カスハラへの対応の進め方|線引きの決め方と記録の残し方、相談先


この記事のポイント
- ✓カスハラ(カスタマーハラスメント)への対応の進め方を
- ✓2026年10月1日に始まった事業主の対策の義務
- ✓正当なクレームとの線引き
カスハラへの対応で最も大切なのは、その場で1人で判断しないことと、何があったかを記録に残すことです。カスハラ(カスタマーハラスメント)とは、お客様や取引先などからの、常識的に許される範囲を超えた要求や言動によって、働く人の職場の環境が害されることを指します。2026年(令和8年)10月1日からは、改正された法律によって、働く人を雇う事業主にカスハラへの対策が義務づけられました。
とはいえ、現場で困るのは「どこからがカスハラなのか」「謝るべきなのか、断るべきなのか」「何を記録すればよいのか」といった具体的な場面です。この記事では、法律で決まったことを確かめたうえで、正当なクレームとの線引きの決め方、その場での対応の手順、記録の残し方、社内の体制づくり、困ったときの相談先を順に説明します。問い合わせや苦情の受け付けから記録、返信までを1つの画面で回せるHalictも、記録の仕組みを作る道具の選択肢の1つとして紹介します。
カスハラとは何か(法律での決まり)
カスハラへの対策は、2025年(令和7年)6月11日に公布された労働施策総合推進法などの改正法によって、事業主の義務になりました。厚生労働省の職場におけるハラスメントの防止のページの案内では、この義務は2026年(令和8年)10月1日に施行され、2026年2月26日にはカスハラの防止についての指針(事業主が何をすべきかを細かく示した国の文書)も公布されています。
厚生労働省のリーフレットでは、職場におけるカスハラを、次の3つの要素をすべて満たすものとしています。
- お客様や取引先などの「顧客等」の言動であること
- その仕事の性質などに照らして、社会通念上許される範囲を超えた言動であること
- その言動によって、働く人の就業環境が害されること
「顧客等」には、商品を買う人やサービスを使う人だけでなく、問い合わせをしてくる人、取引先の担当者、契約の交渉の相手、施設の利用者とその家族、近隣の住民、これから買うかもしれない人まで含まれます。電話やSNSなどインターネット上の言動も対象です。
一方で、同じリーフレットには、お客様からの苦情のすべてがカスハラにあたるわけではないこと、障害のある人が不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的な障壁を取り除くよう求める意思を伝えること自体はカスハラにあたらないことも明記されています。カスハラへの対策は、お客様の声を聞かなくてよいということではありません。
「許される範囲を超えた」言動の例
厚生労働省のリーフレットでは、社会通念上許される範囲を超えるものの典型的な例を、2つの種類に分けて示しています。
| 種類 | 典型的な例 |
|---|---|
| 要求の内容が許される範囲を超えるもの | 要求に理由がない、商品やサービスと関係のない要求/契約で想定しているサービスを大きく超える要求/対応が著しく難しい、または不可能な要求/不当な損害賠償の要求 |
| 要求の手段や態度が許される範囲を超えるもの | 暴行や傷害などの身体的な攻撃/脅迫、中傷、侮辱、暴言、土下座の強要などの精神的な攻撃/威圧的な言動/しつこく続く言動/居座りや長時間の拘束 |
大事なのは、要求の内容が正当であっても、その手段や態度が許される範囲を超えていれば、カスハラにあたり得るという点です。リーフレットでも、内容と手段のどちらか一方だけが範囲を超える場合でもあてはまり得ることに注意するよう書かれています。たとえば、商品に本当に不具合があり、交換を求めること自体は正当でも、大声で怒鳴り続けたり、何時間も電話を切らせなかったりすれば、手段がカスハラにあたる可能性があります。
判断するときに考えること
カスハラかどうかは、1つの言葉だけで決まるものではありません。リーフレットでは、言動の目的、そこに至った経緯や状況(働く側に問題のある対応がなかったかを含む)、業種や仕事の性質、言動の頻度やしつこさ、働く人の心身の状況などを総合的に考えるのが適当だとしています。現場の1人の判断で決めつけず、決めた基準とチームの目で判断することが求められます。
事業主に義務づけられた対策
改正法によって、事業主は次のような措置を必ず講じなければならなくなりました。厚生労働省のリーフレットに沿って整理すると、大きく5つのまとまりがあります。
| まとまり | 主な内容 |
|---|---|
