募集は嘘なのでは」と疑いたくなるのは自然なことです。
この記事では、求人票の「増員募集」という言葉をどう読めばよいかを整理します。増員と欠員の違い、増員と書かれやすい理由、求人票の数字と言葉から実際の理由を見分ける読み方、面接での聞き方、そして求人票と実際が違ったときの相談先までを順に説明します。特定の会社や求人サイトの良し悪しではなく、どの求人にも使える確かめ方を身につけることが目的です。
増員募集と欠員募集の違い
まず言葉を整理しておきます。
増員募集とは、今いる人数に加えて人を増やすための募集のことです。新しい部署や拠点を立ち上げる、取引先が増えて仕事量が増える、といった理由で行われます。
欠員募集とは、辞めた人や異動した人の穴を埋めるための募集のことです。退職、産休や育休、病気による休職、社内の異動などが理由になります。「欠員補充」とも呼ばれます。
| 項目 | 増員募集 | 欠員募集 |
|---|---|---|
| 募集の理由 | 事業の拡大、仕事量の増加 | 退職、休職、異動の穴埋め |
| 入社後の立場 | 新しい仕事を一緒に作ることが多い | 前任者の仕事を引き継ぐことが多い |
| 引き継ぎ | 前任者がいないことが多い | 前任者がいれば引き継ぎがある |
| 急ぎ具合 | 計画的なことが多い | 急ぎのことが多い |
どちらが良い、悪いという話ではありません。欠員募集は、仕事の内容がはっきりしていて、前任者から引き継ぎを受けられることも多く、入社後の働き方を想像しやすいという利点があります。問題になるのは、欠員なのに増員と書かれていて、その裏に「人が定着しない理由」が隠れている場合です。
「増員募集」は嘘なのか
結論から言えば、「増員募集」と書かれた求人のすべてが嘘というわけではありません。実際に事業が伸びていて人を増やしている会社は多くあります。一方で、実態は欠員の補充なのに、印象をよくするために「増員」と書いている求人があるのも事実です。
増員と書かれやすい理由
欠員募集が増員として書かれやすいのには、いくつかの理由があります。
・「辞めた人がいる」と書くと、職場に問題があると思われるのを避けたい ・欠員と増員が同時に起きている(1人辞めたので2人採る) ・辞めた人の分を埋めるついでに、少し仕事の範囲を広げている ・求人票の書式に理由を書く欄がなく、担当者が深く考えずに書いている
このうち、2つ目と3つ目は、厳密には「嘘」とは言い切れません。1人辞めて2人採るなら、人数としては増えています。また、求人票に募集の理由を書く義務はないため、「増員」とだけ書いて欠員の事情に触れていなくても、それだけで違法になるとは限りません。
法律が禁じているのは何か
求人の内容については、職業安定法という法律がルールを定めています。2022年10月1日に施行された改正で、求人を出す企業には、求人情報を正確で最新の内容に保つことが義務づけられました。厚生労働省の求職者向けのリーフレットには、次のように書かれています。
虚偽の表示・誤解を生じさせる表示はしてはなりません。また、募集を終了した場合や内容に変更があった場合には速やかに採用ウェブサイトを更新するなど求人情報を正確・最新の内容に保たなければなりません。 出典: 厚生労働省 雇用仲介サービス利用のチェックポイント
同じリーフレットには、虚偽の表示の例として「『正社員』と謳いながら、実際には『アルバイト・パート』の求人だった」「実際よりも高額な賃金を表示した求人が掲載されている」が挙げられています。
ここで大事なのは、法律が主に見ているのは、賃金、雇用形態、仕事の内容、勤務地といった労働条件の表示だという点です。「増員」か「欠員」かという募集の理由そのものは、労働条件ではありません。ただし、募集の理由をごまかすために、仕事の内容や人員の体制を実際と違うように書いていれば、誤解を生じさせる表示の問題になりうることもあります。どこからが問題になるかは個別の事情で変わるため、迷ったら後で紹介する相談先で確かめてください。
採用する側から見た「増員」の事情
求人票の言葉を読み解くには、書く側の事情を知っておくと役に立ちます。
採用の担当者にとって、求人票は応募を集めるための広告でもあります。同じ仕事でも、「前任者の退職に伴う募集」と書くより「事業拡大に伴う増員」と書いたほうが、応募が集まりやすいと考えるのは自然なことです。担当者がうそをつこうとしているというより、職場を良く見せたいという動機で言葉を選んでいる場合が多いと考えられます。
