転勤なしの求人は嘘なのか、募集要項から実態を見分ける方法


この記事のポイント
- ✓求人の「転勤なし」は嘘なのかと不安な人に向けて
- ✓2024年4月から示すことになった「就業場所の変更の範囲」の読み方
- ✓入社後に転勤を命じられたときの考え方と相談先までを
「転勤なし」と書かれた求人に応募したのに、入社後しばらくして別の県の事業所への異動を打診された。あるいは、家族の事情で引っ越しができないので転勤のない会社を選びたいけれど、求人の「転勤なし」をどこまで信じてよいのか分からない。「求人の転勤なしは嘘なのか」と調べている人は、このどちらかの状況にいることが多いはずです。
先に結論を書きます。求人の「転勤なし」が、それだけで嘘とは限りません。ただ、会社が言う「転勤」と、読む人が思い浮かべる「転勤」の意味がずれていることがよくあります。引っ越しを伴う異動はないけれど、通える範囲の別の店舗への異動はある。今はないけれど、将来は分からない。こうしたずれを見分ける手がかりになるのが、2024年4月から会社が示すことになった「就業場所の変更の範囲」です。この欄を読み、面接で確かめ、入社前に書面で受け取る。この3つの手順で、入社後のずれはかなり防げます。
この記事では、転勤と異動の違い、「転勤なし」が実態とずれる理由、募集要項と労働条件通知書の読み方、面接で確かめる質問、入社後に転勤を打診されたときの考え方と相談先を、厚生労働省の資料を確かめながら順に整理します。
「転勤」と「異動」は同じ意味ではない
最初に押さえておきたいのが、言葉の意味です。「転勤なし」のずれの多くは、ここから生まれます。
一般に、異動とは、会社の中で働く場所や担当する仕事が変わることを広く指す言葉です。部署が変わる、担当する業務が変わる、別の事業所に移る、といったことがすべて含まれます。一方、転勤とは、異動のうち、働く場所(事業所)が変わるものを指して使われることが多い言葉です。その中でも、引っ越しが必要になる遠い事業所への異動を特に「転勤」と呼ぶ会社もあります。
この違いが、求人の読み方に大きく影響します。たとえば、ある会社が「転勤なし」を「引っ越しを伴う異動はない」という意味で使っているとします。その会社では、同じ市内や通勤できる範囲の別の店舗への異動は、会社にとって「転勤」ではありません。ところが、求人を読む人は「今の勤務地からずっと動かない」と受け取るかもしれません。このずれがあると、入社後に隣の市の店舗への異動を言われたとき、「転勤なしと書いてあったのに」と感じることになります。
もう1つ、会社によっては出向も考えておく必要があります。出向とは、今の会社に籍を置いたまま、グループ会社などの別の会社で働くことです。出向先の場所が遠ければ、引っ越しが必要になることもあります。
求人の「転勤なし」を読むときは、それが「引っ越しを伴う異動がない」という意味なのか、「働く場所が一切変わらない」という意味なのかを、まず確かめる必要があります。
「転勤なし」が実態とずれる4つの理由
求人の「転勤なし」と実態がずれる理由は、大きく4つに分けられます。
1つ目は、先ほど書いた言葉の意味のずれです。会社は引っ越しを伴う異動のことだけを「転勤」と考え、通える範囲の異動は含めていないケースです。会社は嘘をついたつもりがなく、読む側は嘘だと感じる、という一番多いずれです。
2つ目は、「原則として」の部分を読み落としているケースです。求人に「原則転勤なし」と書かれている場合、例外があることを示しています。本人が希望した場合、事業所が閉鎖された場合、管理職に昇進した場合など、例外の条件がどこかに書かれていないかを確かめる必要があります。
3つ目は、入社後に状況が変わるケースです。求人を出した時点では本当に転勤のない働き方だったのに、事業所の統廃合、会社の合併、新しい拠点の開設などで、異動が必要になることがあります。
4つ目は、悪意のある表示です。実際には全国転勤が前提の働き方なのに、応募を集めるために「転勤なし」と書く。数としては多くありませんが、こうした表示は法律で禁止されている虚偽の表示に当たる可能性があります。
この4つのうち、1つ目と2つ目は求人の読み方と面接での確認で防げます。3つ目は、労働条件通知書の「変更の範囲」で、ある程度見通しを持てます。4つ目は、行政に相談する対象です。
2024年4月から、働く場所の「変更の範囲」を示すことになった
求人の「転勤なし」を見分けるうえで、一番大きな手がかりになるのが、2024年4月から始まった労働条件の明示のルールです。
