電話代行が受けてよいクレーム対応の範囲|交渉代行と弁護士法の壁 2026


この記事のポイント
- ✓クレーム対応代行を検討する事業者向けに
- ✓弁護士法72条が定める非弁行為の境界線を解説
- ✓電話代行・カスタマーサポート委託が対応できる範囲と
アパレルEC事業を自分で回していると、クレーム対応の電話が鳴るたびに手が止まる。「クレーム対応代行 弁護士法」で検索してこの記事にたどり着いた人は、おそらく外部の電話代行やカスタマーサポート委託先を探しながら、「これは弁護士でないと対応できない範囲なのでは」という不安にぶつかっているはずだ。結論から言えば、クレーム対応代行には弁護士法72条という明確な壁があり、業者が越えてよい範囲と越えてはいけない範囲が法律で分かれている。この記事では、電話代行・カスタマーサポート代行が受けられるクレーム対応の範囲と、交渉代行が非弁行為とみなされるラインを、実務で使える基準として整理する。
クレーム対応代行の市場と弁護士法72条の背景
クレーム対応を外部委託する動きは、ここ数年で急速に広がっている。EC事業者、SaaS企業のカスタマーサポート、店舗運営会社など、自社で一次対応の人員を抱えきれない中小事業者ほど、電話代行やチャット対応代行を利用する傾向が強い。背景には人手不足と、SNS上でのクレーム拡散リスクへの警戒がある。一件のクレーム対応を誤ると、レビューサイトやSNSに拡散され、売上に直結するダメージを負う。だからこそ「初期対応だけでもプロに任せたい」というニーズが増えている。
一方で、この市場には見落とされがちな法律上の制約がある。それが弁護士法72条だ。同条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件、審査請求などの法律事件に関して鑑定、代理、仲裁、和解その他の法律事務を取り扱うこと、またはこれらの周旋をすることを禁止している。いわゆる「非弁行為」の禁止規定であり、違反すると2年以下の懲役または300万円以下の罰金という重い罰則が定められている。
クレーム対応代行の文脈でこの条文が問題になるのは、単なる電話の一次受けやメール対応の範囲を超えて、金銭的な要求への交渉、慰謝料や返金額の決定、法的な主張の応酬にまで代行業者が踏み込んでしまうケースだ。「クレーム対応を外注したら、実は非弁行為に加担していた」という事態は、依頼する事業者側にとっても他人事ではない。委託先が違法な業務範囲で活動していた場合、依頼者側も善管注意義務違反や共同不法行為の責任を問われるリスクがある。
弁護士であれば誰でもよいというわけではなく、クレーム対応やクレーマー対応の分野で経験と実績がある弁護士を探すことが必要です。 出典: kigyobengo.com
この指摘は弁護士選びの文脈だが、裏を返せば「弁護士でなければ踏み込めない領域が存在する」ことの証左でもある。まずはこの境界線を正確に理解することが、事業者にとってもクレーム対応代行を選ぶ側にとっても出発点になる。
クレーム対応代行が「受けてよい」範囲とは
電話代行やカスタマーサポート代行が合法的に担える業務は、実務上おおむね次のように整理できる。
一次受付・ヒアリング・記録業務
クレームの電話やメールを受け付け、内容をヒアリングして記録する行為そのものは、法律事務にあたらない。顧客の氏名、連絡先、注文番号、クレームの概要を聞き取り、社内の担当部署に引き継ぐという業務は、弁護士法72条が禁止する「法律事務」の範疇には含まれない。多くの電話代行サービスが提供している一次受付は、このカテゴリーに収まる限り適法だ。
マニュアルに基づく定型対応
「返品ポリシーはこちらです」「交換の場合は着払いで返送してください」といった、あらかじめ社内で定めたマニュアルやFAQに沿った案内も問題ない。ここでのポイントは、代行業者が独自の判断で権利義務関係を解釈していない点にある。決まったルールを読み上げる、あるいはその通りに案内するだけであれば、法律判断を伴わないため非弁行為には該当しない。
エスカレーション(社内担当者への引き継ぎ)
クレームの内容が複雑化した場合、代行業者が自分で解決を試みるのではなく、依頼元企業の担当者やカスタマーサポート責任者にエスカレーションする体制も適法な運用だ。むしろ健全なクレーム対応代行は、「どこまでが自分たちの権限で、どこから先は依頼元に戻すか」の線引きを明確に持っている。
