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顧客名簿の作り方|項目と個人情報の扱い方

@SOHO編集部
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顧客名簿の作り方|項目と個人情報の扱い方

この記事のポイント

  • ✓顧客名簿に入れる項目の決め方
  • ✓紙・Excel・スプレッドシート・専用ツールの比較
  • ✓個人情報保護法で小さな事業者が守ることまでを

顧客名簿は、お客様の名前や連絡先、取引の記録を1か所に集めた一覧です。開業したばかりの個人事業主や小さなお店では「何の項目を入れればいいのか」「Excelで足りるのか」「個人情報として何に気をつければいいのか」で手が止まりがちです。この記事では、顧客名簿に入れる項目の決め方、作り方の手順、道具ごとのメリットとデメリット、そして個人情報保護法で小さな事業者も守るべきことまでを順に整理します。問い合わせフォームから名簿を育てる方法の1つとして、Halictのような受付用のフォームサービスも取り上げます。

顧客名簿とは|顧客リスト・顧客台帳との違い

顧客名簿とは、取引のあるお客様、または取引につながりそうな人の情報を、決まった項目で並べた記録のことです。似た言葉に「顧客リスト」「顧客台帳」「顧客データベース」がありますが、実務ではほとんど同じ意味で使われています。あえて違いを挙げると、次のように使い分けられることが多いです。

呼び方 よく使われる場面 中身の傾向
顧客名簿 店舗、教室、士業、会員制のサービス 氏名と連絡先が中心。紙の名簿の時代からある言い方
顧客リスト 営業、ダイレクトメール、メール配信 連絡を取る相手の一覧。見込み客を含むことが多い
顧客台帳 取引の多い会社、経理と連携する場面 請求先や取引条件まで含めた、帳簿に近い記録
顧客データベース Excelや専用ツールで管理する場面 検索や並べ替えができる形に整えた記録

呼び方よりも大切なのは、名簿を「何のために使うか」です。年賀状やお礼状を出すための名簿と、次回の来店をお知らせするための名簿と、請求書を送るための名簿では、必要な項目が違います。目的があいまいなまま項目を並べると、入力する欄ばかりが増えて、結局使われない名簿になります。

もう1つ押さえておきたいのは、顧客名簿は作った時点で「個人情報の集まり」になるということです。紙のノートであっても、五十音順に並べて誰でも探せる状態にしていれば、法律の上では検索できる個人情報の集まりとして扱われます。名簿の作り方と個人情報の扱い方は切り離せないので、この記事では両方を同じ流れで説明します。

顧客名簿を作るメリットと、作らないと起きる困りごと

顧客名簿を作る一番のメリットは、お客様のことを「覚えている人」がいなくても、同じ対応ができるようになることです。小さな事業では、店主や担当者の記憶が名簿の代わりになっていることがよくあります。記憶に頼っていると、担当が休んだ日や、人が入れ替わったときに、それまでの関係が途切れます。

具体的なメリットは次の4つです。

  • 連絡の漏れを防げる。誰にいつ何を伝えたかが残るので、二重の連絡や連絡忘れが減る
  • 再来や再注文のきっかけを作れる。前回の来店日や購入日が分かれば、案内を出す時期を決められる
  • 売上の中身が分かる。どの地域、どの年代、どの経路から来たお客様が多いかを数えられる
  • 引き継ぎができる。担当者が替わっても、名簿を見れば過去のやり取りをたどれる

反対に、名簿がない、または名簿がばらばらのときに起きやすい困りごとがあります。名刺は名刺入れ、メールはメールソフト、電話のメモは手帳、予約は予約サイト、というように情報が散らばっていると、1人のお客様について調べるだけで何か所も見て回ることになります。同じ人が別々の場所に別の表記で登録され、「山田様」と「ヤマダ様」が別人として数えられることもあります。

データを扱う仕事の現場では、分析の前の「データを揃える作業」に全体の時間の大半を取られることが珍しくありません。名簿も同じで、最初に項目と書き方の決まりを作っておくかどうかで、あとから使える名簿になるかが決まります。名簿づくりは、作業量の多い入力よりも、最初の設計に時間をかけるほうが結果的に早く終わります。

