派遣会社の求人の条件が実態と違うときに、本当の内容を見分ける方法

前田 壮一
前田 壮一
派遣会社の求人の条件が実態と違うときに、本当の内容を見分ける方法

この記事のポイント

  • ✓派遣会社の嘘の求人ではと感じたときに
  • ✓本当の条件を見分ける方法を
  • ✓職業安定法と労働者派遣法にもとづく厚生労働省の公式解説から整理します

派遣会社の求人を見て応募したのに、紹介された仕事は時給も仕事内容も違っていた。登録したら「その求人はもう埋まりました」と言われ、別の仕事を勧められた。こうした経験から、派遣会社の求人は嘘ではないかと感じている人は少なくありません。派遣の求人が実態と違って見えるのには、派遣という働き方の仕組みと、求人の書き方の両方に理由があります。この記事では、職業安定法と労働者派遣法にもとづく厚生労働省の公式の解説を手がかりに、派遣会社が働く人に示さなければならない情報と、その情報で本当の条件を見分ける手順を整理します。

派遣の求人で「条件が違う」と感じやすい理由

派遣という働き方には、3つの当事者がいます。働く人、働く人を雇う派遣会社(法律の上では派遣元)、実際に働く職場の会社(派遣先)です。働く人は派遣会社と労働契約を結び、派遣先の指示を受けて働きます。

この三者の関係が、条件の食い違いを生みやすくしています。求人を出しているのは派遣会社ですが、仕事の中身を決めているのは派遣先です。派遣先から聞いた内容を派遣会社が求人にまとめる過程で、仕事の範囲や忙しさが正確に伝わらないことがあります。実際に働き始めてから「求人に書いてあったより仕事が多い」と感じるのは、このずれが原因のことがよくあります。

もう一つの理由は、派遣の求人の多くが「登録」を入口にしていることです。求人を見て応募しても、まず派遣会社に登録し、そのうえで仕事を紹介される流れになります。登録の時点で求人の仕事がすでに別の人で決まっていた、ということも起こります。応募した側から見ると、求人が「おとり」だったように感じられます。

さらに、時給の表示の仕方にも理由があります。「時給1,800円以上」と書かれていても、その額は経験やスキルが十分な人の場合だけで、実際に提示されるのはもっと低い額だった、ということがあります。

こうした食い違いのすべてが、派遣会社の嘘とは限りません。ただし、法律は派遣会社に対して、働く人に示すべき情報を細かく決めています。その情報を一つずつ確かめれば、本当の条件を見分けられます。

派遣の求人にも、職業安定法の表示のルールがかかる

派遣会社が働く人を集めるために出す求人は、職業安定法の「労働者の募集」に当たります。職業安定法の第5条の4は、求人や募集の情報について、うその表示や誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めており、このルールは派遣会社の求人にもかかります。

厚生労働省の指針は、誤解を生じさせる表示の例として、賃金を実際より高額であるかのように表示すること、職種や業種について実際の業務の内容と大きくかけ離れた名前を使うことなどを挙げています。厚生労働省の求職者向けのリーフレットには、うその表示の例として、実際に募集を行う企業と別の企業の名前で求人を掲載していることや、実際よりも高額な賃金を表示した求人も挙げられています。

また、職業安定法にもとづいて、労働者を募集する事業者が応募者に明示しなければならない労働条件の中には、「労働者を派遣労働者として雇用しようとする旨」が含まれています。厚生労働省の「確かめよう労働条件」の解説に、この項目が明記されています。派遣の仕事であることを隠して募集することは認められていません。

求人を見たら、まず次の点を確かめてください。募集しているのが派遣会社であることが明示されているか。派遣先の会社名ではなく、雇い主である派遣会社の名前、所在地、連絡先が書かれているか。時給に幅がある場合、どのような条件で下限と上限になるのかが書かれているか。

求人サイトに載る派遣の求人の読み方

派遣の求人は、派遣会社の自社サイトだけでなく、求人サイトにも数多く掲載されています。求人サイトで派遣の求人を読むときに、注意したい書き方がいくつかあります。

ひとつは、派遣先の情報のぼかし方です。派遣の求人では、派遣先の会社名は伏せられ、「大手メーカー」「有名企業の本社」のように書かれることが一般的です。会社名を伏せること自体は珍しくありませんが、「大手」「有名」といった言葉は、仕事の中身を判断する材料にはなりません。業種、事業所の規模、部署の雰囲気など、仕事に関係する情報が具体的に書かれているかを見てください。

