中小企業診断士の講師・講座の仕事


この記事のポイント
- ✓中小企業診断士 講師 副業の実像を
- ✓資格スクール・公的支援機関・企業研修・自主開催の4つの市場に分けて整理しました
- ✓最初の登壇までにやることまで具体的に解説します
中小企業診断士 講師 副業と検索する人の多くは、すでに資格を持っていて、コンサルティングの現場に出るより先に「教える仕事」から入れないかを探しています。結論から書くと、教える側の仕事は診断士の資格を持つ人にとって最も入口が広い領域です。理由は単純で、講師を探している側が「診断士であること」を募集要件そのものに書いているからです。コンサルティングの案件が実績を見て選ばれるのに対し、講師の仕事は資格の保有が最初のふるいになる。これ、知らない人が本当に多いんです。
ただし、教える仕事と一口に言っても、実態は4つのまったく違う市場に分かれています。値付けの仕組みも、在宅で完結するかどうかも、必要なスキルも別物です。この記事では、その4つを分けたうえで、どこから入るのが現実的か、報酬はどう決まるか、最初の登壇までに何を用意するかを整理します。資格の取り方や試験の難易度は扱いません。すでに手元にある資格を、どう仕事に換えるかだけを書きます。
教える仕事が診断士に開かれている理由
中小企業診断士は、税理士や社会保険労務士のような業務独占資格ではありません。診断士だけがやってよいと法律で定められた仕事は存在せず、中小企業支援法に基づく登録制度の資格です。つまり、「この資格がないとできない業務」を持たない代わりに、「この資格を持っている人を探している」という需要が広く分散しています。
その分散した需要のうち、最も可視化されているのが講師と講座の領域です。資格スクールは試験合格者を講師として必要とし、商工会議所や商工会は経営セミナーの登壇者を探し、企業の人事部門は管理職研修や財務研修の講師を外部に求めます。求人情報の中でも、診断士の資格保有を歓迎要件や必須要件に挙げる講師募集は継続的に出ています。
中小企業診断士試験の講師を募集しています。業務内容は商品企画、テキスト作成、講義収録、受講相談などです。在宅勤務も可能で、講義・収録以外は自由な働き方ができます。資格があれば未経験でも応募可能で、マニュアルや研修制度も充実しています。固定給・歩合給を選べる給与体系や、兼業・副業も可能です。先輩講師に教わりながら業務を進められるため、安心して働けます。講義及び収録日以外は原則自由で、休日・勤務時間もご自身で調整可能です。常勤講師は年間休日125日以上で働けます。 出典: 求人ボックス
この募集文で注目すべきなのは、「講義及び収録日以外は原則自由」という部分です。教える仕事の実働は、登壇している時間だけではありません。むしろ本体は準備側にあり、その準備は在宅で完結します。会社員として本業を持ちながら副業で取り組む場合、この構造が働きやすさを決めます。
副業として教える仕事を選ぶ人が多いのも、この構造が理由です。コンサルティングの顧問契約は、相手企業の営業時間に合わせた訪問やオンライン会議が発生します。平日昼間に動けない人には入口が狭い。一方、講座づくりや教材制作は納期さえ守れば時間帯を問われません。
4つの市場を分けて見る
教える仕事を「講師業」とひとまとめにすると、値付けも入口も見誤ります。市場を4つに分けて、それぞれの中身を見ていきます。
資格スクールの試験対策講師
診断士試験の予備校や通信講座が、講義の担当者やテキスト執筆者、添削者を募集する枠です。診断士としての最も直接的な出口で、合格者であることがそのまま要件を満たします。
この市場の特徴は、仕事が細かく分解されていることです。生講義やオンライン講義の登壇、講義動画の収録、テキストや問題集の執筆、2次試験の答案添削、受講相談への対応。それぞれが別の単価で切り出されており、登壇せずに添削と執筆だけを引き受けることもできます。添削は1通あたりの単価が決まっている形が多く、在宅で完結します。
報酬の水準は、登壇が1コマあたりの単価、添削と執筆が分量あたりの単価という二層構造です。登壇のほうが1回の金額は大きいものの、移動と拘束時間が乗るため時間単価では添削と大きく変わらないこともあります。副業として始めるなら、まず添削や教材の一部執筆から入り、実績を見せてから登壇に広げる順番が現実的です。
注意点として、資格スクールの講師は競合他社での活動を制限する条項が契約に入ることがあります。複数のスクールと同時に契約したい場合は、契約書の競業避止の条項を必ず確認してください。※契約内容に納得できない条項がある場合は、署名前に弁護士に相談してください。
公的支援機関のセミナー講師