交渉代行と弁護士法の壁
問題が生じやすいのは、次のような業務に踏み込んだ場合だ。
金銭要求への交渉・和解額の提示
顧客から「慰謝料を払え」「全額返金しろ、さらに迷惑料も上乗せしろ」といった金銭要求があった際に、代行業者が独自に金額交渉を行い、和解案を提示する行為は、弁護士法72条にいう「和解」に該当しうる。これは典型的な非弁行為として摘発対象になりうる領域だ。電話代行の担当者が「では〇円でいかがでしょう」と交渉を始めた瞬間、業務範囲は法律事務に踏み込んでいる。
法的主張への応答
「これは債務不履行だ」「消費者契約法違反だ」といった法的な主張に対して、代行業者が法律論で反論したり、法的な見解を述べたりする行為も危険域に入る。顧客が法律用語を使ってきた場合、代行業者としては「担当者に確認のうえ折り返します」と回答し、社内の法務担当者や弁護士に判断を仰ぐのが正しい対応だ。
悪質クレーマーへの警告・法的措置の予告
「これ以上続けるようであれば法的措置を検討します」という警告文を代行業者が独自の判断で発する行為も、代理人としての意思表示に近づくため注意が必要だ。実際にこうした警告を出すべき局面では、弁護士名義での通知書、あるいは少なくとも弁護士の監修を経た文面を使うのが実務上の標準になっている。
そういう意味では、近くの弁護士でなくても、ほとんど支障はありません。むしろ、距離にこだわらずに、クレーム対応やクレーマー対応の分野で経験と実績がある弁護士に依頼することを優先するべきです。 出典: kigyobengo.com
つまり、クレーム対応代行を検討する事業者が押さえるべきなのは「地理的に近い代行業者を探す」ことではなく、「どこまでを代行業者に任せ、どこから弁護士に切り替えるか」という業務設計そのものだ。
弁護士への切り替えを検討すべき5つのケース
現場の運用として、次のようなケースに至った時点で、代行業者から弁護士へのバトンタッチを検討するのが望ましい。
ケース1: 金銭要求が具体的な金額に及んだとき
「〇円払え」という要求が出た時点で、交渉業務は非弁リスクの領域に入る。代行業者はこの段階で必ず依頼元企業と弁護士に情報共有すべきだ。
ケース2: 同じ相手から複数回・長期間にわたるクレームが続くとき
一度の対応で終わらず、週に何度も電話がかかってくる、あるいは数か月にわたって同じ相手からクレームが続く場合、単なる顧客対応ではなく「クレーマー対応」の領域に入っている可能性が高い。組織として弁護士を窓口に立てることで、対応の一貫性と証拠化が進む。
ケース3: 脅迫的な言動や業務妨害的な行為があるとき
「SNSで晒す」「店に押しかける」といった発言が出た場合は、刑事事件(強要罪、威力業務妨害罪など)に発展する可能性もある。この段階では代行業者の手を離れ、弁護士や場合によっては警察への相談が必要になる。
ケース4: 内容証明や訴状などの法的書面が届いたとき
顧客側が内容証明郵便を送ってきた、あるいは少額訴訟や通常訴訟の提起をほのめかしてきた場合は、明確に「非訟事件・訴訟事件」の領域であり、代行業者が対応してよい範囲を超える。
ケース5: 契約内容の解釈や責任の所在が争点になるとき
「契約書のこの条項はどう解釈すべきか」「責任は当社にあるのか、配送業者にあるのか」といった論点が絡む場合、法律判断そのものが必要になる。ここでの誤った回答は、後の紛争で不利な証拠になりかねない。
クレーム対応を弁護士に依頼する際の費用感
弁護士にクレーム対応を依頼する場合の費用は、依頼形態によって幅がある。スポットでの相談は1時間1万円前後からが一般的な相場で、実際の交渉代理を依頼する場合は着手金として10万円〜20万円程度、加えて成功報酬が発生する事務所が多い。継続的にクレームリスクを抱える業種であれば、月額固定の顧問契約(月3万円〜5万円程度からの事務所が多い)を結び、日常的な相談窓口として活用する選択肢もある。
顧問契約のメリットは、クレームが発生してから探すのではなく、平時から相談できる相手を確保しておける点にある。特に、クレームの頻度が業種特性として一定数見込まれる業態(飲食、EC、医療、美容など)では、顧問弁護士を持つことでスピード感のある一次対応が可能になる。
業者選び・弁護士選びのポイント
クレーム対応代行を外注する場合、業者選びで確認すべきポイントは次の3つに絞られる。