ふたつめは、職種の名前と仕事の中身のずれです。「オフィスワーク」「事務」と書かれていても、実際には電話での問い合わせ対応が中心ということがあります。厚生労働省の指針は、職種や業種について、実際の業務の内容と大きくかけ離れた名前を使ってはならないとしています。職種の名前ではなく、仕事内容の欄に1日の流れが書かれているかを確かめます。

みっつめは、勤務地の書き方です。「〇〇駅から徒歩圏内」のように最寄り駅だけが書かれている場合、実際の就業場所は紹介の段階まで分かりません。通勤にかかる時間や費用が変わるので、候補となる就業場所の範囲を登録の場で確かめておきます。

よっつめは、雇い主の表示です。厚生労働省の指針は、関係会社をもつ会社が募集するときは、実際に雇う会社を明確にし、関係会社と混同されないよう表示するよう求めています。求人サイトでは、派遣会社の名前より派遣先のイメージが前面に出ることがあります。自分を雇うのはどの会社なのかを、求人の段階で確かめてください。

登録と雇用の違いと、「おとり求人」の見分け方

派遣で働くとき、多くの人が最初に戸惑うのが、登録と雇用の違いです。派遣会社に登録しただけでは、まだ雇われていません。仕事が紹介され、その仕事で働くことが決まった時点で、派遣会社と労働契約を結ぶのが一般的な流れです。

このため、求人を見て登録したのに、その仕事が紹介されないということが起こります。すでに別の人で決まっていた、派遣先の都合で募集が取り消された、応募者の経験が派遣先の希望と合わなかった、などの理由があります。

ただし、募集が終わった求人を掲載し続けることは、ルールの上でも問題があります。2022年10月の職業安定法の改正で、求人を出す側には、求人情報を正確で最新の内容に保つ義務が課されました。厚生労働省の指針は、労働者の募集を終えたり内容を変えたりしたら、その情報の提供を速やかにやめるか変更し、求人サイトなどにもそれを依頼すること、そして情報がいつの時点のものかを明らかにすることを求めています。

登録の場で、求人の仕事は紹介されずに別の仕事ばかり勧められる場合は、次のように確かめてください。「求人に掲載されていた仕事は、いつ募集が終わりましたか」「掲載されている求人の情報は、いつ時点のものですか」。答えが曖昧な場合や、同じ求人がその後も長く掲載され続けている場合は、その記録を残しておくと、あとで労働局に相談するときの材料になります。

雇われる前に、派遣会社が説明しなければならないこと

派遣会社は、働く人を派遣労働者として雇おうとするとき、雇う前に一定の事項を説明しなければなりません。労働者派遣法の第31条の2が定める「待遇に関する事項等の説明」です。

厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、この説明の内容を次のように整理しています。

派遣元事業主は、派遣労働者として雇用しようとする労働者に対して、当該労働者を派遣労働者として雇用した場合における待遇に関する一定の事項等を説明しなければなりません(法31条の2第1項)。 出典: check-roudou.mhlw.go.jp

説明すべき事項として、雇った場合の賃金額の見込み、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の被保険者になることに関する事項、想定される就業時間や就業日、就業場所、派遣期間、教育訓練、福利厚生などの待遇に関する事項が挙げられています。あわせて、派遣会社の概要、労働者派遣の制度の概要、キャリアアップのための教育訓練やキャリアコンサルティングの内容も説明の対象です。

ここで大切なのは、「賃金額の見込み」が説明の対象になっていることです。求人に書かれた時給と、登録の場で説明された賃金額の見込みが違う場合は、その理由を聞いてください。また、派遣会社は、雇い入れようとするときに、昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無などを文書の交付などで明示することとされています。この書面は、あとで条件を照らし合わせるための大切な記録になります。

派遣される前に示される「就業条件」を読む

派遣先が決まり、実際に派遣されるときには、もう一つの明示があります。労働者派遣法の第34条が定める「就業条件の明示」です。派遣先でどのような条件で働くのかを、派遣会社が働く人に示すものです。

厚生労働省の解説によると、明示される主な事項は次のとおりです。

・従事する業務の内容 ・業務に伴う責任の程度 ・派遣先の事業所の名称、所在地、就業の場所と組織の単位 ・派遣先で直接指揮命令する人に関する事項 ・派遣の期間と、就業する日 ・始業と終業の時刻、休憩時間 ・安全衛生に関する事項 ・苦情の処理に関する事項 ・派遣元責任者と派遣先責任者に関する事項 ・就業日以外の日に働かせたり、就業時間を延長したりできる場合は、その日数や時間数