商工会議所、商工会、よろず支援拠点、自治体の産業振興部門などが開く経営セミナーの登壇枠です。テーマは補助金の申請、事業計画の作り方、価格設定、IT導入、事業承継など、中小企業の実務課題に沿ったものが中心になります。
この市場は、報酬より入口としての価値が大きい領域です。謝金の水準は1万円台から5万円程度に収まることが多く、準備工数を考えると単価としては高くありません。それでも診断士が続けるのは、参加した経営者から個別相談や顧問の依頼が生まれるからです。セミナーは営業の場を兼ねています。
登壇の機会を得るには、各地の診断士協会や支援機関の専門家登録に名前を載せるのが基本経路です。登録の際は、対応できるテーマを具体的に書くほど声がかかります。「経営全般」と書くより、「小規模事業者持続化補助金の申請書の書き方」「飲食店の原価と価格設定」のように絞ったほうが指名されやすい。運営者として在宅の仕事の募集と応募を長く見てきた立場から言えば、これは在宅ワーク全般に共通する原則です。守備範囲を広く書いた人ほど、思い出してもらえません。
企業研修
企業の人事部門や研修会社を通じて、社員向けの研修を担当する枠です。管理職向けのマネジメント研修、若手向けの財務・会計の基礎研修、新規事業の企画研修などがあります。
4つの市場のなかで最も単価が高いのがここです。1日研修で10万円から30万円程度、内容や講師の実績によってはそれ以上になります。ただし入口は最も狭い。研修会社は登壇実績のある人を選ぶため、実績ゼロの状態から直接入るのは難しい市場です。
現実的な経路は2つあります。ひとつは研修会社の講師登録に応募して、既存カリキュラムの担当者として入ること。この場合、教材は会社側が用意しているため、講師は伝え方の技術で評価されます。もうひとつは、自分が本業で持っている業界知識を軸に、その業界向けの研修として提案すること。診断士の資格に加えて、製造業の生産管理や小売の店舗運営といった実務経験があれば、そこが差別化になります。
企業研修は在宅で完結しない工程を含みます。オンライン研修が定着したとはいえ、参加者同士のグループワークを含む研修は対面が選ばれやすい。副業で取り組む場合、平日日中の稼働が必要になる点は先に見込んでおく必要があります。
自主開催のオンライン講座と個人指導
自分で企画して、自分で集客して、自分で開く形です。オンライン講座のプラットフォームに教材を置く、少人数のオンライン勉強会を継続開催する、診断士試験の受験生に個人指導をつける、といった形があります。
この市場の特徴は、上限がない代わりに下限もないことです。誰かに選ばれる必要がないので、明日からでも始められます。一方、集客が自分の責任になるため、最初の受講者が集まらない期間が必ずあります。
始め方として現実的なのは、無料の情報発信を先に積むことです。ブログやSNSで特定テーマの解説を継続して出し、読んでいる人が集まってから有料の講座を案内する。この順番を飛ばして先に有料講座を作ると、告知しても反応がありません。無料で出す分量は、目安として有料講座の内容の3割程度。全部出すと有料版の理由がなくなり、出し惜しみすると読まれません。
個人指導は、単価と手離れのバランスが良い形です。診断士試験の2次試験対策や、事業計画書の添削を1対1で行う。オンライン会議と資料のやり取りだけで完結するため、完全に在宅で回ります。
報酬はどこで決まるか
講師の仕事の値付けは、次の3つの要素で決まります。この構造を理解していないと、安く受けすぎるか、高すぎて選ばれないかのどちらかになります。
登壇時間ではなく準備工数で決まる。90分の講義に対する準備は、初回であれば10時間以上かかることが珍しくありません。同じ内容を2回目に話すときの準備は1時間程度に落ちます。つまり、初回の謝金だけを見て割に合わないと判断すると、2回目以降の利益を取り逃します。逆に、毎回内容を作り変えるテーマを引き受け続けると、いつまでも時間単価が上がりません。
教材の所有権で変わる。企業研修や資格スクールでは、講師が作った教材の権利が発注側に帰属する契約が一般的です。その場合、同じ教材を他所で使えません。教材の権利を自分が持てる契約であれば、同じ資料を複数の依頼先で使い回せるため、実質的な時間単価は跳ね上がります。契約書の著作権の帰属条項は、報酬額と同じくらい重要です。
再現性のあるテーマかどうか。補助金の申請支援のように制度が毎年変わるテーマは、毎年作り直しが発生します。財務諸表の読み方のように普遍的なテーマは、一度作れば数年使えます。副業として時間が限られているなら、後者を軸にしたほうが積み上がります。