まず、対応範囲を明文化した契約になっているかどうかだ。「一次受付とヒアリングまで」「交渉行為は行わない」という業務範囲が契約書やサービス仕様に明記されていない業者は、知らないうちに非弁リスクを負っている可能性がある。次に、エスカレーションのフローが明確かどうか。クレームが複雑化した際、誰が、どのタイミングで、どこに引き継ぐのかが定まっていない代行業者は避けたほうがよい。最後に、弁護士との連携実績があるかどうかも重要な判断材料になる。信頼できる代行業者ほど、必要に応じて弁護士への橋渡しを提案してくる。
弁護士を選ぶ際は、クレーム対応・クレーマー対応の実績があるかを確認するのが基本だ。企業法務全般を扱う事務所の中でも、消費者対応やカスタマーハラスメント案件を専門的に扱う弁護士とそうでない弁護士とでは、初動のスピードと解決までの見通しの立て方が大きく異なる。
▶参考事例:化粧品の皮膚トラブルのクレームが発生。慰謝料等「350万円」を請求された事件が「35万円」の支払いで和解に成功した事例 出典: kigyobengo.com
この事例が示すように、専門知見のある弁護士が介入すると、要求額と実際の解決額に大きな開きが生じるケースが少なくない。素人判断で交渉を続けるより、早期に専門家へ切り替えたほうが結果的にコストを抑えられることも多い。
依頼までのステップ
クレーム対応体制を整える手順は、おおむね次の4ステップで進めるとスムーズだ。
まずステップ1として、自社のクレーム対応フローを棚卸しする。どの段階までを社内で対応し、どこから外部に委託するのかを整理する。ステップ2では、外注する範囲を「一次受付・記録・定型対応」に限定した代行業者を選定する。ステップ3で、金銭交渉や法的主張への対応が必要になった場合の連絡先として、顧問弁護士または相談可能な弁護士を確保しておく。そしてステップ4として、代行業者・社内担当・弁護士の三者間でエスカレーションのルールを文書化し、全員が同じ基準で動けるようにする。
このステップを踏んでおくことで、「代行業者に任せていたら知らないうちに非弁行為に近い対応をしていた」というリスクを未然に防げる。
フリーランス・業務委託でクレーム対応に関わる人が知っておくべきこと
在宅ワークや業務委託の形でカスタマーサポート、電話代行、SNS運用代行に携わる人にとっても、この境界線は無関係ではない。私自身、アパレルブランドのEC運営代行を請け負う中で、購入者からの問い合わせ対応も業務範囲に含めていた時期がある。最初の頃は「返品対応もこちらで巻き取れば喜ばれる」と思い込み、返金額や慰謝料めいた要求にまで自分の判断で回答しようとしたことがあった。結果的にブランド側の方針と食い違い、後から訂正の連絡を入れる羽目になった。あの経験から学んだのは、業務委託として受けた仕事であっても「どこまでが自分の裁量で、どこから先は依頼主や専門家に戻すべきか」を最初に契約で明確にしておく重要性だ。
これはクレーム対応代行に限らず、SNS運用代行やEC運営代行全般に言えることだと思う。フォロワーからの批判的なコメントやDMへの対応を任されることは多いが、そこに金銭的な要求や法的なニュアンスが含まれ始めたら、自分の判断で完結させず、必ず依頼主に相談する。この線引きを持っているかどうかで、業務委託者としての信頼度は大きく変わってくる。
電話代行・カスタマーサポート業務を受けるフリーランスへ
こうしたクレーム対応の周辺業務は、コンサルティングや業務改善の文脈でも需要が高まっている領域だ。企業のカスタマーサポート体制構築や業務フロー整備に関わりたい人は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で、AIチャットボットの導入支援や業務効率化のコンサルティング案件がどのように募集されているかを確認できる。また、SNS上のクレーム対応やレピュテーション管理まで含めた総合的なサポートに関心がある場合は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、マーケティングとリスク管理を横断する案件の傾向を見ておくとよい。
カスタマーサポート業務をシステム面から支えたい、チャットボットやFAQ管理システムの構築に関わりたいという場合は、アプリケーション開発のお仕事で、業務委託として参画できる開発案件の実態を確認しておくと今後のキャリア設計に役立つ。