| 方針を決めて伝える | カスハラには毅然とした態度で対応し、働く人を守るという方針を決めて周知する/カスハラの内容と、あらかじめ決めた対処の内容を働く人に伝える |
| 相談の体制を作る | 相談窓口をあらかじめ決めて周知する/窓口の担当者が適切に対応できるようにする |
| 起きたあとに素早く対応する | 事実関係を素早く正確に確かめる/被害を受けた人に配慮する/再発を防ぐ措置をとる |
| 悪質なものに備える | 特に悪質なカスハラへの対処の方針をあらかじめ決めて周知し、対処できる体制を整える |
| あわせて行うこと | 相談した人のプライバシーを守る/相談したことを理由に不利益な扱いをしないと決めて周知する |
リーフレットでは、あらかじめ決めておく対処の内容の例として、管理職にその場の対応の方針を指示してもらう、できる限り働く人を1人で対応させない、犯罪にあたり得る言動は警察へ通報する、本社や本部へ情報を共有して指示を仰ぐ、といったものを挙げています。
措置を講じるときに気をつけること
リーフレットには、対策を講じる際には、消費者の権利や、障害者差別解消法が定める障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止、合理的な配慮の提供の義務に留意する必要があるとも書かれています。「カスハラ対策」の名目で、正当な苦情や配慮の求めまで門前払いにしないよう、基準を作る段階で気をつける必要があります。
雇っている人以外への配慮
同じリーフレットでは、望ましい取り組みとして、ほかの会社に雇われている人や個人事業主など、自分の会社で雇っている人以外に対する顧客等の言動についても、同じ方針を示すことを挙げています。たとえば、店舗で働くメーカーの販売員や、業務委託で窓口を担当しているフリーランスも、守るべき対象に含めて考えるのが望ましいということです。
正当なクレームとカスハラの線引きの決め方
現場で最も迷うのが、どこまでを正当なクレームとして受け止め、どこからをカスハラとして扱うかです。この線引きは、その場の雰囲気で決めるのではなく、あらかじめ会社やチームの基準として決めておくのが基本です。
線引きを決める3つの問い
基準を作るときは、次の3つの問いで整理すると分かりやすくなります。
- 要求の中身に理由はあるか:商品やサービスに実際に問題があったか、契約や約束の範囲の要求か
- 要求の手段や態度は許される範囲か:大声、暴言、脅し、長時間の拘束、しつこい連絡がないか
- 対応できる範囲を超えていないか:契約を大きく超える要求、金銭の要求、担当者個人への要求がないか
1つ目の問いの答えが「理由がある」なら、その要求の中身には誠実に応える必要があります。そのうえで、2つ目や3つ目の問いで範囲を超えていれば、要求の中身とは分けて、手段や態度について対処します。
自社の具体例を書き出しておく
一般的な基準だけでは、現場は判断できません。自社の仕事に合わせて、具体的な場面を書き出しておきます。
- 電話:「同じ内容の電話が1日に何回以上あったら」「何分を超えたら」責任者に引き継ぐか
- 窓口:「大声が続いたら」「ほかのお客様の迷惑になっていたら」どう対応するか
- メールや問い合わせフォーム:「担当者個人への中傷が書かれていたら」「回答の期限を一方的に指定されたら」どうするか
- SNS:「担当者の名前を挙げた書き込みがあったら」誰に報告するか
数字の目安を決めておくと、現場の人が「これ以上は自分で抱えなくてよい」と判断しやすくなります。ただし、数字だけで機械的に打ち切るのではなく、目安に達したら責任者に引き継ぐ、という使い方にするのが安全です。
決めつけない
研修会社のインソースのコラムでは、決めつけによる失敗について次のように注意しています。
良かれと思ってご意見してくださったお客さまが、つい大きな声を出してしまったからといってカスハラと決めつけ、「警察を呼びますよ!」と対応したら大ごとです。お客さまはご不便を感じた上に「クレーマー扱いされた!」となり、さらに悪化した事態を招くことになりかねません。 出典: insource.co.jp
多くの苦情は、最初は普通のクレームとして始まります。最初からカスハラとして構えるのではなく、通常のクレームと同じ流れで話を聞き、そのうえで基準を超えたら対応を切り替える、という順番が大切です。
その場での対応の手順
ここからは、実際にお客様から強い苦情を受けたときの対応の手順を説明します。
ステップ1:まず話を聞き、事実を確かめる
最初は、相手の話を途中で遮らずに聞きます。何が起きたのか、いつのことか、何を求めているのかを確かめ、メモを取ります。この段階では、カスハラかどうかを判断する必要はありません。
ステップ2:謝る範囲を限定する