労働基準法では、会社は労働契約を結ぶときに、働く人に労働条件をはっきり示さなければならず、大事な項目は書面で渡すことになっています。2024年4月からは、この書面に示す事項として、雇い入れた直後の働く場所と仕事の内容に加えて、それらが将来どこまで変わりうるか(変更の範囲)が加わりました。
全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」についても明示が必要になります。 出典: mhlw.go.jp
厚生労働省のパンフレットによると、ここでいう「変更の範囲」とは、今後の見込みも含めて、その労働契約の期間中に働く場所や仕事が変わりうる範囲のことです。配置転換や在籍型出向で移る先の場所や仕事は含まれますが、臨時的な応援、出張、研修のように一時的に場所や仕事が変わるものは含まれないとされています。
さらに、同じパンフレットでは、職業安定法のルールとして、労働者を募集するときにも、就業場所の変更の範囲と、仕事の内容の変更の範囲を示すことが必要になったと説明されています。つまり、求人の段階から「変更の範囲」が示されているはずだということです。
この改正で、「転勤なし」という言葉の中身を、書面で確かめられるようになりました。求人に「転勤なし」と書かれていても、「変更の範囲」が「会社の定める事業所」となっていれば、少なくとも書面の上では働く場所が変わる可能性が残されていることになります。
「変更の範囲」の書き方から読み取れること
では、「変更の範囲」はどのように書かれるのでしょうか。厚生労働省のパンフレットには、限定の度合いごとに記載例が示されています。ここでは、その記載例をもとに、読み方を整理します。
限定がない場合
働く場所に限定がない場合は、すべての就業場所を含めて示す必要があるとされています。記載例には、次のような書き方が挙げられています。
・雇入れ直後:仙台営業所、変更の範囲:会社の定める営業所
・雇入れ直後:広島支店、変更の範囲:海外(3か国)及び全国への配置転換あり
このような書き方であれば、全国どこへでも異動がありうる働き方です。求人に「転勤なし」と書かれていて、労働条件通知書の変更の範囲がこの形になっていたら、必ず理由を確かめましょう。
一部に限定がある場合
働く場所が一定の範囲に限られている場合は、その範囲をはっきりさせることが求められています。記載例は次のようなものです。
・雇入れ直後:十三出張所、変更の範囲:淀川区内
・雇入れ直後:豊橋、変更の範囲:愛知県内
・雇入れ直後:東京本社、変更の範囲:東京本社、大阪支社及び名古屋支社
この形の場合、「転勤なし」の意味は、示された範囲の外には異動しない、ということになります。範囲が「区内」「市内」なら引っ越しの必要はまずありませんが、「県内」の場合は県の端から端まで移ると、通勤が難しくなることもあります。自分の住まいから、範囲の中で一番遠い事業所まで通えるかを確かめておきましょう。
完全に限定されている場合
働く場所が変わることが想定されていない場合は、その旨をはっきり示すことが求められています。記載例には「変更の範囲:変更なし」「変更の範囲:旭川センター」のような書き方があります。
この形であれば、書面の上で働く場所は変わらないことになります。「転勤なし」を一番強く裏付ける書き方です。ただし、事業所の閉鎖や会社の再編のように、契約を結んだ時点で想定していなかった出来事が起きた場合の扱いまでは、この欄だけでは分かりません。気になる場合は、面接や内定後の条件確認の場で、そうした場合の扱いも聞いておくと安心です。
テレワークの扱い
在宅勤務などのテレワークが想定されている場合は、自宅などテレワークを行う場所も、就業場所や変更の範囲に含めて示すよう求められています。テレワークのある求人では、出社先の事業所と自宅の両方が書かれているかを確かめましょう。
求人の表示には法律のルールがある
求人を出す会社は、何を書いてもよいわけではありません。職業安定法という法律で、求人の情報を出すときのルールが決められています。
厚生労働省は、職業安定法の内容を次のように説明しています。
職業安定法では、インターネットやX等のSNSを含む広告等により、労働者の募集に関する情報等を提供するときは、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならないこととされています。 出典: mhlw.go.jp
