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決裁とは|承認との違いと社内で通す流れ

@SOHO編集部
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決裁とは|承認との違いと社内で通す流れ

この記事のポイント

  • ✓権限を持つ人が申請や起案の内容について最終的に可否を決めることです
  • ✓承認・決済・稟議との違い
  • ✓電子決裁に切り替えるときの注意点までを解説します

決裁とは何か、承認とどう違うのか、自分の出した書類はいま誰のところで止まっているのか。会社に入って初めて稟議書や決裁書を書く人、管理職になって決裁する側に回った人が最初につまずくのが、この言葉の使い分けと社内の流れです。決裁は、権限を持つ人が申請の内容について最終的に「やる」「やらない」を決める行為で、会社の意思決定の最後の関門にあたります。この記事では、決裁の意味と承認・決済・稟議との違い、決裁権限の決め方、社内で決裁を通す手順、書類の書き方と例文、決裁が遅くなる原因と短くする工夫までを順に説明します。複数の案件の決裁の進み具合をチームで共有したい場面では、ボードで状況を並べられるPinatecaを使う方法もあわせて紹介します。

決裁とは何か

決裁(けっさい)とは、部下や担当者が出した申請・起案について、その件を決める権限を持つ人が、最終的に可否を判断することです。可とすれば会社としてその件を実行してよいことになり、否とすれば実行しないことが決まります。決裁する人を決裁者、決裁する権限を決裁権限と呼びます。

ワークフローシステムを提供する会社の解説では、決裁を次のように説明しています。

決裁とは、申請・起案内容に対して許可(合意)もしくは不許可(却下)という最終的な判断を下すことです。 出典: atled.jp

ここで大事なのは「最終的な」という部分です。申請が決裁に至るまでには、直属の上司、関係する部署の責任者など、何人もの確認を経ることがあります。その途中の確認と、最後に会社としての結論を出す判断とは、役割が違います。この違いが、次に説明する承認との違いです。

決裁と承認の違い

承認とは、申請の内容を確認し、正しい、または妥当だと認めることです。決裁に至るまでの途中の段階で、上司や関係部署が内容を確かめて「この内容で先に進めてよい」と認める行為が承認にあたります。承認は何人もが順番に行うことがありますが、決裁は最後に1人(または1つの会議体)が行います。

たとえば、営業担当が10万円の販促物の発注を申請した場合、課長が内容を確かめて承認し、経理課が予算の残りを確かめて承認し、最後に部長が決裁する、という流れになります。課長と経理課の承認は「確認した」という意味で、部長の決裁が「会社として発注を決めた」という意味になります。会社によっては承認と決裁を厳密に分けず、最後の承認を決裁と呼んでいることもあるため、自社の規程でどう定義しているかを一度確かめておくと安心です。

似た言葉との違い

決裁の周りには、似た言葉がいくつもあります。会社で使われるものを表に整理します。

言葉 読み 意味
決裁 けっさい 権限を持つ人が申請や起案の可否を最終的に決めること
承認 しょうにん 申請の内容を確認し、妥当だと認めること。決裁の手前の段階で行われる
決済 けっさい 代金の支払いや受け取りで取引を済ませること。お金のやり取りの言葉
稟議 りんぎ 決裁者を集めた会議を開かずに、書類を回して関係者の承認と決裁を得る手続き
起案 きあん 決裁を求める案を最初に作ること。作った書類を起案書と呼ぶこともある
合議 あいぎ・ごうぎ 申請に関係する他の部署にも内容を確認してもらうこと
回覧 かいらん 決裁は求めず、内容を知らせるために書類を順に見てもらうこと
専決 せんけつ 本来の決裁者から任された範囲で、下位の役職者が決裁すること
代決 だいけつ 決裁者が不在のとき、あらかじめ決めた代わりの人が決裁すること

