会社を作ったあと税務署に出す書類の一覧|期限つきの早見表

前田 壮一
前田 壮一
会社を作ったあと税務署に出す書類の一覧|期限つきの早見表

この記事のポイント

  • 会社設立税務署届出の全体像を
  • 必ず出すものと必要に応じて出すものに分けて整理しました
  • 法人設立届出書の2か月

登記が終わって登記事項証明書を受け取ると、次は税務署への届出になる。ところが会社設立税務署届出について調べると、書類の名前が10種類以上並んだ一覧が出てきて、どれが自分に要るのか判断がつかない。しかも期限の数え方がそれぞれ違う。2か月以内のもの、1か月以内のもの、事業年度の終わりから逆算するもの。ここで一度止まってしまう人は多い。

整理してみると、全員が必ず出すものは意外と少ない。実質的に必ず出すことになるものを足しても4種類だ。残りは、やることが決まっている人だけが出す書類になる。この記事では、その仕分けを先に済ませたうえで、期限の数え方と出し忘れたときの影響を1つずつ見ていく。

先に早見表。期限が厳しいのは4つ

ひとりで会社を作り、自分に役員報酬を払う、というよくある形を前提に並べるとこうなる。

書類の名前 期限 出す必要がある人
法人設立届出書 設立の日(設立登記の日)以後2か月以内 会社を作った全員
給与支払事務所等の開設届出書 開設の事実があった日から1か月以内 給与や役員報酬を払う会社
青色申告の承認申請書 設立の日以後3か月を経過した日と、第1期の事業年度終了の日のうち早いほうの前日まで 青色申告にしたい会社(実質ほぼ全員)
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 定めなし(早く出すほど早く効く) 給与の支給人員が常時10人未満の会社

このうち、1か月で切れるのが給与支払事務所等の開設届出書だ。いちばん期限が短いのにいちばん見落とされやすい。理由は単純で、多くの解説が法人設立届出書の2か月から説明を始めるため、順番の感覚がずれるからだ。

以下、1つずつ確かめていく。

全員が出す「法人設立届出書」

これは会社を作ったことを税務署に知らせる書類だ。国税庁の案内はこうなっている。

内国法人(国内に本店または主たる事務所を有する法人)である普通法人または協同組合等を設立した場合は、設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に「法人設立届出書」に「定款、寄附行為、規則または規約等の写し」を添付して、e-Taxまたは書面により納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。 出典: nta.go.jp

ここから読み取れることが4つある。

起点は登記の日。定款を作った日でも、資本金を払い込んだ日でもない。登記が完了した日でもなく、登記を申請した日が設立の日になる。登記は申請した日付で成立するので、登記事項証明書に書かれている「会社成立の年月日」がそのまま起点になる。ここを登記完了の通知が来た日と勘違いすると、数日ぶんずれる。

添付するのは定款の写し。公証役場で認証を受けた定款のコピーで足りる。原本を出す必要はない。合同会社なら認証を受けていない定款の写しになる。

出し先は納税地の所轄税務署長。納税地は原則として本店の所在地になる。自宅を本店にしているなら、自宅を管轄する税務署だ。どの税務署が管轄かは国税庁のサイトで郵便番号から調べられる。

e-Taxか書面のどちらか。書面で作る場合は届出書と添付書類を1部、持参または送付する。e-Taxを初めて使う場合は、先に利用者識別番号を取る必要がある。

様式と記載要領は国税庁の内国普通法人等の設立の届出から無料でダウンロードできる。記載要領を先に開いてから書き始めると、書き直しが減る。

出さないとどうなるか

罰則が直接あるわけではない。ただし税務署が会社の存在を把握できないので、申告の時期に届く案内が来ない。法人税の申告期限は事業年度終了の日の翌日から2か月以内で、案内が来なくても期限は動かない。結果として、申告そのものを失念するという形で効いてくる。

もう1つ、消費税との関係がある。資本金の額などによって「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」が必要になる場合があるが、国税庁は、所要の事項を記載した法人設立届出書の提出があった場合はこの届出書の提出は不要としている。設立届をきちんと書いておけば、別の届出を1枚省ける仕組みになっている。