虚偽の表示とは、事実と違うことを書くこと。誤解を生じさせる表示とは、書いてあること自体は間違っていなくても、読む人がふつうに読んで違う意味に受け取ってしまう書き方のことです。全国転勤が前提なのに「転勤なし」と書くのは虚偽の表示に当たる可能性があり、通える範囲の異動が頻繁にあるのにその説明をせず「転勤なし」とだけ書くのは、場合によっては誤解を生じさせる表示に当たる可能性があります。
また、同じページのQ&Aでは、求人の広告の段階では、就業場所について「変更の範囲」を書かずに雇い入れ直後の就業場所だけを示す形でも、それだけで直ちに違反になるとは限らないという考え方も示されています。つまり、求人の広告だけでは変更の範囲が分からないこともあるということです。だからこそ、面接と書面での確認が大切になります。
募集要項で確かめたい項目
求人の「転勤なし」の中身を見分けるために、募集要項で確かめたい項目を整理します。
| 確かめる項目 | 見るところ | 気をつけたい書き方 |
|---|---|---|
| 就業場所 | 雇い入れ直後の事業所名と住所 | 「首都圏の各店舗」など範囲が広い |
| 変更の範囲 | 異動がありうる範囲 | 「会社の定める事業所」 |
| 転勤の有無 | 「転勤なし」の注記 | 「原則」「当面」が付いている |
| 雇用形態 | 総合職か、地域限定か | 職種の区分がない |
| 事業所の数 | 会社の拠点の一覧 | 拠点が全国にあるのに説明がない |
| 出向 | 出向の有無 | グループ会社が多いのに記載がない |
特に気をつけたいのが、「首都圏の各店舗」「関西エリア」のように、就業場所そのものが広い範囲で書かれている求人です。この場合、入社直後にどの事業所に配属されるかは入社後に決まることが多く、「転勤なし」は「エリアの外には異動しない」という意味であることがほとんどです。エリアの中でどこまで通勤の範囲が広がるかを確かめましょう。
また、会社が総合職と地域限定の職種(勤務地限定の正社員など)を分けている場合は、自分が応募する職種がどちらなのかを確かめます。勤務地限定の職種は、働く場所の範囲が限られる代わりに、給与や昇進の仕組みが総合職と違うことがあります。
会社の拠点の情報から転勤の可能性を読む
募集要項に書かれていることだけでなく、会社が公開している情報からも、転勤の可能性を読み取ることができます。
まず見たいのは、会社の拠点の一覧です。会社の公式サイトの会社概要には、本社、支社、営業所、工場、店舗などの所在地が載っていることがほとんどです。拠点が1か所か、同じ市内に数か所しかない会社であれば、引っ越しを伴う転勤が起こる余地は小さいと考えられます。反対に、拠点が全国にある会社で「転勤なし」と書かれている場合は、職種や雇用の区分によって転勤の有無が分かれている可能性があるので、自分が応募する職種の扱いを確かめましょう。
次に、採用ページの社員紹介です。社員紹介に、入社後に複数の拠点を経験した社員の経歴が載っていることがあります。応募する職種と同じ職種の社員が、どのような異動を経験しているかを見ると、その会社でのキャリアの描き方が見えてきます。
そして、拠点の新設や統合の情報です。会社のお知らせや報道発表に、新しい拠点の開設、事業所の移転や統合が載っていることがあります。入社後に予定されている再編があれば、働く場所に影響する可能性があります。上場している会社であれば、有価証券報告書に主要な設備や事業所の情報が載っているので、拠点の規模を知る手がかりになります。
こうした情報は、面接で聞く質問を具体的にするための材料として使います。「御社は全国に拠点がありますが、この職種で別の拠点に異動された例はありますか」と聞けば、一般的な質問より具体的な答えが返ってきやすくなります。
「転勤なし」を条件に選ぶときに考えておきたいこと
転勤のない働き方は、生活の見通しを立てやすいという大きな利点があります。家族の仕事や子どもの学校、親の介護などの事情を抱えている人にとっては、何より大切な条件になることもあります。一方で、転勤のない働き方を選ぶときには、考えておきたい点もあります。
1つ目は、給与や手当の違いです。総合職と勤務地限定の職種を分けている会社では、勤務地限定の職種の給与が総合職より低めに設定されていることがあります。転勤がない分の差として、どのくらいの違いがあるのかを確かめておきましょう。
2つ目は、昇進や仕事の幅です。会社によっては、管理職になるには複数の拠点を経験することが前提になっている場合があります。勤務地限定の職種から総合職に変わる道があるのか、変わった場合に転勤の範囲がどうなるのかも、聞いておく価値があります。