もう1つの事情は、求人の書式です。多くの求人サイトや求人票の様式では、募集の理由を選択肢から選ぶ形になっていたり、そもそも理由を書く欄がなかったりします。「増員」と「欠員補充」の両方の事情がある場合に、どちらか1つを選ばなければならないとすれば、担当者は前向きに見える「増員」を選びがちです。
さらに、募集を出す部署と、求人票を書く人事の部署が違うこともあります。現場では「辞めた人の代わり」と思っていても、人事は「来期に向けた体制強化」と位置づけている、ということも起こります。どちらも間違いではなく、同じ募集を違う角度から見ているだけです。
こうした事情を踏まえると、「増員」という言葉に過度な期待をかけず、かといって嘘だと決めつけもせず、具体的な中身を確かめにいく姿勢が、もっとも現実的な読み方だと言えます。
求人票から実際の理由を読み取る
募集の理由を求人票だけで完全に見抜くことはできません。それでも、いくつかの手がかりから、増員の言葉どおりなのか、それとも欠員の事情があるのかを推し量ることはできます。
手がかり1:募集人数と職場の人数
募集人数と、配属先の職場の人数を比べてみてください。10人の部署で1人の募集なら自然ですが、5人の部署で3人を募集している場合は、増員にしては規模が大きすぎます。短い期間に複数人が辞めている可能性も考えられます。
求人票に職場の人数が書かれていない場合は、面接で「配属される部署は何人ですか」と聞くのが確実です。
手がかり2:同じ求人が出続けていないか
同じ会社が、同じ職種の求人を何か月も出し続けている、または数か月おきに出していることがあります。求人サイトで会社名を検索し、過去にも同じ求人が出ていたかを見てください。いつ見ても募集しているのに「増員」と書かれている場合は、人が定着していない可能性があります。
ただし、事業が本当に伸び続けていて、継続的に人を採っている会社もあります。出続けていること自体を悪い兆候と決めつけず、次の手がかりと合わせて判断してください。
手がかり3:言葉の組み合わせ
求人票の言葉の組み合わせからも、職場の事情が見えることがあります。
・「急募」と「増員」が一緒に書かれている:計画的な増員なら急ぐ必要は小さいはずで、急な欠員の可能性がある ・「すぐに活躍できる」「即戦力」が強調されている:引き継ぎの時間が取れない事情があるかもしれない ・「未経験歓迎」なのに研修の説明がほとんどない:教える人の手が足りていない可能性がある ・「アットホームな職場」「若手が活躍」など雰囲気の言葉が多く、仕事の中身の説明が少ない:具体的に書けない事情がないかを確かめたい
どれも、それだけで悪い職場と決めつけるものではありません。気になる言葉があったら、面接で具体的に聞くためのメモとして使ってください。
手がかり4:会社の事業の動き
本当に増員なら、会社の事業に人を増やす理由があるはずです。会社のホームページやニュースで、新しい拠点の開設、新しいサービスの開始、取引先の拡大といった動きが出ているかを見てみてください。上場している会社であれば、決算の資料に従業員数の推移が載っていることもあります。
事業の動きと募集の理由が結びつけば、増員の言葉には説得力があります。反対に、事業が縮小している、拠点を閉じている、といった情報があるのに「増員」と書かれている場合は、面接で理由をはっきり聞いたほうがよいでしょう。
増員の言葉どおりと考えられるサイン
疑う視点ばかりでは、良い求人まで見送ってしまいます。反対に、「増員」という言葉が実態どおりである可能性が高いサインも挙げておきます。
増える理由が具体的に書かれている
「新しく○○の拠点を開設するため」「○○のサービスを始めるにあたり、立ち上げのメンバーを募集」のように、人を増やす理由が具体的に書かれている求人は、説明に裏付けがある場合が多いと考えられます。会社のホームページやニュースで、その拠点やサービスの情報が確かめられれば、なおさらです。
入社後の体制が説明されている
「配属先は現在8名で、2名を増員予定」「入社後1か月は先輩社員が付いて業務を学ぶ」のように、職場の人数と受け入れの体制が書かれている求人は、採用の計画が具体的に立てられていることを示しています。
複数の職種を同時に募集している
新しい事業を始める会社は、営業、事務、技術など、複数の職種を同時に募集することがよくあります。同じ会社の求人一覧を見て、同じ時期に関連する職種の募集が並んでいれば、組織全体で人を増やしている可能性が高いと言えます。