実質的に必ず出す「青色申告の承認申請書」

法人税の申告書を青色申告で出すための承認申請だ。名前のとおり申請なので、出さなければ白色のままになる。

期限の数え方が独特

国税庁の案内はこう書いている。普通法人または協同組合等の設立の日の属する事業年度の場合は、設立の日以後3か月を経過した日と当該事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日まで。

言葉だけだと分かりにくいので、具体的に当てはめてみる。

4月1日に設立し、事業年度を3月末にした場合。3か月を経過した日は7月1日、事業年度終了の日は翌年3月31日。早いのは7月1日なので、その前日の6月30日までに出す ・4月1日に設立し、最初の事業年度を5月31日で切った場合。3か月を経過した日は7月1日、事業年度終了の日は5月31日。早いのは5月31日なので、その前日の5月30日までに出す

後者のように第1期を短くした会社は、期限が一気に前倒しになる。設立と同時に決算月を決めるとき、この関係を頭に入れておかないと間に合わない。設立の日から事業年度終了の日までが3か月に満たない場合の扱いについても別に定めがあるので、短い第1期にするつもりなら、決算月を決める段階で税務署か税理士に確認しておきたい。

何が変わるか

青色申告にすると、いくつかの扱いが認められる。代表的なのは、赤字を翌期以降に繰り越して利益と相殺できる仕組みだ。創業初年度は設立費用や設備の負担が先に出るので、赤字になる会社は珍しくない。その赤字を捨てずに使えるかどうかが、数年単位で効いてくる。

ただし、繰り越せる年数や使える範囲は会社の規模や年度によって定めが変わる。自分の会社に何が適用されるかは、一般論の記事ではなく、税務署か税理士に自分の数字を出して確認するのが確実だ。

役員報酬を払うなら「給与支払事務所等の開設届出書」

ここが、いちばん期限が短くて見落とされやすい。国税庁の説明はこうだ。国内において会社や個人が、新たに給与の支払を始めて源泉徴収義務者となる場合には、給与支払事務所等の開設届出書を、給与支払事務所等を開設してから1か月以内に提出することになっている。

ひとり法人でも、自分に役員報酬を払うなら会社は源泉徴収義務者になる。従業員を雇っていないから関係ない、という整理は間違いだ。会社が代表者に報酬を払う時点で、会社は給与の支払者になる。

提出先は、給与を支払う事務所や事業所などの所在地を所轄する税務署長だ。法人設立届出書の出し先と同じになることが多いが、本店と実際の事務所が別の場所にある場合は分かれることがある。様式は国税庁の給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出にある。

源泉徴収した分をいつ納めるか

源泉徴収した所得税と復興特別所得税は、原則として、給与などを実際に支払った月の翌月10日までに国に納める。役員報酬を毎月払うなら、毎月10日が納付の期限になる。

金額が小さくても回数は減らない。ひとり法人で月に1回の報酬だけでも、年12回の納付が発生する。これを半年に1回にまとめる仕組みが次の申請だ。

毎月の納付を年2回にする「納期の特例」

給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した分を半年分まとめて納められる。国税庁はこの仕組みを納期の特例と呼んでいる。

適用を受けると、1月から6月までに源泉徴収した分は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した分は翌年1月20日が納付期限になる。年12回が年2回になる。

効き始めるタイミングに注意

この申請には提出期限が定められていない。ただし、いつ出しても翌月から効くわけではない点に注意がいる。国税庁の説明では、税務署長から却下の通知がない場合には、申請書を提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされ、申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する所得税および復興特別所得税から適用の対象になる。

具体例として、2月中に申請書を出した場合が示されている。2月支給分は3月10日が納期限のままで、3月から6月支給分が7月10日にまとめられる。つまり、申請書を出した月に支払う給与の分は、従来どおり翌月10日に納めることになる。