3つ目は、事業所がなくなった場合の扱いです。働く場所が1か所に限られている契約で、その事業所が閉鎖されたらどうなるのか。ほかの事業所への異動を打診されるのか、別の扱いになるのか。事業の見通しによっては、確かめておきたい点です。
4つ目は、自分にとって譲れない範囲です。「引っ越しは絶対にできない」のか、「片道1時間までの通勤なら構わない」のか。自分の条件を具体的にしておくと、求人の「転勤なし」がその条件を満たしているかを判断しやすくなります。
面接で「転勤なし」の中身を確かめる質問
面接は、会社の説明を直接聞ける貴重な機会です。転勤について聞くと意欲が低いと思われないか、と心配する人もいるかもしれません。家族の事情などで引っ越しが難しいことは、入社後の働き方に直接関わる大切な条件です。聞き方を工夫すれば、長く働くための確認として受け止めてもらえます。
次のような質問がおすすめです。
言葉の意味を確かめる質問
・求人にある「転勤なし」は、引っ越しを伴う異動がないという意味でしょうか。通勤できる範囲の別の事業所への異動はありますか
・労働条件通知書に記載される就業場所の変更の範囲は、どのようになりますか
実績を確かめる質問
・配属予定の部署で、ここ数年に別の事業所へ異動された方はいらっしゃいますか
・異動がある場合、どのくらいの頻度で、どの範囲の事業所へ移ることが多いですか
例外を確かめる質問
・昇進して管理職になった場合、働く場所の範囲は変わりますか
・事業所が移転や統合をした場合は、どのような扱いになりますか
・グループ会社への出向はありますか
本人の希望の扱いを確かめる質問
・本人が異動を希望しない場合、どのように扱われますか
「事業所が統合した場合」のような質問は、聞きにくいと感じるかもしれません。それでも、事業所の数が少ない会社や、拠点の再編が進んでいる業界では、大切な確認です。答え方に具体性があるかどうかも、判断の材料になります。
面接で聞いた内容は、終わったらすぐにメモに残しておきます。日付、面接官の名前、質問と答えを書いておくと、後で書面と見比べるときに役立ちます。
家族の事情を面接で伝えるタイミング
引っ越しが難しい事情がある場合、それを面接で伝えるべきか迷う人も多いと思います。
事情の詳しい内容まで話す必要はありませんが、「家族の事情で、引っ越しを伴う異動には応じることが難しい」という条件は、選考のどこかの段階で伝えておくことをおすすめします。入社後に転勤を打診されてから初めて伝えると、会社にとっても想定外の話になり、調整が難しくなることがあるからです。
伝えるタイミングは、面接の終盤に条件の確認をする場面や、内定後の条件のすり合わせの場面が自然です。「長く働き続けたいので、働く場所の範囲を確かめておきたい」という形で切り出すと、前向きな確認として受け止めてもらいやすくなります。
伝えた内容と会社の答えは、メールで確認しておくと安心です。「先日の面接で、引っ越しを伴う異動はないと伺いました」といった形で、確認のメールを送っておけば、後で記録として残ります。
内定後、入社前に書面で確かめること
内定が出たら、入社を承諾する前に労働条件通知書を受け取り、就業場所と変更の範囲を確かめましょう。
確かめたいのは、次の点です。
・雇い入れ直後の就業場所が、求人や面接で聞いた事業所になっているか
・就業場所の変更の範囲が、面接で聞いた説明と合っているか
・仕事の内容と、その変更の範囲
・契約の期間と、更新がある場合はその基準
面接で「転勤なし」と説明されたのに、変更の範囲が「会社の定める事業所」となっていたら、承諾する前に理由を聞きます。厚生労働省の指針では、最初に示した労働条件を変えるときは、変更した内容が分かるように示すことが求められ、変更前と変更後を比べられる書面を渡すのが望ましいとされています。また、最初に示した条件を安易に変えてはならないとも書かれています。
書面の内容が面接の説明と違う場合、書面を直してもらうか、面接の説明を文書(メールでも構いません)で残してもらうよう頼みましょう。口頭の説明だけでは、後で確かめることが難しくなります。
契約社員やパートのように契約の期間が決まっている働き方の場合は、契約を更新するたびに、就業場所と仕事の内容の変更の範囲が示されることになっています。更新のときに渡される書面でも、変更の範囲が前の契約から変わっていないかを毎回確かめましょう。更新のたびに範囲が少しずつ広がっていく、ということがないとは言えません。変わっている場合は、署名する前に理由を聞くことが大切です。