「求人に書いてあった仕事内容と違う」と感じたら、まずこの就業条件の明示の書面と照らし合わせます。業務の内容や責任の程度が書面と違っている場合は、派遣先が契約の範囲を超えて仕事を指示している可能性があります。書面に「データ入力」とあるのに電話応対が中心になっている、「補助業務」とあるのに一人で判断を任されている、といった場合です。

残業の可能性も、この書面で確かめられます。就業時間を延長できる定めがある場合、その時間数が書かれているはずです。「残業ほぼなし」と聞いていたのに、書面には長めの延長時間が書かれている場合は、その理由を派遣会社に確かめてください。

社会保険と雇用保険の加入も、書面で確かめる

派遣の求人で「社会保険完備」と書かれていても、実際にいつから加入できるのか、そもそも自分が加入の対象になるのかは、働き方によって変わります。条件の食い違いが起きやすい項目なので、書面で確かめておきたいところです。

派遣会社が雇う前に行う待遇の説明には、健康保険、厚生年金保険、雇用保険の被保険者になることに関する事項が含まれています。さらに、派遣されるときの就業条件の明示では、健康保険などの資格取得の届出が行政機関に出されていない場合、その理由を示すことになっています。厚生労働省の「確かめよう労働条件」の解説に、この項目が明記されています。

つまり、派遣会社は、働く人が社会保険に加入していない場合、その理由を説明する立場にあります。「短期間なので加入しない」「勤務時間が短いので対象外」といった理由が書面に書かれているかを確かめ、納得できない場合は担当者に聞いてください。

加入の有無は、手取りだけでなく、病気やけがで休んだときの給付や、将来の年金にもかかわります。社会保険の加入要件は働く時間や期間、勤め先の規模などで決まり、制度の見直しも続いています。自分が対象になるかどうかは、派遣会社に確かめたうえで、迷う場合は年金事務所などの窓口に確認してください。求人に「社会保険完備」とあるのに加入の説明がない場合は、それ自体が確かめるべき食い違いです。

契約の途中で派遣が終わるときの扱い

派遣で働く人にとって大きな不安の一つが、派遣先の都合で契約が途中で終わってしまうことです。求人では長期の仕事とされていたのに、数か月で終わってしまった、という経験をした人もいるはずです。

厚生労働省の解説によると、派遣されるときの就業条件の明示には、労働者派遣契約が解除される場合に、派遣で働く人の雇用の安定を図るために講じる措置が含まれています。具体的には、新たな就業の機会の確保や、休業手当などの支払いに必要な費用の負担に関する措置などです。

つまり、派遣先の都合で契約が途中で終わる場合に、派遣会社や派遣先がどのように対応するのかは、派遣される前に書面で示されているはずです。求人で「長期」とされていた仕事でも、派遣の契約期間そのものは数か月ごとに区切られていることがよくあります。就業条件の書面で、派遣の期間と、途中で終わる場合の措置を必ず確かめてください。

契約が途中で終わることになったら、まず派遣会社に、次の仕事の紹介や休業中の扱いについて書面の内容に沿って説明を求めます。説明に納得できない場合は、都道府県労働局に相談できます。

紹介予定派遣は、一般の派遣と確かめる点が違う

派遣の求人の中には「紹介予定派遣」と書かれたものがあります。一定期間派遣で働いたあと、派遣先と本人が合意すれば、派遣先に直接雇われることを予定した派遣です。正社員や契約社員としての採用につながる可能性があるため、魅力的に見えます。

ただし、紹介予定派遣は、直接雇われることを約束するものではありません。派遣期間が終わったときに、派遣先が採用しない、本人が希望しない、という結果もありえます。求人で「正社員登用あり」「直接雇用前提」と強調されていても、その見込みがどの程度なのかは別に確かめる必要があります。

厚生労働省の解説によると、紹介予定派遣の場合は、派遣される前の就業条件の明示に、紹介予定派遣である旨や、派遣先に雇われた場合に予定される労働条件などが含まれます。直接雇用後の給与、雇用の形、勤務地などが書面に書かれているかを確かめてください。