これらのサインがそろっている求人は、増員の言葉を信じてよい場合が多いでしょう。それでも、面接で募集の背景と受け入れの体制を確かめる手順は省かないでください。
掲載日と更新日を見る
求人票の読み方として、見落とされがちなのが掲載日と更新日です。
2022年10月の職業安定法の改正で、求人を出す企業には、募集を終えた場合や内容が変わった場合に、速やかに情報を更新する義務が課されました。求人情報を扱う求人サイトや職業紹介の事業者にも、情報を正確で最新の内容に保つための措置が求められています。
それでも、掲載日の古い求人が残っていることはあります。掲載から長く時間がたっている求人は、すでに採用が決まっている、条件が変わっている、といったことがありえます。応募の前に、掲載日と更新日を確かめ、古い場合は「現在も募集していますか」「条件に変わりはありませんか」と問い合わせてから応募すると、無駄な手間を省けます。
掲載日の確認は、増員かどうかを見極める手がかりにもなります。何か月も前に掲載された「増員募集」が今も続いている場合、予定どおりに人が集まっていない、あるいは採用してもすぐに辞めてしまう、といった事情がないかを考える材料になります。
口コミや評判の見方
会社の実態を知る手がかりとして、社員や元社員の口コミを集めたサイトを見る人も多いはずです。口コミは役に立つ情報源ですが、読み方には注意が必要です。
口コミには偏りがある
口コミを書くのは、強い不満を持って辞めた人や、とても満足している人に偏りがちです。どちらでもない多くの社員は、わざわざ口コミを書きません。そのため、口コミの内容は職場の平均的な姿より、極端な声が目立ちやすくなります。
また、口コミが書かれた時期にも注意が必要です。数年前の口コミは、経営者や上司が変わった今の職場には当てはまらないこともあります。投稿された年を確かめ、最近の口コミを中心に読んでください。
繰り返し出てくる点に注目する
口コミを読むときは、1つの強い意見より、複数の人が同じことを書いているかどうかに注目します。「残業が多い」「人の入れ替わりが激しい」「教育の仕組みがない」といった点が、時期の違う複数の口コミで繰り返されていれば、職場の傾向として受け止めてよいでしょう。
気になる点が見つかったら、それを面接で確かめる質問に変えてください。「残業はどのくらいありますか」と聞くより、「先月の部署の平均の残業時間はどのくらいでしたか」と具体的に聞くほうが、実態に近い答えが返ってきます。
面接で確かめる聞き方
求人票で気になる点があれば、面接で確かめるのが一番確実です。ただ、聞き方によっては相手に警戒されることもあるので、角が立たない聞き方を用意しておきます。
募集の理由を聞く
「今回の募集は、どのような背景で行われているのでしょうか」と聞くのが自然です。増員であれば、「新しい事業を始めるため」「取引先が増えたため」と具体的な答えが返ってくるはずです。答えがあいまいだったり、話題をそらされたりする場合は、別の角度から聞いてみてください。
前任者や職場の人数を聞く
「配属先は何人の部署で、どのような役割の方がいらっしゃいますか」「入社後は、どなたから仕事を教わることになりますか」と聞くと、職場の体制が見えてきます。教える人がはっきりしていれば、受け入れの準備ができていると考えられます。
定着の状況を聞く
「この部署で長く働いている方は、どのくらいの年数の方が多いですか」と聞くと、定着の様子が分かります。「辞めた人は何人ですか」と直接聞くより、答えやすい聞き方です。
入社後の流れを聞く
「入社後の最初の3か月は、どのような流れで仕事を覚えていくことになりますか」と聞くと、研修や引き継ぎの準備があるかが分かります。具体的な流れが説明されれば、受け入れの体制が整っている可能性が高いと言えます。
面接は、会社が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が会社を確かめる場でもあります。聞きたいことを遠慮して入社してから後悔するより、面接の段階で確かめておくほうが、双方にとって良い結果になります。
労働条件は書面で確かめる
募集の理由と並んで大事なのが、労働条件を書面で確かめることです。求人票と実際の労働条件が違うというトラブルは、増員か欠員かという問題よりも、生活に直接響きます。
求人の段階で示される条件
求人を出す企業は、仕事の内容、契約の期間、試用期間、就業の場所、労働時間、休憩と休日、賃金、加入する保険などを明示する必要があります。厚生労働省によると、令和6年4月からは、就業場所や業務の変更の範囲など、募集の時点で明示すべき事項が追加されました。変更の範囲とは、入社後に勤務地や仕事内容がどこまで変わりうるかのことです。