設立直後に役員報酬の支払いを始めるなら、最初の支払いより前に出しておくと、1回目から特例に乗せられる。この1回を取りこぼすと、忘れた頃に納付期限が来て延滞税がつく。金額が小さいほど忘れやすいので、設立届と同じ日にまとめて出してしまうのが確実だ。対象や具体例は国税庁の納付期限と納期の特例の解説に載っている。

なお、給与の支給人員が常時10人以上になると要件から外れる。そのときは「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を出す必要がある。人を増やす計画があるなら、この出口の手続きも覚えておきたい。

法人設立届出書で手が止まりやすい欄

記載要領を見ながら書けば埋まるが、判断が要る欄がいくつかある。

事業年度。自分で決める。設立日から1年以内であれば、どこで区切ってもよい。3月末にする会社が多いのは慣習であって、決まりではない ・設立の形態。個人事業から法人にしたのか、まったく新しく作ったのかを選ぶ。個人事業から移行した場合は、その個人事業の情報を書く欄がある ・事業の目的。定款に書いた目的をそのまま写す。登記した内容と食い違わないようにする ・支店や出張所の有無。自宅の1か所だけなら無しでよい ・給与支払いの状況。役員報酬を払う予定があるかを書く。ここに書いた内容と、給与支払事務所等の開設届出書の内容が矛盾しないようにする

書き終えたら、控えを1部作っておきたい。書面で持参する場合は控えにも同じ内容を書いて窓口に出すと、受付印を押して返してもらえる。この控えは、銀行の法人口座を開くときや、取引先から会社の実在を確認されたときに役立つ。

e-Taxで出すなら、先に準備がいる

e-Taxを使うには、まず利用者識別番号が必要になる。これは税務署に「電子申告・納税等開始(変更等)の届出」を出して取得する番号で、届出そのものはオンラインでもできる。

もう1つ、電子証明書が要る。法人の場合、代表者個人のマイナンバーカードを使う方法と、商業登記にもとづく電子証明書を取得する方法がある。前者は手元にカードとカードを読めるスマートフォンがあれば足りる。後者は法務局で手続きをして発行を受ける形になり、有効期間に応じた手数料がかかる。

ここで時間を取られるのが、設立直後の届出が詰まる原因になりやすい。番号の取得と証明書の準備に日数がかかりそうなら、最初の何枚かは書面で出してしまい、落ち着いてからe-Taxに切り替えるという順序でも構わない。届出書の効力に差はない。

設立1年目にやることを月で並べる

4月1日に設立し、事業年度を3月末にした会社を例にすると、こうなる。

時期 やること
設立直後(4月) 年金事務所へ新規適用届(5日以内)。都道府県と市区町村へ地方税の設立届。会社の口座を開く
4月中 給与支払事務所等の開設届出書(1か月以内)。納期の特例の申請
5月 最初の役員報酬の支払いと源泉徴収
6月30日まで 青色申告の承認申請書
5月31日まで 法人設立届出書(2か月以内)
7月10日 納期の特例を使う場合、1月から6月分の源泉所得税を納付
7月ごろ 社会保険の算定基礎届
翌年1月20日 7月から12月分の源泉所得税を納付
翌年1月末 給与支払報告書を市区町村へ、法定調書を税務署へ
翌年5月末 第1期の法人税の確定申告と納付(事業年度終了の翌日から2か月以内)

この表を見ると、設立直後の1か月にどれだけ集中しているかが分かる。登記が終わった直後は会社の口座作りや名刺の準備で気が回らなくなりがちだが、期限の短いものはこの時期に固まっている。

消費税の届出は「出すか出さないか」を先に決める

消費税の届出は、出さないことが答えになる場合と、出さないと損をする場合が分かれる。ここは自分の事業の形で変わるので、期限だけ押さえておく。

設立して間もない法人は、条件によっては消費税を納める義務がない期間がある。一方で、設備投資が先に立つ事業や、取引先の求めで適格請求書発行事業者の登録が要る事業では、あえて課税事業者になる選択をすることがある。