いちばん取り違えやすいのが「決済」です。読みは同じですが、決済は「クレジットカードで決済する」のように、お金の支払いを済ませる意味の言葉です。社内の書類で「決済をお願いします」と書くと誤字になるので注意します。稟議は決裁を得るための手続きの名前で、稟議書は決裁を求めて回す書類、と覚えておくと整理しやすくなります。

決裁が必要になる場面

どのような事柄に決裁が必要かは会社ごとに規程で決めていますが、多くの会社で決裁の対象になっているのは次のような事柄です。

  • 物品やサービスの購入。一定の金額を超える備品、ソフトウェア、外注費など
  • 契約の締結。取引先との業務委託契約、秘密保持契約、賃貸借契約など
  • 人事に関すること。採用、異動、昇格、給与の変更、退職の承認など
  • 経費の支出。出張、接待、広告、イベントの開催など
  • 新しい取り組みの開始。新規事業、新しいサービスの提供、キャンペーンの実施など
  • 規程やルールの制定と変更。就業規則、社内規程、業務の手順の変更など
  • 対外的な発表。プレスリリース、Webサイトでの告知、取材への対応など

共通しているのは、会社のお金、信用、責任に関わる事柄だという点です。担当者が独断で進めて後から問題になると、会社として責任を負うことになるため、権限を持つ人が事前に判断する仕組みを設けています。逆に言えば、会社のお金や信用に影響しない日常の作業まで決裁の対象にすると、決裁者の負担が増え、決裁が遅くなる原因になります。

稟議で決める方法と会議で決める方法

決裁の方法には、書類を回して決める稟議と、決裁者が集まる会議で決める方法の2つがあります。どちらを使うかは、事柄の重さと急ぎ具合で使い分けます。

稟議で決める

稟議は、起案書を関係者に順番に回し、承認と決裁を集める方法です。決裁者が同じ時間に集まる必要がないため、件数の多い日常の決裁に向いています。一方で、書類を読むだけでは伝わりにくい事情があると、途中で質問のやり取りが何度も発生し、かえって時間がかかることがあります。また、多くの人が承認の印を押していても、それぞれが「他の人が確かめているだろう」と考えて内容をよく読まない、という形だけの承認が起きやすい点にも注意が必要です。

会議で決める

経営会議や取締役会のように、決裁者が集まって議論し、その場で結論を出す方法です。金額が大きい投資、新しい事業の開始、重要な人事のように、複数の役員の意見を聞いて決めるべき事柄に向いています。会議で決めた場合は、議事録に決定の内容と理由を残し、それが決裁の記録になります。会議の前に資料を配っておき、当日は質疑と判断に時間を使うようにすると、会議が長引かずに済みます。

使い分けの目安

日常的に起きる定型の事柄は稟議、会社の方向に関わる重い事柄は会議、と分けるのが基本です。急ぎの件で会議を待てない場合は、決裁者に直接説明して決裁を得たうえで、次の会議で報告する、という運用を規程で認めている会社もあります。

決裁権限と決裁権限表

誰がどの事柄を決裁するかは、決裁権限規程や職務権限規程と呼ばれる社内のルールで決めます。その中身を一覧にしたものが決裁権限表です。

決裁権限表の例

決裁権限表は、事柄の種類と金額の規模で、決裁者を分けるのが一般的です。次は従業員50人程度の会社を想定した例です。

事柄 課長 部長 取締役 社長
消耗品・備品の購入 10万円未満 50万円未満 300万円未満 300万円以上
外注・業務委託 なし 100万円未満 500万円未満 500万円以上
出張 国内 国外 なし なし
採用 なし アルバイト 正社員 役員・管理職
取引先との新規契約 なし 定型の契約 定型外の契約 重要な契約

金額の線引きは会社の規模によって大きく変わります。表を作るときは、「決裁の件数が多い事柄ほど下位の役職者に任せる」「失敗したときの影響が大きい事柄ほど上位の役職者が決める」という2つの考え方で線を引くと、偏りの少ない表になります。