事実がまだ分からない段階で「すべてこちらの責任です」と謝ると、あとで要求が大きくなったときに断りにくくなります。会計ソフトのfreeeの解説では、謝罪の範囲について次のように説明しています。
たとえば、「ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ありません」といった、相手の感情への共感を示す限定的な謝罪がこれにあたります。その上でクレームの原因が企業側にあるのか、事実確認を行います。 出典: freee.co.jp
相手の気持ちには寄り添いながら、責任の範囲は事実を確かめてから伝える、という分け方です。事実を確かめた結果、会社側に原因があれば、その点についてきちんと謝罪し、対応を伝えます。
ステップ3:1人で抱えず、責任者に引き継ぐ
要求の手段や態度が決めた基準を超えたら、その場で責任者に引き継ぎます。厚生労働省の指針でも、働く人から管理職に直ちに報告して対応の方針の指示を仰ぐこと、できる限り1人で対応させないこと、必要に応じて管理職が代わって対応することが、対処の内容の例として挙げられています。
引き継ぐときは、「お客様が怒っています」だけでなく、いつから、何を求めて、どんな言動があったか、ここまでに何を伝えたかを短く伝えます。
ステップ4:対応できないことは、はっきり伝える
契約の範囲を超える要求や、対応できない要求には、理由を添えて「対応できません」とはっきり伝えます。あいまいな返事をすると、相手は「押せば通る」と受け取り、要求が続きます。指針では、十分に説明したうえでなお繰り返しの要求が続く場合には、一定の時間の経過をもって退店を求めたり、電話を切ったりすることも、対処の内容の例として挙げられています。
ステップ5:危険なときは、身の安全を最優先にする
暴力をふるわれそうなとき、脅されたときは、その場を離れ、ほかの人を呼びます。指針でも、暴行、傷害、脅迫などの犯罪にあたり得る言動については警察へ通報することが、対処の内容の例として挙げられています。緊急のときは迷わず110番に通報します。
そのまま使える言い回しの例
手順が分かっていても、強い口調で迫られると、とっさに言葉が出てこないものです。マニュアルには、場面ごとの言い回しを書いておくと、現場の人が落ち着いて対応できます。ここでは、よく使う場面の例を紹介します。会社の方針や業種に合わせて言葉を直して使ってください。
話を聞き始めるとき
「ご不便をおかけして申し訳ございません。状況を正確に確かめたいので、いつ、どのようなことがあったのか、順にお聞かせいただけますか。」
最初に謝るのは、相手が不快な思いをしたことに対してです。原因がどこにあるかには、まだ触れません。聞き取った内容は、相手の言葉どおりにメモしておきます。
事実を確かめる時間がほしいとき
「ご指摘の点は、担当の部署で事実を確かめたうえで、明日の17時までにお電話でお答えいたします。」
その場で答えられないことを無理に答えると、あとで訂正が必要になり、かえって相手の怒りを強めます。いつまでに、どの方法で答えるかを具体的に伝えるのがこつです。
責任者に引き継ぐとき
「ご意見をきちんと受け止めるため、責任者に代わります。少々お待ちください。」
引き継ぐことを「逃げ」と受け取られないよう、相手の話を受け止めるための手順だと伝えます。代わった責任者は、最初から話を聞き直すのではなく、引き継いだ内容を確かめるところから始めます。
対応できない要求を断るとき
「大変申し訳ございませんが、そのご要望には、契約の内容から対応いたしかねます。こちらでご用意できるのは、〇〇までとなります。」
断る理由と、代わりにできることを一緒に伝えます。「上の者に聞いてみます」と先延ばしにすると、相手は通るかもしれないと期待し、要求が続きます。
話を終えるとき
「これまでご説明した内容から、これ以上のご回答は変わりません。大変恐れ入りますが、本日のお電話はここで終了させていただきます。」
十分に説明したうえで同じ要求が続くときは、会社で決めた基準に沿って、丁寧に話を終えます。終えた時刻と理由は、必ず記録に残します。
電話・窓口・メールでの対応の違い
カスハラは、受け付ける経路によって、起きやすいことと備え方が違います。
電話での対応
電話は、相手の顔が見えないため、言葉が強くなりやすく、長時間の拘束も起きやすい経路です。次のような備えが役立ちます。
- 通話を録音していることを、自動の案内で事前に伝える
- 通話の時間の目安を決め、目安を超えたら責任者に代わる
- 同じ内容の電話が続く場合は、「この件は〇日までに書面でお答えします」と伝え、電話での回答を繰り返さない
窓口での対応
窓口では、身の安全とほかのお客様への影響を考える必要があります。
- 大声や威圧が続いたら、別室に案内するか、責任者が代わる