その選択をするための「消費税課税事業者選択届出書」は、原則として選択しようとする課税期間の初日の前日までに出す。ただし新設法人には別の扱いがある。国税庁は、事業を開始した日の属する課税期間からこの制度を選択する場合には、届出書をその事業を開始した日の属する課税期間の終了の日までに提出すれば、その課税期間から選択できると案内している。

つまり、設立した期については、期が終わるまでに出せば間に合う。判断を急がなくてよい代わりに、期末を過ぎたら遡れない。簡易課税制度を選ぶ場合も同じ考え方になる。

どちらが有利かは、売上の見込み、仕入れの割合、取引先が事業者か消費者かで逆転する。一般にはこう扱われるという説明が自分に当てはまるとは限らないので、期末が来る前に税務署か税理士に数字を出して確認しておきたい。

必要に応じて出す書類

国税庁は、必要に応じて提出する書類として次を挙げている。名前だけ知っておけば、必要になったときに調べられる。

棚卸資産の評価方法の届出書。商品や材料の在庫を持つ事業で、評価の方法を選ぶための届出。期限は第1期の確定申告書の提出期限まで ・減価償却資産の償却方法の届出書。設備や機材の償却の方法を選ぶための届出。期限は同じく第1期の確定申告書の提出期限まで ・有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書。有価証券を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限まで。必ずしも第1期とは限らない ・定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書。適用を受けようとする事業年度終了の日まで ・事前確定届出給与に関する届出書。役員に賞与のような形で支給する場合の届出。設立の日以後2か月を経過する日まで

在庫も設備も持たないひとり法人なら、この5つはどれも要らないことが多い。ただし事前確定届出給与だけは、役員報酬の設計によっては検討の対象になる。期限が設立から2か月と短いので、報酬の払い方を決める段階で確認しておきたい。

出す方法は3通りある

e-Tax。国税庁はe-Taxソフトでの作成と提出を案内している。初めて使う場合は利用者識別番号の取得が先になる。受付時間には制限があるため、期限当日の夜に慌てて送ると翌稼働日の提出扱いになることがある。

書面。届出書と添付書類を1部、税務署に持参するか送付する。窓口に行くなら、控えにも記載して持って行くと受付印をもらえる。この控えが、後で銀行や取引先に提出を求められたときに使える。

マイナポータル。法人設立ワンストップサービスを使うと、国税と地方税の設立届、年金事務所やハローワークへの届出を1回の操作でまとめて出せる。使うには法人代表者本人のマイナンバーカードと、カードに対応したスマートフォンかパソコンが要る。代表者以外が出した届出については税務署から後日問い合わせが入ると明記されているので、代表者の環境で操作する必要がある。仕組みの説明は国税庁の法人設立ワンストップサービスの案内にある。

期限を過ぎてしまったら

まず、青色申告の承認申請だけは性格が違う。これは申請なので、期限を過ぎると第1期については承認を受けられない。第2期から改めて申請することになる。第1期が赤字だった場合、その赤字を繰り越せるかどうかに影響が出る。

法人設立届出書と給与支払事務所等の開設届出書は、期限を過ぎても出せる。気づいた時点ですぐ出すのが正解だ。放置するほど、申告や納付の取りこぼしが積み上がる。

源泉所得税の納付が遅れた場合は、本税とは別に不納付加算税や延滞税がつくことがある。金額の大小より、納付の期限を管理できているかどうかが問われる部分になる。

税務署だけでは終わらない

ここまでは国税の話だが、同じ時期に出す先がもう2つある。

都道府県と市区町村。地方税の設立届だ。期限は自治体の条例で決まっていて、全国で統一されていない。東京都の場合、法人を設立したときは法人設立・設置届出書を所管の都税事務所に提出することとされており、申告期限は事業を開始した日から15日以内となっている。添付するのは定款などの写しだ。税務署の2か月に比べてかなり短い。自分の会社の所在地がどの期限かは、必ずその自治体のページで確認したい。