クレーム対応関連の周辺知識も押さえておく
クレーム対応と並行して、契約書まわりの知識も業務委託者にとっては重要になる。発注書や契約書に業務範囲が明記されているかどうかは、後々のトラブル回避に直結する。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストでは、業務委託契約で最低限確認すべき項目が整理されている。クレーム対応業務を受託する際も、対応範囲・報酬・免責事項が契約書に明記されているかを必ず確認したい。
また、クレーム対応の記録や会計処理を自分で行う個人事業主にとって、記帳や確定申告の知識も欠かせない。税理士の副業ガイド|確定申告代行・記帳代行で稼ぐ方法【2026年版】では、副業として経理系のスキルを提供する働き方が紹介されており、クレーム対応代行と組み合わせてバックオフィス業務を一括受注するモデルの参考にもなる。
独自データ考察
20年近くフリーランス・在宅ワーク市場を見てきた運営者の立場から言えば、クレーム対応まわりの業務委託案件は、ここ数年で急速に専門分化が進んでいる領域のひとつだ。以前は「電話応対ができる人」というざっくりした募集要件が多かったが、最近は「エスカレーションルールの設計ができる人」「マニュアル整備の経験がある人」といった、業務範囲の線引きを理解した人材へのニーズが明確に強まっている。これは裏を返せば、依頼する企業側が非弁リスクや法的トラブルへの意識を高めている証拠でもある。
長く安定して案件を受け続けているフリーランスほど、単に「電話を取る」「メールに返信する」という作業の速さではなく、"ここから先は判断できないので確認します"と適切に線を引ける人だという印象がある。これは謙虚さの演出ではなく、依頼主にとって最大のリスクヘッジになるからだ。判断できない領域で無理に対応してしまう人より、適切なタイミングで専門家に橋渡しできる人のほうが、結果的に長期契約につながりやすい。
もうひとつ運営者として感じるのは、仲介手数料が乗らない直接契約の場合、この"線引きの調整"がしやすいという点だ。エージェンシー経由の多重下請けだと、業務範囲の変更や追加相談のたびに複数の窓口を経由する必要があり、対応が遅れがちになる。一方、依頼企業とフリーランスが直接つながっている場合、手数料0%の構造がそのまま意思疎通のスピードにも表れる。中間マージンが乗らない分、依頼企業はより柔軟に条件を調整でき、受け手であるフリーランスもその分の対価をそのまま受け取れる。クレーム対応のような、状況に応じて業務範囲の調整が頻繁に必要になる仕事ほど、この直接性の恩恵は大きい。
弁護士法72条という一見取っつきにくい法律論も、実務に落とし込めば「どこまで自分たちで対応し、どこから専門家に渡すか」というシンプルな業務設計の問題に帰着する。クレーム対応代行を検討する事業者も、業務委託としてその一端を担うフリーランスも、この境界線を曖昧にしないことが、結局は双方の信頼関係を守ることにつながる。
よくある質問
Q. クレーム対応代行を利用すると弁護士法違反になりますか?
一次受付・記録・マニュアルに沿った定型案内の範囲であれば違反にはなりません。金銭交渉や法的主張への応答など、実質的な法律判断を伴う行為に踏み込むと弁護士法72条の非弁行為にあたる可能性があります。
Q. 電話代行業者に交渉まで任せてよいですか?
金額の交渉や和解案の提示は避けるべきです。弁護士法72条が禁じる「和解」に該当しうるため、金銭要求が具体的になった時点で弁護士や社内の担当者にエスカレーションする体制が必要です。
Q. クレーム対応を弁護士に依頼する費用相場はどれくらいですか?
スポット相談は1時間1万円前後、交渉代理は着手金10万円〜20万円程度に成功報酬が加わるケースが多いです。継続的にクレームリスクがある業種は月額3万円〜5万円程度の顧問契約も選択肢になります。
Q. どのタイミングで弁護士に切り替えるべきですか?
具体的な金額要求、長期化・反復するクレーム、脅迫的な言動、内容証明などの法的書面が届いた場合、契約解釈が争点になる場合は、代行業者の対応範囲を超えるため弁護士への切り替えを検討すべきです。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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