法律で取締役会が決めることになっている事柄

株式会社のうち取締役会を設けている会社では、会社法で、取締役会が自ら決めなければならない事柄が定められています。会社法第362条第4項は、取締役会が個々の取締役に任せることのできない事柄として、次のものを挙げています。

取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。 一 重要な財産の処分及び譲受け 二 多額の借財 三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任 四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止 出典: laws.e-gov.go.jp(会社法 第362条)

借財とは、お金を借りることです。どの程度の金額が「重要」や「多額」にあたるかは、会社の規模や事情によって変わり、条文で一律に決まっているわけではありません。決裁権限表を作るときは、こうした事柄を社長の決裁ではなく取締役会の決議に回す必要があるかどうかを、顧問の弁護士や司法書士などの専門家に確かめておくのが安全です。

社内で決裁を通す流れ

ここからは、担当者として決裁を求めるときの一般的な流れを6つの段階で説明します。紙の稟議書でも、電子の申請でも、流れの考え方は同じです。

  1. 決裁権限表で、その件の決裁者と、途中で承認が必要な人を確かめる
  2. 事前に上司へ相談し、内容と進め方の感触をつかむ
  3. 起案書(稟議書・決裁書)を作る
  4. 直属の上司の承認を得る
  5. 関係部署の合議を経る(経理、法務、情報システムなど)
  6. 決裁者の決裁を得て、結果を関係者に知らせる

1. 決裁者と経路を確かめる

最初に、決裁権限表を見て、誰が決裁者なのか、途中で誰の承認が必要なのかを確かめます。金額が線引きのすぐ近くにある場合は、税込と税抜のどちらで判断するのか、複数回に分けた発注を合計するのか、といった細かい決まりも確かめます。経路を間違えると、決裁が終わった後に「この件は部長ではなく取締役の決裁だった」と差し戻され、最初からやり直しになります。

2. 事前に相談する

書類を出す前に、上司や決裁者に口頭で相談しておくことを「根回し」と呼びます。根回しというと悪い印象を持つ人もいますが、決裁者が判断に必要な情報を事前に把握できるという点で、合理的な手順でもあります。相談の段階で「この点の説明が足りない」「予算はこちらの費目で」と指摘を受けておけば、書類の手戻りが減ります。

3. 起案書を作る

書き方は次の節で詳しく説明します。ここで大切なのは、決裁者がその書類だけを読んで判断できるように、目的、内容、金額、効果、リスクを過不足なく書くことです。

4. 上司の承認を得る

直属の上司に起案書を提出し、承認を得ます。上司は内容の妥当性に加えて、部署としてその件を進める必要があるかどうかを判断します。

5. 関係部署の合議を経る

お金が動く件は経理、契約が関わる件は法務、システムの導入は情報システム部門、というように、関係する部署にも内容を確かめてもらいます。合議の段階で出た意見は、起案書に追記するか、別紙として添付して、決裁者が読めるようにします。

6. 決裁を得て知らせる

決裁者が可と判断したら、決裁日と決裁者の名前を記録し、起案者と関係者に知らせます。否とされた場合や、条件付きで可とされた場合は、その理由と条件も記録します。決裁を得てから実行に移ることが原則で、決裁前に発注や契約を進めてしまうと、社内の規程違反になります。

決裁書・稟議書の書き方と例文

起案書の様式は会社ごとに決まっていますが、書くべき項目はおおむね共通しています。

項目 書く内容
件名 何についての決裁を求めるかが一目で分かる題
起案日・起案者 日付、部署、氏名
決裁を求める事項 何を決めてほしいのかを1文で
目的・背景 なぜその件が必要なのか
内容 購入するもの、契約の相手、実施の方法など
金額と費目 総額、内訳、どの予算から出すか
期待する効果 時間や費用の削減、売上への影響など
比較した選択肢 他社の見積もりや、別の方法を検討した結果
リスクと対策 うまくいかなかった場合の影響と、その備え
添付資料 見積書、契約書の案、カタログなど