確かめたい質問は次のとおりです。「これまで、この派遣先で紹介予定派遣から直接雇用になった例はありますか」「直接雇用になった場合の雇用の形と給与はどうなりますか」「直接雇用にならなかった場合、その後の仕事の紹介はありますか」。答えを記録しておくと、派遣期間の終わりに条件を確かめる材料になります。

令和8年10月から、明示の内容が増えた

派遣の働き方には、派遣先の正社員などとの間で不合理な待遇の差を設けないようにする「同一労働同一賃金」のルールがあります。このルールの運用が令和8年10月1日に改正され、働く人への明示の内容が増えました。

厚生労働省のリーフレットは、改正の一つとして次のように説明しています。

派遣労働者の雇入れ時や派遣時における明示事項として、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」の明示が必要となります。 出典: mhlw.go.jp

派遣会社は、もともと、派遣で働く人から求めがあれば、比較の対象となる派遣先の労働者との間の待遇の差の内容と理由を説明する義務を負っていました。今回の改正で、その説明を求められることを、雇い入れるときと派遣するときに明示することになりました。同じリーフレットには、説明を求めたことを理由に、派遣会社が解雇などの不利益な扱いをしてはならないとも書かれています。

同じ改正では、賞与や退職手当、家族手当、住宅手当、夏季冬季休暇などについて、どのような待遇差が不合理になりうるかの考え方も具体的に示されました。派遣で働く人にとっては、自分の待遇がどう決まっているのかを確かめる手段が、はっきり示されたことになります。

求人の条件と実際の待遇に納得できないときは、この説明を派遣会社に求めることができます。説明の求め先として、派遣会社の部署や担当者の連絡先が明示の書面に書かれているかも確かめておいてください。

時給の表示を読み解く

派遣の求人で最も目に付くのは時給です。時給の表示を正しく読むために、次の点を確かめてください。

まず、時給の幅です。「時給1,500円から1,800円」のように幅がある場合、どのような経験や条件で上限になるのかを聞きます。自分の経験だといくらになるのかを、登録の場で具体的に確かめることが大切です。前の節で見たとおり、派遣会社には雇う前に賃金額の見込みを説明する義務があります。

次に、交通費の扱いです。派遣の時給には、交通費が含まれている場合と、別に支給される場合があります。交通費込みの時給は、通勤に費用がかかる人ほど実際の手取りが少なくなります。求人の時給が交通費込みかどうかは、必ず確かめてください。

さらに、残業代や深夜の割増、昇給の仕組みも確かめます。派遣でも、法定の時間を超えて働けば割増賃金が支払われます。長く同じ派遣先で働いた場合に時給が上がる仕組みがあるかどうかも、聞いておきたい点です。

最低賃金についても知っておくと役に立ちます。厚生労働省の「確かめよう労働条件」の解説によると、派遣で働く人には、派遣会社の所在地ではなく、派遣先の事業場に適用される最低賃金が適用されます。派遣先の地域の最低賃金を下回る時給は、どのような事情があっても認められません。

マージン率の数字の見方

派遣会社を比べるときの材料として、マージン率があります。マージン率とは、派遣先が派遣会社に支払う料金のうち、派遣で働く人の賃金に回らない部分の割合のことです。派遣会社にはマージン率などの情報を公開する義務があります。

ただし、マージン率は低ければ良いというものではありません。厚生労働省は次のように説明しています。

マージンには、社会保険料、教育訓練費なども含まれているため、マージン率は低いほどよいというわけではなく、その他の情報と組み合わせて総合的に評価することが重要です。 出典: mhlw.go.jp

同じページは、派遣会社を選ぶ際に、マージン率のほか、賃金の平均水準や教育訓練の取り組みの状況を、派遣会社のホームページや厚生労働省の「人材サービス総合サイト」で確かめるよう案内しています。

マージン率が極端に低い派遣会社は、社会保険や教育訓練にかける費用が少ない可能性もあります。マージン率、平均の賃金、教育訓練の内容の3つを並べて比べると、派遣会社の姿勢が見えてきます。これらの情報を公開していない、または見つけにくい派遣会社は、それ自体が判断の材料になります。

登録や面談で確かめる質問

派遣会社に登録するときや、仕事を紹介されるときの面談は、条件を確かめる大切な機会です。聞きにくいと感じるかもしれませんが、労働条件の確認は働く人の当然の権利です。次のような質問を準備しておくと、その場で確かめやすくなります。