年金事務所。法人は、役員1人だけでも健康保険と厚生年金保険の適用事業所になる。新規適用届の提出期限は事実発生から5日以内で、税務署の期限とは桁が違う。添付する法人登記簿謄本は提出日からさかのぼって90日以内に交付された原本と決められている。

税務署の届出だけ終えて安心してしまい、地方税と社会保険が残っていることに1か月後に気づく、という順序の事故が起きやすい。届出の全体像は最初に一度並べておくのが安全だ。

決算月をどう決めるか

法人設立届出書に書く事業年度は、あとから変えられないわけではないが、変えるには定款の変更と届出が要る。最初に考えて決めておきたい。

判断の材料になるのは次の4つだ。

繁忙期と重ならないか。決算から申告までは2か月しかない。仕事がいちばん立て込む時期に決算作業が重なると、どちらも中途半端になる。逆に、暇な月の直前を決算月にすると、締めたあとの作業に時間を割ける ・第1期をどれくらいの長さにするか。設立日から1年以内なら自由に切れる。長く取ると青色申告の申請期限に余裕が生まれ、売上の計上できる期間も長くなる。短く切ると、最初の決算を軽い状態で通せる代わりに、申請期限が前倒しになる ・消費税の扱い。設立当初に納税義務がない期間がある場合、その長さは事業年度の区切り方に影響を受ける。設備投資の予定があるなら、期の区切りが有利不利を分けることがある ・入金と支払いの山。大きな入金や支払いが決算日をまたぐと、数字の見え方が変わる。取引の周期がはっきりしている事業なら、山のあとに決算日を置くと読みやすくなる

3月末に合わせると、税理士に依頼する場合は繁忙期にぶつかる。あえて外す会社が増えているのはこの理由による。ただし、取引先の締めや補助金の年度と合わせたほうが管理しやすい場面もあるので、一律にどちらがよいとは言えない。自分の事業の周期を紙に書いてから決めるのが確実だ。

個人事業から移った人が追加で出すもの

個人で事業をしてきた人が法人を作る場合、開ける側の届出だけでなく、閉じる側の届出が加わる。

個人事業の開業・廃業等届出書。国税庁は、事業を廃止したときの手続として案内しており、提出時期は事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までとしている。開業のときと同じ様式の廃業欄を使う。

所得税の青色申告の取りやめ届出書。個人で青色申告の承認を受けていた場合に出す。提出時期は、青色申告を取りやめようとする年分の所得税の確定申告期限までだ。

消費税の事業廃止届出書。個人事業者として消費税の課税事業者だった場合に必要になる。適格請求書発行事業者の登録をしていたなら、その扱いも別に確認がいる。

このほか、都道府県税事務所には個人事業税に関する届出が要る。個人のときの屋号の口座、取引先との契約の名義、各種のサービスの登録を法人名義に切り替える作業も並行して発生する。請求書を出す名義が変わるので、取引先への連絡は早いほうがよい。

個人事業を廃止する日と法人の設立日をどう揃えるかで、その年の所得税の扱いが変わる。個人で稼いだ分と法人で稼いだ分の区切り方は事情によるので、税務署か税理士に自分の数字を出して確認しておきたい。

届出の前に決めておくこと

書類を書き始めてから止まるのは、たいてい次の3つが決まっていないときだ。

事業年度。何月から何月までにするか。第1期を短くすると青色申告の申請期限が前倒しになる。繁忙期と決算作業が重ならない月を選ぶ、という決め方もある ・納税地。原則は本店の所在地になる。自宅を本店にする場合、自宅の住所が登記事項として公開されることを承知しておく ・役員報酬の額。給与支払事務所等の開設届出書と納期の特例の申請に直結する。社会保険料の額も報酬で決まるので、設立直後に決める必要がある

この3つを紙に書き出してから届出書に向かうと、作業は一度で終わる。

在宅で働く人が法人を作るとき、届出の手間をどう見るか

20年この市場を見てきた立場から言えば、個人で仕事を受けてきた人が法人を作ったあとにいちばん戸惑うのは、税額そのものではなく「期限のある作業が年間を通して分散する」という点だ。個人事業なら確定申告の時期にまとめて向き合えばよかったものが、法人になると毎月の源泉徴収の納付、年1回の決算と申告、社会保険の算定と、時期の違う作業に分かれる。