例文

件名:業務記録用ソフトウェアの導入について

決裁を求める事項:事務部門の業務記録用ソフトウェアを導入し、年間利用料を支出することについて決裁をお願いします。

目的・背景:現在、業務記録を紙の用紙に手書きし、月末に表計算ソフトへ転記しています。転記に事務担当者2人で毎月合計16時間かかっており、転記の誤りによる修正も月に数件発生しています。

内容:〇〇社の業務記録用ソフトウェアを、事務部門の5人分導入します。導入の時期は翌月1日とし、初月に操作の研修を2回行います。

金額と費目:年間利用料36万円(税抜)。情報システム費の今年度予算から支出します。今年度予算の残りは80万円です。

期待する効果:転記の作業がなくなり、毎月約16時間の作業時間の削減を見込みます。

比較した選択肢:△△社の製品も検討しましたが、年間利用料が48万円で、既存の会計ソフトとの連携ができないため、〇〇社を選びました。

リスクと対策:操作に慣れるまで入力に時間がかかる可能性があります。導入後1か月は紙の記録と並行して運用し、問題がないことを確かめてから紙を廃止します。

添付資料:見積書2社分、製品の資料

例文のように、数字で書ける部分は必ず数字で書き、比較した選択肢とリスクを自分から書いておくと、決裁者が質問をしなくても判断できる書類になります。件名は、後から検索したときにも内容が分かるように、「何を」「どうする」を入れて具体的に付けます。「ご相談」「お願い」のような件名では、決裁者の受信箱や書類の山の中で埋もれてしまいます。添付資料が多い場合は、本文の最後に資料の一覧を番号付きで書き、どの資料が何の根拠になっているのかを示しておくと親切です。

決裁が通りやすくなるコツと差し戻される理由

起案書が差し戻される理由には、いくつかの決まった型があります。逆から見れば、それを避けることが通りやすくするコツになります。

よくある差し戻しの理由

  • 決裁を求める事項がはっきりしない。何を決めてほしいのかが本文の最後まで読まないと分からない
  • 金額の根拠がない。見積書がない、相見積もり(複数の会社から見積もりを取ること)をしていない
  • 効果が書かれていない。「業務が効率化する」とだけ書いてあり、どれだけ変わるのかが分からない
  • 比較の検討がない。他の方法や他社の製品と比べた形跡がない
  • 経路が違う。決裁権限表と違う人に回している、合議すべき部署を飛ばしている
  • 添付が足りない。契約書の案や仕様書が付いていない

通りやすくするコツ

最も効果が大きいのは、決裁を求める事項を書類の冒頭に1文で書くことです。決裁者は1日に何件もの書類を読むため、最初の数行で何を判断すればよいかが分かる書類から処理されていきます。次に、金額と効果を並べて書くことです。「36万円かけて、年間約190時間の作業を減らす」と書けば、決裁者は費用に見合うかどうかをその場で判断できます。そして、リスクを隠さず書くことです。決裁者は、うまくいかなかったときの責任も負う立場にあるため、リスクとその備えが書かれている書類ほど安心して決裁できます。

決裁が遅くなる原因と短くする工夫

決裁に時間がかかると、仕入れの機会を逃したり、取引先を待たせたりと、仕事全体が遅れます。決裁が遅くなる原因と、短くするための工夫を整理します。

遅くなる主な原因

  • 承認する人が多すぎる。念のために関係者を全員経路に入れている
  • 決裁者が不在がち。出張や会議が多く、書類が机の上や受信箱で止まる
  • 紙の書類を手で回している。拠点が分かれていると、書類の移動だけで数日かかる
  • 書類が差し戻されて何度も行き来している
  • 金額の線引きが低すぎて、少額の件まで上位の役職者に回っている