また、求人と労働条件通知書で就業場所の書き方が違う場合もあります。求人では「本社勤務」とだけ書かれていたのに、通知書では「雇入れ直後:本社、変更の範囲:会社の定める事業所」となっている、といった形です。前に書いたとおり、求人の広告の段階では変更の範囲まで書かれていないこともあるので、通知書の内容が実際の約束の中身になります。だからこそ、通知書を受け取った時点で、面接の説明と食い違いがないかを丁寧に見比べる必要があります。
もし書面で示された労働条件が事実と違っていた場合、労働基準法第15条では、働く人はすぐに労働契約を解除できると定めています。書面は、入社後に条件が違うと感じたときの大切な手がかりになるので、必ず保存しておきましょう。
入社後に備えて残しておきたい記録
入社した時点では何の問題もなくても、数年後に異動の話が出ることはあります。そのときに慌てないよう、入社の時点で残しておきたい記録を整理します。
1つ目は、応募した求人の画面です。求人のページは、募集が終わると削除されたり、内容が書き換えられたりします。応募する前に、画面を印刷するか、ページ全体を保存しておきましょう。スクリーンショットでも構いません。保存した日付が分かる形で残しておくことが大切です。
2つ目は、労働条件通知書と雇用契約書です。紙で受け取った場合は、なくさないように保管します。メールで受け取った場合は、データを保存して、印刷もしておくと安心です。働く人が希望した場合は、電子メールなどで労働条件を示すことも認められていますが、その場合も、後で書面として取り出せる形で残しておく必要があります。
3つ目は、就業規則の異動に関する規定です。就業規則は、会社が働く人に周知しなければならないものです。入社したら、異動や転勤に関する規定がどこに書かれているかを確かめ、必要なら写しを取っておきましょう。
4つ目は、面接や内定後のやり取りの記録です。面接のメモ、条件の確認のメール、人事の担当者とのやり取りなどを、日付ごとにまとめて保存しておきます。
これらの記録は、異動の話が出たときに、自分の契約の内容を確かめるための材料になります。相談窓口に行くときにも、記録がそろっていれば、状況を正確に伝えられます。何も起きなければ使わずに済むものですが、起きたときには大きな助けになります。
入社後に転勤を打診されたときの考え方
入社後に、聞いていた範囲を超える転勤を打診されることもあります。そのときは、慌てて返事をする前に、次の順番で整理しましょう。
1つ目は、書面を確かめることです。労働条件通知書や雇用契約書の就業場所と変更の範囲、就業規則の異動に関する規定を読み返します。打診された転勤先が、書面に示された範囲の中か外かで、考え方が変わります。
2つ目は、自分の事情を会社に伝えることです。子育てや家族の介護の事情がある場合は、具体的に伝えましょう。育児・介護休業法という法律では、会社が働く場所の変更を伴う配置転換をしようとするときに、そのことで子育てや家族の介護が難しくなる人がいれば、その状況に配慮しなければならないと定めています。
事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
ここで求められているのは「配慮」で、転勤そのものを必ず取りやめることまでは書かれていません。ただ、事情を伝えることで、転勤先や時期の調整につながることがあります。
3つ目は、外部の窓口に相談することです。転勤の命令が書面の範囲を超えている、事情を伝えても話を聞いてもらえない、という場合は、公的な窓口に相談できます。転勤の命令が有効かどうかは、契約の内容や事情によって判断が分かれるため、自分だけで結論を出さず、専門の窓口で話を聞いてもらうのが安全です。
通勤の範囲が広がる異動で確かめたいこと
「転勤なし」でも、通える範囲の別の事業所への異動はありうる、という会社は多くあります。この場合、引っ越しは必要なくても、通勤の負担が大きく変わることがあります。異動を打診されたときに確かめたい点を整理しておきます。
まず、通勤時間と通勤の方法です。異動先までの通勤時間がどのくらい延びるのか、電車やバスで通えるのか、車での通勤が必要になるのかを確かめます。車での通勤になる場合は、駐車場の有無や費用も確かめましょう。
次に、通勤手当の扱いです。通勤の距離や方法が変わると、通勤手当の額も変わります。会社の規定で、どの範囲まで通勤手当が出るのか、上限があるのかを確かめておきます。
そして、勤務時間の変化です。事業所によって始業や終業の時刻が違うことがあります。通勤時間が延びたうえに勤務時間も変わると、家庭の予定に大きく影響することがあります。
こうした点を確かめたうえで、異動を受け入れるのが難しい事情がある場合は、早めに会社に伝えて相談します。
