遺品整理の業界へ転職する前に知っておきたい仕事の中身と求人の選び方

上野 琴音
上野 琴音
遺品整理の業界へ転職する前に知っておきたい仕事の中身と求人の選び方

この記事のポイント

  • ✓遺品整理の業界へ転職する前に
  • ✓現場作業・特殊清掃・見積もり営業など職種ごとの仕事の中身
  • ✓求人票で確かめる給与と雇用の形

遺品整理の業界へ転職を考えているものの、実際の仕事がどれほど体にこたえるのか、気持ちの面で続けられるのか、どの求人を選べば失敗しないのかが分からない。遺品整理への転職を調べる人の多くが、この不安を抱えています。結論から言うと、遺品整理の業界は未経験から入りやすい一方で、同じ「遺品整理スタッフ」という求人でも、現場作業、特殊清掃、見積もりや買取の営業で仕事の中身も給与の決まり方もまったく違います。この記事では、職種ごとの仕事の中身、求人票で確かめる点、関わる法律、前職の経験の生かし方、面接で聞いておくことを、転職前につまずきやすい順に整理します。

遺品整理の業界で人手が求められている理由

遺品整理とは、亡くなった人が残した家財や持ち物を、遺族に代わって仕分けし、形見として残すもの、売るもの、処分するものに分けて片付ける仕事です。かつては家族や親族が時間をかけて行うものでしたが、いまは専門の会社に頼む家庭が増えています。

背景には、高齢化と一人暮らしの増加があります。内閣府の高齢社会白書(令和7年版)によれば、令和6年10月1日現在の65歳以上の人口は3,624万人で、総人口に占める割合は29.3%です。子どもが遠方に住んでいる、仕事が忙しくて実家の片付けに通えない、賃貸住宅の退去期限が迫っている、といった事情から、短期間で片付けを任せられる専門の会社への需要が高まっています。

求人の現場でも、需要の伸びを理由にした募集が見られます。

【求人の募集背景】需要増加(前年比150%)により現場を任せられる仲間を増やすための募集です!経験者はもちろん、未経験から遺品整理に...遺品整理スタッフを募集中/ V 年間休日120日以上(土日祝休み!... 出典: 求人ボックス

このように、未経験者を受け入れて現場で育てる会社が多いのが、遺品整理の業界の特徴です。ただ、需要が伸びている業界には、新しく参入する会社も多く集まります。会社によって仕事の進め方や働く環境に大きな差があるので、転職先を選ぶときは、求人票の条件だけでなく、会社の姿勢まで確かめることが大切です。

遺品整理の業界にある4つの職種

「遺品整理の仕事」とひとくくりにされがちですが、業界の中には大きく4つの職種があります。転職先を選ぶ前に、自分がどの職種で働きたいのかを決めておきましょう。

1つ目は、現場作業スタッフです。依頼者の家で遺品を仕分け、梱包し、運び出し、部屋を掃除する仕事です。業界の求人で最も多いのがこの職種で、未経験歓迎の募集がほとんどです。

2つ目は、特殊清掃スタッフです。孤独死などで発見が遅れた部屋の清掃や消臭、消毒を行う仕事です。遺品整理と組み合わせて依頼されることが多く、遺品整理の会社が特殊清掃も手がけている例が少なくありません。専用の薬剤や防護具を使う、専門性の高い仕事です。

3つ目は、見積もり・相談の担当です。依頼を受けたら依頼者の家を訪ね、部屋の状態と荷物の量を見て、作業の人数や日数、料金を見積もります。遺族の話を聞き、作業の内容を説明して契約を結ぶまでを担当します。求人では「営業」「アドバイザー」「コンサルタント」などの名前で募集されます。

4つ目は、買取・査定の担当です。遺品の中には、家具や家電、着物、貴金属、骨董品など、売れるものが含まれていることがあります。その価値を見極め、買い取って再販する仕事です。