この負担は、仕事の受け方で吸収できる部分がある。単発の作業を数多く積み上げる働き方だと、月ごとの入金額が読めないので、報酬や納付の計画が立てにくい。逆に、継続して同じ相手と組む形にできると、毎月の見通しが立ち、届出や納付の作業を淡々と回せるようになる。長く続けている人ほど、単価の交渉より先に「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っているのは、このあたりが理由だと見ている。

もう1つ、額面と手取りの差に触れておきたい。同じ金額の仕事でも、間に入る事業者が取る分が乗らない取引では、依頼する側は同じ予算でより多く頼めるし、受ける側は同じ仕事で手元に残る額が増える。手数料0%の直接取引が意味を持つのは、金額そのものより、法人が抱える固定費と毎月の納付を支える体力が変わるからだ。

自分の職種でどれくらいの単価が動いているかを先に把握しておくと、役員報酬をいくらに置くかの判断がしやすくなる。開発の仕事ならソフトウェア作成者の年収・単価相場に経験年数別の幅がまとまっている。書く仕事が中心なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場のほうが近く、月あたりの本数から年収の見込みを作れる。

受けられる仕事の幅を広げる方向で考えるなら、企業向けの支援の仕事を見ておくとよい。AIコンサル・業務活用支援のお仕事には、ツールを作るのではなく導入と運用を設計する側の仕事がどう発注されているかが整理されている。この種の案件は法人との契約を前提にしていることが多く、届出の手間を回収する道筋になる。

書類そのものに苦手意識があるなら、基礎を一度固めておく手もある。ビジネス文書検定は、社内外の文書の型を体系的に扱う検定で、届出書の記載要領のような硬い文章を読み解く負荷を下げてくれる。税務の知識そのものではないが、役所の文書に向き合う時間を短くする効果はある。

最後に1つ。ここに書いた期限は、すべて国税庁と自治体が公開している記載から取ったものだ。一方で、青色申告にすべきか、消費税をどう扱うか、役員報酬をいくらにするかという判断は、事業の中身と数字で変わる。届出の期限は誰にとっても同じだが、選択の正解は人によって違う。手元の見込み数字を持って、税務署か税理士に一度確認しておくことをすすめたい。

よくある質問

Q. 会社設立税務署届出で、最初に出すべき書類は何ですか?

法人設立届出書です。設立の日(設立登記の日)以後2か月以内に、定款などの写しを添えて納税地の所轄税務署長に提出します。ただし期限がいちばん短いのは給与支払事務所等の開設届出書で、開設の事実があった日から1か月以内です。役員報酬を払うなら、こちらを先に意識してください。

Q. ひとり法人でも給与支払事務所等の開設届出書は必要ですか?

必要です。従業員がいなくても、会社が代表者に役員報酬を払う時点で会社は源泉徴収義務者になります。提出先は給与を支払う事務所などの所在地を所轄する税務署長で、期限は開設から1か月以内です。あわせて納期の特例の申請も出しておくと、毎月の納付が年2回にまとまります。

Q. 青色申告の承認申請の期限はいつまでですか?

設立の日以後3か月を経過した日と、設立第1期の事業年度終了の日のうち、いずれか早い日の前日までです。第1期を3か月より短く区切った場合は事業年度終了の日が基準になるため、期限が大きく前倒しになります。決算月を決める段階で期限を逆算しておいてください。

Q. 税務署以外にも届出先はありますか?

あります。都道府県と市区町村への地方税の設立届と、年金事務所への健康保険・厚生年金保険の新規適用届です。地方税の期限は条例で決まるため自治体ごとに違い、東京都は事業を開始した日から15日以内とされています。年金事務所の新規適用届は事実発生から5日以内で、いずれも税務署より短い期限です。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月28日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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