参考までに、講師や執筆を含む診断士の副業の広がりについては、次のように整理されています。
中小企業診断士の副業には、資格をダイレクトに生かす経営コンサルタント業務や補助金申請のほか、執筆業や講師業などもあります。 出典: studying.jp
在宅で完結する工程と、しない工程
副業として組み立てるなら、工程ごとに在宅可否を分けて考えると設計しやすくなります。
在宅で完結するのは、教材の企画と執筆、スライドの作成、講義動画の収録、答案や課題の添削、受講者からの質問対応、オンライン開催の講義そのもの。ここまでが全体の工数の大半を占めます。
在宅で完結しないのは、対面での企業研修、地方の支援機関での対面セミナー、研修会社との初回の打ち合わせ。このうち打ち合わせはオンラインに置き換えられるケースが増えていますが、初回だけは対面を求められることがあります。
つまり、対面登壇を伴う仕事を断れば、講師業はほぼ在宅で回せます。報酬の上限は下がりますが、本業を持ちながらの副業としては現実的な選択です。在宅で成立する専門職の仕事の広がりについては、ITコンサルティング・講師のお仕事に、講師や技術指導を在宅で請け負う形の案件像がまとまっています。診断士のテーマと重なる部分が多いので、案件の書かれ方を見ておくと自分の売り方の参考になります。
最初の登壇までにやる4つのこと
実績ゼロの状態から最初の1件にたどり着くまでの手順を整理します。
1つ目、テーマを1本に絞る。診断士は経営全般を扱える資格ですが、教える仕事では守備範囲の広さが逆に働きます。自分の職務経験と重なる領域をひとつ選び、そこだけを名乗る。製造業の原価管理、小売の在庫、BtoBの営業プロセス、といった粒度です。
2つ目、講義の骨格を1本作り切る。スライド30枚程度、90分で話せる分量を、依頼が来る前に作ります。依頼が来てから作るのでは間に合いません。作った資料そのものが、応募や提案の際の実績の代わりになります。
3つ目、話している姿を記録に残す。オンライン会議ツールで自分ひとりの録画を撮り、10分の抜粋を用意する。研修会社や資格スクールの選考では、話し方が判断材料になります。実績がない段階では、この録画が唯一の証拠になります。
4つ目、登録先を分散させる。診断士協会の専門家登録、よろず支援拠点、研修会社の講師登録、資格スクールの募集、在宅ワークの仲介サイト。ひとつに絞らず並行して登録しておくと、最初の1件が来る確率が上がります。
教える力は「話す技術」ではなく「切る技術」
運営者として、専門職が在宅で仕事を得ていく過程を長く見てきた立場から言えば、教える仕事で評価される人と評価されない人の差は、話し方の巧拙ではありません。差がつくのは、内容をどれだけ削れるかです。
診断士は試験を通じて広い範囲を学んでいるため、教える場面で全部を伝えたくなります。しかし受講者が90分で持ち帰れるのは、多くて3つです。4つ目以降は記憶に残らず、むしろ最初の3つの印象を薄めます。継続して指名される講師は、例外なく削るのが上手い。
もうひとつの観察として、長く続く講師ほど、単発の登壇よりも「この人に頼むと運営が楽」という状態づくりに時間を使っています。事前アンケートの設問を自分から提案する、当日の進行台本を運営側に渡す、終了後にアンケート結果の所見を短くまとめて返す。こうした運営側の手間を減らす動きは、報酬に直接は乗りません。それでも次の依頼が来るのは、講師を探す側にとって最大のコストが「探すこと」だからです。一度うまく回った相手には、次も声をかけます。
報酬の受け取り方も、手取りの厚さという観点では見落とされがちな論点です。仲介事業者を経由すると、その事業者の取り分が乗った金額が発注側の予算から差し引かれます。同じ予算でも、中間マージンが乗らない直接の取引であれば、依頼する側はより多くの回数を頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%で直接やり取りできる場が価値を持つのは、金額そのものより、この手取りの質が変わるからです。
副業として続けるための現実的な注意点
教える仕事を副業として続けるうえで、事前に潰しておくべき論点を挙げます。
勤務先の規程を先に確認する。会社員として本業を持つ場合、就業規則で副業の可否と届出の要否が定められています。講師の仕事は業務時間外でも成立しますが、勤務先の競合企業向けの研修に登壇する場合は競業避止の観点で問題になり得ます。始める前に規程を読み、必要なら届け出てください。