増員と書かれていても、入社後すぐに別の部署や拠点に回される可能性がある場合は、この変更の範囲に表れることがあります。求人票と面接での説明が一致しているかを確かめてください。
労働条件通知書を受け取る
内定が出たら、労働条件通知書を書面かメールなどで受け取ります。労働条件通知書とは、賃金や労働時間などの労働条件を会社が働く人に示す文書のことです。求人票の内容と見比べて、違いがないかを1項目ずつ確かめます。違いがあれば、入社を決める前に理由を聞いてください。
口頭で「入社したら説明します」と言われても、書面で受け取るまでは入社を決めないことが、自分を守るうえで大切です。
見比べるときに特に注意したいのは、賃金の内訳です。求人票では「月給25万円以上」と書かれていても、労働条件通知書を見ると、その中に一定時間分の残業代があらかじめ含まれていることがあります。基本給がいくらで、何時間分の残業代が含まれているのか、それを超えた分は別に支払われるのかを確かめてください。試用期間中の賃金や雇用形態が本採用後と違う場合も、その期間と条件が書かれているかを見ておきます。
欠員募集と分かったときに確かめること
面接で聞いてみたら、実は欠員の補充だったと分かることもあります。その場合でも、応募をやめる必要はありません。欠員募集ならではの確かめ方があります。
前任者が辞めた理由
前任者が辞めた理由は、聞ける範囲で聞いてみてください。「前任の方は、どのような理由で退職されたのでしょうか」と聞いて、「家庭の事情で」「キャリアアップのために転職された」といった具体的な答えが返ってくれば、職場そのものに大きな問題がある可能性は低いと考えられます。答えを濁される場合は、それ自体が1つの情報です。
引き継ぎの期間
前任者がまだ在籍しているなら、引き継ぎの期間があるかを確かめます。前任者がすでに辞めている場合は、誰が仕事を教えてくれるのか、業務の手順書のようなものがあるのかを聞いておきます。引き継ぎがないまま1人で仕事を任されると、入社直後の負担が大きくなります。
同じ職種の過去の募集
同じ職種で、ここ1年から2年に何回募集したかを聞くのも1つの方法です。何度も募集している場合は、その理由を聞いてみてください。事業の拡大で増やしているのか、辞める人が続いているのかで、職場の見え方は大きく変わります。
転職エージェントを通して応募する場合
転職エージェントなどの職業紹介の事業者を通して応募する場合は、エージェントに募集の背景を聞くことができます。エージェントは企業から採用の事情を聞いていることが多く、求人票には書かれていない理由を知っていることもあります。
職業安定法の改正では、職業紹介の事業者にも、求人情報を的確に表示する義務が課されています。虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、情報を正確で最新の内容に保つための措置をとる必要があります。職業紹介の事業者が許可を受けているかどうかは、厚生労働省の人材サービス総合サイトで確かめられます。
エージェントに聞くときは、「この募集は増員と欠員のどちらですか」「この部署で最近辞めた方はいますか」と、率直に聞いて構いません。エージェントにとっても、入社後すぐに辞められることは避けたいため、知っている範囲で答えてくれるはずです。
求人票と実際が違ったときの相談先
入社してみたら求人票と条件が違っていた、面接で求人票より低い賃金を示された、といった場合は、一人で抱え込まずに相談してください。相談先は、求人をどこで見つけたかや、問題の中身によって選びます。
| 相談先 | 向いているケース |
|---|---|
| ハローワーク求人ホットライン | ハローワークで見つけた求人の内容が実際と違った |
| 都道府県労働局 | 民間の求人サイトや求人誌の求人の内容が実際と違った |
| 総合労働相談コーナー | 採用や労働条件、職場のトラブル全般 |
| 労働基準監督署 | 労働条件の明示がないなど、労働基準法の違反が疑われる |
| 消費生活センター | 応募したら教材や登録料の支払いを求められた |
ハローワーク求人ホットライン
ハローワークやハローワークインターネットサービスで公開されている求人の内容が実際と違っていた場合は、ハローワーク求人ホットラインに申し出ることができます。