顧客名簿に入れる項目|個人のお客様と会社のお客様

項目は、相手が個人か会社かで大きく変わります。個人のお客様を相手にするお店や教室の名簿と、会社を相手にする事業の名簿の基本形を並べます。

区分 個人のお客様(BtoC) 会社のお客様(BtoB)
識別 顧客番号 顧客番号、会社名
名前 氏名、ふりがな 担当者名、ふりがな、部署、役職
連絡先 電話番号、メールアドレス、住所 代表電話、担当者の直通番号、メールアドレス、所在地
属性 生年月日または年代、性別(必要な場合だけ) 業種、従業員数の目安
取引 初回来店日、最終来店日、利用したメニュー 初回取引日、最終取引日、取引の内容、請求先
経路 知ったきっかけ(紹介、検索、SNSなど) 問い合わせの経路、紹介者
同意 お知らせの送付に同意したか、同意した日 メール配信の可否
メモ 好み、注意点、次回の約束 商談の経過、次の連絡予定

最初に必ず入れておきたいのは「顧客番号」です。氏名は同姓同名がいますし、結婚や改姓で変わることもあります。電話番号やメールアドレスも変わります。変わらない番号を1人に1つ振っておけば、表記が揺れても同じ人だと判断できます。番号は「0001」のように桁を揃えるか、「C-2026-001」のように登録年を含める形が扱いやすいです。

次に大事なのが「同意」の欄です。ダイレクトメールやメールマガジンを送るなら、送ってよいと言われたかどうか、いつ言われたかを残します。あとで「送ってほしくない」と言われたときに、すぐにその人だけ外せるようにするためです。

氏名とふりがなは別の列に分けます。ふりがながあると、五十音順に並べ替えたり、電話で名前を聞いたときに探したりするのが楽になります。住所も「都道府県」「市区町村」「それ以降」に分けておくと、地域ごとの集計ができます。

項目を増やしすぎないための判断基準

名簿づくりでよくある失敗は、思いつく限りの項目を並べてしまうことです。欄が多いと入力が面倒になり、空欄だらけの名簿になります。空欄が多い列は集計にも使えません。項目を決めるときは、1つずつ次の3つの質問に答えてみてください。

  1. その項目を使って、具体的に何をするか言えるか
  2. その項目がないと、困る場面が実際にあるか
  3. お客様に「なぜそれを聞くのですか」と聞かれたときに、説明できるか

3つ目の質問は特に大切です。生年月日、家族構成、勤務先、年収のような項目は、使い道を説明できないなら取らないほうが安全です。個人情報保護法では、個人情報を扱うときは使う目的をできる限り具体的に決めることになっていて、その目的に必要な範囲を超えて扱うことは認められていません。使い道のない項目を集めることは、それだけで説明のつかない情報を抱えることになります。

病歴や健康状態のように、扱いに特に注意が要る情報もあります。法律では「要配慮個人情報」と呼ばれ、人種、信条、病歴、犯罪の経歴などが含まれます。要配慮個人情報とは、知られると差別や不利益につながるおそれがあるため、取得するときに原則として本人の同意が必要になる情報のことです。整体やエステ、ネイルのように体の状態を聞く仕事では、アレルギーや既往歴を聞くことがあるので、何のために聞くのかを伝え、同意を得てから記録します。

迷ったときは、まず最小限の項目で始め、半年ほど使ってから「この情報があれば助かった」と感じたものを加えるのが現実的です。あとから列を加えるのは簡単ですが、一度集めた情報を減らすのは手間がかかります。

顧客名簿の作り方|Excelとスプレッドシートでの手順

ここでは、多くの人が最初に使うExcelやGoogleスプレッドシートで名簿を作る手順を説明します。紙の名簿でも、項目と並べ方の考え方は同じです。

手順1:1行目に項目名を並べる

1行目に、決めた項目名を横に並べます。項目名は短く、意味が1つに決まる言葉にします。「連絡先」のようにあいまいな名前にすると、電話番号を書く人とメールアドレスを書く人が出てきます。営業支援ツールを提供する会社の解説でも、項目を先に決めてから横方向に並べる手順が示されています。

実際にデータを入力する前に、まずはどのような項目を作るかを考えましょう。BtoCなら、会員番号や名前、住所、電話番号BtoBなら、企業名、担当者名、連絡先など、必要となる項目は企業によって異なります。必要な項目を決めたら、横方向に項目名を入力していきます。 出典: geniee.co.jp

手順2:1行に1人、1列に1種類の情報

2行目から下に、1行につき1人のお客様を入力します。1つの列には同じ種類の情報だけを入れます。1つのセルに「090-xxxx-xxxx(携帯)、03-xxxx-xxxx(自宅)」のように2つの情報を詰め込むと、並べ替えも検索もうまくいきません。電話番号が2つあるなら列を2つ用意します。