報酬の区分を把握する。講師の謝金は、雇用契約ではなく業務委託として支払われるのが一般的で、その場合は源泉徴収された報酬として受け取ります。年間の所得によっては確定申告が必要です。また、報酬として受け取る形であれば、給与所得としての社会保険や厚生年金の扱いに直接は影響しません。ただし、資格スクールの常勤講師のように雇用契約で働く形を選ぶと、勤務時間によっては社会保険の加入要件に関わります。※個別の判断は税理士や社会保険労務士に確認してください。
受講者の個人情報を扱う場面がある。添削や個人指導では、受講者の氏名や勤務先、財務情報に触れます。受け取った資料の保管方法と、契約終了後の廃棄について、依頼元と取り決めておくのが安全です。
無料の登壇を線引きする。診断士協会の勉強会や知人の紹介で、無料での登壇を依頼されることがあります。実績づくりとして最初の数回を無料で受けるのは合理的ですが、際限なく受けると有料の仕事が来なくなります。無料で受ける条件を自分の中で決めておくことをおすすめします。回数の上限を決める、録画を自分の実績として使える場合だけ受ける、といった形です。
教える仕事を軸にしたときの収入の設計
教える仕事だけで本業の収入を置き換えようとすると、稼働の上限に早くぶつかります。1回の登壇に準備を含めて10時間かかるなら、副業の可処分時間が週10時間の人は、月に4回が限界です。
そこで実際に選ばれているのが、教える仕事を入口にして、コンサルティングや執筆に横展開する組み立てです。セミナーで会った経営者から個別相談を受ける、講義で使った資料を元に記事を書く、教材の一部を有料の教材として独立させる。どれも、一度作った素材を別の形で回すやり方です。
執筆の方向に広げる場合、報酬の相場感を掴んでおくと交渉しやすくなります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場には、書く仕事の年収と単価の水準が職種横断でまとまっています。診断士としての専門性が乗る記事は一般的な単価より上に振れますが、出発点として市場の中央値を知っておく意味はあります。
キャリアの相談や副業の設計そのものを仕事にする方向もあります。キャリア・副業・人生相談のお仕事には、相談や助言を在宅で請け負う案件の性質が整理されています。診断士は事業側の相談を受ける資格ですが、働き方の相談と隣接する場面は多く、両方を扱う人もいます。
診断士の資格そのものをどう位置づけるか
教える仕事において、診断士の資格は「入場券」として機能します。募集要件を満たし、受講者に対する説明がつく。ここまでが資格の効き目で、その先の評価は資格ではなく中身で決まります。
資格の制度上の位置づけを正確に把握しておくことは、営業の場面でも役に立ちます。診断士は中小企業支援法に基づく登録制度であり、独占業務を持たない代わりに、公的支援機関の専門家派遣の要件として指定されることが多い資格です。制度の全体像は中小企業診断士にまとまっているので、どの場面で資格が要件として効くのかを確認しておくとよいでしょう。
隣接資格との組み合わせも、教えるテーマの幅を広げます。たとえば補助金や許認可の実務に踏み込む場合、書類の作成代行が他資格の独占業務にあたることがあります。行政書士法や税理士法の定めがあるため、どこまでを自分で行い、どこから提携先に回すかの線引きが必要です。行政書士に、行政書士が扱う書類の範囲が整理されています。セミナーで制度の説明をすること自体は問題になりませんが、参加者の書類を代わりに作成する段階に入ると別の判断が要ります。この線引きは自己判断で断定せず、根拠となる法令と、依頼内容の具体的な中身に照らして確認してください。
講座の設計で最初につまずく3つの点
教える中身を作り始めた人が、ほぼ例外なく引っかかる点が3つあります。先に知っておくと、作り直しの手戻りを減らせます。
ひとつ目は、対象者を決めないまま作り始めることです。同じ「事業計画の作り方」でも、創業前の人に向けるのか、既に数年回っている事業者に向けるのかで、必要な内容はまったく別になります。創業前の人には数字の置き方から説明が要りますが、既存事業者には自社の実績データがあるため、話の起点が変わります。対象を絞らずに作ると、どちらにも刺さらない資料ができあがります。
ふたつ目は、知識の順番で構成してしまうことです。診断士試験の学習では、財務、運営管理、法務といった体系の順に学びます。しかし受講者は体系を学びに来ているのではなく、目の前の困りごとを解きに来ています。順番は、体系ではなく受講者が困っている順に組み替える必要があります。「まず貸借対照表の構造から」ではなく、「なぜ利益が出ているのに現金が足りないのか」から入る、という組み替えです。