同じ会社の中で、現場作業から始めて見積もりや査定の担当に移っていく人も多くいます。最初から営業や査定の職種で入ることもできますが、現場の作業を知らないまま見積もりをすると、必要な人数や時間を読み違えやすくなります。未経験で転職するなら、まず現場から入る道が一般的です。

現場作業スタッフの仕事の中身

現場作業スタッフの1日は、会社やトラックの待機場所に集まるところから始まります。その日の現場の情報と作業の分担を確認し、梱包資材や道具をトラックに積んで出発します。

現場に着くと、まず遺族や管理会社の担当者にあいさつをし、作業の範囲を確かめます。形見として残すもの、探してほしいもの(通帳、印鑑、権利証、写真など)を確認してから、部屋ごとに仕分けを始めます。押し入れや引き出しの奥から、遺族が探していた書類や現金が見つかることもあり、1つひとつを丁寧に確かめる作業が欠かせません。

仕分けが終わると、処分するものを梱包して運び出します。大きな家具は分解し、階段やエレベーターを使ってトラックに積み込みます。集合住宅では、他の住人の迷惑にならないよう共用部分を養生し、作業の時間帯にも気を配ります。最後に、物がなくなった部屋を掃除して、遺族や管理会社に引き渡します。

1件の現場にかかる時間は、部屋の広さと荷物の量で大きく変わります。ワンルームなら数時間で終わることもありますが、一戸建てで何十年分の家財が残っていると、数人で数日かかることもあります。

現場作業の仕事で、転職者が最初につまずきやすいのは体力です。重い家具を運び、何度もしゃがんで箱を詰め、階段を上り下りする作業が続きます。前職が事務職だった人は、最初の数週間は筋肉痛に悩まされることが多いと覚悟しておきましょう。応募を決めた段階から、散歩や階段の上り下りで脚の力をつけておくと、働き始めがずっと楽になります。

現場作業スタッフの1日の流れ

仕事のイメージをつかむために、一戸建ての遺品整理を担当する日の流れを例として並べてみます。実際の時間割は会社と現場によって変わります。

  • 7時45分:会社に集合し、朝礼で現場の住所、間取り、遺族から頼まれている探し物、作業の分担を確認する
  • 8時15分:梱包資材、工具、養生シート、台車をトラックに積んで出発する
  • 9時:現場に到着。遺族にあいさつし、残すものと探し物をもう一度確かめる。玄関や廊下を養生する
  • 9時30分から12時:部屋ごとに仕分け。貴重品や書類は専用の箱に分け、作業の責任者に渡す
  • 12時から13時:休憩。夏場はトラックの中や日陰で体を冷やす
  • 13時から15時30分:家具の分解と搬出。2人1組で運び、トラックに積み込む
  • 15時30分から16時30分:空になった部屋を掃除し、遺族と一緒に仕上がりを確かめる。見つかった貴重品を手渡す
  • 17時30分:会社に戻り、積み荷の処理、作業の報告、翌日の準備をして終了

一戸建てで荷物が多いと、この流れが2日、3日と続きます。反対に、集合住宅の1部屋なら午前中で終わり、午後に別の現場へ移ることもあります。移動の多い日は、運転の時間も長くなります。

最初の数週間は、仕分けの判断に迷う場面が多いはずです。迷ったものは自分で判断せず、責任者に確かめる。この習慣を最初に身につけておくと、大きな失敗を防げます。

体を守る準備と道具

遺品整理の仕事を長く続けるには、体を守る準備が欠かせません。転職して最初の数か月で腰や膝を痛め、仕事を離れてしまう人もいます。

まず身につけたいのは、重いものの持ち上げ方です。荷物にできるだけ近づき、膝を曲げて腰を落とし、背中をまっすぐにしたまま脚の力で持ち上げます。体をひねりながら持つと腰を痛めやすいので、向きを変えるときは足を動かします。大きな家具は必ず2人以上で運び、台車や運搬用のベルトを使います。

次に、作業前の準備運動です。股関節や肩を回し、太ももやふくらはぎを伸ばす簡単な運動を数分行うだけで、けがの予防につながります。作業後に腰や脚をゆっくり伸ばしておくと、翌日に疲れを残しにくくなります。