ハローワークやハローワークインターネットサービスで公開・紹介している求人の内容が実際と違っていた場合には、「ハローワーク求人ホットライン」にお申し出ください。担当のハローワークにおいて、事実を確認の上、会社に対して是正指導を行います。 出典: ハローワークインターネットサービス
このページには、「面接に行ったら、求人票より低い賃金を提示された」「求人票と違う仕事の内容だった」「正社員と聞いて応募したのに、非正規雇用の形態だった」といった例が並んでいます。最寄りのハローワークの窓口でも相談できます。
都道府県労働局と総合労働相談コーナー
民間の求人サイトや求人誌で見つけた求人の内容が実際と違った場合は、都道府県労働局に相談できます。厚生労働省のリーフレットでも、求人情報と実際の労働条件などが異なるトラブルは、近くの都道府県労働局に相談するよう案内されています。
また、各地の労働局や労働基準監督署の中にある総合労働相談コーナーでは、募集や採用を含むあらゆる労働問題の相談を、予約なしで受け付けています。働いている人だけでなく、就職活動中の人や学生からの相談も受けています。
応募の時点でお金を求められたら
応募したら、仕事に必要だとして教材や機材の購入、登録料の支払いを求められた、という場合は、雇用の問題というより、消費者としてのトラブルにあたることがあります。消費者ホットライン188に電話すると、近くの消費生活センターなどの相談窓口につながります。
業務委託やSNSの募集で気をつけること
「増員」「メンバー大募集」といった言葉は、雇用の求人だけでなく、業務委託の仕事の募集でもよく使われます。在宅ワークや副業の仕事を探している人は、こちらにも注意が必要です。
業務委託の募集にもルールがある
2024年11月1日に施行されたフリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)では、従業員を使用してフリーランスに仕事を発注する事業者が、広告などで仕事の募集情報を出すときに、虚偽の表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、情報を正確で最新の内容に保たなければならないと定められています。
SNSの募集で欠けていてはいけない情報
厚生労働省は、SNSなどを通じてフリーランスを募集する場合について、次のように説明しています。
募集情報の中でも、(1)特定受託事業者の募集を行う者の氏名又は名称、(2)住所(所在地)、(3)連絡先、(4)業務の内容、(5)業務に従事する場所、(6)報酬 を欠くものについては「誤解を生じさせる表示」に該当するものとして、本法第12条違反となります。 出典: 厚生労働省 フリーランス・事業者間取引適正化等法
厚生労働省は、この説明の背景として、インターネットで犯罪の実行役を集める、いわゆる「闇バイト」の募集が、通常の募集と見分けにくい形で行われている状況を挙げています。「人手が足りないので増員中」「簡単な作業で高収入」といった言葉で人を集め、会社名や住所、仕事の中身をはっきり書かない募集は、応募しないことが自分を守る第一歩です。
募集を見たら、募集している人の名前や会社名、住所、連絡先、仕事の内容、仕事をする場所、報酬の6つがそろっているかを確かめてください。1つでも欠けている場合は、応募する前に問い合わせ、答えがなければ応募を見送るのが安全です。
応募の前に作っておく確認リスト
ここまでの内容を、応募の前に使える確認リストにまとめます。気になる求人を見つけたら、上から順に確かめてみてください。
求人票で確かめること ・募集人数と配属先の人数のつり合い ・掲載日と更新日 ・同じ職種の求人が過去にも出ていたか ・「急募」「即戦力」など、急いでいる事情を示す言葉がないか ・仕事の内容、勤務地、賃金、雇用形態が具体的に書かれているか ・就業場所と業務の変更の範囲
面接で確かめること ・募集の背景(増員か欠員か、その理由) ・配属先の人数と、仕事を教えてくれる人 ・部署で長く働いている人の年数 ・入社後3か月の流れ ・前任者がいる場合は、引き継ぎの期間
内定のあとに確かめること ・労働条件通知書を書面かメールで受け取ったか ・求人票や面接の説明と違う点がないか
このリストのすべてに完璧な答えが返ってくる会社は多くありません。大事なのは、聞いたことに対して会社がどれだけ具体的に、誠実に答えてくれるかです。答えの中身と同じくらい、答え方そのものが、その会社の働きやすさを映しています。
入社後に「話が違う」と感じたら