短くする工夫

まず、決裁権限表を見直し、件数の多い少額の事柄は下位の役職者の専決に任せます。次に、決裁者が不在のときの代決者をあらかじめ決めておきます。代決した場合は、後で本来の決裁者に報告する決まりにしておくと、権限の行き過ぎを防げます。経路については、承認が必要な人と、知らせるだけで足りる人(回覧)を分け、回覧の人は決裁を待たずに並行して見てもらう形にします。さらに、起案書の様式に必須の項目と添付資料の一覧を入れておくと、書類の不備による差し戻しが減ります。

電子決裁に切り替えるときの注意点

紙の稟議書を回す代わりに、ワークフローシステムで申請から決裁までを行う仕組みを電子決裁と呼びます。

電子決裁とは、ワークフローシステム(電子決裁システム)を利用して、申請から決裁、文書管理までのプロセスを電子的に行うこと。 出典: atled.jp

電子決裁にすると、決裁者が外出先からでも書類を確認でき、書類がいま誰のところにあるかも画面で分かるようになります。一方で、切り替えるときには次の点に注意します。

  • 紙のときの経路をそのまま移さない。不要な承認者を減らす見直しを先に行う
  • 決裁の記録の残し方を決める。誰が、いつ、どの内容で決裁したかが後から確かめられるようにする
  • 添付する見積書や契約書の保存の方法を確かめる。取引先から電子データで受け取った請求書や見積書は、税法上、電子データのまま保存することが求められる場合がある

最後の点について、国税庁は電子帳簿等保存制度特設サイトで、電子データでやり取りした取引の書類の保存の方法を案内しています。電子決裁の仕組みと書類の保存の方法は分けて考えがちですが、決裁に添付した見積書や請求書がそのまま保存の対象になることもあるため、切り替えの前に経理の担当者や税理士と確かめておくと安心です。

決裁する側が気をつけること

管理職になると、決裁を求める側から、決裁する側に回ります。決裁者の判断の質と速さは、部署全体の仕事の進み具合を左右します。決裁する立場で気をつけたい点を整理します。

判断の基準を先に示しておく

部下が起案書を作るたびに「この情報が足りない」と差し戻していると、部下は何を書けばよいのか分からず、決裁までの時間が延びていきます。決裁者として、どのような点を見て判断するのかを、あらかじめ部署の中で共有しておくと、最初から判断に必要な情報がそろった書類が届くようになります。たとえば「10万円を超える購入は相見積もりを2社以上」「新しい取引先との契約は、相手の会社の所在地と設立年を記載」のように、具体的な基準にしておくと伝わりやすくなります。

差し戻すときは理由と直す点を書く

否とする場合や、内容を直して出し直してもらう場合は、理由と、どこを直せば判断できるのかを具体的に伝えます。「もう少し検討して」とだけ返すと、部下は何をどう検討すればよいのかが分からず、同じ書類が何度も行き来します。差し戻しの理由を記録として残しておくと、後から同じような件が起案されたときの参考にもなります。

期限を決めて判断する

決裁者が判断を先延ばしにすると、その間、案件は止まったままになります。受け取った書類は、原則として何日以内に判断するという目安を自分で決めておくと、溜め込みを防げます。判断に追加の情報が必要な場合も、まず「この点を確かめてから判断する」と起案者に返しておけば、起案者は待っている間に必要な準備を進められます。

決裁した内容には責任が伴う

決裁は、その件を会社として実行することを決める行為です。決裁した件で問題が起きた場合、決裁者は「書類に書いていなかった」では済まされない立場にあります。決裁の前に、金額の根拠、契約の条件、リスクの書き方に不自然な点がないかを確かめ、疑問があれば決裁の前に質問することが、決裁者自身を守ることにもつながります。

場面ごとの決裁の例

決裁の流れは、事柄の種類によって経路や確かめる点が変わります。よくある3つの場面を例に、どのような経路で決裁に至るのかを示します。会社によって経路は異なるため、ここでは一般的な形として読んでください。