道具の面では、滑りにくい安全靴、厚手の作業用手袋、マスク、動きやすい作業着が基本です。ほこりやカビの多い部屋に入ることもあるので、マスクは使い捨てのものを多めに用意しておきます。会社から支給されるものと自分で用意するものを、入社前に確かめておきましょう。

夏場の作業では、熱中症の対策が欠かせません。エアコンの止まった部屋での作業や、炎天下での積み込みが続くことがあります。こまめに水分と塩分をとり、体調がおかしいと感じたらすぐに休むことが大切です。休憩の取り方や、暑さ対策の道具を会社が用意しているかも、職場選びの判断材料になります。

特殊清掃の仕事に進む前に知っておきたいこと

遺品整理の会社に入ると、特殊清掃の現場に関わる可能性があります。求人票に「特殊清掃あり」と書かれている場合は、その意味をよく理解してから応募してください。

特殊清掃の現場は、亡くなってから時間がたって発見された部屋が多く、強いにおいや害虫、体液の汚れが残っていることがあります。作業では、防護服、マスク、ゴーグル、手袋を身につけ、専用の薬剤で汚れを取り除き、消毒と消臭を行います。体液の染み込んだ床材や畳を撤去することもあります。

この仕事に就くための国家資格はありませんが、薬剤の扱いや感染の防止について正しい知識が欠かせません。遺品整理士の資格を認定している一般財団法人遺品整理士認定協会の関連団体からは、2026年4月に「化学物質安全管理者」という民間の認定資格が始まったと告知されています。会社がどのような研修を用意しているか、防護具が十分に支給されるかは、入社前に必ず確かめておきたい点です。

精神的な負担も、特殊清掃を考えるうえで避けて通れません。亡くなった人の暮らしの痕跡に直接触れる仕事なので、慣れるまでは気持ちが沈むこともあります。現場の後に同僚と話す時間がある、つらいときに相談できる上司がいる、といった職場の雰囲気は、長く続けられるかどうかを大きく左右します。

特殊清掃の現場に入るかどうかは、本人の意思を尊重する会社もあれば、全員が交代で担当する会社もあります。自分が担当するのかどうか、担当しない選択ができるのかを、面接ではっきり聞いておきましょう。

見積もり・買取の担当の仕事の中身

見積もりの担当は、遺族からの問い合わせを受けて依頼者の家を訪ね、作業の内容と料金を提案する仕事です。部屋の広さ、荷物の量、運び出しの経路、駐車の場所などを確かめ、必要な人数、トラックの台数、作業の日数を見積もります。

この仕事で求められるのは、遺族の気持ちに寄り添いながら、料金をはっきり説明する力です。遺族は、大切な人を亡くした直後で気持ちが整理できていないことが多く、料金の話を切り出すのにも気遣いが要ります。それでも、追加料金が出る可能性や、買取で差し引ける金額の見込みを最初に丁寧に説明しておかないと、作業後にトラブルになります。

買取・査定の担当は、遺品の中から売れるものを見つけ、その価値を見極めて買い取る仕事です。家具や家電は型番から年式を読み取り、着物や貴金属、骨董品はそれぞれの相場を知っている必要があります。中古品を買い取って売るには、事業者が古物営業法に基づく都道府県公安委員会の許可を受けていることが前提です。

見積もりや買取の担当の求人では、給与に歩合が含まれていることがよくあります。成約の件数や買取の金額に応じて給与が増える仕組みは、成果を出せば収入が増える一方、経験が浅いうちは安定しにくい面もあります。歩合の割合と、成果が出なかった月の最低保障の有無を、応募の前に確かめておきましょう。

求人票で確かめておきたい給与と雇用の形

遺品整理の求人票を読むときは、給与の数字だけでなく、その決まり方と雇用の形をセットで確かめることが大切です。

まず、雇用の形です。正社員、契約社員、アルバイト、単発の作業スタッフ、業務委託など、同じ会社でも複数の形で募集していることがあります。業界の求人には、時給の高い単発の募集も見られます。