- 1人で対応しない。少なくとも2人目が近くで様子を見られるようにする
- 居座りが続く場合は、退去を求める基準と、警察へ連絡する基準を決めておく
メールや問い合わせフォームでの対応
メールやフォームは、文章が記録として残る一方で、深夜や休日にも次々と届く、担当者個人への中傷が書かれる、といったことが起きます。
- 個人のメールアドレスではなく、会社の共通の受け口で受け付ける
- 返信は担当者個人の名前ではなく、窓口の名前で送ることも検討する
- 返信の期限を一方的に指定されても、会社の決めた期限で答える
どの経路でも共通するのは、担当者を1人にしないこと、決めた基準で判断すること、そして記録を残すことです。
記録の残し方
カスハラへの対応で、あとから最も大きな差が出るのが記録です。厚生労働省の指針でも、顧客等とのやり取りを録音・録画すること(その際は個人情報保護法などを守って適切に扱うこと)が対処の内容の例として挙げられ、再発防止の措置として、必要に応じて事案の内容や対応の経緯を記録し、個人情報の扱いに気をつけたうえで関係する部門に共有して、再発防止に生かすことも考えられるとされています。
記録しておく項目
記録には、少なくとも次の項目を残します。
| 項目 | 書く内容の例 |
|---|---|
| 日時 | 最初に受け付けた日時と、その後のやり取りの日時 |
| 経路 | 電話、窓口、メール、問い合わせフォーム、SNSなど |
| 相手 | 名前や連絡先(分かる範囲で)、取引の有無 |
| 要求の内容 | 何を求めているか。できるだけ相手の言葉どおりに書く |
| 言動 | 大声、暴言、長時間の拘束など、事実だけを書く |
| 対応した人 | 誰が対応し、誰に引き継いだか |
| こちらの回答 | 何を伝え、何を約束したか |
| 状態 | 対応中、回答済み、責任者に引き継ぎ済み、終了など |
記録で気をつけたいのは、感想ではなく事実を書くことです。「とても怖かった」ではなく「机を2回たたき、『責任者を出せ』と大声で言った」のように書くと、あとで社内で判断するときにも、外部に相談するときにも役立ちます。
記録をばらばらにしない
記録は、担当者ごとのメモ帳やメールの受信箱に散らばっていると、同じ相手からの連絡が続いたときに経緯を追えません。共有の表や問い合わせの管理の仕組みに、1件ごとにまとめておくのが基本です。
小さなチームなら、共有のスプレッドシートに上の表の項目を列として作るだけでも始められます。ただし、問い合わせの件数が増えると、メールで届いた内容を表に写す手間が増え、写し忘れや、誰が返信したか分からない状態が起きやすくなります。
受け付けから記録、返信までを1か所で回す道具の選択肢の1つが、Halictです。公式サイトによると、Halictはフォームで受け付けた1件ごとに担当と状況(ステージ)を残し、返信も同じ画面から送れて、開封まで記録されます。問い合わせの受け口をHalictのフォームに一本化すれば、誰が受け付け、誰が返信し、いまどの段階にあるかを、1件ごとの記録として追えます。12種類の項目でフォームを作れるので、「ご用件の種類」「ご購入日」「ご希望の対応」のように、最初から事実を聞き取れる形にしておくこともできます。料金は、1人で使うなら無料で、フォームの数と回答の数はどのプランでも無制限です。Slack、Teams、Chatworkへの通知は月額7,800円(税抜)のチームのプランから使えるので、届いた苦情を責任者にすぐ知らせたい場合は、その範囲も確かめてください。
Halictは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。
電話や窓口でのやり取りは、対応したあとに同じ記録の場所へ書き加えるように決めておくと、経路が違っても1件の経緯としてまとめて追えます。
社内の体制づくり
法律で求められている対策を、小さな会社やチームでも回せる形にするには、次の順番で進めると無理がありません。
方針を1枚にまとめる
まず、「カスハラには毅然とした態度で対応し、働く人を守る」という方針と、自社で何をカスハラとして扱うか、起きたときにどう対処するかを、1枚の文書に整理します。社内に周知するだけでなく、自社のWebサイトや店頭に方針を掲げる方法もあります。厚生労働省のサイトで紹介されている企業の事例にも、ホームページで対応の方針を公開した病院の例があります。お客様に事前に方針を知らせておくことは、カスハラを防ぐことにもつながります。
相談窓口を決める
働く人がカスハラを受けたときに相談できる窓口を決め、誰が担当するかを周知します。小さな会社なら、代表者や管理職が担当することになりますが、その人自身が対応している場合の相談先も決めておきます。