備品を購入する場合

営業部で、外出先での資料説明に使うタブレット端末を3台購入する場面です。担当者は、2社から見積もりを取り、機種と金額を比べた起案書を作ります。金額が課長の専決の範囲を超えるため、課長の承認を得てから部長の決裁に回します。端末を社内のネットワークにつなぐ場合は、情報システム部門の合議も経路に入れ、セキュリティの設定や管理の方法を確かめてもらいます。決裁後は、購入した端末を備品の台帳に登録するところまでが一連の手続きになります。

外部に仕事を発注する場合

広報部で、会社案内のパンフレットの制作を外部のデザイナーに依頼する場面です。起案書には、依頼する内容、納期、金額のほか、制作物の著作権を誰が持つのか、修正は何回まで含まれるのかといった契約の条件も書きます。契約書の案を添付し、法務の担当者の合議を経てから決裁に回します。個人のフリーランスに発注する場合は、取引の条件を書面などで示す決まりがあるため、法務の確認の段階で、発注書に書く項目を一緒に確かめておくと安心です。

人を採用する場合

事務部門でアルバイトを1人採用する場面です。採用の決裁では、なぜ人が必要なのか、どのような仕事を任せるのか、勤務時間と時給、採用の方法と費用を起案書に書きます。人件費は毎月かかり続ける費用なので、年間でいくらになるのかも書き添えます。人事の担当者の合議を経て、決裁権限表に従って部長または取締役が決裁します。

決裁の記録を残し、後から確かめられるようにする

決裁は、会社として何をいつ決めたのかを示す記録でもあります。決裁が終わった書類の扱いを決めておかないと、後で「この契約は誰の決裁で結んだのか」が分からなくなることがあります。

残しておくべき情報

決裁の記録として残しておきたいのは、起案日、起案者、決裁を求めた事項、決裁者、決裁日、決裁の結果(可・否・条件付き可)、条件の内容、添付資料です。紙の稟議書であれば、決裁者の押印や署名の欄と日付の欄が、この記録の役割を果たします。電子決裁であれば、システムが操作の履歴として自動で記録します。

保管の方法と期間

決裁の終わった書類は、年度ごと、部署ごと、事柄の種類ごとなど、後から探しやすい単位で保管します。保管の期間は、社内の文書管理規程で決めるのが一般的です。決裁に添付した契約書や請求書、見積書の中には、税法などで保存の期間が定められているものもあるため、文書管理規程を作るときは、経理や法務の担当者と一緒に確かめておきます。

後から確かめる場面

決裁の記録は、監査や税務調査のときに、会社の意思決定が正しい手続きで行われたかを示す資料になります。また、同じような件が後から起案されたときに、前回はどのような条件で決裁されたのかを確かめる参考資料にもなります。過去の決裁を検索できるように、件名の付け方を統一しておくと、後から探す手間が大きく減ります。

決裁の進み具合を複数人で共有する方法

ワークフローシステムを入れるほどではない小さな会社やチームでは、決裁の対象になる案件が今どの段階にあるのかを、メールや表計算ソフトの一覧で管理していることが多いはずです。件数が少ないうちはそれで足りますが、案件が10件を超えたり、担当者が複数になったりすると、「あの見積もりの件はもう部長に回ったのか」「合議の結果は誰が持っているのか」を確かめるやり取りが増えていきます。

案件ごとの担当と期限と進み具合を複数人で共有したい場合の選択肢の1つが、ボードで仕事を進めるプロジェクト管理のPinatecaです。公式の案内によると、Pinatecaではカンバン、ガントチャート、カレンダー、リストなど8種類のボードを無料のプランから使え、5人までのチームならボード10個まで無料と案内されています。決裁が必要な案件を1件ずつカードにして、「起案中」「上司確認中」「合議中」「決裁済み」のような列に並べると、どの案件がどこで止まっているかを画面で見渡せます。カードには担当者、期限、チェックリスト、添付ファイル、コメントを付けられるので、見積書の添付や、合議で出た意見の記録をその案件の隣に残せます。Pinatecaはワークフローシステムではなく、公式の案内にも決裁そのものを行う機能は書かれていないため、正式な決裁の記録は社内の規程どおり稟議書やワークフローで残し、Pinatecaは案件の段取りと進み具合の共有に使う、という分担になります。Pinatecaは、@SOHOを運営する株式会社ライフスケープが開発・提供しています。