入社してから、求人票や面接での説明と実態が違うと気づくこともあります。そのときに取りたい動き方を順に整理します。
1. 記録を残す
まず、何がどう違うのかを記録します。求人票の画面の保存、労働条件通知書、面接でのやりとりのメモ、実際の勤務時間や仕事の内容の記録です。求人票はあとで掲載が終わると見られなくなるので、応募の時点で保存しておく習慣をつけておくと、こうした場面で役に立ちます。
2. 社内で確かめる
次に、上司や人事の担当者に、違いについて確かめます。説明の行き違いや、一時的な事情による違いであることもあります。「求人票では○○と書かれていましたが、現在の状況について教えていただけますか」と、事実の確認から入るのが基本です。
3. 外の窓口に相談する
社内で確かめても解決しない場合は、前の節で紹介した相談先に相談します。労働基準法では、明示された労働条件が事実と違う場合、働く人はすぐに労働契約を解除できると定められています。ただし、実際にどう動くのがよいかは、違いの中身や生活の事情によって変わります。辞めるかどうかを一人で決める前に、総合労働相談コーナーなどで見通しを聞いてから判断してください。
増員でも欠員でも、確かめることは同じ
ここまで、増員募集の言葉の読み方を見てきました。最後に、大事な点を整理します。
増員か欠員かは、求人票の言葉だけでは分かりません。そして、欠員募集であること自体は悪いことではありません。大事なのは、募集の理由を聞いたときに会社が具体的に答えられるか、職場の体制や受け入れの準備が整っているか、労働条件が書面で示されているか、という点です。
20年近く在宅ワークや求人の市場を見てきた立場から言えば、入社後に後悔しにくい人ほど、求人票の言葉をうのみにせず、自分で確かめる手間を惜しんでいません。気になる言葉をメモし、面接で聞き、書面で確かめる。この3つの手順は、増員募集に限らず、どの求人にも使えます。最初は手間に感じても、2社目、3社目と応募を重ねるうちに、確かめる観点が自然に身につき、求人票を読む時間そのものも短くなっていきます。言葉の印象ではなく、確かめた事実で応募先を選ぶ習慣が、転職の失敗を減らす一番の近道です。
提示された給与が世の中の水準と比べて妥当かを確かめておくことも、条件を見極める助けになります。たとえばソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場のように、職業ごとの年収の分布を見ておくと、相場から大きく外れた条件に気づきやすくなります。
よくある質問
Q. 求人票の「増員募集」は嘘のことが多いのですか?
すべてが嘘というわけではありません。実際に事業が伸びて人を増やしている会社も多くあります。一方で、実態は欠員の補充なのに印象をよくするために増員と書く求人もあります。求人票に募集の理由を書く義務はないため、言葉だけで判断せず、面接で募集の背景や配属先の人数を具体的に聞いて確かめるのが確実です。
Q. 欠員募集だと何か問題があるのですか?
欠員募集であること自体は問題ではありません。仕事の内容がはっきりしていて、前任者から引き継ぎを受けられることも多く、入社後の働き方を想像しやすい利点があります。気をつけたいのは、同じ職種の募集が何度も出ているなど、人が定着しない事情が隠れている場合です。定着の状況や教える人の有無を面接で確かめてください。
Q. 求人票と実際の条件が違ったら、どこに相談すればいいですか?
ハローワークで見つけた求人なら、ハローワーク求人ホットラインや最寄りのハローワークに申し出ると、事実を確認のうえ会社に是正指導が行われます。民間の求人サイトや求人誌の求人なら、都道府県労働局に相談できます。採用や労働条件のトラブル全般は、総合労働相談コーナーで予約なしに相談できます。
Q. 面接で募集の理由を聞いても失礼になりませんか?
聞き方を工夫すれば失礼にはなりません。「今回の募集はどのような背景で行われているのでしょうか」「配属先は何人の部署ですか」「入社後はどなたから仕事を教わりますか」と聞くと、角を立てずに職場の体制が分かります。面接は会社が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が会社を確かめる場でもあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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