実態が違ったときの相談先
求人や労働条件が実態と違うと感じたとき、無料で相談できる公的な窓口があります。
総合労働相談コーナーは、各都道府県の労働局や全国の労働基準監督署の中などに設けられている窓口で、厚生労働省のページによると全国の378か所にあります。解雇、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用など、職場のトラブル全般について相談を受け付けています。
職場のトラブルに関するご相談や、解決のための情報提供をワンストップで行っています。 出典: mhlw.go.jp
ハローワークの求人で応募した場合は、「ハローワーク求人ホットライン」に申し出ることもできます。ハローワークインターネットサービスでは、求人票と実際が違っていた場合の例として、採用の直前に求人票になかった勤務地を示された、というケースが挙げられており、担当のハローワークが事実を確認したうえで会社に是正指導を行うと案内しています。
相談に行くときは、応募した求人の画面の保存、労働条件通知書、就業規則の該当部分、面接のメモ、会社とのやり取りのメールを持っていくと、話が早く進みます。
運営者の視点から見た、働く場所を自分で選ぶということ
在宅ワークやフリーランスの仕事の仲介を長く見てきた立場から言えば、働く場所で後悔しない人は、「転勤なし」という言葉を信じるか疑うかではなく、その言葉が書面でどう表されているかを確かめています。2024年4月からは変更の範囲が書面に示されるようになり、確かめる手段は以前より増えました。この手段を使うかどうかで、入社後の安心感は大きく変わります。
働く場所を自分で決めたいという理由で、在宅でできる仕事や業務委託の働き方を選ぶ人も増えています。業務委託の仕事では、仲介の手数料が少ない取引ほど、同じ報酬額でも手元に残る額は厚くなります。手数料0%で受発注できる仕組みを選ぶことは、場所に縛られずに働き続けるうえで効き目の大きい選択です。
在宅でも働きやすい分野の仕事を知りたい方は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、仕事の内容と求められる力を確かめておくとよいでしょう。システム開発の仕事に関心がある方は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場で収入の目安を確かめられます。労働条件通知書や契約書を正確に読む力を身につけたい方には、ビジネス文書検定で取引の書類の基本を学ぶことも役に立ちます。
よくある質問
Q. 求人に「転勤なし」と書いてあったのに転勤を命じられたら、断れますか?
まず労働条件通知書の就業場所の変更の範囲と、就業規則の異動の規定を確かめてください。命じられた転勤先が書面に示された範囲の外であれば、会社に理由を確かめる余地があります。転勤の命令が有効かどうかは契約の内容や事情で判断が分かれるので、総合労働相談コーナーなどで相談してから返事をするのが安全です。
Q. 「転勤なし」と「勤務地限定」は同じ意味ですか?
同じとは限りません。「転勤なし」は、引っ越しを伴う異動がないという意味で使われることが多く、通える範囲の異動はありうる場合があります。勤務地限定の正社員は、働く場所の範囲が契約で限られている働き方です。どちらの場合も、労働条件通知書に書かれる就業場所の変更の範囲で中身を確かめてください。
Q. 2024年4月より前に入社した人にも「変更の範囲」は示されますか?
変更の範囲の明示が必要になったのは、2024年4月以降に労働契約を結ぶときと、有期労働契約を更新するときです。それより前から働いている人について、改めて示すことは義務ではありません。ただし厚生労働省は、トラブル防止のため、以前から働いている人にも示すことを検討するよう会社に呼びかけています。
Q. 子育てや介護の事情があるとき、転勤について会社に伝えるべきですか?
伝えておくことをおすすめします。育児・介護休業法では、会社が働く場所の変更を伴う配置転換をするとき、子育てや家族の介護が難しくなる人がいれば、その状況に配慮しなければならないと定めています。配慮は転勤の取りやめまでを約束するものではありませんが、時期や転勤先の調整につながることがあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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