【仕事内容】<立川エリア>高時給1850円!未経験OK!遺品整理・不用品回収の作業スタッフ 立川エリアで働く!遺品整理のオシゴト/ 出典: 求人ボックス

単発のアルバイトは、転職の前に仕事を体験してみる手段として使えます。数回働いてみて、体力や気持ちの面で続けられそうかを確かめてから正社員の求人に応募すれば、転職の失敗を減らせます。

次に、給与の内訳です。基本給と、現場ごとの手当、歩合、残業代がどう組み合わさっているかを確かめます。「月給25万〜40万円」のように幅のある書き方の場合、下限の金額がどの条件で支払われるのか、上限に届くにはどんな成果が必要なのかを面接で聞いておきましょう。

さらに、労働時間と休日です。遺品整理の現場は、遺族の都合に合わせて土日に入ることも多く、繁忙期には作業が長引くこともあります。年間休日の日数、土日の出勤の頻度、残業代の支払い方を確かめておきます。

業務委託の募集には特に注意が必要です。雇用ではなく個人事業主として仕事を受ける形なので、最低賃金や残業代の決まりは適用されず、けがをしたときの労災保険も原則として使えません。求人票に「業務委託」と書かれていたら、雇用の求人とは別物として条件を読み比べてください。

転職先の会社を見極めるポイント

需要が伸びている業界では、会社によって仕事の進め方に大きな差があります。転職先を選ぶときは、次の点で会社の姿勢を見極めましょう。

1つ目は、法律に沿って事業をしているかどうかです。家庭から出る不用品を処分のために運ぶことは、一般廃棄物の収集・運搬に当たります。廃棄物処理法は、これを業として行うには市町村長の許可が必要だと定めています。

一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。 出典: e-Gov法令検索(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)

許可を持たない会社も、許可業者に処分を委託するなど適正な方法をとっていれば問題ありません。問題なのは、許可なく回収したものを不法に処分しているような会社です。面接で「処分はどのように行っていますか」と聞いて、はっきり答えられる会社を選びましょう。古物商の許可番号がサイトに書かれているかも、あわせて見ておきます。

2つ目は、料金の示し方です。見積もりの内訳を丁寧に示している会社は、現場でも遺族とのトラブルが起きにくく、働く人が遺族の不満を直接受ける場面も少なくなります。

3つ目は、教育と安全の仕組みです。未経験者に誰がどう教えるのか、重いものを運ぶときの決まりはあるのか、夏場の作業で休憩と水分補給の時間が確保されているのかを確かめます。

4つ目は、買取の進め方です。事業者が依頼者の家で物品を買い取る「訪問購入」には、特定商取引法のルールがかかります。頼まれていない人への飛び込みの勧誘は禁じられ、契約の書面を受け取った日から8日以内なら、売った人は契約を解除できます。こうしたルールを社員に教えている会社なら、現場で迷ったときにも安心です。

現場で起こりやすいトラブルと防ぎ方

遺品整理の現場では、いくつかのトラブルが繰り返し起きています。転職前に知っておくと、働き始めてから慌てずにすみます。

1つ目は、遺族が残したかったものを処分してしまうトラブルです。ある会社で働く人から聞いた話に、仕分けの途中で古い手帳の束を処分の箱に入れてしまい、後から遺族に「父が毎日つけていた日記だった」と言われたというものがあります。幸い、まだ積み込む前だったので取り出せましたが、それ以来、その会社では手書きのものはすべて確認用の箱に分け、最後に遺族に見てもらうようにしたそうです。

2つ目は、現金や貴重品の扱いです。遺品整理の現場では、たんすの奥や本の間から現金が見つかることがあります。見つけたものは、必ず複数の人がいる場で記録し、遺族に手渡すのが基本です。1人で扱うと、後で「もっとあったはずだ」と言われたときに説明できません。

3つ目は、近隣とのトラブルです。集合住宅での作業では、共用の廊下やエレベーターを長時間使うことになります。作業の前に管理会社に届け出る、エレベーターや壁を養生する、大きな音の出る作業の時間帯に気を配る、といった配慮が欠かせません。