途中に空白の行を作らないことも大事です。空白の行があると、並べ替えや絞り込みの範囲がそこで切れてしまいます。

手順3:書き方の決まりを作る

表記の揺れは名簿の一番の敵です。次のような決まりを最初に作り、名簿の別のシートに書いておきます。

  • 日付は「2026/10/24」の形で入力する
  • 電話番号はハイフンを入れる、または入れない、のどちらかに揃える
  • 会社名の「株式会社」は省略せずに書く
  • 全角と半角の数字を混ぜない

決まりは紙に書くだけでなく、選べる値をあらかじめ決めておく機能を使うと守られやすくなります。Excelでは「データの入力規則」、Googleスプレッドシートでは「データの入力規則」(プルダウン)で、選択肢から選ぶ形にできます。

手順4:表として扱える形にする

Excelなら、名簿の範囲を選んで「テーブル」に変えると、行を加えたときに書式や並べ替えの設定が自動で広がります。Googleスプレッドシートにもテーブルの機能があります。列が多くて横に長い名簿は、Excelの「フォーム」機能を使うと1人分の情報を1つの画面で入力できます。Microsoftのサポートページによると、フォームのボタンは最初はリボンに表示されていないため、クイック アクセス ツール バーの「その他のコマンド」から「すべてのコマンド」を選び、「フォーム」を追加して使います。1つのフォームで扱える列は32列までです(データ フォームを使用して行を追加、編集、検索、および削除する)。

手順5:見る人と編集する人を決める

最後に、誰が名簿を見られて、誰が書き換えられるかを決めます。ファイルを共有フォルダに保存するなら、名簿だけは別のフォルダに分けて、見られる人を絞ります。Googleスプレッドシートなら共有の設定で「閲覧者」と「編集者」を分けられます。「リンクを知っている全員」に共有する設定は、名簿では使わないようにします。

紙・Excel・スプレッドシート・専用ツールのメリットとデメリット

名簿を何で作るかは、お客様の数、関わる人の数、名簿をどこで見るかで決まります。代表的な4つの方法を比べます。

方法 向いている場面 メリット デメリット
紙のカードやノート お客様が数十人まで、1人で運営 費用がかからない。停電でも見られる 検索と集計ができない。紛失すると戻らない
Excel 数百人規模、パソコンで作業する 多くの人が使い慣れている。並べ替えと集計が得意 同時に編集しにくい。ファイルのコピーが増えやすい
Googleスプレッドシート 複数人で同じ名簿を見る 同時に編集できる。スマホでも見られる 共有設定を誤ると外部から見える
顧客管理の専用ツール 担当者が複数、問い合わせや商談の記録も残したい 対応の履歴や担当を一緒に管理できる 月額の費用がかかる。最初の設定に手間がかかる

紙の名簿は、お客様が少ないうちは十分に役立ちます。ただ、紙は複製や持ち出しの管理が難しく、一度なくすと取り戻せません。紙で管理するなら、鍵のかかる引き出しにしまい、営業時間外は出しっぱなしにしないことが基本です。

Excelは、名簿の作り方を覚えるのに最も向いています。並べ替え、絞り込み、関数での集計ができ、あとで専用ツールに移すときもCSVという共通の形式で書き出せます。注意したいのは、メールに添付して送ったり、USBメモリにコピーしたりするうちに、どれが最新の名簿か分からなくなることです。保存場所を1か所に決め、そのファイル以外は使わない決まりを作ります。

Googleスプレッドシートは、複数人で同じ名簿を同時に見たいときに便利です。変更履歴が残るので、誰がいつ書き換えたかも確かめられます。

「Excelで十分か、専用ツールが要るか」の判断基準は、お客様の数よりも「1人のお客様に何人が関わるか」です。1人で管理しているなら、数百人規模でもExcelやスプレッドシートで回せます。問い合わせを受ける人、返信する人、請求する人が別々になったら、対応の状況を一緒に残せる道具を考える時期です。

問い合わせフォームから名簿を育てる方法

名簿の情報は、お客様から直接受け取るのが一番正確です。手書きの申込書を後から打ち込むと、読み間違いや打ち間違いが起きます。Webの問い合わせフォームや申込フォームで受け取れば、お客様が入力した内容がそのまま記録になります。

無料で始めるなら、Googleフォームが手軽です。Googleのヘルプによると、フォームの回答はリンクしたGoogleスプレッドシートに保存でき、保存先のスプレッドシートは自動的にテーブル形式になります(フォームの回答の保存先を選択する)。フォームに氏名、ふりがな、メールアドレス、知ったきっかけ、お知らせの送付に同意するかどうかの質問を並べれば、回答の一覧がそのまま名簿の元になります。