・「求人に掲載されていた仕事は、現在も募集していますか。いつ時点の情報ですか」 ・「私の経験だと、時給はいくらになる見込みですか」 ・「時給に交通費は含まれていますか。別に支給される場合、上限はありますか」 ・「仕事の内容は、1日の流れでいうとどのようなものですか」 ・「残業はどのくらいありますか。就業時間を延長する場合の上限は何時間ですか」 ・「社会保険と雇用保険には、いつから加入しますか」 ・「契約の期間と、更新の見込みはどうなっていますか」

答えはその場でメモし、日付と担当者の名前を添えて記録しておきます。電話やメールでのやり取りも、あとで見返せる形で保存します。派遣会社の担当者は、派遣先との間に立つ存在です。疑問は早めに担当者に伝えておくと、派遣先に確かめてもらえることもあります。

書面を保存し、照らし合わせる

派遣で働くと、複数の書面を受け取ります。登録時の説明資料、雇い入れのときの労働条件の書面、派遣されるときの就業条件の明示の書面です。電子メールやWeb上の画面で受け取ることもあります。

これらの書面は、受け取ったら必ず保存し、求人の内容と照らし合わせてください。求人の画面は、掲載が終わると見られなくなるので、応募した時点でスクリーンショットかPDFで保存しておきます。

照らし合わせるときは、次の項目を順に見ていきます。時給と交通費の扱い。仕事の内容と責任の程度。就業場所。就業時間と残業の上限。契約期間。社会保険と雇用保険の扱い。どれかが求人や面談での説明と違っていたら、働き始める前に派遣会社に理由を確かめます。

2024年4月からは、労働契約を結ぶときの明示事項として、将来変わりうる就業場所と業務の範囲も示されることになりました。派遣で有期の契約を結ぶ場合は、契約の更新の上限の有無と内容も示されます。書面にこれらが書かれているかも確かめておきます。

働き始めた最初の1週間で確かめること

条件の食い違いは、働き始めて最初の数日で見えてくることがほとんどです。最初の1週間を、書面と実際を照らし合わせる期間と決めておくと、問題に早く気づけます。

まず、仕事の内容です。毎日の終わりに、その日に行った作業を簡単にメモしておきます。就業条件の明示の書面に書かれた業務と比べて、書かれていない作業が多くないか、責任の重い判断を任されていないかを確かめます。

次に、時間です。始業と終業の時刻、休憩が実際に取れているか、残業がどのくらいあったかを記録します。勤怠の記録の付け方が派遣先と派遣会社で違うことがあるので、自分でも記録を残しておくと、給与の計算が合っているかをあとで確かめられます。

さらに、指揮命令者です。書面に書かれた人以外から、日常的に指示を受けていないかを見ます。書面と違う部署の仕事を頼まれることが続く場合は、契約の範囲を超えている可能性があります。

気になる点があれば、1週間たった時点でまとめて派遣会社の担当者に伝えます。早い段階で伝えるほど、派遣先との調整もしやすくなります。黙って我慢を続けると、食い違いが当たり前になってしまいます。伝えるときは、「書面ではこう書かれているが、実際はこうなっている」と、事実と記録を並べて話すと、担当者も派遣先に確かめやすくなります。感情ではなく記録で話すことが、条件を元に戻してもらう近道です。

派遣で働くメリットとデメリットを整理する

ここまで注意点を中心に書いてきましたが、派遣という働き方そのものを避ける必要はありません。条件をきちんと確かめて選べば、利点の多い働き方です。

メリットの一つは、仕事探しの手間を派遣会社に任せられることです。希望の条件を伝えておけば、合う仕事を紹介してもらえます。自分で一社ずつ応募するより、短い期間で働き始められることがあります。もう一つは、働く期間や時間を選びやすいことです。数か月だけ働きたい、週の勤務日数を決めて働きたい、といった希望に合う仕事が見つかりやすい働き方です。さまざまな職場を経験できるので、自分に合う仕事や業界を見極める期間として使うこともできます。

デメリットは、雇用の安定です。派遣の契約は期間ごとに区切られていることが多く、派遣先の都合で契約が更新されないこともあります。また、三者の関係の中で働くため、困ったことがあったときに誰に相談すればよいかが分かりにくくなりがちです。職場の指示は派遣先から受けますが、労働条件の相談先は雇い主である派遣会社です。

この関係を理解しておくと、条件の食い違いが起きたときにも落ち着いて対応できます。仕事の中身の問題は就業条件の明示の書面と照らし合わせて派遣会社に伝える、賃金や保険の問題は労働条件の書面で確かめる、という切り分けができるからです。派遣という働き方の仕組みを知ることが、本当の条件を見分ける一番の近道です。相談先を取り違えないだけで、解決までの時間は大きく縮まります。