4つ目は、料金をめぐる行き違いです。見積もりのときに見えなかった荷物が押し入れの奥から大量に出てきて、追加の料金が必要になることがあります。現場のスタッフが勝手に判断せず、責任者が遺族に説明して了承を得てから作業を進める、という手順が決まっている会社を選ぶと安心です。

前職の経験を生かせる場面

遺品整理の業界には、さまざまな業界から転職してくる人がいます。一見関係のなさそうな前職の経験でも、生かせる場面は意外に多くあります。

引越しや運送の仕事をしていた人は、搬出や積み込みの技術をそのまま生かせます。家具の持ち方、トラックへの効率的な積み方、建物を傷つけない養生の仕方は、遺品整理の現場でも欠かせない技術です。

介護や福祉の仕事をしていた人は、高齢の依頼者や遺族との接し方に強みがあります。施設に入居した人の部屋を片付ける依頼では、施設の職員とのやり取りもスムーズに進められます。

営業や接客の仕事をしていた人は、見積もりや相談の担当で力を発揮しやすいでしょう。遺族の話を聞き、気持ちに寄り添いながら料金を説明する仕事は、接客の経験がそのまま生きる場面です。

リサイクルショップや古物の仕事をしていた人は、買取・査定の担当で即戦力になれます。家具や家電の相場、ブランド品の見分け方を知っていることは、遺品の中から価値のあるものを見つける力になります。

事務の仕事をしていた人も、通帳や保険証券、年金の書類など、遺族が手続きに必要な書類を見落とさずに見つける場面で、書類の扱いに慣れていることが役に立ちます。面接では、前職の経験がどの場面で生きるのかを具体的に伝えると、採用の判断材料になります。

気持ちの面で続けられるかを確かめる

遺品整理の仕事は、体力だけでなく、気持ちの面での向き不向きがはっきり出る仕事です。転職を決める前に、自分が続けられるかを考えておきましょう。

遺品整理の現場では、亡くなった人の暮らしがそのまま残っています。食器棚に並んだ茶碗、壁に貼られた家族の写真、書きかけの日記。そうしたものに触れるたびに、その人の人生を感じる場面があります。それを重く感じて仕事を離れる人もいれば、「最後の片付けを任せてもらえる仕事」として誇りを持って続ける人もいます。

教える仕事の世界でもよく言われることですが、続けられる人とそうでない人の違いは、最初の数か月で「つらさの理由」を言葉にできるかどうかにあります。体がつらいのか、気持ちがつらいのか、職場の人間関係がつらいのか。理由が分かれば、道具や休み方を変える、担当の現場を相談する、職場を変えるなど、打つ手が見えてきます。

遺族の悲しみに接する場面もあります。作業中に遺族が涙を流すこともあり、どう声をかければよいか迷うことがあるでしょう。無理に慰めの言葉を探す必要はありません。作業を丁寧に進め、大切なものを見つけたらそっと手渡す。その誠実さが、遺族にとって何よりの支えになります。

転職の前に単発のアルバイトで現場を体験しておくと、こうした気持ちの面の向き不向きを確かめられます。1回だけでなく、何回か違う現場を経験してから判断すると、より確かな手応えが得られます。

年齢や性別で不利になるか

遺品整理の業界に転職を考える人からは、「40代、50代からでも入れるか」「女性でも働けるか」という質問がよく出ます。

年齢については、求人の多くが年齢を問わず募集しています。法律で、募集や採用の際の年齢制限は原則として禁じられているためです。実際に、別の業界で長く働いてから転職してくる人が多い業界で、人生経験の長さが遺族との接し方に生きる場面もあります。ただし、体を使う仕事であることは変わらないので、自分の体力に合わせて、現場作業の比重が少ない見積もりや査定の担当を目指すなど、職種の選び方を工夫するとよいでしょう。