マニュアルを作る
方針と線引きの基準、その場での対応の手順、引き継ぎの連絡先、記録の項目を、現場の人がすぐに開けるマニュアルにまとめます。厚生労働省の指針でも、顧客等への対応のマニュアルにカスハラの内容と対処の内容を書いて周知することが、対処の内容を周知している例として挙げられています。業種ごとのカスハラ対策のマニュアルは、厚生労働省のハラスメント対策の総合情報サイト「あかるい職場応援団」の資料のページから入手できます。
研修で、実際の場面を練習する
マニュアルを配るだけでは、いざというときに体が動きません。電話の録音の例や、窓口でのやり取りの例を使って、限定的な謝り方、引き継ぎの伝え方、断り方を声に出して練習します。
被害を受けた人を守る
カスハラを受けた人には、休憩をとってもらう、担当を代える、必要に応じて産業医や専門家に相談できるようにする、といった配慮をします。相談したことで不利益な扱いを受けないことも、改めて伝えます。
原因を減らすための取り組み
カスハラへの対策は、起きたあとの対応だけではありません。厚生労働省の指針では、商品やサービス、接客の問題や、お客様とのコミュニケーションの不足が、カスハラの原因や背景になり得ると書かれています。再発を防ぐ措置として、こうした問題の改善を図ることや、接客の慣行の見直しなども挙げられています。
記録を見返すと、同じような苦情が同じ理由で繰り返されていることがあります。たとえば、「料金の説明が分かりにくい」「納期の連絡が遅い」「問い合わせへの返信が遅い」といった原因が見えれば、説明の文面を直す、連絡の決まりを作る、よく来る質問の答えをWebサイトに載せる、といった手が打てます。苦情を個別に片づけるだけでなく、月に1回ほど記録を見返して、原因を減らす作業につなげることで、カスハラに発展する前の段階で問題を解消できます。
また、厚生労働省は、働く人がお客様への理解を深めるために、消費者の心理や障害の特性、認知症の症状についての資料を案内するリーフレットも公開しています。強い口調の背景に、障害や病気の症状がある場合もあります。カスハラかどうかを判断する前に、相手の事情を知る手がかりとして役立ちます。
働く人がカスハラを受けたときにできること
ここまでは会社としての対応を中心に説明してきましたが、実際にカスハラを受けるのは、現場で働く1人ひとりです。働く側として、次のことを覚えておくと、自分を守りやすくなります。
まず、その場で我慢し続けなくてよいということです。改正法のもとでは、事業主はカスハラから働く人を守る方針を決め、対処の内容をあらかじめ伝えておく必要があります。決められた基準に達したら、ためらわずに責任者を呼んでください。自分の対応が悪かったのではないかと考えて抱え込むと、心身への負担が大きくなります。
次に、受けた言動をできるだけ早く書き留めておくことです。日時、相手の言葉、その場にいた人を、覚えているうちにメモします。記憶は時間とともにあいまいになるので、あとで会社に相談するときや、外部の窓口に相談するときの大事な材料になります。
そして、会社の相談窓口に相談しても対応してもらえないときは、外部の窓口を使えることです。厚生労働省のハラスメント対策の総合情報サイトでも、会社に相談窓口がない、相談しても取り合ってもらえない、会社に相談すると不利益がありそうで相談しにくい、といったときに、会社の外にも利用できる相談窓口があると案内しています。眠れない、仕事に行くのがつらいといった状態が続くときは、医療機関や専門家への相談も考えてください。
困ったときの相談先
社内だけで対応しきれないときは、外部の相談先を使います。
| 相談先 | 相談できること |
|---|---|
| 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室) | カスハラ対策の義務の内容、会社が講じるべき措置についての相談 |
| 総合労働相談コーナー | 働く人が、職場のハラスメントやトラブル全般について相談できる窓口 |
| 警察 | 暴行、傷害、脅迫など犯罪にあたり得る言動。緊急のときは110番 |
| 弁護士 | 損害賠償の請求や法的な手続きが必要な場合 |
厚生労働省のリーフレットには、カスハラ対策についての問い合わせ先として、都道府県ごとの労働局の雇用環境・均等部(室)の電話番号が載っています(受付は平日の8時30分から17時15分)。働く人が自分で相談したい場合は、厚生労働省の総合労働相談コーナーの案内から、近くの窓口を探せます。法的な手続きが必要かどうかの判断は事情によって変わるので、早めに専門家に相談してください。
小さな会社やフリーランスが備えておくこと