ただ、問い合わせが増えてくると、スプレッドシートの横に「対応済みか」「誰が返信したか」の列を作り、手で書き込む作業が発生します。同じ人が何度も問い合わせてくると、別々の行に登録されて、名簿の中で同じ人が何人もいる状態になりがちです。

フォームで受けた問い合わせを担当と状況つきで管理したい場合

受け付けた1件ごとに担当と対応の状況を残し、返信まで同じ画面で行いたい場合の選択肢の1つが、受付から対応までを扱うフォームサービスのHalict(ハリクト)です。公式サイトの案内では、メールアドレスを手がかりに、同じ人が複数のフォームに答えても1人の連絡先として束ねる機能(連絡先の自動生成)があると説明されています。フォームの数と回答の数はどのプランでも無制限で、メンバー1人までのフリープランは0円です。フリープランでも、1件ごとに対応の段階を付ける機能(ステージ管理)、自動返信、CSVの書き出しが使えます。有料プランは使う人数で決まり、3人までのスタータープランは月額2,980円、10人までのチームプランは月額7,800円です(いずれも税抜)。

Halictは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

Halictはフォームで受け付けた人の情報と対応の記録を管理する道具で、来店履歴や売上を管理する名簿そのものの代わりではありません。問い合わせや申込みはフォームで受け、CSVで書き出した連絡先を名簿に取り込む、という分担で使うと無理がありません。

個人情報保護法で小さな事業者も守ること

「個人情報保護法は大きな会社のための法律」と思われがちですが、そうではありません。個人情報保護委員会のガイドラインには、扱う人数の多い少ないは関係ないとはっきり書かれています。

個人情報データベース等を事業の用に供している者であれば、当該個人情報データベース等を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数の多寡にかかわらず、個人情報取扱事業者に該当する。 なお、法人格のない、権利能力のない社団(任意団体)又は個人であっても、個人情報データベース等を事業の用に供している場合は個人情報取扱事業者に該当する。 出典: 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」

かみくだくと、顧客名簿を事業に使っていれば、個人事業主でも町内のサークルでも、法律の決まりを守る側になるということです。ここでいう「個人情報データベース等」には、パソコンで検索できる名簿だけでなく、五十音順に並べて誰でも探せるようにした紙の名簿も含まれます。

名簿について特に押さえておきたい決まりは次の5つです(条文はe-Govの個人情報の保護に関する法律で読めます)。

  1. 使う目的をできる限り具体的に決める(第17条)。「サービスの向上のため」だけでは足りず、「ご予約の確認と、新メニューのお知らせを送るため」のように書く
  2. 決めた目的を本人に伝えるか、公表する(第21条)。申込書やフォームで直接受け取るときは、受け取る前に目的を示す
  3. 名簿が漏れたり、なくなったりしないように管理する(第23条)。これを「安全管理措置」と呼ぶ
  4. 本人の同意なく、名簿を他の人や会社に渡さない(第27条)。知り合いの会社に「お客様を紹介する」つもりで名簿を渡すことも、ここに当たる
  5. 本人から見せてほしい、直してほしい、使うのをやめてほしいと言われたら応じる手続きを用意する(第32条から第35条)

名簿が漏れたときの決まりもあります。要配慮個人情報が含まれる場合、クレジットカード番号のように財産の被害につながるおそれがある場合、不正アクセスのように悪意のある行為による場合、漏れた人数が1,000人を超える場合には、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が必要です。ガイドラインでは、事態を知ってからおおむね3日から5日以内に速報、原則30日以内に確報を出す流れが示されています。実際に起きたときの手順は、個人情報保護委員会の漏えい等の対応のページにまとまっています。

なお、2026年7月17日に個人情報保護法の改正法が公布されています。16歳未満の人の情報の扱いや、委託先の義務の見直しなどが含まれており、施行は原則として公布から2年を超えない範囲で決まる予定です。細かな決まりは政令やガイドラインで今後示されるので、個人情報保護委員会の令和8年改正個人情報保護法についてのページで最新の状況を確かめてください。自分の名簿の扱いが法律に合っているか迷ったときは、個人情報保護委員会の相談ダイヤル(03-6457-9849)に問い合わせることもできます。