性別についても、女性が働いている会社は少なくありません。一人暮らしの女性の部屋を片付ける依頼では、遺族から「女性のスタッフに担当してほしい」と頼まれることもあります。衣類や化粧品、私的な手紙などを扱う場面では、女性のスタッフがいることが遺族の安心につながります。重い家具の運搬は男性のスタッフと分担し、仕分けや梱包、遺族とのやり取りを中心に担当するなど、役割を分けている会社もあります。

いずれの場合も、自分の体力や得意なことを面接で正直に伝え、どの作業を中心に担当するのかを確かめておくことが、入社後の行き違いを防ぐ一番の方法です。

転職を決める前に、在職中にしておくこと

遺品整理の業界への転職を考え始めたら、いまの仕事を続けているうちに準備しておきたいことがあります。

1つ目は、運転免許の確認です。遺品整理の現場ではトラックを使うことが多く、普通自動車の運転免許があると担当できる仕事が広がります。免許を取った時期によって運転できる車の大きさが違うので、自分の免許で運転できる車の種類を確かめておきます。会社によっては、入社後に中型免許の取得を支援しているところもあります。

2つ目は、単発のアルバイトでの体験です。休日を使って何回か現場に入ってみれば、体力の面でも気持ちの面でも、続けられるかどうかの手応えがつかめます。複数の会社で働いてみると、会社ごとの仕事の進め方の違いも見えてきます。

3つ目は、生活費の見通しを立てることです。転職直後は、繁忙期と閑散期で収入が変わることもあります。歩合の含まれる職種を選ぶなら、成果が出るまでの数か月を乗り切れる備えを用意しておくと、焦らずに仕事を覚えられます。

4つ目は、家族への説明です。遺品整理の仕事は土日の出勤が多く、特殊清掃の現場に入れば帰宅後に気持ちが沈む日もあるかもしれません。仕事の中身を家族に話し、理解を得ておくと、働き始めてからの支えになります。

面接で聞いておきたいこと

遺品整理の会社の面接では、会社が応募者を見るだけでなく、応募者が会社を見極める場でもあります。次のような質問を準備しておきましょう。

  • 1日に担当する現場の数と、1件あたりの作業人数
  • 特殊清掃の現場を担当するかどうか、担当しない選択ができるか
  • 未経験者の研修の期間と内容、先輩との同行の有無
  • 給与の内訳(基本給、手当、歩合、残業代)と、繁忙期と閑散期の差
  • 土日の出勤の頻度と、休日の取り方
  • 処分の方法(許可業者への委託など)と、買取のときの説明の手順
  • けがをしたときの労災保険の扱いと、防護具や運搬道具の支給

質問するときは、遠慮せずに具体的に聞くことが大切です。「特殊清掃はありますか」ではなく、「特殊清掃の現場には月に何回くらい入りますか」と聞くと、実態に近い答えが返ってきます。

面接で聞かれることも準備しておきましょう。よく聞かれるのは、体力に自信があるか、運転免許を持っているか、土日に働けるか、なぜ遺品整理の仕事を選んだのか、といった質問です。とくに志望の理由は、仕事の重さを理解しているかを見るための質問なので、「人の役に立ちたい」だけでなく、仕事の中身を理解したうえでの理由を伝えられるとよいでしょう。

転職後のキャリアの広げ方

遺品整理の業界に入った後のキャリアには、いくつかの道があります。

1つは、現場のリーダーになる道です。現場作業の経験を積むと、複数のスタッフをまとめて作業を指揮する立場を任されるようになります。作業の段取りを組み、遺族とのやり取りを担当し、新人を育てる役割です。

もう1つは、見積もりや査定の担当に移る道です。現場を知っている人の見積もりは正確で、遺族からの信頼も得やすくなります。査定の知識を身につければ、買取の担当として活躍の場が広がります。

さらに、民間資格で知識を補う人もいます。遺品整理士の資格は、遺品整理の進め方や関連する法令を体系的に学べるもので、業界の中で知識を示す材料の1つになります。生前整理の分野に仕事を広げる人もいます。