みっつ目は、演習を入れないことです。90分を説明だけで埋めると、受講者の満足度は下がります。手を動かす時間を20分程度確保し、自社の数字を当てはめてもらう形にすると、その場で気づきが生まれます。演習の設計は講師側の負担が増えますが、次の依頼につながるかどうかを分ける要素です。
依頼元との条件のすり合わせで確認する項目
引き受ける前に確認しておくべき条件を、依頼元の種類を問わず共通する形で挙げます。口頭で決まったまま進むと、後で認識のずれが表面化します。
確認したいのは、報酬の金額と支払時期、交通費や機材費の扱い、資料の納品期限、当日の参加人数と参加者の属性、録画の可否と録画データの用途、教材の著作権の帰属、キャンセルが発生した場合の扱いの7点です。とくに録画の用途と著作権の帰属は、後から揉めやすい部分です。「社内での復習用に録画したい」と言われて了承したあと、その録画が有料の教材として販売されていた、という相談は実際に起きています。用途を限定する一文を書面に残しておけば防げます。
支払時期については、業務委託として報酬を受け取る場合、発注者は納品物を受け取った日から起算して定められた期間内に支払う義務を負います。研修の当日を納品日とみなすのか、資料の提出日とみなすのかで起算点が変わるため、ここも先に決めておくとよいでしょう。つまり、「いつを納品とするか」を決めておかないと、支払期限そのものが曖昧になるということです。※契約書の内容に不安がある場合は、署名前に専門家に確認してください。
運営者から見た、教える仕事の広がり方
在宅の仕事の募集と応募を長く見てきた立場から、講師系の案件について気づいていることを2つ書きます。
ひとつは、募集の言葉が変わってきたことです。以前は「講師」という職種名での募集が中心でしたが、近年は「動画教材の制作」「eラーニングのコンテンツ監修」「オンライン講座の設計」といった、収録と設計に寄った表現の募集が増えています。登壇せずに教える仕事が独立した職種になりつつある、ということです。話すのが苦手だから講師は無理だと考えている人にとって、この変化は入口が増えたことを意味します。
もうひとつは、続いている人ほど守備範囲が狭いことです。案件が途切れない人のプロフィールを見ると、扱うテーマが驚くほど限定されています。逆に、対応可能な分野を10個並べている人は、どの分野でも思い出してもらえません。これは在宅ワーク全般に共通しますが、教える仕事では特に顕著です。依頼する側は「このテーマの人」を探しているのであって、「なんでもできる人」を探していないからです。
診断士の資格を持っているという事実は、すでに手元にある資産です。教える仕事は、その資産を最も少ない追加投資で現金化できる出口のひとつです。まず1本、90分の講義を作り切ることから始めてください。作った資料は、応募先が変わっても使い回せます。制度と契約の確認を丁寧にやっておけば、法律はあなたの味方です。
よくある質問
Q. 実務経験がなくても講師の仕事は受けられますか?
資格スクールの試験対策講師は、診断士試験に合格していること自体が要件になるため、コンサルティングの実務経験がなくても応募できる募集があります。一方で企業研修は登壇実績を見られるため、実績ゼロからの直接参入は難しい市場です。添削や教材執筆から入って実績を作り、登壇に広げる順番が現実的です。
Q. 講師の報酬はどのくらいが目安になりますか?
公的支援機関のセミナーは1回あたり1万円台から5万円程度、企業研修は1日で10万円から30万円程度が目安です。ただし初回は準備に10時間以上かかることが多く、時間単価は同じ内容を繰り返すほど改善します。教材の権利を自分が持てる契約かどうかでも、実質的な単価は大きく変わります。
Q. 会社員の副業として在宅だけで完結できますか?
教材の企画と執筆、スライド作成、講義動画の収録、答案添削、オンライン講義は在宅で完結します。完結しないのは対面での企業研修と地方の支援機関での対面セミナーです。対面登壇を伴う仕事を受けなければ、講師の仕事はほぼ在宅で回せます。報酬の上限は下がりますが本業との両立はしやすくなります。
Q. 補助金の申請支援をセミナーで教えても問題ありませんか?
制度の内容や申請書の考え方をセミナーで解説すること自体は、通常問題になりません。ただし参加者の申請書類を代わりに作成する段階に入ると、行政書士法や税理士法が定める業務範囲との関係を確認する必要があります。どこまで自分で行うかは自己判断で決めず、依頼内容の具体的な中身に照らして専門家に確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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