申込書やフォームに書く「利用目的」の文例

法律の決まりの中で、名簿を作るときに真っ先に手を動かすことになるのが、利用目的の書き方です。申込書やWebのフォームで直接お客様から情報を受け取るときは、受け取る前に目的を示す必要があります。難しく考えず、何に使うのかを順に書けば足ります。小さなお店や教室で使いやすい文例を挙げます。

ご記入いただいたお名前、ご連絡先、ご来店の記録は、次の目的にのみ使います。

  1. ご予約の確認と変更のご連絡
  2. ご利用いただいた内容の記録と、次回のご提案
  3. 新しいメニューや休業日のお知らせ(ご希望の方のみ) ご本人の同意なく、ほかの会社やお店にお渡しすることはありません。

この文例を申込書の下の欄や、フォームの送信ボタンの上に書きます。3つ目のお知らせのように、すべての人に送るわけではない目的は「希望する」「希望しない」を選べる欄を作り、選んだ結果を名簿の同意の列に残します。あとから「メールマガジンも送りたい」「アンケートをお願いしたい」と目的を広げたくなったときは、もとの目的と関わりがあると言える範囲を超えて広げることはできません。新しい目的で使うなら、改めて本人に伝えて同意を得ます。

ホームページを持っている事業者なら、利用目的や問い合わせの窓口をまとめたプライバシーポリシーのページを作り、申込書やフォームからそのページを案内する形も取れます。その場合も、フォームの近くに「入力した情報は○○のために使います」と短く書いておくと、お客様が安心して入力できます。

口頭で名前と電話番号を聞くだけの場面でも、何に使うかを一言添えるだけで受け取られ方が変わります。「ご予約の確認のお電話に使います」と伝えれば、お客様は理由を知ったうえで答えられます。名簿づくりは、お客様との最初の約束を形にすることでもあります。

名簿の安全な保管と、古い記録の削除

法律が求める「安全管理措置」は、難しい設備の話ではありません。ガイドラインでは、従業員が100人以下の事業者を「中小規模事業者」として、無理なく取り組める方法の例を示しています。ただし、扱う個人の数が過去6か月以内のいずれかの日に5,000人を超えた事業者や、他社から名簿の管理を任されている事業者は、この例の対象外です。小さなお店や個人事業主がすぐにできることを、ガイドラインの考え方に沿って並べます。

分野 意味 すぐにできることの例
決まりを作る 名簿の扱い方を決めて共有する 名簿を扱える人、保存場所、持ち出しの可否を1枚の紙に書く
人への対策 扱う人に注意点を伝える 新しく人を雇ったら、名簿の扱いを説明し、秘密を守る約束を書面でもらう
物への対策 紙や機器を盗まれない、なくさない 紙の名簿は鍵付きの引き出しへ。パソコンは席を離れるときに画面をロック
機械への対策 パソコンやファイルへの不正な出入りを防ぐ 名簿のファイルにパスワードを設定。OSとウイルス対策ソフトを最新に保つ

見落とされやすいのが、古い記録の削除です。何年も取引のないお客様の情報を、理由もなく持ち続けると、漏れたときの影響が大きくなるだけです。法律は、使う必要がなくなった個人データは遅滞なく消すよう努めることを求めています。「最終取引日から5年たったら削除する」のように、自分の事業に合った期限を決め、年に1回見直す日を決めておきます。ただし、税金の帳簿や請求書のように、別の法律で保存期間が決まっている書類に載っている情報は、その期間は残す必要があります。

紙の名簿を捨てるときは、そのままごみに出さず、シュレッダーにかけるか、溶解処理の業者に頼みます。パソコンやスマホを手放すときは、ファイルを消すだけでなく、初期化してから処分します。

名簿を活かす使い方と、失敗しやすいポイント

名簿は作って終わりではなく、使って初めて価値が出ます。小さな事業でもすぐにできる使い方を3つ紹介します。

1つ目は、来店や購入の間隔を見ることです。最終来店日から今日までの日数を計算する列を作り、間隔が長くなっている人に案内を出します。Excelなら「=TODAY()-最終来店日のセル」で日数が出せます。

2つ目は、知ったきっかけを数えることです。紹介、検索、SNS、看板のどこから来たお客様が多いかを数えれば、どこに力を入れるべきかが見えます。ピボットテーブルを使えば、項目ごとの人数を数秒で数えられます。

3つ目は、季節の連絡に使うことです。お礼状、年末年始のご挨拶、誕生月の案内などは、名簿があって初めて漏れなく送れます。ここで「お知らせの送付に同意したか」の列が役立ちます。