条件が違っていたときの相談先

派遣で働き始めてから条件の違いに気づいた場合、最初の相談先は派遣会社です。就業条件の明示の書面には、苦情の処理に関する事項と、派遣元責任者の連絡先が書かれているはずです。まずはその窓口に、求人や書面と実際の違いを具体的に伝えます。

派遣会社に伝えても改善されない場合や、派遣会社の対応そのものに問題がある場合は、都道府県労働局に相談できます。労働者派遣事業や職業紹介事業の指導は、労働局の需給調整事業部(課・室)が担当しています。求人の表示に問題がある場合も、同じ部署が窓口です。

賃金の未払いや、労働時間の問題など、労働基準法にかかわることは労働基準監督署が担当です。どこに相談すればよいか分からない場合は、労働局や労働基準監督署に置かれた総合労働相談コーナーが、予約不要・無料で相談を受け付けています。

相談のときは、求人の画面、登録時の説明資料、労働条件と就業条件の書面、給与明細、派遣会社とのやり取りの記録をそろえておきます。何がどう違うのかを、書面を示しながら説明できると、相談がスムーズに進みます。

条件を正直に書く派遣会社を選ぶという考え方

求人を長く見てきた運営者として感じるのは、条件を正直に書く派遣会社ほど、求人の情報が具体的だということです。仕事の内容が1日の流れで説明され、時給の幅の条件や交通費の扱いが明記され、求人の情報がいつ時点のものかが示されている。こうした求人は、応募する側が判断しやすく、働き始めてからの思い違いも起きにくくなります。

もう一つ感じるのは、派遣という仕組みそのものに、中間の取り分があるということです。派遣先が払う料金と、働く人が受け取る賃金の差がマージンです。社会保険や教育訓練の費用を含むので、それ自体は不当なものではありません。一方で、中間の取り分が乗らない直接の取引では、同じ予算で発注者はより多くの作業を頼め、受ける側は手取りが厚くなります。技能を生かして業務委託で直接仕事を受ける道も、働き方の選択肢の一つです。

開発の仕事の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場で、文章や編集の仕事の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確かめられます。アプリの開発の依頼内容と求められる技能は、アプリケーション開発のお仕事で紹介しています。

派遣で働く場合も、直接仕事を受ける場合も、確かめる手順は同じです。相手の名前と連絡先、仕事の中身、報酬の計算方法、契約の条件を、書面で確かめる。条件の確認のやり取りを正確な文書で残す力は、ビジネス文書検定で体系的に学べます。

よくある質問

Q. 派遣会社の求人に応募したのに、その仕事を紹介されないのはなぜですか?

派遣では、登録しただけでは雇用されず、仕事の紹介と契約で初めて雇われる流れが一般的です。すでに別の人で決まった、派遣先の都合で取り消されたなどの理由があります。ただし、募集を終えた求人は速やかに掲載をやめる決まりがあります。終了した求人が長く掲載され続けている場合は、記録を残して労働局に相談できます。

Q. 派遣の時給が求人と違っていました。どこを確かめればよいですか?

派遣会社には、雇う前に賃金額の見込みなどを説明する義務があります。登録時の説明資料と、雇い入れのときの労働条件の書面を求人と照らし合わせ、交通費が時給に含まれているかも確かめてください。違いがあれば派遣会社に理由を聞き、納得できない場合は都道府県労働局の需給調整事業部に相談できます。

Q. 派遣先での仕事内容が聞いていた内容と違う場合はどうすればよいですか?

派遣されるときには、業務の内容や責任の程度などを書いた就業条件の明示の書面が渡されます。まずその書面と実際の仕事を照らし合わせ、違いを具体的に派遣会社の担当者や派遣元責任者に伝えます。改善されない場合は、都道府県労働局や総合労働相談コーナーに相談してください。

Q. 令和8年10月から派遣の何が変わりましたか?

派遣労働者の同一労働同一賃金のルールが改正され、雇い入れのときと派遣のときに、待遇の差の内容や理由について説明を求めることができる旨を明示することになりました。説明を求めたことを理由とする不利益な扱いは禁止されています。賞与や各種手当、休暇などで不合理になりうる待遇差の考え方も示されました。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月10日最終更新:2026年10月2日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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