会社によっては、遺品整理に関わる周辺の仕事に携わる道もあります。相続の手続きを担う司法書士や税理士、不動産の売却を扱う不動産会社、住まいの片付けを相談される介護の事業者などと連携する窓口の担当です。遺族は遺品整理の後に、家の売却や相続の手続きといった次の課題に向き合うことが多く、それぞれの専門家へつなぐ役割を担える人は、会社の中でも重宝されます。

経験を積んだ後に独立する人もいます。ただし、廃棄物の運搬や買取に許可が必要なことを踏まえると、独立は簡単ではありません。許可を持つ業者と連携する仕組みをつくれるかどうかが、独立の成否を分けます。

現場の経験を生かした働き方の組み合わせ

フリーランス・在宅ワーク市場を20年見てきた立場から言えば、体を使う現場の仕事と、自宅でできる仕事を組み合わせて働く人も少なくありません。遺品整理の現場で得た知識は、終活や相続、片付けに関する情報を求める人にとって価値があります。現場の経験をもとに記事を書く仕事は、その代表的なものです。経験者の言葉で書かれた文章は、調べた知識だけで書かれた文章とは説得力が違います。書く仕事の単価の上げ方はWebライターが文字単価を上げる方法【2026年版】|1円→5円のステップで、段階ごとの進め方を紹介しています。

運営者として見てきた実感として、仲介の手数料が乗らない直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側の手取りも厚くなります。手数料0%で直接取引できる場を使えば、現場の仕事の合間に受ける在宅の仕事でも、手元に残る額を確保しやすくなります。書く仕事の相場を確かめたいときは、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で公的統計をもとにした年収の目安を見られます。

遺品整理の業界へ転職するまでの手順を整理すると、まず4つの職種のどれで働きたいかを決め、単発のアルバイトで現場を体験し、求人票で給与の決まり方と雇用の形を確かめ、面接で特殊清掃の有無や処分の方法まで聞いたうえで転職先を選ぶ、という流れです。体と気持ちの両方に負担のある仕事だからこそ、入る前に確かめておくことが、長く続けるための一番の備えになります。

よくある質問

Q. 遺品整理の業界へ未経験でも転職できますか?

未経験歓迎の求人が多く、現場作業スタッフとして入って先輩と一緒に働きながら仕事を覚えるのが一般的です。国家資格は必要ありません。普通自動車の運転免許があると担当できる仕事が広がります。転職の前に単発のアルバイトで現場を体験し、体力や気持ちの面で続けられそうかを確かめておくと失敗が減ります。

Q. 遺品整理の仕事では特殊清掃も必ず担当しますか?

会社によって違います。特殊清掃を専門のチームが担当する会社もあれば、全員が交代で担当する会社もあります。求人票に「特殊清掃あり」と書かれている場合は、月にどのくらい担当するのか、担当しない選択ができるのかを面接で具体的に聞いておきましょう。防護具や研修の用意があるかも確かめてください。

Q. 遺品整理の求人で給与に歩合があるのはどんな職種ですか?

見積もりや相談、買取・査定を担当する職種で、成約の件数や買取の金額に応じた歩合が含まれていることがよくあります。成果を出せば収入が増える一方、経験が浅いうちは安定しにくい面があります。応募の前に、歩合の割合と、成果が出なかった月の最低保障の有無を確かめておきましょう。

Q. 転職先の遺品整理の会社が信頼できるかはどう見分けますか?

家庭から出る不用品の運搬には市町村長の許可が必要なので、処分の方法を面接で聞き、許可業者への委託など適正な方法をはっきり説明できるかを確かめます。古物商の許可番号がサイトに書かれているか、見積もりの内訳を丁寧に示しているか、未経験者の研修や安全の仕組みがあるかも判断材料になります。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年10月3日最終更新:2026年10月6日
上野 琴音

この記事を書いた人

上野 琴音@SOHO編集部

オンライン教育コンテンツクリエイター

元小学校教師。オンライン家庭教師や教育コンテンツ制作のフリーランスに転身。教育・講師・オンラインスクール系の記事を執筆しています。

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