4つ目は、ほかの道具とつなぐことです。名簿をCSV形式で書き出せば、宛名印刷のソフト、メール配信のサービス、会計ソフトの取引先の登録などに取り込めます。取り込むときは、列の名前と順番を取り込み先の決まりに合わせる必要があるので、名簿の列の名前を最初から分かりやすく付けておくと手間が減ります。書き出したCSVファイルは名簿そのものの複製なので、使い終わったら削除し、メールに添付して送らないようにします。

失敗しやすいポイントも挙げておきます。

  • 同じ人を何度も登録してしまう。新しく登録する前に、電話番号やメールアドレスで検索する習慣をつける
  • メモ欄に何でも書いてしまう。お客様に見られて困る書き方はしない。本人から開示を求められたら見せることになる
  • 名簿の最新版が複数できる。保存場所を1か所にし、デスクトップや個人のフォルダにコピーを残さない
  • 送付を断られた人に送り続ける。断られたら同意の欄をすぐに書き換え、送付先の抽出条件に必ずその欄を入れる

失敗の多くは、道具ではなく決まりの不足から起きます。名簿の決まりを1枚の紙に書き、関わる人全員で同じものを見るだけで、多くの問題は防げます。

顧客名簿の管理から見える仕事の広がり

2004年から在宅ワークとフリーランスの仲介を続けてきた運営者として見てきた限りでは、長く取引が続く人ほど、相手とのやり取りの記録をきちんと残しています。誰に、いつ、何を納めたか、次に何を約束したかを名簿にしておくと、「この人に任せると話が早い」という信頼につながります。仲介の手数料がかからない直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。その関係を続ける土台になるのが、こうした地道な記録です。

名簿の設計や整理は、それ自体が仕事にもなります。小さな会社やお店では、Excelの名簿を作り直したい、問い合わせの受付を整えたい、という相談が少なくありません。業務の進め方を見直し、道具の使い方を一緒に考える仕事は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で詳しく紹介しています。名簿をもとに専用の管理画面や予約の仕組みを作る仕事は、アプリケーション開発のお仕事にあたります。名簿を守る仕組みづくりやメール配信の設計に関心があるなら、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事も参考になります。

中小企業の経営と業務の改善を幅広く支援する国家資格として、中小企業診断士があります。顧客情報の扱い方を含めた業務の見直しは、診断士が関わる分野の1つです。医療機関や介護事業所では、患者や利用者の名簿を扱う機会が多く、事務の資格である医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)の学習でも個人情報の扱いに触れます。介護の記録を紙から切り替える動きについては、介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化で補助金の使い方とあわせて紹介しています。

顧客名簿は、作る道具よりも、決まりを先に作ることで使えるものになります。項目を絞り、書き方を揃え、使う目的と削除の期限を決めておけば、紙でもExcelでも十分に役立つ名簿になります。

よくある質問

Q. 顧客名簿はExcelとGoogleスプレッドシートのどちらで作るのがよいですか?

1人で管理し、パソコンで作業することが多いならExcelで十分です。複数の人が同時に見たり、スマホから確認したりするならGoogleスプレッドシートが便利です。どちらで作ってもCSV形式で書き出せるので、あとから専用ツールに移すこともできます。大切なのは道具よりも、保存場所を1か所に決めることです。

Q. 個人事業主の小さなお店でも個人情報保護法の対象になりますか?

対象になります。個人情報保護委員会のガイドラインでは、名簿を事業に使っていれば、扱う人数の多い少ないにかかわらず個人情報取扱事業者に当たると説明されています。個人事業主や任意の団体も含まれます。使う目的を決めて伝えること、名簿を漏らさないよう管理すること、同意なく他人に渡さないことが基本です。

Q. 顧客名簿に生年月日や家族構成を入れてもよいですか?

使う目的を説明できるなら入れられますが、目的のない項目は集めないほうが安全です。誕生月の案内を送るなら生年月日の「月」だけで足りることもあります。お客様に理由を聞かれて答えられない項目は外すのが目安です。病歴などの要配慮個人情報は、原則として本人の同意を得てから記録します。

Q. 何年も来ていないお客様の情報はいつまで残せばよいですか?

法律は一律の年数を決めていませんが、使う必要がなくなった情報は遅滞なく消すよう努めることを求めています。「最終取引日から5年」のように自分で期限を決め、年に1回見直すのが現実的です。ただし、請求書や帳簿など別の法律で保存期間が決まっている書類は、その期間は保存しておく必要があります。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年1月17日最終更新:2026年10月25日
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