カスハラへの備えは、大きな会社だけの話ではありません。むしろ、人数の少ない会社や、1人で仕事を受けているフリーランスほど、1人で抱え込みやすく、影響も大きくなります。
社内の体制づくりについては、就業規則にハラスメントへの対応を書いておくことも大切です。リモートワーク・副業解禁に対応した就業規則の作成費用と注意点では、社会保険労務士に就業規則の作成を頼むときの費用と、在宅勤務や副業に合わせて見直す点を紹介しています。SNSでの書き込みが広がって会社の評判に関わる事態になったときは、不祥事・炎上対応のプロ!クライシスマネジメントの費用と対応ステップ【2026年版】で紹介しているように、外部の専門家の力を借りる選択肢もあります。
病院や診療所の受付は、カスハラが起きやすい職場の1つです。医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)では、医療機関の受付や会計の仕事に必要な知識を確かめる資格を紹介しています。患者さんやご家族への対応は、病気の不安が背景にあることも多く、決めつけずに話を聞く力と、施設の決まりに沿って責任者に引き継ぐ判断の両方が求められます。
問い合わせへの返信の負担を減らすために、よく来る質問への回答をチャットボットなどで自動化する方法もあります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、企業の業務にAIを取り入れる支援の仕事を紹介しています。ただし、苦情やカスハラにあたる連絡は、自動の回答だけで済ませず、人が判断する経路に必ずつなぐ設計が必要です。
会社の経営全体から苦情の原因を見直したい場合は、中小企業診断士のような経営の専門家に相談する方法もあります。中小企業診断士は、中小企業の経営を診断し助言する国家資格で、業務の流れや接客の仕組みの見直しを支援できます。
2004年から在宅ワークとフリーランスの仲介を続けてきた運営者として見てきた限りでは、取引先とのトラブルが大きくなりやすいのは、最初の依頼の範囲と、やり取りの記録があいまいなときです。仕事を受ける前に範囲と納期と修正の回数を書面で確かめ、やり取りを1か所に残している人ほど、無理な要求を受けても「最初にお約束した範囲はここまでです」と落ち着いて伝えられています。厚生労働省の指針が、雇っている人以外の個人事業主なども守る対象として考えるのが望ましいとしているように、業務委託で窓口の仕事を受けているフリーランスも、依頼主と一緒に、カスハラが起きたときの引き継ぎ先と記録の残し方を最初に決めておくと安心です。
よくある質問
Q. カスハラ対策は、すべての会社に義務づけられたのですか?
2026年(令和8年)10月1日に施行された改正労働施策総合推進法により、働く人を雇う事業主に、カスハラを防ぐための措置が義務づけられました。方針を決めて周知する、相談窓口を作る、起きたあとに素早く対応する、といった措置です。自社が何をすべきかは、厚生労働省のリーフレットと指針で確かめ、分からない点は都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に問い合わせてください。
Q. お客様の苦情は、どこからがカスハラになりますか?
要求の中身に理由があるかどうかと、要求の手段や態度が常識的に許される範囲かどうかの両方で考えます。要求の中身が正当でも、怒鳴り続ける、長時間拘束する、脅すといった手段であれば、カスハラにあたる可能性があります。苦情のすべてがカスハラではないので、決めつけず、社内で決めた基準とチームの目で判断します。
Q. カスハラを受けたとき、何を記録すればよいですか?
日時、受け付けた経路、相手の情報、要求の内容、実際の言動、対応した人と引き継いだ人、こちらの回答、いまの状態を残します。感想ではなく、「何を言い、何をしたか」の事実を書くのがこつです。録音や録画をする場合は、個人情報保護法などを守って扱います。記録は個人のメモに散らさず、共有の場所に1件ごとにまとめます。
Q. カスハラについて、会社の外で相談できる窓口はありますか?
会社として講じるべき措置については、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。働く人が職場のトラブルを相談したいときは、各地の総合労働相談コーナーを使えます。暴行や脅迫など犯罪にあたり得る言動は警察へ、損害賠償など法的な手続きが必要な場合は弁護士へ相談します。緊急のときは迷わず110番に通報してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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