決裁の仕組みづくりに関わる仕事

決裁権限表の見直し、ワークフローシステムの導入、紙の稟議書の電子化は、社内だけでは手が回らず、外部の人に手伝ってもらうことも多い分野です。業務委託の仕事を紹介するサイトでも、業務の流れの整理や、システムの導入支援の依頼が見られます。

社内の業務の流れを整理し、AIやクラウドの道具を使って効率を上げる支援の仕事は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事で、依頼の内容と求められる経験を紹介しています。申請や承認の画面そのものを作る仕事は、アプリケーション開発のお仕事に含まれます。会社の仕組み全体を診断して助言する立場としては、国家資格の中小企業診断士があり、業務の流れの改善や規程の整備を支援する専門家として活動しています。介護や福祉の事業所では、記録や申請の電子化に補助金が使える場合があり、介護・福祉事業所のDX化2026|IT導入補助金で介護記録を完全デジタル化で、対象になる取り組みと申請の流れを解説しています。

在宅ワークとフリーランスの仲介を20年あまり続けてきた運営者として見てきた限りでは、社外の人と仕事を進めるときにも、決裁の流れの違いが進み具合を大きく左右します。発注する側の社内で決裁に2週間かかることを、受ける側が知らずに納期を組むと、着手が遅れて双方が困ることになります。外部に仕事を頼むときは、決裁にかかる期間を最初に伝えておくこと、受ける側は相手の会社の決裁の流れを最初の打ち合わせで聞いておくことが、無理のない予定を組む近道です。仲介の手数料が上乗せされない直接の取引であれば、見積もりの金額がそのまま決裁の金額になるため、決裁書に書く金額の説明もしやすくなります。

よくある質問

Q. 決裁と承認はどう違うのですか?

承認は申請の内容を確認して妥当だと認めることで、決裁に至るまでの途中の段階で上司や関係部署が行います。決裁は、その件を決める権限を持つ人が最後に可否を判断することで、可となれば会社としてその件を実行してよいことになります。会社によっては最後の承認を決裁と呼んでいるため、自社の規程の定義を確かめておくと安心です。

Q. 「決裁」と「決済」はどう使い分けますか?

読みはどちらも「けっさい」ですが、決裁は申請や起案の可否を権限のある人が決めること、決済は代金の支払いや受け取りで取引を済ませることを指します。社内の書類で可否の判断を求めるときは「決裁をお願いします」と書きます。「決済をお願いします」と書くとお金の支払いの意味になり、誤字として扱われるので注意が必要です。

Q. 決裁者が不在のときはどうすればよいですか?

多くの会社では、決裁者が不在のときに代わりに決裁する代決者をあらかじめ決めています。代決した場合は、決裁者が戻った後に内容を報告する決まりにしているのが一般的です。代決の決まりがない会社では、急ぎの件ほど止まりやすくなるため、決裁権限規程に代決者と報告の方法を書き加えることを検討するとよいでしょう。

Q. 決裁書が差し戻されないためには何に気をつければよいですか?

冒頭に決裁を求める事項を1文で書き、金額の根拠となる見積書、期待する効果の数字、比較した選択肢、リスクと対策をそろえることです。決裁権限表で経路を確かめ、合議すべき部署を飛ばさないことも大切です。提出前に上司へ相談して説明の足りない点を指摘してもらうと、書類の手戻りが大きく減ります。

この記事について

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監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

公開:2026年1月23日最終更新:2026年10月24日
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